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2023-43404ガス消費予測システムおよびガス消費予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043404
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】ガス消費予測システムおよびガス消費予測方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230322BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230322BHJP
   G16Y 10/35 20200101ALI20230322BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/04
G16Y10/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151008
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 真純
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 崇士
(72)【発明者】
【氏名】白澤 忠徳
(72)【発明者】
【氏名】上田 高寛
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】需要家宅の将来的なガス使用量の予測の精度を従来よりも向上することが可能なガス消費予測システムおよびガス消費予測方法を提供する。
【解決手段】ガス消費予測システムは、需要家宅に設置され、複数の需要家宅の各々のガス使用量を計測する計測部と、需要家宅毎のガス使用量を所定周期で計測部から収集する収集部と、ガス使用量の収集期間における需要家宅によるガスの使用状況に基づいて、複数の需要家宅の各々をそれぞれ複数のグループの一に分類する分類部と、分類部により分類された各グループに対応するロジックに基づき、収集部による最後の収集の日以降のガス使用量を需要家宅毎に予測する予測部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家宅に設置され、複数の需要家宅の各々のガス使用量を計測する計測部と、
前記需要家宅毎のガス使用量を所定周期で前記計測部から収集する収集部と、
前記ガス使用量の収集期間における前記需要家宅によるガスの使用状況に基づいて、前記複数の需要家宅の各々をそれぞれ複数のグループの一に分類する分類部と、
前記分類部により分類された各前記グループに対応するロジックに基づき、前記収集部による最後の収集の日以降のガス使用量を前記需要家宅毎に予測する予測部と、を備える、ガス消費予測システム。
【請求項2】
前記分類部は、前記ガスの使用状況として前記収集期間におけるガス使用が無い日数およびガス使用が有る日数に基づいて前記分類を行う、請求項1に記載のガス消費予測システム。
【請求項3】
前記予測部は、人工知能機能を有すると共に、前記収集部で収集された前記需要家宅毎のガス使用量をインプットとして前記人工知能機能により前記ガス使用量を予測する、請求項1又は2に記載のガス消費予測システム。
【請求項4】
前記予測部は、日付に基づく情報を基に前記ガス使用量を予測する、請求項1乃至3の何れか1項に記載のガス消費予測システム。
【請求項5】
前記予測部は、前記需要家宅の所在地に基づく情報および前記需要家宅が位置する地域に基づく情報のうち少なくとも一つの情報を基に前記ガス使用量を予測する、請求項1乃至4の何れか1項に記載のガス消費予測システム。
【請求項6】
前記予測部は、前記需要家宅が保有するガス機器の情報、前記需要家宅の家族情報、および前記需要家宅の職業情報のうち少なくとも一つを有する需要家宅特定情報を基に前記ガス使用量を予測する、請求項1乃至5の何れか1項に記載のガス消費予測システム。
【請求項7】
需要家宅に設置され、複数の需要家宅の各々のガス使用量を計測し、
前記需要家宅毎のガス使用量を所定周期で収集し、
前記ガス使用量の収集期間における前記需要家宅によるガスの使用状況に基づいて、前記複数の需要家宅の各々をそれぞれ複数のグループの一に分類し、
分類された各前記グループに対応するロジックに基づき、最後の前記収集の日以降のガス使用量を前記需要家宅毎に予測する、ガス消費予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス消費予測システムおよびガス消費予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一定期間におけるガス使用量又はガス残量の変化量を表すトレンドデータを生成し、当該ガス使用量又はガス残量の変化量に応じて上記トレンドデータの収集タイミングを生成する検針データ処理システムが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6263298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の検針データ処理システムは、需要家毎にトレンドデータを生成するものであり且つ一つの需要家の過去データを基に将来的なガス使用量を予測するため、予測のばらつきが大きくなる。そのため、ガス使用量の予測の精度を向上することが課題であった。
