(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043319
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】ヘアカット方法
(51)【国際特許分類】
A45D 44/00 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
A45D44/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150857
(22)【出願日】2021-09-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】520462366
【氏名又は名称】佐藤 貴行
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴行
(57)【要約】
【課題】頭部の骨格が強調されないヘアカット方法を提供する。
【解決手段】ベーシックボブの中にショートカットを形成するヘアカット方法であって、頭部を真上から平面視し、かつ、第3方向に並べられる複数の第1毛束のうちギャップカットされた頭髪が頭部から突出された状態を想定した場合における当該頭髪の先端と、頭部を真上から平面視し、かつ、第3方向に並べられる複数の第2毛束のうちギャップカットされた頭髪が頭部から突出された状態を想定した場合における頭髪の先端と、に接する仮想線は、頭部を真上から見た平面視で、側頭部から後頭部に向かって突出するV字状である、ヘアカット方法。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の頭部を覆う無数本の頭髪の長さが肩につかないベーシックボブを形成する頭髪の一部を間引くようにハサミでカットすることで、前記ベーシックボブの中に、前記ベーシックボブよりも短い無数本の頭髪によって形成されるショートカットを形成するヘアカット方法において、
前記頭部の頭頂部の側から側頭部の側への方向を第1上下方向とし、前記頭頂部の側から前記頭部の後頭部の側への方向を第2上下方向とし、前記側頭部の側から前記後頭部の側への方向を第3方向としたとき、
前記ベーシックボブを形成する無数本の頭髪を、前記側頭部を覆うサイドセクションと、前記後頭部を覆うバックセクションと、に分けるステップと、
前記サイドセクションに含まれる無数本の前記頭髪から、複数本の頭髪によりそれぞれ形成される複数の第1毛束を、前記第1上下方向に沿って複数束を並べて取り出し、かつ、前記第3方向に沿って複数束を並べて取り出すステップと、
複数の前記第1毛束のそれぞれにおいて頭髪のうちの複数本の頭髪を間引くようにハサミでギャップカットすることで前記ショートカットを形成するステップであって、複数の前記第1毛束のそれぞれに含まれる複数本の頭髪を、前記第1上下方向に所定の間隔でギャップカットする作業を、前記第1上下方向に並べられている複数の前記第1毛束毎にそれぞれ行うサイドカットステップと、
前記バックセクションに含まれる無数本の前記頭髪から、複数本の頭髪によりそれぞれ形成される複数の第2毛束を、前記第2上下方向に沿って複数束を並べて取り出し、かつ、前記第3方向に沿って複数束を並べて取り出すステップと、
複数の前記第2毛束のそれぞれにおいて頭髪のうちの複数本の頭髪を間引くようにハサミでギャップカットすることで前記ショートカットを形成するステップであって、複数の前記第2毛束のそれぞれに含まれる複数本の頭髪を、前記第2上下方向に所定の間隔でギャップカットする作業を、前記第2上下方向に並べられている複数の前記第2毛束毎にそれぞれ行うバックカットステップと、
を有し、
複数の前記第2毛束に含まれる頭髪のうち、前記バックカットステップにおいてギャップカットされた複数本の頭髪の根元から先端までの長さは、複数の前記第1毛束に含まれる頭髪のうち、前記サイドカットステップにおいてギャップカットされた複数本の頭髪の根元から先端までの長さより長く、
前記頭部を真上から平面視し、かつ、前記第3方向に並べられる複数の前記第1毛束のうちギャップカットされた複数本の頭髪が前記頭部から突出された状態を想定した場合における複数本の前記頭髪の先端と、前記頭部を真上から平面視し、かつ、前記第3方向に並べられる複数の前記第2毛束のうちギャップカットされた複数本の頭髪が前記頭部から突出された状態を想定した場合における複数本の前記頭髪の先端と、に接する仮想線は、前記頭部を真上から見た平面視で、前記側頭部から前記後頭部に向かって突出するV字状である、ヘアカット方法。
