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特開2023-43402脚立監視装置、脚立、および脚立監視システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043402
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】脚立監視装置、脚立、および脚立監視システム
(51)【国際特許分類】
   E06C 7/18 20060101AFI20230322BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
E06C7/18
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151004
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000144991
【氏名又は名称】株式会社四国総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000180357
【氏名又は名称】株式会社四電工
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 美一
(72)【発明者】
【氏名】毛利 正志
(72)【発明者】
【氏名】村上 博志
(72)【発明者】
【氏名】大井 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】中所 弘至
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 裕司
(72)【発明者】
【氏名】水野 智文
(72)【発明者】
【氏名】岡山 奉年
(72)【発明者】
【氏名】今村 真陽
【テーマコード(参考)】
2E044
5C086
【Fターム(参考)】
2E044AA01
2E044BA05
2E044CA01
2E044CB03
2E044EE06
2E044EE09
2E044EE12
5C086AA22
5C086BA17
5C086CA19
5C086CA21
5C086DA08
5C086FA02
5C086FA11
(57)【要約】
【課題】脚の接地部への作用力を計測することで、使用者が不安全な状態にあることを高精度に把握し、脚立の転倒等の発生を抑制することができる脚立監視装置等を提供する。
【解決手段】脚立監視装置10は、制御装置11と、脚立20の接地部25a~25dへ作用する荷重を測定するための荷重測定器12a~12dと、を有する。制御装置11は、荷重測定器12a~12dによる測定値から、脚立20の使用者が脚立20の何段目の踏ざんに足を置いているかを判断し、使用者の足が置かれている踏ざんに対応する、あらかじめ定められた範囲に基づいて、使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断する。 この構成により、使用者が作業を行う段数に対応した、高精度な判断を制御装置11が行うことができ、脚立20の転倒等の発生を抑制することができる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、
脚立の接地部へ作用する荷重を測定するための荷重測定器と、を有し、
前記制御装置は、
前記荷重測定器による測定値から、
前記脚立の使用者が前記脚立の何段目の踏ざんに足を置いているかを判断し、
前記使用者の足が置かれている踏ざんに対応する、あらかじめ定められた範囲に基づいて、
前記使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断する、
ことを特徴とする脚立監視装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記荷重測定器による測定値から前記使用者による重心点の位置を算出し、
前記重心点の位置が、前記あらかじめ定められた範囲である基準範囲内でない場合を、前記使用者が不安全な状態にあると判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の脚立監視装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記荷重測定器による測定値から前記使用者による重心点の位置を算出し、
前記重心点の重心点移動速度に基づいて、
前記使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の脚立監視装置。
