(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043343
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】スフェロイド形成用培地
(51)【国際特許分類】
C12N 5/02 20060101AFI20230322BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20230322BHJP
【FI】
C12N5/02
C12N5/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150904
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000104814
【氏名又は名称】クニミネ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(72)【発明者】
【氏名】窪田 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】辻川 和丈
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065BB02
4B065BD22
(57)【要約】
【課題】培養する細胞や使用する培養プレートの種類に制限されることなくスフェロイド形態の細胞を作製できる、汎用性の高いスフェロイド形成用培地、並びに、培養する細胞や使用する培養プレートの種類に制限されることなく、簡便にスフェロイドを形成できる、スフェロイドの形成方法を提供する。
【解決手段】膨潤性層状ケイ酸塩を含有するスフェロイド形成用培地、並びに、前記スフェロイド形成用培地と細胞懸濁液とを混合して混合物を得、得られた混合物に含まれる細胞を培養し、スフェロイドの形成を促進させる、スフェロイドの形成方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有する、スフェロイド形成用培地。
【請求項2】
前記膨潤性層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量が10meq/100g以上である、請求項1に記載のスフェロイド形成用培地。
【請求項3】
水分散液中の前記膨潤性層状ケイ酸塩のメディアン径が10nm以上1000nm以下である、請求項1又は2に記載のスフェロイド形成用培地。
【請求項4】
前記膨潤性層状ケイ酸塩1mg当たりのウシ血清アルブミンの吸着量が10μg以上500μg以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のスフェロイド形成用培地。
【請求項5】
前記膨潤性層状ケイ酸塩がスメクタイト族に属する鉱物由来である、請求項1~4のいずれか1項に記載のスフェロイド形成用培地。
【請求項6】
前記膨潤性層状ケイ酸塩が、モンモリロナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、サポナイト、バイデライト、ノントライト、ソーコナイト、及び膨潤性マイカからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載のスフェロイド形成用培地。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のスフェロイド形成用培地と細胞懸濁液とを混合して混合物を得、得られた混合物に含まれる細胞を培養し、スフェロイドを形成させる、スフェロイドの形成方法。
【請求項8】
前記細胞が、動物から採取された細胞、動物から採取された細胞を培養した細胞、動物から採取された細胞に各種処理を施した細胞、又は培養細胞株である、請求項7に記載のスフェロイドの形成方法。
【請求項9】
接着細胞用培養プレート、浮遊細胞用培養プレート、及び細胞低接着三次元培養用プレートからなる群より選ばれるいずれか1つのプレートで前記細胞を培養し、スフェロイドを形成させる、請求項7又は8に記載のスフェロイドの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スフェロイド形成用培地、及びスフェロイドの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトに代表される哺乳類の動物細胞が研究材料として多種多様な研究に用いられている。
古くから行われている動物細胞の平面培養(二次元細胞培養)では、細胞が二次元的に広がって増殖する。そのため、一定数の培養細胞を得るには、ある程度の培養面積が必要となる。さらには、培養した細胞は二次元方向に広がった単層細胞であるため、細胞自体の持つ機能が生体内での状態を必ずしも再現できないという課題が存在する。
【0003】
そのため、接着性動物細胞本来の凝集反応を利用して、細胞を三次元的に培養することが広く望まれている。三次元細胞培養によって得られるスフェロイド(凝集塊)は、二次元細胞培養により得られる細胞とは異なる機能を発揮して生体により近い細胞環境を実現し、かつ高い細胞活性を有する。そのためスフェロイドが、創薬における薬物のスクリーニングや毒性試験、動物実験の代替となる安全性評価モデルの構築などに有用であり、実用的な情報を得ることができる生体材料としても非常に重要である。
【0004】
一般的な三次元細胞培養方法において、三次元細胞培養方法に好適に用いられる培地などの開発が進められている。
例えば、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、D-グルクロン酸、L-イズロン酸、及びD-ガラクトースからなる群より選択される1種以上が重合した高分子を含有する培地が特許文献1に記載されている。特許文献2には、抗体、レクチン及び細胞接着分子のいずれかを含む外因性の細胞凝集剤を含む培地が記載されている。
【0005】
このように、特殊な培地を用いることで三次元細胞培養を行うことができる。しかし、三次元細胞培養に用いる培地は一般的に高価である。そのため、創薬における薬物のスクリーニングや、臨床検体の初代培養における薬効のスクリーニング、有用タンパク質の生産など、大量のスフェロイドが必要な場合は、費用負担が大きい。
さらに、培養する細胞や使用する培養プレートの種類によっては、スフェロイド形態の細胞が形成されない場合がある。さらに、スフェロイドが形成されても、所望の形状やサイズのスフェロイドが得られない場合や形成されるスフェロイドの数が少ない場合がある。
よって、培養する細胞や使用する培養プレートの種類に制限されることなくスフェロイド形態の細胞を作製できる、汎用性の高いスフェロイド形成用培地の開発が望まれている。
【0006】
スメクタイトなどの膨潤性層状ケイ酸塩は粘土鉱物の一種であり、水などの液体を吸収すると膨潤し、粘性を帯びる性質を有する。スメクタイトは二次元に広がるナノシートから構成される。またスメクタイトを水で膨潤させ分散させると、粘性とチクソトロピー(thixotropy)を有するコロイド分散液が得られる。スメクタイトは分散液中においては単位層まで分離した状態で存在している。分散液中のスメクタイトの結晶層自体は永久負電荷を有しており、永久負電荷を補う形でナトリウムイオンなどの陽イオンが結晶層に取り込まれる。このような特性を利用して、スメクタイトなどの膨潤性層状ケイ酸塩は、古くから産業的に広く利用されている。
例えば、フッ素原子を含有する層状ケイ酸塩化合物を含むタンパク質結晶形成制御剤が、特許文献3に記載されている。さらに、フッ素原子と水酸基とを有する水膨潤性層状ケイ酸塩を含み、フッ素原子は水酸基との同形置換によりケイ酸塩に共有結合している、タンパク質結晶化条件探索剤が特許文献4に記載されている。
しかし、膨潤性層状ケイ酸塩自体をスフェロイド形成用培地に用いることについて、実用的な報告例は未だされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-147944号公報
【特許文献2】特開2008-22743号公報
【特許文献3】特開2011-121789号公報
【特許文献4】国際公開第2012/133695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでに、スフェロイド形成用培地が市販されている。しかし、スフェロイドの作製において現状では、培養する細胞や使用する培養プレートの種類によっては、スフェロイドが形成されない場合があり、従来の培地では汎用性が低い。
したがって、従来技術では、多様な細胞種に対し汎用的にスフェロイド形成を行うことは困難であった。
【0009】
そこで本発明は、培養する細胞や使用する培養プレートの種類に制限されることなくスフェロイド形態の細胞を作製できる、汎用性の高いスフェロイド形成用培地の提供を課題とする。
また本発明は、培養する細胞や使用する培養プレートの種類に制限されることなく、簡便にスフェロイドを形成できる、スフェロイドの形成方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み、本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いることで、培養する細胞や使用する培養プレートの種類に制限されることなく、簡便にスフェロイドを形成できることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0011】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決された。
(1)膨潤性層状ケイ酸塩を含有する、スフェロイド形成用培地。
(2)前記膨潤性層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量が10meq/100g以上である、前記(1)項に記載のスフェロイド形成用培地。
(3)水分散液中の前記膨潤性層状ケイ酸塩のメディアン径が10nm以上1000nm以下である、前記(1)又は(2)項に記載のスフェロイド形成用培地。
(4)前記膨潤性層状ケイ酸塩1mg当たりのウシ血清アルブミンの吸着量が10μg以上500μg以下である、前記(1)~(3)のいずれか1項に記載のスフェロイド形成用培地。
(5)前記膨潤性層状ケイ酸塩がスメクタイト族に属する鉱物由来である、前記(1)~(4)のいずれか1項に記載のスフェロイド形成用培地。
(6)前記膨潤性層状ケイ酸塩が、モンモリロナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、サポナイト、バイデライト、ノントライト、ソーコナイト、及び膨潤性マイカからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記(1)~(5)のいずれか1項に記載のスフェロイド形成用培地。
【0012】
(7)前記(1)~(6)のいずれか1項に記載のスフェロイド形成用培地と細胞懸濁液とを混合して混合物を得、得られた混合物に含まれる細胞を培養し、スフェロイドを形成させる、スフェロイドの形成方法。
(8)前記細胞が、動物から採取された細胞、動物から採取された細胞を培養した細胞、動物から採取された細胞に各種処理を施した細胞、又は培養細胞株である、前記(7)項に記載のスフェロイドの形成方法。
