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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043363
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】消防救助車
(51)【国際特許分類】
   A62C 27/00 20060101AFI20230322BHJP
   B60K 17/28 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A62C27/00 501
B60K17/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150939
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉永 守
(72)【発明者】
【氏名】石井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】小林 長壽
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 諒
【テーマコード(参考)】
2E189
3D043
【Fターム(参考)】
2E189AA04
2E189AC03
2E189AD04
3D043AA06
3D043AB07
3D043BA06
3D043BA10
3D043BB02
3D043BC03
3D043BC11
3D043BE01
(57)【要約】
【課題】消火活動及び救助活動に必要な多数の装備品を収納することができ、消火活動及び救助活動を同時に行うことを可能にした消防救助車を提供する。
【解決手段】走行用エンジンEが搭載されたメインフレーム2aと、メインフレーム2aの上部に配設されたサブフレーム2bと、サブフレーム2bの上部に配設され、消火活動及び救助活動に使用するための装備品を収納する収納庫4と、収納庫4の下方であって後輪より後方に位置するようにメインフレーム2a及び/又はサブフレーム2bの車両幅方向内側に配設された消防ポンプ10とを備え、消防ポンプ10は、走行用エンジンEのPTOシャフト5に連結されて走行用エンジンEにより駆動されると共に、後方に向かって開口する吐水口21及び吸水口22に連通し、PTOシャフト5は、複数本のプロペラシャフト5a,5b,5cと、これらプロペラシャフト5a,5b,5cを互いに連結するセンターベアリング5x,5yとを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用エンジンが搭載されたメインフレームと、該メインフレームの上部に配設されたサブフレームと、該サブフレームの上部に配設され、消火活動及び救助活動に使用するための装備品を収納する収納庫と、該収納庫の下方であって後輪より後方に位置するように前記メインフレーム及び/又は前記サブフレームの車両幅方向内側に配設された消防ポンプとを備え、
前記消防ポンプが、前記走行用エンジンのPTOシャフトに連結されて該走行用エンジンにより駆動されると共に、後方に向かって開口する吐水口及び吸水口に連通し、
前記PTOシャフトが、複数本のプロペラシャフトと、これらプロペラシャフトを互いに連結するセンターベアリングとを有することを特徴とする消防救助車。
【請求項2】
前記プロペラシャフトが無給油状態で継続的に使用可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の消防救助車。
【請求項3】
前記サブフレームに車両幅方向に延在する横梁が配設され、該横梁に対して前記消防ポンプが固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の消防救助車。
【請求項4】
前記複数本のプロペラシャフトのうち前記消防ポンプに隣接するプロペラシャフトが車両後方に向かって前記メインフレームの延在方向から下方に傾斜していることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の消防救助車。
【請求項5】
前記消防ポンプに隣接するプロペラシャフトの前記メインフレームの延在方向に対する傾斜角度が7°以下であることを特徴とする請求項4に記載の消防救助車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防救助車に関し、更に詳しくは、消火活動及び救助活動に必要な多数の装備品を収納することができ、消火活動及び救助活動を同時に行うことを可能にした消防救助車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火災や震災、事故等の災害発生時に出動する車両として、消火活動を行うために消防ポンプを搭載した消防ポンプ車や、救助活動を行うために様々な機材や工具を搭載した救助工作車がある(例えば、特許文献1,2参照)。これに対して、災害発生時において消火活動のみならず救助活動を同時に行うことが可能な消防救助車の提供が望まれている。
