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特開2023-43332電極配線基板および電極配線基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043332
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】電極配線基板および電極配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20230322BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230322BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20230322BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B32B15/08 J
B32B9/00 A
H01B5/14 B
H01B13/00 503D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150887
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154483
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和寛
(72)【発明者】
【氏名】笹井 建典
(72)【発明者】
【氏名】岡田 圭司
(72)【発明者】
【氏名】栗熊 甫
【テーマコード(参考)】
4F100
5G323
【Fターム(参考)】
4F100AA17C
4F100AA21C
4F100AA21E
4F100AA25C
4F100AA28C
4F100AA28E
4F100AB01B
4F100AB17B
4F100AB24B
4F100AB31B
4F100AK25D
4F100AK42A
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA05
4F100EH46D
4F100EH46E
4F100EH66E
4F100EJ08D
4F100EJ08E
4F100EJ54D
4F100EJ54E
4F100EJ61
4F100GB41
4F100JG01B
4F100JG04
4F100JL09
4F100JL11
4F100JM02B
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
5G323CA05
(57)【要約】
【課題】電極配線の形成が簡便となる電極配線基板および電極配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】基板12の面上に、電極配線パターンを構成する部分16aが含まれる薄膜層16を有し、電極配線パターンを構成する部分16aは、金属を含む導電膜で構成され、薄膜層16の面上に、金属酸化物で構成される不連続膜14,18を有する電極配線基板10とする。不連続膜14,18の厚みは、0.5nm以上5.0nm以下であることが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の面上に、電極配線パターンを構成する部分が含まれる薄膜層を有し、
前記電極配線パターンを構成する部分は、金属を含む導電膜で構成され、
前記薄膜層の面上に、金属酸化物で構成される不連続膜を有する、電極配線基板。
【請求項2】
前記不連続膜の厚みが、0.5nm以上5.0nm以下である、請求項1に記載の電極配線基板。
【請求項3】
前記電極配線パターンを構成する部分の面上には、当該部分を覆うマスクが配置されている、請求項1または請求項2に記載の電極配線基板。
【請求項4】
前記導電膜は、銀、銅、銀合金、銅合金のうちの少なくとも1種の金属を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電極配線基板。
【請求項5】
前記不連続膜は、チタン、スズ、タンタル、亜鉛のうちの少なくとも1種の金属の酸化物を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電極配線基板。
【請求項6】
基板の面上に電極配線パターンを有する電極配線基板の製造方法であって、
基板の面上に金属薄膜を形成する工程と、
前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応しない部分を酸化、窒化、または炭化して金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のうちの少なくとも1種を含む非導電膜とするとともに、前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応する部分を酸化、窒化、または炭化しないで金属を含む導電膜とする工程と、を有する、電極配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応する部分の面上にマスクを配置して、前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応しない部分を酸化、窒化、または炭化する、請求項6に記載の電極配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記非導電膜を除去する工程をさらに有する、請求項6または請求項7に記載の電極配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応しない部分の酸化、窒化、または炭化は、プラズマ処理で行う、請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の電極配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極配線基板および電極配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板などの電極配線基板においては、スパッタリング、導電インク塗工、金属箔の貼り合わせなどにより基板に金属層を積層した後、金属層にエッチング処理を行うことにより、電極配線パターンの形成が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-4960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極配線基板の電極配線パターンをエッチングで形成する場合、エッチングによる金属部の一部を除去する工程が発生することから、簡便に電極配線パターンを形成できない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電極配線パターンの形成が簡便となる電極配線基板および電極配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明に係る電極配線基板は、基板の面上に、電極配線パターンを構成する部分が含まれる薄膜層を有し、前記電極配線パターンを構成する部分は、金属を含む導電膜で構成され、前記薄膜層の面上に、金属酸化物で構成される不連続膜を有する。
【0007】
本発明に係る電極配線基板においては、前記不連続膜の厚みは0.5nm以上5.0nm以下であることが好ましい。また、前記電極配線パターンを構成する部分の面上には、当該部分を覆うマスクが配置されていてもよい。そして、前記導電膜は、銀、銅、銀合金、銅合金のうちの少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。そして、前記不連続膜は、チタン、スズ、タンタル、亜鉛のうちの少なくとも1種の金属の酸化物を含むことが好ましい。
【0008】
そして、本発明に係る電極配線基板の製造方法は、基板の面上に電極配線パターンを有する電極配線基板の製造方法であって、基板の面上に金属薄膜を形成する工程と、前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応しない部分を酸化、窒化、または炭化して金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のうちの少なくとも1種を含む非導電膜とするとともに、前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応する部分を酸化、窒化、または炭化しないで金属を含む導電膜とする工程と、を有する。
【0009】
本発明に係る電極配線基板の製造方法においては、前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応する部分の面上にマスクを配置して、前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応しない部分を酸化、窒化、または炭化することが好ましい。そして、前記非導電膜を除去する工程をさらに有することが好ましい。そして、前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応しない部分の酸化、窒化、または炭化は、プラズマ処理で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電極配線基板によれば、基板の面上に、電極配線パターンを構成する部分が含まれる薄膜層を有し、前記電極配線パターンを構成する部分は、金属を含む導電膜で構成され、前記薄膜層の面上に、金属酸化物で構成される不連続膜を有することから、電極配線パターンの形成が簡便となる。
【0011】
そして、本発明に係る電極配線基板の製造方法によれば、基板の面上に電極配線パターンを有する電極配線基板の製造方法であって、基板の面上に金属薄膜を形成する工程と、前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応しない部分を酸化、窒化、または炭化して金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のうちの少なくとも1種を含む非導電膜とするとともに、前記金属薄膜のうち電極配線パターンに対応する部分を酸化、窒化、または炭化しないで金属を含む導電膜とする工程と、を有することから、電極配線パターンの形成が簡便となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る電極配線基板の平面図である。
図2図1に示す電極配線基板の断面図である。
図3図1に示す電極配線基板の製造工程を説明する工程図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る電極配線基板の断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る電極配線基板の断面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る電極配線基板の断面図である。
図7】電極配線パターンの寸法精度の評価方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る電極配線基板について詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明の一実施形態に係る電極配線基板の外観を示す。図2には、図1に示す電極配線基板の断面図を示す。
【0015】
本発明の一実施形態に係る電極配線基板10は、基板12と、不連続膜14と、薄膜層16と、不連続膜18と、マスク22と、をこの順で有する積層体である。薄膜層16には、電極配線パターンを構成する部分16a(電極配線パターン16a)が含まれている。電極配線パターンを構成する部分16aは、金属を含む導電膜で構成されている。薄膜層16は、1層構成となっており、薄膜層16の一方面上に不連続膜14が配置され、薄膜層16の他方面上に不連続膜18が配置されている。不連続膜14,18は、金属酸化物で構成されている。マスク22は、電極配線パターンを構成する部分16aの面上に配置されている。
【0016】