(9)接着細胞用培養プレート、浮遊細胞用培養プレート、及び細胞低接着三次元培養用プレートからなる群より選ばれるいずれか1つのプレートで前記細胞を培養し、スフェロイドを形成させる、前記(7)又は(8)項に記載のスフェロイドの形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスフェロイド形成用培地は、培養する細胞や使用する培養プレートの種類に制限されることなく、スフェロイド形態の細胞の作製に使用することができ、汎用性が高い。
また本発明のスフェロイドの形成方法は、培養する細胞や使用する培養プレートの種類に制限されることなく、簡便にスフェロイドを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ヒト膠芽腫細胞U-251MGを3日間培養した後の浮遊細胞用培養プレートの顕微鏡写真である。
図1(A)はフッ素化ナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図1(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図1(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図1(E)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
【
図2】
図2(A)は
図1(A)の拡大顕微鏡写真であり、
図2(B)は
図1(B)の拡大顕微鏡写真であり、
図2(C)は
図1(C)の拡大顕微鏡写真であり、
図2(D)は
図1(D)の拡大顕微鏡写真であり、
図2(E)は
図1(E)の拡大顕微鏡写真である。
図2(A)~(E)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図3】
図3(A)は
図1(A)の拡大顕微鏡写真であり、
図3(B)は
図1(B)の拡大顕微鏡写真であり、
図3(C)は
図1(C)の拡大顕微鏡写真であり、
図3(D)は
図1(D)の拡大顕微鏡写真である。
図3(A)~(D)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図4】ヒト膠芽腫細胞U-251MGを5日間培養した後の浮遊細胞用培養プレートの顕微鏡写真である。
図4(A)はフッ素化ナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図4(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図4(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図4(A)~(D)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図5】ヒト膠芽腫細胞U-251MGを3日間培養した後の細胞低接着三次元培養用プレートの顕微鏡写真である。
図5(A)はフッ素化ナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図5(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図5(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図5(E)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
【
図6】
図6(A)は
図5(A)の拡大顕微鏡写真であり、
図6(B)は
図5(B)の拡大顕微鏡写真であり、
図6(C)は
図5(C)の拡大顕微鏡写真であり、
図6(D)は
図5(D)の拡大顕微鏡写真であり、
図6(E)は
図5(E)の拡大顕微鏡写真である。
図6(A)~(E)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図7】
図7(A)は
図5(A)の拡大顕微鏡写真であり、
図7(B)は
図5(B)の拡大顕微鏡写真であり、
図7(C)は
図5(C)の拡大顕微鏡写真であり、
図7(D)は
図5(D)の拡大顕微鏡写真であり、
図7(E)は
図5(E)の拡大顕微鏡写真である。
図7(A)~(E)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図8】ヒト膠芽腫細胞U-251MGを5日間培養した後の細胞低接着三次元培養用プレートの顕微鏡写真である。
図8(A)はフッ素化ナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図8(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図8(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図8(E)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図8(A)~(E)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図9】ヒト膠芽腫結腸腺癌細胞HT29を6日間培養した後の接着細胞用培養プレートの顕微鏡写真である。
図9(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図9(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図9(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図9(E)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図9(A)~(E)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図10】ヒト膠芽腫結腸腺癌細胞HT29を7日間培養した後の接着細胞用培養プレートの拡大顕微鏡写真である。
図10(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの拡大顕微鏡写真であり、
図10(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの拡大顕微鏡写真であり、
図10(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図10(A)~(D)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図11】試験例3で培養したヒト膠芽腫結腸腺癌細胞HT29の増殖性の経時変化を示すグラフである。
【
図12】ヒト膠芽腫結腸腺癌細胞HT29を6日間培養した後の浮遊細胞用培養プレートの顕微鏡写真である。
図12(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図12(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図12(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図12(E)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図12(A)~(E)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図13】ヒト膠芽腫結腸腺癌細胞HT29を7日間培養した後の浮遊細胞用培養プレートの拡大顕微鏡写真である。
図13(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの拡大顕微鏡写真であり、
図13(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの拡大顕微鏡写真であり、
図13(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図13(E)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図13(A)~(E)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図14】試験例4で培養したヒト膠芽腫結腸腺癌細胞HT29の増殖性の経時変化を示すグラフである。
【
図15】ヒト膠芽腫結腸腺癌細胞HT29を6日間培養した後の細胞低接着三次元培養用プレートの顕微鏡写真である。
図15(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図15(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図15(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図15(E)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図15(A)~(E)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図16】ヒト膠芽腫結腸腺癌細胞HT29を7日間培養した後の細胞低接着三次元培養用プレートの拡大顕微鏡写真である。
図16(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの拡大顕微鏡写真であり、
図16(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの拡大顕微鏡写真であり、
図16(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図16(E)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図16(A)~(E)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図17】試験例5で培養したヒト膠芽腫結腸腺癌細胞HT29の増殖性の経時変化を示すグラフである。
【
図18】ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞A549を6日間培養した後の接着細胞用培養プレートの顕微鏡写真である。
図18(A)はフッ素化ナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図18(B)及び(C)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図18(D)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図18(A)~(D)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図20】ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞A549を6日間培養した後の浮遊細胞用培養プレートの顕微鏡写真である。