【請求項4】
前記脚立監視装置には、
前記使用者に注意喚起を行うための注意喚起装置が設けられ、
前記制御装置は、前記使用者が不安全な状態にあると判断した場合に、
前記注意喚起装置により、前記使用者に対して注意喚起を行う、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の脚立監視装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の脚立監視装置が備えられている、
ことを特徴とする脚立。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の脚立監視装置と、
前記制御装置からの信号を送受信する監視端末と、を備え、
前記監視端末は、前記使用者が不安全な状態にあるかどうかの信号を受ける、
ことを特徴とする脚立監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚立監視装置、脚立、および脚立監視システムに関する。さらに詳しくは、本発明は、脚立の脚の接地部への作用力を計測するための荷重測定器を有する脚立監視装置、脚立、および脚立監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脚立は、2つのはしごを山形になるように組合せ、自立できることから、手の届かない場所の作業をする際に手軽に用いることができ、作業効率を高めることができる。一方手軽に用いることができることから、安全が確保されずに使用されたときには、脚立そのものが作業中に転倒したり、脚立の使用者が脚立から転落したりする事故が発生することがある。
【0003】
特許文献1では、これらの事故の発生を抑制するための脚立監視装置が開示されている。この脚立監視装置は、脚立の使用中の傾斜角度を計測する角度計測部を備え、所定の値の角度が計測されると警告音を発することで、脚立を使用するものに対して安全を確保し、脚立の転倒および脚立の使用者の転落の発生を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-71064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、角度計測部による角度の計測は、実際に脚立が傾くという状態になって初めて傾斜角度が検出される。この脚立が傾くという状態は、すでに作業が安全に行われている状態ということはできず、脚立の転倒等の発生を抑制することが事実上難しいという問題がある。
【0006】
また、特許文献1には脚立の脚部の接地圧力を計測する圧力計側部が設けられている構成も併せて開示されている。この構成では、圧力計側部からの圧力により平面重心位置を求め、脚部の接地位置が形成する矩形の外側に平面重心位置があると警告をする。しかし、下から一段目など比較的低い位置の踏ざんに足が置かれている際には、その矩形の外側にすぐに平面重心位置が出てしまう一方、より上方の段に足を置いている際には、その矩形の外側に平面重心位置が出ない。すなわち、比較的安全サイドにある低い位置の段に足が置かれている際には、すぐに警告が行われる一方、比較的不安全サイドにある高い位置の段に足が置かれている際には、なかなか警告が行われないという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、脚の接地部への作用力を計測することで、使用者が不安全な状態にあることを高精度に把握し、脚立の転倒等の発生を抑制することができる脚立監視装置、脚立、および脚立監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の脚立監視装置は、制御装置と、脚立の接地部へ作用する荷重を測定するための荷重測定器と、を有し、前記制御装置は、前記荷重測定器による測定値から、前記脚立の使用者が前記脚立の何段目の踏ざんに足を置いているかを判断し、前記使用者の足が置かれている踏ざんに対応する、あらかじめ定められた範囲に基づいて、前記使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断することを特徴とする。
第2発明の脚立監視装置は、第1発明において、前記制御装置は、前記荷重測定器による測定値から前記使用者による重心点の位置を算出し、前記重心点の位置が、前記あらかじめ定められた範囲である基準範囲内でない場合を、前記使用者が不安全な状態にあると判断することを特徴とする。