【請求項2】
請求項1記載のヘアカット方法において、
前記頭部を側面視し、かつ、前記第2上下方向に並べられる複数の前記第2毛束のうち、ギャップカットされた複数本の前記頭髪が前記頭部から突出された状態を想定した場合における複数本の前記頭髪の根元から先端までの長さは、前記第2上下方向で上に位置する前記第2毛束に含まれる複数本の前記頭髪より、前記第2上下方向で下に位置する前記第2毛束に含まれる複数本の前記頭髪が短い、ヘアカット方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、施術者がハサミで対象者の頭部の髪をカットするヘアカット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘアカット方法によれば、頭髪の長さを切りそろえてヘアスタイルが作り上げられる。このように、髪の長さに一定の規則性を持たせて全体を切り揃えるようにカットする方法は、欧米人の骨格に合わせて開発された方法であって、欧米人と比較して平面的な骨格を持つ日本人には適さない場合がある。
【0003】
例えば、日本人がボブ等のヘアスタイルをハサミのみで切りそろえると、平面的で重く且つ大きく見えてしまう傾向にある。そのため、スキバサミを用いて毛先から所定の位置で毛先を削ぐ、または、頭髪の流れに沿ってハサミを入れて毛先を削ぐ等により、毛量が調整されることがある。これにより、毛先において、頭髪の一部分が短く削がれ、毛量が減少することで、軽く見せることができる。
【0004】
また、特許文献1には、一つのヘアスタイルに対して3種類の異なる長さのガイドを用いてカットするヘアカット方法が開示されている。当該技術によれば、髪の長さに自然な不規則性を持たせることによって、軽やかな流動感および躍動感がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、ヘアスタイルを軽く見せるためにスキバサミを用いて毛量を調整すると、頭部の骨格が強調されるという課題を認識した。
【0007】
本開示の目的は、頭部の骨格が強調されないヘアカット方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のヘアカット方法は、対象者の頭部を覆う無数本の頭髪の長さが肩につかないベーシックボブを形成する頭髪の一部を間引くようにハサミでカットすることで、前記ベーシックボブの中に、前記ベーシックボブよりも短い無数本の頭髪によって形成されるショートカットを形成するヘアカット方法であって、前記頭部の頭頂部の側から側頭部の側への方向を第1上下方向とし、前記頭頂部の側から前記頭部の後頭部の側への方向を第2上下方向とし、前記側頭部の側から前記後頭部の側への方向を第3方向としたとき、前記ベーシックボブを形成する無数本の頭髪を、前記側頭部を覆うサイドセクションと、前記後頭部を覆うバックセクションと、に分けるステップと、前記サイドセクションに含まれる無数本の前記頭髪から、複数本の頭髪によりそれぞれ形成される複数の第1毛束を、前記第1上下方向に沿って複数束を並べて取り出し、かつ、前記第3方向に沿って複数束を並べて取り出すステップと、複数の前記第1毛束のそれぞれにおいて頭髪のうちの複数本の頭髪を間引くようにハサミでギャップカットすることで前記ショートカットを形成するステップであって、複数の前記第1毛束のそれぞれに含まれる複数本の頭髪を、前記第1上下方向に所定の間隔でギャップカットする作業を、前記第1上下方向に並べられている複数の前記第1毛束毎にそれぞれ行うサイドカットステップと、前記バックセクションに含まれる無数本の前記頭髪から、複数本の頭髪によりそれぞれ形成される複数の第2毛束を、前記第2上下方向に沿って複数束を並べて取り出し、かつ、前記第3方向に沿って複数束を並べて取り出すステップと、複数の前記第2毛束のそれぞれにおいて頭髪のうちの複数本の頭髪を間引くようにハサミでギャップカットすることで前記ショートカットを形成するステップであって、複数の前記第2毛束のそれぞれに含まれる複数本の頭髪を、前記第2上下方向に所定の間隔でギャップカットする作業を、前記第2上下方向に並べられている複数の前記第2毛束毎にそれぞれ行うバックカットステップと、を有し、複数の前記第2毛束に含まれる頭髪のうち、前記バックカットステップにおいてギャップカットされた複数本の頭髪の根元から先端までの長さは、複数の前記第1毛束に含まれる頭髪のうち、前記サイドカットステップにおいてギャップカットされた複数本の頭髪の根元から先端までの長さより長く、前記頭部を真上から平面視し、かつ、前記第3方向に並べられる複数の前記第1毛束のうちギャップカットされた複数本の頭髪が前記頭部から突出された状態を想定した場合における複数本の前記頭髪の先端と、前記頭部を真上から平面視し、かつ、前記第3方向に並べられる複数の前記第2毛束のうちギャップカットされた複数本の頭髪が前記頭部から突出された状態を想定した場合における複数本の前記頭髪の先端と、に接する仮想線は、前記頭部を真上から見た平面視で、前記側頭部から前記後頭部に向かって突出するV字状である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、頭部を真上から見た平面視で、複数の第1毛束にそれぞれ含まれる複数本の頭髪の先端、及び複数の第2毛束にそれぞれ含まれる複数本の頭髪の先端に接するる仮想線がV字状になり、頭部を側面視すると、後頭部を覆う無数本の頭髪にボリュームがあるように見える。したがって、後頭部の骨格に絶壁があったとしても、後頭部の骨格の形状が、ヘアスタイルの形状にそのまま表れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、本開示のヘアカット方法を説明する頭部の模式的な正面図、(b)は、本開示のヘアカット方法を説明する頭部の模式的な側面図、(c)は、本開示のヘアカット方法を説明する頭部の模式的な平面図である。
【
図2】ヘアスタイルを軽く見せるために行われる、従来手法のスキバサミを用いた毛量の調整について説明するための図である。
【
図3】(a)は、本開示のヘアカット方法を説明する頭部の模式的な正面図、(b)は、本開示のヘアカット方法を説明する頭部の模式的な側面図、(c)は、本開示のヘアカット方法を説明する頭部の模式的な平面図である。
【
図4】頭髪をカットしてベーシックボブ及びショートカットを形成した頭部の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。本開示のヘアカット方法では、ベーシックボブを形成する頭髪の一部を間引くように所定の長さでカットすることで、ベーシックボブの中にショートカットを更に形成する。そして、本実施形態では、先ず、全体の頭髪の長さを切りそろえることで、ベーシックボブが形成される。これについて、
図1乃至
図4に基づいて説明する。
【0012】
図4は、第1実施形態におけるベーシックボブ100aのヘアスタイルを形成するためのヘアカット方法を例示する図である。本実施形態のヘアカット方法を用いて、対象者の一例である顧客の頭髪をカットする施術者は、
図1に示すように、複数本の頭髪を手で握って頭部10から離れるように持ち上げ、かつ、複数本の頭髪を頭部10から突出させた状態に保持して毛束を作り、その毛先をカットしていく。詳しくは、顔を正面から見た
図1(a)において、頭頂部101における複数本の頭髪の毛束101aを頭部10から突出させた状態に保持し、毛束101aに対して毛先を丸くするカット(ラウンドカット)を施す。本実施形態では、ベーシックボブ100aのヘアスタイルを形成するため、このようなラウンドカットをすることで、毛先が内に入り易くなる。ここで、毛束101aに含まれる頭髪に対しては、例えば、毛先から5cmにラウンドカットが入れられる。
【0013】
また、顔を側面から見た
図1(b)において、後頭部103の頭髪103aを頭部10から突出させた状態に保持し、頭髪103aに対して、例えば、毛先から5cmにラウンドカットが入れられる。なお、頭髪全体の長さについては、ベーシックボブ100aのヘアスタイルが形成されるように調整される。また、
図1(b)における前頭部104の毛束104aに対しては、例えば、頭頂部101寄りの複数の頭髪の毛束104aでは、毛先から2cmにラウンドカットが入れられ、顔面寄りの毛束104aでは根元から4cmにラウンドカットが入れられる。
【0014】
そうすると、頭部10を上方から見た
図1(c)に示されるように、頭髪110aの毛先が切りそろえられ、ベーシックボブ100aのヘアスタイルが形成される。なお、本実施形態では、頭髪をカットしていくことでベーシックボブ100aのヘアスタイルを形成する例について説明したが、本開示のヘアカット方法においては、ベーシックボブ100aのヘアスタイルが予め形成されていてもよい。
【0015】