電極配線パターン16aは、電極配線部を構成している。電極配線パターン16aには、配線取出部24が接続されており、配線取出部24は、接点26に接続されている。配線取出部24および接点26は、電極配線パターン16aと同様の材料で構成されていてもよいし、導電ペーストなどから形成されてもよい。特に限定されるものではない。導電ペーストの金属としては、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
【0017】
基板12は、薄膜層16などを形成するためのベースとなる基材である。基板12は、フィルム状やシート状に薄いものであってもよいし、板状のものであってもよい。基板12は、光透過性を有するものであってもよいし、光透過性を有していないものであってもよい。光透過性とは、波長領域360~830nmにおける透過率の値が50%以上であることをいう。基板12が光透過性基板であると、透明性に優れ、視認されにくいため、意匠性が向上する。光透過性基板の材料としては、光透過性を有し、その表面に薄膜を支障なく形成できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、光透過性高分子フィルムやフレキシブルガラス、シリコーンゴムシートなどが挙げられる。
【0018】
基板12の材料としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリウレタン、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)などのフッ素系材料などの高分子材料が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、光透過性、耐久性、加工性に優れるなどの観点からは、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンナフタレートがより好ましい材料として挙げられる。また、光透過性高分子フィルムは、耐熱性に優れるなどの観点からは、結晶性で線膨張率の小さいものが比較的好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどが挙げられる。
【0019】
基板12の厚さは、用途、光学特性、材料種、耐久性などを考慮して適宜調整すればよい。光透過性高分子フィルムの厚さは、例えば加工時にしわが入りにくい、破断しにくいなどの観点から、25μm以上が好ましい。より好ましくは50μm以上である。また、柔軟性、取り扱い性、経済性などの観点から、500μm以下が好ましい。より好ましくは250μm以下である。フレキシブルガラスの厚さは、用途、光学特性、耐久性などを考慮して適宜調整すればよい。シリコーンゴムシートの厚さは、用途、光学特性、耐久性などを考慮して適宜調整すればよい。
【0020】
電極配線パターンを構成する部分16aである導電膜は、金属を含む。導電膜は、金属成分のみで構成されていてもよいし、金属の酸化物成分、窒化物成分、炭化物成分などが含まれていてもよい。
【0021】
導電膜は、導電性の観点から、表面抵抗が1000Ω/□以下であるとよい。より好ましくは100Ω/□以下である。表面抵抗は、例えばスタロレスタ-GX MCP-T700 低抵抗抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック製)により測定することができる。
【0022】
導電膜を構成する金属としては、銀、銀合金、金、白金、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金などが挙げられる。これらのうちでは、光透過性などの観点から、銀、銀合金、銅、銅合金が好ましい。そして、熱、光、水蒸気などの環境に対する耐久性が向上するなどの観点から、銀合金がさらに好ましい。銀合金としては、銀を主成分とし、銅、ビスマス、金、パラジウム、白金、チタンなどの金属元素を少なくとも1種以上含んだ銀合金が良い。さらに好ましくは、銅を含む銀合金(Ag-Cu系合金)、ビスマスを含む銀合金(Ag-Bi系合金)、チタンを含む銀合金(Ag-Ti系合金)等が良い。
【0023】
導電膜の厚さは、3.0nm以上30.0nm以下であることが好ましい。導電膜の厚さが3.0nm以上であると、安定性に優れる。この観点から、導電膜の厚さは、より好ましくは5.0nm以上、さらに好ましくは7.0nm以上である。また、導電膜の厚さが30.0nm以下であると、光透過性、経済性に優れる。この観点から、導電膜の厚さは、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは11nm以下である。導電膜の厚さは、例えば電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)を用いて計測することができる。
【0024】
不連続膜14,18は、金属酸化物で構成される膜として形成される。不連続膜とは、膜が連続せず空孔が存在する状態をいう。例えば、金属酸化物がドット状や島状に点在する状態をいう。不連続膜14,18を構成する金属酸化物としては、チタンの酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物、タンタルの酸化物、亜鉛の酸化物などが挙げられる。不連続膜14,18は、チタンの酸化物、スズの酸化物、のうちの少なくとも1種の金属酸化物を含むとよい。また、特に、スズの酸化物を含むとよい。スズの酸化物は、高速成膜が可能であるとともに、耐食性に優れる。
【0025】
不連続膜14,18は、金属酸化物成分のみで構成されていてもよいし、金属成分が含まれていてもよい。
【0026】
不連続膜14,18の厚さは、0.5nm以上5.0nm以下であるとよい。不連続膜14,18の厚さが0.5nm以上であると、薄膜層16の導電膜を構成する金属の酸化が抑えられやすい。また、この観点から、不連続膜14,18の厚さは、より好ましくは1.0nm以上である。一方、不連続膜14,18の厚さが5.0nm以下であると、後述するプラズマ処理により薄膜層16の非導電膜を形成しやすい。また、この観点から、不連続膜14,18の厚さは、より好ましくは4.0nm以下である。不連続膜14,18の厚さは、例えば電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)を用いて計測することができる。
【0027】
