特開 2023-43239 高所作業装置における伸縮脚装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023043239

(43)【公開日】2023-03-29

(54)【発明の名称】高所作業装置における伸縮脚装置

(51)【国際特許分類】

   E06C 7/06 20060101AFI20230322BHJP

   E06C 1/18 20060101ALI20230322BHJP

   E06C 7/42 20060101ALI20230322BHJP

   E04G 1/30 20060101ALI20230322BHJP

【ＦＩ】

E06C7/06

E06C1/18

E06C7/42

E04G1/30 A

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021150738

(22)【出願日】2021-09-16

(71)【出願人】

【識別番号】000101662

【氏名又は名称】アルインコ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100077791

【弁理士】

【氏名又は名称】中野 収二

(72)【発明者】

【氏名】水野 武史

【テーマコード（参考）】

2E044

【Ｆターム（参考）】

2E044AA01

2E044BA05

2E044BC04

2E044BC07

2E044BC23

2E044CA04

2E044CB03

2E044CC01

(57)【要約】

【課題】高所作業装置における伸縮脚装置を提供する。
【解決手段】主脚(12)に摺動自在に挿入された伸縮脚(14)を係脱自在に係止固定するロック機構(15)を下段踏桟(13c)の近傍に設け、前記ロック機構の係脱を行う操作機構(18)を上段踏桟(13b)の近傍に設け、両機構を連動連結する連動機構(19)は、アウターケーブル(36)にインナーケーブル(37)を摺動自在に挿通した屈曲自在な伝動ケーブル(35)により構成されており、伝動ケーブルの長さに関して、操作機構に連結された操作側端部(35a)と、ロック機構に連結された作動側端部(35b) の間を延びる中間部(35c)は、脚体の裏側(R)に位置する主脚(12)の外側面に沿う直線状態として配置され、該中間部におけるアウターケーブルは、主脚(12)の外側面に固着された長尺の保持具(40)により屈曲不能に保持されている。
【選択図】図９

【特許請求の範囲】

【請求項1】

並設された断面溝形の主脚(12)に上下複数段の踏桟(13)を架設することにより梯子状の脚体(11)を形成し、一対の脚体を対向配置した状態で開閉自在に枢結して成る高所作業装置であり、
一対の脚体の相互に対向する側を裏側(R)とし、その反対側をユーザが昇降する表側(F)とする構成とされ、
前記主脚(12)は、該主脚に摺動自在に挿入された伸縮脚(14)と、前記伸縮脚を係脱自在に係止固定するロック手段を備えたロック機構(15)と、前記ロック手段を作動させる操作手段を備えた操作機構(18)と、前記操作手段とロック手段を連動連結する連動機構(19)を設けることにより、伸縮脚装置(20)を構成したものにおいて、
前記ロック機構(15)は、下段側の踏桟(15c)の両端近傍部に設けられ、前記操作機構(18)は、上段側の踏桟(13b)の両端近傍部に設けられており、
前記連動機構(19)は、可撓性チューブから成るアウターケーブル(36)にワイヤーから成るインナーケーブル(37)を摺動自在に挿通した屈曲自在な伝動ケーブル(35)により構成され、前記伝動ケーブルの下端近傍部により作動側端部(35b)を形成すると共に、上端近傍部により操作側端部(35a)を形成し、
前記作動側端部(35b)は、アウターケーブルの下端部(36b)を前記ロック機構(15)の固定部に固定すると共に、インナーケーブルの下端部(37b)を前記ロック手段に固着し、
前記操作側端部(35a)は、アウターケーブルの上端部(36a)を前記操作機構(18)の固定部に固定すると共に、インナーケーブルの上端部(37a)を前記操作手段に固着し、
前記伝動ケーブル(35)の作動側端部(35b)と操作側端部(35a)の間を延びる中間部(35c)は、前記脚体の裏側(R)に位置する主脚(12)の外側面に沿う直線状態として配置され、該中間部におけるアウターケーブルは、主脚(12)の外側面に固着された長尺の保持具(40)により屈曲不能に保持されて成ることを特徴とする高所作業装置における伸縮脚装置。

【請求項2】

前記保持具(40)は、前記脚体の裏側(R)に位置する主脚(12)の外側面に重ねられた状態で固着具により固着される帯状板部(41)と、前記主脚の外側面の前記踏桟に臨む縁部に沿って前記帯状板部から断面ほぼＵ形に折曲された保持溝(42a)を一体に形成しており、前記保持溝に前記伝動ケーブルの中間部(35c)におけるアウターケーブルを嵌入して成ることを特徴とする請求項１に記載の高所作業装置における伸縮脚装置。

【請求項3】

前記ロック機構(15)は、下段側の踏桟(13c)の端部に設けられたハウジング(22)と、前記ハウジングの内部に回動自在に軸支された状態で前記伸縮脚(14)に対して正転回動により係止し逆転回動により係止解除するロック体(23)と、前記ロック体を正転方向に付勢するロックスプリング(27)と、引上げ力を受けることにより前記ロック体を逆転方向に駆動するように該ロック体に横軸部(29a)を介して連動連結された中継部材(29)により構成され、前記伝動ケーブルの作動側端部(35b)におけるアウターケーブルの下端部(36b)を前記ハウジングに固定すると共に、インナーケーブルの下端部(37b)を前記中継部材に固着しており、
前記中継部材(29)は、前記横軸部(29a)の近傍部からハウジング(22)を挿通して外部に突出するロック解除ボタン(29E)を突設しており、ハウジング(22)の外部からロック解除ボタン(29E)を介して中継部材(29)を押動したとき、前記ロック体(23)が逆転方向に回動させられるように構成して成ることを特徴とする請求項１又は２に記載の高所作業装置における伸縮脚装置。