第3発明の脚立監視装置は、第1発明または第2発明において、前記制御装置は、前記荷重測定器による測定値から前記使用者による重心点の位置を算出し、前記重心点の重心点移動速度に基づいて、前記使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断することを特徴とする。
第4発明の脚立監視装置は、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記脚立監視装置には、前記使用者に注意喚起を行うための注意喚起装置が設けられ、前記制御装置は、前記使用者が不安全な状態にあると判断した場合に、前記注意喚起装置により、前記使用者に対して注意喚起を行うことを特徴とする。
第5発明の脚立は、第1発明から第4発明のいずれかの脚立監視装置が備えられていることを特徴とする。
第6発明の脚立監視システムは、第1発明から第4発明のいずれかの脚立監視装置と、前記制御装置からの信号を送受信する監視端末と、を備え、前記監視端末は、前記使用者が不安全な状態にあるかどうかの信号を受けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、制御装置が、荷重測定器による測定値から、脚立の使用者が脚立の何段目に足を置いているかを判断したあと、使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断することにより、使用者が作業を行う段数に対応した、高精度な判断を制御装置が行うことができ、脚立の転倒等の発生を抑制することができる。また、この脚立監視装置が備えられている脚立を、作業安全のための研修機材等として使用することも可能である。
第2発明によれば、制御装置が、使用者が作業を行う段数に応じて、使用者による重心点を算出し、この重心点が基準範囲内でない場合を、使用者が不安全な状態にあると判断することにより、重心点は比較的単純な計算により求めることができるので、その判断が短時間で行われる。
第3発明によれば、重心点移動速度を、制御装置の判断のためのパラメータに加えることで、使用者が不安全な状態にあるかどうかを、より適正に判断することができる。
第4発明によれば、制御装置が、使用者が不安全な状態にあると判断した場合に、注意喚起装置により、使用者に対して注意喚起を行うので、脚立の使用者が不安全な状態にあると容易に判断でき、脚立の転倒等の発生を、より抑制することができる。また、不安全な状態にある場合は、警告ブザー等により脚立の使用者だけでなく、その周辺にいる者にその状態を知らせることができる。
第5発明によれば、脚立が第1発明から第4発明のいずれかの脚立監視装置を備えていることにより、脚立の使用に伴い、常時使用者が不安全な状態にあるかを監視することができ、脚立の転倒等の発生を抑制することができる。
第6発明によれば、脚立監視システムが、制御装置からの信号を送受信する監視端末を有することにより、監視端末から離れた位置にある脚立の状況を把握することができ、例えばビルの中の範囲が広いエリアで複数の脚立が使用された場合でも、遠隔から複数の脚立の使用状況を監視し、脚立の転倒等の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る脚立監視装置のブロック構成図である。
図2図1の脚立監視装置が搭載された脚立の斜視図である。
図3】(A)図1の脚立監視装置が搭載された脚立の正面図である。(B)図1の脚立監視装置が搭載された脚立の側面図である。
図4図1の脚立監視装置が搭載された脚立の正面方向からの部分断面拡大図である。
図5図1の脚立監視装置を備えた脚立監視システムのブロック構成図である。
図6図1の脚立監視装置における重心点の位置等の算出方法の説明図である。
図7図1の脚立監視装置における第1動作フロー図である。
図8図1の脚立監視装置における第2動作フロー図である。
図9図1の脚立監視装置における第3動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための脚立監視装置、脚立および脚立監視システムを例示するものであって、本発明は脚立監視装置、脚立および脚立監視システムを以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0012】
(脚立監視装置10)
