(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043320
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
H05K3/46 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150860
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(72)【発明者】
【氏名】川合 悟
(72)【発明者】
【氏名】丹野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】籠橋 進
(72)【発明者】
【氏名】和田 健太郎
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA43
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC32
5E316DD25
5E316FF07
5E316FF15
5E316HH40
(57)【要約】
【課題】 適切な露出面を有する樹脂絶縁層で形成されているプリント配線板の提供
【解決手段】 プリント配線板は、第1面Fと第1面Fと反対側の第2面Sとを有する樹脂絶縁層50と、樹脂絶縁層50の第1面F上に形成されている第1導体層58、とを有する。樹脂絶縁層50は樹脂50αと粒子70で形成されている。粒子70は樹脂50αに部分的に埋まっている第1粒子70Aと樹脂50αに完全に埋まっている第2粒子70Bを含む。第1粒子70Aの表面は外に露出する面(第1露出面)70Aoと樹脂50αで覆われる面(被覆面)70Aiで形成される。第1面Fは第1粒子70Aの露出面70Aoを含む。第1粒子70Aの露出面70Aoの面積を合算することで得られる面積(第2面積)と第1面Fの面積(第1面積)との第1比(第2面積/第1面積)は0.1以上、0.25以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有する樹脂絶縁層と、
前記樹脂絶縁層の前記第1面上に形成されている導体層、とからなるプリント配線板であって、
前記樹脂絶縁層は樹脂と粒子で形成されていて、前記粒子は前記樹脂に部分的に埋まっている第1粒子と前記樹脂に完全に埋まっている第2粒子を含み、前記第1粒子の表面は外に露出する面(第1露出面)と前記樹脂で覆われる面(被覆面)で形成され、前記第1面は前記第1露出面を含み、前記第1粒子の前記第1露出面の面積を合算することで得られる面積(第2面積)と前記第1面の面積(第1面積)との第1比(第2面積/第1面積)は0.1以上、0.25以下である。
【請求項2】
請求項1のプリント配線板であって、前記第1面は、さらに、外に露出している前記樹脂の面(第2露出面)を含み、前記第1面は前記第1露出面と前記第2露出面で形成されている。
【請求項3】
請求項2のプリント配線板であって、前記第1露出面の表面積(第1表面積)と前記被覆面の表面積(第2表面積)との第2比(第1表面積/第2表面積)は0.5未満である。
【請求項4】
請求項3のプリント配線板であって、前記第2比は0.35以下である。
【請求項5】
請求項3のプリント配線板であって、前記第2比は0.2以下である。
【請求項6】
請求項1のプリント配線板であって、前記第1比を求めることは、前記第1面の画像を撮影することと、前記画像内の前記第1面積と前記第2面積を求めることを含む。
【請求項7】
請求項6のプリント配線板であって、前記画像の倍率は10、000倍である。
【請求項8】
請求項6のプリント配線板であって、前記画像の数は10であって、前記第1比は各前記画像から求められる値の平均値である。
【請求項9】
請求項6のプリント配線板であって、前記画像の数は10であって、前記画像から求められる前記第1比のそれぞれが0.1以上、0.25以下である。
【請求項10】
請求項6のプリント配線板であって、前記第2面積は、前記画像内の前記第1粒子の前記第1露出面の面積を合算することで代表される。
【請求項11】
請求項10のプリント配線板であって、前記第1面積は、前記画像から測定される面積で代表される。
【請求項12】
請求項11のプリント配線板であって、前記画像は2次元の画像であって、前記第1面積と前記第2面積は表面積でなく、前記第1面積と前記第2面積は前記2次元の画像を用いて求められる。
