(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043255
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】スラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
E04B5/40 F
E04B5/40 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150766
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】595027099
【氏名又は名称】株式会社ニッケンビルド
(74)【代理人】
【識別番号】100090114
【弁理士】
【氏名又は名称】山名 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勝弘
(57)【要約】
【課題】リブの小口を押し潰して塞ぐ加工技術を導入することにより、形状が異なる多品種のリブ付きコンクリート止め材の製作を求められる場合であっても、都度対応する成形金型を必要とすることなく前記一定幅のリブを略平坦状の小口塞ぎの形状に形成(変形)し、打設コンクリートのノロ漏れを防止することができる、施工性、経済性に優れたスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材を提供する。
【解決手段】前記リブ付きコンクリート止め材1は、梁材10の上面に載る下辺部2と、前記下辺部2の一側端から略垂直に立ち上がる側辺部3とよりなる略L字状の金属条材であって、前記金属条材の長手方向に間隔をあけて前記長手方向と直交する方向の略L字状の内側に突出するリブ4が形成されている。また、前記下辺部2の他側端部のリブ4が押し潰された小口を塞ぐ加工部5を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁材の上面に載る下辺部と、前記下辺部の一側端から略垂直に立ち上がる側辺部とよりなる略L字状の金属条材であって、
前記金属条材の長手方向に間隔をあけて前記長手方向と直交する方向の略L字状の内側に突出するリブが形成されていること、
前記下辺部の他側端部のリブが押し潰された小口を塞ぐ加工部を備えていること特徴とする、スラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材。
【請求項2】
前記側辺部の上端部のリブが押し潰された加工部を備えていること特徴とする、請求項1に記載したスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材。
【請求項3】
前記略L字状の内側に突出するリブは、断面略半円弧状に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材。
【請求項4】
前記側辺部の上端に、前記下辺部側へ延びるフランジ部が設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載したスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材。
【請求項5】
前記加工部は、前記下辺部の他側端部のリブの中央部を押し潰して左右の外縁をヘミング曲げされた状態で折り曲げて形成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載したスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートスラブを構築する際、捨て型枠として使用すると共にスラブ廻りのコンクリートの流出を防止するリブ付きコンクリート止め材の技術分野に属し、さらにいえば、梁材の外側に張り出してコンクリートスラブを構築する際に特に好適に用いられるスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートスラブを構築する場合、例えば本出願人による下記特許文献1に従来技術として開示された
図9、
図10に示すように、コンクリート漏れ止め板6を用いた工法が知られている。
しかし、前記コンクリート漏れ止め板6では、コンクリートスラブを梁材1の外側に張り出して構築することはできないので、この場合は同
図11に示すように、下辺15と、該下辺15の一側端から垂直に立ち上がる側辺16と、該側辺16の上端から前記下辺15側に直角に屈曲したフランジ17とよりなる条材のコンクリート止め材18を用い、その下辺15の他側端部を梁材1の外側端部に載せ、長手方向で適当間隔にスポット溶接19にて固定してコンクリート止め材18を梁材1の外側に張り出して設置し、さらにフランジ17と梁材1の上面とに多数本の倒れ防止筋20を長手方向で一定間隔に溶接してコンクリート止め材18の外側方への倒れを防止して実施していた。
【0003】
しかし、前記コンクリート止め材18と梁材1の上面とに多数本の倒れ防止筋20を溶接することは甚だ手間暇がかかり、コンクリート止め材18の取付け作業が煩雑となる問題があった。また、倒れ防止筋20が梁材1上での他の作業の邪魔となり、コンクリートスラブ構築の作業性が悪くなるという問題もあった。
