(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043285
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】オキシデーションディッチ、及び、オキシデーションディッチの改修方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20230322BHJP
B01F 27/86 20220101ALI20230322BHJP
C02F 3/16 20230101ALI20230322BHJP
B01F 23/234 20220101ALI20230322BHJP
【FI】
C02F3/12 A
B01F7/16 L
C02F3/16
B01F3/04 D
C02F3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150802
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 厚
【テーマコード(参考)】
4D028
4D029
4G035
4G078
【Fターム(参考)】
4D028AB00
4D028BB03
4D028BC24
4D028BC26
4D028BD08
4D028BD10
4D029AA05
4D029AA06
4D029BB02
4G035AB24
4G078AA21
4G078AB20
4G078BA05
4G078CA08
4G078DA01
4G078DB01
(57)【要約】
【課題】縦軸の曝気撹拌装置を用いた簡易な構成のオキシデーションディッチを提供すると共に、既設のオキシデーションディッチの改修を簡便にする方法を提供する。
【解決手段】オキシデーションディッチ1は、水槽2と、隔壁3と、曝気撹拌装置4と、を備え、曝気撹拌装置は、縦軸の曝気撹拌装置であり、隔壁は、第1方向に被処理液が流れる第1の直線流路31と第2の直線流路32との間を隔てており、隔壁には、第1の直線流路と第2の直線流路とを相互に連通させるように、開口部30が設けられ、曝気撹拌装置のロータ41は、第1の直線流路と前2の直線流路との両方に跨がるように、開口部内に設置されていると共に、第1の直線流路において第1方向の水流を発生させると同時に、第2の直線流路において第2方向の水流を発生させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液を貯留する水槽と、
前記水槽内に設置されかつ、前記被処理液が流れる無端状の循環流路を形成する隔壁と、
前記循環流路に設置されかつ、前記被処理液を曝気すると共に前記循環流路に沿った前記被処理液の流れを発生させる曝気撹拌装置と、を備え、
前記曝気撹拌装置は、ロータと、垂直方向に伸びる回転軸とを有する縦軸の曝気撹拌装置であり、
前記隔壁は、第1方向に前記被処理液が流れる第1の直線流路と、前記第1の直線流路に隣り合う流路であって、前記第1方向とは逆の第2方向に前記被処理液が流れる第2の直線流路と、の間を隔てており、
前記隔壁には、前記第1の直線流路と前記第2の直線流路とを相互に連通させるように、開口部が設けられ、
前記曝気撹拌装置の前記ロータは、前記第1の直線流路と前記第2の直線流路との両方に跨がるように、前記開口部内に設置されていると共に、前記第1の直線流路において前記第1方向の水流を発生させると同時に、前記第2の直線流路において前記第2方向の水流を発生させる、オキシデーションディッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のオキシデーションディッチにおいて、
前記開口部は、前記隔壁の上端から凹陥した切り欠き状に形成され、
前記開口部の、前記被処理液の液面からの深さDは、前記ロータの直径RD×0.8以内であり、
前記開口部の長さLは、前記ロータの直径RDよりも大でかつ、直径RD+1.0m以下である、オキシデーションディッチ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオキシデーションディッチにおいて、
前記ロータの直径RDは、前記第1及び前記第2の直線流路の幅Wの、50~70%に設定されている、オキシデーションディッチ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオキシデーションディッチにおいて、
前記開口部の端面には、当該端面の損耗を抑制する保護部が取り付けられている、オキシデーションディッチ。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオキシデーションディッチにおいて、
前記開口部における、前記ロータよりも上流側の部位、及び、下流側の部位の少なくとも一方には、整流部が取り付けられ、
前記整流部は、前記ロータの回転により発生する、前記第1方向又は前記第2方向の流れを阻害する方向の流れ、又は、前記隔壁に対して交差する方向の流れを、前記隔壁に沿う方向の流れへ整流する、オキシデーションディッチ。
【請求項6】
請求項5に記載のオキシデーションディッチにおいて、
前記開口部の端面には、当該端面の損耗を抑制する保護部が取り付けられ、
前記整流部と前記保護部とは一体化している、オキシデーションディッチ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のオキシデーションディッチにおいて、
前記ロータは、奇数枚数のブレードを有している、オキシデーションディッチ。
【請求項8】
既設のオキシデーションディッチの改修方法であって、
循環流路に設置されている曝気撹拌装置を撤去し、
前記循環流路を構成する第1の直線流路と第2の直線流路とを隔てる隔壁の一部を取り除くことによって、前記第1の直線流路と前記第2の直線流路とが相互に連通する開口部を設け、
縦軸の曝気撹拌装置のロータが前記第1の直線流路と前記第2の直線流路との両方に跨がるように、前記ロータを前記開口部に配置する、オキシデーションディッチの改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、オキシデーションディッチ、及び、オキシデーションディッチの改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オキシデーションディッチが開示されている。オキシデーションディッチは、下水を処理する設備であって、汚水と活性汚泥からなる被処理液を貯留する水槽と、曝気撹拌装置とを備えている。水槽内に設置された隔壁によって、水槽内には無端状の循環流路が形成されている。曝気撹拌装置は、被処理液を曝気すると共に循環流路に沿って被処理液の撹拌流れを形成する。曝気撹拌装置は、例えば横軸の装置である。特許文献1の
図6には、隔壁によって隔てられた二つの流路であって、隣り合う二つの直線流路のそれぞれに、横軸の曝気撹拌装置が設置される構成が開示されている。特許文献1に開示されているオキシデーションディッチにおいては、円弧流路に、平面視で円弧状の整流壁が設けられている。整流壁は、被処理液が円弧流路を円滑に旋回するように、被処理液の流れを整える。
【0003】
ここで、横軸の曝気撹拌装置は円筒状のロータを有し、当該ロータは水面近傍に設置される。このため、水槽の底部の撹拌が不十分になったり、ロータに繊維状の異物が絡みついたりする不具合が発生する場合がある。そこで、近年、横軸の曝気撹拌装置よりも撹拌性能に優れた縦軸の曝気撹拌装置が、オキシデーションディッチに用いられている。
【0004】
例えば特許文献2には、縦軸の曝気撹拌装置を備えたオキシデーションディッチが開示されている。縦軸の曝気撹拌装置は、円弧流路に設置される。円弧流路において、被処理液は流れ方向を180°変換する。円弧流路に設置された縦軸の曝気撹拌装置は、垂直な軸周りに回転するロータの運動エネルギーを、被処理液に対し効率良く付与することができる。つまり、縦軸の曝気装置は、循環流路における円弧流路に設置することが好適である。
【0005】
既設のオキシデーションディッチに設置された横軸の曝気撹拌装置の老朽化等に伴い曝気撹拌装置の交換を行う場合に、撹拌性能に優れた縦軸の曝気撹拌装置を設置したいという要求がある。ところが、縦軸の曝気撹拌装置は円弧流路に設置することが好適である一方で、既設の水槽の円弧流路には、前述したように、円弧状の整流壁が設けられている。縦軸の曝気撹拌装置を円弧流路に設置するためには、既設の整流壁を撤去しなければならない。
【0006】
例えば特許文献3には、縦軸の曝気撹拌装置を直線流路に設置したオキシデーションディッチが開示されている。縦軸の曝気撹拌装置を直線流路に設置すれば、円弧流路の改修が不要である。しかしながら、縦軸の曝気撹拌装置は、ロータの回転により、直線流路の下流側だけでなく上流側への流れも発生させてしまう。そこで、特許文献3に記載されたオキシデーションディッチでは、直線流路に設置した縦軸の曝気撹拌装置のロータの周囲に、ガイド板が設置されている。ガイド板は、平面視で略円弧状を有しており、ロータの回転によって発生した上流側への流れを、下流側へと誘導するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-104685号公報