ところで、欧米人と比較して平面的な骨格を持つ日本人に対して、頭髪の長さを切りそろえてヘアスタイルを作り上げるのみでは、該ヘアスタイルが平面的で重く且つ大きく見えてしまう傾向にある。そこで、従来のヘアカット方法では、スキバサミを用いて毛先から所定の位置で毛先を削ぐ、または、頭髪の流れに沿ってハサミを入れて毛先を削ぐ等により、毛量が調整されることがある。これについて、
図2に基づいて説明する。
【0016】
図2は、ヘアスタイルを軽く見せるために行われる、従来手法のスキバサミを用いた毛量の調整について説明するための図である。頭髪の流れに沿ってハサミを入れて毛先を削ぐと、
図2に示すように、頭髪の一部分が、毛先111aや毛先112aのように短く削がれる。これにより、毛量が減少することで軽く見せることができる。
【0017】
しかしながら、従来手法のスキバサミを用いた毛量の調整では、頭部の骨格が強調されたり、全体的なボリューム感が減少したりして、頭の形が綺麗に見えないことがある。また、スキバサミが頭髪を擦ることで該頭髪のキューティクルが剥がされるため、頭髪を痛め、パサツキや膨張を引き起こしていた。そして、パサついた頭髪は、ブローやアイロン等でセットしないとまとまらないという問題がある。更に、このような従来手法のスキバサミを用いた毛量調整は、施術者の感覚に依る側面があり、最終的な仕上がりに個人差が生じ易い。また、施術者の教育を行う場面では、このような感覚的な方法を教えるのが困難である。
【0018】
そこで、本開示のヘアカット方法では、ベーシックボブ100aのヘアスタイルを形成する頭髪の一部を間引くようにハサミでカット(ギャップカット)し、ベーシックボブ100aのヘアスタイルの中に、ショートカット100bのヘアスタイルを形成することで、上記の問題点を解決する。これについて、
図3及び
図4に基づいて、以下に詳しく説明する。ベーシックボブ100aは、例えば、頭部10の頭頂部101、側頭部102及び後頭部103を覆う無数本の頭髪の長さが、肩につかない程度の長さであり、かつ、頭髪で耳50が隠れて、内側の毛と外側の毛の段差がほとんど無い髪形(スタイル)を指す。
図4では、便宜上、頭髪の根元の輪郭が破線で示されており、耳50は隠れていない。また、ショートカット100bは、頭部10を覆う無数本の頭髪が、襟足51から3cm以内になるように、無数本の頭髪の先端をカットした髪形(スタイルを指す)。頭髪の根元から先端までの長さは、ショートカット100bの方が、ベーシックボブ100aより短い。
【0019】
図3は、本開示のヘアカット方法を説明するための図である。本開示のヘアカット方法では、ベーシックボブ100aのヘアスタイルを形成する頭髪を、側頭部102を覆うサイドセクション1020と、後頭部103を覆うバックセクション1030と、に分ける。なお、ベーシックボブ100aのヘアスタイルは、例えば、上記の
図1で説明した方法によって形成される。そして、サイドセクション1020において、第1上下方向A1における異なる位置で、複数の毛束20をそれぞれ取り出す。1つの毛束20は、複数本、例えば、200本乃至350本程度の頭髪を有する。
【0020】
複数の毛束20は、いくつかの毛束20が同じタイミングで取り出されてもよいし、複数の毛束20がそれぞれ異なるタイミングで取り出されてもよい。複数の毛束20は、それぞれ第1上下方向A1で異なる範囲に位置し、かつ、第1上下方向A1に並べて取り出される。第1上下方向A1において、毛束20は、頭髪が生えている方向に持ち上げられ、例えば、
図3(a)に示す毛束20によって表される。複数の毛束20は、頭髪が頭部10から突出されるように、施術者の手で持ち上げられる。ここで、第1上下方向A1とは、頭頂部101の側から側頭部102の側への方向として定義される。
【0021】
そして、サイドセクション1020で取り出された複数の毛束20において、該毛束20に含まれる複数本の頭髪102aを、第1上下方向A1に沿って所定の間隔でハサミでカットする(サイドカットステップ)。このサイドカットステップによって、上述したショートカット100bのヘアスタイルの一部が形成されることになる。また、このサイドカットステップでは、
図3(a)に示されるように、サイドセクション1020で取り出された毛束20の一部が、第1上下方向A1において、所定の間隔で根元から所定の長さでハサミでカットされる。