【0003】
このような消防救助車は、消火活動及び救助活動を同時に行うために多数の装備品を搭載する必要があり、それには全ての装備品を収納するスペースを確保する必要がある。しかしながら、従来の消防ポンプ車において、搭載された消防ポンプはシャーシの上部に配置されているものが多く、新たに救助活動に必要な救助器具を収納するスペースを確保することは困難である。一方、従来の救助工作車は、比較的大きな収納庫を有しているものの、その収納庫内には救助活動に必要な多数の機材や工具が収納されているため、新たに消防ポンプや消防ホース等を搭載するスペースを確保することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-345927号公報
【特許文献2】特開平10-100796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、消火活動及び救助活動に必要な多数の装備品を収納することができ、消火活動及び救助活動を同時に行うことを可能にした消防救助車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の消防救助車は、走行用エンジンが搭載されたメインフレームと、該メインフレームの上部に配設されたサブフレームと、該サブフレームの上部に配設され、消火活動及び救助活動に使用するための装備品を収納する収納庫と、該収納庫の下方であって後輪より後方に位置するように前記メインフレーム及び/又は前記サブフレームの車両幅方向内側に配設された消防ポンプとを備え、前記消防ポンプが、前記走行用エンジンのPTOシャフトに連結されて該走行用エンジンにより駆動されると共に、後方に向かって開口する吐水口及び吸水口に連通し、前記PTOシャフトが、複数本のプロペラシャフトと、これらプロペラシャフトを互いに連結するセンターベアリングとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、走行用エンジンが搭載されたメインフレームと、メインフレームの上部に配設されたサブフレームと、サブフレームの上部に配設され、消火活動及び救助活動に使用するための装備品を収納する収納庫と、収納庫の下方であって後輪より後方に位置するようにメインフレーム及び/又はサブフレームの車両幅方向内側に配設された消防ポンプとを備え、消防ポンプは、走行用エンジンのPTOシャフトに連結されて走行用エンジンにより駆動されると共に、後方に向かって開口する吐水口及び吸水口に連通し、PTOシャフトは、複数本のプロペラシャフトと、これらプロペラシャフトを互いに連結するセンターベアリングとを有しているので、サブフレームの上部を消火活動及び救助活動に必要な装備品を収納する収納庫として活用することができると共に、消防ポンプの配置によって収納庫として利用可能なスペースを狭くすることがない。例えば、従来の消防ポンプ車に対して本発明を適用した場合には、消防ポンプが収納庫の下方であって後輪より後方に位置するようにメインフレーム及び/又はサブフレームの車両幅方向内側に配置されるので、新たに救助活動に必要な装備品を収納するスペースを有効に活用することができる。一方、従来の救助工作車に対して本発明を適用した場合には、消防ポンプが収納庫の下方であって後輪より後方に位置するようにメインフレーム及び/又はサブフレームの車両幅方向内側に配置されるので、救助活動に加えて消火活動を同時に行うことができると共に、消防ホース等の消火活動に必要な装備品を収納することができる。従って、本発明に係る消防救助車によれば、消火活動及び救助活動に必要な多数の装備品を搭載することができ、消火活動及び救助活動を同時に行うことが可能になる。また、災害発生時において、従来は消防ポンプ車と救助工作車の双方を出動させる必要があったが、本発明に係る消防救助車によれば1台で済むので車両及び人員を減らすことができる。
【0008】
本発明の消防救助車において、プロペラシャフトは無給油状態で継続的に使用可能に構成されていることが好ましい。従来のプロペラシャフトは、定期的に給油することが必要であり、メンテナンスの手間と時間を要していたが、本発明に係る消防救助車に搭載されたプロペラシャフトは、無給油状態で継続的に使用可能であるので定期的なメンテナンスが不要になる。また、無給油状態で継続的に使用可能なプロペラシャフトを用いることで、給油作業に必要なスペースを省くことができる。これにより、収納庫の床下に近接するようにプロペラシャフトを配置することができる。更には、収納庫をサブフレームに直接取り付けることができる。或いは、サブフレームの高さを低くでき、収納庫のスペースをより大きくすることができるという利点がある。
【0009】
