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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043235
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】昆布竿引揚げ装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 44/00 20060101AFI20230322BHJP
   A01G 33/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A01D44/00
A01G33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150728
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】300021002
【氏名又は名称】株式会社森機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】弁理士法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】森 光典
【テーマコード(参考)】
2B026
2B075
【Fターム(参考)】
2B026AA02
2B026CA02
2B075AA10
2B075BA21
(57)【要約】
【課題】 昆布竿を引き揚げる際に大きな力が必要となる場合でも確実に昆布竿を引き揚げることができる昆布竿引揚げ装置を提供する
【解決手段】 昆布引揚げ装置は、昆布竿を把持可能な竿クランプと、竿クランプに連結された索具と、索具を引っ張ることによって竿クランプを引き揚げる引揚げ部とを備える。竿クランプは、索具に張力がかかっているときには昆布竿を把持し、索具に張力がかかっていないときには昆布竿を把持しないように構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然昆布を採取するための昆布竿を引き揚げる昆布竿引揚げ装置であって、
昆布竿を把持可能な竿クランプと、
前記竿クランプに連結された索具と、
前記索具を引っ張ることによって前記竿クランプを引き揚げる引揚げ部と
を備え、
前記竿クランプは、前記索具に張力がかかっているときには昆布竿を把持し、前記索具に張力がかかっていないときには昆布竿を把持しないように構成された、
昆布竿引揚げ装置。
【請求項2】
前記竿クランプは、
昆布竿に当接可能な第1の面を有する第1の把持部と、
前記索具に張力がかかっているときには昆布竿を前記第1の面に押し付け、前記索具に張力がかかっていないときには昆布竿を前記第1の面に押し付けない第2の面を有する、第2の把持部と
を有する、請求項1に記載の昆布竿引揚げ装置。
【請求項3】
前記第2の面が昆布竿を前記第1の面に押し付けることによって前記第1の面及び前記第2の面と昆布竿との間に生じる摩擦力が、前記索具にかかる張力が大きくなるにつれて大きくなる、
請求項2に記載の昆布竿引揚げ装置。
【請求項4】
前記第2の把持部は、前記索具にかかる張力の有無にかかわらず昆布竿を前記第1の面に押し付けない第3の面をさらに有する、請求項2又は請求項3に記載の昆布竿引揚げ装置。
【請求項5】
前記第2の把持部は、昆布竿に沿った長さを有し、昆布竿に対向する側とは反対側に向かって屈曲しており、その屈曲部分に対して昆布竿のハンドル側に対応する部分に前記第2の面が配置されており、
前記索具は、張力がかかっているときに前記屈曲部分に対して昆布竿の昆布巻き取り部側に対応する部分を引っ張るように前記竿クランプに連結されている
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の昆布竿引揚げ装置。
【請求項6】
前記第1の面及び前記第2の面の少なくとも1つは、昆布竿の長さ方向を横切る方向に延びる1つ又は複数の溝を有する、
請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載の昆布竿引揚げ装置。
【請求項7】
前記竿クランプは、前記第1の把持部と前記第2の把持部との間の空間にアクセス可能な開口部をさらに備え、
前記開口部には、昆布竿を前記開口部の外方から前記空間の方向に移動させたときに前記空間の方向に向かって屈曲し、昆布竿を前記空間から前記開口部の外方の方向に移動させたときに前記空間とは反対の方向に向かって屈曲する可撓性の扉が設けられている、