図3(a)では、サイドカットステップでカットされた複数本の頭髪が、頭髪102bとして表される。ギャップカットされる1組の頭髪102bは、一例として100本乃至150本である。ここで、上記の所定の間隔とは、例えば、1cm~2cmである。また、上記の所定の長さとは、例えば、3cm~5cmである。つまり、複数の毛束20は、複数本の頭髪102a及び複数本の頭髪102bを含む。
【0022】
なお、第1上下方向A1に沿った方向において、複数の毛束20がそれぞれ持ち上げられ、かつ、それぞれの毛束20に含まれる頭髪102aに対して、それぞれサイドステップカット、つまり、ギャップカットが行われる。また、
図3(c)の第3方向A3で異なる範囲に位置する複数の毛束20がそれぞれ持ち上げられ、かつ、それぞれの毛束20に含まれる複数本の頭髪102aに対して、それぞれサイドステップカットが行われ、各毛束20に複数本の頭髪102bが形成される。第3方向A3は、側頭部102の側から後頭部103の側への方向である。
図3(c)では、第3方向A3で異なる範囲に2つの毛束20が並べて示されているが、3つ以上の毛束20が並べて取り出されてもよい。このように、第1上下方向A1に沿って持ち上げられる複数の毛束20のそれぞれについて、複数本の頭髪102aと、ギャップカットされる複数本の頭髪102aとが、第1上下方向A1で交互に所定間隔で位置することになる。
【0023】
本開示のヘアカット方法では、同様にして、バックセクション1030において、
図1及び
図3(b)のように、第2上下方向A2で異なる位置において複数の毛束30を取り出す。また、毛束30は、第3方向A3で異なる位置で複数取り出される。
図1において、第2上下方向A2で頭頂部101に最も近い毛束30は、第2上下方向A2の幅が一例として4cm乃至4.5cmであり、第2上下方向A2でその下方に位置する毛束30は、第2上下方向A2の幅が一例として5cm乃至5.5cmであり、第2上下方向A2で更に下方に位置する毛束30は、第2上下方向A2の幅が一例として7cm乃至8cmである。複数の毛束30は、それぞれ複数本の頭髪103aを有し、複数の毛束30は、頭部10から突出されるように、施術者の手でそれぞれ持ち上げられる。1つの毛束30は、一例として200本乃至350本の頭髪を有する。複数の毛束30は、それぞれ異なるタイミングで持ち上げられてもよいし、いくつかの毛束30が同じタイミングで持ち上げられてもよい。
【0024】
複数の毛束30は、第2上下方向A2でそれぞれ異なる領域にあり、かつ、第2上下方向A2で並べて取り出される。第2上下方向A2で取り出された毛束30は、頭髪103aが生えている方向に持ち上げられ、例えば、
図3(b)に示す頭髪103aによって表される。ここで、第2上下方向A2とは、頭頂部101の側から後頭部103の側への方向として定義される。そして、バックセクション1030で取り出された毛束30において、該毛束30に含まれる頭髪103aを第2上下方向A2に所定の間隔でハサミでカットする、バックカットステップを行う。
【0025】
このバックカットステップによって、上述したショートカット100bのアスタイルの一部が形成されることになる。また、このバックカットステップでは、
図3(b)に示されるように、バックセクション1030で取り出された毛束30に含まれる頭髪103aの一部が、第2上下方向A2に所定の間隔で根元から所定の長さでハサミでカットされる。
図3(b)では、バックカットステップでカットされた頭髪が、頭髪103bとして表される。バックカットステップでカットされた1組の頭髪103bは、一例として100本乃至150本である。
【0026】
そして、
図3(c)に示されるように頭部10を真上から平面視すると、第3方向A3の異なる位置で取り出される複数の毛束20において、サイドカットステップでカットされた複数本の頭髪102bがそれぞれ形成される。また、第3方向A3の異なる位置で取り出された複数の毛束30において、バックカットステップでカットされた複数の頭髪103bが、それぞれ形成されることになる。なお、第2上下方向A2に沿った方向において、複数の毛束30がそれぞれ持ち上げられ、かつ、それぞれの毛束30群に含まれる頭髪103aに対して、それぞれバックステップカット、つまり、ギャップカットが行われる。第2上下方向A2において、ギャップカットされる複数の頭髪103bの幅は一例として1cmである。ギャップカットされない複数の頭髪103aの幅は一例として1cm乃至2cmである。
【0027】
また、
