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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043249
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】着物セット及びその着付け方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/00 20180101AFI20230322BHJP
   A41B 9/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A41D1/00 101A
A41D1/00 101Z
A41B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150757
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】521409010
【氏名又は名称】新名 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】新名 幸子
【テーマコード(参考)】
3B030
3B128
【Fターム(参考)】
3B030AA01
3B030BA01
3B030BB01
3B030BC04
3B030BC06
3B128AB01
3B128AB02
(57)【要約】
【課題】着付けに不慣れな人にとっても簡単に綺麗に着付けることができる着物セット及びその着付け方法を提供する。
【解決手段】本開示の着物セット100は、所定の位置にガイド部が設けられた着物セットである。この着物セット100は、着物1の後ろ身頃の背縫いの部分の生地に人の背骨の部分を合せるための所定の第1識別として凸に設けられた第1ガイド部11と、着物1の裾回しの部分の生地に衽を合せるための所定の第2識別として設けられた第2ガイド部12と、着物1の前身頃の部分の生地にお端折りを形成するための所定の第3識別又は折り目として設けられた第3ガイド部13と、長襦袢2の衣紋の部分の生地に着物1を合せるための所定の第4識別として設けられた第4ガイド部14と、のうちの少なくとも一つを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置にガイド部が設けられた着物セットであって、
着物の後ろ身頃の背縫いの部分の生地に人の背骨の部分を合せるための所定の第1識別として凸に設けられた前記ガイド部である第1ガイド部と、
着物の裾回しの部分の生地に衽を合せるための所定の第2識別として設けられた前記ガイド部である第2ガイド部と、
着物の前身頃の部分の生地にお端折りを形成するための所定の第3識別又は折り目として設けられた前記ガイド部である第3ガイド部と、
長襦袢の衣紋の部分の生地に着物を合せるための所定の第4識別として設けられた前記ガイド部である第4ガイド部と、
のうちの少なくとも一つを備える、着物セット。
【請求項2】
前記第1ガイド部が、着物及び長襦袢及び肌襦袢に設けられる、
請求項1に記載の着物セット。
【請求項3】
着物及び長襦袢及び肌襦袢に、これらにおける各部位の名称が記載されている、
請求項1又は請求項2に記載の着物セット。
【請求項4】
所定の位置にガイド部が設けられた着物セットの着付け方法であって、
前記着物セットが着物と足袋とを含み、該足袋は、該着物の裾を合せるための所定の第5識別として設けられた前記ガイド部である第5ガイド部を備え、
前記着物のお端折りを形成するステップにおいて、該着物の裾と前記第5ガイド部とが合うように、該お端折りの折込量が調整される、
着物セットの着付け方法。
【請求項5】
所定の着付け補助具を用いた着物セットの着付け方法であって、
前記着付け補助具が、着物の裾を挟んで該着物に装着されるクリップによって構成され、
前記着物のお端折りを形成するステップにおいて、該着物の裾に装着された前記クリップの端部が床に接触するように、該お端折りの折込量が調整される、
着物セットの着付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一人で簡単にシルエット良く着ることができる着物セット及びその着付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
