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特開2023-43252ポリエステル系樹脂フィルム用改質剤、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂フィルム、及び積層フィルム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043252
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】ポリエステル系樹脂フィルム用改質剤、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂フィルム、及び積層フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20230322BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20230322BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20230322BHJP
C08K 3/017 20180101ALI20230322BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C08L67/02
C08J3/22 CFD
C08K5/42
C08K3/017
C08L71/02
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150760
(22)【出願日】2021-09-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 佑典
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AC18
4F070AC20
4F070AC50
4F070AC84
4F070AE30
4F070FA03
4F070FB06
4F070FC06
4J002CF031
4J002CF041
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF081
4J002CF161
4J002CF181
4J002CH022
4J002CH032
4J002DD057
4J002DG047
4J002EV256
4J002EV258
4J002FD102
4J002FD106
4J002FD107
4J002FD108
4J002FD312
4J002FD316
4J002FD317
4J002FD318
4J002GF00
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】
食品等を包装する際に用いるポリエステル系樹脂フィルムに優れた防曇性を付与できるポリエステル系樹脂フィルム用改質剤を提供する。
【解決手段】
ポリエステル系樹脂フィルム用改質剤を、アルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)及び無機塩(B)を含有するものとする。無機塩(B)は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムから選択される少なくとも一つである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)及び下記の無機塩(B)を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
無機塩(B):硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
【請求項2】
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)が、ナトリウム塩である請求項1に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
【請求項3】
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)のアルキル基が分岐のアルキル基である請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
【請求項4】
前記無機塩(B)が、硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウムから選ばれる少なくとも一つである請求項1から3のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
【請求項5】
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記無機塩(B)を0.1~20質量部含有する請求項1から4のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
【請求項6】
更に、アルキル基の炭素数が6~22のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を含有する請求項1から5のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
【請求項7】
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を10~300質量部含有する請求項6に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
【請求項8】
更に、ポリアルキレングリコール(D)を含有する請求項1から7のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
【請求項9】
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記ポリアルキレングリコール(D)を10~1000質量部含有する請求項8に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
【請求項10】
ポリエステル系樹脂及び請求項1から9のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のポリエステル系樹脂組成物を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂フィルム。
【請求項12】
2層以上の積層フィルムであって、少なくともどちらか一方の表層が請求項11に記載のポリエステル系樹脂フィルムであることを特徴とする積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリエステル系樹脂フィルム用改質剤、並びにそれを含むポリエステル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂フィルム、及び積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等を包装する容器として、手で容易に剥がせるイージーピールフィルムを容器本体に張り付けた物が広く用いられている。また、イージーピールフィルムには、包装容器の内容物の視認性や生産性等の観点から、目的に応じて優れた透明性、防曇性及び帯電防止性等が求められている。
【0003】
このような容器は、一般的に、容器本体はポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂から製造されており、イージーピールフィルムはポリオレフィン樹脂やそれと接着性樹脂との混合物から製造されている。しかし、近年では環境への配慮から包装容器にもリサイクル性が求められており、イージーピールフィルムを容器本体と同一の材料であるポリエステル系樹脂で製造することが望まれている。
【0004】
ポリエステル系樹脂の性質を改善する一つの方法として、改質剤を添加することが広く行われている。例えば特許文献1は、ポリエステル系樹脂にポリアルキレングリコール及びスルホン酸金属塩誘導体を配合する工程を含むポリエステルフィルムの製法を開示している。特許文献2は、ポリエステル系樹脂と、スルホン酸金属塩誘導体と、芳香族アミン及び/又はそのアンモニウム塩とを含有するポリエステル組成物を開示している。特許文献3は、ポリエステル系樹脂にスルホン酸金属塩誘導体及び高級脂肪酸金属塩が配合されているポリエステルフィルムを開示している。特許文献4は、ポリエステル系樹脂にポリアルキレングリコール及び有機スルホン酸カルシウムが配合されたポリエステル樹脂組成物を開示している。しかし、これらの主な目的は帯電防止性の改善であり、防曇性の改善は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52-47071号公報
【特許文献2】特開昭63-308059号公報
【特許文献3】特開昭60-38123号公報
【特許文献4】特開2005-162910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、本開示は食品等を包装する際に用いるポリエステル系樹脂フィルムに優れた防曇性を付与できるポリエステル系樹脂フィルム用改質剤を提供することを課題とする。また、それを用いたポリエステル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂フィルム、及び積層フィルムも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段として、本開示は以下の手段を採る。
[1]アルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)及び下記の無機塩(B)を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
無機塩(B):硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
[2]前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)が、ナトリウム塩である[1]に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
[3]前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)のアルキル基が分岐のアルキル基である[1]又は[2]に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
[4]前記無機塩(B)が、硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウムから選ばれる少なくとも一つである[1]から[3]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
[5]前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記無機塩(B)を0.1~20質量部含有する[1]から[4]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
[6]更に、アルキル基の炭素数が6~22のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を含有する[1]から[5]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
[7]前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を10~300質量部含有する[6]に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
[8]更に、ポリアルキレングリコール(D)を含有する[1]から[7]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