【特許文献2】特開平11-169883号公報
【特許文献3】特許第5839439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オキシデーションディッチに設置される曝気撹拌装置のロータは、その直径が2mを超えるような大きさを有している。ロータの周囲に設置する略円弧状のガイド板の大きさは、さらに大きいと共に、ガイド板の構造も複雑になる。また、水槽中に設置されるガイド板には耐久性が求められるため、例えばステンレス鋼製となる。大型のステンレス鋼製ガイド板は、非常に高価な部品となってしまう。
【0009】
しかも、縦軸の曝気撹拌装置を直線流路に設置する場合は、循環流路が有する、少なくとも2つの直線流路のそれぞれに、縦軸の曝気撹拌装置とガイド板とを設置しなければならない。そのため、部品価格が高価になる上に、曝気撹拌装置及びガイド板の設置工事も、煩雑になる。
【0010】
ここに開示する技術は、縦軸の曝気撹拌装置を用いた簡易な構成のオキシデーションディッチを提供すると共に、既設のオキシデーションディッチの改修を簡便にする方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、オキシデーションディッチにおいて隔壁を挟んで隣り合う二つの直線流路は、それらの流れ方向が対向している点に着目することによって、ここに開示する技術を完成するに至った。
【0012】
ここに開示する技術は、オキシデーションディッチに関する。このオキシデーションディッチは、被処理液を貯留する水槽と、前記水槽内に設置されかつ、前記被処理液が流れる無端状の循環流路を形成する隔壁と、前記循環流路に設置されかつ、前記被処理液を曝気すると共に前記循環流路に沿った前記被処理液の流れを発生させる曝気撹拌装置と、を備え、
前記曝気撹拌装置は、ロータと、垂直方向に伸びる回転軸とを有する縦軸の曝気撹拌装置であり、前記隔壁は、第1方向に前記被処理液が流れる第1の直線流路と、前記第1の直線流路に隣り合う流路であって、前記第1方向とは逆の第2方向に前記被処理液が流れる第2の直線流路と、の間を隔てており、前記隔壁には、前記第1の直線流路と前記第2の直線流路とを相互に連通させるように、開口部が設けられ、前記曝気撹拌装置の前記ロータは、前記第1の直線流路と前記第2の直線流路との両方に跨がるように、前記開口部内に設置されていると共に、前記第1の直線流路において前記第1方向の水流を発生させると同時に、前記第2の直線流路において前記第2方向の水流を発生させる。
【0013】
この構成によると、オキシデーションディッチは、縦軸の曝気撹拌装置を備えている。縦軸の曝気撹拌装置の撹拌性能は、相対的に高い。オキシデーションディッチの効率が向上する。
【0014】
縦軸の曝気撹拌装置のロータは、隔壁の開口部内に設置されている。開口部は、第1の直線流路と第2の直線流路との間を隔てる隔壁に、第1の直線流路と第2の直線流路とを連通させるように設けられている。開口部内に設置されたロータは、第1の直線流路と第2の直線流路とに跨がるように設置される。ロータが回転すると、ロータの約半分は、第1の直線流路において被処理液の流れを発生させ、ロータの残りの半分は、第2の直線流路において被処理液の流れを発生させる。ここで、オキシデーションディッチにおいて、隣り合う第1の直線流路と第2の直線流路とは、流れ方向が逆向きである。一つのロータによって、第1の直線流路における第1方向の水流を発生させると共に、第2の直線流路における第2方向の水流を発生させることができる。例えば直線流路に縦軸の曝気撹拌装置を設置した従来のオキシデーションディッチとは異なり、曝気撹拌装置のロータの周囲に、大型のガイド板を設置する必要がない。二つの直線流路のそれぞれに曝気撹拌装置を設置する必要がないことと相俟って、このオキシデーションディッチの構成は、簡略化する。また、ガイド板を設置して流れの向きを大きく変えることに伴い、従来の曝気撹拌装置は損失が大きくなってしまうが、前記の構成のオキシデーションディッチでは、曝気撹拌装置が発生させる流れの向きを大きく変えないため、損失が低減するという利点もある。
【0015】
このオキシデーションディッチは、縦軸の曝気撹拌装置を円弧流路に設置しないと共に、直線流路に縦軸の曝気撹拌装置を設置してもガイド板が不要である。このため、既設のオキシデーションディッチを改修することによって、このオキシデーションディッチの構成にすることも、比較的容易に行うことができる。