【0004】
そこで、前記特許文献1では、前記した従来技術に係るコンクリート止め材18の形態をベースに、その長手方向に間隔をあけて長手方向と直交する方向の内側に断面円弧状(以下、より正確に断面略半円弧状という。)に突出するリブ22を設けて改良した所謂リブ付きコンクリート止め材23を開発した(請求項1、
図1~
図3等を参照)。
【0005】
前記特許文献1に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材23によれば、新たに形成したリブ22の補強効果により、下辺15が梁材1から外方へ張り出してもコンクリート荷重により大きく変形しない(下側にたわまない)強度が備わり、側辺16が外側方に反らない強度が備わり、また、側辺16が下辺15との接続屈曲部で外側方に開かない強度が備わることになった。
よって、このリブ付きコンクリート止め材23の下辺15の他側端部を梁材1の外側端部に載せて長手方向で適当間隔にスポット溶接19して固定するだけで、梁材1、1間に載架したデッキプレート2上にコンクリート4を打設した際、その荷重を受けても大きく変形せず、リブ付きコンクリート止め材23は型枠(捨て型枠)の機能とコンクリート流出防止機能を発揮でき、精度の高いコンクリートスラブ5を構築できるようになった。また、従来のような倒れ防止筋20等の補強が不要となるので、リブ付きコンクリート止め材23の取付け作業が簡素化され、しかも梁材1上での他の作業がスムーズにできるようになり、コンクリートスラブ構築の作業性が向上することとなった。さらに、リブ22の補強効果により強度が高くなったので、板厚を薄くして実施できる等、軽量化も実現可能となった。
【0006】
よって、前記特許文献1に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材23によれば、従来のコンクリート止め材18と比し、強度が高く、倒れ防止筋等の補強が不要で、しかも軽量化できるので、有益な技術と云える。
【0007】
しかし、前記特許文献1に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材23は、内側に断面略半円弧状に突出するリブを、条材(コンクリート止め材)を横断するように、条材の長手方向と直交する方向の下辺及び側辺の全長に亘って連続的に設けた構成で実施しているが故に、打設したコンクリート(ノロ)が、前記下辺に連続的に形成したリブと前記梁材の上面とが形成する断面略半円弧状(略半円筒状)の貫通孔の開口部を通って外部へ漏出するという新たな問題を孕んでいた。
そのため、前記リブ付きコンクリート止め材を用いてコンクリートスラブを構築する場合は、その下辺の他側端部を梁材の外側端部に固定した後、コンクリートを打設する前に、前記貫通孔の開口部の入口をガムテープで塞ぐ(小口を塞ぐ)等、一手間加える必要があった。
【0008】
そこで、下記特許文献2では、前記特許文献1に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材23の形態をベースに、同文献2の
図1等に示したように、前記下辺部の他側端部の一定幅にリブを形成しないリブ付きコンクリート止め材1を開発した。
この特許文献2に係るリブ付きコンクリート止め材1によれば、下辺部の他側端部は一定幅を打設コンクリートが漏出しない、小口を塞ぐ平坦に形成されているので、打設コンクリート(ノロ)が、外部へ漏出することはなくなった。よって、従来(特許文献1)のようなガムテープで塞ぐ等の手間を省略できるのでリブ付きコンクリート止め材1を梁上に固定した後、速やかにコンクリートの打設作業に着手できる等、施工性を向上させることができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第2576409号公報
【特許文献2】実用新案登録第3216563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献2に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材によれば、前記特許文献1に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材に係る効果(前記段落[0006]参照)に加え、ガムテープでリブの隙間を塞ぐ等の手間を省略できる等、施工性を向上させることができるので、非常に有益な技術と云える。
【0011】
しかしながら、前記特許文献2に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材は、前記特許文献1に係る下辺部及び側辺部の全長に亘ってリブを設けた単純形状のスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材と大きく異なり、一定幅にリブを形成しない平坦部分を備えた、形状が異なる多品種のリブ付きコンクリート止め材毎に、その都度リブ形状、ひいてはリブ付きコンクリート止め材の形状に対応する成形金型を必要としていた。