着物は、着方が難しく、誰でも簡単に綺麗に着ることが難しい。そして、普段着物を着る機会がほとんどないため、着方が解らない人が少なくない。このように、着物を着ることが少ない人にとって、着物の着方は難しいと認識されており、その着付けについて、多くの人は、着付け師などの専門家に着付けを依頼する傾向にある。
【0003】
ここで、例えば、着物のお端折りを作る場合、不要な部位にしわができたりして、その作業が難しくなっていた。着物は、身丈と着丈とが異なるため、着物を着る際に、着物の胴部分にお端折りを折り込んで作ることにより、着用者の背丈に応じて裾を合わせる必要があるが、これが着物の着方を難しくしている一面がある。
【0004】
そして、特許文献1には、和風着物の様式を維持しつつ、着物を着付ける際のお端折りの作業を無くして、着つけを容易にする和風着物が開示されている。この和風着物では、着物の丈を着用者の身の丈に合わせて裁断して、裾の高さを適宜合わせるとともに、着用者がこの着物を着付けた状態にて、胴部の周りにお端折り帯を巻回している。これにより、着物を着用後の外観が、通常の長着の着物にお端折りを作って着付けた場合と同様にされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-159006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、着物の着方は難しいと認識されており、その着付けについて、多くの人は、着付け師などの専門家に着付けを依頼する傾向にあった。しかしながら、着付けの都度に着付け師に頼むとすると、着物を普段に楽しむことが困難となり得る。そこで、着物を簡単に着付けることについて、種々の解決案が提案されている。
【0007】
特許文献1に記載の着物によれば、着物を着付ける際のお端折りの作業を無くすことができるため、着物を比較的簡単に着付けることができるようにも思われる。しかしながら、この着物では、お端折りの作業をすることなく、着物を着用後の外観を通常の長着の着物にお端折りを作って着付けた場合と同様にできたとしても、着物全体の外観を綺麗に着付けるためには、やはり熟練が必要であり、着付けに不慣れな人にとっては、着方が解らない状況が生じ得る。そして、一人で簡単に綺麗に着付けることができる着物セットやその着付け方法については、未だ改善の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、着付けに不慣れな人にとっても簡単に綺麗に着付けることができる着物セット及びその着付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の着物セットは、所定の位置にガイド部が設けられた着物セットである。この着物セットは、着物の後ろ身頃の背縫いの部分の生地に人の背骨の部分を合せるための所定の第1識別として凸に設けられた前記ガイド部である第1ガイド部と、着物の裾回しの部分の生地に衽を合せるための所定の第2識別として設けられた前記ガイド部である第2ガイド部と、着物の前身頃の部分の生地にお端折りを形成するための所定の第3識別又は折り目として設けられた前記ガイド部である第3ガイド部と、長襦袢の衣紋の部分の生地に着物を合せるための所定の第4識別として設けられた前記ガイド部である第4ガイド部と、のうちの少なくとも一つを備える。
【0010】
上記の着物セットでは、ガイド部の案内によって着物を簡単に綺麗に着付けることができる。詳しくは、第1ガイド部が人の背骨の部分に合わされることで、着物の後ろ身頃の背縫いの部分と人の背骨の部分とを綺麗に合わせることができる。そうすると、着物をシルエット良く着ることができる。また、第2ガイド部と衽とが合わされることで、着物の裾を簡単に合わせることができる。また、お端折りを形成する際には、第3ガイド部に沿って着物の前身頃の部分を内側へ折り上げることができる。そのため、お端折りの作業を簡単にすることができる。また、長襦袢に設けられた第4ガイド部を用いると、衣紋の部分の長襦袢と着物との重なりを綺麗に形成することができる。このように、これらガイド部を用いることで、着付けに不慣れな人にとっても着物を簡単に綺麗に着付けることができる。
【0011】
ここで、本開示の着物セットにおいて、前記第1ガイド部が、着物及び長襦袢及び肌襦袢に設けられてもよい。着物セットの着付けを行う際には、肌襦袢、長襦袢、着物の順に重ねて着付けられるが、第1ガイド部がこれらの背縫いの部分に凸に形成されることで、人の背骨の部分と、肌襦袢、長襦袢、および着物の背縫いの部分と、を、綺麗に合わせることができ、着物セットをシルエット良く着ることができる。また、着物及び長襦袢及び肌襦袢に、これらにおける各部位の名称が記載されてもよい。これによれば、着付けに不慣れな人にとっては、各部位の名称を一目で把握することができ、名称が解らないがために着物の着方が解らないといった事態が生じることを抑制することができる。なお、着物及び長襦袢及び肌襦袢には、上記の名称だけでなく、長さや記号、帯位置などが記載されてもよい。