サブフレームに車両幅方向に延在する横梁が配設され、その横梁に対して消防ポンプが固定されていることが好ましい。これにより、車両の構造上、メインフレームに対して消防ポンプを取り付けることができない場合であっても、消防ポンプを任意の位置に配置することができる。
【0010】
複数本のプロペラシャフトのうち消防ポンプに隣接するプロペラシャフトが車両後方に向かってメインフレームの延在方向から下方に傾斜していることが好ましい。消防ポンプを収納庫の下方であって後輪より後方に配置するにあたって、プロペラシャフトの配置を簡便にしつつ、消防ポンプを所定の位置に配置することができる。
【0011】
消防ポンプに隣接するプロペラシャフトのメインフレームの延在方向に対する傾斜角度は7°以下であることが好ましい。これにより、プロペラシャフトによって走行用エンジンの動力を消防ポンプに適切に伝達しつつ、車両の構造に合わせて消防ポンプを任意の位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態からなる消防救助車の一例を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態からなる消防救助車に搭載された消防ポンプを例示する側面図である。
図3】本発明の実施形態からなる消防救助車に搭載された消防ポンプを例示する平面図である。
図4】本発明の実施形態からなる消防救助車に搭載されたプロペラシャフトの一例を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態からなる消防救助車に搭載されたセンターベアリングの一例を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態からなる消防救助車に搭載された消防ポンプの一例を示す正面図である。
図7】従来のプロペラシャフトの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、本発明の実施形態からなる消防救助車(車両1)は、車両1の長手方向に延在し、走行用エンジンEを搭載する一対のメインフレーム2aと、その上部にメインフレーム2aと平行に配設された一対のサブフレーム2bとを有する。即ち、車両1は、メインフレーム2aとサブフレーム2bからなる2段構造のシャーシ2を有する。シャーシ2の上部には、車両進行方向Dに対して前部に、隊員が搭乗するスペースであるキャビン3と、車両進行方向Dに対して後部に、消火活動及び救助活動に使用するための装備品を収納する収納庫4とが配置されている。なお、車両幅方向Wは、車両進行方向Dに直交すると共に車両高さ方向Hに直交する方向である。
【0014】
メインフレーム2aとサブフレーム2bは車両幅方向Wに対して略同一の位置になるように配置される。一方、メインフレーム2aとサブフレーム2bとは互いに長さが異なっている。図示の例では、車両前方からメインフレーム2aの車両前方の端部(前端部)、サブフレーム2bの前端部、メインフレーム2aの車両後方の端部(後端部)、サブフレーム2bの後端部の順に位置している。メインフレーム2aの後端部は後輪の後方に配置され、サブフレーム2bの前端部はキャビン3と収納庫4の間に配置され、サブフレーム2bの後端部は収納庫4の後端部とほぼ同じ位置に配置されている。メインフレーム2aとサブフレーム2bとは鉛直方向に離間していても良いが、サブフレーム2bがメインフレーム2aに当接するように配置されていることが好ましい。サブフレーム2bがメインフレーム2aに当接するように配置されている場合、サブフレーム2bの上端面の高さを低くすることができるため、収納庫4として利用可能なスペースを増やし、装備品を収納するスペースを増やすことができる。また、サブフレーム2bには、その延在方向と直交する方向(車両幅方向W)に延在する横梁2c,2dが配設されている。
【0015】
収納庫4に収納される装備品として、消防活動に使用するための消防ホース、消防吸管、管鎗(ノズル付き)、各種の媒介金具を例示することができ、救助活動に使用するための油圧式カッター、油圧式スプレッダー、エンジンカッター、ガス溶断器、チェーンソーを例示することができる。
【0016】
図2,3に示すように、一対のサブフレーム2bの車両幅方向内側には消防ポンプ10が配置されている。消防ポンプ10は、収納庫4の下部に配置されており、横梁2cに対して下方から固定されている。消防ポンプ10は、車両進行方向Dに対して車両1(シャーシ2)の後部に配置されている。より具体的には、消防ポンプ10は、車両1の後輪より後方に配置され、車両1の後端部よりも後方に突出しないように配置されている。また、消防ポンプ10は、走行用エンジンEのPTOシャフト5に連結され、走行用エンジンEによって駆動される。更には、消防ポンプ10における走行用エンジンEのPTOシャフト5と連結される部位Pは車両進行方向Dに対して前方に向いている。PTOシャフト5は、車両1の走行用エンジンEの動力を他の機械装置を駆動させるために取り出すことができる機構であり、用途に応じて、サイドPTOやフライホイールPTOなどがある。なお、図3は車両の下方から見た平面図である。