図20(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図20(B)はフッ素化ナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図20(C)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図20(D)及び(E)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図20(F)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図20(A)~(F)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図22】ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞A549を6日間培養した後の細胞低接着三次元培養用プレートの顕微鏡写真である。
図22(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図22(B)はフッ素化ナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図22(C)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図22(D)及び(E)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図22(F)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図22(A)~(F)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図24】ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yを9日間培養した後の浮遊細胞用培養プレートの顕微鏡写真である。
図24(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図24(B)及び(C)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図24(D)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図24(A)~(D)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図25】ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yを6日間培養した後の浮遊細胞用培養プレートの顕微鏡写真である。
図25(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図25(B)及び(C)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図25(A)~(C)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図26】ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yを9日間培養した後の細胞低接着三次元培養用プレートの顕微鏡写真である。
図26(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図26(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図26(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図26(E)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図26(A)~(E)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図27】ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yを6日間培養した後の細胞低接着三次元培養用プレートの顕微鏡写真である。
図27(A)はナトリウム型ヘクトライトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図27(B)はナトリウム型スチブンサイトを含有する培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図27(C)及び(D)はそれぞれ市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図27(E)は膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図27(A)~(E)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【
図28】ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞A549を6日間培養した後の細胞低接着三次元培養用プレートの顕微鏡写真である。
図28(A)は市販のスフェロイド形成用培地とナトリウム型ヘクトライトとを混合して調製した培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図28(B)は市販のスフェロイド形成用培地とフッ素化ナトリウム型ヘクトライトとを混合して調製した培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図28(C)は市販のスフェロイド形成用培地とナトリウム型スチブンサイトとを混合して調製した培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図28(D)は市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
【
図29】ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞A549を6日間培養した後の細胞低接着三次元培養用プレートの顕微鏡写真である。
図29(A)は市販のスフェロイド形成用培地とナトリウム型ヘクトライトとを混合して調製した培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図29(B)は市販のスフェロイド形成用培地とフッ素化ナトリウム型ヘクトライトとを混合して調製した培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図29(C)は市販のスフェロイド形成用培地とナトリウム型スチブンサイトとを混合して調製した培地を添加したプレートの顕微鏡写真であり、
図29(D)は市販のスフェロイド形成用培地を添加したプレートの顕微鏡写真である。
図29(A)~(D)中のスケールバーのサイズは100μmである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のスフェロイド形成用培地(以下、単に「本発明の培地」ともいう)は、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する。後述の実施例で実証するように、膨潤性層状ケイ酸塩は、培養する細胞や使用する培養プレートの種類に制限されることなく、細胞の凝集ないし組織化を促進し、スフェロイドを形成させる。
以下に、本発明のスフェロイド形成用培地、及びスフェロイド形成方法について、好ましい実施形態に基づき以下に説明する。しかし、本発明はこれらに制限するものではない。
【0016】
本明細書における「三次元細胞培養」とは、人工的に作製された環境下で、細胞をその周囲の環境と三次元的に相互作用させながら培養する手法である。三次元細胞培養は二次元細胞培養とは異なり、in
vivoでの細胞と同様に、in
vitroで細胞をあらゆる方向に増殖させることが可能である。
そして、三次元細胞培養により、特定の細胞が有する接着性を利用して集まって細胞の微小な塊が「スフェロイド」である。
【0017】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有する本発明の培地を用いた三次元細胞培養によりスフェロイドが形成される理由(メカニズム)は明らかではない。しかし、膨潤性層状ケイ酸塩がナノスケールの平板粒子となって培地中に存在することで、スフェロイド形成において膨潤性層状ケイ酸塩が小さな足場になっていると推察される。さらに、膨潤性層状ケイ酸塩の層面が負電荷を帯びているため、培地中のタンパク質(血清成分)が膨潤性層状ケイ酸塩に吸着し、膨潤性層状ケイ酸塩を介して細胞表面へのタンパク質の供給が起きているとも考えられる。例えば、スフェロイドを形成する細胞の培養液に含まれる血清、あるいは成長因子などのタンパク質と膨潤性層状ケイ酸塩が互いに吸着し、その結果形成される、血清やタンパク質と膨潤性層状ケイ酸塩からなる複合体自体が細胞の表面に吸着し、足場として作用することでスフェロイドが形成されると考えられる。
【0018】
本発明の培地に含まれる「膨潤性層状ケイ酸塩」とは、水膨潤性を示し、かつ、二次元的な単位層が多数積層した層構造を有し、その層構造が少なくともケイ素原子と電気的に陰性な配位子とから構成される化合物を指す。層状ケイ酸塩は、四面体シート及び/若しくは八面体シートの単独層、又はこれらの混合シートを有してもよい。四面体シートは標準元素としてケイ素イオン(Si4+)を4つの酸素イオン(O2-)が囲んだ構造をとり、3つの頂点を隣の四面体と共有しその構造がヘキサゴナルネットワークをとり、シート状に連なっている。八面体シートはマグネシウムイオン(Mg2+)、またはアルミニウムイオン(Al3+)を6つの酸素イオン(O2-)、または水酸化物イオン(OH-)が囲んだ八面体が稜を共有して2次元的に広がったものである。四面体シートと八面体シートと組み合うときは四面体シートの頂点の酸素イオンが共有される。さらに四面体シートでは一部がアルミニウムイオン、八面体シートでは一部がアルミニウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン(Fe2+、Fe3+)、あるいはリチウムイオン(Li+)などに同型置換されることにより、負電荷が発生する。あるいは、四面体シート及び八面体シートの一部に空隙が存在することによっても、負電荷が発生する。これらの負電荷を中和する形で、層間に陽イオンが存在する。
膨潤性層状ケイ酸塩は、膨潤性、増粘性、チクソトロピー性、陽イオン交換性など、様々な特性を有している。さらに、膨潤性層状ケイ酸塩は無機物質であるため、微生物による分解や変質作用をほとんど受けず、人体にも優しい素材である。さらに、本発明で用いる層状ケイ酸塩は水膨潤性を有するため、細胞懸濁液中であっても自然沈降しにくい。従って、均一分散性に優れ、均一な分散状態を長時間安定的に保持できるスフェロイド形成用培地の提供が可能である。
【0019】
本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩の水分散液中での粒径は、水を分散媒とした粒度分布測定により決定でき、本発明の効果を損なわない範囲で任意に設定できる。水分散液中の膨潤性層状ケイ酸塩のメディアン径は、細胞懸濁液において効率よく膨潤性層状ケイ酸塩を均一に分散させる観点から、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。