【請求項4】

前記操作機構(18)を設けた上段側の踏桟(13b)は、前記脚体の裏側(R)に臨む背面壁(30a)と表側に臨む正面壁(30b)と、上壁(30c)及び下壁(30d)により形成された中空型材から成る踏桟本体(30)を構成し、
前記操作機構(18)は、前記踏桟本体(30)の長手方向に嵌挿されると共に上下方向に回動自在に枢支された操作体(32)から前記下壁に連ねて前記背面壁から突出するように延設された操作レバー(32a)と、前記背面壁(30a)に取付けられた固定体(33)と、前記固定体に臨んで前記操作レバー(32a)に取付けられた移動体(34)により構成され、
前記伝動ケーブル(35)の操作側端部(35a)におけるアウターケーブルの上端部(36a)を前記固定体(33)に固定すると共に、インナーケーブルの上端部(37a)を前記固定体の案内手段(33b)を介して下向きに屈曲させた状態で前記移動体(34)に固着して成ることを特徴とする請求項１、２又は３に記載の高所作業装置における伸縮脚装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、脚立や、作業台や、梯子等の高所作業装置において梯子状に形成された脚体の伸縮脚装置に関する。

【背景技術】

【0002】

従来の高所作業装置は、例えば、脚立の場合、一対の脚体を対向配置し、両脚体の上端部を相互に枢結手段で枢結することにより、開閉可能に構成され、開いた状態において係脱自在な開き止め手段を係止することにより、高所作業のために供される。

【0003】

脚体は、それぞれ左右に並設された一対の主脚に上下複数段の踏桟を架設することにより梯子状に形成されている。

【0004】

前記主脚は、伸縮脚装置を構成したものが提供されている。伸縮脚装置は、主脚に摺動自在に挿入された伸縮脚と、該伸縮脚を係止固定する係脱自在なロック手段を設けたロック機構と、前記ロック手段を作動させる操作手段を備えた操作機構を設けている。

【0005】

伸縮脚装置は、伸縮脚を伸長することにより脚体の全長を長くすることで、より高い位置での高所作業を可能にする他、複数の主脚における伸縮脚の伸長姿勢の長さを調節することにより、地面の不陸に対応した設置を可能にする利点がある。

【0006】

一般的に、ロック手段は、主脚の下端近傍部に設けられ、伸縮脚に列設されたラック歯に対して、正転回動することにより係止し、逆転回動することにより係止解除するように回動自在に軸支されたロック体により構成されており、常時は、ロック体をスプリングにより正転方向に弾発付勢することにより係止状態を保持させている。そこで、係止解除する場合は、ユーザが指先でロック体のレバー片を操作し、スプリングに抗して逆転方向に回動させることが必要である。

【0007】

ところが、レバー片を操作することによりロック体をスプリングに抗して回動させる構成は、ユーザがその都度、脚立を持ち上げたり、自らが低い姿勢をとらなければならない等、煩雑な作業が求められる。しかも、このような煩雑な作業は、複数本（通常４本）の主脚の全てについて行う必要がある。

【0008】

そこで、高所作業装置における伸縮脚装置のロック機構は、上方位置から操作可能とする遠隔操作機構を設けることが望ましく、既に提案されているところである。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0009】

【特許文献1】特許第６８９５７９８号公報

【特許文献2】特許第６８６０９８７号公報

【特許文献3】特許第６７６１６８９号公報

【特許文献4】特開２００５－６１０３３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0010】

遠隔操作機構を設けた高所作業装置における伸縮脚装置のロック機構は、本出願人において提案しているところである（特許文献１～３）。

【0011】

しかしながら、このような遠隔操作機構を備えた高所作業装置を提供する際には、可及的部品点数が少ないこと、新たに必要とされる部品が低コストであること、その上で、高い安全性を確保できることが必要である。そこで、これらの点を勘案すると、下方位置のロック機構と、上方位置の操作機構との間に設けられる連動機構は、特許文献１～３により提案した比較的大掛かりな構造とするよりも、自転車等の車両や、機械装置において動力伝達のために配索されている伝動ケーブルを利用することが望ましい。

【0012】

この種の伝動ケーブルは、可撓性チューブから成るアウターケーブルにワイヤーから成るインナーケーブルを摺動自在に挿通した屈曲自在な索条により構成されている。従って、取付位置の制約がなく、自由な配索経路の形成が可能であり、しかも、取付作業が簡単であり、更に、部品コストが低いという利点がある。

【0013】

この点に関して、特許文献４によれば、伸縮脚装置のロック機構のための遠隔操作機構において伝動ケーブルを利用することが提案されている。

【0014】

特許文献４は、主脚に伸縮脚を摺動自在に挿入し、主脚の下端部にロック体を軸支し、ロック体のレバー片を下段踏桟の上に臨ませた従来の伸縮脚装置の基本的構成に対して、天板の近傍に操作レバーを設け、操作レバーとロック体のレバー片を伝動ケーブルにより連繋させ、操作レバーを引くことによりロック体を回動させ、伸縮脚の係止を解除するように構成している。

【0015】

しかしながら、特許文献４は、伝動ケーブルの配索経路を脚部の内部に設けるために、わざわざ主脚の内側面（踏桟に臨む側面）に断面Ｃ形の補助枠を形成した型材を成形し、補助枠の内部に伝動ケーブルを配索している。その結果、主脚は、通常よりも２倍程度も太く形成されており、製造コストが増すばかりでなく、踏桟が短くなるので、ユーザが足を載せるための踏面が小さくなり、安全性の点にも問題がある。