【請求項13】
請求項12のプリント配線板であって、前記画像の形が矩形の場合、前記第1面積は前記矩形の面積であり、前記第1露出面の形状が円で代表される場合、前記第1露出面の面積は前記円の面積である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂絶縁層と導体層とからなるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は半導体パッケージ基板に用いられるビルドアップ材料を開示している。ビルドアップ材料の例として表2にABFが紹介されている。そして、非特許文献1は銅めっきとの密着を確保するため、絶縁樹脂の表面を化学的にエッチングしている。絶縁樹脂の表面を過マンガン酸でエッチングすることで、非特許文献1は絶縁樹脂の表面に凹凸を形成している。
特許文献1は充填剤と絶縁層の材料として味の素ファインテクノ株式会社製のABF-GX13GCを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】半導体パッケージ基板用ビルドアップ材料 出展:日本ゴム協会誌 第84巻 第10号(2011)https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/84/10/84_10_321/_pdf
【特許文献1】特開2012-186440号公報
【発明の概要】
【0004】
[先行技術の課題]
特許文献1の179段落によれば、充填剤はガラス粒子を含んでいる。そのため、ABF-GX13GCはガラス粒子を有していると考えられる。また、味の素ファインテクノ株式会社製のABFは樹脂絶縁層として広く使用されている。従って、ガラス粒子を含んでいるABFが樹脂絶縁層に広く使われていると考えられる。非特許文献1は、高い親和性を有する樹脂について、以下の傾向があると述べている。高い親水性を有する樹脂は選択的にエッチングされる。ガラス粒子を含んでいるABFがエッチングされると、高い親水性を有する樹脂が選択的にエッチングされると考えられる。そして、ガラス粒子はほぼエッチングされないと考えられる。そのため、めっき膜と樹脂間の密着強度とめっき膜とガラス粒子間の密着強度が比較されると、後者は低いと予測される。従って、ガラス粒子はめっき膜と樹脂絶縁層間の密着強度に影響を与えると考えられる。樹脂絶縁層に含まれるガラス粒子が多すぎると、めっき膜が樹脂絶縁層から剥がれると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るプリント配線板は、第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有する樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層の前記第1面上に形成されている導体層、とからなる。そして、前記樹脂絶縁層は樹脂と粒子で形成されていて、前記粒子は前記樹脂に部分的に埋まっている第1粒子と前記樹脂に完全に埋まっている第2粒子を含み、前記第1粒子の表面は外に露出する面(第1露出面)と前記樹脂で覆われる面(被覆面)で形成され、前記第1面は前記第1露出面を含み、前記第1粒子の前記第1露出面の面積を合算することで得られる面積(第2面積)と前記第1面の面積(第1面積)との第1比(第2面積/第1面積)は0.1以上、0.25以下である。
【0006】
[実施形態の効果]
本発明の実施形態のプリント配線板によれば、第1比(第2面積/第1面積)は0.1以上、0.25以下である。第1面の大部分が樹脂で形成される。そのため、第1面上の導体回路が樹脂絶縁層から剥がれ難い。例えば、第1比が0.1未満であると、導体回路と接する第1面の熱膨張係数が大きい。熱ストレスで導体回路が第1面から剥がれやすい。第1比が0.25を超えると、第1面を形成する樹脂の量が小さい。熱ストレスで導体回路が第1面から剥がれやすい。
【0007】
樹脂の比誘電率と粒子の比誘電率は異なる。従って、第1面の比誘電率は均一でないと考えられる。第1面の比誘電率は場所によって異なると考えられる。第1面上に形成されている導体層が複数の信号配線を含むと、各信号配線は第1面に接している。第1面の比誘電率が均一でないと、信号配線間で伝送速度の差が大きいと考えられる。信号配線の長さが5mmを越えると、伝送速度の差はプリント配線板上に実装されるICチップの誤動作に影響すると考えられる。信号配線の長さが10mm以上、25mm以下であると、誤動作の頻度が大きいと予測される。しかしながら、実施形態では、第1比が0.1以上、0.25以下であるので、伝送速度の差が小さい。誤動作の発生頻度を小さくすることができる。