図1には、本発明の一実施形態に係る脚立監視装置10のブロック構成図を、図2には脚立監視装置10が搭載された脚立20の斜視図を示す。脚立監視装置10は、使用者によって使用されている脚立20の状態を監視する装置である。脚立20の状態とは、その脚立20が転倒する危険、または使用者が転落する危険があるなど、不安全な使用の可能性があるかどうかの状態を言う。脚立監視装置10は、マイクロコンピュータからなる制御装置11と、脚立20の接地部25a~25dへ作用する荷重を測定するための荷重測定器12a~12dと、を有する。そして、制御装置11はまず、荷重測定器12a~12dによる測定値から、脚立20の使用者が、脚立20の何段目の踏ざんに足を置いているかを判断する。そして、その足の置かれている踏ざんに応じて選択される、あらかじめ定められた範囲に基づいて、使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断する。
【0013】
本実施形態に係る脚立監視装置10は、制御装置11と、4つの荷重測定器12a~12dと、を有する。図1における、制御装置11と4つの荷重測定器12a~12dとの間の実線は、これらの機器が電気的に接続されていることを示している。加えて脚立監視装置10は、警告ブザー14と、警告LED15と、電池16と、環境計測部17と、を有する。これらの機器は、制御装置11と電気的に接続されている。なお、本実施形態では、制御装置11とこれらの機器は、有線で接続されているが、これに限定されない。例えば無線で接続している場合もある。
【0014】
本実施形態に係る脚立監視装置10は、筐体13を有する。本実施形態では、この筐体13は、脚立20の左天板24fの下方に設置されている。そしてこの筐体13の内部に制御装置11、警告ブザー14、警告LED15、電池16が設けられている。
【0015】
本実施形態において制御装置11は、専用のマイクロコンピュータである。ただしこれに限定されない。制御装置11は、荷重測定器12a~12dから、荷重の測定値を定期的に取得する。制御装置11は、荷重の測定値を記憶する記憶装置を有する。この記憶装置は、マイクロSDなど交換可能なものが好ましい。
【0016】
本実施形態において警告ブザー14は、制御装置11からの信号により警告音を発する。すなわち警告ブザー14は、音により脚立20の使用者に対して注意喚起を行うための注意喚起装置の一つである。この警告ブザー14は、使用者の状態の不安全の程度に応じて複数の異なる警告音を発することができる。また、本実施形態において警告LED15は、制御装置11からの信号により、使用者の状態の不安全の程度を表示する。電池16は、制御装置11等の電源であり、交換可能な形態となっている。
【0017】
本実施形態において警告LED15は、制御装置11からの信号により警告を行う。すなわち警告LED15は、表示により脚立20の使用者に対して注意喚起を行うための注意喚起装置の一つである。この警告LED15は、使用者の状態の不安全の程度に応じて、警告LED15を点滅させたり、点灯させたりすることができる。加えて、その色または表示を変更することも可能である。
【0018】
本実施形態において、荷重測定器12a~12dは、脚立20の接地部25a~25dへ作用する荷重を測定する。本実施形態で、荷重測定器12a~12dは、ひずみ計を用いて構成されている。ただし、接地部25a~25dへ作用する荷重を測定可能であれば他の構成を採用することも可能である。本実施形態において接地部25a~25dは、脚立20の支柱21a、21b、23a、23bの下端に設けられる滑り止め用の部材であり、この滑り止め用の部材に対し、ひずみ計が組み込まれている。
【0019】
本実施形態において、環境計測部17は、筐体13の外側に設けられている。本実施形態において環境計測部17は、脚立監視装置10が置かれている環境の気温、湿度、照度、騒音、塵埃の有無を計測することが可能である。
【0020】
(脚立20)
本実施形態に係る脚立監視装置10が備えられている脚立20について説明する。図3(A)は、この脚立20の正面図、図3(B)は、その側面図であり、図4は脚立20の上端部付近を拡大した、正面方向からの部分断面図である。なお本稿においては、図3(A)の紙面における奥行方向を前後とし、手前側を前と表現する。加えて図3(B)の紙面における奥行方向を左右方向とし、この図に向かって右側を右、左側を左と表現する。
【0021】
この脚立20は、前はしご23と、後はしご21とを、山形になるように開き留め具などで固定することで構成されている。後はしご21は、後右支柱21aと後左支柱21bとを有し、これらの間に5つの後踏ざん22a~22eを有している。後踏ざん22a~22eは、下から後第1踏ざん22a、後第2踏ざん22b、後第3踏ざん22c、後第4踏ざん22d、後第5踏ざん22eとなっている。また後はしご21は、最上部に後天板22fを有する。なお、この脚立20の踏ざん22a~22eは5つであったが、個数は5つに限定されない。同じように、前はしご23は、前右支柱23aと前左支柱23bとを有し、その間に5つの前踏ざん24a~24eを有している。前踏ざん24a~24eは、下から前第1踏ざん24a、前第2踏ざん24b、前第3踏ざん24c、前第4踏ざん24d、前第5踏ざん24eとなっている。また前はしご23は最上部に前天板24fを有する。