【0005】
そこで、本発明は、需要家宅の将来的なガス使用量の予測の精度を従来よりも向上することができるガス消費予測システムおよびガス消費予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス消費予測システムは、需要家宅に設置され、複数の需要家宅の各々のガス使用量を計測する計測部と、前記需要家宅毎のガス使用量を所定周期で前記計測部から収集する収集部と、前記ガス使用量の収集期間における前記需要家宅によるガスの使用状況に基づいて、前記複数の需要家宅の各々をそれぞれ複数のグループの一に分類する分類部と、前記分類部により分類された各前記グループに対応するロジックに基づき、前記収集部による最後の収集の日以降のガス使用量を前記需要家宅毎に予測する予測部と、を備えるものである。
【0007】
本発明に従えば、ガス使用量の収集期間における需要家宅によるガスの使用状況に基づき、分類部によって複数の需要家宅の各々がそれぞれ複数のグループの一に分類される。これにより、ガスの使用傾向が同一又は類似する各需要家宅を一つのグループに分類することができる。すなわち、ガスの使用傾向が似ている需要家宅同士が一のグループに分類される。その上で、各グループに対応するロジックにより将来的なガス使用量が予測される。このように、一つの需要家宅のガス使用状況に基づき当該需要家宅のガス使用量を予測する従来システムとは異なり、一のグループに属する各需要家宅にとって最適且つイレギュラーなガス使用量が除かれた平均的なロジックを用いて予測されるため、予測が偏らずそれ故当該予測の精度が従来よりも向上する。
【0008】
上記発明において、前記分類部は、前記ガスの使用状況として前記収集期間におけるガス使用が無い日数およびガス使用が有る日数に基づいて前記分類を行ってもよい。
【0009】
上記構成に従えば、ガスの使用傾向が同一又は類似する需要家宅同士を分類し易くなる。
【0010】
上記発明において、前記予測部は、人工知能機能を有すると共に、前記収集部で収集された前記需要家宅毎のガス使用量をインプットとして前記人工知能機能により前記ガス使用量を予測してもよい。
【0011】
上記構成に従えば、人工知能に機械学習又はディープラーニングを続けさせることで、ガス使用量についてより信頼性の高い予測を行うことができる。
【0012】
上記発明において、前記予測部は、日付に基づく情報を基に前記ガス使用量を予測してもよい。
【0013】
上記構成に従えば、例えば曜日、祝祭日、季節等の日付情報、つまり日的要因を基に需要家宅のガス使用量が予測される。これにより、ガス使用量の予測の信頼性をより向上することができる。
【0014】
上記発明において、前記予測部は、前記需要家宅の所在地に基づく情報および前記需要家宅が位置する地域に基づく情報のうち少なくとも一つの情報を基に前記ガス使用量を予測してもよい。
【0015】
上記構成に従えば、例えば需要家宅の住所、需要家宅が位置する地域における法的措置(例えば緊急事態宣言等)、或いは需要家宅が位置する地域における天候等の情報、つまり地理的要因を基に需要家宅のガス使用量が予測される。これにより、ガス使用量の予測の信頼性をより向上することができる。
【0016】
上記発明において、前記予測部は、前記需要家宅が保有するガス機器の情報、前記需要家宅の家族情報、および前記需要家宅の職業情報のうち少なくとも一つを有する需要家宅特定情報を基に前記ガス使用量を予測してもよい。
【0017】
上記構成に従えば、需要家宅特定情報として、例えば需要家宅が保有するガス機器の号数の情報、需要家宅の家族構成の情報、又は需要家宅における需要家の職業情報(例えば料理店等の店舗)、つまり需要家宅固有要因を基に需要家宅のガス使用量が予測される。これにより、ガス使用量の予測の信頼性をさらに向上することができる。
【0018】
本発明のガス消費予測方法は、需要家宅に設置され、複数の需要家宅の各々のガス使用量を計測し、前記需要家宅毎のガス使用量を所定周期で収集し、前記ガス使用量の収集期間における前記需要家宅によるガスの使用状況に基づいて、前記複数の需要家宅の各々をそれぞれ複数のグループの一に分類し、分類された各前記グループに対応するロジックに基づき、最後の前記収集の日以降のガス使用量を前記需要家宅毎に予測するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、需要家宅の将来的なガス使用量の予測の精度を従来よりも向上することが可能なガス消費予測システムおよびガス消費予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るガス消費予測システムを示すブロック図である。
図2図1の記憶部に記憶される分類テーブルの例を示す図である。