【0008】
第1比が0.1以上、0.25以下であると、導体層を形成する化学銅の厚みが薄くても、導体層と樹脂絶縁層間の密着を確保することができる。信号配線の幅が小さくても、信号配線と樹脂絶縁層間の密着強度が目標値を満足する。信号配線の幅が8μm以下であっても、信号配線は樹脂絶縁層から剥がれ難い。信号配線の幅が3μm以上であれば、信号配線は樹脂絶縁層から剥がれ難い。
第1比が0.1以上、0.25以下であると、第1面を形成する樹脂の粗さを小さくすることができる。第1面と接する導体回路の伝送損失を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るプリント配線板の断面図
【
図2】
図2(A)は樹脂絶縁層の断面の模式図であり、
図2(B)は第1面のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るプリント配線板10の断面図である。
プリント配線板10は、第1面Fと第1面Fと反対側の第2面Sを有する樹脂絶縁層50と樹脂絶縁層50の第1面F上に形成されている導体層(第1導体層)58とを有する。第1導体層58は第1面Fと接する。
図2(A)に示されるように、樹脂絶縁層50は樹脂50αと粒子70で形成されている。樹脂50αの例はエポキシ樹脂やポリイミドである。粒子70は無機粒子である。粒子70の例はシリカやアルミナである。粒子70の形状は球である。例えば、樹脂絶縁層50は、コア基板30とコア基板30上の第2導体層34上に形成されている。第1導体層58と第2導体層34は、樹脂絶縁層50を貫通するビア導体60を介して接続されている。
【0011】
樹脂絶縁層50中の粒子70の量は60wt%以上、90w%以下である。粒子70の平均粒子径は0.2μm以上、5.0μm以下である。
【0012】
図2(A)は樹脂絶縁層50の第1面F付近の拡大図である。
図2(A)には、樹脂50αと粒子70が示されている。粒子70は、樹脂50αに部分的に埋まっている第1粒子70Aと樹脂50αに完全に埋まっている第2粒子70Bを含む。第1粒子70Aの一部は外に露出している。第1粒子70Aの内、外に露出している部分は露出部分7Oであり、樹脂50α内に埋まっている部分は埋め込み部分7Iである。第1粒子70Aの表面は外に露出する面(第1露出面)70Aoと樹脂50αで覆われる面(被覆面)70Aiで形成されている。第1露出面70Aoは露出部分7Oの表面である。被覆面70Aiは埋め込み部分7Iの表面である。樹脂50αは、外に露出している樹脂の面(第2露出面)50αoを有する。第1面Fは第1露出面70Aoと第2露出面50αoで形成される。
【0013】
実施形態では、各第1粒子70Aの第1露出面70Aoの面積が測定される。各第1粒子70Aの第1露出面70Aoの面積(第1露出面積)を合算することで得られる値は第2面積である。第2面積は各第1粒子70Aの第1露出面70Aoの面積を合算することで代表される。
実施形態では、第1面Fの面積が測定される。第1面Fの面積は第1面積である。第1面積は第2面積と第2露出面50αoの面積(第2露出面積)を合算することで得られる。
【0014】
例えば、第1露出面積と第2露出面積は第1面Fの二次元の画像を用いて求められる。あるいは、第1露出面積と第2露出面積は第1面Fの三次元形状を用いて求められる。二次元の画像の例は、SEM像や顕微鏡写真である。三次元形状は三次元測定器を用いて求められる。例えば、レーザ変位センサを用いて三次元形状を測定することができる。
二次元の画像を用いて第1面積と第2面積が求められる場合、第1面積と第2面積は平面積で代表される。
三次元形状を用いて第1面積と第2面積が求められる場合、第1面積と第2面積は表面積で代表される。
【0015】
SEM像を用いて面積を求める方法が次に示される。
図2(B)は樹脂絶縁層50の第1面FのSEM像である。
図2(B)に示されるSEM像の倍率は10000倍である。
図2(B)は第1面Fの上面図である。
図2(B)に示されるSEM像中の各第1粒子70Aの第1露出面70Aoの面積(第1露出面積)が求められる。その後、各第1露出面積を合算することで、第2面積が求められる。各第1露出面70Aoは平面として認識される。例えば、各第1露出面70Aoの形状は円として認識される。その場合、各第1露出面70Aoの面積は円の面積である。
