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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043368
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/02 20060101AFI20230322BHJP
   F24C 7/04 20210101ALI20230322BHJP
【FI】
F24C15/02 F
F24C7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150950
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】本間 満
(72)【発明者】
【氏名】松崎 浩二
(72)【発明者】
【氏名】和田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】関 真人
(72)【発明者】
【氏名】福岡 万由子
【テーマコード(参考)】
3L087
【Fターム(参考)】
3L087AA01
3L087AB02
3L087DA16
(57)【要約】
【課題】
本発明は、ドア部における冷却効果を向上させた加熱調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、本体1の上面に被調理鍋を載置する鍋載置部21と、鍋載置部21の下方に配置されたグリル庫5を備えている。グリル庫5は、加熱室50と、加熱室50の開口部を覆うと共に加熱室50内に食品を出し入れするためのドア6と、ドア6に開成して食品を加熱室50に収納する調理パン58と、食品を加熱する上ヒータ51,下ヒータ52を備えている。ドア6は内部を仕切部材64で分割した複数の空間(第1の隙間64a,第2の隙間64b)を有する箱体で形成されている。仕切部材64には、本体1の前後方向に貫通した開口部に設けられたファン69を備え、ファン69を介して第1の隙間64aから第2の隙間64bを貫流する流れを構成した。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体の上面であって被調理鍋を載置する鍋載置部と、前記鍋載置部の下方に配置されたグリル庫と、を備え、
前記グリル庫は、加熱室と、前記加熱室の開口部を覆うと共に前記加熱室内に調理パンを出し入れする開閉可能なドアと、食品を加熱する加熱手段と、を備え、
前記ドアは、内部を前記本体の前後方向に仕切部材で分割した複数の空間を有する箱体であって、
前記仕切部材には、前記本体の前後方向に貫通した開口部と、前記開口部に設けられたファンと、を備え、
前記ファンを介して少なくとも2つの空間を貫流する流れを構成したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1において、
前記ファンに連通する前記2つの空間のうち、前記仕切部材より前方の空間の外郭に吸気口、後方の空間の外郭に排気口を設けたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項2において、
前記本体を正面視した状態において、前記吸気口と前記排気口を、前記ファンを挟んで前記ドアの上下に配置したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記本体を正面視した状態において、前記吸気口と前記排気口を、前記ファンを挟んで前記ドアの前後に配置したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れ1項において、
前記本体を正面視した状態において、前記吸気口と前記排気口を、前記ファンを挟んで前記ドアの左右に配置したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項において、
前記仕切部材を樹脂で構成したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項7】
請求項6において、
前記仕切部材には、前記ファンに空気を導風するガイドを備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項において、
前記仕切部材には、前記加熱室の庫内の情報を検出する情報検出手段を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項において、