膨潤性層状ケイ酸塩のメディアン径の測定においては、分散粒度がナノスケールであるため、光子相関法による測定が好ましく、拡散係数相当径として得られる粒度分布においてのメディアン径を用いて示すことができる。測定においては膨潤性層状ケイ酸塩を水にて分散させた後、0.1w/v%程度に希釈したものを用いて測定できる。測定装置としては市販されている光子相関法を用いた装置であればよい。例えば、堀場製作所製SZ-100シリーズが挙げられる。その他、マルバーン社製Zetasizer Nanoシリーズ、大塚電子社製DLS-6500シリーズなどが挙げられる。
【0020】
本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の陽イオン交換容量を有してよい。膨潤性層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量は、10meq/100g以上が好ましく、30meq/100g以上がより好ましい。好適な範囲の陽イオン交換容量は、タンパク質(血清成分)の吸着に好適な負電荷を膨潤性層状ケイ酸塩に付与する。本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩は、優れた膨潤性と分散安定性を実現する観点から、ナトリウムなどの1価の陽イオン型のケイ酸塩が好ましい。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量の測定方法は、Schollenberger法(粘土ハンドブック第三版、日本粘土学会編、2009年5月、p. 453-454)に準じた方法で測定することができる。より具体的には、日本ベントナイト工業会標準試験方法JBAS-106-77に記載の方法で測定することができる。例えば、モンモリロナイトの浸出陽イオン量は、モンモリロナイトの層間陽イオンをモンモリロナイト0.5gに対して100mLの1M酢酸アンモニウム水溶液を用いて4時間以上かけて浸出させ、得られた溶液中の各種陽イオンの濃度を、ICP発光分析や原子吸光分析等により測定し、算出することができる。
また、本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量の上限値に特に制限はないが、120meq/100g以下が実際的である。
【0021】
本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩は、吸着性を有することが好ましい。本明細書において「吸着性」とは、血清成分や成長因子などのタンパク質に対する吸着性を意味する。さらに、本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩、ないし膨潤性層状ケイ酸塩にタンパク質が吸着した複合粒子は、スフェロイド形成する個々の細胞表層へも吸着することで、細胞同士の凝集を促進し、スフェロイドが形成される。
膨潤性層状ケイ酸塩が有する吸着性については、常法により判断することができ、例えば、ウシ血清アルブミン(以下、単に「BSA」ともいう)の試薬を用いて、膨潤性層状ケイ酸塩の有する吸着能を測定することができる。例えば、BSAが溶解した溶解液に対し、コロイド粒子の分散液を所定量入れ、その後、遠心分離によって固液分離をし、その上清成分中のBSA量を定量する。膨潤性層状ケイ酸塩が吸着したBSAは遠心分離後の固形成分に移行するので、当初のBSA量から上清成分中のBSA量を差し引くことで、膨潤性層状ケイ酸塩が吸着したBSA量を算出することができる。このようにして、膨潤性層状ケイ酸塩の有するタンパク質吸着能を判断することができる。タンパク質吸着能を有する膨潤性層状ケイ酸塩がスフェロイドの形成に有効であり、本発明で好ましく用いることができる。
タンパク質の定量においてはBradford法、BCA法、Lowly法などを用いることができる。本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩1mg当たりのBSAの吸着量は、10μg以上が好ましく、15μg以上がより好ましく、20μg以上がより好ましく、30μg以上がより好ましく、40μg以上がより好ましく、100μg以上がより好ましく、200μg以上がより好ましく、300μg以上がさらに好ましい。膨潤性層状ケイ酸塩1mg当たりのBSAの吸着量の上限に特に制限はなく、500μg以下が実際的であり、490μg以下が好ましい。タンパク質の吸着によって、細胞に対し、効率的に成長因子を提供可能な足場として膨潤性層状ケイ酸塩が働くことが予想される。
【0022】
本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩は、スメクタイト族に属する鉱物由来であることが好ましい。スメクタイト族に属する鉱物は、2:1型の層構造を有している。スメクタイトの一次粒子は厚さ1nmであり、広がりが20nm~2μmの板状結晶である。前述のように、水分散液中では、スメクタイトの結晶層自体が有する永久負電荷を補う形で、ナトリウムイオンなどの陽イオンが結晶層に取り込まれる(「粘土ハンドブック」、第三版、日本粘土学会編、2009年5月、p.65参照)。
本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩の具体例として、モンモリロナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、サポナイト、バイデライト、ノントライト、ソーコナイト及び膨潤性マイカが挙げられる。これらのうち、ヘクトライト、及びスチブンサイトが好ましい。
【0023】
本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩の粘度は、本発明の効果を損なわない範囲で任意に設定できる。例えば、B型粘度計を用いて60回転/分の条件で測定した25℃における1w/v%水分散液の粘度が100mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましい。このような範囲に粘度を設定することで、細胞培養のための濃度調整における分散液の希釈の際に、正確な分散液の計量を容易にすることができる。
【0024】
本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩としては、天然物であってもよいし、常法に従い合成することもできる。
膨潤性層状ケイ酸塩として天然物を用いる場合、天然物は夾雑物や不純物を含んでよいが、スフェロイド形成の観点から、夾雑物や不純物は除去されていることが好ましい。
膨潤性層状ケイ酸塩の合成方法としては、例えば、水熱合成法、溶融合成法、高圧合成法、固体反応法、火炎溶融法及び変質法が挙げられる。膨潤性層状ケイ酸塩の合成方法は、特開2008-13401号公報に記載の方法を参照できる。
また本発明では、市販の膨潤性層状ケイ酸塩を用いることもできる。市販品としては、例えば、クニピア-F(メディアン径:347.4nm、BSA吸着量:222μg/mg、陽イオン交換容量:108meq/100g、25℃における1w/v%水分散液の粘度:4mPa・s)、スメクトン-SA(メディアン径:85.7nm、BSA吸着量:437μg/mg、陽イオン交換容量:70meq/100g、25℃における1w/v%水分散液の粘度:5mPa・s)、スメクトン-SWN(メディアン径:64.4nm、BSA吸着量:485μg/mg、陽イオン交換容量:49meq/100g、25℃における1w/v%水分散液の粘度:6mPa・s)、スメクトン-SWF(メディアン径:69.8nm、BSA吸着量:388μg/mg、陽イオン交換容量:73meq/100g、25℃における1w/v%水分散液の粘度:16mPa・s)、スメクトン-ST(メディアン径:42.4nm、BSA吸着量:474μg/mg、陽イオン交換容量:30meq/100g、25℃における1w/v%水分散液の粘度:2mPa・s)(商品名、クニミネ工業社製)、ソマシフME、ソマシフMEB-3(いずれも商品名、片倉コープアグリ社製)、PDM-5B、PDM-800(いずれも商品名、トピー工業社製)などが挙げられる。
【0025】
さらに、本発明で用いることができる市販の膨潤性層状ケイ酸塩は、分散性の向上を目的として、粉砕することで粒径を調整してもよい。例えば乾式粉砕などのジェットミル、湿式粉砕などのビーズミル、加圧湿式粉砕装置などを適宜、用いて、市販の膨潤性層状ケイ酸塩の粒径をさらに小さくすることができる。
【0026】
本発明の培地の基礎培地に特に制限はなく、アミノ酸、ビタミン、無機塩、及びグルコースなどの炭素源を含む通常用いられる基礎培地より、培養する細胞などに応じて適宜選択することができる。例えば、D-MEM、E-MEM、MEMα、RPMI、及びHam’s F-12からなる群より選ばれる少なくとも1種の基礎培地が挙げられる。
本発明の培地には、膨潤性層状ケイ酸塩に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、スフェロイドの形成に必要な血清成分やリン酸化酵素などの阻害剤など、種々の添加剤が含まれていてもよい。また、本発明の培地には、膨潤性層状ケイ酸塩や種々の添加剤が予め含まれていてもよい。あるいは、細胞培養の直前に膨潤性層状ケイ酸塩や種々の添加剤と基礎培地とを混合して本発明の培地を調製してもよい。
【0027】
本発明の培地中の膨潤性層状ケイ酸塩の固形分濃度は0.001w/v%以上とすることが実際的であり、0.003w/v%以上が好ましく、0.005w/v%以上がより好ましく、0.01w/v%以上がさらに好ましい。固形分濃度の上限値は1.000w/v%未満とすることが実際的であり、0.600w/v%以下が好ましく、0.500w/v%以下がより好ましく、0.250w/v%以下がより好ましく、0.125w/v%以下がさらに好ましい。膨潤性層状ケイ酸塩の固形分濃度が低すぎると、スフェロイドを形成するには、膨潤性層状ケイ酸塩の量が不十分である。また、所定濃度の混合液にする際に培地中の成分が希釈されすぎてしまう。一方、膨潤性層状ケイ酸塩の固形分濃度が高すぎると、膨潤性層状ケイ酸塩の凝集物が多くなってしまうため、三次元細胞培養の使用には適さない。
本発明で用いる膨潤性層状ケイ酸塩は、1種類のみであってもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明のスフェロイド形成方法においては、本発明の培地と細胞懸濁液とを混合して混合物を得、得られた混合物に含まれる細胞を培養する。
スフェロイドを形成するためには、混合物中に膨潤性層状ケイ酸塩を均一に存在させることが必要であり、混合物中の膨潤性層状ケイ酸塩の濃度を適宜調整するすることが好ましい。
混合物を調製するための分散媒としては、スフェロイドを形成する細胞に対する毒性がなく、細胞の増殖性や機能を損なわないものであれば特に限定されない。具体例としては、水、バッファー、細胞の培養培地が挙げられる。バッファーとしては、例えば、リン酸生理食塩水(PBS)、HEPESバッファー、Hanksバッファーが挙げられる。
【0029】