図3図1の記憶部に記憶される第1付帯情報テーブルの例を示す図である。
図4図1の記憶部に記憶される第2付帯情報テーブルの例を示す図である。
図5図1の記憶部に記憶される第3付帯情報テーブルの例を示す図である。
図6】ロジック生成フローを示すフローチャートである。
図7】予測フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るガス消費予測システムおよびガス消費予測方法について図面を参照しながら説明する。以下に説明するガス消費予測システムおよびガス消費予測方法は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係るガス消費予測システム100を示すブロック図である。また、図2図1の記憶部4に記憶される分類テーブルTbの例を示す図である。図1に示すように、ガス消費予測システム100はセンターサーバ10および複数の需要家宅20を含む。なお、図1では4つの需要家宅20を例示しているが、ガス消費予測システム100において需要家宅20は複数であればよく、3つ以下であってもよく、5つ以上であってもよい。
【0023】
各需要家宅20には、2つのガス容器11と、切替器12と、ガスメータ13と、2つのガス機器14とが設けられる。ガスメータ13が計測部に相当する。また、需要家宅20の例としては、病院、学校、自治体施設、介護施設、一般家庭および商業施設等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ガスを使用し得る建物であれば需要家宅20に包含される。
【0024】
ガス容器11はガスボンベとも呼ばれ、当該ガス容器11内にはLPガス(液化石油ガス)等のガスが充填されている。切替器12は2つのガス容器11のうち一方のガス容器11内のガスが需要家宅20に供給されるようにガス供給路の切り替えを行う。これにより、2つのガス容器11のうち一方のガス容器11内でガス切れが生じても、他方のガス容器11内のガスがガス機器14に供給され得る。
【0025】
上記のガス切れを以下の通り定義する。本実施形態において、使用すべきガス容器11が切替器12により切り替えられれば、切り替えられる前まで使用していたガス容器11はガス切れの状態となっていることを意味する。この場合、切替器12はガス容器11内にかかる圧力の変化を検出してガス容器11を切り替える。具体的には、切替器12はガス容器11内に圧力をかけてガスを充填しており、ガスがなくなれば上記圧力が降下する。切替器12は上記圧力の変化を検出し、当該圧力が降下したタイミングでガス容器11を切り替える。したがって、本実施形態では、切替器12により検出される圧力が降下することをもってガス切れと見做すことができる。この定義は2つのガス容器11のガス切れの各々に適用される。
【0026】
ガスメータ13は各ガス機器14に供給されるガスの流量を測定する。すなわち、ガスメータ13は需要家宅20におけるガス使用量を計測する。なお、ガスメータ13は何らかの異常を検知したときにガス供給路を遮断する等の措置を実行してもよい。また、ガスメータ13は通信部13aを備える。ガスメータ13の通信部13aはセンターサーバ10に対して無線により通信を行う機能を有する。通信部13aとセンターサーバ10との無線通信方式としては、例えばインターネットやLAN、又はLPWA(Low Power Wide Area)等の通信ネットワークを用いることができる。通信部13aは需要家宅20のガス機器14にて使用されたガスの流量の情報(ガス使用量の情報)を定期的にセンターサーバ10に送信する。なお、通信部13aは、ガスメータ13に内蔵せず、外付けの子機として構成し、ガスメータ13と通信するようにしてもよい。
【0027】
ガス機器14は、例えばガスコンロ、ガス給湯器、又はガスファンヒーター等であるが、これらに限定されるものではなく、ガスを消費する機器であればガス機器14に包含される。
【0028】
センターサーバ10は、収集部1と、分類部2と、予測部3と、記憶部4と、通信インターフェース(I/F)5とを含む。センターサーバ10の上記構成要素のうち収集部1、分類部2および予測部3は、CPU(Central Processing Unit)とプログラムを記憶したメモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))とを含むマイクロコントローラ、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により機能的に実現される。また、記憶部4としては、各種メモリ又はハードディスク等を用いることができる。
【0029】
収集部1は、各需要家宅20におけるガスメータ13の通信部13aから通信インターフェース5を介して、需要家宅20のガス機器14にて使用されたガスの流量(ガス使用量)の情報を所定周期(例えば1日周期)で受け取って収集する。また、収集部1はガス使用量の情報を記憶部4に記憶させる。なお、ガスの流量の情報として、例えば当該流量の積算値又はメータ指針値を用いてもよい。
【0030】