マスク22は、後述するプラズマ処理において、金属薄膜15のうちマスク22で覆われている部分がプラズマ処理を受けないように保護するものである。マスク22を構成する材料としては、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ビニル樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。これらのうちでは、光透過性、耐久性、加工性などの観点から、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0028】
マスク22の厚さは、0.005μm以上30μm以下であることが好ましい。マスク22の厚さが0.005μm以上であると、金属薄膜15を保護する効果により優れる。また、この観点から、マスク22の厚さは、より好ましくは1.0μm以上である。一方、マスク22の厚さが30μm以下であると、外観、光透過性、加工性に優れる。また、この観点から、マスク22の厚さは、より好ましくは20μm以下である。
【0029】
電極配線基板10は、次のようにして製造することができる。まず、図3(a)に示すように、基板12を準備する。次いで、図3(b)に示すように、基板12の一方面上に、順に、不連続膜14、金属薄膜15、不連続膜18を積層する。次いで、図3(c)に示すように、厚さ方向で見て電極配線パターンを構成する部分16aに対応する位置に、マスク22を形成する。次いで、マスク22を形成している面側から、プラズマ処理を行う。これにより、厚さ方向で見て電極配線パターンを構成しない部分16bに対応する位置の金属薄膜15を酸化、窒化、あるいは炭化して金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のうちの少なくとも1種を含む非導電膜とするとともに、厚さ方向で見て電極配線パターンを構成する部分16aに対応する位置の金属薄膜15を酸化、窒化、あるいは炭化しないで金属を含む導電膜とする。以上により、基板12の面上に、金属を含む導電膜で構成された電極配線パターンを構成する部分16aと、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のうちの少なくとも1種を含む非導電膜で構成された電極配線パターンを構成しない部分16bと、が同一平面内に含まれる薄膜層16が形成される。次いで、図3(e)に示すように、厚さ方向で見て電極配線パターンを構成しない部分16bに対応する位置の不連続膜14、非導電膜、不連続膜18を除去する。以上により、電極配線基板10を製造することができる。
【0030】
不連続膜14、金属薄膜15、不連続膜18は、気相法により形成することができる。気相法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどの物理的気相成長法(PVD)や、熱CVD法、プラズマCVD法などの化学的気相成長法(CVD)が挙げられる。これらのうちでは、緻密な膜質が得られる、膜厚制御が比較的容易であるなどの観点から、スパッタリング法がより好ましい。
【0031】
不連続膜14、不連続膜18の形成において、スパッタリング法のターゲットは、金属であってもよいし、金属酸化物であってもよい。金属と金属酸化物のアロイ(複合体)であってもよい。金属をターゲットとする場合、成膜された金属薄膜を後から酸化することにより金属酸化物を含む薄膜とすることができる。金属酸化物をターゲットとする場合、酸化工程を必要としないため、成膜後の酸化処理の負荷を低減することができる。金属と金属酸化物のアロイをターゲットとする場合、金属をターゲットとする場合と比較して成膜後の酸化処理の負荷を低減することができる。また、金属酸化物をターゲットとする場合と比較して成膜レートが高く成膜時の電力が低く、基板12へのダメージが抑えられる。
【0032】
プラズマ処理は、所定のプラズマ装置を用いて行うことができる。プラズマ処理は、金属薄膜15の一部の導電性をなくす処理である。プラズマ処理は、炉内に導入するガスの種類により、金属薄膜15の一部を酸化、窒化、あるいは炭化することができる。プラズマ処理は、放電プラズマを持続させる放電(電離)エネルギーの供給手段として、マイクロ波エネルギーによるものと高周波エネルギーによるものがある。これらのうちでは、大面積の処理において速く処理できるなどの観点から、マイクロ波エネルギーによるものがより好ましい。
【0033】
非導電膜等の除去は、布等を用いた拭き取り、粘着テープを用いた除去、水等を用いた洗浄などにより、容易に行うことができる。
【0034】
以上の構成の電極配線基板10によれば、基板12の面上に電極配線パターンを構成する部分16aが含まれる薄膜層16を有し、電極配線パターンを構成する部分16aは金属を含む導電膜で構成され、薄膜層16の面上に金属酸化物で構成される不連続膜を有することから、電極配線パターンの形成が簡便となる。
【0035】
また、電極配線基板10は、非導電膜が除去されていることから、金属種によっては、光透過性、意匠性が向上する。例えば、非導電膜を構成する金属が銀、銀合金であると、非導電膜には金属光沢反射やギラツキ感があるが、非導電膜が除去されていることで、金属光沢反射やギラツキ感が抑えられ、非導電膜が除去されていないものと比較して、光透過性、意匠性が向上する。
【0036】
また、以上の構成の電極配線基板10の製造方法によれば、基板12の面上に金属薄膜15を形成する工程と、金属薄膜15のうち電極配線パターンに対応しない部分を酸化、窒化、または炭化して金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のうちの少なくとも1種を含む非導電膜とするとともに、金属薄膜15のうち電極配線パターンに対応する部分を酸化、窒化、または炭化しないで金属を含む導電膜とする工程と、を有することから、電極配線パターンの形成が簡便となる。
【0037】
次に、本発明に係る電極配線基板の他の実施形態について説明する。
【0038】
図4には、本発明に係る電極配線基板の他の実施形態を示す。
【0039】