例えば、
図2(B)に示されるSEM像を用いて、第1面Fの面積(第1面積)が求められる。SEM像を用いて求められる第1面Fの面積が第1面積の代表値である。第1面Fは平面として認識される。例えば、第1面Fの形状は矩形として認識される。その場合、第1面Fの面積は矩形の面積である。
【0016】
第1面積と第2面積を求めるためのSEM像の数は複数であることが好ましい。例えば、SEM像の数は10である。例えば、第1面積は各SEM像から得られる値を平均することで代表される。第2面積は各SEM像から得られる値を平均することで代表される。
【0017】
三次元形状を用いて第1面積と第2面積が求められる場合、測定対象の数は10である。第1面積と第2面積は10個のデータの平均値である。
【0018】
第2面積を第1面積で割ること得られる値は第1比(第2面積/第1面積)である。第1比は0.1以上、0.25以下である。画像の数が複数の場合、各画像から求められる第1比が0.1以上、0.25以下であることが好ましい。第1面Fの大部分が樹脂50αで形成される。そのため、第1導体層58が樹脂絶縁層50の第1面Fから剥がれ難い。例えば、第1比が0.1未満であると、第1導体層58と接する第1面Fの熱膨張係数が大きい。熱ストレスで第1導体層58が第1面Fから剥がれやすい。第1比が0.25を超えると、第1面Fを形成する樹脂50αの量が小さい。熱ストレスで第1導体層58が樹脂絶縁層50の第1面Fから剥がれやすい。
樹脂50αの比誘電率と粒子70の比誘電率は異なる。従って、第1面Fの比誘電率は均一ではないと考えられる。第1面Fの比誘電率は場所によって異なると考えられる。第1面F上に形成されている第1導体層58が複数の信号配線581、582を含むと、各信号配線581、582は第1面Fに接している。第1面Fの比誘電率が均一でないと、信号配線581、582間で伝送速度の差が大きいと考えられる。信号配線581、582の長さが5mmを越えると、伝送速度の差はプリント配線板10上に実装されるICチップの誤動作に影響すると考えられる。信号配線581、582の長さが10mm以上、25mm以下であると、誤動作の頻度が大きいと予測される。しかしながら、実施形態では、第1比が0.1以上、0.25以下であるので、伝送速度の差が小さい。誤動作の発生頻度を小さくすることができる。
【0019】
樹脂絶縁層50の第1面Fの算術平均粗さRaは0.01μm以上、0.5μm以下である。樹脂絶縁層50の第1面Fの十点平均粗さRzは2.0μm以下である。樹脂絶縁層50の第1面Fの粗度が小さくても、第1比が0.1以上、0.25以下であるので、第1導体層58を形成する化学銅52の厚みを薄くすることができる。高密度な配線を有する第1導体層58が得られる。第1面Fの粗度が小さいので、第1導体層58内の信号配線581、582の伝送損失を小さくすることができる。粗度の例は算術平均粗さRaや十点平均粗さRzである。第1導体層58は化学銅52と化学銅52上の電気銅56で形成されていて、化学銅52は第1面Fに接している。
【0020】
実施形態のプリント配線板では、第1露出面70Aoの表面積(第1表面積)と被覆面70Aiの表面積(第2表面積)との第2比(第1表面積/第2表面積)が0.5未満である。第2比は0.35以下であることが更に望ましい。第2比は0.2以下であることが最適である。第2比は
図2(A)に示される断面図から推測される。
図2(A)を用いて、一つの第1粒子70Aの露出部分7Oの面積と埋め込み部分7Iの面積が求められる。第2比と比(露出部分7Oの面積/埋め込み部分7Iの面積)はほぼ等しい。第2比は比(露出部分7Oの面積/埋め込み部分7Iの面積)で代表される。
【0021】
第1比は樹脂絶縁層50中の無機粒子70の量で制御することができる。CF4ガスが樹脂絶縁層50に照射されると、樹脂絶縁層50中の樹脂50αが選択的に除去される。無機粒子70の表面の一部が第1面Fを形成する。例えば、ガスを照射する時間を調整することで、第1比と第2比を制御することができる。ガスの濃度を調整することで、第1比と第2比を制御することができる。第1面Fを酸化剤で荒らすことができる。
【符号の説明】
【0022】
50 樹脂絶縁層
50α 樹脂
34 第2導体層
58 第1導体層
60 ビア導体
70 粒子
70A 第1粒子
70B 第2粒子