請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の昆布竿引揚げ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然昆布の採取に用いられる昆布竿を引揚げるための昆布竿引揚げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天然昆布は、海中の石や岩に付着器で張り付き、時化などのときでも流される事なく成長することができる。天然昆布を採取する方法の1つに、ねじり昆布漁がある。ねじり昆布漁においては、昆布竿が用いられる。昆布竿は、FRP製又は木製の竿の一方の端部にY字形、V字型、T字型などの採取部(昆布巻き取り部)を備え、他方の端部にハンドル(持ち手部)を備えた道具である。漁では、漁船から昆布竿を海底に降ろし、作業者がハンドルを回して昆布竿を回転させることによって採取部に昆布を巻き付けた後、昆布竿を引揚げる。昆布が巻き付いた昆布竿は重量があり、さらに昆布の付着器が石や岩に硬く張り付いているため、昆布竿を引き揚げる作業は大変な重労働である。
【0003】
昆布竿を引き揚げる作業を容易にするための装置として、例えば特許文献1が提案されている。この装置は、略V字型の引揚溝を有する回転ドラムを備え、引揚溝の表面はゴム類で構成されている。昆布竿を引揚溝の間に嵌め、回転ドラムを回転させることによって、昆布竿を引き揚げることができる。略V字型の引揚溝の形状を工夫することによって、溝内の昆布竿が竿の長さ方向に延びる自己中心線の周りに回転しながら引き揚げられるため、採取した昆布を昆布竿に絡ませて取り落とすことなく引き揚げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-42656
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される装置が提案された当時は、特に北海道においては水深が浅い海域において良質の天然昆布が豊富であった。そのため、船から箱めがねで浅い海中の良質な昆布に狙いを定め、一枚ずつ昆布竿に昆布を巻き付け、鉤などで昆布をねじ切った後に昆布竿を引き揚げる採取方法が行われていた。
【0006】
しかし、現在では、浅い海域における良質な天然昆布は激減したことから、水深10m前後の海域での漁が一般的である。このような海域においては、船上からは確認が難しい水深まで長い昆布竿を降ろし、昆布竿を船上でひたすら回転させ、複数の昆布を同時に巻き付けて引き揚げる採取方法が行われる。この場合、複数の昆布が巻き付いた長い昆布竿を回転させるだけで昆布の付着器を引き剥がすねじ切ることは不可能であるため、上方に昆布竿を引き揚げることによって付着器を引き剥がすことになる。
【0007】
たとえば特許文献1に記載されるような、V字型の溝に挟まれた昆布竿を溝の回転力によって引き揚げる装置は、前者のような浅い海域で行われる採取方法に用いられることを背景として提案されたものであり、昆布竿の重量が大きくなり、さらに引き揚げる際に大きな力を有する現在の採取方法においては、昆布竿が引揚溝内で滑り、引き揚げることができなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために提案されるものであり、昆布竿を引き揚げる際に大きな力が必要となる場合でも確実に昆布竿を引き揚げることができる昆布竿引揚げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、天然昆布を採取するための昆布竿を引き揚げる昆布竿引揚げ装置を提供する。昆布引揚げ装置は、昆布竿を把持可能な竿クランプと、竿クランプに連結された索具と、索具を引っ張ることによって竿クランプを引き揚げる引揚げ部とを備える。竿クランプは、索具に張力がかかっているときには昆布竿を把持し、索具に張力がかかっていないときには昆布竿を把持しないように構成される。
【0010】
一実施形態において、竿クランプは、第1の把持部と第2の把持部とを有するものとすることができる。第1の把持部は、昆布竿に当接可能な第1の面を有する。第2の把持部は、索具に張力がかかっているときには昆布竿を第1の面に押し付け、索具に張力がかかっていないときには昆布竿を第1の面に押し付けない第2の面を有する。竿クランプは、第2の面が昆布竿を第1の面に押し付けることによって第1の面及び第2の面と昆布竿との間に生じる摩擦力が、索具にかかる張力が大きくなるにつれて大きくなるようになっていることが好ましい。第1の面及び第2の面の少なくとも1つは、摩擦力を効果的に生じさせる目的で、昆布竿の長さ方向を横切る方向に延びる1つ又は複数の溝を有することが好ましい。一実施形態において、第2の把持部は、索具にかかる張力の有無にかかわらず昆布竿を第1の面に押し付けない第3の面をさらに有することが好ましい。