[9]前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記ポリアルキレングリコール(D)を10~1000質量部含有する[8]に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
[10]ポリエステル系樹脂及び[1]から[9]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
[11][10]に記載のポリエステル系樹脂組成物を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂フィルム。
[12]2層以上の積層フィルムであって、少なくともどちらか一方の表層が[11]に記載のポリエステル系樹脂フィルムであることを特徴とする積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
≪ポリエステル系樹脂フィルム用改質剤≫
ポリエステル系樹脂フィルム用改質剤(以下、改質剤ともいう)は、アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)及び無機塩(B)を含有する。改質剤をポリエステル系樹脂フィルムに含有させることにより、該フィルムの防曇性を向上することができる。改質剤はアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)及びポリアルキレングリコール(D)の少なくとも一方を更に含有することにより、ポリエステル系樹脂フィルムの防曇性を更に向上することができる。なお、改質剤はアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)及びポリアルキレングリコール(D)の一方を含有する場合と比べて、両方を含有することにより防曇性を更に向上することができる。
【0009】
<アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)>
アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)は、炭素数6~22のアルキル基を有する。アルキル基の炭素数は8~20が好ましく、9~16が更に好ましい。アルキル基は直鎖と分岐鎖のいずれでもよいが、防曇性及びポリエステル系樹脂との混練性(実施例におけるマスターバッチの生産性)の観点から分岐鎖が好ましい。分岐鎖のアルキル基は直鎖のアルキル基よりもポリエステル系樹脂への溶解性が高いため、直鎖のアルキル基よりも高い効果を奏すると推測される。なお、この推測は単なる考察であり、本開示の内容を限定するものではない。アリール基は単環及び多環のいずれでもよい。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられるが、防曇性の観点からナトリウム塩が好ましい。アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)のアルキル基が分岐鎖である場合、異性体混合物であってもよい。
【0010】
アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-メチルペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルブチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘプチルベンゼンスルホン酸カリウム、4-(1-メチルヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-エチルペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルブチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸カリウム、4-(2-メチルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-メチルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-エチルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-メチルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-エチルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-メチルデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-プロピルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ペンチルヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-メチルウンデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ペンチルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-メチルドデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルウンデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-プロピルデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ペンチルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ヘキシルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルドデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-プロピルウンデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ペンタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルウンデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-ヘプチルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ヘキシルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルトリデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルドデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘプタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ペンチルドデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-オクチルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ヘキシルドデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-オクチルデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノナデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルヘプタデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、イコシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-ペンチルペンタデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘンイコシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルヘプタデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベヘニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルオクタデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、7-ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0011】
<無機塩(B)>
無機塩(B)は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムから選ばれる少なくとも一つである。無機塩(B)は、透明性の観点から硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウムから選ばれる少なくとも一つが好ましい。
【0012】
<アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)>
アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)は、炭素数6~22のアルキル基を有する。アルキル基の炭素数は8~20が好ましく、10~18が更に好ましい。アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられる。アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)としては、ヘキシルスルホン酸リチウム、ヘキシルスルホン酸ナトリウム、ヘキシルスルホン酸カリウム、オクチルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸カリウム、ノニルスルホン酸リチウム、ノニルスルホン酸ナトリウム、ノニルスルホン酸カリウム、デシルスルホン酸リチウム、デシルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸カリウム、ウンデシルスルホン酸リチウム、ウンデシルスルホン酸ナトリウム、ウンデシルスルホン酸カリウム、ドデシルスルホン酸リチウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸カリウム、トリデシルスルホン酸リチウム、トリデシルスルホン酸ナトリウム、トリデシルスルホン酸カリウム、テトラデシルスルホン酸リチウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸カリウム、ペンタデシルスルホン酸リチウム、ペンタデシルスルホン酸ナトリウム、ペンタデシルスルホン酸カリウム、ヘキサデシルスルホン酸リチウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸カリウム、ヘプタデシルスルホン酸リチウム、ヘプタデシルスルホン酸ナトリウム、ヘプタデシルスルホン酸カリウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸カリウム、ノナデシルスルホン酸リチウム、ノナデシルスルホン酸ナトリウム、ノナデシルスルホン酸カリウム、イコシルスルホン酸リチウム、イコシルスルホン酸ナトリウム、イコシルスルホン酸カリウム、ヘンイコシルスルホン酸リチウム、ヘンイコシルスルホン酸ナトリウム、ヘンイコシルスルホン酸カリウム、ドコシルスルホン酸リチウム、ドコシルスルホン酸ナトリウム、ドコシルスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0014】
<ポリアルキレングリコール(D)>