【0017】
PTOシャフト5は、複数本(図2では3本)のプロペラシャフト5a,5b,5cと、これらを互いに連結する少なくとも1個(図2では2個)のセンターベアリング5x,5yから構成されている。
【0018】
プロペラシャフト5a,5b,5cは、走行用エンジンEの動力を消防ポンプ10に伝達するための回転軸であり、本発明において、例えば図4に示す軸構造のプロペラシャフトを用いることができる。図4に示すように、プロペラシャフト5aは、主に、円筒状のカバー51と、その内部に配置され、長さが可変自在に構成されたシャフト52と、その両端部に配置される一対のジョイントキット53と、その外側に配置され、他部材に接続される一対のヨーク54から構成されている。その他のプロペラシャフト5b,5cもプロペラシャフト5aと同じ軸構造を有する。プロペラシャフト5a,5b,5cは、いずれも無給油状態で継続的に使用可能に構成されている。即ち、図7に示すように、従来のプロペラシャフト100では、潤滑油を給油するための給油口101が配設されているのに対して、本発明に係るプロペラシャフト5a,5b,5cは、給油が不要であるため、給油口が配設されていない。プロペラシャフト5a,5b,5cは、ポリアミド11からなる熱可塑性樹脂粉体塗料によりコーティング加工されていることで、耐水性や耐熱性に優れており、グリスが密封されているため給油が不要である。
【0019】
プロペラシャフト5a,5bは、図2に示すように、メインフレーム2aの延在方向に沿って配置される一方で、消防ポンプ10に隣接するプロペラシャフト5cは、消防ポンプ10と連結するため、車両1の後方に向かってメインフレーム2aの延在方向から下方に傾斜するように配置されている。プロペラシャフト5cの水平方向に対する傾斜角度θは、例えば、7°以下であることが好ましく、2°以下であることがより好ましい。また、プロペラシャフト5a,5b,5cは、図3に示すように、サブフレーム2bと略平行に延在している。
【0020】
センターベアリング5x,5yは、隣接する2つのプロペラシャフトを連結し、円滑にトルクを伝達する連結部材であり、隣接する2つのプロペラシャフトが同一軸上に配置されていない場合であっても連結することが可能である。本発明において、例えば図5に示す構造のセンターベアリングを用いることができる。また、センターベアリング5x,5yは、図3に示すように、サブフレーム2bと直交する方向に架け渡された横梁2dの上に配置されている。
【0021】
消防ポンプ10は吐水口21及び吸水口22に連通している。即ち、吐水口21と吸水口22は、それぞれ金属製(例えば、鉄製)の吐水用配管31と吸水用配管32を介して、消防ポンプ10に連通している。吐水用配管31は、吐水口21と消防ポンプ10における吐水用の接続部11との間に配される分岐した配管であり、吸水用配管32は、吸水口22と消防ポンプ10における吸水用の接続部12との間に配される分岐した配管である。また、吐水用配管31と接続される吐水用の接続部11は鉛直方向の上方に向かって開口しており、吸水用配管32と接続される吸水用の接続部12は水平方向に向かって開口している。この吐水用の接続部11に対して逆止弁23が取り付けられており、走行用エンジンEが停止した際には逆止弁23が吐水用配管31を自動的に封止して消防ポンプ10内の水が逆流しないようになっている。更に、放水時において、吐水口21には消防ホースが接続され、吸水口22にはゴム吸管が接続されて用いられる。吐水口21及び吸水口22は、それぞれ車両1の構造に合わせて所望の位置や向きに配することができ、吐水口21及び吸水口22の口数も適宜増やすことができる。図2の実施形態では、吐水口21及び吸水口22は、いずれも車両進行方向Dに対して後方に向かって開口している。
【0022】
また、消防ポンプ10は、図6に示すように、円環状のポンプハウジング13を有している。ポンプハウジング13には、消防ポンプ10内に溜まったドレンを排出するために、複数の排出口14が設けられている。これら排出口14は、ポンプハウジング13の周上に間隔をおいて配置されている。複数の排出口14のうちいずれか一つに対してバルブ15が取り付けられ、その排出口14は使用可能な状態となるのに対し、バルブ15が取り付けられていない排出口14は封止された状態であり、これら排出口14からはドレンが排出されないようになっている。つまり、複数の排出口14のうち、車両1の構造に適した位置にあるものを選択的に用いることができる。図6の実施形態では、消防ポンプ10の最下方に位置する排出口14に対してバルブ15が取り付けられている。
【0023】