【0012】
また、本開示は、着物セットの着付け方法の側面から捉えることができる。すなわち、本開示の着付け方法は、所定の位置にガイド部が設けられた着物セットの着付け方法であって、前記着物セットが着物と足袋とを含み、該足袋は、該着物の裾を合せるための所定の第5識別として設けられた前記ガイド部である第5ガイド部を備え、前記着物のお端折りを形成するステップにおいて、該着物の裾と前記第5ガイド部とが合うように、該お端折りの折込量が調整されてもよい。また、本開示の着付け方法は、所定の着付け補助具を用いた着物セットの着付け方法であって、前記着付け補助具が、着物の裾を挟んで該着物に装着されるクリップによって構成され、前記着物のお端折りを形成するステップにおいて、該着物の裾に装着された前記クリップの端部が床に接触するように、該お端折りの折込量が調整されてもよい。ここで、着物は、身丈と着丈とが異なるため、着物を着る際に、着物の胴部分にお端折りを折り込んで作ることにより、着用者の背丈に応じて裾を合わせる必要があるが、上記の着付け方法によれば、着物の裾を簡単に合わせることができ、以て、お端折りの作業を簡単にすることができる。そうすると、着付けに不慣れな人にとっても着物を簡単に綺麗に着付けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、着付けに不慣れな人にとっても簡単に綺麗に着付けることができる着物セット及びその着付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における着物を示す図である。
図2】第1ガイド部の機能を説明するための図である。
図3】第2ガイド部の機能を説明するための図である。
図4】第3ガイド部の機能を説明するための図である。
図5】第4ガイド部の機能を説明するための図である。
図6】衣紋抜きを綺麗に形成するための着付け補助具として、クッション材のスペーサーが用いられる例を示す図である。
図7】衣紋抜きを綺麗に形成するための着付け補助具として、弓状部材が用いられる例を示す図である。
図8】第2実施形態における足袋に設けられたガイド部に基づく着付け方法を説明するための図である。
図9】第2実施形態の変形例における着付け補助具として用いられるクリップを説明するための図である。
図10】その他の変形例における着付け補助具として用いられるキャスター付トルソー人形を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0016】
<第1実施形態>
第1実施形態における着物の概要について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における着物を示す図である。本実施形態に係る着物1は、所定の位置にガイド部が設けられた着物である。なお、本実施形態に係る着物1は、長襦袢2(図1には不図示)および肌襦袢3(図1には不図示)とともに、着物セット100を構成する。
【0017】
図1に示すように、着物1の後ろ身頃の背縫いの部分の生地には、人の背骨の部分を合せるための所定の第1識別として凸に設けられた第1ガイド部11が形成される。後述するように、第1ガイド部11は、着物1および長襦袢2および肌襦袢3に設けられ得るが、第1ガイド部11が着物1に設けられる場合には、該第1ガイド部11は、着物1の胴裏から凸に形成される。このような第1ガイド部11は、胴裏に縫われた糸によって凸に形成されてもよいし、胴裏に所定の紐が縫い合わされることで凸に形成されてもよいし、胴裏に所定のテープが貼り付けられることで凸に形成されてもよい。
【0018】
また、図1に示すように、着物1の裾回しの部分の生地には、衽を合せるための所定の第2識別として設けられた第2ガイド部12が形成される。このような第2ガイド部12は、着物1の裾回しの部分の生地に、衽を合せるラインが描かれることで形成されてもよい。なお、裾回しに縫われた糸によって衽を合せるラインが形成されてもよいし、裾回しに所定のテープが貼り付けられることで衽を合せるラインが形成されてもよい。
【0019】