よって、前記成形金型の数量が必然的に増大し、その結果、前記成形金型の製作コストが嵩むという問題があった。また、前記リブ付きコンクリート止め材を製作するにあたり、前記成形金型の交換作業も必然的に増えるので、施工性(生産稼働率)を損なう問題もあった。その他、前記成形金型の数量増大に伴い、メンテナンスフィーもその分増大するという問題もあった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、前記リブの小口を押し潰して塞ぐ加工技術を導入することにより、形状が異なる多品種のリブ付きコンクリート止め材の製作を求められる場合であっても、都度対応する成形金型を必要とすることなく前記一定幅のリブを略平坦状(例えば、
図9~
図13に示したような平坦部と閉塞部(層状部)との組み合わせ)の小口塞ぎの形状に形成(変形)し、打設コンクリートのノロ漏れを防止することができる、施工性、経済性に優れたスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材は、梁材の上面に載る下辺部と、前記下辺部の一側端から略垂直に立ち上がる側辺部とよりなる略L字状の金属条材であって、
前記金属条材の長手方向に間隔をあけて前記長手方向と直交する方向の略L字状の内側に突出するリブが形成されていること、
前記下辺部の他側端部のリブが押し潰された小口を塞ぐ加工部を備えていること特徴とする。
【0014】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材において、前記側辺部の上端部のリブが押し潰された加工部を備えていること特徴とする。
【0015】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載したスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材において、前記略L字状の内側に突出するリブは、断面略半円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載した発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載したスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材において、前記側辺部の上端に、前記下辺部側へ延びるフランジ部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載した発明は、請求項1~4のいずれか1項に記載したスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材において、前記加工部は、前記下辺部の他側端部のリブの中央部を押し潰して左右の外縁をヘミング曲げされた状態で折り曲げて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材によれば下記の効果を奏する。
前記リブ付きコンクリート止め材の長手方向と直交する方向(短手方向)の下辺部及び側辺部の全長に亘って設けた略L字状に形成したリブの前記下辺部の他側端部が押し潰された小口を塞ぐ加工部を備えた形状で実施されるので、打設コンクリートのノロ漏れを防止することができる。具体的には、前記加工部を、略平坦状(例えば、
図9~
図13に示したような閉塞部(層状部)5aと平坦部5bとの組み合わせ)の小口塞ぎの形状に形成することでリブの小口を塞ぐことができ、前記した単純形状の前記リブ付きコンクリート止め材で多様な形状を製作できる。よって、形状が異なる多品種のリブ付きコンクリート止め材の製作を求められる場合であっても、都度リブ形状、ひいてはリブ付きコンクリート止め材の形状に対応する成形金型を必要とすることがなく、施工性(生産稼働性)、経済性に優れたスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材を実現することができる。また、都度対応する成形金型が不要となるので、その分、成形金型のメンテナンスフィーも低減できる。
【0019】
請求項4に係る発明のように、フランジ部を設けた構成で実施すると、より強度が高いリブ付きコンクリート止め材を実現できる。
もとより、前記特許文献1に係るリブ付きコンクリート止め材(23)と同様に、コンクリートの打設作業の際、下辺が梁材から張り出しても下側にたわまない強度を備えていると共に、側辺部が外側方に反らない強度も備えており、また、側辺部が下辺部との接続屈曲部で外側方に開かない強度も備えている。すなわち、リブの補強効果により、強度が高く、倒れ防止筋等の補強が不要で、しかも軽量化できる等、種々の効果を発揮することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材を示す斜視図である。
【
図6】Aは、
図3のB-B線矢視断面図であり、Bは、AのX部拡大図である。
【
図7】前記リブ付きコンクリート止め材を梁材上に固定した状態を示す斜視図である。
【
図8】梁材上に固定した前記リブ付きコンクリート止め材とデッキプレートとの上面にコンクリートを打設してコンクリートスラブを構築した状態を示す断面図である。