他の実施形態に係る電極配線基板20は、基板12と、不連続膜14と、薄膜層16と、不連続膜18と、マスク22と、をこの順で有する積層体である。薄膜層16には、電極配線パターンを構成する部分16a(電極配線パターン16a)と電極配線パターンを構成しない部分16bとが同一平面内に含まれている。電極配線パターンを構成する部分16aは、金属を含む導電膜で構成され、電極配線パターンを構成しない部分16bは、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のうちの少なくとも1種を含む非導電膜で構成されている。薄膜層16は、マスク22で覆われている部分が金属を含む導電膜で構成され、電極配線パターンを構成する部分16aとなっている。マスク22で覆われていない部分は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のうちの少なくとも1種を含む非導電膜で構成され、電極配線パターンを構成しない部分16bとなっている。薄膜層16は、1層構成となっており、薄膜層16の一方面上に不連続膜14が配置され、薄膜層16の他方面上に不連続膜18が配置されている。不連続膜14,18は、金属酸化物で構成されている。
【0040】
電極配線基板20は、電極配線基板10と比較して、厚さ方向で見て電極配線パターンを構成しない部分に対応する位置に、不連続膜14,18および電極配線パターンを構成しない部分16bを有している点が異なる。これ以外については、電極配線基板20は電極配線基板10と同様であるため、同様の説明については省略する。
【0041】
電極配線パターンを構成しない部分16bである非導電膜は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のうちの少なくとも1種を含む。非導電膜は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物の1種のみまたは2種以上のみで構成されていてもよいし、金属成分が含まれていてもよい。非導電膜は、導電膜を構成する金属と同じ金属が非導電化されたもので構成されるとよい。
【0042】
非導電膜は、非導電性の観点から、表面抵抗が1000Ω/□以上であるとよい。より好ましくは2000Ω/□以上である。表面抵抗は、例えばスタロレスタ-GX MCP-T700 低抵抗抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック製)により測定することができる。
【0043】
非導電膜の厚さは、導電膜の厚さと同様であればよい。非導電膜の厚さは、例えば電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)を用いて計測することができる。
【0044】
マスク22は、電極配線パターンを構成する部分16aの面上に配置されている。マスク22は、電極配線パターンを構成しない部分16bの面上には配置されておらず、電極配線パターンを構成しない部分16bはマスクで覆われていない。
【0045】
電極配線基板20は、電極配線基板10と同様、基板12の一方面上に、順に、不連続膜14、金属薄膜15、不連続膜18を積層し、厚さ方向で見て電極配線パターンを構成する部分に対応する位置にマスク22を形成し、マスク22を形成している面側からプラズマ処理を行うことにより、製造することができる。厚さ方向で見て電極配線パターンを構成しない部分に対応する位置の不連続膜14、非導電膜、不連続膜18は除去しないで残している。
【0046】
以上の構成の電極配線基板20によれば、基板12の面上に、電極配線パターンを構成する部分16aと電極配線パターンを構成しない部分16bとが同一平面内に含まれる薄膜層16を有し、電極配線パターンを構成する部分16aは、金属を含む導電膜で構成され、電極配線パターンを構成しない部分16bは、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のうちの少なくとも1種を含む非導電膜で構成され、薄膜層16の面上に金属酸化物で構成される不連続膜14,18を有することから、電極配線パターンの形成が簡便となる。
【0047】
図5には、本発明に係る電極配線基板の他の実施形態を示す。
【0048】
他の実施形態に係る電極配線基板30は、基板12と、金属酸化物層32と、不連続膜14と、薄膜層16と、不連続膜18と、マスク22と、をこの順で有する積層体である。薄膜層16には、電極配線パターンを構成する部分16a(電極配線パターン16a)が含まれている。電極配線パターンを構成する部分16aは、金属を含む導電膜で構成されている。
【0049】
電極配線基板30は、電極配線基板10と比較して、基板12と不連続膜14の間に金属酸化物層32を有する点が異なる。これ以外については、電極配線基板30は電極配線基板10と同様であるため、同様の説明については省略する。
【0050】
金属酸化物層32は、薄膜層16の導電膜に対する高屈折率薄膜として機能し、導電膜とともに積層されることで光透過性を高めるなどの機能を発揮することができる。また、低誘電率材料として配置されることで、電極配線基板30は次世代の5G通信に好適に用いることができる。
【0051】
金属酸化物層32を構成する金属酸化物としては、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などが挙げられる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複合酸化物であっても良い。これらのうちでは、可視光に対する屈折率が比較的大きいなどの観点から、チタンの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、亜鉛の酸化物、スズの酸化物などが好ましい。
【0052】
金属酸化物層32の厚さは、10~100nmの範囲内であることが好ましい。金属酸化物層32の厚さが10nm以上であると、薄膜層16の導電膜の金属のマイグレーションを抑える効果に優れる。この観点から、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。また、金属酸化物層32の厚さが100nm以下であると、光透過性に優れる。この観点から、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下である。
【0053】