【0016】

従来から指摘されているように、伝動ケーブルにおいて、インナーケーブルの操作性は、アウターケーブルの長手方向の圧縮量により決定される特性がある。そして、この点の特性は、伝動ケーブルの配索経路の影響を受けるという問題がある。ところが、特許文献４は、補助枠の広い内部空間に、伝動ケーブルを自由に屈曲し得る状態で配索しており、伝動ケーブルの特性が考慮されていないという問題がある。

【0017】

図１０は、距離Ｌだけ上下に離間して配置された操作部Ａと作動部Ｂの間に伝動ケーブル１が配索され、操作部Ａを操作することにより、伝動ケーブル１を介して、作動部Ｂを作動させる構成に関して、配索経路により生じる問題を示している。

【0018】

図において、伝動ケーブル１は、アウターケーブル２の上端部２ａを操作部Ａの近傍に固定し、下端部２ｂを作動部Ｂの近傍に固定した状態で、アウターケーブル２に挿通されたインナーケーブル３の挿出端のうち、上端部３ａを操作部Ａに固着し、下端部３ｂを作動部Ｂに固着している。

【0019】

公知の通り、インナーケーブル３は、アウターケーブル２の内部に遊びを有して摺動自在に挿通されており、操作部Ａによりインナーケーブル３の上端部３ａを牽引したとき、同時に、下端部３ｂにより作動部Ｂを好適に牽引駆動させるためには、インナーケーブル３に所定の張力を保持させていることが必要である。この際、インナーケーブル３の張力は、アウターケーブル２を長さ方向に圧縮した状態にすると増加し、圧縮を緩めた状態にすると低下する。つまり、アウターケーブル２の長さにより、インナーケーブル３の張力と遊びのバランスが決定される。

【0020】

図１０は、アウターケーブル２の全長（固定された両端部を含む全長）と、インナーケーブル３の有効長さ（操作部Ａと作動部Ｂに固着された両端部を含む全長）が同一とされた同一条件の下で、配索経路が変化した場合を示している。実線で示すで伝動ケーブル１Ａのアウターケーブル２は、長さ方向に所定量だけ圧縮された状態で全長Ｌ１を保持している。これに対して、鎖線で示す伝動ケーブル１Ｂは、中間部を湾曲することにより、アウターケーブル２が圧縮を緩められた状態で全長Ｌ２を保持している。従って、Ｌ１＜Ｌ２の相違が生じている。

【0021】

実線で示す伝動ケーブル１Ａは、アウターケーブル２が所定量だけ圧縮され、インナーケーブル３の遊びが適量とされているので、上端部３ａを牽引したとき、下端部３ｂを同時に連動させることができ、操作性に問題はない。

【0022】

これに対して、鎖線で示す伝動ケーブル１Ｂは、アウターケーブル２が圧縮を緩められ、これによりインナーケーブル３の遊びが増大しているので、上端部３ａを牽引したとき、下端部３ｂが同時に連動しなくなり、操作性に問題が生じる。しかも、アウターケーブル２の中間部が湾曲ないし屈曲しているため、インナーケーブル３の摺動抵抗が増し、その結果、大きな操作力が必要となり、ケーブルの耐久性が低下する。

【0023】

特許文献４の場合、伝動ケーブルは、主脚に一体成形された補助枠の内部空間に配索されているので、外力等によりアウターケーブルの配索経路が変わることはないが、脚立を製造する組立工場において、工員が補助枠の内部空間に伝動ケーブルを装入する際に、アウターケーブルの配索経路について、時には直線状とされ、時には弧状に屈曲される等、相違したものが製品として供給される可能性がある。

【0024】

上記の問題は、自転車等の車両や、機械装置において動力伝達のために配索された伝動ケーブルの場合、アウターケーブルの端部固定金具にねじ等による調節手段を設けることにより解決されている。

【0025】

しかしながら、本件の伸縮脚装置は、上述のようにユーザが煩雑な作業を強いられないようにすることを本旨としているのであるから、アウターケーブルの端部固定金具の調節手段による調節をユーザに求めることは、適切でない。

【0026】

本発明は、上記のような問題を解決した高所作業装置における伸縮脚装置を提供することを課題としている。

【課題を解決するための手段】

【0027】

そこで、本発明が手段として構成したところは、並設された断面溝形の主脚に上下複数段の踏桟を架設することにより梯子状の脚体を形成し、一対の脚体を対向配置した状態で開閉自在に枢結して成る高所作業装置であり、一対の脚体の相互に対向する側を裏側とし、その反対側をユーザが昇降する表側とする構成とされ、前記主脚は、該主脚に摺動自在に挿入された伸縮脚と、前記伸縮脚を係脱自在に係止固定するロック手段を備えたロック機構と、前記ロック手段を作動させる操作手段を備えた操作機構と、前記操作手段とロック手段を連動連結する連動機構を設けることにより、伸縮脚装置を構成したものにおいて、前記ロック機構は、下段側の踏桟の両端近傍部に設けられ、前記操作機構は、上段側の踏桟の両端近傍部に設けられており、前記連動機構は、可撓性チューブから成るアウターケーブルにワイヤーから成るインナーケーブルを摺動自在に挿通した屈曲自在な伝動ケーブルにより構成され、前記伝動ケーブルの下端近傍部により作動側端部を形成すると共に、上端近傍部により操作側端部を形成し、前記作動側端部は、アウターケーブルの下端部を前記ロック機構の固定部に固定すると共に、インナーケーブルの下端部を前記ロック手段に固着し、前記操作側端部は、アウターケーブルの上端部を前記操作機構の固定部に固定すると共に、インナーケーブルの上端部を前記操作手段に固着し、前記伝動ケーブルの作動側端部と操作側端部の間を延びる中間部は、前記脚体の裏側に位置する主脚の外側面に沿う直線状態として配置され、該中間部におけるアウターケーブルは、主脚の外側面に固着された長尺の保持具により屈曲不能に保持されて成る点にある。