このような排出口14により、消防ポンプ10を使用した後にバルブ15を介して消防ポンプ10内に溜まったドレンを排出することができるようになっている。例えば、消火活動における水源として塩分が含まれた水を利用する場合、消防ポンプ10を成す金属が塩分により腐食し易くなるため、消防ポンプ10の使用後にはドレンを早急に排出する必要がある一方で、冬場での消防活動では、ドレンがあることにより消防ポンプ10内の水が氷ることを防止することができる。そのため、消防ポンプ10は、必要に応じてドレンを適時に排出することが可能な構造を有している。
【0024】
消防ポンプ10は、単一の羽根車16を有する遠心ポンプからなる。この羽根車16には複数枚の羽根16aが中心軸に対して放射状に配置されている。羽根車16が回転することによって、羽根車16内の水の流速を増加させる。これにより、消防ポンプ10内の水が吐水用配管31を通じて吐水口21から排出される。更に、消防ポンプ10は、PTOシャフト5の回転数を消防ポンプ10に適した回転数に変換するギアボックスや、PTOシャフト5の駆動力により駆動される真空ポンプ、真空ポンプとポンプハウジング13との間を連結する真空パイプ等を備えている。
【0025】
車両1には、消防ポンプ10を操作する少なくとも1つの操作盤24が配設されている。操作盤24は、消防ポンプ10と同様に車両1の後部に配置することが好ましいが、特に限定されるものではなく、その他の設置箇所として車両進行方向Dに向かって左右の側面の一方又は両方に設けることができる。いずれの場合であっても、操作盤24の設置箇所を少なくすることで、装備品を収納するスペースをより多く確保することができる。
【0026】
上記消防ポンプを用いて消防活動における放水を行う場合、走行用エンジンEを始動させ、PTOシャフト5の駆動力により真空ポンプを作動させて消防ポンプ10と吸水用配管32内の空気を抜き、消防ポンプ10及び吸水用配管32内が水で満たされた後、PTOシャフト5の駆動力で羽根車16を回転させ、吐水口21から水が排出され、吐水口21に接続された消防ホースから放水が開始される。操作盤24を操作することによって、上述のようにして消防ポンプ10を用いて放水を行うことができる。
【0027】
上述した消防救助車では、走行用エンジンEが搭載されたメインフレーム2aと、メインフレーム2aの上部に配設されたサブフレーム2bと、サブフレーム2bの上部に配設され、消火活動及び救助活動に使用するための装備品を収納する収納庫4と、収納庫4の下方であって後輪より後方に位置するようにメインフレーム2a及び/又はサブフレーム2bの車両幅方向内側に配設された消防ポンプ10とを備え、消防ポンプ10は、走行用エンジンEのPTOシャフト5に連結されて走行用エンジンEにより駆動されると共に、後方に向かって開口する吐水口21及び吸水口22に連通し、PTOシャフト5は、複数本のプロペラシャフト5a,5b,5cと、これらプロペラシャフト5a,5b,5cを互いに連結するセンターベアリング5x,5yとを有しているので、サブフレーム2bの上部を消火活動及び救助活動に必要な装備品を収納する収納庫4として活用することができると共に、消防ポンプ10の配置によって収納庫4として利用可能なスペースを狭くすることがない。例えば、従来の消防ポンプ車に対して本発明を適用した場合には、消防ポンプ10が収納庫4の下方であって後輪より後方に位置するようにメインフレーム2a及び/又はサブフレーム2bの車両幅方向内側に配置されるので、新たに救助活動に必要な装備品を収納するスペースを有効に活用することができる一方で、従来の救助工作車に対して本発明を適用した場合には、消防ポンプ10が収納庫4の下方であって後輪より後方に位置するようにメインフレーム2a及び/又はサブフレーム2bの車両幅方向内側に配置されるので、救助活動に加えて消火活動を同時に行うことができると共に、消防ホース等の消火活動に必要な装備品を収納することができる。従って、本発明に係る消防救助車によれば、消火活動及び救助活動に必要な多数の装備品を搭載することができ、消火活動及び救助活動を同時に行うことが可能になる。また、災害発生時において、従来は消防ポンプ車と救助工作車の双方を出動させる必要があったが、本発明に係る消防救助車によれば1台で済むので車両及び人員を減らすことができる。
【0028】
上述した消防救助車において、プロペラシャフト5a,5b,5cは、いずれも無給油状態で継続的に使用可能に構成されている。従来のプロペラシャフトは、定期的に給油することが必要であり、メンテナンスの手間と時間を要していたが、本発明に係る消防救助車に搭載されたプロペラシャフト5a,5b,5cは、無給油状態で継続的に使用可能であるので、定期的なメンテナンスが不要になる。例えば、メインフレーム2a及び/又はサブフレーム2bの車両幅方向内側に配置されたプロペラシャフト5a,5b,5cのように、他部材が邪魔となってプロペラシャフトに物理的に給油できない位置にある場合に好適である。また、無給油状態で継続的に使用可能なプロペラシャフト5a,5b,5cを用いることで、給油作業に必要なスペースを省くことができる。これにより、収納庫4の床下に近接するようにプロペラシャフト5a,5b,5cを配置することができる。更には、収納庫4をサブフレーム2bに直接取り付けることができる。或いは、サブフレーム2bの高さを低くでき、収納庫4のスペースをより大きくすることができるという利点がある。