【
図9】本発明に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材の下辺部側に設けた加工部を俯瞰的に見た拡大図(写真)である。
【
図10】
図9の加工部を左側面上方から見た俯瞰図(写真)である。
【
図11】
図9の加工部を右側面上方から見た俯瞰図(写真)である。
【
図12】
図9の加工部を正面上方から見た俯瞰図(写真)である。
【
図13】
図9の加工部を正面下方から仰視した拡大図(写真)である。
【
図14】
図9とは異なる実施例に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材の下辺部側に設けた加工部を上方から見た俯瞰図(写真)である。
【
図15】
図14の加工部を左側面上方から見た俯瞰図(写真)である。
【
図16】
図9とは異なる実施例に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材の下辺部側に設けた加工部を上方から見た俯瞰図(写真)である。
【
図17】
図16の加工部を正面上方から拡大して示した俯瞰図(写真)である。
【
図18】
図16の加工部を左側面上方から見た俯瞰図(写真)である。
【
図19】
図9とは異なる実施例に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材の下辺部側に設けた加工部を上方から見た俯瞰図(写真)である。
【
図20】
図19の加工部を正面上方から拡大して示した俯瞰図(写真)である。
【
図21】
図19の加工部を左側面上方から見た俯瞰図(写真)である。
【
図22】異なる加工部の形状を
図5に倣って示したバリーション図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例0022】
図1~
図13は、本発明に係るスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材1の実施例を示している。
前記リブ付きコンクリート止め材1は、梁材10の上面に載る下辺部2と、前記下辺部2の一側端から略垂直に立ち上がる側辺部3とよりなる略L字状の金属条材であって、前記金属条材の長手方向に間隔をあけて前記長手方向と直交する方向の略L字状の内側に突出するリブ4が形成されている。また、前記下辺部2の他側端部のリブ4が押し潰された小口を塞ぐ加工部5を備えている。
前記リブ4は、本実施例では、断面略半円弧状に形成されている(
図5参照)。
前記リブ付きコンクリート止め材1は、本実施例では、前記側辺部3の上端部のリブ4にも平坦状に押し潰された加工部6を備えている。
ちなみに図中の符号3aは、部材自体の強度を高めるべく、前記側辺部3の上端部を前記下辺部2側へ略水平に折り曲げて形成したフランジ部を示しており、符号3bは、前記リブ付きコンクリート止め材1を長手方向に一部ラップさせて隙間なく継ぎ足すための切欠き部を示している。
【0023】
前記下辺部2側に設けた押し潰された小口を塞ぐ加工部5は、リブ4の小口を塞ぐ(エンドクローズ)ことで、打設コンクリートのノロ漏れを防止する役割を果たしている。一方、前記側辺部3側に設けた押し潰された加工部6は、前記したように部材自体の強度を高めるために適宜、前記側辺部3の上端部を前記下辺部2側へ略水平に折り曲げてフランジ部3aを形成する場合があるが、その折り曲げ作業を容易ならしめる役割を果たしている。ちなみに、押し潰された加工部6の形状(凹凸形状)は、折り曲げやすくするため、凹凸が小さく、より平坦に近い方が好ましい。
【0024】
本実施例1に係るリブ付きコンクリート止め材1の大きさ等は、あくまでも一例として、
図4が分かりやすいように、下辺部2の幅寸(W)が250mm、側辺部3の高さ(H)が200mm、板厚が1mm、長さが2000mmの金属条材の長手方向に200mm(両端部からは100mm)の間隔をあけて、内側に幅25mmで高さ10mmの略半円弧状(略半円筒形状)に突出するリブ4を設けた構成とされる。また、前記加工部5の幅寸法(G)が10mm、前記加工部6の高さ寸法(J)が5mm、曲げ寸法(フランジ部3a)が5mmで実施されている。
なお、前記各寸法は、これに限定されず、構造設計に応じて適宜増減可能である。
【0025】
次に、前記下辺部2に施す加工部5の形成方法について説明する。なお、以下に説明する方法はあくまでも一例に過ぎないことを念のため特記しておく。
前記加工部5の形成方法は、前記下辺部2の他側端部の構造設計に基づいた所望の長さ範囲W1(例えば、60mm)のリブ4に加工部5を形成するにあたり、先ず、前記W1のリブの平面視中央部を上金型で加圧して押し潰す。そうすると、前記W1に加圧面とV字傾斜面とが形成され、両外側に広がる辺縁面を金型で拘束する。次に、前記両外側に広がった辺縁面にそれぞれヘミング曲げを施して前記辺縁面を縦方向に180°折れ曲がった2層構造に形成する。次に、前記両外側の辺縁面(すなわち両外縁)をヘミング曲げされた状態で外側(又は内側)の下辺部2に倒し(折り曲げ)、3層構造を呈する閉塞部(層状部)5aを形成する。しかる後、前記V字傾斜面を加圧して直線状に変形させて平坦部5bに形成し、もって、前記リブ4の所望の長さ範囲W1の先端部分(本実施例では10mm)を略平坦状(例えば、