【0028】

本発明の好ましいい実施形態において、前記保持具は、前記脚体の裏側に位置する主脚の外側面に重ねられた状態で固着具により固着される帯状板部と、前記主脚の外側面の前記踏桟に臨む縁部に沿って前記帯状板部から断面ほぼＵ形に折曲された保持溝を一体に形成しており、前記保持溝に前記伝動ケーブルの中間部におけるアウターケーブルを嵌入している。

【0029】

前記ロック機構は、下段側の踏桟の端部に設けられたハウジングと、前記ハウジングの内部に回動自在に軸支された状態で前記伸縮脚に対して正転回動により係止し逆転回動により係止解除するロック体と、前記ロック体を正転方向に付勢するロックスプリングと、
引上げ力を受けることにより前記ロック体を逆転方向に駆動するように該ロック体に横軸部を介して連動連結された中継部材により構成され、前記伝動ケーブルの作動側端部におけるアウターケーブルの下端部を前記ハウジングに固定すると共に、インナーケーブルの下端部を前記中継部材に固着しており、前記中継部材は、前記横軸部の近傍部からハウジングを挿通して外部に突出するロック解除ボタンを突設しており、ハウジングの外部からロック解除ボタンを介して中継部材を押動したとき、前記ロック体が逆転方向に回動させられるように構成している。

【0030】

前記操作機構を設けた上段側の踏桟は、前記脚体の裏側に臨む背面壁と表側に臨む正面壁と、上壁及び下壁により形成された中空型材から成る踏桟本体を構成し、前記操作機構は、前記踏桟本体の長手方向に嵌挿されると共に上下方向に回動自在に枢支された操作体から前記下壁に連ねて前記背面壁から突出するように延設された操作レバーと、前記背面壁に取付けられた固定体と、前記固定体に臨んで前記操作レバーに取付けらられた移動体により構成され、前記伝動ケーブルの操作側端部におけるアウターケーブルの上端部を前記固定体に固定すると共に、インナーケーブルの上端部を前記固定体の案内手段を介して下向きに屈曲させた状態で前記移動体に固着している。

【発明の効果】

【0031】

本発明によれば、主脚１２に摺動自在に挿入された伸縮脚１４と、前記伸縮脚１４を係止固定する係脱自在なロック機構１５と、前記ロック機構を作動させる操作機構１８と、前記操作機構とロック機構を連動連結する連動機構１９により構成された伸縮脚装置２０において、前記ロック機構１５を下段側の踏桟の両端近傍部に設け、前記操作機構１８を上段側の踏桟の両端近傍部に設けており、前記連動機構１９を介して遠隔操作を可能としているので、使い勝手の良い伸縮脚装置２０を提供することができる。

【0032】

この際、連動機構１９は、可撓性チューブから成るアウターケーブル３６にワイヤーから成るインナーケーブル３７を摺動自在に挿通した屈曲自在な伝動ケーブル３５により構成しているので、組み立てが容易であり、低コストであるという利点がある。

【0033】

そして、伝動ケーブル３６は、操作機構１８に連結される上端近傍部の操作側端部３５ａと、ロック機構１５に連結される下端近傍部の作動側端部３５ｂの間において、中間部３５ｃを脚体１１の裏側Ｒに位置する主脚１２の外側面に沿う直線状態として配置し、該中間部３５ｃのアウターケーブル３６を主脚１２の外側面に固着された長尺の保持具４０により屈曲不能に保持しているので、連動操作性と摺動良好性に優れた連動機構１９を提供することができる。

【0034】

特に、伝動ケーブル３５の中間部３５ｃは、その全体長さにわたり直線状態を保持されているので、長期間の繰り返し作動により、アウターケーブル３６の圧縮に緩みを生じることはなく、上述の連動操作性や摺動良好性を低下することはない。しかも、伝動ケーブル３５の中間部３５ｃは、主脚１２の裏側Ｒに配置されているので、ユーザが脚体１１を昇降する際の邪魔になることはなく、更に、異物の衝突等も受けることがないので、外力等により直線姿勢から屈曲姿勢される姿勢変更を生じることはなく、この点においても、上述の連動操作性や摺動良好性を低下することはない。

【図面の簡単な説明】

【0035】

【図1】高所作業装置の１例としての脚立を示しており、従来技術に係る伸縮脚装置を備えた脚立を示す斜視図である。

【図2】本発明の１実施形態に関して、脚立を構成する一対の脚体のうち、一方の脚体の裏側を示す斜視図である。

【図3】実施形態に関して、伸縮脚装置におけるロック機構を分解状態で示す斜視図である。

【図4】ロック機構の作用に関して、ロック状態を示す断面図である。

【図5】ロック機構の作用に関して、アンロック状態を示す断面図である。

【図6】実施形態に関して、（Ａ）は脚体の一方の主脚を裏側から示す斜視図、（Ｂ）は上段側の踏桟に設けた操作体を示す断面図、（Ｃ）は操作体の操作レバーを操作した状態を示す断面図である。

【図7】上段側の踏桟に設けた操作機構に関して、取付けられる前の状態の固定体と移動体を示す斜視図である。

【図8】操作機構の作用に関して、（Ａ）は操作レバーを操作していない状態を示す斜視図、（Ｂ）は操作レバーを操作した状態を示す斜視図である。

【図9】伝動ケーブルの中間部を保持する保持具に関して、（Ａ）は脚体の一方の主脚を裏側から示す斜視図、（Ｂ）は主脚に保持具が取付けられた部分を示す断面図である。

【図10】伝動ケーブルの特性と問題点を示す説明図である。

【発明を実施するための形態】

【0036】

以下図面に基づいて本発明の代表的な実施形態を詳述する。

【0037】

（高所作業装置）

【0038】

図１は、高所作業装置の１例として、本発明を実施するための従来の脚立を示しており、一対の脚体１１、１１を対向配置した状態で上端部を相互に枢結手段で枢結することにより、開閉可能に構成されており、開いた状態において係脱自在な開き止め手段を係止することにより、高所作業のために供される。