【0011】
一実施形態において、第2の把持部は、昆布竿に沿った長さを有し、昆布竿に対向する側とは反対側に向かって屈曲していることが好ましく、第2の面は、その屈曲部分に対して昆布竿のハンドル側に対応する部分に配置されていることが好ましい。索具は、張力がかかっているときにその屈曲部分に対して昆布竿の昆布巻き取り部側に対応する部分を引っ張るように竿クランプに連結されていることが好ましい。
【0012】
一実施形態において、竿クランプは、第1の把持部と第2の把持部との間の空間にアクセス可能な開口部をさらに備えることが好ましい。開口部には、昆布竿を開口部の外方から内部の空間の方向に移動させたときに空間の方向に向かって屈曲し、昆布竿を空間から開口部の外方の方向に移動させたときに空間とは反対の方向に向かって屈曲する可撓性の扉を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による昆布竿引揚げ装置の全体構成とその使用状態を示す。
図2】本発明の一実施形態による昆布竿引揚げ装置を構成する竿クランプを示し、(a)は外観斜視図であり、(b)は分解組立図である。
図3】昆布竿の竿を竿クランプに出し入れするときの動作及び作用を説明するための模式図である。
図4】竿クランプの動作及び作用を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
[昆布竿引揚げ装置の構造]
図1は、本発明の一実施形態による昆布竿引揚げ装置1の全体構成とその使用状態を示す図である。天然昆布を採取する昆布竿を引き揚げる昆布竿引揚げ装置1は、昆布竿Pの竿PPを把持することができる竿クランプ10を備える。竿クランプ10にはロープ(索具)30の一端が連結されている。ロープ30の他端は、典型的には漁船Sの上に設置された引揚げ部50に連結されており、引揚げ部50によってロープ30が引っ張られることによって、竿クランプ10が引き揚げられる。
【0016】
竿クランプ10は、ロープ30が引揚げ部50で引っ張られることによってロープ30に張力がかかっているときには、昆布竿Pの竿PPを把持することができる。昆布竿引揚げ装置1は、昆布竿Pの昆布巻き取り部PMに巻き付いた昆布Kの量が多く、昆布Kの付着器を岩や石から引き剥がして昆布竿Pを引き揚げるために必要な力が大きいほど、ロープ30には大きな張力がかかり、ロープ30にかかる張力が大きくなるほど、竿クランプ10が竿PPを把持する把持力が大きくなるように構成されている。また、昆布竿引揚げ装置1は、ロープ30に張力がかかっていないときには、竿PPを把持することなく自重によって海中を落下することができるように構成されている。
【0017】
(竿クランプ)
図2は、昆布竿引揚げ装置1を構成する竿クランプ10を示す。図2(a)は、竿クランプ10の外観を示す斜視図であり、図2(b)は、竿クランプ10の内部構造が分かるように示された分解組立図である。
【0018】
竿クランプ10は、協働して昆布竿Pの竿PPを把持することができるように互いに対向した位置に配置される固定把持部(第1の把持部)12及び可動把持部(第2の把持部)14を有する。昆布竿Pの竿PPは、通常、FRP製のパイプであり、その直径は35mm~40mmであるが、これらに限定されるものではなく、木製の棒状体であってもよく、直径が35mm~40mmより細くても太くてもよい。竿クランプ10は、このような竿PPを、固定把持部12及び可動把持部14によって確実に把持することができるように構成される。
【0019】
固定把持部12は、複数の突出部12aと複数の溝12bとを有するゴム板で構成されている。固定把持部12の複数の突出部12aは、竿PPに当接可能な把持面(第1の面)12aを構成する。竿PPが把持面12aに押し付けられたときに、把持面12aと竿PPとの間に摩擦力が生じる。
【0020】
複数の溝12bは、竿PPの長さ方向を横切る方向に延びるように設けられることが好ましい。溝12bの数は、複数であることが好ましいが、竿PPとの摩擦力を効果的に生じさせることができる数であれば、限定されるものではない。把持面12aの材質は、ゴムに限定されるものではなく、竿PPとの間に適切な摩擦力が生じて滑ることなく確実に竿PPを保持することができるものであればよい。固定把持部12の長さ及び幅は、可動把持部14の把持面14aと協働して竿PPを確実に把持できれば、特に限定されるものではない。
【0021】