細胞懸濁液を調製するための溶媒としては、スフェロイドを形成する細胞に対する毒性がなく、細胞の増殖性や機能を損なわないものであれば特に限定されない。具体例としては、水、バッファー、細胞の培養培地が挙げられる。バッファーとしては、例えば、リン酸生理食塩水(PBS)、HEPESバッファー、Hanksバッファーが挙げられる。培養培地としては、D-MEM、E-MEM、MEMα、RPMI、Ham’s F-12が挙げられる。本発明で用いる細胞懸濁液には、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに種々の添加剤が含まれていてもよい。例えば、フェノールレッド指示薬、HEPESに代表される緩衝剤、EDTA、L-グルタミン、ペニシリンなどの抗生物質、ファンギノールなどの抗真菌剤が挙げられる。
【0030】
本発明の培地と細胞懸濁液との混合物には、スフェロイドの形成に一般的に用いられる血清成分が含まれる。本発明で用いることができる血清成分としては、ウシ胎児血清(以下単に「FCS」ともいう)、コウシ血清、ウマ血清、ブタ血清が挙げられる。血清中にはタンパク質を中心とした増殖因子を含んでおり、いわゆる無血清培地においてはサイトカインなどの成長因子を用いてもよい。また、本発明の培地と細胞懸濁液との混合物に、ヒト血小板溶解物(hPL)やリン酸化酵素などの阻害剤などが含まれていてもよい。
細胞懸濁液と本発明の培地とを混合することにより、膨潤性層状ケイ酸塩に吸着した血清成分が、細胞の表面に供給される。
【0031】
混合物中の膨潤性層状ケイ酸塩の量は、スフェロイドを形成するために充分な量であればよく、混合物中の細胞の種類、構成細胞数、培養環境などに応じて任意に設定することができる。例えば、混合物中の膨潤性層状ケイ酸塩の固形分濃度は0.0003w/v%以上が好ましく、0.0005w/v%以上がより好ましく、0.0006w/v%以上がより好ましく、0.0010w/v%以上がより好ましく、0.0027w/v%以上がより好ましい。固形分濃度の上限値は0.333w/v%未満が好ましく、0.1667w/v%以下が好ましく、0.0833w/v%以下がより好ましく、0.0417w/v%以下がさらに好ましい。膨潤性層状ケイ酸塩の固形分濃度が低すぎると、スフェロイドを形成するには、膨潤性層状ケイ酸塩の量が不十分である。一方、膨潤性層状ケイ酸塩の固形分濃度が高すぎると、膨潤性層状ケイ酸塩が混合物中でゲルを形成してしまい、スフェロイドの形成が阻害される。
【0032】
本発明において、混合物に含まれる膨潤性層状ケイ酸塩の固形分濃度は、常法に従い決定することができる。例えば、膨潤性層状ケイ酸塩を含む混合物を凍結乾燥などで乾燥させ、化学組成分析、メチレンブルー吸着量、陽イオン交換容量を測定することで、膨潤性層状ケイ酸塩の固形分濃度を決定することができる。
【0033】
本発明において用いられる細胞試料に含まれる細胞は、スフェロイドを形成できる細胞であればよく、接着性細胞が好ましい。また、細胞懸濁液に含まれる細胞は、1種類のみでもよいし、2種類以上の細胞を含んでいてもよい。
混合物中における細胞数に特に制限はなく、細胞種や培養条件、スフェロイドの使用目的などを考慮して適宜設定することができる。例えば、1cells/μL以上10000cells/μL以下が好ましく、10cells/μL以上1000cells/μL以下がより好ましい。
【0034】
スフェロイドの形成に用いる細胞に特に制限はなく、動物から採取された細胞、動物から採取された細胞を培養した細胞、動物から採取された細胞に各種処理を施した細胞、培養細胞株など、いずれの細胞であってもよい。細胞の由来する動物の種類は特に限定されず、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、マウス、ラット等の哺乳類動物細胞を用いることが好ましい。
使用する細胞が動物から採取された細胞の場合、本発明で用いることができる細胞としては、上皮組織細胞、筋組織細胞、結合組織細胞、神経組織細胞のいずれであってもよい。採取部位は特に限定されず、骨、筋肉、内臓、神経、脳、骨、皮膚、血液などに由来する体細胞、生殖細胞、胚性幹細胞(ES細胞)など、いずれの細胞であってもよい。また、各種処理を施した細胞としては、誘導多能性幹細胞細胞(iPS細胞)や、分化誘導後の細胞が挙げられる。培養細胞株としては、ATCC(American Type Culture Collection)やECACC(Europian Collection of Cell Cultures)などから入手してもよいし、臨床組織から採取された組織細胞の初代培養細胞を用いることができる。
本発明で用いることができる細胞は、いずれの細胞周期にある細胞であってもよく、未分化の細胞であってもよく、分化後の細胞であってもよい。また、正常な細胞であってもよく、癌組織等の病理組織から採取された細胞であってもよい。
【0035】
細胞懸濁液と膨潤性層状ケイ酸塩とを混合して得た混合物に含まれる細胞は、常法に従い、スフェロイド形成培養用容器内で培養する。
本発明で用いることができる培養用容器は、接着細胞用培養プレート、浮遊細胞用培養プレート、細胞低接着三次元培養用プレートなど、一般的なスフェロイド培養法で細胞培養に用いられる容器の形態で特に制限はなく用いることができ、材質、形状、大きさに関しては特に限定されない。スフェロイド形成培養用容器の素材としては、ガラス、ステンレス、プラスチックなどが挙げられるが、これらに限定されない。スフェロイド形成培養用容器としては、ディッシュ、チューブ、フラスコ、ボトル、プレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
足場を実現するための処理や操作をスフェロイド形成培養用容器で行ってもよい。しかし前述のように、膨潤性層状ケイ酸塩自体が混合物中で足場材としての機能も発揮するため、コストを抑える観点から、一般的に用いられる足場材を用いずに培養を行うことが好ましい。
【0036】
スフェロイド形成培養用容器内での培養条件は、用いる細胞種に適した環境であればよく、例えば使用する細胞種の培養において推奨されている市販の培養培地を用いて、使用する細胞種の培養において推奨されている温度条件等にすることができる。また、培養時間についても、用いられる細胞種、細胞数、目的とするスフェロイドの大きさによって任意に設定することができる。
例えば、膨潤性層状ケイ酸塩と細胞懸濁液との混合物を、細胞培養に適した環境下、例えば、5%CO2雰囲気中、37℃環境下で任意の時間保持する。これにより、迅速にスフェロイド形成を達成しうる。
【実施例0037】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、下記の実施例において、各種膨潤性層状ケイ酸塩のメディアン径は、膨潤性層状ケイ酸塩の0.1w/v%水分散液を用い、ナノ粒子解析装置(nano Partica SZ-100V2、堀場製作所製)を用いてメディアン径を測定した。
また、膨潤性層状ケイ酸塩に対するBSAの吸着量は、1mg/mLのBSA溶液1mLに対し、1w/v%の膨潤性層状ケイ酸塩の分散液、又はブランクとして蒸留水をそれぞれ0.2mL添加し、ボルテックスにて撹拌後、ローテーター(MTR-103、アズワン社製)にて1時間反応させた後、遠心分離機を用いて、粒子を沈降させて上清を採取し、Bradford法にて定量し、ブランクと比較することで、BSA吸着量を定量した。なお、1mg/mLのBSA溶液は、BSA(富士フィルム和光純薬社製)粉末を蒸留水にて溶解することで調製した。また、遠心分離は高速遠心機(CT15E、日立工機ホールディングス社製)にて15000Gにて15分間実施した。上清中のBSAの定量はTaKaRa Bradford Protein Assay Kit(タカラバイオ社製)を用い、分光光度計(ASV11D-H、アズワン社製)にて595nmの吸光度を測定することで、実施した。吸着量はブランクのBSA量から膨潤性層状ケイ酸塩分散液反応上清のBSA量を減じた値を膨潤性層状ケイ酸塩へのBSA吸着量とした。
【0038】
[調製例1]
フッ素化ナトリウム型ヘクトライト(商品名:スメクトン-SWF、クニミネ工業社製、以下単に「SWF」ともいう)100gを80質量%イソプロピルアルコール水溶液(水/イソプロピルアルコール=20/80(質量比))2kgに投入した。その後、プロペラ撹拌機(AS ONE社製)を用いて100rpmにて20分間、25℃で混合物を撹拌した。得られた懸濁液をヌッチェにて吸引ろ過し、固液分離させて脱水ケーキを得た。得られたケーキに対し、80質量%イソプロピルアルコール水溶液(水/イソプロピルアルコール=20/80(質量比))を2kg通液、ろ過することにより洗浄し、同様の通液、ろ過による洗浄を2回繰返した。洗浄後の脱水ケーキを回収し、105℃の乾燥機にて乾燥させ、乾燥後の粉末を回収した。
得られた粉末の陽イオン交換容量を測定したところ、73.3meq/100gであった。その後、当該粉末と蒸留水とを、自公転ミキサー(シンキー社製)を用いて混合し、ヘクトライトの固形分濃度が1w/v%の分散液1を得た。また、分散液中のフッ素化ナトリウム型ヘクトライトのメディアン径は42.1nmであった。さらに、フッ素化ナトリウム型ヘクトライト1mgに対するBSA吸着量は388μg/mgであった。
【0039】
[調製例2]
フッ素化ナトリウム型ヘクトライト粉末に代えてナトリウム型ヘクトライト粉末(商品名:スメクトン-SWN、クニミネ工業社製、以下単に「SWN」ともいう)を用いたこと以外は調製例1と同様にして、ヘクトライトの固形分濃度が1w/v%の分散液2を得た。
得られた粉末の陽イオン交換容量は53.1meq/100gであった。また、分散液中のナトリウム型ヘクトライトのメディアン径は71.0nmであった。さらに、ナトリウム型ヘクトライト1mgに対するBSA吸着量は485μg/mgであった。
【0040】
[調製例3]
フッ素化ナトリウム型ヘクトライト粉末に代えてナトリウム型スチブンサイト粉末(商品名:スメクトン-ST、クニミネ工業社製、以下単に「ST」ともいう)150gを50質量%イソプロピルアルコール水溶液(水/イソプロピルアルコール=50/50(質量比))4.5kgに投入した。その後、プロペラ撹拌機(AS ONE社製)を用いて100rpmにて20分間、25℃で混合物を撹拌した。得られた懸濁液をヌッチェにて吸引ろ過し、固液分離させて脱水ケーキを得た。得られたケーキに対し、50質量%イソプロピルアルコール水溶液(水/イソプロピルアルコール=50/50(質量比))を4.5kg通液、ろ過することにより洗浄し、同様の通液、ろ過による洗浄を2回繰返した。洗浄後の脱水ケーキを回収し、105℃の乾燥機にて乾燥させ、乾燥後の粉末を回収した。
得られた粉末の陽イオン交換容量は34.1meq/100gであった。また、分散液中のナトリウム型スチブンサイトのメディアン径は42.4nmであった。さらに、ナトリウム型スチブンサイト1mgに対するBSA吸着量は474μg/mgであった。
【0041】
(試験例1)ヒト膠芽腫細胞の細胞培養(1)