ポリアルキレングリコール(D)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を用いることができ、中でもポリエチレングリコールが好ましい。また、ポリアルキレングリコール(D)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等の2種以上の共重合体であってもよく、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれでもよい。ポリアルキレングリコール(D)は、片末端又は両末端が有機基で置換された末端封鎖型であってもよい。ポリアルキレングリコール(D)の平均重量分子量は、200~30000が好ましく、400~20000が更に好ましい。
【0015】
<含有割合>
改質剤は、防曇性及び透明性の観点からアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、無機塩(B)を0.1~20質量部含有することが好ましく、0.1~10質量部含有することが更に好ましい。改質剤がアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を含有する場合、防曇性及び透明性の観点からアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を10~300質量部含有することが好ましく、10~100質量部含有することが更に好ましい。改質剤がポリアルキレングリコール(D)を含有する場合、防曇性及びポリエステル系樹脂組成物やポリエステル系樹脂フィルムの生産性の観点からアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、ポリアルキレングリコール(D)を10~1000質量部含有することが好ましく、10~300質量部が更に好ましい。
【0016】
≪ポリエステル系樹脂組成物≫
次に、本開示に係るポリエステル系樹脂組成物について説明する。ポリエステル系樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂と改質剤とを含有するものであり、高濃度の改質剤を含むマスターバッチや、後述するポリエステル系樹脂フィルムの製造工程における中間産物等を含む。
【0017】
<ポリエステル系樹脂>
ポリエステル系樹脂としては、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体を基本構成とする樹脂であって、公知のものを用いることができる。多価カルボン酸としては、特に制限はなく、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカン二酸、1,6-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族又は脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。上記多価カルボン酸としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。一方、多価アルコールとしては、特に制限はなく、例えば1,2-エタンジオール、2,2’-オキシジエタノール、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタノール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルバイド等の脂肪族又は脂環式ジオール単位、キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等が挙げられる。上記多価アルコールとしてはこれらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、イソフタル酸を共重合させた酸変性ポリエステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールを共重合させたグルコール変性ポリエステル(PET-G)等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
ポリエステル系樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、アンチブロッキング剤、着色防止剤、消臭剤、抗酸化剤、結晶核剤、熱安定剤、難燃剤、滑剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
なお、ポリエステル系樹脂組成物がマスターバッチである場合、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂と改質剤(上記(A)~(D)成分)との合計100質量部に対して、改質剤を1~60質量部含有することが好ましく、10~45質量部含有することが更に好ましい。一方、ポリエステル系樹脂組成物が製造工程における中間産物である場合、改質剤の含有量は製造工程に応じて任意に変更可能である。ただし、フィルム状に成形する際のポリエステル系樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂と改質剤((A)~(D)成分)との合計100質量部に対して、改質剤を0.1~10質量部含有することが好ましく、1~6質量部含有することが更に好ましい。
【0020】
≪ポリエステル系樹脂フィルム≫
次に、本開示に係るポリエステル系樹脂フィルムについて説明する。ポリエステル系樹脂フィルムは、ポリエステル系樹脂フィルム中の改質剤が所定濃度になるようにポリエステル系樹脂組成物を含有する。なお、本開示において「ポリエステル系樹脂組成物を含有するポリエステル系樹脂フィルム」とは、ポリエステル系樹脂組成物をそのまま含有するものに加えて、防曇性が向上されているものであれば、ポリエステル系樹脂組成物を成形等する過程においてその成分が変性等したものも含む。
【0021】
ポリエステル系樹脂フィルムは、ポリエステル系樹脂と改質剤(上記(A)~(D)成分)との合計を100質量部とした場合に、改質剤を0.1~10質量部含有することが好ましく、1~6質量部含有することが更に好ましい。
【0022】
<製造方法>
本開示のポリエステル系樹脂フィルムは、所定の濃度の改質剤を含有するポリエステル系樹脂組成物をフィルム状に成形することにより製造され、その製造には公知の方法を用いることができる。所定の濃度の改質剤を含有するポリエステル系樹脂組成物の作成は、例えば、1)予めポリエステル系樹脂と高濃度の改質剤とを含有するマスターバッチを作製しておき、このマスターバッチを更にポリエステル系樹脂と混合して所定のポリエステル系樹脂組成物とする方法、2)予めポリエステル系樹脂と改質剤とをタンブラーブレンダー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機に投入して混合し、その混合物を単軸押出し機や多軸押出し機等の押出し機により溶融混練しつつ造粒して所定のポリエステル系樹脂組成物とする方法、3)ポリエステル系樹脂を単軸押出し機や多軸押出し機等の押出し機により溶融状態としたところへ、改質剤をサイドフィード又は液状注入により混合し、溶融混練しつつ造粒して所定のポリエステル系樹脂組成物とする方法、4)2)及び3)を組み合わせて行う方法等が挙げられる。1)のマスターバッチの製造は、前記2)、3)及び4)と同様に行うことができる。ポリエステル系樹脂と改質剤とを混合する手段として、タンブラーブレンダー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機による混合、サイドフィード、液状注入のどの方法を採用するかは、ポリエステル系樹脂及び改質剤の形状によって決めることができ、固体の場合はタンブラーブレンダー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機による混合又はサイドフィードを採用し、また液体の場合は液状注入又はスーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機を採用する。固体のものについては、液状のものに溶解又は分散させた後、液体又は液状体として混合することもできる。
【0023】
ポリエステル系樹脂フィルムを成形する方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、空冷インフレーション成形、空冷2段インフレーション成形、空冷3段インフレーション成形、水冷インフレーション成形等のインフレーション成形、Tダイとしてストレート・マニホールド型、コート・ハンガー型、これらを組み合わせたもの等を用いたTダイ成形が挙げられる。また、フィルムは延伸してもよく、延伸方法としてはテンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法、インフレーション法による二軸延伸法等が挙げられる。フィルムの厚みは3μm~350μmが好ましいが、この厚さに限定されない。
【0024】
≪積層フィルム≫
積層フィルムは、2層以上の積層フィルムであって、上述の改質剤を含有するポリエステル系樹脂フィルムを少なくともどちらか一方の表層として有する。積層フィルムの他の層は、熱可塑性樹脂、接着剤、アンカーコート剤、接着性樹脂等によって形成される。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂として、ポリエステル系樹脂フィルムに含有される材料と同じポリエステル系樹脂を用いることもできる。熱可塑性樹脂には、合目的的に添加剤を含有させることもできる。添加剤としては、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、熱安定剤、中和剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、結晶核剤等が挙げられる。
【0025】
積層フィルムは、公知の方法で製造できる。例えば製造方法としては、ドライラミネート法、サンドラミネート法、押出しラミネート法、共押し出し法等が挙げられる。ドライラミネート法、サンドラミネート法、押出しラミネート法により積層フィルムを製造する場合には、公知のポリウレタン系接着剤、有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤及び接着性樹脂等を使用することができる。共押し出し法による製造では、インフレーション成形及びTダイ成形を用いることができ、未延伸及び延伸方法による延伸のどちらの成形方法を用いることもできる。積層フィルムの厚みは5μm~1000μmが好ましいが、この厚さに限定されない。また、各層の厚みの比も任意に設定可能である。
【0026】
本開示のポリエステル系樹脂用改質剤は、アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)と、無機塩(B)とを含有してなる。これにより、改質剤を含有するポリエステル系樹脂フィルムに優れた防曇性を付与できる。
【実施例0027】
以下、本開示の構成及び効果をより具体的とする実施例を以下に挙げる。以下の実施例及び比較例において、部は質量部を意味する。表1は、各実施例および各比較例における改質剤の成分とその質量比を示す。
【0028】
実施例1-1
アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩としてアルキル基の炭素数が9~16である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの混合物(A-1)100部、無機塩として硫酸ナトリウム(B-1)4.0部、アルキルスルホン酸金属塩としてアルキル基の炭素数13~18のアルキルスルホン酸ナトリウム(C-1)50部、ポリアルキレングリコールとしてPEG6000(D-1)50部を均一混合することで、改質剤(K-1)を得た。
【0029】
実施例1-2~1-19及び比較例1-1~1-4
実施例1-1の改質剤(K-1)と同様にして、表1に示す組成の実施例1-2~1-19の改質剤(K-2~K-19)および比較例1-1~1-4の改質剤(k-1~k-4)を得た。
【0030】
【0031】