金属酸化物層32は、気相法、液相法の何れでも形成することができる。気相法は、金属薄膜15と同様の方法を用いることができる。液相法としては、ゾル-ゲル法を好適に利用することができる。液相法は、気相法と比較して、真空引きしたり、大電力を使用したりする必要がない。そのため、その分、コスト的に有利であり、生産性にも優れているので好適である。
【0054】
ゾル-ゲル法は、金属酸化物の前駆体である有機金属化合物を含むコーティング液を薄膜状にコーティングし、必要に応じて乾燥させ、金属酸化物薄膜の前駆体薄膜を形成した後、この前駆体薄膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させることにより金属酸化物薄膜を形成する方法である。有機金属化合物としては、金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどを挙げることができる。前駆体薄膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段としては、紫外線、電子線、X線等の光エネルギーの照射、加熱などを挙げることができる。これらのうちでは、紫外線照射が特に好ましい。
【0055】
図6には、本発明に係る電極配線基板の他の実施形態を示す。
【0056】
他の実施形態に係る電極配線基板40は、基板12と、不連続膜14と、薄膜層16と、不連続膜18と、マスク22と、をこの順で有する積層体である。薄膜層16には、電極配線パターンを構成する部分16a(電極配線パターン16a)が含まれている。電極配線パターンを構成する部分16aは、金属を含む導電膜で構成されている。
【0057】
電極配線基板40は、マスク22および薄膜層16の面上に、粘着剤層34を介して保護フィルム36を有し、保護フィルム36の面上にさらにハードコート層38を有する。電極配線基板40は、電極配線基板10と比較して、粘着剤層34、保護フィルム36、ハードコート層38を有する点が異なる。これ以外については、電極配線基板40はフィルムアンテナ10と同様であるため、同様の説明については省略する。
【0058】
粘着剤層34は、保護フィルム36をマスク22および薄膜層16の面上に接着することができるものである。粘着剤層34は、粘着剤を含有する。粘着剤は、表面の粘着性を利用して圧力をかけて接着するものであり、感圧接着剤として、固化により剥離抵抗力を発揮する接着剤とは区別される。粘着剤としては、アクリル樹脂系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが挙げられる。なお、ここでは、粘着剤層34と示しているが、粘着剤層34に代えて接着剤を含有する接着層としてもよい。
【0059】
粘着剤層34の厚さとしては、特に限定されるものではない。例えば、1.0μm以上100μm以下とすることができる。
【0060】
保護フィルム36は、薄膜層16を覆って保護するものである。保護フィルム36は、光透過性を有するものであってもよいし、光透過性を有していないものであってもよい。保護フィルム36が光透過性材料より構成されると、視認性に優れ、意匠性が向上する。光透過性材料としては、光透過性を有し、その表面に薄膜を支障なく形成でき、柔軟性を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、光透過性高分子フィルムなどが挙げられる。保護フィルム36として用いられる光透過性高分子フィルムとしては、基板12において例示するものを挙げることができる。
【0061】
保護フィルム36の厚さとしては、特に限定されるものではない。例えば、12μm以上500μm以下とすることができる。
【0062】
ハードコート層38は、薄膜層16や保護フィルム36の面上を覆っており、これらの表面に傷が付くのを抑えることができる。ハードコート層38の厚さは、耐擦傷性に優れるなどの観点から、0.4μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上である。一方、断熱性に優れる(熱貫流率を低く抑える)などの観点から、2.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは1.6μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。ハードコート層38としては、硬化性樹脂を含有する層や、有機無機ハイブリッド材料を含有する層が好適なものとして挙げられる。
【0063】
硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂やアクリル樹脂などが好適なものとして挙げられる。シリコーン樹脂やアクリル樹脂は、熱硬化性であっても良いし、光硬化性であっても良いし、水硬化性であっても良い。アクリル樹脂としては、アクリル・ウレタン樹脂、シリコンアクリル樹脂、アクリル・メラミン樹脂などが好適なものとして挙げられる。
【0064】
有機無機ハイブリッド材料は、有機材料(有機成分の原料)と無機材料(無機成分の原料)により形成され、有機材料と無機材料とがナノレベルあるいは分子レベルで複合化している。有機無機ハイブリッド材料は、例えば、有機材料中に分散させた無機材料と有機材料とが重合反応などの反応を起こし、化学結合を介して無機成分が有機成分中に高分散した網目状の架橋構造を有するものである。ハードコート層38が有機無機ハイブリッド材料で構成されることにより、保護フィルム36とハードコート層38の層間密着性が良好となる。これは、ハードコート層38を形成する材料に無機成分を添加したことでハードコート層38の硬化収縮が抑えられるためと推察される。
【0065】
有機無機ハイブリッド材料を形成する有機成分の原料としては、硬化性樹脂などが挙げられる。硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされてもよい。また、無機成分の原料としては、金属化合物などが挙げられる。金属化合物としては、Si化合物、Ti化合物、Zr化合物などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされてもよい。金属化合物は、Si、Ti、Zrなどの無機成分を含有する化合物で、有機成分の原料と重合反応などの反応を起こすなどにより複合化できるものからなる。金属化合物としては、より具体的には、有機金属化合物などが挙げられる。有機金属化合物としては、シランカップリング剤、金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレート、シラザンなどが挙げられる。