【0022】
脚立20は、前天板24fの下側に脚立監視装置10の筐体13が設けられている。また、脚立20の接地部25a~25dにはそれぞれ荷重測定器12a~12dが備えられている。すなわち第1接地部25aには第1荷重測定器12aが、第2接地部25bには第2荷重測定器12bが、第3接地部25cには第3荷重測定器12cが、第4接地部25dには第4荷重測定器12dが備えられている。それぞれの荷重測定器12a~12dは、電線により筐体13の中に収められている制御装置11と電気的に接続されている。
【0023】
(脚立監視システム30)
図5には、本実施形態に係る脚立監視装置10を備えた脚立監視システム30のブロック構成図を示す。脚立監視システム30は、本実施形態に係る脚立監視装置10と、この脚立監視装置10に備えられている制御装置11からの信号を送受信する監視端末31と、を備え、この監視端末31は、脚立20の使用者が不安全な状態にあるかどうかの信号を受けることができる。監視端末31は、少なくとも第1監視端末31aまたは第2監視端末31bのいずれかであれば問題ない。
【0024】
図5内の脚立監視装置10は、上記の実施形態に係る脚立監視装置10にある構成を含むとともに、端末無線通信部32を有する。この端末無線通信部32は、制御装置11と電気的に接続されているとともに、第1監視端末31aと無線通信を行うことができる。 第1監視端末31aは、例えばスマートフォンが該当する。ただしこれに限定されず、タブレットPC、通常のPCであっても問題ない。この第1監視端末31aは、脚立監視装置10が備えられている脚立20の使用者が不安全な状態にあるかどうかの信号を受けることができるとともに、脚立監視装置10を構成する荷重測定器12a~12dのデータをリアルタイムで受信・解析することができる。併せて、第1監視端末31aは、脚立監視装置10の動作設定を行うこともできる。
【0025】
また、端末無線通信部32は、他の脚立監視装置10a、10bと無線通信を行うことができる。例えばこの無線通信は、マルチホップ無線通信である。このマルチホップ無線通信により、脚立監視装置10は、第2監視端末31bと無線通信を行うことができる。第2監視端末31bは、通常のPCが該当する。ただしこれに限定されず、スマートフォン、タブレットPCであっても問題ない。この第2監視端末31bは、複数の脚立監視装置10、10a、10bと無線通信が可能であり、これら複数の脚立監視装置10、10a、10bから、それぞれの脚立20の使用者が不安全な状態にあるかどうかの信号を受けることができる。また第2監視端末31bは、LANまたはWiFiのネットワークを構成するLTEルータ33を介してインターネット回線に接続することができる。
【0026】
(重心点Gの位置、重心点移動速度GV、そのスカラー量GVsの算出方法)
図6には、脚立監視装置10における重心点Gの位置等の算出の説明図を示す。図6は、脚立20の接地部25a~25dを上から見た平面図である。ここで「重心点G」とは、平面図における、荷重測定器12a~12dによる測定値により算出される、脚立20の使用者の見かけの重心の位置を言う。以下の算出方法は、この重心点Gの位置の算出方法の一例を示すものであり、重心点Gの位置の算出はこの方法に限定されない。ただし重心点Gの位置は、荷重測定器12a~12dの測定値を用いて算出され、脚立20の使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断するために用いられるものである必要がある。
【0027】
図6には、4つの接地部25a~25dと、これらの接地部25a~25dにそれぞれ設けられている荷重測定器12a~12dの位置が示されている。図6の紙面の上側に後はしご21が位置し、下側に前はしご23が位置している。よって脚立20の使用者は、図6の紙面の上側、もしくは下側から脚立20に上ったり下りたりする。なお図6では、4つの接地部25a~25bが形作る四角形は、正方形となっているが、これに限定されない。
【0028】