細胞培養用培地であるE-MEM(富士フイルム和光純薬社製、以下単に「EMEM」ともいう)100質量部に対し、FCS(Gibco社製)10質量部を添加し、基礎培地(以下、単に「EMEM-10%FCS」ともいう)を調製した。調製したEMEM-10%FCSに、膨潤性層状ケイ酸塩の終濃度が0.01w/v%となるように、調製例1及び調製例3で得られた分散液をそれぞれ添加し、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地(EMEM-10%FCS+SWF及びEMEM-10%FCS+ST)を調製した。
【0042】
浮遊細胞用培養プレート(商品名:Non-treated 96 well microplate、Iwaki製、以下単に「Iwaki」ともいう)に前記膨潤性層状ケイ酸塩含有培地を50μL/wellで添加した。そこへ、ヒト膠芽腫(アストロサイトーマ)細胞U-251MG株(以下単に、「U251MG」ともいう。ATCCより入手)2,000cells/50μL/wellを播種した。細胞播種後の膨潤性層状ケイ酸塩の濃度は0.005w/v%であった。細胞播種後のプレートは、37℃、5%CO
2雰囲気下でインキュベーターにて培養した。
また、比較対象として、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地に代えて、それぞれ膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない、市販のスフェロイド用培地(Cancer Stem Cell Media Premium(商品名、ProMab社製、以下単に「CC-Premium」ともいう)、及び3D Tumorsphere Medium XF(商品名、タカラバイオ社製、以下単に「3D-TMXF」ともいう))、並びにEMEM-10%FCSを用いた以外は同様にヒト膠芽腫細胞の細胞培養を行った。
培養開始から3日目及び5日目のプレートを顕微鏡(商品名:Biozero、キーエンス社製)にて観察し、スフェロイドの形成の有無を確認した。その結果を
図1~
図4に示す。
【0043】
さらに、下記の手順により、ATPアッセイを行った。
細胞を培養したプレートに、ATP測定試薬(商品名:CellTiter-Glo 2.0 Cell Viability Assay、プロメガ社製)を1ウェルあたり100μL加え、ピペッティングした後、96ウェルホワイトプレート(Thermo Fisher Scientific社製)のウェルに全量を移した。プレートシェーカー(Scientific Industries社製)で2分間、ホワイトプレートを攪拌した後、室温で5分放置し、マルチラベルプレートリーダー(商品名:EnVisionXcite、PerkinElmer社製)を用いて発光強度を測定した。
その結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないEMEM-10%FCS培地を用いて細胞培養を行った場合、顕微鏡観察で確認できた細胞は、形態が不定形の二次元細胞であった(
図2(E)参照)。これに対して、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いて細胞培養を行った場合、プレート全体に細胞が形成されており(
図1(A)及び(B)並びに
図2(A)及び(B)参照)、形成された細胞がスフェロイド形態であることが確認できた(
図3(A)及び(B)参照)。さらに、形成された細胞(スフェロイド)の増殖性が高いことも確認でき(表1参照)、培養時間の経過に伴い、スフェロイドのサイズも大きくなっていることが確認できる(
図4(A)及び(B)参照)。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販のCC-Premium培地を用いた場合、スフェロイドは形成されるが、細胞サイズが小さかった(
図3(C)参照)。膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販の3D-TMXF培地を用いた場合、スフェロイドの形成は確認できるが(
図3(D)参照)、細胞数も少なく、不均一に分布していた(
図1(D)、
図2(D)及び
図4(D)参照)。さらに、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販のスフェロイド用培地を用いた場合、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いた場合と比較して、細胞の増殖性も低かった(表1参照)。
【0046】
(試験例2)ヒト膠芽腫細胞の細胞培養(2)
試験例1で用いた浮遊細胞用培養プレートを細胞低接着三次元培養用プレート(商品名:Nunclon Sphera、Thermo Fisher Scientific社製)に代えた以外は試験例1と同様にしてヒト膠芽腫細胞の細胞培養を行った。その結果を
図5~
図8、並びに表2に示す。
【0047】
【0048】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないEMEM-10%FCS培地を用いて細胞培養を行った場合、スフェロイドは形成されるが(
図7(E)参照)、細胞数も少なく(
図5(E)及び
図8(E)参照)、細胞増殖性も低かった(表2参照)。これに対して、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いて細胞培養を行った場合、プレート全体に細胞が形成されており(
図5(A)及び(B)並びに
図6(A)及び(B)参照)、形成された細胞がスフェロイド形態であることが確認できた(
図7(A)及び(B)参照)。さらに、形成された細胞(スフェロイド)の増殖性が高いことも確認でき(表2参照)、培養時間の経過に伴い、スフェロイドのサイズも大きくなっていることが確認できる(
図8(A)及び(B)参照)。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販のスフェロイド用培地を用いた場合、スフェロイドは形成されるが(
図7(C)及び(D)参照)、形成される細胞の数は少なく(
図5(C)及び(D)、
図6(C)及び(D)並びに
図8(C)及び(D)参照)、細胞の増殖性も低かった(表2参照)。
【0049】
(試験例3)ヒト膠芽腫結腸腺癌細胞の細胞培養(1)
細胞培養用培地であるRPMI-1640(富士フイルム和光純薬社製、以下単に「RPMI」ともいう)100質量部に対し、FCS(Gibco社製)10質量部を添加し、基礎培地(以下、単に「RPMI-10%FCS」ともいう)を調製した。調製したRPMI-10%FCSに、膨潤性層状ケイ酸塩の終濃度が0.01w/v%となるように、調製例2及び調製例3で得られた分散液をそれぞれ添加し、得られた混合液を孔径5μmのフィルター(商品名:Acrodisc 32mm Syringe Filter with 5μm Supor Membrane Non-Pyrogenic、Pall Corporation社製)でろ過し、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地(RPMI-10%FCS+SWN及びRPMI-10%FCS+ST)を調製した。
【0050】
接着細胞用培養プレート(商品名:Tissue culture plate VTC-P96、Violamo製、以下単に「Violamo」ともいう)に前記膨潤性層状ケイ酸塩含有培地を50μL/wellで添加した。そこへ、ヒト膠芽腫結腸腺癌細胞HT29株(以下単に、「HT29」ともいう。ATCCより入手)1,000cells/50μL/wellを播種した。細胞播種後の膨潤性層状ケイ酸塩の濃度は0.005w/v%であった。細胞播種後のプレートは、37℃、5%CO2雰囲気下でインキュベーターにて培養した。
また、比較対象として、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地に代えて、それぞれ膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない、CC-Premium、3D-TMXF及びRPMI-10%FCSを用いた以外は同様にヒト膠芽腫結腸腺癌細胞の細胞培養を行った。
【0051】
培養開始から6日目及び7日目のプレートを顕微鏡(商品名:Biozero、キーエンス社製)にて観察し、スフェロイドの形成の有無を確認した。その結果を
図9及び
図10に示す。さらに、培養開始から3日目及び6日目の時点でのATPアッセイを試験例1と同様の方法で行い、細胞の増殖性を評価した。その結果を
図11に示す。
【0052】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないRPMI-10%FCS培地を用いて細胞培養を行った場合、顕微鏡観察で確認できた細胞は、形態が不定形の二次元細胞であった(
図9(E)参照)。これに対して、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いて細胞培養を行った場合、プレート全体に細胞が形成されており(
図9(A)及び(B)参照)、形成された細胞がスフェロイド形態であることが確認できた(
図10(A)及び(B)参照)。さらに、形成された細胞(スフェロイド)の増殖性が高く、培養時間の経過に伴い細胞の増殖性も上昇していることが確認できる(
図11参照)。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販の3D-TMXF培地を用いた場合スフェロイドの形成は確認できるが(
図10(D)参照)、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないCC-Premium培地を用いた場合、スフェロイドは形成されるが、細胞サイズが小さかった(
図10(C)参照)。さらに、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販のスフェロイド用培地を用いた場合、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いた場合と比較して、細胞の増殖性が低かった(
図11参照)。
【0053】
(試験例4)ヒト膠芽腫結腸腺癌細胞の細胞培養(2)
試験例3で用いた接着細胞用培養プレートを浮遊細胞用培養プレートIwakiに代えた以外は試験例3と同様にしてヒト膠芽腫結腸腺癌細胞の細胞培養を行った。その結果を
図12~
図14に示す。
【0054】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないRPMI-10%FCS培地を用いて細胞培養を行った場合、スフェロイドは形成されるが(
図13(E)参照)、細胞数も少なく(
図12(E)参照)、細胞増殖性も低かった(
図14参照)。これに対して、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いて細胞培養を行った場合、プレート全体に細胞が形成されており(
図12(A)及び(B)参照)、形成された細胞がスフェロイド形態であることが確認できた(
図13(A)及び(B)参照)。さらに、形成された細胞(スフェロイド)の増殖性が高く、培養時間の経過に伴い細胞の増殖性も上昇していることが確認できる(
図14参照)。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販のスフェロイド用培地を用いた場合、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いた場合と比較して、形成される細胞の数は少なく(