【0016】
前記開口部は、前記隔壁の上端から凹陥した切り欠き状に形成され、前記開口部の、前記被処理液の液面からの深さDは、前記ロータの直径RD×0.8以内であり、前記開口部の長さLは、前記ロータの直径RDよりも大でかつ、直径RD+1.0m以下である、としてもよい。
【0017】
開口部は、第1の直線流路と第2の直線流路とを連通させるため、そこに配置させるロータの大きさに比べて開口部の大きさが大きすぎると、ロータの回転に伴い、第1の直線流路及び/又は第2の直線流路において、逆流が発生したり、ロータの周りを周回するような流れが発生したりする。従って、開口部の大きさは、ロータの大きさに対応した大きさにすることが好ましい。
【0018】
開口部の深さD及び長さLをそれぞれ、ロータの直径RDに対して、前述したような大きさにすれば、第1の直線流路及び/又は第2の直線流路における逆流を抑制できると共に、ロータ周りの周回流れを抑制できる。曝気撹拌装置は、被処理液を循環流路に沿って流すことができる。
【0019】
前記ロータの直径RDは、前記第1及び前記第2の直線流路の幅Wの、50~70%に設定されている、としてもよい。
【0020】
第1の直線流路の幅W及び第2の直線流路の幅Wに対してロータの大きさが適切な大きさになるため、一つのロータにより、第1の直線流路及び第2の直線流路のそれぞれにおいて、被処理液の流れを効率よく発生させることができると共に、第1の直線流路及び第2の直線流路のそれぞれにおいて、曝気作用を得ることができる。
【0021】
前記開口部の端面には、当該端面の損耗を抑制する保護部が取り付けられている、としてもよい。
【0022】
開口部内に設置されているロータが回転すると、ロータのブレード先端が開口部の端面に対向する際に、その端面に被処理液が激しく衝突する。端面の損耗を抑制するために、開口部の端面には、保護部が取り付けられてもよい。保護部は、例えば金属製の保護板としてもよい。この保護部によって、開口部の端面の損耗が抑制できる。
【0023】
前記開口部における、前記ロータよりも上流側の部位、及び、下流側の部位の少なくとも一方には、整流部が取り付けられ、前記整流部は、前記ロータの回転により発生する、前記第1方向又は前記第2方向の流れを阻害する方向の流れ、又は、前記隔壁に対して交差する方向の流れを、前記隔壁に沿う方向の流れへ整流する、としてもよい。
【0024】
縦軸の曝気撹拌装置のロータは、旋回方向の流れを発生させる。ロータは、第1の直線流路及び第2の直線流路に跨がっているため、第1の直線流路又は第2の直線流路において、ロータにおける上流側、及び、下流側のそれぞれにおいて発生する流れは、隔壁に沿う方向の流れにならない。例えば、隔壁に対して交差する方向の流れであったり、第1方向又は第2方向の流れを阻害する方向の流れであったりする。
【0025】
そこで、開口部における、ロータよりも上流側の部位、及び、下流側の部位の少なくとも一方に整流板を取り付け、整流板が、第1方向又は第2方向の流れを阻害する方向の流れ、又は、隔壁に対して交差する方向の流れを、隔壁に沿う方向の流れへ整流する。これにより、曝気撹拌装置の効率が向上する。従来のガイド板のような第1の直線流路又は第2の直線流路において上流側への流れを下流側へと誘導する機能が不要であるため、整流板は、従来のガイド板とは異なり、小型に構成することができる。整流板は、比較的安価な部品であり、開口部に対する取り付けも容易に行うことができる。
【0026】
前記開口部の端面には、当該端面の損耗を抑制する保護部が取り付けられ、前記整流部と前記保護部とは一体化している、としてもよい。
【0027】
整流部と保護部とを一体化することによって、開口部への取り付け施工が簡単になる。
【0028】
前記ロータは、奇数枚数のブレードを有している、としてもよい。
【0029】
ロータのブレードが、開口部を、第1の直線流路から第2の直線流路へ、又は、第2の直線流路から第1の直線流路へ通過する際に、ブレードの先端部が開口部の端面と相対することによりロータに対し衝撃が加わる。ここで、ロータのブレードの枚数が偶数であれば、回転軸を挟んだ両側の二つのブレードが一直線に配置されるため、それら二つのブレードが同時に、開口部の端面と相対する。このため、ロータに対して、両側のそれぞれから衝撃が加わる。
【0030】
これに対し、ロータのブレードの枚数が奇数であれば、回転軸を挟んだ両側の二つのブレードが一直線に配置されない。ブレードは、一つずつ、開口部の端面と相対する。ロータに加わる衝撃を緩和できる。