固定把持部12は、第1ケース11に取り付けられる。第1ケース11は、竿クランプ10の筐体の一部を構成し、後壁板11aと、固定把持部12が取り付けられる固定把持部取付板11bと、固定扉11cとが、横断面が略L字形状をなすように組み合わされて形成されている。固定把持部12は、固定把持部取付板11bの内面に取り付けられる。
【0022】
後壁板11aには、後述される可動把持部14の支持パイプ14eに挿通される支持ピン16の一方の端部が挿通される支持ピン孔11dが設けられている。後壁板11aの外面には、作業者が竿クランプ10を容易に保持することができるように、例えば把手(図示せず)が取り付けられることが好ましい。
【0023】
可動把持部14は、複数の突出部14a、14bと複数の溝14cとを有するゴム板で構成されている。可動把持部14の複数の突出部14aは、竿PPに当接可能な把持面(第2の面)14aを構成する。把持面14aが竿PPに押し付けられたときに、把持面14aと竿PPとの間に摩擦力が生じる。複数の突出部14bは、竿PPを把持する機能を持たない非把持面(第3の面)14bを構成する。
【0024】
複数の溝14cは、竿PPの長さ方向を横切る方向に延びるように設けられることが好ましい。溝14cの数は、複数であることが好ましいが、少なくとも把持面14aが設けられている部分において竿PPとの摩擦力を効果的に生じさせることができる数であれば、限定されるものではない。把持面14aの材質は、ゴムに限定されるものではなく、竿PPとの間に適切な摩擦力が生じて滑ることなく確実に竿PPを保持することができるものであればよい。非把持面14bは、竿PPを把持する機能を持たないため、竿PPとの間に摩擦力を生じさせる材質である必要はないが、竿PPと接触したときに竿PPに損傷を与えない材質であることが好ましい。把持面141aの長さ及び幅は、固定把持部12の把持面12aと協働して竿PPを確実に把持できれば、特に限定されるものではない。
【0025】
可動把持部14のゴム板(すなわち、把持面14a、非把持面14b及び溝14c)は、支持板14dに取り付けられている。支持板14dは、竿PPに沿った長さを有しており、その長さ方向の概ね中間部において、把持面14a、非把持面14b及び溝14cが取り付けられた側(すなわち、竿クランプ10が竿PPに取り付けられたときに竿PPに対向する側)とは反対側に向かって屈曲している。この中間部を屈曲部分14d1という。支持板14dの屈曲部分14d1における屈曲角度は、限定されるものではないが、種々の実験の結果、10°程度が好ましいことがわかっている。
【0026】
把持面14aは、屈曲部分14d1に対して支持板14dの上部側(竿クランプ10を竿PPに取り付けたときに昆布竿PのハンドルPH方向に対応する側)に、配置されている。非把持面14bは、屈曲部分14d1に対して支持板14dの下部側(竿クランプ10を竿PPに取り付けたときに昆布竿Pの昆布巻き取り部PM方向に対応する側)に、配置されている。
【0027】
可動把持部14においては、屈曲部分14d1より非把持面14b側のいずれかの箇所に、より好ましくは支持板14dの下端部に近い位置に、支持板14dの幅方向に延びる支持パイプ14eが設けられる。支持パイプ14eには支持ピン16が挿通される。挿通された支持ピン16の一方の端部が第1ケース11の支持ピン孔11dに挿通され、他方の端部が後述される第2ケース17の支持ピン孔17eに挿通されることによって、可動把持部14は、竿クランプ10の内部において支持される。
【0028】
竿クランプ10は、アーム15をさらに有し、アーム15の一方の端部15aが可動把持部14に連結され、他方の端部15bがロープ30に連結される。アーム15の一方の端部15aは、支持板14dの背面において、屈曲部分14d1より非把持面14b側に立設されている。アーム15は、第2ケース17に設けられた長孔17dに挿通される。
【0029】
ここで、第2ケース17は、第1ケース11の後壁板11aに連結される固定板17aと、アーム15が挿通される長孔17dを有するアーム挿通板17bと、後述されるゴム板扉18が取り付けられる扉取付板17cとを有する。固定板17aとアーム挿通板17bとは、それぞれの面が互いに直角をなすように配置され、アーム挿通板17bと扉取付板17cとは、それぞれの面が互いに直角をなすように配置されている。アーム挿通板17bは、概ね可動把持部14の幅に対応する幅を有する。
【0030】
支持ピン16を第1ケース11の支持ピン孔11dと第2ケース17の支持ピン孔17eとに挿通し、固定板17aを第1ケース11の後壁板11aに固定することによって、可動把持部14は、竿クランプ10の内部において支持されながら、支持パイプ14eを支点として回動するように動作する。可動把持部14の動作及び機能は後述される。