図3(c)のように、第3方向A3で異なる範囲に位置する複数の毛束30が、それぞれ持ち上げられ、かつ、それぞれの毛束30に含まれる複数本の頭髪103aに対して、それぞれバックステップカットが行われる。このため、第3方向A3で異なる範囲に位置する複数の毛束30について、それぞれ複数本の頭髪103bが形成される。
図3(c)では、第3方向A3に沿って2つの毛束30が並べて示されているが、3つ以上の毛束30が並べて持ち上げられてもよい。
【0028】
このようなヘアカット方法によれば、ベーシックボブ100aのヘアスタイルを形成する複数本の頭髪の一部を根元から所定の長さでカットすることで、ベーシックボブ100aのヘアスタイルの中に、ベーシックボブ100aとは長さが異なるショートカット100bのアスタイルを更に形成することができる。ここで、
図4は、本実施形態におけるベーシックボブ100aのヘアスタイルと、ショートカット100bのヘアスタイルとを例示する図である。本実施形態では、
図4に示すように、ベーシックボブ100aのヘアスタイルの中に、ショートカット100bのヘアスタイルが形成される。
【0029】
これによれば、スキバサミを用いて毛先を削ぐことなく毛量の調整ができるため、頭髪を傷めることがない。そして、ベーシックボブ100aのヘアスタイル中に、ショートカット100bのアスタイルを更に形成する。このため、頭髪のボリュームを抑えたり(この場合は、ギャップカットされる頭髪の長さが、例えば、根元から4cm以下にされる。)、頭髪のボリュームをだしたり(この場合は、ギャップカットされる頭髪の長さが、例えば、根元から5cmにされる。)することができる。したがって、立体的な仕上がりで毛量調整が可能となる。また、このようなヘアカット方法を記録しておけば、その記録に基づいて常に一定のヘアスタイルを再現することができるため、例えば、施術者の教育を行う場面では、感覚に頼ることなく、正確且つ簡単にヘアカット方法を教えることができる。
【0030】
更に、本開示のヘアカット方法によれば、サイドカットステップまたはバックカットステップにおいてギャップカットされなかった頭髪が束になり易いため、頭髪がまとまり易くなる。そのため、頭髪のまとまりが良いヘアスタイルを実現することができる。なお、本開示のヘアカット方法では、バックカットステップにおいてカットされた頭髪103bの根元からの長さが、サイドカットステップにおいてカットされた頭髪102bの根元からの長さよりも長くされてもよい。これについて、
図5に基づいて説明する。
【0031】
図5は、頭部10を真上から見た平面図である。この
図5には、頭部10を真上から平面視し、かつ、ギャップカットされた頭髪を頭部10から突出させた状態を想定した頭髪の長さが示されている。ここで、頭髪の根元から先端までの長さが、側頭部102から後頭部103に向かうにともないって徐々に長くなるように、頭髪がギャップカットされている。具体的に説明すると、ギャップカットされた頭髪の先端に接触する仮想線C1が、側頭部102の側方から、後頭部103の後方に向かって突出されたV字状になるように、頭髪がカットされている。
【0032】
詳しくは、前述した
図3(a)のたように、サイドカットステップにおいてギャップカットされた頭髪102bの根元から先端までの長さは、3cmである。また、
図3(b)のように、バックカットステップにおいてギャップカットされた頭髪103bの根元から先端までの長さは、4cm及び5cm(最後部が5cm)である。つまり、バックカットステップにおいてギャップカットされた頭髪103bの根元から先端までの長さは、サイドカットステップにおいてギャップカットされた頭髪102bの根元から先端までの長さより長い。
【0033】
そして、
図5のように、頭部10を真上から見た平面視で、第3方向A3で異なる位置にある複数の毛束20のそれぞれにおいて、ギャップカットされた複数本の頭髪102bの先端40に接触し、第3方向A3で異なる位置にある複数の毛束20のそれぞれにおいて、ギャップカットされた複数本の頭髪103bの先端41に接触に仮想線C1がV字状である。なお、施術者は、ギャップカットした毛束20,30からそれぞれ手を離すため、複数の毛束20及び複数の毛束30は、それぞれ自重で垂れ(降り)、
図4に示すようなショートカット100bが形成される。このため、
図4のように、頭部10を側面視した場合において、後頭部103の頭髪103aにボリュームがあるように見せることができる。したがって、仮に後頭部103の骨格に絶壁があったとしても、後頭部103の骨格の形状が、ヘアスタイルの形状にそのまま表れることを抑制できる。
【0034】