図12(C)及び(D)参照)、細胞の増殖性も低かった(
図14参照)。さらに、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないCC-Premium培地を用いた場合、形成された細胞のサイズが小さかった(
図13(C)参照)。膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販の3D-TMXF培地を用いた場合、細胞が融合した状態でほぼ一箇所に集まったいびつな形状のスフェロイドが観察された(
図13(D)参照)。
【0055】
(試験例5)ヒト膠芽腫結腸腺癌細胞の細胞培養(3)
試験例3で用いた接着細胞用培養プレートを細胞低接着三次元培養用プレートNunclon Spheraに代えた以外は試験例3と同様にしてヒト膠芽腫結腸腺癌細胞の細胞培養を行った。その結果を
図15~
図17に示す。
【0056】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないRPMI-10%FCS培地を用いて細胞培養を行った場合、スフェロイドは形成されるが(
図16(E)参照)、細胞数が少なく、不均一に分布していた(
図15(E)参照)。さらに、細胞増殖性も低かった(
図17参照)。これに対して、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いて細胞培養を行った場合、プレート全体に細胞が形成されており(
図15(A)及び(B)参照)、形成された細胞がスフェロイド形態であることが確認できた(
図16(A)及び(B)参照)。さらに、形成された細胞(スフェロイド)の増殖性が高く、培養時間の経過に伴い細胞の増殖性も上昇していることが確認できる(
図17参照)。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販のCC-Premium培地を用いた場合、スフェロイドの形成は確認できるが、細胞の形状がいびつであり、かつ一部が接着していた(
図16(D)参照)。また、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販の3D-TMXF培地を用いた場合もスフェロイドの形成は確認できるが(
図16(D)参照)、不均一に分布していた(
図15(D)参照)。さらに、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販のスフェロイド用培地を用いた場合、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いた場合と比較して、形成される細胞の数は少なく(
図15(C)及び(D)並びに参照)、細胞の増殖性も低かった(
図17参照)。
【0057】
(試験例6)ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞の細胞培養(1)
細胞培養用培地であるD-MEM(富士フイルム和光純薬社製、以下単に「DMEM」ともいう)100質量部に対し、FCS(Gibco社製)10質量部を添加し、基礎培地(以下、単に「DMEM-10%FCS」ともいう)を調製した。調製したDMEM-10%FCSに、膨潤性層状ケイ酸塩の終濃度が0.01w/v%となるように、調製例1で得られた分散液を添加し、得られた混合液を孔径5μmのフィルター(商品名:Acrodisc 32mm Syringe Filter with 5μm Supor Membrane Non-Pyrogenic、Pall Corporation社製)でろ過し、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地(DMEM-10%FCS+SWF)を調製した。
【0058】
接着細胞用培養プレートViolamoに前記膨潤性層状ケイ酸塩含有培地を50μL/wellで添加した。そこへ、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞A549株(以下単に、「A549」ともいう。ATCCより入手)1,000cells/50μL/wellを播種した。細胞播種後の膨潤性層状ケイ酸塩の濃度は0.005w/v%であった。細胞播種後のプレートは、37℃、5%CO2雰囲気下でインキュベーターにて培養した。
また、比較対象として、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地に代えて、それぞれ膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない、CC-Premium、3D-TMXF及びDMEM-10%FCSを用いた以外は同様にヒト肺胞基底上皮腺癌細胞の細胞培養を行った。
【0059】
培養開始から6日目のプレートを顕微鏡(商品名:Biozero、キーエンス社製)にて観察し、スフェロイドの形成の有無を確認した。その結果を
図18及び
図19に示す。さらに、培養開始から6日目の時点でのATPアッセイを試験例1と同様の方法で行い、細胞の増殖性を評価した。その結果を表3に示す。
【0060】
【0061】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないDMEM-10%FCS培地を用いて細胞培養を行った場合、ATPアッセイの結果から細胞増殖性は確認できるが(表3参照)、顕微鏡観察で確認できた細胞は二次元細胞であった(
図19(D)参照)。これに対して、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いて細胞培養を行った場合、プレート全体に細胞が形成されており(
図18(A)参照)、形成された細胞がスフェロイド形態であることが確認できた(
図19(A)参照)。さらに、形成された細胞(スフェロイド)の増殖性が高いことが確認できる(表3参照)。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないCC-Premium培地を用いた場合、顕微鏡観察で確認できた細胞は二次元細胞であった(
図19(B)参照)。膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販の3D-TMXF培地を用いた場合、スフェロイドの形成は確認できるが、細胞の形状がいびつであり、かつ一部が接着していた(
図18(C)及び
図19(C)参照)。さらに、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販のスフェロイド用培地を用いた場合、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いた場合と比較して、細胞の増殖性が低かった(表3参照)。
【0062】
(試験例7)ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞の細胞培養(2)
DMEM100質量部に対し、FCS(Gibco社製)10質量部を添加し、DMEM-10%FCSを調製した。調製したDMEM-10%FCSに、膨潤性層状ケイ酸塩の終濃度が0.01w/v%となるように、調製例1~3で得られた分散液をそれぞれ添加し、得られた混合液を孔径5μmのフィルター(商品名:Acrodisc 32mm Syringe Filter with 5μm Supor Membrane Non-Pyrogenic、Pall Corporation社製)でろ過し、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地(DMEM-10%FCS+SWN、DMEM-10%FCS+SWF及びDMEM-10%FCS+ST)を調製した。
【0063】
浮遊細胞用培養プレートIwakiに前記膨潤性層状ケイ酸塩含有培地を50μL/wellで添加した。そこへ、A549を1,000cells/50μL/wellで播種した。細胞播種後の膨潤性層状ケイ酸塩の濃度は0.005w/v%であった。細胞播種後のプレートは、37℃、5%CO2雰囲気下でインキュベーターにて培養した。
また、比較対象として、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地に代えて、それぞれ膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない、CC-Premium、3D-TMXF及びDMEM-10%FCSを用いた以外は同様にヒト肺胞基底上皮腺癌細胞の細胞培養を行った。
【0064】
培養開始から6日目のプレートを顕微鏡(商品名:Biozero、キーエンス社製)にて観察し、スフェロイドの形成の有無を確認した。その結果を
図20及び
図21に示す。さらに、培養開始から6日目の時点でのATPアッセイを試験例1と同様の方法で行い、細胞の増殖性を評価した。その結果を表4に示す。
【0065】
【0066】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないDMEM-10%FCS培地を用いて細胞培養を行った場合、ATPアッセイの結果から細胞増殖性は確認できるが(表4参照)、顕微鏡観察で確認できた細胞は二次元細胞であった(
図20(F)参照)。これに対して、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いて細胞培養を行った場合、プレート全体に細胞が形成されており(
図20(A)~(C)参照)、形成された細胞がスフェロイド形態であることが確認できた(
図21(A)~(C)参照)。さらに、形成された細胞(スフェロイド)の増殖性が高いことが確認できる(表4参照)。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないCC-Premium培地を用いた場合、スフェロイドは形成されるが、細胞サイズが小さく、細胞数も少なく、不均一に分布していた(
図20(D)及び
図21(D)参照)。膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販の3D-TMXF培地を用いた場合、スフェロイドの形成は確認できるが、細胞の形状がいびつであり、かつ一部が接着していた(
図20(E)及び
図21(E)参照)。さらに、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販のスフェロイド用培地を用いた場合、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いた場合と比較して、細胞の増殖性が低かった(表4参照)。
【0067】
(試験例8)ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞の細胞培養(3)
試験例7で用いた接着細胞用培養プレートを細胞低接着三次元培養用プレートNunclon Spheraに代えた以外は試験例7と同様にしてヒト肺胞基底上皮腺癌細胞の細胞培養を行った。その結果を
図22及び
図23、並びに表5に示す。
【0068】