表1中の各成分は以下の通りである。
アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)
A-1:アルキル基の炭素数が9~16である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの混合物
A-2:アルキル基の炭素数が12である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの異性体混合物
A-3:アルキル基の炭素数が6である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの異性体混合物
A-4:アルキル基の炭素数が22である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの異性体混合物
A-5:アルキル基の炭素数が12である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸リチウムの異性体混合物
A-6:(直鎖型)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
a-1:(直鎖型)ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム
a-2:(直鎖型)4-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム
【0032】
無機塩(B)
B-1:硫酸ナトリウム
B-2:塩化ナトリウム
B-3:硫酸カリウム
B-4:塩化リチウム
b-1:塩化マグネシウム
【0033】
アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)
C-1:アルキル基の炭素数13~18のアルキルスルホン酸ナトリウム
C-2:ヘキシルスルホン酸リチウム
C-3:ドコシルスルホン酸ナトリウム
【0034】
ポリアルキレングリコール(D)
D-1:PEG6000
D-2:PEG400
D-3:PEG13000
【0035】
表2は、実施例および比較例におけるマスターバッチ(ポリエステル系樹脂組成物)の原料を示す。
【0036】
実施例2-1
ポリエステル系樹脂として商品名「RAMAPET N-1」(Indorama Ventures Public Company Limited製)(R-1)80部と、実施例1-1で得た改質剤(K-1)20部とを、フィーダーを用いて同軸二軸混練押出機へ供給し、250~290℃にて溶融混練し、ストランドダイより押出し、水で急冷し、ストランドを得た。このストランドをペレタイザーでカッティングして、ポリエステル系樹脂に改質剤(K-1)が分散されたマスターバッチ(N-1)を得た。
【0037】
実施例2-2~2-19及び比較例2-1~2-4
実施例2-1のマスターバッチ(N-1)と同様にして、表2に示す組成の実施例2-2~2-19のマスターバッチ(N-2~N-19)及び比較例2-1~2-4のマスターバッチ(n-1~n-4)を得た。
【0038】
【0039】
表2において、R-1~R-3は、それぞれ以下を表す。
R-1:商品名「RAMAPET N-1」(Indorama Ventures Public Company Limited製)
R-2:商品名「ベルペットVH800S-R」(ベルポリエステルプロダクツ社製)
R-3:商品名「EASTER GN001」(イーストマンケミカルジャパン社製)
【0040】
表3は、各マスターバッチ(N-1~N-19、n-1~n-4)の生産性の評価結果を示す。なお、マスターバッチの生産性は、以下の方法により評価した。
【0041】
<マスターバッチの生産性>
マスターバッチ(N-1~N-19、n-1~n-4)を製造する際に、マスターバッチの製造安定性を目視で観察し、以下の基準で評価した。
3:ベントアップやストランド暴れは起こらなかった。
2:ベントアップは起こらなかったが、ストランド暴れが起きた。
1:ベントアップが起きた。
【0042】
【0043】
実施例2-1~実施例2-19のマスターバッチは、良好に製造することができた。一方、比較例2-3のマスターバッチはベントアップが生じてしまい、生産性が劣っていた。なお、実施例2-15、2-16及び2-18を比較すると、ナトリウム塩であるアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)はリチウム塩であるアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)よりもマスターバッチの生産性に優れていた。また、実施例2-15、2-16及び2-19を比較すると、分岐型のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)は直鎖型のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)よりもマスターバッチの生産性に優れていた。
【0044】
表4は、各実施例および比較例におけるフィルム(ポリエステル系樹脂フィルム)の製造原料、フィルムの組成、製造時の二軸延伸工程の有無、及び、フィルムの厚さを示す。フィルムの原料の欄には、フィルムを製造した際のポリエステル系樹脂とマスターバッチの各使用量を示す。フィルムの組成の欄には、得られたフィルムにおけるポリエステル系樹脂と改質剤の各含有量を示す。
【0045】
実施例3-1
ポリエステル系樹脂として商品名「RAMAPET N-1」(R-1)90部と、マスターバッチ(N-1)10部とを、フィーダーを用いて同軸二軸混練押出機へ供給し、260~280℃にて溶融混練した。次いで、マルチマニホールドTダイを用いて、溶融樹脂の供給量及びスクリュー回転速度を調整しつつ、30℃に調温した冷却ロール上に巻き取り、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを110℃で縦3倍、横4倍に延伸した後、235℃で熱処理を施し、室温まで徐冷し、厚さ15μmのフィルム(F-1)を得た。
【0046】
実施例3-2~3-19及び比較例3-1~3-4
実施例3-1のフィルム(F-1)と同様にして、表4に示す組成及び膜厚の実施例3-2~3-19のフィルム(F-2~F-19)及び比較例3-1~3-4のフィルム(f-1~f-4)を得た。なお二軸延伸を行わない場合は、実施例3-1における未延伸フィルムを得る工程までを行った。
【0047】
【0048】
表4において、R-4は以下を表す。
R-4:商品名「SKYBON ES-220」(SK Chemicals社製)
【0049】
表5は、フィルム(F-1~F-19、f-1~f-4)について、防曇性、透明性、及び生産性の各評価を行った結果を示す。なお、防曇性、透明性、及び生産性は、以下の方法により評価した。
【0050】
<防曇性>
フィルムを20℃、相対湿度65%で24時間調湿した後、40℃の水を入れたビーカーの口に被着し、5℃の雰囲気下で静置した。24時間後にフィルムへの水滴の付着具合と、フィルムを介したビーカー内の視認性とに基づき、以下の基準で防曇性を評価した。
5:水滴の付着が無く、ビーカー内がしっかりと視認できる。
4:大きな水滴の付着があるが、ビーカー内が視認できる。
3:大きな水滴が付着しており、水滴によりビーカー内が視認しにくい。
2:小さな水滴と大きな水滴が付着しており、水滴によりビーカー内が視認しにくい。
1:多数の小さな水滴が付着しており、ビーカー内が視認できない。
【0051】
<透明性>
フィルムを20℃、相対湿度65%で24時間調湿した後、ヘイズメーター(日本電色工業社製、「NDH-5000」)を用いて、JIS K 7136:2000に準拠した方法でヘイズ値を測定した。測定したヘイズ値に基づき、透明性を以下の基準で評価した。
4:10%未満
3:10%以上、20%未満
2:20%以上、30%未満
1:30%以上
【0052】
<生産性>
フィルム(F-1~F-19、f-1~f-4)を製造する際において、原料を同軸二軸混練押出機で溶融混練する過程で発煙成分に由来する装置汚染が生じることなく、連続運転できた時間を測定し、以下の基準で評価した。
3:20時間超
2:4時間超、20時間以下
1:4時間以下
【0053】
【0054】
実施例3-1から3-19は、優れた防曇性、透明性、及び生産性を有していた。一方、比較例3-1及び3-4は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムのいずれも含有しないため、防曇性が劣っていた。比較例3-2及び3-3は、アルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩を含有しないため、防曇性が劣っていた。
【0055】
表6は、各実施例及び比較例における積層フィルムを示す。積層フィルムは、改質剤を含有するフィルムであるA層と、2つのA層の間に配置されており、ポリエステル系樹脂からなるB層とを備える。A層の原料の欄には、フィルムを製造した際のポリエステル系樹脂とマスターバッチの各使用量を示す。A層の組成の欄には、製造されたA層におけるポリエステル系樹脂と改質剤の各含有量を示す。表6には、更に各層の厚さの比、積層フィルムの製造時の二軸延伸工程の有無、及び積層フィルムの膜厚を示す。
【0056】
実施例4-1
商品名「RAMAPET N-1」(R-1)90部と、マスターバッチ(N-1)10部とを、フィーダーを用いて第1の同軸二軸混練押出機へ供給し、260~280℃にて溶融混練した。一方、商品名「RAMAPET N-1」(R-1)のみを第2の同軸二軸混練押出機へ供給し、260~280℃にて溶融混練した。次いで、マルチマニホールドTダイを用いて、溶融樹脂の供給量及びスクリュー回転速度を調整しつつ、改質剤を含有する溶融樹脂からなる層が両表層に、改質剤を含有しない溶融樹脂からなる層が中間層になるよう共押出しして30℃に調温した冷却ロール上に巻き取り、A層(一方の表層)、B層(中間層)及びA層(他方の表層)の厚さの比が、1:1:1となる積層未延伸フィルムを得た。得られた積層未延伸フィルムを、110℃で縦3倍、横4倍に延伸した後、235℃で熱処理を施し、室温まで徐冷し、厚さ45μmの積層フィルム(M-1)を得た。
【0057】
実施例4-2~4-19及び比較例4-1~4-4
実施例4-1の積層フィルム(M-1)と同様にして、表6に示す組成及び膜厚の実施例4-2~4-19のフィルム(M-2~M-19)及び比較例4-1~4-4のフィルム(m-1~m-4)を得た。なお二軸延伸を行わない場合は、実施例4-1における積層未延伸フィルムを得る工程までを行った。
【0058】
【0059】
表7は、積層フィルムについて上述する防曇性、透明性、生産性の各評価を行った結果を示す。
【0060】
【0061】
実施例4-1から4-19は、優れた防曇性、透明性、及び生産性を有していた。一方、比較例4-1及び4-4は、A層が硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムのいずれも含有しないため、防曇性が劣っていた。比較例4-2及び4-3は、A層がアルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩を含有しないため、防曇性が劣っていた。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)、下記の無機塩(B)、及びポリアルキレングリコール(D)を含有し、合成樹脂を含有せず、
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)のアルキル基が分岐のアルキル基であり、
前記ポリアルキレングリコール(D)はポリエチレングリコールであることを特徴とするポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
無機塩(B):硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
【請求項2】