また、本開示のヘアカット方法では、サイドセクション1020を、ハチ部を含んだ第1サイドセクションと、該第1サイドセクションよりも頭頂部101側の第2サイドセクションと、に分け、バックセクション1030を、ハチ部を含んだ第1バックセクションと、該第1バックセクションよりも頭頂部101側の第2バックセクションと、に分けてもよい。そして、第2サイドセクションにおいて第1上下方向A1に毛束20を取り出し、該毛束20に含まれる頭髪を第1上下方向A1に所定の間隔で、カットされた頭髪の根元からの長さが該第1上下方向A1に徐々に短くなるようにカットしてもよい。また、第2バックセクションにおいて第2上下方向A2に毛束30を取り出し、該毛束30に含まれる頭髪を第2上下方向A2に所定の間隔で、カットされた頭髪の根元からの長さが該第2上下方向A2に徐々に短くなるようにカットしてもよい。以下、第2バックセクションにおけるカットを例にして説明する。
【0035】
図6は、頭部10を側方から側面視した図である。
図6に示す例では、上述したように、バックセクション1030が、第2上下方向A2で異なる範囲の第1バックセクション1031と第2バックセクション1032とに分けられる。第2上下方向A2において、第1バックセクション1031は、第2バックセクション1032より下に位置する。そして、第1バックセクション1031では、ギャップカットされた頭髪103bの根元からの長さが3cmにされる。一方、第2バックセクション1032では、ギャップカットされた頭髪103bの根元から先端60までの長さが、第2上下方向に向かって5cm、4cm、3cmと徐々に短くされる。
【0036】
ここで、
図3(b)に示す第2上下方向A2で取り出された毛束30の表面が短く(例えば、4cm以下)カットされると、カットされた頭髪が立ちやすくなり仕上がりが綺麗に見えないことがある。これに対して、第2上下方向A2に取り出された毛束の表面が長く(例えば、5cm)カットされ、該第2上下方向A2に沿って、頭髪103bの根元から先端60までの長さが、徐々に短くなるようにカットされると、長くカットされた表面の頭髪が第2上下方向A2に沿って流れ、その中に短くカットされた頭髪が収められる。つまり、
図4のショートカット100bによって、頭部10の骨格が補正されているように見せることができる。
【0037】
以上に述べたヘアカット方法によれば、頭部10の骨格が強調されないヘアカット方法を提供することができる。上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。たとえば、サイドカットステップやバックカットステップにおける、ギャップカットの間隔やギャップカットされる頭髪の長さを適宜変更することができる。本実施形態で開示した毛束20は、第1毛束の一例であり、毛束30は、第2毛束の一例である。
【符号の説明】
【0038】
10・・・頭部
20,30・・・毛束
100a・・ベーシックボブ
100b・・ショートカット
102a・・側頭部の頭髪
102b・・ギャップカットされた側頭部の頭髪
103a・・後頭部の頭髪
103b・・ギャップカットされた後頭部の頭髪
110a・・頭髪
1020・・サイドセクション
1030・・バックセクション
A1・・・第1上下方向
A2・・・第2上下方向
A3・・・第3方向
C1・・・仮想線
【手続補正書】
【提出日】2022-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の頭部を覆う無数本の頭髪の長さが肩につかないベーシックボブを形成する頭髪の一部を間引くようにハサミでカットすることで、前記ベーシックボブの中に、前記ベーシックボブよりも短い無数本の頭髪によって形成されるショートカットを形成するヘアカット方法において、
前記頭部の頭頂部の側から側頭部の側への方向を第1上下方向とし、前記頭頂部の側から前記頭部の後頭部の側への方向を第2上下方向とし、前記側頭部の側から前記後頭部の側への方向を第3方向としたとき、
前記ベーシックボブを形成する無数本の頭髪を、前記側頭部を覆うサイドセクションと、前記後頭部を覆うバックセクションと、に分けるステップと、
前記サイドセクションに含まれる無数本の前記頭髪から、複数本の頭髪によりそれぞれ形成される複数の第1毛束を、前記第1上下方向に沿って複数束を並べて取り出し、かつ、前記第3方向に沿って複数束を並べて取り出すステップと、