【0066】
粘着剤層34は、マスク22および基板12の面上に粘着剤を塗工することにより形成することができる。保護フィルム36は、形成した粘着剤層34の面上に配置し、圧力を加えて粘着剤層34に接着することにより形成することができる。そして、ハードコート層38は、ハードコート層38を形成する材料を保護フィルム36の面上に塗工し、必要に応じて乾燥・硬化・架橋処理を行うことにより、形成することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0068】
例えば、上記各実施形態では、マスク22が含まれているが、本発明の電極配線基板は、マスク22が除去されていてもよい。
【0069】
また、図5,6に示す電極配線基板においては、図2に示す電極配線基板と同様に、非導電膜は除去されているが、図5,6に示す電極配線基板においても、図4に示す電極配線基板と同様に、非導電膜が除去されていなくてもよい。
【0070】
また、図4,5に示す電極配線基板においては、図1に示す電極配線基板と同様に、粘着剤層34、保護フィルム36、ハードコート層38は設けられていないが、図4,5に示す電極配線基板においても、図6に示す電極配線基板と同様に、粘着剤層34、保護フィルム36、ハードコート層38が設けられていてもよい。
【0071】
また、電極配線パターン16aの形状は特に限定されるものではなく、用途に応じ種々の電極配線パターンとすることができる。
【実施例0072】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0073】
(実施例1)
<電極配線基板の作製>
易接着層が片面に形成された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製「コスモシャイン(登録商標)A4300」)の易接着層とは反対の面に、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、Sn酸化物(豊島製作所製「SnOx(x<1)」)をターゲットとして、スパッタリングによりSn酸化物を含む第1の不連続膜を成膜した(厚さ2nm)。次いで、第1の不連続膜の面上に、スパッタリングによりAg-Cu合金を含む金属薄膜(厚さ10nm)を形成した。次いで、金属薄膜の面上に、Sn酸化物(豊島製作所製「SnOx(x<1)」)をターゲットとして、スパッタリングによりSn酸化物を含む第2の不連続膜を成膜した(厚さ2nm)。次いで、図1に示すような電極配線パターンとなるように、厚さ方向で見て電極配線パターンを構成する部分に対応する位置に、マスクの材料(アクリル樹脂、DIC製「UVTクリア-EX80112」)を塗工し、乾燥・UV硬化させることにより、マスクを形成した。次いで、マスクの上から酸素プラズマ処理を行い、金属薄膜のうちマスクで覆われていない部分を酸化した。以上により、図1に示すような構造の実施例1の電極配線基板を作製した。
【0074】
(実施例2)
易接着層が片面に形成された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製「コスモシャイン(登録商標)A4300」)の易接着層とは反対の面に、マイクログラビアコーターを用いて、下記のTiOx薄膜形成用コーティング液を塗工し、塗工膜を100℃で80秒間乾燥させた後、紫外線照射してゾル-ゲル硬化させることにより、TiOx薄膜(厚さ20nm)を形成した。次いで、形成したTiOx薄膜の面上に、実施例1と同様に、Sn酸化物を含む第1の不連続膜、Ag-Cu合金を含む金属薄膜、Sn酸化物を含む第2の不連続膜を成膜し、実施例1と同様に、酸素プラズマ処理を行った。以上により、実施例2の電極配線基板を作製した。
【0075】
<TiOx薄膜形成用コーティング液の調整>
テトラ-n-ブトキシチタン4量体(日本曹達製「B4」)とアセチルアセトンとをn-ブタノールとイソプロピルアルコールの混合溶媒に配合し、攪拌機を用いて10分間混合することにより、TiOx薄膜形成用コーティング液を調製した。テトラ-n-ブトキシチタン4量体/アセチルアセトン/n-ブタノール/イソプロピルアルコールの配合は、それぞれ6.75質量%/3.38質量%/59.87質量%/30.00質量%とした。
【0076】
(実施例3)
Sn酸化物を含む第1の不連続膜およびSn酸化物を含む第2の不連続膜の厚さを変更した以外は実施例1と同様にして、電極配線基板を作製した。
【0077】
(実施例4)
第1の不連続膜および第2の不連続膜の成膜時において、ターゲットを金属Tiに変更し、自然酸化によりTi酸化物とした以外は実施例1と同様にして、電極配線基板を作製した。
【0078】
(実施例5)
第2の不連続膜の成膜時において、ターゲットを金属Tiに変更し、自然酸化によりTi酸化物とし、第1の不連続膜の厚さを変更した以外は実施例3と同様にして、電極配線基板を作製した。
【0079】
(比較例1)
Sn酸化物をターゲットとするスパッタリングにおいて、膜厚を変更した以外は実施例1と同様にして、電極配線基板を作製した。
【0080】
上記酸素プラズマ処理の条件は、以下の通りである。
ガス種:酸素
圧力:13Pa
マイクロ波の周波数:2.45GHz
出力電力:500W
照射時間:10sec
【0081】
作製した各電極配線基板を用い、プラズマ処理を行った部分の絶縁性を調べた。また、光透過性、密着性、耐候性を評価した。
【0082】
(絶縁性)
プラズマ処理を行った部分が絶縁していることを、分割された電極間で導通がないことを一般的なテスタで確認した。使用した機器は日置電機デジタルマルチメーターDT4256である。
【0083】
(光透過性)
分光光度計(島津製作所製「SolidSpec3700」)にて波長毎の透過率を測定し、JIS A5759に準拠し、可視光透過率を算出した。
【0084】
(密着性)