前記仕切部材で構成した複数の空間のうち、前記ファンで空気の流動が生じる空間より前記加熱室側に、遮熱層を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫を備えたビルトインタイプの加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、グリル庫は、魚などの食品(被調理物)に対して上下に配置されたシーズヒーターやガスバーナーなどの熱源により、被調理物の両面を同時に加熱するものが主流である。
【0003】
このグリル庫の加熱室では食品が熱源の放射熱で加熱するグリル調理の他に、加熱室内の温度制御により、例えばピザやお菓子、ケーキなど多種の調理メニューに応じたオーブン調理が行われる。このため、グリル庫の使用頻度や高温保持時間が増加している。グリル庫の加熱室内には、サーミスタ等の温度センサが備えられ、温度センサの検出値をもとに温度制御が行われている。
【0004】
グリル庫は加熱調理器の正面側に開口部があり、その開口部を覆うようにドア部を設けている。使用者が加熱室内に食品を載置する際には、ドア部のハンドルを引いて開放する構造が一般的である。グリル庫で加熱調理を行うと、熱源に供給される熱量によって庫内温度が上昇し、これに伴いドア部温度も上昇する。ドア部の外表面温度は100℃以上の高温となるが、使用者がドア部の開閉時に触れるハンドルには、熱が伝達され難い構造となっている。安全性をより向上させることから、ドア部の外表面温度を低減させることが望まれている。
【0005】
ドア内部にファンを設けて冷却する技術として、例えば特許文献1及び特許文献2に記載の技術が提案されている。
【0006】
特許文献1には、正面から見て、加熱室を開閉する扉の前面右側に操作部を設け、操作部の裏面右側に空気流路を設け、空気流路の中間部分に送風ファンを設ける技術が開示されている。特許文献1では、仕切板によって空気流路を分割し、仕切板から扉の前面側に第1流路を形成し、仕切板から扉の後面側に第2流路を形成している。送風ファンを駆動すると、第1流路及び第2流路に空気が流れる。第1流路は操作部の基板を冷却し、第2流路は、加熱室からの熱を扉の外部に排出する。
【0007】
また、特許文献2には、加熱室を開閉する開閉扉の内部に加熱室内の情報を検出する庫内情報検出部を設け、さらに開閉扉の内部に庫内情報検出部を空冷する冷却ファンを設ける技術が開示されている。特許文献2では、開閉扉の下部に冷却ファンを配置し、開閉扉の上部に庫内情報検出部を配置している。また、冷却ファンと庫内情報検出部の間の開閉扉内に表示用基板とパンチングメタルを配置し、開閉扉内の空間を分割している。冷却願を駆動すると、分割された開閉扉内の空間を空気が分流して流れ、庫内情報検出部を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-26233号公報
【特許文献2】特開2018-109453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2に記載の技術においては、ドアで調理操作を行う為にドアの一部分に設けた操作部の基板や庫内情報検出部を冷却する構成としており、ドア正面全体に空気を流してドア表面温度を下げる構成となっていない。
【0010】
特許文献1に記載の技術においては、扉の右側に設けた操作部を冷却する構成であり、空気流路を前後に分割する仕切板に送風ファンを嵌め込み、各流路に分流して空気を流がし、操作部の基板などを空冷するものであり、操作部以外の冷却に寄与しない。
【0011】
また、特許文献2では、開閉扉の右側に設けた操作パネル上方の庫内情報検出部を冷却する構成であり、下方に設けた冷却ファンから分流して空気を流す構成となっている。このため、窓ガラス側を流れる空気量は分岐された風路により減少し、積極的に開閉扉の正面側を冷やす構成となっていない。また、ファン周りの吸排気容積が制限されており、一例に挙げた軸流ファンは外形が小さいものとなり易く、風量と運転騒音のトレードオフから、部品冷却性能を向上させる風量確保が困難となる。