【0039】

このため、一対の脚体１１、１１の相互に対向する側を裏側Ｒとし、その反対側を作業者としてのユーザが昇降する表側Ｆとして、以下に説明する。

【0040】

脚体１１は、左右に並設された一対の主脚１２、１２に上下複数段の踏桟１３を架設することにより梯子状の枠体を構成している。図例の場合、中段踏桟１３ａの上下に各１本の上段踏桟１３ｂと下段踏桟１３ｃを配設した３段構成とされているが、複数本の上段踏桟１３ｂと下段踏桟１３ｃを配設した４段以上の構成とされたものでも良い。

【0041】

伸縮脚装置を構成するため、主脚１２には伸縮脚１４が摺動自在に挿入されており、伸縮脚１４をほぼ全長にわたり主脚１２の内部に挿入した格納姿勢と、主脚１２から最も長く突出させた最大伸長姿勢と、両姿勢の間で任意に伸縮された姿勢において、係脱自在に係止固定するロック機構１５が設けられている。ロック機構１５は、最下段の下段踏桟１３ｃの両端近傍部に設けられ、係止によるロック状態で伸縮脚１４を摺動不能に固定し、係止解除によるアンロック状態で伸縮脚１４を摺動自在とする。

【0042】

（本発明の実施形態）
図２ないし図９は、本発明の１実施形態を示している。

【0043】

前記主脚１２と、伸縮脚１４と、踏桟１３は、それぞれアルミニウムの押出材により形成されている。主脚１２は、踏桟１３に臨む内側に向けて開口する断面溝形の溝型部材により形成され、図９（Ｂ）に示すように、溝部の溝底となる底壁１２ａと両側壁１２ｂ、１２ｃを備えており、一方の側壁１２ｂが前記表側Ｆに臨まされ、他方の側壁１２ｃが前記裏側Ｒに臨まされる。両側壁１２ｂ、１２ｃは、溝開口の両側に向けて折曲された内向きリブ１２ｄ、１２ｄを一体に形成している。図示省略しているが、主脚１２の下端部にはガイド筒体が固着されており、前記伸縮脚１４は、ガイド筒体を挿通して主脚１２の内部に摺動自在に嵌挿されている。

【0044】

図２に示すように、上下複数段の踏桟１３は、それぞれ、主脚１２の両側壁１２ｂ、１２ｃに固着されたブラケット金具１６のアーム部に取付け支持されている。

【0045】

前記伸縮脚１４は、断面筒形とされたアルミニウム製の型材により形成されており、図４及び図５に示すように、主脚１２に対する摺動方向に多数のラック歯１７ａを設け、該ラック歯を主脚１２の溝開口に臨ませている。具体的には、伸縮脚１４の溝形通路に、ラック歯１７ａを備えた帯板状のラック１７を装入し固着している。

【0046】

（伸縮脚装置）
そこで、図２に示すように、前記伸縮脚１４と、ロック機構１５と、ロック機構１５を作動させる操作機構１８と、前記操作機構１８とロック機構１５を連動連結する連動機構１９により、伸縮脚装置２０が構成されている。この際、ロック機構１５が下段踏桟１３ｃの端部近傍に設けられているのに対して、操作機構１８は、上段踏桟１３ｂに設けられており、連動機構１９は、主脚１２の裏側Ｒに沿って設けられている。

【0047】

（ロック機構）
図３ないし図５は、ロック機構１５を示している。ロック機構１５は、前記下段踏桟１３ｃを主脚１２に連結するブラケット金具１６の側板部の間に装入され、貫通ボルト２１により固定されるハウジング２２に内装されている。

【0048】

ハウジング２２の内部には、前記貫通ボルト２１を支軸２１ａとしてロック体２３が回動自在に軸支されており、ロック体２３は、斜め下向きに延設されたロックアーム２３ａの先端部に複数のロック歯２３ｂを設けている。

【0049】

ロック体２３は、ロックアーム２３ａをラック１７に近接させる方向に回動したとき（以下、この回動方向を「正転方向」という。）ロック歯２３ｂをラック歯１７ａに係止するロック動作を行い、ロックアーム２３ａをラック１７から離反させる方向に回動したとき（以下、この回動方向を「逆転方向」という。）ロック歯２３ｂをラック歯１７ａから離脱するアンロック動作を行う。この際、支軸２１ａに外挿されるコイルスプリングから成るロックスプリング２７が設けられている。ロックスプリング２７は、一端部をロック体２３のＶ溝２３ｄに弾接し、他端部をハウジング２２又は主脚１２に弾接させることにより、圧縮されており、これにより、ロック体２３は、ロックスプリング２７により正転方向に弾発付勢され、常時、ロック動作を行い、ロックスプリング２７に抗して逆転方向に回動したときにアンロック動作を行うように構成されている。

【0050】

ハウジング２２には、ロック体２３がロック状態とアンロック状態にあることを表示するインジケーター手段２４が設けられている。インジケーター手段２４は、ロック体２３に連動連結されるボタン２５により構成され、ボタン２５の尾端部の押動部２５ａをロックアーム２３ａの作動片２３ｃに当接させ、スプリング２６より、押動部２５ａを作動片２３ｃに向けて弾発付勢されている。