また、図1に示すように、着物1の前身頃の部分の生地には、お端折りを形成するための所定の第3識別又は折り目として設けられた第3ガイド部13が形成される。このような第3ガイド部13は、着物1の前身頃の部分の生地に、お端折りを形成する際に内側へ折り上げられるラインが描かれることで形成されてもよいし、お端折りを形成する際に内側へ折り上げられる折り目が形成されてもよい。この場合、第3ガイド部13aに山折りの折り目が形成され、第3ガイド部13bに谷折りの折り目が形成されることで、お端折りを形成する際に、着物1の前身頃のお端折りの部分を綺麗に内側へ折り上げることができる。
【0020】
次に、上記の第1ガイド部11、第2ガイド部12、および第3ガイド部13の機能について、図2から図4に基づいて以下に説明する。
【0021】
図2は、第1ガイド部11の機能を説明するための図である。図2に示すように、人の背骨の部分と第1ガイド部11とが合わされることで、人の背骨の部分と着物1の後ろ身頃の背縫いの部分とを綺麗に合わせることができる。そうすると、着物1をシルエット良く着ることができる。
【0022】
ここで、従来までの方法を用いて一人で着付けを行う場合、背骨の部分と着物1の後ろ身頃の背縫いの部分とを綺麗に合わせようとすると、鏡を見ながらの作業となる。そのため、着付けに不慣れな人にとっては、その作業が難しかった。また、目が不自由な人にとっては、目視で確認しながら作業を行うことが難しく、一人では背骨の部分と着物1の後ろ身頃の背縫いの部分とを綺麗に合わせることが容易ではなかった。これに対して、上述したように、第1ガイド部11が生地に対して凸に形成されると、第1ガイド部11が背骨の部分に合わせられていることを、皮膚の感覚によって認識することができる。したがって、着付けに不慣れな人にとっても、目が不自由な人にとっても、背骨の部分と着物1の後ろ身頃の背縫いの部分とを簡単に綺麗に合わせることができる。
【0023】
また、このような第1ガイド部11は、着物1および長襦袢2および肌襦袢3に設けることができる。着物セット100の着付けを行う際には、肌襦袢3、長襦袢2、着物1の順に重ねて着付けられるが、第1ガイド部11がこれらの背縫いの部分に凸に形成されることで、人の背骨の部分と、肌襦袢3、長襦袢2、および着物1の背縫いの部分と、を、綺麗に合わせることができ、着物セット100をシルエット良く着ることができる。
【0024】
図3は、第2ガイド部12の機能を説明するための図である。図3(a)に示すように、第2ガイド部12と衽とを合わせるように着物1が着付けられると、図3(b)に示すように、着物1の裾を簡単に合わせることができる。
【0025】
ここで、従来までの方法を用いて一人で着付けを行う場合、着物1の裾を合わせるためには、先ず、前幅と衽幅との中心が体の中心にくるように且つ足の甲に触れる長さに左裾を決め、次に、脚に沿わせながら裾の先だけを上げて足の甲に触れない長さに右裾を決める必要があり、着付けに不慣れな人にとっては、その作業が難しかった。これに対して、上述したように第2ガイド部12が設けられると、第2ガイド部12と衽とを合わせるだけで着物1の裾を簡単に合わせることができる。
【0026】
図4は、第3ガイド部13の機能を説明するための図である。上述したように、着物1の前身頃の部分の生地には、お端折りを形成するための所定の第3識別又は折り目として第3ガイド部13が形成される。そうすると、図4に示すように、第3ガイド部13aに沿って生地を山折りにし、第3ガイド部13bに沿って生地を谷折りにすることで、着物1の前身頃のお端折りの部分を綺麗に内側へ折り上げることができる。
【0027】
ここで、着物1は、身丈と着丈とが異なるため、着物1を着る際に、着物1の胴部分にお端折りを折り込んで作ることにより、着用者の背丈に応じて裾を合わせる必要があるが、上記の第3ガイド部13を用いると、簡単なお端折りの作業によって着物1の裾を合わせることができる。
【0028】
このように、これらガイド部を用いることで、着付けに不慣れな人にとっても着物を簡単に綺麗に着付けることができる。
【0029】
更に、本実施形態に係る着物セット100では、長襦袢2の衣紋の部分の生地には、着物1を合せるための所定の第4識別として設けられた第4ガイド部14が形成されてもよい。これについて、図5に基づいて説明する。なお、このような第4ガイド部14は、長襦袢2の衣紋の部分の生地に、着物1を合せるラインが描かれることで形成されてもよい。なお、長襦袢2の衣紋に縫われた糸によって着物1を合せるラインが形成されてもよいし、長襦袢2の衣紋に所定のテープが貼り付けられることで着物1を合せるラインが形成されてもよい。
【0030】