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決し、ドア部における冷却効果を向上させた加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の特徴とするところは、本体と、前記本体の上面であって被調理鍋を載置する鍋載置部と、前記鍋載置部の下方に配置されたグリル庫と、を備え、前記グリル庫は、加熱室と、前記加熱室の開口部を覆うと共に前記加熱室内に調理パンを出し入れする開閉可能なドアと、食品を加熱する加熱手段と、を備え、前記ドアは、内部を前記本体の前後方向に仕切部材で分割した複数の空間を有する箱体であって、前記仕切部材には、前記本体の前後方向に貫通した開口部と、前記開口部に設けられたファンと、を備え、前記ファンを介して少なくとも2つの空間を貫流する流れを構成したことにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドア部における冷却効果を向上させた加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1に係る加熱調理器の斜視図である。
図2】本発明の実施例1に係る加熱調理器の分解斜視図である。
図3図1に示すIII-III線で切断した正面断面図である。
図4図1に示すIV-IV線で切断した側方断面図である。
図5】本発明の実施例1に係るグリル庫を側方から見た側方断面の模式図である。
図6】本発明の実施例1に係るグリル庫を上方から見た上面模式図である。
図7】本発明の実施例1に係るドアの斜視分解図である。
図8】実施例1の変形例であり、グリル庫を上方から見た上面模式図である。
図9】本発明の実施例2に係るグリル庫を側方から見た側方断面の模式図である。
図10】本発明の実施例3に係る加熱調理器の斜視図である。
図11】本発明の実施例3に係るグリル庫を側方から見た側方断面の模式図である。
図12】本発明の実施例3に係るグリル庫を上方から見た上面模式図である。
図13】実施例3の変形例であり、グリル庫を上方から見た上面模式図である。
図14】本発明の実施例4に係るグリル庫を側方から見た側方断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の加熱調理器の実施例について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、加熱調理器の一例として、グリル庫を備えたビルトインタイプのIHクッキングヒータを例示するが、グリル庫を備えた調理器であれば、ビルトインタイプのガスコンロにも、本発明を適用することができる。
【実施例0017】
まず、本発明の実施例1に係る加熱調理器Zの全体構成を概説した後、グリル庫5の詳細構造を説明する。
【0018】
<加熱調理器Zの全体構成>
本実施例の加熱調理器Zは、上面に載置した金属鍋の鍋底に渦電流を発生させ、渦電流によるジュール熱によって金属鍋自体を発熱させるIH(Induction Heating)機能と、加熱室内に収納した食品をヒータの放射熱で加熱するグリル機能を備えた調理器である。なお、図1等に示すように、以下では、加熱調理器Zに相対した使用者の視線を基準として、前後・上下・左右の各方向を定義する。
【0019】
図1は、本発明の実施例1に係る加熱調理器の斜視図である。図2は、本発明の実施例1に係る加熱調理器の分解斜視図である。両図に示すように、加熱調理器Zは、本体1、トッププレート2、加熱コイル3、基板ケース8を備え、さらに、本発明を適用したグリル庫5を内蔵した調理器である。
【0020】
本体1は、加熱調理器Zが設置される空間(所定の左右幅・前後幅・高さ)に対応した外郭を有する筐体であり、上方が開放した箱状(凹状)を呈している。この本体1の内部には、左側にグリル庫5、右側に基板ケース8が配置される。また、グリル庫5と基板ケース8の上方には加熱コイル3や、表示部P1等が設置され、さらに、本体1の上面開口を覆うようにトッププレート2を設置している。
【0021】
トッププレート2は、三つの加熱コイル3の設置位置に対応した三口の鍋載置部21と、鍋載置部21に載置された金属鍋の加熱具合を設定するための操作部P0と、排気開口部H2とを有している。なお、排気開口部H2は、後述するグリル庫5の排気ダクト59や、吸気開口部H1を起点とする風路の出口であり、トッププレート2の後方(右側・左側)に配置される。
【0022】
本体1の前面左側には、前後にスライドすることでグリル庫5を開閉するドア6を配置している。なお、ドア6の詳細については後述する。また、本体1の正面右側には、主にグリル庫5の加熱具合を設定するための操作パネルP2と、主電源をオンオフする電源スイッチP3を配置している。
【0023】