【0051】

図４に示すように、ロック体２３がロック動作を行っているとき、ボタン２５は、押動部２５ａを作動片２３ｃに追従させた位置、つまり、ロック位置に移動されている。図５に示すように、ロック体２３がアンロック動作を行うと、作動片２３ｃが押動部２５ａを押動することにより、ボタン２５をハウジング２２の外部に突出させた位置、つまり、アンロック位置に移動される。

【0052】

図示実施形態の場合、ボタン２５のロック位置は、該ボタンの先端がハウジング２２から大きく突出しない（図例の場合は先端面がハウジングの外面とほぼ面一となる）位置とされ、アンロック位置は、該ボタンの先端がハウジング２２から大きく突出した位置とされている。

【0053】

これにより、インジケーター手段２４は、ユーザがボタン２５の位置を視認することにより、ロック機構１５がロック状態とアンロック状態の何れの状態にあるかを確認できる安全確認装置を構成している。

【0054】

（運動伝達機構）
後述する連動機構１９の引き上げ力を受けたとき、ロック体２３をロック状態から好適に逆転方向に回動させてアンロック状態を可能にするため、ハウジング２２の内部には、運動伝達機構が設けられている。

【0055】

ロック体２３には、ロックアーム２３ａの反対方向に向けて、斜め上向きに延びるアンロックアーム２８が延設されており、該アンロックアーム２８を引き上げると、ロック体２３が逆転方向に回動するように構成されており、この引き上げを行わせるための中継部材２９が設けられている。

【0056】

中継部材２９は、上部に後述の連動機構１９が連結される連結筒部２９ａを設け、下部に設けられた横軸部２９ｂを介してアンロックアーム２８に回動自在に枢結されている。

【0057】

これにより、図５に示すように、連動機構１９に上向きの駆動力を与えると、中継部材２９がアンロックアーム２８を好適に引き上げ、ロック体２３を逆転方向に回動する。この状態から、連動機構１９を上向きの駆動力から解放すると、図４に示すように、ロック体２３がロックスプリング２７により正転方向に回動され、その際、アンロックアーム２８と連動機構１９の間に位置する中継部材２９が姿勢を変更しながら好適に連動機構１９を引き下げる。

【0058】

前記横軸部２９ａを介してロック体２３に連動連結された中継部材２９は、前記横軸部２９ａの近傍部からハウジング２２の窓孔２２ｂを挿通して外部に突出するロック解除ボタン２９Ｅを突設している。そこで、ハウジング２２の外部からロック解除ボタン２９Ｅを押動すると、中継部材２９の横軸部２９ａがアンロックアーム２８を図示時計針方向に回動させることにより、前記ロック体(23)が逆転方向に回動させられ、アンロック動作を行うように構成されている。

【0059】

図４及び図５に示すように、中継部材２９のロック解除ボタン２９Ｅは、ロック体２３がロック動作を行っているとき、窓孔２２ｂから大きく突出したロック位置に移動され（図４）、ロック体２３がアンロック動作を行っているとき、前記ロック位置から後退したアンロック位置に移動される（図５）。これにより、ロック解除ボタン２９Ｅは、ユーザがハウジング２２の外部からその位置を視認することにより、ロック体２３がロックとアンロックの何れの状態にあるかを示すインジケーター手段２４ａとして機能する。

【0060】

従って、このように、ロック解除ボタン２９Ｅによりインジケーター手段２４ａを構成する場合は、上述のボタン２５により構成されたインジケーター手段２４は、必ずしも設ける必要はない。

【0061】

（操作機構）
図６ないし図８は、操作機構１８を示しており、操作機構１８は、上段踏桟１３ｂに設けられている。

【0062】

図６に示すように、上段踏桟１３ｂは、前記脚体１１の裏側Ｒに臨む背面壁３０ａと、表側Ｆに臨む正面壁３０ｂと、上壁３０ｃ及び下壁３０ｄにより形成された中空型材から成
る踏桟本体３０により構成されており、前記中空型材の内部には、背面壁３０ａと下壁３０ｄの間に位置して開口するスリットを備えたヒンジ空洞部３１が形成されている。

【0063】

そこで、操作機構１８は、図６及び図７に示すように、前記踏桟本体３０に回動自在に枢支された操作体３２の操作レバー３２ａと、前記背面壁３０ａに取付けられた固定体３３と、該固定体３３に臨んで前記操作レバー３２ａに取付けられた移動体３４により構成されている。

【0064】

前記操作体３２は、前記ヒンジ空洞部３１の内部の枢支部３１ａを中心として回動自在に枢支されており、操作体３２に一体形成された板状の操作レバー３２ａを背面壁３０ａの下側で前記裏側Ｒに延設している。従って、ユーザは、表側Ｆから踏桟本体３０を握持する手の指を裏側Ｒに回すことにより、指先で操作レバー３２ａを上下方向に揺動させることができる。

【0065】

この際、操作体３２は、ヒンジ空洞部３１の内部で回動を規制するストッパ３２ｂを設けており、図６（Ａ）に示す操作レバー３２ａの上動停止位置と、図６（Ｂ）に示す操作レバー３２ａの下動停止位置が定められるように構成している。

【0066】

（連動機構）
図２及び図６（Ａ）に示すように、伝動ケーブル３５により構成されている。伝動ケーブル３５は、可撓性チューブから成るアウターケーブル３６にワイヤーから成るインナーケーブル３７を摺動自在に挿通した屈曲自在な索条により構成され、インナーケーブル３７はアウターケーブル３６の内部で摺動自在な遊びを形成している。

【0067】

伝動ケーブル３５は、上端近傍部により操作側端部３５ａを形成し、下端近傍部により作動側端部３５ｂを形成しており、操作側端部３５ａと作動側端部３５ｂの間を延びる部分により中間部３５ｃを形成している。