【0031】
固定把持部12の把持面12aと可動把持部14の把持面14a及び非把持面14bとの間には、竿PPを収容可能な竿収容空間20が設けられている。竿収容空間20に竿PPを挿入することによって、竿クランプ10を昆布竿Pに取り付けることができる。把持面12aと把持面14aとの距離は、両者が概ね平行になっているときには、竿PPの直径と概ね等しいことが好ましい。把持面12aと非把持面14bとの距離は、両者が概ね平行になっているときには、竿PPの直径より大きい。
【0032】
竿クランプ10は、さらに、竿収容空間20にアクセス可能な開口部21を有する。開口部21は、第1ケース11の固定扉11cの縁部と、第2ケース17の扉取付板17cの縁部との間に位置する。開口部21には、可撓性の扉18aが設けられることが好ましい。可撓性の扉18aとして、例えば屈曲可能なゴム扉を用いることができる。
【0033】
扉18aは、扉部材18の一部として構成され、扉部材18を構成する基部18bの縁部から開口部21に向かって突出するように設けられている。基部18bは可撓性の部材であってもそうでなくてもよい。図2では、2つの扉18aが設けられているが、これに限定されるものではなく、扉は1つでも3つ以上でもよい。第1ケース11の固定扉11cの縁部と、第2ケース17の扉取付板17cの縁部との間隔は、竿PPの直径より広く設定され、扉18aの縁部と、第1ケース11の固定扉11cの縁部との間隔は、竿PPの直径より狭くなるように設定されている。扉部材18は、支持ピン16が挿通される支持ピン孔18cを基部18bに有する。
【0034】
扉部材18は、基部18bに扉抑え板19を重ね、第2ケース17の扉取付板17cと扉抑え板19によって挟まれた状態で取り付けられる。扉抑え板19は、支持ピン16が挿通される支持ピン孔19cを有する。
【0035】
(ロープ及び巻取りドラム)
竿クランプ10のアーム15の他方の端部15bには、ロープ30が連結されており、ロープ30は、さらに魚船S上に配置された引揚げ部50に連結されている。ロープ30の長さは、特に限定されるものではなく、昆布竿Pの長さに合わせて適宜選択すればよい。ロープ30に代えて、引揚げ部50によって引っ張ったときに昆布竿Pを把持した竿クランプ10の重量に耐えることができる強度を有するもの、例えばチェーンや金属ワイヤなどを、索具として必要に応じて用いることができる。
【0036】
引揚げ部50は、昆布竿Pを把持した竿クランプ10を、竿クランプ10に連結されたロープ30を引っ張ることによって引き揚げることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、引揚げ部50として、モータの回転軸にロープ30の巻取部が設けられた巻き取りドラムを用いることができる。引揚げ部50は、ロープ30を引く部分と動力源との間で動力を任意に伝達したり切断したりすることができるように、例えばクラッチを有することが好ましい。引揚げ部50は、さらに、クラッチによってロープ30を引く部分と動力源との間の動力伝達を切断したときに、竿クランプ10の自重に引かれてロープ30が自由に引き出されるように構成されていることが好ましい。
【0037】
[昆布竿引揚げ装置の使用方法]
次に、昆布竿引揚げ装置1を用いて昆布竿Pを引き揚げる方法を、竿クランプ10の動作及び作用とともに説明する。図3は、昆布竿Pの竿PPを竿クランプ10に出し入れするときの動作及び作用を説明するための模式図である。また、図4は、竿クランプ10による昆布竿Pの把持の動作及び作用を説明するための模式図である。
【0038】
天然昆布Kを採取する場合には、まず、漁船Sから昆布竿Pを海底に降ろし、作業者が昆布竿PのハンドルPHを回して昆布竿Pを回転させることによって、昆布巻き取り部PMに昆布Kを巻き付ける。近年は、浅い海域における良質な天然昆布Kが激減したことから、水深10m前後の海域での漁が一般的である。このような海域においては、漁船Sの上からは確認が難しい水深まで長い昆布竿Pを降ろし、昆布竿Pを船上でひたすら回転させ、複数の昆布Kを同時に巻き付ける。
【0039】
昆布竿Pに複数の昆布Kが巻き付くと昆布竿Pの回転が重たくなるため、その段階で昆布竿Pの竿PPを垂直に立て、ここで竿PPの任意の位置に竿クランプ10を取り付ける。図3を参照すると、竿PPを竿クランプ10の竿収容空間20に出し入れするときの竿クランプ10の動作が示される。
【0040】