基板ケース8は、内部に基板7等の電気部品を収納したケースである。基板ケース8の背面側には、冷却用のファン装置9が設けられており、本体1背面の吸気開口部H1から外気を吸い込み、基板ケース8内に積層された基板7や、その下流に配置された加熱コイル3に冷却風を供給する構成となっている。
【0024】
<グリル庫5の構成>
図3は、図1に示すIII-III線で切断した正面断面図である。図4は、図1に示すIV-IV線で切断した側方断面図である。図3及び図4に示すように、本実施例のグリル庫5は、食品57を出し入れする前面開口に設けた、箱型の加熱室50を備えている。この加熱室50は、例えば、アルミニウム合金製の板をプレス加工によりそれぞれ所定の形状に成形した複数の部材をビスねじ等で組み立てて構成したものである。
【0025】
この加熱室50では、網台54に載置した調理パン58に食品57を収納して調理を行う。調理パン58は、例えば、アルミニウム等の材料により上面視矩形状に形成された深皿であり、表面にフッ素コート剤などがコーティングされたものである。
【0026】
加熱室50内には、調理パン58を挟むように、上ヒータ51と下ヒータ52を設置しており、両ヒータのオンオフを制御することで、調理パン58内の食品57の上下面を同時に、あるいは、交互に加熱することができる。なお、上ヒータ51と下ヒータ52は、シーズヒーターや電熱ヒータ―などの放射熱を利用する熱源である。
【0027】
本実施例のグリル庫5では、加熱室50の左右下側に設けた一対のドアレール56により、加熱室50の前面開口を封鎖するためのドア6が前後方向にスライドして移動する。このドア6は、加熱室50前面開口より幅と高さが大きく、また、加熱室50の前面側には、上下方向に延びたフランジ部50a(図2参照)が構成されているため、ドア6とフランジ部50aを略面接触させることで、加熱室50の前面開口を気密できる構造となっている。ドア6とフランジ部50aの接触面には、ゴム状のパッキン65を設け、加熱室50の前面開口の気密性を高めている。なお、ドアレール56を利用したドア6のスライドと連動し、調理パン58を載置するための網台54も前後方向にスライド移動する。また、本発明ではドア6内にファン69を設けており、ドアレール56に沿って配線することで、ファン69への電源供給が行われる。
【0028】
加熱室50の背面側上方には加熱室50内の油煙や蒸気などを排出する排気ダクト59を設けており、トッププレート2の後方に設けた排気開口部H2から排気する構成(図2参照)となっている。排気開口部H2に連通する排気ダクト59内には、脱煙・脱臭処理を行う触媒55を設けている。
【0029】
<ドア6の構成>
次に、本実施例のドア6の詳細構造について説明する。図5は、本発明の実施例1に係るグリル庫を側方から見た側方断面の模式図である。図6は、本発明の実施例1に係るグリル庫を上方から見た上面模式図である。図7は、本発明の実施例1に係るドアの斜視分解図である。なお、図5の模式図では、ドア6と加熱室50の境界部で発生する上昇気流98を図示するため、ドア6の背面と加熱室50の前面の距離を実際より拡張して表示しているが、両者間の実際の距離は、気密用のパッキン65等の影響で残存する、1~2mm程度の隙間である。
【0030】
各図に示すように、ドア6は、ドア6の前面を構成するガラス板60と上下のドアベース61、66、及びドア6の背面と上下左右面を構成するフレーム62で外郭を形成した箱体である。ドア6には、箱体の空間を前後方向に仕切る仕切部材64が設けられている。本実施例では、箱体内に仕切部材64によって仕切られた2つの略平板状の内部空間(第1の隙間64a、第2の隙間64b)を形成している。また、仕切部材64には、本体の前後方向に貫通した開口部(図示なし)が形成され、この開口部を覆うようにファン69を設けている。本実施例のファン69は、軸流ファンであり、本体の正面側から後方に向かって空気を流す配置となっている。また、ファン69は、本体1の制御基板に接続され、駆動の有無、ファン回転数などが制御される。
【0031】
以下、各々の詳細を説明する。
【0032】
ガラス板60は、平面状の部材で、上下のドアベース61、66で挟んでフレーム62に固定されている。
【0033】
ドアベース61は、ガラス板60の下端を支持する耐熱樹脂製の部材であり、前面にハンドル6aと吸気口61aを設けたものである。図7では、吸気口61aを表示するために、ハンドル6aの中央部を破断した状態としている。
【0034】