【0068】

そこで、操作側端部３５ａは、図７及び図８に示すように、前記操作機構１８に連結され、作動側端部３５ｂは、図３ないし図５に示すように、前記ロック機構１５に連結されており、中間部３５ｃは、主脚１２の裏側Ｒに沿って配索されている。

【0069】

アウターケーブル３６の上下端部は、裸のままでも良いが、図示のように、硬質材から成る固定チューブを被覆することにより上端部３６ａと下端部３６ｂを構成することが好ましく、インナーケーブル３７は、アウターケーブル３６から挿出された挿出端部により上端部３７ａと下端部３７ｂを構成している。

【0070】

（伝動ケーブルの操作側端部と操作機構）
図７及び図８に示すように、伝動ケーブル３５の操作側端部３５ａは、主脚１２の裏側Ｒに配置された中間部３５ｃから上段踏桟１３ｂを構成する踏桟本体３０の背面壁３０ａに向けて屈曲され、アウターケーブル３６の上端部３６ａを固定体３３の筒状のボス部３３ａに挿入固定されている。

【0071】

アウターケーブル３６の上端部３６ａから挿出されたインナーケーブル３７の上端部３７ａは、固定体３３の内部において、ピンの軸部（図示せず）により形成された案内手３３ｂを介して下向きに屈曲された後、移動体３４に固着されている。

【0072】

インナーケーブル３７の上端部３７ａには、タイコと称される分厚い円盤から成る連結具３８が固着されており、移動体３４の側部に開口する円筒孔３４ａに回動自在に挿入されている。この際、連結具３８の外側に位置するインナーケーブル３７の上端部３７ａは、移動体３４の上面から円筒孔３４ａに連通して形成されたスリット３４ｂに挿通されている。

【0073】

これにより、図８（Ａ）に示すように、操作レバー３２ａが上動して停止させられた上動停止位置から、図８（Ｂ）に示すように、操作レバー３２ａを下動停止位置まで下動させると、インナーケーブル３７の上端部３７ａが所定の移動量だけ牽引される。

【0074】

（伝動ケーブルの作動側端部とロック機構）
図３ないし図５に示すように、伝動ケーブル３５の作動側端部３５ｂは、主脚１２の裏側Ｒに配置された中間部３５ｃからハウジング２２の上部に向けて少しだけ偏位させられ、アウターケーブル３６の下端部３６ｂをハウジング２２の筒状のボス部２２ａに挿入固定されている。

【0075】

アウターケーブル３６の下端部３６ｂから挿出されたインナーケーブル３７の下端部３７ｂは、ハウジング２２の内部において、ボス部２２ａの直下に位置する中継部材２９の連結筒部２９ａに固着されている。

【0076】

インナーケーブル３７の下端部３７ｂには、タイコと称される分厚い円盤から成る連結具３９が固着されており、連結筒部２９ａ両側部に開口する円筒孔２９ｃに回動自在に挿入されている。この際、連結具３９の外側に位置するインナーケーブル３７の下端部３７ｂは、連結筒部２９ａの上面から円筒孔２９ｃに連通して形成されたスリット２９ｄに挿通されている。

【0077】

上述のとおり、ロック体２３は、ロック歯２３ｂをラック歯１７ａに係止させるように、ロック復帰付勢手段２７により正転方向に付勢されているので、常時は、図４に示すように、インナーケーブル３７の下端部３７ｂにアンロックアーム２８及び中継部材２９を介して下向きの牽引力が与えられている。従って、この状態において、操作機構１８は、図８（Ａ）に示すように、操作レバー３２ａが上動停止位置に保持されている。

【0078】

この状態から、図８（Ｂ）に示すように、ユーザが手指により、操作レバー３２ａを下動停止位置まで傾動させると、インナーケーブル３７の上端部３７ａが牽引されるので、図５に示すように、下端部３７ｂが中継部材２９及びアンロックアーム２８を引き上げ、ロック体２３をロック復帰付勢手段２７に抗して逆転方向に回動させ、ロック歯２３ｂをラック歯１７ａから離脱させる。

【0079】

そこで、操作レバー３２ａをユーザの手指から解放すると、ロック体２３がロック復帰付勢手段２７により正転方向に回動するので、これに追従して、インナーケーブル３７の下端部３７ｂが下向きに牽引され、操作レバー３２ａも図８（Ａ）に示す上動停止位置に復帰する。

【0080】

インナーケーブル３７の下端部３７ｂと、ロック体２３のアンロックアーム２８の間に介装された中継部材２９は、図４及び図５に示すように、連結筒部２９ａと連結具３９の相互回動と、横軸部２９ｂとアンロックアーム２８の相互回動を介して、該中継部材２９の傾斜姿勢を変更するので、インナーケーブル３７の下端部３７ｂは、常に上下方向の直線姿勢を保持することが可能である。

【0081】

（伝動ケーブルの中間部）
図６及び図９に示すように、伝動ケーブル３５の中間部３５ｃは、脚体１１の裏側Ｒに位置する主脚１２の側壁１２ｃの外側面に沿う直線状態として配置され、中間部３５ｃにおけるアウターケーブル３６は、前記主脚１２の側壁１２ｃに固着された長尺の保持具４０により屈曲不能な状態で保持されている。

【0082】

この際、伝動ケーブル３５の長さは、配索経路の長さとの関係で決定される。アウターケーブル３６の配線経路は、中間部３５ｃに対応する直線上の距離Ｌｃと、中間部３５ｃの上端から操作機構１８のボス部３３ａまでの円弧線上の距離Ｌａと、中間部３５ｃの下端からロック機構１５のボス部２２ａまでの傾斜線上の距離Ｌｂの和（Ｌｃ＋Ｌａ＋Ｌｂ）により決定される。