まず図6の紙面における上部の実線で表された矢印が示すように、X軸とY軸を定める。すなわち、本実施形態では、対角に位置する第2接地部25bと第3接地部25cとを通過する軸をX軸とし、第1接地部25aと第4接地部25dとを通過する軸をY軸と定義する。そして、このX軸とY軸との交点を0とする。そして、ある時間における第1荷重測定器12aの測定値をY2、第2荷重測定器12bの測定値をX1、第3荷重測定器12cの測定値をX2、第4荷重測定器12dの測定値をY1とすると、この場合の重心点G(BX、BY)の位置は以下のように定義される。
【0029】
[数1]
BX=(X2-X1)/(X1+X2+Y1+Y2)
【0030】
[数2]
BY=(Y2-Y1)/(X1+X2+Y1+Y2)
【0031】
X1:第2荷重測定器12bによる測定値
X2:第3荷重測定器12cによる測定値
Y1:第4荷重測定器12dによる測定値
Y2:第1荷重測定器12aによる測定値
【0032】
次に重心点移動速度GVは以下のように求められる。すなわち重心点移動速度GVは、あらかじめ定められた時間の長さに対する重心点Gの移動距離により定義される。図6には、時間t=1からt=9までの間に重心点Gの位置がG1からG9にまで移動している状態を示している。例えばt=8のときからt=9の時に重心点G8が重心点G9へ移動した場合、重心点G8から重心点G9へひかれたベクトルが重心点移動速度GVであり、そのスカラー量GVsは以下の数3により定義される。
【0033】
[数3]
GVs=((BXt+1-BX+(BYt+1-BY1/2
【0034】
BXt+1:時間t+1におけるBXの値
BX:時間tにおけるBXの値
BYt+1:時間t+1におけるBYの値
BY:時間tにおけるBYの値
【0035】
上記の定義により算出された重心点Gの位置、重心点移動速度GVまたは重心点移動速度GVのスカラー量GVsの少なくとも一つにより、制御装置11は脚立20の使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断する。
【0036】
(踏ざん高さの決定方法と、踏ざん高さにおける基準範囲R)
本実施形態における脚立監視装置10では、制御装置11は荷重測定器12a~12dによる測定値から、脚立20の使用者が、脚立20の何段目の踏ざんに足を置いているか(以下、この足を置いている踏ざんの段の高さを「踏ざん高さ」と称する)を判断する。
【0037】
ここで踏ざん高さを決定するために用いる踏ざん高さ係数をFとする。本実施形態ではこのFは、以下の数4により定義される。
【0038】
[数4]
F=┃(X1+Y2-Y1-X2)┃/(X1+X2+Y1+Y2)
【0039】
このFで表される数値は、踏ざん高さの何段目かを表す数値と一次関数として表される。よって、Fが算出されることで、制御装置11は、踏ざん高さ、すなわち脚立20の使用者が脚立20の何段目の踏ざんに足を置いているかを決定することができる。なお、Fの値はばらつきがあるので、Fがあらかじめ定められた範囲にある場合に、制御装置11は、その場合の踏ざん高さを決定する。また脚立20の使用者が、一方の足を脚立20のある踏ざんに置き、もう一方の足をその踏ざんのもう一つ上、またはもう一つ下に置いている場合もある。この場合、使用者の荷重は、主に下の位置にある足にかかるので、制御装置11は、使用者の両方の足、もしくは片方の足のうち下の位置にある足が置いてある踏ざんが踏ざん高さとなる。なお、下から一段目の踏ざんに一方の足を置き、他方を地面に着けている場合、下から一段目の踏ざんに荷重はほとんど付加されないので、この場合制御装置11は、脚立に使用者が乗っていないと判断する。
【0040】
制御装置11は、事前に踏ざん高さに対応した基準範囲Rを記憶装置に記憶する。この基準範囲Rは、少なくとも上記の重心点Gに対するものである。また記憶装置は、事前に踏ざん高さに対応し、あらかじめ定められた重心点移動速度GVまたはそのスカラー量GVsの範囲を記憶する。例えば、図6には重心点Gに対する基準範囲Rが示されている。この場合の基準範囲Rは円形である。制御装置11は、踏ざん高さを決定した後、それに対応する基準範囲Rを用いて、脚立20の使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断する。この基準範囲Rの範囲は、踏ざん高さが高くなるほど小さくなる。
【0041】
(第1動作フロー)
図7には、本実施形態に係る脚立監視装置10の第1動作フロー図を示す。なお、動作フロー図には、主な動作のみを記載し、他の動作は記載を省略している。また以下の記載ではステップ001などの記載は、S001のような形で記載する。
【0042】