記憶部4は、需要家宅20のガス使用量の情報の他に、図3の第1付帯情報テーブルTb、図4の第2付帯情報テーブルTc、および図5の第3付帯情報テーブルTdを記憶する。なお、第1付帯情報テーブルTb、第2付帯情報テーブルTcおよび第3付帯情報テーブルTdについては後で詳述する。
【0031】
分類部2は、ガス使用量の収集期間における需要家宅20によるガスの使用状況に基づき複数の需要家宅20の各々をそれぞれ複数のグループの一に分類する。以下、詳しく説明する。
【0032】
図2図1の記憶部4に記憶される分類テーブルTaの例を示す図である。分類部2は、記憶部4に記憶された需要家宅20毎のガス使用量の情報を読み出し、上記ガスの使用状況として例えば収集期間におけるガス使用が無い日数およびガス使用が有る日数に基づいて分類を行う。詳細には、分類部2は、収集期間におけるガス使用が無い日数およびガス使用が有る日数を基に、当該収集期間における未使用日数の割合(つまり、収集期間の全日数に対するガス使用が無い日数の比率)を需要家宅20毎に算出する。図2では、未使用日数の割合の例として3つのX、YおよびZが示されており、これらのX、YおよびZはそれぞれ範囲を有していてもよい。
【0033】
分類部2は、上記のように算出した未使用日数の割合が図2のX、YおよびZのうち何れに該当するかを判別する。なお、図2では未使用日数の割合の区分けとして3つのX、YおよびZを挙げたが、これに限定されるものではなく、未使用日数の割合の区分けは2つであってもよく、或いは4つ以上であってもよい。
【0034】
次に、分類部2は、読み出した上記ガス使用量の情報から1日の最大使用量を抽出する。そして、分類部2は、抽出した上記1日の最大使用量が図2のA、BおよびCのうち何れに該当するかを判別する。図2では、1日のガス使用量の区分けとして3つのA、BおよびCが示されており、これらのA、BおよびCはそれぞれ範囲を有していてもよい。なお、図2では1日のガス使用量の区分けとして3つのA、BおよびCを挙げたが、これに限定されるものではなく、1日のガス使用量の区分けは2つであってもよく、或いは4つ以上であってもよい。
【0035】
続いて、分類部2は、読み出した上記ガス使用量の情報から1日の平均使用量を算出する。そして、分類部2は、算出した上記1日の平均使用量が図2のL、MおよびNのうち何れに該当するかを判別する。図2では、1日の平均使用量の区分けとして3つのL、MおよびNが示されており、これらのL、MおよびNはそれぞれ範囲を有していてもよい。なお、図2では1日の平均使用量の区分けとして3つのL、MおよびNを挙げたが、これに限定されるものではなく、1日の平均使用量の区分けは2つであってもよく、或いは4つ以上であってもよい。
【0036】
以上の構成によって、分類部2により需要家宅20が未使用日数の割合と1日の最大使用量と1日の平均使用量との組み合わせで決まる一のグループに分類される。なお、上記分類の対象となる需要家宅20は、明らかに消費の仕方が変わっている需要家を取り除いたり、一般家庭なのか、商用業務用なのかを区分して抽出すようにしてもよい。
【0037】
予測部3は、分類部2により分類された各グループに対応するロジック(例えば演算式)に基づき、収集部1による最後の収集の日以降のガス使用量を需要家宅20毎に予測する。詳しくは、予測部3は人工知能3aを有している。予測部3はガスの使用状況に係るデータ(ガス使用量の情報から得られる未使用日数の割合、1日の最大使用量および1日の平均使用量)をインプットとして人工知能3aにより上記最後の収集の日以降のガス使用量を予測する。なお、予測部3の人工知能3aによる上記予測は機械学習又はディープラーニングに基づくものである。
【0038】
本実施形態における予測部3について、より詳細に説明する。上記ロジックは分類部2による分類条件に基づき人工知能3aにより生成され、その後当該ロジックに基づく予測が人工知能3aにより行われる。すなわち、人工知能3aによりロジックの生成プロセスおよび予測プロセスが実行される。ロジックの生成プロセスでは、グループ毎に、学習するための情報(グループに属する需要家宅20から収集されたガス使用量の情報および必要に応じて後述の付帯情報)をインプットとして人工知能3aによる学習が行われることで上記ロジックが生成される。また、予測プロセスでは、特定の需要家宅20から収集されたガス使用量の情報や付帯情報を上記ロジックにインプットすることで、人工知能3aにより上記特定の需要家宅20毎の上記最終の収集日以降のガス使用量が予測される。
【0039】
ここで、上記ロジックの生成プロセスにおいては、ガス使用量の他に、日付に基づく情報、所在地に基づく情報、需要家宅20が保有するガス機器14の情報、需要家宅20の家族情報、および需要家宅20の職業情報のうち少なくとも一つを含む需要家宅特定情報等の付帯情報を付加してロジック生成することも可能である。このようにガス使用量の情報以外にガス消費に影響を与えると考えられる各種付帯情報を含めて人工知能3aに学習させることで、予測精度をさらに向上させることができる。
【0040】