【0083】

そこで、アウターケーブル３６の実際の全長は、前記配索経路の長さに対して、アウターケーブル３６が長さ方向に所定量だけ圧縮される長さαを加えたものとして形成されている。この際、αは、上述のようなインナーケーブル３７の適度の遊びと両端部の同時連動を可能とする最適値が選択される。

【0084】

これに対して、インナーケーブル３７の全長は、単純に有効長さに応じて決定される。即ち、前記アウターケーブル３６の配索経路の長さ（Ｌｃ＋Ｌａ＋Ｌｂ）に加え、操作機構１８におけるボス部３３ａから連結具３８までの曲折経路の長さと、ロック機構１５におけるボス部２２ａから連結具３９までの直線経路の長さを加算した長さとして形成されている。

【0085】

これにより、伝動ケーブル３５は、アウターケーブル３６が所定量だけ圧縮され、インナーケーブル３７の遊びが適量とされているので、操作機構１８によりインナーケーブル３７の上端部３７ａを牽引したとき、下端部３７ｂを同時に連動させることができ、連動操作性に優れている。しかも、インナーケーブル３７の摺動抵抗も適切とされ、適度の操作力による作動が可能であり、ケーブルの耐久性にも問題を生じることもなく、摺動良好性を備えている。

【0086】

伝動ケーブル３５の中間部３５ｃは、直線状態から屈曲不能となるように、保持具４０により保持されている。保持具４０は、図９に示すように、主脚１２の裏側Ｒの側壁１２ｃの外側面に重ねられた状態でリベット又はボルト等の固着具により固着される帯状板部４１と、前記側壁１２ｃの内向きリブ１２ｄを囲むように前記帯状板部４１から断面ほぼＵ形に折曲された溝形部４２を一体に形成しており、該溝形部４２により形成された保持溝４２ａに伝動ケーブル３５の中間部３５ｃにおけるアウターケーブル３６を嵌入し、固定保持している。

【0087】

このため、伝動ケーブル３５の中間部３５ｃは、前記距離Ｌａにわたり直線状態を保持されており、長期間の繰り返し作動により、アウターケーブル３６の圧縮に緩みを生じることはなく、上述の連動操作性や摺動良好性を低下することはない。

【0088】

しかも、伝動ケーブル３５の中間部３５ｃは、主脚１２の裏側Ｒに配置されているので、ユーザが脚体１１を昇降する際の邪魔になることはなく、更に、異物の衝突等も受けることがないので、外力等により直線姿勢から屈曲姿勢される姿勢変更を生じることはなく、この点においても、上述の連動操作性や摺動良好性を低下することはない。

【0089】

図示実施形態の場合、保持具４０は、中段踏桟１３ｂのブラケット金具１６の干渉を避けるため、上側の保持具４０ａと下側の保持具４０ｂに分割されているが、保持具の形状や個数は任意に設計することが可能であり、要するに、全体として中間部３５ｃを長さ方向に保持するように全体として長尺のものであれば良い。

【0090】

上記の構成により、伸縮脚装置は、ユーザが高所作業装置の上部位置から操作レバー３２ａを操作することにより、インナーケーブル３７を介して、中継部材２９及びアンロックアーム２８を引き上げ、これによりロック体２３のアンロック動作を行わせ、伸縮脚１４を主脚１２に対して摺動させることができる。ところで、万一、インナーケーブル３７が破断する等、上部位置からの操作ができないときは、上述のように中継部材２９に設けられたロック解除ボタン２９Ｅを押動することによっても、ロック体２３のアンロック動作を行うことが可能とされているので、伸縮脚装置の使用に支障を来すことはない。

【符号の説明】

【0091】

１１ 脚体
１２ 主脚
１２ａ 底壁
１２ｂ、１２ｃ 側壁
１２ｄ 内向きリブ
１３ 踏桟
１３ａ 中段踏桟
１３ｂ 上段踏桟
１３ｃ 下段踏桟
１４ 伸縮脚
１５ ロック機構
１６ ブラケット金具
１７ ラック
１７ａ ラック歯
１８ 操作機構
１９ 連動機構
２０ 伸縮脚装置
２１ 貫通ボルト
２１ａ 支軸
２２ ハウジング
２２ａ ボス部
２２ｂ 窓孔
２３ ロック体
２３ａ ロックアーム
２３ｂ ロック歯
２３ｃ 作動片
２３ｄ Ｖ溝
２４、２４ａ インジケーター手段
２５ ボタン
２５ａ 押動部
２６ スプリング
２７ ロックスプリング
２８ アンロックアーム
２９ 中継部材
２９ａ 連結筒部
２９ｂ 横軸部
２９ｃ 円筒孔
２９ｄ スリット
２９Ｅ ロック解除ボタン
３０ 踏桟本体
３０ａ 背面壁
３０ｂ 正面壁
３０ｃ 上壁
３０ｄ 下壁
３１ ヒンジ空洞部
３１ａ 枢支部
３２ 操作体
３２ａ 操作レバー
３２ｂ ストッパ
３３ 固定体
３３ａ ボス部
３３ｂ 案内手段
３４ 移動体
３４ａ 円筒孔
３４ｂ スリット
３５ 伝動ケーブル
３５ａ 操作側端部
３５ｂ 作動側端部
３５ｃ 中間部
３６ アウターケーブル
３６ａ 上端部
３６ｂ 下端部
３７ インナーケーブル
３７ａ 上端部
３７ｂ 下端部
３８、３９ 連結具
４０、４０ａ、４０ｂ 保持具
４１ 帯状板部
４２ 溝形部
４２ａ 保持溝

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】