【0031】
尚、ブレードの枚数が偶数であっても、ロータの中心を平面視で開口部の両端面を結ぶ直線上からわずかにずらすことでブレード先端が開口部の両端面に同時に相対することを防ぐことができる。
【0032】
ここに開示する技術はまた、既設のオキシデーションディッチの改修方法に係る。この改修方法は、循環流路に設置されている曝気撹拌装置を撤去し、前記循環流路を構成する第1の直線流路と第2の直線流路とを隔てる隔壁の一部を取り除くことによって、前記第1の直線流路と前記第2の直線流路とが相互に連通する開口部を設け、縦軸の曝気撹拌装置のロータが前記第1の直線流路と前記第2の直線流路との両方に跨がるように、前記ロータを前記開口部に配置する。
【0033】
この改修方法によると、既存のオキシデーションディッチを、前述した構成のオキシデーションディッチへ改修できる。つまり、縦軸の曝気撹拌装置が設置されかつ、一つの曝気撹拌装置による、二つの直線流路のそれぞれにおける曝気及び水流発生が実現する。
【発明の効果】
【0034】
前記のオキシデーションディッチは、構成が簡略である。また、前記のオキシデーションディッチの改修方法は、既設のオキシデーションディッチの改修を簡便にできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、オキシデーションディッチの構成を例示する図である。
【
図2】
図2の左図は、オキシデーションディッチの縦断面図の一部であり、右図はオキシデーションディッチの横断面図である。
【
図3】
図3は、曝気撹拌装置のロータを例示する斜視図である。
【
図4】
図4は、従来のオキシデーションディッチと、ここに開示するオキシデーションディッチとの流れの比較である。
【
図5】
図5(a)(b)はそれぞれ、開口部に、保護部及び整流部を取り付けた構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、オキシデーションディッチ、及び、オキシデーションディッチの改修方法の実施形態が、図面を参照しながら説明される。ここで説明されるキシデーションディッチ、及び、オキシデーションディッチの改修方法は例示である。
【0037】
(オキシデーションディッチの全体構成)
図1はオキシデーションディッチ1を例示している。オキシデーションディッチ1は、下水を処理する設備であって、汚水と活性汚泥からなる被処理液を貯留する水槽2を備えている。
図1に例示する水槽2は、平面視で長円形状を有している。尚、ここに開示する技術は、平面視で馬蹄形状を有する水槽に適用することも可能である。
【0038】
水槽2内には、隔壁3が設置されている。隔壁3は、
図2に示すように、水槽2の底部から立設しており、これにより、隔壁3は、水槽2内を複数の流路に区画する。隔壁3は、
図1に例示するように、水槽2の中央において、水槽2の長手方向に真っ直ぐに伸びている。隔壁3の両端と、水槽2の長手方向の両端部の壁面との間には、所定の間隔が設けられている。これにより、隔壁3は、水槽2内に、直線流路と円弧流路とからなる無端状の循環流路を形成する。より詳細に、隔壁3は、第1の直線流路31と、第1の直線流路31に対して隣り合う第2の直線流路32と、第1の直線流路31の端と第2の直線流路32の端同士をつなぐ二つの円弧流路33とを形成する。尚、第1の直線流路31、第2の直線流路32、及び、円弧流路33の流路の幅Wは、全て同じ、又は、実質的に同じである。
【0039】
第1の直線流路31において被処理液は、第1方向に流れる。第1方向は、
図1における紙面の左から右へ向かう方向である(
図1の矢印参照)。第2の直線流路32において被処理液は、第2方向に流れる。第2方向は、
図1における紙面右から左へ向かう方向であって、第1方向とは逆方向である。
【0040】
二つの円弧流路33にはそれぞれ、整流壁34が設置されている。整流壁34は、平面視で、「し」の文字を横に倒したような円弧状を成している。整流壁34は、被処理液が円弧流路33を円滑に旋回するように、被処理液の流れを整える。
【0041】
オキシデーションディッチ1は、曝気撹拌装置4を備えている。曝気撹拌装置4は、
図2に例示するように、ロータ41と、回転軸42と、モータ部43とを有している。ロータ41は、
図3に例示するように、ハブ411と、ハブ411から放射状に伸びる複数のブレード412と、を有している。