図5は、第4ガイド部14の機能を説明するための図である。図5(a)に示すように、長襦袢2の衣紋の部分の生地に第4ガイド部14が設けられていて、この第4ガイド部14と着物1とが合わせられることで、図5(b)に示すように、衣紋の部分の長襦袢2と着物1との重なりを綺麗に形成することができる。なお、第4ガイド部14に着物1が合わせられた状態を維持しながら着物1の着付けを行うことができるように、長襦袢2と着物1とが重ねられた衣紋の部分がクリップによって係止されてもよい。また、別の止着、係止、係合手段を設けて、長襦袢2と着物1とが止着、係止、係合されてもよい。
【0031】
また、衣紋抜きを綺麗に形成するために、所定の着付け補助具が用いられてもよい。これについて、図6および図7に基づいて説明する。
【0032】
図6は、衣紋抜きを綺麗に形成するための着付け補助具として、クッション材のスペーサーが用いられる例を示す図である。図6に示すように、クッション材のスペーサー141は、長襦袢2とうなじとの間に挿入される。これにより、衣紋抜きを綺麗に形成することができる。なお、このようなスペーサー141には、うなじと接触する部分に周知の保冷剤が設けられてもよい。これによれば、着付けの作業によって体温が上昇したとしても、うなじの部分が冷却されることで効果的に体の熱を放出することができ、快適に着付けを行うことができる。また、このような保冷剤が設けられると、スペーサー141の位置を皮膚の感覚で認識し易くなる。そのため、衣紋抜きを形成する際に、仮にスペーサー141がずれてしまったとしても、そのずれを認識し易くなり、迅速にスペーサー141の位置を修正することが可能になる。
【0033】
一方、図7は、衣紋抜きを綺麗に形成するための着付け補助具として、弓状部材が用いられる例を示す図である。図7に示すように、弓状部材142は、長襦袢2とうなじとの間に挿入される。詳しくは、弓状部材142の弓部142aが長襦袢2に沿って配置されることで着物1および長襦袢2の衣紋形状を固定し、弓状部材142の弦部142bがうなじに沿って配置されることで長襦袢2とうなじとの間のスペースが形成される。なお、うなじへの負担を軽減するために、布やシリコン等の比較的柔らかい材料でうなじに沿わせるように弦部142bが形成されてもよい。これにより、衣紋抜きを綺麗に形成することができる。
【0034】
このように衣紋抜きが形成される際には、長襦袢2の第4ガイド部14と着物1とが合わせられた状態がクリップによって係止されてもよい。なお、別の止着、係止、係合手段を設けて、長襦袢2と着物1とが止着、係止、係合されてもよい。また、衣紋抜きが形成される際には、衣紋の中央が喉の凹みとうなじとのラインに合わせられ、喉の凹みの部分でyの字を描くように形成されることで、衣紋の左右方向も綺麗に形成することができる。この場合、衣紋の中央には、上記を合せるための所定の識別(例えば、凸に形成された縫い糸)が設けられてもよい。また、上記において、喉の凹みの部分の襟において、長襦袢2と着物1とがyの字に係止されてもよい。この場合、着物1の襟が長襦袢2の襟に沿うように、且つ長襦袢2の襟が1.5~2.0cm程度着物1の襟から見えるように係止されてもよい。
【0035】
以上に述べた着物1または着物セット100によれば、着付けに不慣れな人にとっても簡単に綺麗に着付けることができる。
【0036】
<第2実施形態>
第2実施形態における着物の着付け方法の概要について、図8を参照しながら説明する。本実施形態に係る着付け方法は、所定の位置にガイド部が設けられた着物セットの着付け方法であって、図8は、足袋4に設けられたガイド部に基づく着付け方法を説明するための図である。
【0037】
図8に示すように、足袋4の側面には、着物1の裾を合せるための所定の第5識別として設けられた第5ガイド部15が形成される。この第5ガイド部15は、足袋4の側面に、着物1の裾を合せるラインが描かれることで形成されてもよい。
【0038】
ここで、着物1は、身丈と着丈とが異なるため、着物1を着る際に、着物1の胴部分にお端折りを折り込んで作ることにより、着用者の背丈に応じて裾を合わせる必要がある。そこで、本実施形態に係る着付け方法では、着物1のお端折りを形成するステップにおいて、該着物1の裾と第5ガイド部15とが合うように、該お端折りの折込量が調整される。これにより、図8に示すように、着物1の裾を簡単に合わせることができ、以て、着物1を簡単に綺麗に着付けることができる。
【0039】
以上に述べた着付け方法によれば、着付けに不慣れな人にとっても簡単に綺麗に着付けることができる。