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記ポリアルキレングリコール(D)を10~300質量部含有する請求項1に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
【請求項3】
更に、アルキル基の炭素数が6~22のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を含有する請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
【請求項4】
アルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)、下記の無機塩(B)、ポリアルキレングリコール(D)、及びポリエステル系樹脂を含有し、
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)のアルキル基が分岐のアルキル基であり、
前記ポリアルキレングリコール(D)はポリエチレングリコールであることを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
無機塩(B):硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
【請求項5】
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記ポリアルキレングリコール(D)を10~300質量部含有する請求項4に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項6】
更に、アルキル基の炭素数が6~22のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を含有する請求項4又は5に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項7】
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を10~300質量部含有する請求項6に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項8】
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)が、ナトリウム塩である請求項4から7のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項9】
前記無機塩(B)が、硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウムから選ばれる少なくとも一つである請求項4から8のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項10】
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記無機塩(B)を0.1~20質量部含有する請求項4から9のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項11】
請求項4から10のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂組成物を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂フィルム。
【請求項12】
2層以上の積層フィルムであって、少なくともどちらか一方の表層が請求項11に記載のポリエステル系樹脂フィルムであることを特徴とする積層フィルム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリエステル系樹脂フィルム用改質剤、並びにそれを含むポリエステル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂フィルム、及び積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等を包装する容器として、手で容易に剥がせるイージーピールフィルムを容器本体に張り付けた物が広く用いられている。また、イージーピールフィルムには、包装容器の内容物の視認性や生産性等の観点から、目的に応じて優れた透明性、防曇性及び帯電防止性等が求められている。
【0003】
このような容器は、一般的に、容器本体はポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂から製造されており、イージーピールフィルムはポリオレフィン樹脂やそれと接着性樹脂との混合物から製造されている。しかし、近年では環境への配慮から包装容器にもリサイクル性が求められており、イージーピールフィルムを容器本体と同一の材料であるポリエステル系樹脂で製造することが望まれている。
【0004】
ポリエステル系樹脂の性質を改善する一つの方法として、改質剤を添加することが広く行われている。例えば特許文献1は、ポリエステル系樹脂にポリアルキレングリコール及びスルホン酸金属塩誘導体を配合する工程を含むポリエステルフィルムの製法を開示している。特許文献2は、ポリエステル系樹脂と、スルホン酸金属塩誘導体と、芳香族アミン及び/又はそのアンモニウム塩とを含有するポリエステル組成物を開示している。特許文献3は、ポリエステル系樹脂にスルホン酸金属塩誘導体及び高級脂肪酸金属塩が配合されているポリエステルフィルムを開示している。特許文献4は、ポリエステル系樹脂にポリアルキレングリコール及び有機スルホン酸カルシウムが配合されたポリエステル樹脂組成物を開示している。しかし、これらの主な目的は帯電防止性の改善であり、防曇性の改善は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52-47071号公報
【特許文献2】特開昭63-308059号公報
【特許文献3】特開昭60-38123号公報
【特許文献4】特開2005-162910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、本開示は食品等を包装する際に用いるポリエステル系樹脂フィルムに優れた防曇性を付与できるポリエステル系樹脂フィルム用改質剤を提供することを課題とする。また、それを用いたポリエステル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂フィルム、及び積層フィルムも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段として、本開示は以下の手段を採る。
[1]アルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)、下記の無機塩(B)、及びポリアルキレングリコール(D)を含有し、合成樹脂を含有せず、前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)のアルキル基が分岐のアルキル基であり、前記ポリアルキレングリコール(D)はポリエチレングリコールであることを特徴とするポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
無機塩(B):硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
[2]前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記ポリアルキレングリコール(D)を10~300質量部含有する[1]に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
[3]更に、アルキル基の炭素数が6~22のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を含有する[1]又は[2]に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
[4]アルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)、下記の無機塩(B)、ポリアルキレングリコール(D)、及びポリエステル系樹脂を含有し、前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)のアルキル基が分岐のアルキル基であり、前記ポリアルキレングリコール(D)はポリエチレングリコールであることを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
無機塩(B):硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
[5]前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記ポリアルキレングリコール(D)を10~300質量部含有する[4]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[6]更に、アルキル基の炭素数が6~22のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を含有する[4]又は[5]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[7]前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を10~300質量部含有する[6]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[8]前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)が、ナトリウム塩である[4]から[7]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[9]前記無機塩(B)が、硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウムから選ばれる少なくとも一つである[4]から[8]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[10]前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記無機塩(B)を0.1~20質量部含有する[4]から[9]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[11][4]から[10]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂フィルム。
[12]2層以上の積層フィルムであって、少なくともどちらか一方の表層が[11]に記載のポリエステル系樹脂フィルムであることを特徴とする積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
≪ポリエステル系樹脂フィルム用改質剤≫
ポリエステル系樹脂フィルム用改質剤(以下、改質剤ともいう)は、アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)及び無機塩(B)を含有し、合成樹脂を含有しない。改質剤をポリエステル系樹脂フィルムに含有させることにより、該フィルムの防曇性を向上することができる。改質剤はポリエステル系樹脂フィルムの防曇性を更に向上するためにポリアルキレングリコール(D)を含有する。改質剤はアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を更に含有することにより、ポリエステル系樹脂フィルムの防曇性を更に向上することができる。なお、本発明の改質剤はアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)、無機塩(B)及びポリアルキレングリコール(D)を必須の構成要素とするが、それとは別に、アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)及び無機塩(B)を含有する改質剤、及び更にアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を含有する改質剤もポリエステル系樹脂フィルムの防曇性を向上するために使用可能である。