図3のロータ41は、6枚のブレード412を有している。各ブレード412は、横断面L字状を有し、ハブ411に接続された基端から先端に向かって、斜め上向きに伸びている(
図2参照)。尚、各ブレード412の形状は、図例に限定されない。
【0042】
モータ部43は、ロータ41の上方に位置すると共に、垂直方向に伸びる回転軸42は、モータ部43の出力軸とロータ41のハブ411とを連結している。モータ部43は、水槽2の蓋20に支持されており、ロータ41は、
図2に示すように、水面近傍に配置されている。より詳細にブレード412の大部分は水面下に位置している一方、ブレード412の先端の一部は、水面よりも上方に位置している。モータ部43が運転をすると、回転軸42を介して、ロータ41が垂直軸を中心に回転する。ロータ41が回転すると、被処理液が曝気されると共に、旋回方向の流れが発生するため、被処理液は、流路に沿って流れる。
【0043】
ここで、曝気撹拌装置4の設置について詳細に説明をする。曝気撹拌装置4は、第1の直線流路31と第2の直線流路32とに跨がるように設置されている。より具体的に、隔壁3には、開口部30が形成されている。開口部30は、
図1の構成例において、長手方向に伸びる隔壁3の中央部に位置している。開口部30は、
図2に示すように、隔壁3の上端から下向きに凹陥した切り欠き状である。開口部30は、第1の直線流路31と第2の直線流路32とを連通させる。
【0044】
開口部30の大きさは、ロータ41の直径よりも大きい。曝気撹拌装置4のロータ41は、開口部30に設置されている。ロータ41は、
図1に示すように、第1の直線流路31と第2の直線流路32とに跨がっている。
【0045】
このオキシデーションディッチ1は、
図1に示すように、一つの縦軸の曝気撹拌装置4を備えている。つまり、一つのロータ41が
図1における時計回り方向に回転することにより、第1の直線流路31において、第1方向の流れが発生すると同時に、第2の直線流路32において、第2方向の流れが発生する。曝気撹拌装置4の台数が少ないため、オキシデーションディッチ1の構成が簡易になる。オキシデーションディッチ1の設置費用及び保守費用が低廉になる。
【0046】
ロータ41が回転することにより、第1の直線流路31及び第2の直線流路32のそれぞれにおいて、
図1の下図に破線の矢印で示すような流れが発生する。
【0047】
ここで、
図4を参照しながら、従来のオキシデーションディッチと、ここに開示するオキシデーションディッチ1とを比較する。
図4の左図は、従来のオキシデーションディッチ10の構成を例示している。従来のオキシデーションディッチ10は、第1の直線流路31に、第1の曝気撹拌装置のロータ401が設置され、第2の直線流路32に、第2の曝気撹拌装置のロータ402が設置される。ロータ401は、第1の直線流路31において第1方向の流れを発生させると共に、ロータ402は、第2の直線流路32において第2方向の流れを発生させる。各ロータ401及び402は、
図4において破線の矢印で示すように、旋回方向の流れを発生させるから、第1の直線流路31において第1方向に対して逆方向の流れが発生すると共に、第2の直線流路32において第2方向に対して逆方向の流れが発生する。そのため、従来のオキシデーションディッチ10では、逆方向の流れを、順方向の流れへと誘導するガイド板51、52を第1の直線流路31及び第2の直線流路32に設置している。これらのガイド板51、52は共に、平面視で円弧形状を有しており、ロータ401、402の周囲を囲むように、設置されている。しかしながら、ガイド板51、52を設置することによって流れの向きを変えることに伴い、従来のオキシデーションディッチ10では、曝気撹拌装置401、402の損失が大きくなってしまうという不都合がある。
【0048】
これに対し、ここに開示するオキシデーションディッチ1は、ロータ41の半分が第1の直線流路31内に位置し、ロータ41の残りの半分が第2の直線流路32内に位置している。第1の直線流路31内におけるロータ41の回転方向と、被処理液の流れ方向とは一致すると共に、第2の直線流路31内におけるロータ41の回転方向と、被処理液の流れ方向とは一致する。第1の直線流路31において逆方向の流れが発生せず、第2の直線流路32においても逆方向の流れが発生しない。従って、従来のオキシデーションディッチ10において必要であった、円弧状の大きなガイド板51、52が不要である。曝気撹拌装置4の損失が低減する。
【0049】