竿クランプ10を竿PPに取り付けるときには、竿PPを竿クランプ10の扉18aに押し付ける(図3(a))。竿PPが押し付けられると、扉18aは、固定把持部12と可動把持部14との間の竿収容空間20側に向かって屈曲する(図3(b))。さらに開口部21を介して竿PPを押し込むと、竿PPは竿収容空間20に完全に収まり、扉18aは元の位置に復帰する(図3(c))。このとき、扉18aによって、竿PPが竿クランプ10から外れることを防止することができる。竿PPから竿クランプ10を取り外すときには、竿PPを竿収容空間20から開口部21を介して外に引きだせば、扉18aが外側に向かって屈曲するため、容易に竿PPを取り出すことができる(図3(d))。
【0041】
竿クランプ10を竿PPに取り付けた時点(図3(c)に示される状態)では、ロープ30には張力がかけられておらず、アーム15はロープ30に引かれていない。そのため、可動把持部14は、図4(a)に示される状態、すなわち、非把持面14bが竿PPと概ね平行に離れた位置で対向し、把持面14aが上端に向かって竿PPからの距離が次第に大きくなるように対向している。この状態のときには、把持面14aも非把持面14bも竿PPには押し付けられておらず、竿PPは把持面12aにも押し付けられていない。したがって、図4(a)の状態のときには、把持面12a、把持面14a及び非把持面14bと竿PPとの間には摩擦力が発生せず、竿クランプ10は竿PPを把持しない。
【0042】
取り付け後に竿クランプ10を手放すと、竿クランプ10は、竿PPを把持していない状態であるため、竿PPを竿収容空間20に保持したまま自重で海中に落下する。このとき、ロープ30がクラッチを有する引揚げ部50に連結されている場合には、クラッチを開放しておくことによって、竿クランプ10の落下にともなってロープ30が引揚げ部50から引き出される。
【0043】
昆布竿Pの長さに応じて予め決められたロープ30の長さまで竿クランプ10が落下すると、ロープ30が矢印Aの方向に引っ張られて張力がかかり、アーム15が引かれ、竿クランプ10の可動把持部14が姿勢を変える。すなわち、可動把持部14は、図4(b)に示されるように、支持パイプ14eの位置を支点として回動し、把持面14aが竿PPを押し付ける位置まで移動する。竿PPは把持面14aによって固定把持部12の把持面12aに押し付けられ、そのため、竿PPは、固定把持部12の把持面12aと可動把持部14の把持面14aとによって把持される。なお、このときには竿クランプ10の自重のみによって把持力が生じているため、竿PPは竿クランプ10によって軽く把持された状態となっている。
【0044】
次いで、引揚げ部50のクラッチを接続し、ロープ30を巻き取る。ロープ30の巻き取りが開始されると、昆布竿Pは徐々に引き揚げられるが、引き揚げにともなってロープ30にかかる張力が次第に大きくなる。ロープ30にかかる張力が大きくなるにつれて、支持パイプ16eを支点として可動把持部14を回動させる力が強まり、可動把持部14の把持面14aが昆布竿Pの竿PPを固定把持部12の把持面12aに押し付ける力が大きくなる。そのため、把持面12a及び把持面14aと竿PPとの間に生じる摩擦力が次第に大きくなり、竿クランプ10の把持力が大きくなる。したがって、竿PPは滑ることなく竿クランプ10によって確実に把持され、昆布Kの付着器を岩や石から引き剥がすことができる。
【0045】
昆布Kの付着器が岩や石から引き剥がされると、竿クランプ10に把持された昆布竿Pが軽くなるので、その後は昆布竿Pを手で引き揚げることができる。ロープ30に張力がかからなくなると、可動把持部14は把持面14aが竿PPから離れる方向に回動し、把持面12a、把持面14a及び非把持面14bと竿PPとの間に摩擦力が発生しない状態、すなわち、図4(a)に示される状態になるので、竿クランプ10を竿PPから容易に取り外すことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 昆布竿引揚げ装置
10 竿クランプ
11 第1ケース
11a 後壁板
11b 固定把持部取付板
11c 固定扉
11d 支持ピン孔
12 固定把持部(第1の把持部)
12a 把持面(第1の面)
12b 溝
14 可動把持部(第2の把持部)
14a 把持面(第2の面)
14b 非把持面(第3の面)
14c 溝
14d 支持板
14d1 屈曲部分
14e 支持パイプ
15 アーム
15a、15b 端部
16 支持ピン
17 第2ケース
17a 固定板
17b アーム挿通板
17c 扉取付板
17d 長孔
17e 支持ピン孔
18 扉部材
18a 可撓性扉
18b 基部
18c 支持ピン孔
19 扉抑え板
19c 支持ピン孔
20 竿収容空間
21 開口部
30 ロープ(索具)
50 引揚げ部

S 漁船
P 昆布竿
PH ハンドル
PP 竿
PM 昆布巻き取り部
K 昆布

図1
図2
図3
図4