【0069】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないDMEM-10%FCS培地を用いて細胞培養を行った場合、スフェロイドは形成されるが、細胞数が少なく、不均一に分布していた(
図22(F)参照)。さらに、細胞増殖性も低かった(表5参照)。これに対して、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いて細胞培養を行った場合、プレート全体に細胞が形成されており(
図22(A)~(C)参照)、形成された細胞がスフェロイド形態であることが確認できた(
図23(A)~(C)参照)。さらに、形成された細胞(スフェロイド)の増殖性が高いことが確認できる(表5参照)。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販のCC-Premium培地を用いた場合、スフェロイドは形成されるが、細胞サイズが小さく、細胞数も少なく、不均一に分布していた(
図22(D)及び
図23(D)参照)。また、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販の3D-TMXF培地を用いた場合もスフェロイドの形成は確認できるが(
図22(E)参照)、不均一に分布していた(
図23(E)参照)。さらに、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販のスフェロイド用培地を用いた場合、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いた場合と比較して、細胞の増殖性が低かった(表5参照)。
【0070】
(試験例9)ヒト神経芽細胞腫の細胞培養(1)
細胞培養用培地であるHam’s F-12:E-MEM(混合体積比=1:1、富士フイルム和光純薬株式会社製、以下単に「Ham’s-F12:EMEM」ともいう)100質量部に対し、FCS(Gibco社製)10質量部を添加し、基礎培地(以下、単に「Ham’s-F-12:E-MEM-10%FCS」ともいう)を調製した。調製したHam’s-F12:EMEM-10%FCSに、膨潤性層状ケイ酸塩の終濃度が0.01w/v%となるように、調製例2で得られた分散液を添加し、得られた混合液を孔径5μmのフィルター(商品名:Acrodisc 32mm Syringe Filter with 5μm Supor Membrane Non-Pyrogenic、Pall Corporation社製)でろ過し、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地(Ham’s-F12:EMEM-10%FCS+SWN)を調製した。
【0071】
浮遊細胞用培養プレートIwakiに前記膨潤性層状ケイ酸塩含有培地を50μL/wellで添加した。そこへ、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y株(以下単に、「SH-SY5Y」ともいう。ATCCより入手)1,000cells/50μL/wellを播種した。細胞播種後の膨潤性層状ケイ酸塩の濃度は0.005w/v%であった。細胞播種後のプレートは、37℃、5%CO2雰囲気下でインキュベーターにて培養した。
また、比較対象として、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地に代えて、それぞれ膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない、CC-Premium、3D-TMXF及びHam’s-F12:EMEM-10%FCSを用いた以外は同様にヒト神経芽細胞腫の細胞培養を行った。
【0072】
培養開始から6日目及び9日目のプレートを顕微鏡(商品名:Biozero、キーエンス社製)にて観察し、スフェロイドの形成の有無を確認した。その結果を
図24及び
図25に示す。
【0073】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないHam’s-F12:EMEM-10%FCS培地を用いて細胞培養を行った場合、スフェロイドは形成されるが、細胞サイズが小さく、細胞数も少なく、不均一に分布していた(
図24(D)参照)。これに対して、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いて細胞培養を行った場合、プレート全体に細胞が形成されており(
図24(A参照)、形成された細胞がスフェロイド形態であることが確認できた(
図25(A)参照)。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販の培地を用いた場合、スフェロイドは形成されるが(
図25(B)及び(C)参照)、細胞数が少なく、不均一に分布していた(
図24(B)及び(C)参照)。
【0074】
(試験例10)ヒト神経芽細胞腫の細胞培養(2)
Ham’s-F12:EMEM100質量部に対し、FCS(Gibco社製)10質量部を添加し、Ham’s-F-12:E-MEM-10%FCSを調製した。調製したHam’s-F12:EMEM-10%FCSに、膨潤性層状ケイ酸塩の終濃度が0.01w/v%となるように、調製例2及び3で得られた分散液をそれぞれ添加し、得られた混合液を孔径5μmのフィルター(商品名:Acrodisc 32mm Syringe Filter with 5μm Supor Membrane Non-Pyrogenic、Pall Corporation社製)でろ過し、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地(Ham’s-F12:EMEM-10%FCS+SWN及びHam’s-F12:EMEM-10%FCS+ST)を調製した。
【0075】
細胞低接着三次元培養用プレートNunclon Spheraに前記膨潤性層状ケイ酸塩含有培地を50μL/wellで添加した。そこへ、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y株(以下単に、「SH-SY5Y」ともいう。ATCCより入手)1,000cells/50μL/wellを播種した。細胞播種後の膨潤性層状ケイ酸塩の濃度は0.005w/v%であった。細胞播種後のプレートは、37℃、5%CO2雰囲気下でインキュベーターにて培養した。
また、比較対象として、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地に代えて、それぞれ膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない、CC-Premium、3D-TMXF及びHam’s-F12:EMEM-10%FCSを用いた以外は同様にヒト神経芽細胞腫細胞培養を行った。
【0076】
培養開始から6日目及び9日目のプレートを顕微鏡(商品名:Biozero、キーエンス社製)にて観察し、スフェロイドの形成の有無を確認した。その結果を
図26及び
図27に示す。
【0077】
膨潤性層状ケイ酸塩を含有しないHam’s-F12:EMEM-10%FCS培地を用いて細胞培養を行った場合、スフェロイドは形成されるが、細胞の形状がいびつであり、かつ一部が接着していた(
図26(E)及び
図27(E)参照)。これに対して、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する培地を用いて細胞培養を行った場合、プレート全体に細胞が形成されており(
図26(A)及び(B)参照)、形成された細胞がスフェロイド形態であることが確認できた(
図27(A)及び(B)参照)。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない市販の培地を用いた場合、スフェロイドは形成されるが(
図27(D)及び(E)参照)、細胞サイズが小さく、細胞数も少なく、不均一に分布していた(
図26(D)及び(E)参照)。
【0078】
(試験例11)ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞の細胞培養(4)
CC-Premium又は3D-TMXF 100質量部に対し、膨潤性層状ケイ酸塩の終濃度が0.01w/v%となるように、調製例1~3で得られた分散液をそれぞれ添加し、得られた混合液を孔径5μmのフィルター(商品名:Acrodisc 32mm Syringe Filter with 5μm Supor Membrane Non-Pyrogenic、Pall Corporation社製)でろ過し、膨潤性層状ケイ酸塩含有培地(CC-Premium+SWN、CC-Premium+SWF、CC-Premium+ST、3D-TMXF+SWN、3D-TMXF+SWF及び3D-TMXF+ST)を調製した。
【0079】
細胞低接着三次元培養用プレートNunclon Spheraに前記膨潤性層状ケイ酸塩含有培地を50μL/wellで添加した。そこへ、A549を1,000cells/50μL/wellで播種した。細胞播種後の膨潤性層状ケイ酸塩の濃度は0.005w/v%であった。細胞播種後のプレートは、37℃、5%CO2雰囲気下でインキュベーターにて培養した。
また、比較対象として、それぞれ膨潤性層状ケイ酸塩を含有しない、CC-Premium及び3D-TMXFを用いた以外は同様にヒト肺胞基底上皮腺癌細胞の細胞培養を行った。
【0080】
培養開始から6日目のプレートを顕微鏡(商品名:Biozero、キーエンス社製)にて観察し、スフェロイドの形成の有無を確認した。その結果を
図28及び
図29に示す。
【0081】
図28(D)及び
図29(D)、並びに前述の試験例6~8でも示すように、市販のスフェロイド用培地を用いた場合であっても、所望のスフェロイドは形成されない。
これに対し、市販のスフェロイド用培地に膨潤性層状ケイ酸塩を添加して調製した培地を用いて細胞培養を行った場合、プレート全体にスフェロイド形態の細胞が形成された(
図28(A)~(C)、
図29(A)~(C)参照)。
【0082】
以上、各種培養条件で行ったスフェロイド形成結果を表6にまとめて示す。
【0083】
【0084】
表6の注釈
◎:全体にスフェロイド形成。
〇:スフェロイドは形成するが、小さい、少ない、ないし不均一に分布。
△:スフェロイドは形成するが、一部接着、ないし形状がいびつ。
×:細胞が不定形でプレートに接着している1層で存在する細胞。
Violamo: 接着細胞用プレート
Iwaki: 浮遊細胞用プレート
Nunclon sphera:三次元培養専用プレート
【0085】
表6に示すように、膨潤性層状ケイ酸塩を含まない培地を用いて細胞培養を行った場合、培養する細胞種や使用するプレートによって、スフェロイドが形成されない場合がある。
これに対して、膨潤性層状ケイ酸塩を含有する本発明の培地を用いて細胞培養を行った場合、培養する細胞や使用する培養プレートの種類に制限されることなく、スフェロイドを形成することができる。
【0086】
以上の結果から、本発明のスフェロイド形成用培地を用いることで、多くの種類の細胞種の三次元培養を可能とする。さらに、本発明のスフェロイド形成用培地は、使用できる培養プレートに制限もない。よって、本発明のスフェロイド形成用培地は、市販されている従来の三次元培養用培地と比較して、汎用性に優れている。