S001において、脚立監視装置10の制御装置11は、4つの荷重測定器12a~12dにより接地部25a~25dへ作用する荷重を測定する。制御装置11は、荷重測定器12a~12dの各数値から、制御装置11の記憶装置に記憶されている、脚立20そのものの重量分を減算することで、脚立20の使用者による荷重を算出することができる。
【0043】
S002において、制御装置11は、4つの荷重測定器12a~12dから算出される荷重が、あらかじめ定められた荷重以下の場合は、使用者がまだ前第1踏ざん24a等に荷重をかけていないと判断し、現在の荷重測定器12a~12dの数値を、脚立20そのものの重量として制御装置11内の記憶装置に記憶させる。そして、次の制御サイクルでは、この新たに記憶装置に記憶された脚立20そのものの重量分として、S001にて荷重測定器12a~12dの数値から減算する。
【0044】
S003において、制御装置11は、踏ざん高さの決定を行う。「踏ざん高さの決定を行う」とは、脚立20の使用者が、脚立20の何段目の踏ざんに足を置いているかを判断することを言う。この踏ざん高さの決定は様々な方法で行うことが可能であるが、例えば、本明細書の中で示した踏ざん高さの決定方法で決定することが可能である。
【0045】
S004において、制御装置11は、重心点Gの位置の算出を行う。ここで「重心点G」とは、平面図における、荷重測定器12a~12dによる測定値により算出される、脚立20の使用者の見かけの重心を言う。ただし重心点Gの位置は、荷重測定器12a~12dの測定値を用いて算出され、脚立20の使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断するために用いられるものである必要がある。重心点Gの位置の算出方法は、様々な方法があるが、例えば、本明細書の中で示した重心点Gの位置の算出方法で算出することが可能である。
【0046】
S005において、制御装置11は、算出された重心点Gの位置が基準範囲R内にあるかどうかを判断する。この基準範囲Rは、S003において決定された踏ざん高さごと対応するものが、すでに制御装置11内の記憶装置に記憶されており、制御装置11はその踏ざん高さごとに対応した基準範囲Rを選択する。本実施形態では、この基準範囲Rは、例えば図6にあるようにX軸とY軸との交点を中心とした円として表されているが、特にこれに限定されない。例えば、楕円形状になる場合もある。制御装置11は、重心点Gの位置が基準範囲R内にない、例えば基準範囲Rよりも外側にある場合に、警告ブザー14により警告音を発したり、警告LED15に警告を表示したりする。制御装置11は、重心点Gの位置が基準範囲R内であれば、S006に移り、警告を行うことなく、サイクルを継続する。
【0047】
制御装置11が、荷重測定器12a~12dによる測定値から、脚立20の使用者が脚立20の何段目に足を置いているかを判断したあと、使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断することにより、使用者が作業を行う段数に応じた高精度な判断を制御装置11が行うことができ、脚立20の転倒等の発生を抑制することができる。また、本実施形態の脚立監視装置10を備えた脚立20を作業安全のための研修機材等として使用することも可能である。
【0048】
制御装置11が、使用者による重心点Gを算出し、この重心点Gが基準範囲R内でない場合を、使用者が不安全な状態にあると判断することにより、重心点Gは比較的単純な計算により求めることができるので、その判断が短時間で行われる。
【0049】
制御装置11が、使用者が不安全な状態にあると判断した場合に、注意喚起装置により、使用者に対して注意喚起を行うことにより、脚立20の使用者が不安全な状態にあると容易に判断でき、脚立20の転倒等の発生を、より抑制することができる。また、不安全な状態にある場合は、警告ブザー14等により脚立20の使用者だけでなく、その周辺にいる者にその状態を知らせることができる。
【0050】
なお、S005において、制御装置11は、重心点Gの位置が基準範囲R内にない、例えば基準範囲Rのさらに内側にある場合にも警告を行う場合がある。例えば基準範囲Rが、中心が同じ2つの同心円の間の領域である場合であって、重心点Gの位置が内側の同心円のさらに内側に位置している場合、制御装置11は重心点Gの位置が基準範囲R内にないと判断し、警告を行う。なお、重心点Gの位置が内側の同心円のさらに内側に位置している場合とは、脚立20の使用者が天板22f、24fの上に上っている場合、または脚立20の使用者が、天板22f、24fを挟んで後はしご21および前はしご23の両方に足をかけ、跨っている場合が該当する。使用者が天板22f、24fの上に乗る、または、後はしご21および前はしご23の両方に足をかけ、跨る動作は、使用上危険な行為として禁止されており、そういった場合も使用者が不安全な状態にあると判断することができる。