【0040】
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態の変形例における着物の着付け方法の概要について、図9を参照しながら説明する。本変形例に係る着付け方法は、所定の着付け補助具を用いた着物セットの着付け方法であって、図9は、本変形例における着付け補助具として用いられるクリップ151を説明するための図である。
【0041】
図9に示すように、クリップ151は、着物1の裾に挟んで装着される。そして、本変形例に係る着付け方法では、着物1のお端折りを形成するステップにおいて、該着物1の裾に装着されたクリップ151の端部が床に接触するように、該お端折りの折込量が調整される。
【0042】
目が不自由な人にとっては、目視で確認しながら着付けの作業を行うことが難しく、一人では着物1の裾を合わせることが容易ではなかった。これに対して、上記のクリップ151は、一方の端部が着物1の裾に挟んで装着され他方の端部が床に接触した状態において着物1の裾が適正な状態に合わせられるように、その長さが定められている。そして、このようなクリップ151を用いて着付けを行うことで、着物1の裾が適正な状態に合わせられていることを、クリップ151が床に接触することで伝わる感覚によって認識することができる。したがって、着付けに不慣れな人にとっても、目が不自由な人にとっても、着物1の裾を簡単に合わせることができ、以て、着物1を簡単に綺麗に着付けることができる。
【0043】
また、このように視覚によらず着物の裾を合わせる方法の別の例として、着物1や長襦袢2、肌襦袢3の裾の部分に、所定の重量を有する芯材が設けられてもよい。これによれば、芯材の重量によって伝わる感覚によって裾の位置を認識することができる。なお、上記の重量とは、着物に設けられた際に人が認識できる程度の重さである。そして、このように裾に設けられた芯材によれば、着物の傾きも重量によって伝わる感覚によって認識することができる。
【0044】
以上に述べた着付け方法によっても、着付けに不慣れな人にとっても簡単に綺麗に着付けることができる。
【0045】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。本開示の着付け方法では、着付け補助具としてトルソー人形を用いて、該人形に仮で着付けられた肌襦袢3、長襦袢2、着物1のシルエットを確認しながら自身への着付けが行われてもよい。また、目が不自由な人にとっては、目視で確認しながら作業を行うことが難しいため、着付け補助具としてトルソー人形を用いることで、トルソー人形に仮で着付けられた着物1等を手探りして、その着付け方法を確認することができる。
【0046】
ここで、図10は、本変形例における着付け補助具として用いられるキャスター付トルソー人形5を説明するための図である。キャスター付トルソー人形5は、トルソー人形51、台座52、キャスター53、および高さ調整具54を含んで構成される。トルソー人形51は、人の上半身の人形であって、台座52に積載されている。なお、台座52に積載されるトルソー人形51を上半身までの人形に限定する意図はなく、人の下半身が含まれた人形でもよい。そして、台座52には、キャスター53および高さ調整具54が設けられており、キャスター53によりトルソー人形51を移動可能に構成され、高さ調整具54によりトルソー人形51の高さを調整可能に構成される。なお、高さ調整具54は周知の技術により構成される。また、キャスター53は3個以上設けられてもよく、キャスター53にはストッパーが備えられ得る。
【0047】
このようなキャスター付トルソー人形5を用いると、トルソー人形51に仮で着付けられた着物1等のシルエットを自身が移動することなく様々な角度から確認することができる。そのため、このようなシルエットを確認しながら自身への着付けを行うことで、着付けに不慣れな人にとっても簡単に綺麗に着付けることができる。
【0048】
なお、トルソー人形51の首部分は、磁性材料(磁石)によって構成されてもよい。これによれば、着付けに用いられるクリップなどをトルソー人形51の首部分に保持することができる。
【符号の説明】
【0049】
1・・・・・着物
2・・・・・長襦袢
3・・・・・肌襦袢
4・・・・・足袋
11・・・・第1ガイド部
12・・・・第2ガイド部
13・・・・第3ガイド部
14・・・・第4ガイド部
15・・・・第5ガイド部
100・・・着物セット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10