複数の前記第1毛束のそれぞれにおいて頭髪のうちの複数本の頭髪を間引くようにハサミでギャップカットすることで前記ショートカットを形成するステップであって、複数の前記第1毛束のそれぞれに含まれる複数本の頭髪を、前記第1上下方向に所定の間隔でギャップカットする作業を、前記第1上下方向に並べられている複数の前記第1毛束毎にそれぞれ行うサイドカットステップと、
前記バックセクションに含まれる無数本の前記頭髪から、複数本の頭髪によりそれぞれ形成される複数の第2毛束を、前記第2上下方向に沿って複数束を並べて取り出し、かつ、前記第3方向に沿って複数束を並べて取り出すステップと、
複数の前記第2毛束のそれぞれにおいて頭髪のうちの複数本の頭髪を間引くようにハサミでギャップカットすることで前記ショートカットを形成するステップであって、複数の前記第2毛束のそれぞれに含まれる複数本の頭髪を、前記第2上下方向に所定の間隔でギャップカットする作業を、前記第2上下方向に並べられている複数の前記第2毛束毎にそれぞれ行うバックカットステップと、
を有し、
複数の前記第2毛束に含まれる頭髪のうち、前記バックカットステップにおいてギャップカットされた複数本の頭髪の根元から先端までの長さは、複数の前記第1毛束に含まれる頭髪のうち、前記サイドカットステップにおいてギャップカットされた複数本の頭髪の根元から先端までの長さより長く、
前記頭部を真上から平面視し、かつ、前記第3方向に並べられる複数の前記第1毛束のうちギャップカットされた複数本の頭髪が前記頭部から突出された状態を想定した場合における複数本の前記頭髪の先端と、前記頭部を真上から平面視し、かつ、前記第3方向に並べられる複数の前記第2毛束のうちギャップカットされた複数本の頭髪が前記頭部から突出された状態を想定した場合における複数本の前記頭髪の先端と、に接する仮想線は、前記頭部を真上から見た平面視で、前記側頭部から前記後頭部に向かって突出するV字状であり、
前記頭部を側面視し、かつ、前記第2上下方向に並べられる複数の前記第2毛束のうち、ギャップカットされた複数本の前記頭髪が前記頭部から突出された状態を想定した場合における複数本の前記頭髪の根元から先端までの長さは、前記第2上下方向で上に位置する前記第2毛束に含まれる複数本の前記頭髪より、前記第2上下方向で下に位置する前記第2毛束に含まれる複数本の前記頭髪が短い、ヘアカット方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本開示によれば、頭部を真上から見た平面視で、複数の第1毛束にそれぞれ含まれる複数本の頭髪の先端、及び複数の第2毛束にそれぞれ含まれる複数本の頭髪の先端に接する仮想線がV字状になり、頭部を側面視すると、後頭部を覆う無数本の頭髪にボリュームがあるように見える。したがって、後頭部の骨格に絶壁があったとしても、後頭部の骨格の形状が、ヘアスタイルの形状にそのまま表れることを抑制できる。また、頭部を側面視し、かつ、第2上下方向に並べられる複数の第2毛束のうち、ギャップカットされた複数本の頭髪が頭部から突出された状態を想定した場合における複数本の頭髪の根元から先端までの長さは、第2上下方向で上に位置する第2毛束に含まれる複数本の頭髪より、第2上下方向で下に位置する第2毛束に含まれる複数本の頭髪が短い。したがって、長くカットされた表面の頭髪が第2上下方向に沿って流れ、その中に短くカットされた頭髪が収められ、ショートカットによって、頭部の骨格が補正されているように見せることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
そこで、本開示のヘアカット方法では、ベーシックボブ100aのヘアスタイルを形成する頭髪の一部を間引くようにハサミでカット(ギャップカット)し、ベーシックボブ100aのヘアスタイルの中に、ショートカット100bのヘアスタイルを形成することで、上記の問題点を解決する。これについて、
図3及び
図4に基づいて、以下に詳しく説明する。ベーシックボブ100aは、例えば、頭部10の頭頂部101、側頭部102及び後頭部103を覆う無数本の頭髪の長さが、肩につかない程度の長さであり、かつ、頭髪で耳50が隠れて、内側の毛と外側の毛の段差がほとんど無い髪形(スタイル)を指す。
図4では、便宜上、頭髪の根元の輪郭が破線で示されており、耳50は隠れていない。また、ショートカット100bは、頭部10を覆う無数本の頭髪が、襟足51から3cm以内になるように、無数本の頭髪の先端をカットした髪形(スタイル
)を指す。頭髪の根元から先端までの長さは、ショートカット100bの方が、ベーシックボブ100aより短い。