【0051】
(第2動作フロー)
図8には、本実施形態に係る脚立監視装置10の第2動作フロー図を示す。第2フローのS101~S103は、第1フローのS001~S003と同じであるので説明を省略する。
【0052】
S104において、制御装置11は、重心点移動速度GVのスカラー量GVsの算出を行う。重心点移動速度GVは、あらかじめ定められた時間における重心点Gの移動距離により定義される。ただし重心点移動速度GVは、荷重測定器12a~12dの測定値を用いて算出され、脚立20の使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断するために用いられるものである必要がある。重心点移動速度GVの算出方法は、様々な方法があるが、例えば、本明細書の中で示した重心点移動速度GVのスカラー量GVsの算出方法により重心点移動速度GVは算出される。またこの重心点移動速度GVからそのスカラー量GVsは算出される。
【0053】
S105において、制御装置11は、算出された重心点移動速度GVのスカラー量GVsがあらかじめ定められた範囲内にあるかどうかを判断する。この範囲は、S103において決定された踏ざん高さごとに対応するものが、すでに制御装置11内の記憶装置に記憶されており、制御装置11はその踏ざん高さごとに対応した範囲を選択する。制御装置11は、スカラー量GVsがあらかじめ定められた範囲内にない、例えばその範囲よりも大きい値である場合に、警告ブザー14により警告音を発したり、警告LED15に警告を表示したりする。制御装置11は、重心点Gの位置が基準範囲R内であれば、S106に移り、警告を行うことなく、制御サイクルを継続する。
【0054】
制御装置11が重心点移動速度GVに基づく判断を行うことにより、制御装置11の判断のためのパラメータが増えるので、使用者が不安全な状態にあるかどうかを、より適正に判断することができる。
【0055】
(第3動作フロー)
図9には、本実施形態に係る脚立監視装置10の第3動作フロー図を示す。第3フローのS201~S203は、第1フローのS001~S003と同じであるので説明を省略する。
【0056】
S204において、制御装置11は、重心点Gの位置、および重心点移動速度GVのスカラー量GVsの算出を行う。重心点Gの位置、および重心点移動速度GVのスカラー量GVsは、第1フローおよび第2フローで説明したものと同じである。
【0057】
S205において、制御装置11は、算出された重心点Gの位置が基準範囲R内にあるか、および重心点移動速度GVのスカラー量GVsがあらかじめ定められた範囲内にあるかどうかを判断する。すなわち制御装置11は、これら二つのパラメータを使用して、警告を行うかどうかを判断する。例えば制御装置11は、重心点Gの位置が基準範囲Rの外側にある場合、3500Hzの警告音を警告ブザー14から1度発する。加えて、制御装置11は、重心点移動速度GVのスカラー量GVsが、あらかじめ定められた範囲を上回った場合、2450Hzの警告音を警告ブザー14から2度発する。さらに制御装置11は、重心点Gの位置が基準範囲Rの内側にある場合、3000Hzの警告音を警告ブザー14から3度発する。なお警告の行い方は、この方法に限定されることはない。重心点Gの位置が基準範囲R内にあり、かつ重心点移動速度GVのスカラー量GVsがあらかじめ定められた範囲内にあるときは、制御装置11は、警告を行わず制御サイクルを継続する。
【0058】
(その他)
第2フローおよび第3フローにおいては、重心点移動速度GVのスカラー量GVsを用いて、制御装置11は使用者が不安全な状態にあるかどうかを判断したが、重心点移動速度GVを用いて判断することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本稿においては、実施形態としてはしごに兼用できる兼用脚立を用いて脚立監視装置10を説明したが、専用脚立、足場台脚立、三脚脚立についても本願の脚立監視装置10は使用可能である。三脚脚立などの場合、重心点Gの算出に用いられる荷重測定器12は3個になる。
【符号の説明】
【0060】
10 脚立監視装置
11 制御装置
12 荷重測定器
20 脚立
30 脚立監視システム
G 重心点
GV 重心点移動速度
GVs 重心点移動速度のスカラー量
R 基準範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9