また、第1の直線流路31及び第2の直線流路32のそれぞれにおいて、ロータ41の下流側で隔壁3へ向かう方向の流れは、隔壁3に当たって流れ方向が変わり、隔壁3に沿って、第1の直線流路31又は第2の直線流路32の下流へと流れるようになる。本構成のオキシデーションディッチ1においては、隔壁3が、ロータ41が発生した流れを案内する機能も有している。ガイド板を別途、取り付ける必要がなく、部品点数が増えることが抑制できる。
【0050】
ここに開示するオキシデーションディッチ1は、一台の曝気撹拌装置4によって、循環流路の流れを効率良く発生させることができる。
【0051】
また、第1の直線流路31及び第2の直線流路32のそれぞれにおいて、曝気撹拌装置4が設置されている付近は、曝気作用が得られるためその下流側は好気ゾーンとなり、二つの円弧流路33の付近から曝気撹拌装置4の上流側までは、曝気作用が得られない嫌気ゾーンとなる。被処理液は、好気ゾーン、嫌気ゾーン、好気ゾーン、及び嫌気ゾーンの順に通過するようになるから、曝気撹拌装置4が一台であっても、オキシデーションディッチ1の全体において、好気ゾーンと嫌気ゾーンとのバランスを保つことができる。
【0052】
(オキシデーションディッチのより好ましい形態)
隔壁3に形成する開口部30は、ロータ41の大きさに応じた適宜の大きさとすることが好ましい。開口部30は、第1の直線流路31と第2の直線流路32とを連通させる。ロータ41の大きさに比べて開口部30の大きさが大きすぎると、ロータ41の回転に伴い、第1の直線流路31及び/又は第2の直線流路32において、逆流が発生したり、ロータ41の周りを周回するような流れが発生したりするためである。
【0053】
図2の左図に示すように、開口部30の、被処理液の液面WLからの深さDは、ロータ41の直径RD×0.8以内とすることが好ましい。また、開口部30の長さLは、ロータ41の直径RDよりも大でかつ、直径RD+1.0m以下とすることが好ましい。こうすることによって、第1の直線流路31及び/又は第2の直線流路32における逆流を抑制できると共に、ロータ31周りの周回流れを抑制できる。一つの曝気撹拌装置4は、被処理液を循環流路に沿って効率的に流すことができる。
【0054】
また、
図1の上図に示すように、ロータ41の直径RDは、第1の直線流路31及び第2の直線流路32の幅Wの、50~70%に設定することが好ましい。こうすることによって、一つのロータ41により、第1の直線流路31及び第2の直線流路32のそれぞれにおいて、被処理液の流れを効率よく発生させることができると共に、第1の直線流路31及び第2の直線流路32のそれぞれにおいて、曝気作用を得ることができる。
【0055】
開口部30内に設置されているロータ41が回転すると、ロータ41のブレード412先端が開口部30の端面に対向する際に、その端面には、被処理液が激しく衝突する。端面の損耗を抑制するために、
図5に例示するように、開口部30には、保護部51を取り付けてもよい。保護部51は、例えば金属製の保護板としてもよい。この保護部51によって、開口部30の端面の損耗が抑制できる。尚、保護部51は、開口部30における、ロータ41の上流側に位置する端面、及び、下流側に位置する端面だけでなく、ロータ41の下に位置する端面に取り付けてもよい。
【0056】
また、曝気撹拌装置4の効率をさらに向上させるために、開口部30には、小型の整流部を取り付けてもよい。整流部は、ロータ41の回転により発生する、隔壁3に対して交差する方向の流れを、隔壁3に沿う方向の流れへ整流する。
【0057】
具体的に、
図5(a)に示すように、ロータ41の上流側、つまり、第1の直線流路31おいてはロータ41の左側に、第1整流部61を開口部30の縁部に取り付けてもよい。第1整流部61は、ロータ41の外周部に沿うような円弧面を有しており、
図5(a)に破線の矢印で示すような隔壁3に対して90°方向の角度を有しかつ隔壁3から離れる方向の流れを、実線の矢印で示すような隔壁3に対して下流側へ傾いた方向の流れへ整流する。第1整流部61はまた、第1方向又は第2方向の流れを阻害する方向の流れを、隔壁3に沿う方向の流れへ整流する。これにより、オキシデーションディッチ1における曝気撹拌装置4の効率が向上する。
【0058】
また、ロータ41の下流側、つまり、第1の直線流路31おいてはローラ41の右側に、第2整流部62を開口部30の縁部に取り付けてもよい。第2整流部62は、ロータ41の外周部から隔壁3へつながるような傾斜面を有しており、
図5(a)に実線の矢印で示すように、隔壁3へ向かう方向の流れを、隔壁3に沿う方向の流れへ整流する。第2整流部62もまた、第1方向又は第2方向の流れを阻害する方向の流れを、隔壁3に沿う方向の流れへ整流する。これにより、オキシデーションディッチ1における曝気撹拌装置4の効率が向上する。