【0009】
<アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)>
アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)は、炭素数6~22のアルキル基を有する。アルキル基の炭素数は8~20が好ましく、9~16が更に好ましい。アルキル基は直鎖と分岐鎖のいずれも使用可能であるが、防曇性及びポリエステル系樹脂との混練性(実施例におけるマスターバッチの生産性)の観点から本発明では分岐鎖が用いられる。分岐鎖のアルキル基は直鎖のアルキル基よりもポリエステル系樹脂への溶解性が高いため、直鎖のアルキル基よりも高い効果を奏すると推測される。なお、この推測は単なる考察であり、本開示の内容を限定するものではない。アリール基は単環及び多環のいずれでもよい。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられるが、防曇性の観点からナトリウム塩が好ましい。アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)のアルキル基が分岐鎖である場合、異性体混合物であってもよい。
【0010】
アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-メチルペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルブチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘプチルベンゼンスルホン酸カリウム、4-(1-メチルヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-エチルペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルブチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸カリウム、4-(2-メチルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-メチルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-エチルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-メチルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-エチルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-メチルデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-プロピルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ペンチルヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-メチルウンデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ペンチルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-メチルドデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルウンデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-プロピルデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ペンチルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ヘキシルヘプチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルドデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-プロピルウンデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ペンタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルウンデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-ヘプチルオクチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ヘキシルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-プロピルトリデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルドデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘプタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ペンチルドデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-オクチルノニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ヘキシルドデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-オクチルデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノナデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-エチルヘプタデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、イコシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-ペンチルペンタデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘンイコシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルヘプタデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベヘニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(1-ブチルオクタデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、7-ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0011】
<無機塩(B)>
無機塩(B)は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムから選ばれる少なくとも一つである。無機塩(B)は、透明性の観点から硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウムから選ばれる少なくとも一つが好ましい。
【0012】
<アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)>
アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)は、炭素数6~22のアルキル基を有する。アルキル基の炭素数は8~20が好ましく、10~18が更に好ましい。アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられる。アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)としては、ヘキシルスルホン酸リチウム、ヘキシルスルホン酸ナトリウム、ヘキシルスルホン酸カリウム、オクチルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸カリウム、ノニルスルホン酸リチウム、ノニルスルホン酸ナトリウム、ノニルスルホン酸カリウム、デシルスルホン酸リチウム、デシルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸カリウム、ウンデシルスルホン酸リチウム、ウンデシルスルホン酸ナトリウム、ウンデシルスルホン酸カリウム、ドデシルスルホン酸リチウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸カリウム、トリデシルスルホン酸リチウム、トリデシルスルホン酸ナトリウム、トリデシルスルホン酸カリウム、テトラデシルスルホン酸リチウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸カリウム、ペンタデシルスルホン酸リチウム、ペンタデシルスルホン酸ナトリウム、ペンタデシルスルホン酸カリウム、ヘキサデシルスルホン酸リチウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸カリウム、ヘプタデシルスルホン酸リチウム、ヘプタデシルスルホン酸ナトリウム、ヘプタデシルスルホン酸カリウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸カリウム、ノナデシルスルホン酸リチウム、ノナデシルスルホン酸ナトリウム、ノナデシルスルホン酸カリウム、イコシルスルホン酸リチウム、イコシルスルホン酸ナトリウム、イコシルスルホン酸カリウム、ヘンイコシルスルホン酸リチウム、ヘンイコシルスルホン酸ナトリウム、ヘンイコシルスルホン酸カリウム、ドコシルスルホン酸リチウム、ドコシルスルホン酸ナトリウム、ドコシルスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0014】
<ポリアルキレングリコール(D)>
ポリアルキレングリコール(D)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を使用可能であるが、本発明ではポリエチレングリコールが用いられる。また、ポリエチレングリコール以外のポリアルキレングリコール(D)を使用する場合、ポリアルキレングリコール(D)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等の2種以上の共重合体であってもよく、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれでもよい。ポリアルキレングリコール(D)は、片末端又は両末端が有機基で置換された末端封鎖型であってもよい。ポリアルキレングリコール(D)の平均重量分子量は、200~30000が好ましく、400~20000が更に好ましい。
【0015】
<含有割合>
改質剤は、防曇性及び透明性の観点からアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、無機塩(B)を0.1~20質量部含有することが好ましく、0.1~10質量部含有することが更に好ましい。改質剤がアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を含有する場合、防曇性及び透明性の観点からアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を10~300質量部含有することが好ましく、10~100質量部含有することが更に好ましい。改質剤がポリアルキレングリコール(D)を含有する場合、防曇性及びポリエステル系樹脂組成物やポリエステル系樹脂フィルムの生産性の観点からアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、ポリアルキレングリコール(D)を10~1000質量部含有することが好ましく、10~300質量部が更に好ましい。