図9~
図13に示したような閉塞部5aと平坦部5bとの組み合わせ)の小口を塞ぐ加工部5に形成する。ちなみに図中の符号4aは、加圧作業の影響で傾斜した傾斜部を示している。
一方、前記側辺部3に施す加工部6の形成方法も、上述した方法で形成するのでその説明を割愛する。
【0026】
かくして、上記構成のリブ付きコンクリート止め材1を用いてコンクリートスラブを梁材10の外側に張り出して構築する場合、先ず、前記下辺部2の他側端部を、
図7に示したように、梁材(図示例ではH形鋼)10の上フランジの外側端部に(例えば幅60mm程度)載せ、スポット溶接にて外側に張り出して設ける。前記リブ付きコンクリート止め材1は、その長手方向に前記切欠き部3aを利用して隙間が生じないように必要な個数継ぎ足して設ける。一方、前記上フランジの内側端部には、デッキプレート12が載架されている(
図8参照)。
なお、前記スポット溶接する際は、長手方向に適宜継ぎ足した隣接するリブ付きコンクリート止め材1、1同士の隙間からコンクリート11のノロが流出(漏出)しないように、前記重合接続状態が確実に保持されていることを確認して行う。
しかる後、
図8に示したように、デッキプレート12上に配筋13を行い、コンクリート11を打設し、もって、コンクリートスラブ9が構築される。
【0027】
前記リブ付きコンクリート止め材1は、前記リブ4の補強効果、及び前記フランジ部3aの形成効果により、下辺部2が梁材10から張り出しても下側にたわまない強度を備えていると共に、側辺部3が外側へ反らない強度が備わり、また側辺部3と下辺部2との接続屈曲部が外側へ開かない強度が備わっているので、打設コンクリート11の荷重を受けても変形せず、安定した姿勢を呈して型枠(捨て型枠)の機能とコンクリート流出防止機能を発揮でき、品質に優れたコンクリートスラブ9を構築することができる。
加えて、上記構成のリブ付きコンクリート止め材1によれば、前記リブ4における下辺部2の他側端部の一定幅を打設コンクリート11が漏出しない小口を塞ぐ加工部5を備えているので、打設コンクリート11のノロが、外部へ漏出することを防ぐことができる。具体的には、前記加工部5を、略平坦状(例えば、
図9~
図13に示したような閉塞部(層状部)5aと平坦部5bとの組み合わせ)の小口塞ぎの形状に形成することでリブの小口を塞ぐことができ、前記した単純形状の前記リブ付きコンクリート止め材で多様な形状を製作できる。よって、形状が異なる多品種のリブ付きコンクリート止め材の製作を求められる場合であっても、都度リブ形状、ひいてはリブ付きコンクリート止め材の形状に対応する成形金型を必要とすることがなく、施工性(生産稼働性)、経済性に優れたスラブ廻りのリブ付きコンクリート止め材を実現することができる。
【0028】
以上に本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明の技術的範囲は図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、いわゆる当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため申し添える。
例えば、本実施例では、前記加工部5(加工部6)の長さ(幅寸法)を10mm、前記加工部5を形成するための長さ範囲W1を60mmで実施しているが、これらの寸法も構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
【0029】
また、前記加工部5の形状、大きさ、及び形成方法も上記実施例1で説明したものに限定されず、例えば、
図14、
図15に写真で例示したような小口を塞ぐように形成した加工部15であってもよい。
図22に例示した加工部5’のように、端部側に向かって徐々(漸次)に平坦状に収束するような蛇腹状に押し潰した形状で実施してもよい(実施例1に係る
図5と
図22とを対比して参照)。もっとも、側辺部3に施す加工部6は、折り曲げてフランジ部3aを形成する場合があるので、より折り曲げやすい平坦状に形成した方が好ましい。
【0030】
さらに、前記リブ4の形状も前記した断面略半円弧状に限定されず、例えば、
図16~
図18に例示した実施例、および、
図19~
図21に例示した実施例に示したように、断面略矩形状(略角筒形状)のリブ14に形成して実施することもできる。前記リブ14の形状、前記リブ付きコンクリート止め材1の板厚に応じて、前記加工部5(加工部6)の形状も適宜変わる。例えば、前記
図16~
図18に係る加工部25については、前記板厚が1.0mmであり、符号25aは閉塞部を示し、符号25bは平坦部を示している。前記
図19~
図21に係る加工部35については、前記板厚が1.2mmであり、符号35aは閉塞部を示し、符号35bは平坦部を示している。なお、前記加工部5(5’、15、25、35)の形状はあくまでも一例を示したものに過ぎず、打設コンクリートのノロ漏れを防止することができるような小口を塞いた形状にリブ4が押し潰されていればよい。