ドアベース66は、ガラス板60の上端を支持する耐熱樹脂製の部材である。ドアベース61を樹脂材料とすることで、ハンドル6aや吸気口61aを任意の形状に成型することができ、ドア6の組立性やデザイン性などの改良が容易となる。なお、ドア6を開閉する際に使用者が把持するハンドル6aの内側に、第1の隙間64aに連通する風路の入口となる吸気口61aを成型している。このため、吸気口61aに向かう外気の流れによって、使用者が触れるハンドル6aが効果的に冷却される。
【0035】
フレーム62は、金属薄板の上下左右の端を折り曲げることで、前側が開放し、後側と上下左右面が閉塞した、前後方向に所定の厚みを持った箱状に形成されている。フレーム62の左右面の上端には、第2の隙間64bに連通する風路の出口となる排気口62aを設けている。吸気口61aは仕切部材64より前方の空間の外郭に設けられ、排気口62aは仕切部材64より後方の空間の外郭に設けられている。
【0036】
つまり、第1の隙間64aに吸気口61a、第2の隙間64bに排気口62aを設けており、本体1を正面視した状態において、ファン69を挟んで下方に吸気口61a、上方に排気口62aが配置され、ファン69を挟んで前方に吸気口61a、後方に排気口62aが配置される。吸気口61aは、排気口62aから排出される温度上昇した空気が入り込み難い配置であることが望ましく、ファン69を挟んで吸気口61aと排気口62aを配置することで、吸気温度の上昇を抑制できる。
【0037】
フレーム62の内側に配置した仕切部材64により、ガラス板60と仕切部材64により構成された第1の隙間64aは、仕切部材64に設けたファン69の上流側(吸込み側)の風路となっている。したがって、ファン69はその駆動により吸気口61aから第1の隙間64aを介して外気を吸引する。
【0038】
また、フレーム62と仕切部材64により構成された第2の隙間64bは、仕切部材64に設けたファン69の下流側(吹出し側)の風路となっている。したがって、ファン69はその駆動により第1の隙間64aを介して吸引した外気を、第2の隙間64bを介して排気口62bから排気する。
【0039】
なお、風路60a内の空気の流動を良くするため、吸気口61aと排気口62aの開口面積をなるべく大きくすることが望ましい。また、吸気口61aをハンドル6aの付け根近傍に設ければ、通常の加熱調理器Zの使用において、吸気口61aを本体の上面視や正面視で視認できない位置となり、加熱調理器Zのデザインに影響を受けない配置となる。
【0040】
上記した、ガラス板60、ドアベース61、66、フレーム62、および、仕切部材64、ファン69から構成されたドア6を利用することで、ガラス板に外気を効率よく供給し、ガラス板60の前面温度を下げた安全性の高いドア6を提供できる。
【0041】
(変形例)
図8は、実施例1の変形例であり、グリル庫を上方から見た上面模式図である。
【0042】
図8に示す変形例は、仕切部材64にファン69を複数(2個)設けている。空気の流れは図6と同様であり、ファン69により、第1の隙間64aと第2の隙間64bを連通している。ファン69を複数個設けることにより、広い面積をもつガラス板60に対し、隅々まで外気を流し易くできる。なお、仕切部材64に設けるファン69の位置は、個数によらず上下、左右対称に配置するとは限らない。つまり、図6に示す1個であっても、フレーム62の温度分布に応じて、例えば本体中央側に寄せるなど、適宜調整することで、ガラス板60の温度が低温かつ均一となる。
【0043】
<ドア6の空気流れ>
次に、ドア6の空気流れにより、ドア6の内部にファン69を設けた構成におけるガラス板60の表面温度低減について説明する。
【0044】
本実施例では、図5図6に示すように、仕切部材64に設置したファン69を挟んで第1の隙間64aと第2の隙間64bが配置されている。このため、ファン69は第1の隙間64aから第2の隙間64bに向かって空気を貫流させる構成となる。また、第1の隙間64aの吸気口61aが、ドア6の下方にあるため、加熱室50の熱気で本体周りの雰囲気温度上昇の影響が少なく、低温の空気を、第1の隙間64aを介してファン69が吸引する。
【0045】