カッターにて金属薄膜を1mm間隔で碁盤目(25マス)に切り、セロハンテープにて剥離試験を行った。
【0085】
(耐候性)
作製した電極配線基板の薄膜層の表面に、厚さ25μmのアクリル粘着シート(積水化学工業社製「5402」)を介して厚さ3mmの板ガラスを貼り付けて、試験片1を作製した。試験片1を用い、ガラス側からキセノンランプ(出力160W/m2)を1000時間照射した(測定波長300~390nm)。目視にて試験片の変色有無を確認した。
【0086】
(膜厚測定)
各薄膜層の膜厚は、電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子製「JEM2001F」)による試験片の断面観察から測定した。
【0087】
【表1】
【0088】
比較例1は、Sn酸化物をターゲットとするスパッタリングにより形成されたSn酸化物を含む膜の膜厚が厚すぎて、Sn酸化物を含む膜は、金属酸化物で構成される不連続膜とはなっていない。このため、マスクの上から酸素プラズマ処理を行っても、金属薄膜のうちマスクで覆われていない部分は酸化されず、プラズマ処理を行った部分は絶縁していないことを確認した。このため、比較例1では、基板上に電極配線パターンは形成されなかった。
【0089】
これに対し、実施例1~3は、Sn酸化物をターゲットとするスパッタリングにより形成されたSn酸化物を含む膜の膜厚が十分に薄いため、Sn酸化物を含む膜は、金属酸化物で構成される不連続膜となっている。このため、酸素プラズマ処理によって、金属薄膜のうちマスクで覆われていない部分は酸化され、プラズマ処理を行った部分は絶縁していることを確認した。このため、実施例1~3では、基板上に電極配線パターンが形成された。
【0090】
実施例4~5は、金属Tiをターゲットとするスパッタリングにより形成されたTi酸化物を含む膜の膜厚が十分に薄いため、Ti酸化物を含む膜は、金属酸化物で構成される不連続膜となっている。このため、酸素プラズマ処理によって、金属薄膜のうちマスクで覆われていない部分は酸化され、プラズマ処理を行った部分は絶縁していることを確認した。このため、実施例4~5では、基板上に電極配線パターンが形成された。
【0091】
そして、実施例1~5の電極配線基板は、光透過性、密着性および耐候性にも優れることが確認できた。
【0092】
次に、作製した電極配線基板について、電極配線パターンの寸法精度の評価を行った。図7は、電極配線パターンの寸法精度の評価方法を説明する模式図である。
【0093】
まず、実施例1と同じようにして、基板フィルム/SnOx層/AgCu層/SnOx層で構成される積層フィルム1を作製した。次いで、図7に示すように、積層フィルム1のSnOx層の面上に、10mm×65mmのマスク2を3本平行に形成した(間隔10mm)。以上により、測定サンプルを作製した。
【0094】
次に、マスク自体の直線の歪みを調べるために、測定サンプルの形成したマスク2の長手方向の辺の任意の位置における1.5mm長について、突端で直線を引き、その直線から窪まっている部分の最大距離を測定した。3本のマスク2の両辺それぞれで測定し、6点の平均を求めた。測定には、CCD(キーエンス製「VHX-1000」)を用いた。
【0095】
次に、別の測定サンプルを用い、実施例1と同じように、マスク2の上から酸素プラズマ処理を行った後、マスク2とAgCu層の酸化された部分を除去し、残っているAgCu層の長手方向の辺の任意の位置における1.5mm長について、突端で直線を引き、その直線から窪まっている部分の最大距離を測定した。マスクのあった3か所のAgCu層の両辺それぞれで測定し、6点の平均を求めた。測定には、CCD(キーエンス製「VHX-1000」)を用いた。
【0096】
また、参考資料として、別の測定サンプルを用い、マスク2の上から酸エッチング(ノンシアン銀めっき剥離剤を使用した。佐々木化学薬品製「エスバックAG-601」)を行った後、マスク2を除去し、残っているAgCu層の長手方向の辺の任意の位置における1.5mm長について、突端で直線を引き、その直線から窪まっている部分の最大距離を測定した。マスクのあった3か所のAgCu層の両辺それぞれで測定し、6点の平均を求めた。測定には、CCD(キーエンス製「VHX-1000」)を用いた。
【0097】
得られた結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
表2から、マスク自体の直線の歪みは、20μmくらいであることがわかる。これに対し、酸素プラズマ処理を行った後のAgCu層の長手方向の辺の直線の歪みは、マスク自体の直線の歪みよりも大きくなっておらず、マスクによる電極配線パターンの寸法精度が維持されることがわかる。なお、酸素プラズマ処理を行った後のAgCu層の長手方向の辺の直線の歪みは、マスク自体の直線の歪みよりも小さくなっている。これは、酸素プラズマ処理を行うと、表面の垂直方向から酸化されるため、マスクされている部分の下のAgCu層は酸化されずに保護されるが、マスク境界部分はイオン衝突により突出している部分が均される結果、マスク自体の直線よりも窪みが小さくなったためと推察される。
【0100】
一方、酸エッチングを行った後のAgCu層の長手方向の辺の直線の歪みは、マスク自体の直線の歪みよりも大きくなっている。酸エッチングの場合、エッチング液がマスクの下に染み込むため、マスクの下までエッチング液がAgCu層の金属と反応することで、マスク自体の直線よりも窪みが大きくなったためと推察される。そして、酸エッチングと比較して、酸素プラズマ処理のほうが、AgCu層の長手方向の辺の直線の歪みが小さく、マスクによる電極配線パターンの寸法精度が維持されやすいことがわかる。
【0101】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0102】
10,20,30,40 電極配線基板
12 基板
14 不連続膜
15 金属薄膜
16 薄膜層
16a 電極配線パターンを構成する部分
16b 電極配線パターンを構成しない部分
18 不連続膜
22 マスク
24 配線取出部
26 接点
32 金属酸化物層
34 粘着剤層
36 保護フィルム
38 ハードコート層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7