【0029】
また、サブフレーム2bに配設された横梁2cに対して消防ポンプ10が固定されている。このように消防ポンプ10が固定されていることで、車両1の構造上、メインフレーム2aに対して消防ポンプ10を取り付けることができない場合であっても、消防ポンプ10を任意の位置に配置することができる。これに対して、メインフレーム2aに対して消防ポンプ10を配置した場合、消防ポンプ10においてメインフレーム2aよりも下方に突出する部位が多くなり、走行中に消防ポンプ10が地面と接触して損傷する可能性がある。
【0030】
プロペラシャフト5a,5b,5cのうち消防ポンプ10に隣接するプロペラシャフト5cが車両1の後方に向かってメインフレーム2aの延在方向から下方に傾斜している。このようにプロペラシャフト5cを配置することで、消防ポンプ10を収納庫4の下方であって後輪より後方に配置する際に、プロペラシャフト5a,5b,5cの配置を簡便にしつつ、消防ポンプ10を所定の位置に配置することができる。
【0031】
更に、消防ポンプ10に隣接するプロペラシャフト5cの傾斜角度θは、メインフレーム2aの延在方向に対して7°以下に設定されている。このようにプロペラシャフト5cのメインフレーム2aの延在方向に対する傾斜角度θを適度に設定することで、プロペラシャフト5a,5b,5cによって走行用エンジンEの動力を消防ポンプ10に適切に伝達しつつ、車両1の構造に合わせて消防ポンプ10を任意の位置に配置することができる。ここで、プロペラシャフト5cの傾斜角度θが7°を超えると、消防ポンプ10がメインフレーム2aよりもかなり下方に配置されることになり、走行中に消防ポンプ10が地面と接触して損傷する可能性があるため好ましくない。
【0032】
図1~6において、消防ポンプ10は車両進行方向Dに対してシャーシ2の後部に配置されている。このように消防ポンプ10をシャーシ2の後部に配置することで、車両1の後部から吐水と吸水の両方を行うことができる。また、消防ポンプ10を車両1の中央部に配置した場合に比べて消防ポンプ10からの配管(吐水用配管31及び吸水用配管32)を短くかつ簡易に構成することができるので、装備品を収納するスペースを増やすことができる。
【0033】
また、消防ポンプ10において、吐水口21及び吸水口22は車両進行方向Dに対して後方に向かって開口している。このように吐水口21及び吸水口22を配置することで、消防ポンプ10からの配管(吐水用配管31及び吸水用配管32)を短くかつ簡易に構成することができるので、装備品を収納するスペースを増やすことができる。
【0034】
更に、消防ポンプ10はドレンを排出するための複数の排出口14を有し、これら排出口14は円環状のポンプハウジング13の周上に間隔をおいて配置され、排出口14のいずれか一つにバルブ15が取り付けられ、残りの排出口14は閉塞されている。このように排出口14を構成することで、車両1の構造に合わせて排出口14の位置を選択することができるので、消防ポンプ10の向きや配置を適宜変更することができる。
【0035】
上記消防救助車において、消防ポンプ10は単一の羽根車16を有する遠心ポンプからなると良い。これに対して、一般に複数の羽根車を有する遠心ポンプもあるが、複数の羽根車を有する遠心ポンプは吐水口と吸水口までの配管を含む装置全体が大型化するため、スペースを確保するにあたっては不利である。本発明では消防ポンプ10を単一の羽根車16を有する遠心ポンプから構成することで、消防ポンプ10を小型化することができ、装備品を収納するスペースを増やすことができる。
【0036】
上述した説明では、消防ポンプ10が一対のサブフレーム2bの車両幅方向内側に配置された例を示したが、これに限定されるものではなく、消防ポンプ10が一対のメインフレーム2a及び一対のサブフレーム2bの双方の車両幅方向内側に配置されていても良く、消防ポンプ10が一対のメインフレーム2aの車両幅方向内側に配置されていても良い。また、プロペラシャフト5cと消防ポンプ10とを連結させた例を示したが、これに限定されるものではなく、プロペラシャフト5cと消防ポンプ10の間にギアボックスを介在させてもよい。その場合、プロペラシャフト5cは、メインフレーム2aの延在方向と平行になるように配設することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
2 シャーシ
2a メインフレーム
2b サブフレーム
3 キャビン
4 収納庫
5 PTOシャフト
5a,5b,5c プロペラシャフト
5x,5y センターベアリング
10 消防ポンプ
21 吐水口
22 吸水口
E 走行用エンジン
D 車両進行方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7