グリル庫5の使用時には、輻射伝熱により、フレーム62や仕切部材64を介してガラス板60まで伝熱されるため、ガラス板60の冷却が必要となる。第1の隙間64aは、ドア6正面の大部分を覆うガラス板60が風路壁面となっており、第1の隙間64aを通る外気が直接ガラス板60に沿って流れるため、広い伝熱面積で効率よくガラス板60を冷却できる。また、第1の隙間64aでガラス板60と熱交換した空気は、ファン69を介して第2の隙間に送風されるため、第1の隙間64aには常に温度が低い外気が供給され、効率よくガラス板60を冷却できる。第2の隙間64bに流入した空気は、加熱室50に近い配置となるフレーム62に沿って排気口62aに向かって流れるため、フレーム62と熱交換して温度上昇した空気をすぐに排気し、フレーム62の温度低減に寄与できる。フレーム62の表面温度が下がることにより、絶対温度の4乗に比例する仕切部材64への放射伝熱量が激減し、ガラス板60の温度がより下げ易い構成となる。
【0046】
ドア6に内蔵するファン69は、肉厚が小さい例えば10mmから20mm程度となるため、ファン自体の送風性能が低いものが一般的である。なお、ファンモータの高速回転により高圧・大風量が可能であるが、騒音が増大するため、搭載させるファンは限定される。
【0047】
本実施例の加熱調理器Zでは、図1に示すように、グリル庫5のドア6を閉めたときに、ガラス板60と操作パネルP2の正面位置が略平面状になる位置関係となるため、ドア6の上下左右に少なくとも1~3mm程度の隙間を設け、ドア6の開閉動作を円滑にしている。
【0048】
グリル庫5での調理を開始すると、500℃以上に熱せられた上ヒータ51や下ヒータ52によって、加熱室50の空気温度も200℃以上に上昇し、それに伴い、加熱室50の壁面と一体成型されたフランジ部50aや、加熱室50の前面開口を覆うドア6のフレーム62も温度上昇する。フレーム62は、熱伝導性の高い金属製であるため、加熱室50内の高温空気からの熱と、フランジ部50aを介した熱と、を受け、加熱室50側の平面だけでなく、左右側面を含む全体の温度が高くなる。
【0049】
フランジ部50aとフレーム62が共に高温になると、両者間の隙間の空気や、フレーム62の側方隙間の空気が温められ、ドア6の周辺の低温外気との大きな温度差を原因とする自然対流(いわゆる煙突効果)により、図5図7に示すような上昇気流98が発生する。
【0050】
図7に示したように、フレーム62の側面上部には第2の隙間64bに連通する排気口62aが配置されているため、フレーム62の側方に上昇気流98が発生すると、第2の隙間64bの空気を排気口62aから外部に誘引する流体力が生じる。このため、排気口62a側の流体力により、第2の隙間64bの上流にあるファン69の負荷が減少し、ファン69の駆動条件が改善される。具体的には、吸気口61aから排気口62aまでの見かけの圧力損失が低減することで、ファン69の送風特性において、動作点圧力が下がることで動作点風量が上がり、ファン69の送風量を増加させることとなる。
【0051】
ファン69の負荷を低減することで、圧力が小さいファンや肉厚の小さいファンであっても、ドア6の内部に収納して、第1の隙間64aから第2の隙間64bに貫流する流れを構成し易くなり、ガラス板60に効率よく外気を供給できることで、温度を下げることができる。
【0052】
以上のように、本実施例では、ドア6に内蔵したファン69を用い、温度が低い外気が流入するファン上流側の第1の隙間64aを、ガラス板60を壁面とした風路で構成し、ファン69を介してガラス板60から離れた第2の隙間64bに吹き出す風路構成としたことで、ガラス板60を効率よく冷却することができる。
【0053】
<グリル調理の動作>
次に、実際のグリル調理中における、ドア6の冷却について、図1から図6を参照しながら具体的に説明する。ここでは、加熱室50の調理パン58に載置された食品57を加熱調理する場合を例に説明する。
【0054】
まず、使用者は、ドア6を前方に引いて加熱室50の前面開口を開放し、食品57を載置した調理パン58を加熱室50に入れた後、操作パネルP2で調理温度や時間を設定し、或いは予め設定された自動調理メニューを設定し、操作パネルP2の調理ボタンを押してグリル調理を開始する。そして、調理の開始とともに、上ヒータ51或いは下ヒータ52が通電し、食品57が加熱される。
【0055】
また、同時にドア6のファン69が駆動し、吸気口61aから外気が第1の隙間64aに流入する。第1の隙間64aでガラス板60に沿って流れた空気は、ファン69を介して第2の隙間64bに貫流し、高温のフレーム62と熱交換して排気口62aから排出される流れを構成する。
【0056】