【0059】
ここで、前述した第1整流部61と保護部51とは一体に設けてもよい。また、第2整流部62と保護部51とは一体に設けてもよい。部材を一体化することにより、部品点数を削減すれば、開口部30への取り付け施工が簡単になる。
【0060】
また、
図5(b)に示すように、第1の直線流路31と同様に、第2の直線流路32においても、第1整流部61及び第2整流部62を、開口部30の縁部に取り付けてもよい。この場合に、第1の直線流路31の第1整流部61、保護部51、及び、第2の直線流路31の第2整流部62を一体にし、第1の直線流路31の第2整流部62、保護部51、及び、第2の直線流路31の第1整流部61を一体にしてもよい。
【0061】
ロータ41のブレード412が、開口部30を、第1の直線流路31から第2の直線流路32へ、又は、第2の直線流路32から第1の直線流路31へ通過する際に、ブレード412の先端部が開口部30の端面と相対して、ロータ41に対し衝撃が加わる。ここで、
図5(a)に示すように、ロータ41のブレード412の枚数が偶数であれば、回転軸42を挟んだ両側の二つのブレード412が一直線に配置されるため、それら二つのブレード412が同時に、開口部30の端面と相対して、ロータ41に対して、それぞれから衝撃が加わる。
【0062】
例えば
図5(b)に示すように、ロータ41のブレード412の枚数を奇数にしてもよい。ロータ41のブレード412の枚数が奇数であれば、回転軸を挟んだ両側の二つのブレード412が一直線に配置されない。このため、ブレード412は、一つずつ、開口部30の端面と相対する。ロータ41に加わる衝撃を緩和できる。尚、ブレード412の枚数は、図例に示す5枚に限定されない。
【0063】
さらに、ロータ41の中心を平面視で開口部の両端面を結ぶ直線上からわずかにずらすことで、ブレード412の枚数が偶数であっても、ブレード先端が開口部の両端面に同時に相対することを防ぐことができる。
【0064】
(オキシデーションディッチの改修方法)
前述したオキシデーションディッチ1は、縦軸の曝気撹拌装置4を直線流路31、32に設置している。円弧流路33には、整流壁34が設置されている。従って、例えば横軸の曝気撹拌装置が直線流路に設置されかつ、円弧流路に整流壁が設置された既設のオキシデーションディッチを、
図1に示すオキシデーションディッチ1へ、比較的容易に改修することができる。
【0065】
具体的にオキシデーションディッチ1の改修方法は、以下の(a)~(c)の手順を含む。
【0066】
(a)循環流路に設置されている曝気撹拌装置を撤去する。例えば老朽化した横軸の曝気撹拌装置が撤去される。
【0067】
(b)循環流路を構成する第1の直線流路31と第2の直線流路32とを隔てる隔壁3の一部を取り除くことによって、第1の直線流路31と第2の直線流路32とが相互に連通する開口部30を設ける。開口部30は、前述したように、第1の直線流路31及び第2の直線流路32の長手方向の中央部において、ロータ41の大きさに応じた大きさで、設ければよい。
【0068】
(c)そして、縦軸の曝気撹拌装置4のロータ41が第1の直線流路31と第2の直線流路32との両方に跨がるように、ロータ41を開口部30に配置する。
【0069】
この改修方法によると、円弧流路33に縦軸の曝気撹拌装置4を設置する場合と異なり、設置されている整流壁34を撤去する必要がない。また、直線流路に縦軸の曝気撹拌装置を設置する場合に必要な、大型のガイド板の設置が不要である。隔壁3に開口部30を形成しなければならないが、水槽2の改修費用を抑制できる。
【0070】
また、改修後のオキシデーションディッチ1は、曝気撹拌装置4が一台であるため、設備費用、及び、その後の保守費用が抑制できる。また、一台の曝気撹拌装置4が、循環流路において効率的に曝気及び水流を発生させるため、改修前よりも運転費用が低減することが期待できる。
【0071】
尚、前述したように、ここに開示するオキシデーションディッチは、長円形状の水槽に限定されず、馬蹄形状の水槽にも適用できる。この場合、曝気撹拌装置4は、水槽に、複数台、設置される場合がある。
【符号の説明】
【0072】
1 オキシデーションディッチ
2 水槽
3 隔壁
30 開口部
31 第1の直線流路
32 第2の直線流路
4 曝気撹拌装置
41 ロータ
412 ブレード
42 回転軸
51 保護部
61 第1整流部
62 第2整流部