【0016】
≪ポリエステル系樹脂組成物≫
次に、本開示に係るポリエステル系樹脂組成物について説明する。ポリエステル系樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂と改質剤とを含有するものであり、高濃度の改質剤を含むマスターバッチや、後述するポリエステル系樹脂フィルムの製造工程における中間産物等を含む。
【0017】
<ポリエステル系樹脂>
ポリエステル系樹脂としては、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体を基本構成とする樹脂であって、公知のものを用いることができる。多価カルボン酸としては、特に制限はなく、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカン二酸、1,6-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族又は脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。上記多価カルボン酸としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。一方、多価アルコールとしては、特に制限はなく、例えば1,2-エタンジオール、2,2’-オキシジエタノール、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタノール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルバイド等の脂肪族又は脂環式ジオール単位、キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等が挙げられる。上記多価アルコールとしてはこれらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、イソフタル酸を共重合させた酸変性ポリエステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールを共重合させたグルコール変性ポリエステル(PET-G)等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
ポリエステル系樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、アンチブロッキング剤、着色防止剤、消臭剤、抗酸化剤、結晶核剤、熱安定剤、難燃剤、滑剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
なお、ポリエステル系樹脂組成物がマスターバッチである場合、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂と改質剤(上記(A)~(D)成分)との合計100質量部に対して、改質剤を1~60質量部含有することが好ましく、10~45質量部含有することが更に好ましい。一方、ポリエステル系樹脂組成物が製造工程における中間産物である場合、改質剤の含有量は製造工程に応じて任意に変更可能である。ただし、フィルム状に成形する際のポリエステル系樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂と改質剤((A)~(D)成分)との合計100質量部に対して、改質剤を0.1~10質量部含有することが好ましく、1~6質量部含有することが更に好ましい。
【0020】
≪ポリエステル系樹脂フィルム≫
次に、本開示に係るポリエステル系樹脂フィルムについて説明する。ポリエステル系樹脂フィルムは、ポリエステル系樹脂フィルム中の改質剤が所定濃度になるようにポリエステル系樹脂組成物を含有する。なお、本開示において「ポリエステル系樹脂組成物を含有するポリエステル系樹脂フィルム」とは、ポリエステル系樹脂組成物をそのまま含有するものに加えて、防曇性が向上されているものであれば、ポリエステル系樹脂組成物を成形等する過程においてその成分が変性等したものも含む。
【0021】
ポリエステル系樹脂フィルムは、ポリエステル系樹脂と改質剤(上記(A)~(D)成分)との合計を100質量部とした場合に、改質剤を0.1~10質量部含有することが好ましく、1~6質量部含有することが更に好ましい。
【0022】
<製造方法>
本開示のポリエステル系樹脂フィルムは、所定の濃度の改質剤を含有するポリエステル系樹脂組成物をフィルム状に成形することにより製造され、その製造には公知の方法を用いることができる。所定の濃度の改質剤を含有するポリエステル系樹脂組成物の作成は、例えば、1)予めポリエステル系樹脂と高濃度の改質剤とを含有するマスターバッチを作製しておき、このマスターバッチを更にポリエステル系樹脂と混合して所定のポリエステル系樹脂組成物とする方法、2)予めポリエステル系樹脂と改質剤とをタンブラーブレンダー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機に投入して混合し、その混合物を単軸押出し機や多軸押出し機等の押出し機により溶融混練しつつ造粒して所定のポリエステル系樹脂組成物とする方法、3)ポリエステル系樹脂を単軸押出し機や多軸押出し機等の押出し機により溶融状態としたところへ、改質剤をサイドフィード又は液状注入により混合し、溶融混練しつつ造粒して所定のポリエステル系樹脂組成物とする方法、4)2)及び3)を組み合わせて行う方法等が挙げられる。1)のマスターバッチの製造は、前記2)、3)及び4)と同様に行うことができる。ポリエステル系樹脂と改質剤とを混合する手段として、タンブラーブレンダー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機による混合、サイドフィード、液状注入のどの方法を採用するかは、ポリエステル系樹脂及び改質剤の形状によって決めることができ、固体の場合はタンブラーブレンダー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機による混合又はサイドフィードを採用し、また液体の場合は液状注入又はスーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機を採用する。固体のものについては、液状のものに溶解又は分散させた後、液体又は液状体として混合することもできる。
【0023】
ポリエステル系樹脂フィルムを成形する方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、空冷インフレーション成形、空冷2段インフレーション成形、空冷3段インフレーション成形、水冷インフレーション成形等のインフレーション成形、Tダイとしてストレート・マニホールド型、コート・ハンガー型、これらを組み合わせたもの等を用いたTダイ成形が挙げられる。また、フィルムは延伸してもよく、延伸方法としてはテンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法、インフレーション法による二軸延伸法等が挙げられる。フィルムの厚みは3μm~350μmが好ましいが、この厚さに限定されない。
【0024】
≪積層フィルム≫
積層フィルムは、2層以上の積層フィルムであって、上述の改質剤を含有するポリエステル系樹脂フィルムを少なくともどちらか一方の表層として有する。積層フィルムの他の層は、熱可塑性樹脂、接着剤、アンカーコート剤、接着性樹脂等によって形成される。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂として、ポリエステル系樹脂フィルムに含有される材料と同じポリエステル系樹脂を用いることもできる。熱可塑性樹脂には、合目的的に添加剤を含有させることもできる。添加剤としては、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、熱安定剤、中和剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、結晶核剤等が挙げられる。
【0025】
積層フィルムは、公知の方法で製造できる。例えば製造方法としては、ドライラミネート法、サンドラミネート法、押出しラミネート法、共押し出し法等が挙げられる。ドライラミネート法、サンドラミネート法、押出しラミネート法により積層フィルムを製造する場合には、公知のポリウレタン系接着剤、有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤及び接着性樹脂等を使用することができる。共押し出し法による製造では、インフレーション成形及びTダイ成形を用いることができ、未延伸及び延伸方法による延伸のどちらの成形方法を用いることもできる。積層フィルムの厚みは5μm~1000μmが好ましいが、この厚さに限定されない。また、各層の厚みの比も任意に設定可能である。
【0026】
本開示のポリエステル系樹脂用改質剤は、アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)と、無機塩(B)とを含有してなる。これにより、改質剤を含有するポリエステル系樹脂フィルムに優れた防曇性を付与できる。
【実施例0027】
以下、本開示の構成及び効果をより具体的とする実施例を以下に挙げる。以下の実施例、参考例及び比較例において、部は質量部を意味する。表1は、各実施例、各参考例および各比較例における改質剤の成分とその質量比を示す。
【0028】
実施例1-1
アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩としてアルキル基の炭素数が9~16である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの混合物(A-1)100部、無機塩として硫酸ナトリウム(B-1)4.0部、アルキルスルホン酸金属塩としてアルキル基の炭素数13~18のアルキルスルホン酸ナトリウム(C-1)50部、ポリアルキレングリコールとしてPEG6000(D-1)50部を均一混合することで、改質剤(K-1)を得た。
【0029】
実施例1-2~1-10,1-13、参考例1-11,1-12,1-14~1-19及び比較例1-1~1-4
実施例1-1の改質剤(K-1)と同様にして、表1に示す組成の実施例1-2~1-10,1-13、参考例1-11,1-12,1-14~1-19の改質剤(K-2~K-19)および比較例1-1~1-4の改質剤(k-1~k-4)を得た。
【0030】
【0031】
表1中の各成分は以下の通りである。
アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)
A-1:アルキル基の炭素数が9~16である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの混合物
A-2:アルキル基の炭素数が12である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの異性体混合物
A-3:アルキル基の炭素数が6である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの異性体混合物
A-4:アルキル基の炭素数が22である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの異性体混合物
A-5:アルキル基の炭素数が12である分岐型アルキルベンゼンスルホン酸リチウムの異性体混合物
A-6:(直鎖型)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
a-1:(直鎖型)ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム
a-2:(直鎖型)4-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム
【0032】
無機塩(B)
B-1:硫酸ナトリウム
B-2:塩化ナトリウム
B-3:硫酸カリウム
B-4:塩化リチウム
b-1:塩化マグネシウム
【0033】
アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)
C-1:アルキル基の炭素数13~18のアルキルスルホン酸ナトリウム
C-2:ヘキシルスルホン酸リチウム
C-3:ドコシルスルホン酸ナトリウム
【0034】
ポリアルキレングリコール(D)
D-1:PEG6000
D-2:PEG400
D-3:PEG13000
【0035】
表2は、実施例、参考例および比較例におけるマスターバッチ(ポリエステル系樹脂組成物)の原料を示す。
【0036】
実施例2-1
ポリエステル系樹脂として商品名「RAMAPET N-1」(Indorama Ventures Public Company Limited製)(R-1)80部と、実施例1-1で得た改質剤(K-1)20部とを、フィーダーを用いて同軸二軸混練押出機へ供給し、250~290℃にて溶融混練し、ストランドダイより押出し、水で急冷し、ストランドを得た。このストランドをペレタイザーでカッティングして、ポリエステル系樹脂に改質剤(K-1)が分散されたマスターバッチ(N-1)を得た。
【0037】
実施例2-2~2-10,2-13、参考例2-11,2-12,2-14~2-19及び比較例2-1~2-4
実施例2-1のマスターバッチ(N-1)と同様にして、表2に示す組成の実施例2-2~2-10,2-13、参考例2-11,2-12,2-14~2-19のマスターバッチ(N-2~N-19)及び比較例2-1~2-4のマスターバッチ(n-1~n-4)を得た。
【0038】
【0039】
表2において、R-1~R-3は、それぞれ以下を表す。
R-1:商品名「RAMAPET N-1」(Indorama Ventures Public Company Limited製)
R-2:商品名「ベルペットVH800S-R」(ベルポリエステルプロダクツ社製)
R-3:商品名「EASTER GN001」(イーストマンケミカルジャパン社製)
【0040】
表3は、各マスターバッチ(N-1~N-19、n-1~n-4)の生産性の評価結果を示す。なお、マスターバッチの生産性は、以下の方法により評価した。
【0041】
<マスターバッチの生産性>
マスターバッチ(N-1~N-19、n-1~n-4)を製造する際に、マスターバッチの製造安定性を目視で観察し、以下の基準で評価した。
3:ベントアップやストランド暴れは起こらなかった。
2:ベントアップは起こらなかったが、ストランド暴れが起きた。
1:ベントアップが起きた。
【0042】
【0043】
実施例2-1~実施例2-10,2-13、参考例2-11,2-12,2-14~2-19のマスターバッチは、良好に製造することができた。一方、比較例2-3のマスターバッチはベントアップが生じてしまい、生産性が劣っていた。なお、参考例2-15、2-16及び2-18を比較すると、ナトリウム塩であるアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)はリチウム塩であるアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)よりもマスターバッチの生産性に優れていた。また、参考例2-15、2-16及び2-19を比較すると、分岐型のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)は直鎖型のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)よりもマスターバッチの生産性に優れていた。
【0044】
表4は、各実施例、参考例および比較例におけるフィルム(ポリエステル系樹脂フィルム)の製造原料、フィルムの組成、製造時の二軸延伸工程の有無、及び、フィルムの厚さを示す。フィルムの原料の欄には、フィルムを製造した際のポリエステル系樹脂とマスターバッチの各使用量を示す。フィルムの組成の欄には、得られたフィルムにおけるポリエステル系樹脂と改質剤の各含有量を示す。
【0045】
実施例3-1
ポリエステル系樹脂として商品名「RAMAPET N-1」(R-1)90部と、マスターバッチ(N-1)10部とを、フィーダーを用いて同軸二軸混練押出機へ供給し、260~280℃にて溶融混練した。次いで、マルチマニホールドTダイを用いて、溶融樹脂の供給量及びスクリュー回転速度を調整しつつ、30℃に調温した冷却ロール上に巻き取り、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを110℃で縦3倍、横4倍に延伸した後、235℃で熱処理を施し、室温まで徐冷し、厚さ15μmのフィルム(F-1)を得た。
【0046】
実施例3-2~3-10,3-13、参考例3-11,3-12,3-14~3-19及び比較例3-1~3-4
実施例3-1のフィルム(F-1)と同様にして、表4に示す組成及び膜厚の実施例3-2~3-10,3-13、参考例3-11,3-12,3-14~3-19のフィルム(F-2~F-19)及び比較例3-1~3-4のフィルム(f-1~f-4)を得た。なお二軸延伸を行わない場合は、実施例3-1における未延伸フィルムを得る工程までを行った。
【0047】
【0048】
表4において、R-4は以下を表す。
R-4:商品名「SKYBON ES-220」(SK Chemicals社製)
【0049】
表5は、フィルム(F-1~F-19、f-1~f-4)について、防曇性、透明性、及び生産性の各評価を行った結果を示す。なお、防曇性、透明性、及び生産性は、以下の方法により評価した。
【0050】
<防曇性>
フィルムを20℃、相対湿度65%で24時間調湿した後、40℃の水を入れたビーカーの口に被着し、5℃の雰囲気下で静置した。24時間後にフィルムへの水滴の付着具合と、フィルムを介したビーカー内の視認性とに基づき、以下の基準で防曇性を評価した。
5:水滴の付着が無く、ビーカー内がしっかりと視認できる。
4:大きな水滴の付着があるが、ビーカー内が視認できる。
3:大きな水滴が付着しており、水滴によりビーカー内が視認しにくい。
2:小さな水滴と大きな水滴が付着しており、水滴によりビーカー内が視認しにくい。
1:多数の小さな水滴が付着しており、ビーカー内が視認できない。
【0051】
<透明性>
フィルムを20℃、相対湿度65%で24時間調湿した後、ヘイズメーター(日本電色工業社製、「NDH-5000」)を用いて、JIS K 7136:2000に準拠した方法でヘイズ値を測定した。測定したヘイズ値に基づき、透明性を以下の基準で評価した。
4:10%未満
3:10%以上、20%未満
2:20%以上、30%未満
1:30%以上
【0052】
<生産性>
フィルム(F-1~F-19、f-1~f-4)を製造する際において、原料を同軸二軸混練押出機で溶融混練する過程で発煙成分に由来する装置汚染が生じることなく、連続運転できた時間を測定し、以下の基準で評価した。
3:20時間超
2:4時間超、20時間以下
1:4時間以下
【0053】
【0054】
実施例3-1から3-10,3-13、参考例3-11,3-12,3-14~3-19は、優れた防曇性、透明性、及び生産性を有していた。一方、比較例3-1及び3-4は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムのいずれも含有しないため、防曇性が劣っていた。比較例3-2及び3-3は、アルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩を含有しないため、防曇性が劣っていた。
【0055】
表6は、各実施例、参考例及び比較例における積層フィルムを示す。積層フィルムは、改質剤を含有するフィルムであるA層と、2つのA層の間に配置されており、ポリエステル系樹脂からなるB層とを備える。A層の原料の欄には、フィルムを製造した際のポリエステル系樹脂とマスターバッチの各使用量を示す。A層の組成の欄には、製造されたA層におけるポリエステル系樹脂と改質剤の各含有量を示す。表6には、更に各層の厚さの比、積層フィルムの製造時の二軸延伸工程の有無、及び積層フィルムの膜厚を示す。
【0056】
実施例4-1
商品名「RAMAPET N-1」(R-1)90部と、マスターバッチ(N-1)10部とを、フィーダーを用いて第1の同軸二軸混練押出機へ供給し、260~280℃にて溶融混練した。一方、商品名「RAMAPET N-1」(R-1)のみを第2の同軸二軸混練押出機へ供給し、260~280℃にて溶融混練した。次いで、マルチマニホールドTダイを用いて、溶融樹脂の供給量及びスクリュー回転速度を調整しつつ、改質剤を含有する溶融樹脂からなる層が両表層に、改質剤を含有しない溶融樹脂からなる層が中間層になるよう共押出しして30℃に調温した冷却ロール上に巻き取り、A層(一方の表層)、B層(中間層)及びA層(他方の表層)の厚さの比が、1:1:1となる積層未延伸フィルムを得た。得られた積層未延伸フィルムを、110℃で縦3倍、横4倍に延伸した後、235℃で熱処理を施し、室温まで徐冷し、厚さ45μmの積層フィルム(M-1)を得た。
【0057】
実施例4-2~4-10,4-13、参考例4-11,4-12,4-14~4-19及び比較例4-1~4-4
実施例4-1の積層フィルム(M-1)と同様にして、表6に示す組成及び膜厚の実施例4-2~4-10,4-13、参考例4-11,4-12,4-14~4-19のフィルム(M-2~M-19)及び比較例4-1~4-4のフィルム(m-1~m-4)を得た。なお二軸延伸を行わない場合は、実施例4-1における積層未延伸フィルムを得る工程までを行った。
【0058】
【0059】
表7は、積層フィルムについて上述する防曇性、透明性、生産性の各評価を行った結果を示す。
【0060】
【0061】
実施例4-1から4-10,4-13、参考例4-11,4-12,4-14~4-19は、優れた防曇性、透明性、及び生産性を有していた。一方、比較例4-1及び4-4は、A層が硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムのいずれも含有しないため、防曇性が劣っていた。比較例4-2及び4-3は、A層がアルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩を含有しないため、防曇性が劣っていた。
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記ポリアルキレングリコール(D)を10~300質量部含有する請求項1に記載のポリエステル系樹脂フィルム用改質剤。
アルキル基の炭素数が6~22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)、下記の無機塩(B)、ポリアルキレングリコール(D)、及びポリエステル系樹脂を含有し、
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)のアルキル基が分岐のアルキル基であり、
前記ポリアルキレングリコール(D)はポリエチレングリコールであることを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
無機塩(B):硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記ポリアルキレングリコール(D)を10~300質量部含有する請求項4に記載のポリエステル系樹脂組成物。
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記アルキルスルホン酸アルカリ金属塩(C)を10~300質量部含有する請求項6に記載のポリエステル系樹脂組成物。
前記アルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩(A)100質量部に対し、前記無機塩(B)を0.1~20質量部含有する請求項4から9のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂組成物。