加熱中は加熱室50の壁面温度が上昇し、その熱気により加熱室のフランジ部50aやドア6のフレーム62の温度も上昇する。この熱気はドア6の周りに上向きの強い上昇気流98を生じさせる。その上昇気流98はフレーム62の外側の隙間を流れる。フレーム62には上昇気流98が流れる隙間に排気口62aを設けており、排気口62aの近傍に速い流れが生じる。このため、排気口62a上流側が負圧となり、上昇気流98により第2の隙間64b内の空気を外側に誘引する流体力を生じさせる。よって、排気口62aでの誘引作用により、ファン69の流動負荷が低減し、効率よく第1の隙間64aから第2の隙間64bに貫流する空気量が確保される。
【0057】
これらの現象は、加熱室50での加熱調理の終了、及び終了後に関しても継続されるため、ファン69による効率の良好なドア6の冷却が継続される。
【0058】
以上で説明したように、本実施例の加熱調理器によれば、ガラス板60を効率よく空冷するファン69の風路を構成しつつ、ドア6の周辺の隙間で発生する上昇気流98を利用してファン69の貫流風量を増加させ、ガラス板60の表面温度を抑えることができる。
【実施例0059】
次に、実施例2の加熱調理器を説明する。なお、実施例1との共通する点について同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0060】
図9は、本発明の実施例2に係るグリル庫を側方から見た側方断面の模式図であり、ハンドル6aと吸気口66aの構造、仕切部材64に設けた貫通穴64cが実施例1と異なる。
【0061】
本実施例では、上方のドアベース66にハンドル6aを設け、ハンドル6aの下方に吸気口66aを設けている。つまり、ファン69を挟んで前後方向に吸気口66aと排気口62aを配置している。ガラス板60の表面温度を下げることで、吸気口66aがドア6の上方であっても吸気温度の上昇が抑えられる。つまり、ハンドル6aと吸気口61aを連動して移動しても、本発明の効果への影響が少なく、デザイン性を考慮してハンドル6aを任意の位置に移動した配置が容易にできる。これにより、ハンドル6aや吸気口66aの配置を自由に選択でき、デザイン性と安全性を両立したドア6を構成できる。
【0062】
また、仕切部材64の貫通穴64cは、第1の隙間64aと第2の隙間64bを連通する微小風路である。これにより、風路内で流れが生じ難い淀み部分の空気を第2の隙間64bから第1の隙間64aに一部逆流させることで、ガラス板60や仕切部材64の温度分布を低減できる。
【実施例0063】
次に、実施例3の加熱調理器を説明する。なお、実施例1との共通する点について同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0064】
図10は、本発明の実施例3に係る加熱調理器の斜視図である。図11は、本発明の実施例3に係るグリル庫を側方から見た側方断面の模式図である。図12は、本発明の実施例3に係るグリル庫を上方から見た上面模式図である。
【0065】
実施例3では、ドア6の開成方法、加熱室50の熱源、及び仕切部材64の形状が実施例1と異なる。また、ファン69を遠心ファンで構成している。遠心ファンは軸流ファンに比べて、圧力が高いため、圧力損失が大きい狭い風路内での使用に向いている。
【0066】
本実施例では、ドア6が例えばオーブンレンジに多く利用される縦開き式となっており、ガラス板60上方のハンドル6aを下方に引いてドア開成を行うものである。よって、ドア6は下方に支点(図示せず)を有し、例えば回動機構6bによりドア6が支持されている。
【0067】
これにより、ファン69と本体1は常時ドア下端で接続されるため、ファン69の配線が容易となり、ドア6の回動による断線などの不具合が生じ難くなる。
【0068】
また、加熱室50の上ヒータ51と下ヒータ52を平面状としており、室内の底面から天井までの高さが増し、有効利用容積が増加している。室内容積が大きければ、様々な調理容器が使えることで、メニューの種類や調理量を増やして使い易くなる。なお、本発明では、加熱室50の仕様に依存せず、ガラス板60の温度上昇を抑制できることは言うまでもない。
【0069】
図11に示すように、実施例3では、第1の隙間64aの吸気口61a側の風路幅、及び第2の隙間64bの排気口62a側の風路幅を広くした構成となっている。なお、これらの形状は、成型できる樹脂などの材料で仕切部材64を構成すれば、より容易に実現される。また、本実施例では吸気口61aをドア6の下面に、排気口62aをドア6の上面に設けている。風路幅を広げることで、吸気口61aと排気口62aの開口面積が広く取り易くなり、通風経路の圧力損失を低減できる。これにより、ファン69に連通する各風路(第1の隙間64a、第2の隙間64b)の通風抵抗を低減できる。また、ファン69の流動負荷が低減され、大風量、低騒音運転が実現できるため、効率よくガラス板60を冷却できる。
【0070】
(変形例)
図13は、実施例3の変形例であり、グリル庫を上方から見た上面模式図である。
【0071】
図13に示す変形例は、第1の隙間64aに連通する吸気口61aと、第2の隙間64bに連通する排気口62aをドア6の底面に配置している。図13では、グリル庫5を上面から見た図であるため、本来であれば吸気口61a及び排気口62aは見えない状態にあるが、説明の都合上、吸気口61a及び排気口62aを記載している。
【0072】
吸気口61aと排気口62aはファン69を挟んで左右に離して設けており、排気口62aから排気した温風を吸気口61aから吸引しないように配慮している。これにより、ドア6の開口部を使用者の見え難い部分に設けてデザイン性を向上できる一方、排気口62aから出る熱風が使用者側に向かう流れを抑制でき、快適性が向上される。
【実施例0073】
次に、実施例4の加熱調理器を説明する。なお、実施例1との共通する点について同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0074】
図14は、本発明の実施例4に係るグリル庫を側方から見た側方断面の模式図である。実施例4では、仕切部材64を成型が容易な例えば樹脂部材で構成し、仕切部材64に加熱室50庫内の情報を検出する情報検出手段67を設けるとともに、吸気口61aと排気口62aをドア6の側面、且つファン69を挟んで上下に配置している。また、第2の隙間64bの後方に第3の隙間63(遮熱層)を配置した構造が実施例1と異なる。また、ファン69を遠心ファンで構成している。情報検出手段67としては、例えば、加熱室50内の食品を撮影するカメラや、食品の温度を検出する赤外線センサが用いられる。
【0075】
本実施例では、樹脂製の仕切部材64によりファン69と情報検出手段67を支持している。また、仕切部材64は、ドア6内の風路(第1の隙間64a、第2の隙間64b)を構成している。仕切部材64を成型が容易な部材で構成すれば、風路(第1の隙間64a、第2の隙間64b)の気密性を向上できる。
【0076】
また、仕切部材64自体の熱伝導率が金属部材に比べて小さいため、第2の隙間64b側から第1の隙間64a側への熱移動を抑制できる。
【0077】
さらに、仕切部材64の表裏に例えばリブなどを成型した凹凸を設け、効率よく温度ムラが生じないように流れをファン69に導風することも容易となる。凹凸は空気の流れに沿うように配置し、空気をファン69に導風するためのガイドとする。
【0078】
さらにまた、ファン69や情報検出手段67の固定も容易となり、組立作業性が向上する。
【0079】
また、ファン69が遠心ファンであることで、冷却対象となる部分、例えば情報検出手段67に向けて積極的に送風ことも可能となる。
【0080】
また、第3の隙間63は、略密閉した空間で構成した遮熱層であり、空気の流動が小さいため対流熱伝達による熱移動が小さく、またフレーム62が金属製で表面放射率が低いことからドア内部での輻射による熱移動を抑えることができる。これにより、ガラス板60の温度上昇を抑えつつ、ドア6の内部にファン69以外の部品を容易搭載できるようになり、ドア6から加熱室50の食品57を観察し、加熱制御に応用ができる。
【0081】
本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1…本体、2…トッププレート、3…加熱コイル、5…グリル庫、6…ドア、6a…ハンドル、6b…回動機構、7…基板、8…基板ケース、50…加熱室、50a…フランジ部、51…上ヒータ、52…下ヒータ、54…網台、55…触媒、56…ドアレール、57…食品、58…調理パン、59…排気ダクト、60…ガラス板、60a…風路、61…ドアベース、61a…吸気口、61b…吸気カバー、62…フレーム、62a…排気口、63…第3の隙間(遮熱層)、64…仕切部材、64a…第1の隙間、64b…第2の隙間、64c…貫通穴、65…パッキン、66…ドアベース、67…情報検出手段、68…隙間(風路)、69…ファン、98…上昇気流、99…空気流れ
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
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図10
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