続いて、本実施形態のガス消費予測システム100におけるロジック生成フローと予測フローについて、フローチャートを参照しながら説明する。図6はロジック生成フローを示すフローチャートであり、図7は予測フローを示すフローチャートである。
【0041】
図6に示すように、ガスメータ13は需要家宅20におけるガス使用量を計測する(ステップS1)。次に、収集部1は各需要家宅20におけるガスメータ13の通信部13aから、需要家宅20のガス使用量の情報を所定周期で受け取って収集する(ステップS2)。この場合、ガス使用量の情報として、例えば当該流量の積算値又はメータ指針値を用いてもよい。
【0042】
次いで、収集部1は付帯情報を収集する(ステップS3)。続いて、分類部2はガス使用量の収集期間における需要家宅20によるガスの使用状況および付帯情報に基づき複数の需要家宅20の各々をそれぞれ複数のグループの一に分類する(ステップS4)。
【0043】
次に、予測部3の人工知能3aは分類部2により分類された各グループに対応するロジックを生成する(ステップS5)。
【0044】
続いて、図7に示すように、ガスメータ13は需要家宅20におけるガス使用量を計測する(ステップS11)。次に、収集部1は需要家宅20のガス使用量の情報を収集し(ステップS12)、付帯情報を収集する(ステップS13)。
【0045】
次に、分類部2はガス使用量の収集期間における需要家宅20によるガスの使用状況および付帯情報に基づき複数の需要家宅20の各々をそれぞれ複数のグループの一に分類する(ステップS14)。
【0046】
そして、予測部3の人工知能3aは分類部2により分類された各グループに対応するロジックに基づき、収集部1による最後の収集の日以降のガス使用量を需要家宅20毎に予測する(ステップS15)。
【0047】
なお、ロジック生成プロセスと、予測生成プロセスとで、同じ種類のデータを使う必要がある。即ち、ロジック生成フローと予測フローとで使用するデータのフォーマット(例えば、ガスの消費量、日付、気温、データの区切り方)は同じでデータ自体は異なる。
【0048】
また、予測フローでは予測する基点から過去のデータ(例えば、基点から1年分)を使用し、ロジック生成フローでは予測フローとは異なる期間のデータ(予測フローで使用するデータよりも前のデータである過去1年分のデータ)を使用する。
【0049】
さらに、ロジック生成プロセスの更新は、1年に1回など、定期的に実行されると共に、例えば、大規模な災害や生活様式の変化など、ガス使用量に大きな変化を生じた場合などに適宜実行される。
【0050】
なお、上記付帯情報によるガス使用量への影響については、別途、係数としてテーブル等で与え、予測されたガス使用量を補正するようにしてもよく、上記学習に比して精度は低下するものの、同様の効果を得ることができる。以下、付帯情報による補正を係数で行う方法について、具体例を挙げて説明する。
【0051】
以下の具体例のように、予測部3は、上記ガス使用量を需要家宅20毎に予測する際に付帯情報を加えて用いてもよい。図3図1の記憶部4に記憶される第1付帯情報テーブルTbの例を示す図であり、図4図1の記憶部4に記憶される第2付帯情報テーブルTcの例を示す図であり、図5図1の記憶部4に記憶される第3付帯情報テーブルTdの例を示す図である。
【0052】
図3に示すように、第1付帯情報テーブルTbにおいては、休日係数が需要家宅20の種類毎に定められている。休日係数は、需要家宅20の種類によって平日と休日(土曜日、日曜日および祝祭日)とでガス使用量が異なることを勘案し、平日のガス使用量の平均値を基準として休日のガス使用量の相対的な大きさを需要家宅20毎に定めたものである。
【0053】
例えば、図3に示す通り、病院においては休日のガス使用量は平日のガス使用量よりも少ないことが見込まれるため、病院の休日係数を例えば0.9とすることができる。一方、例えば商業施設においては休日のガス使用量は平日のガス使用量よりも多いことが見込まれるため、商業施設の休日係数を例えば2.2とすることができる。休日係数0.9および休日係数2.2は単なる例示であり、任意に設定することができる。このような構成において、予測部3は上記ロジック(演算式)により予測されるガス使用量のうち休日分に係るガス使用量に対して第1付帯情報テーブルTbの休日係数を乗算してもよい。これによって、信頼性がより向上した予測値を得ることが可能となる。なお、上記休日係数の代わりに、又は休日係数と併せて、例えば季節等を勘案した係数を用いてガス使用量を予測してもよい。
【0054】
続いて、図4に示すように、第2付帯情報テーブルTcにおいては、住所係数、地域係数および天候係数が需要家宅20毎に定められている。第2付帯情報テーブルTcにおけるk1~k8は所定の係数である。住所係数は、例えば平均気温が住所毎に違うことに起因してガス使用量が異なることを勘案して需要家宅20毎に定めたものである。この場合、需要家宅20の住所が例えば九州地方であれば、例えばガス給湯器又はガスファンヒーター等のガス機器14におけるガス消費量は比較的少ないことが見込まれるため、住所係数は比較的小さい数値にすることができる。一方、需要家宅20の住所が例えば北海道であれば、上記ガス機器14におけるガス消費量は比較的多いことが見込まれるため、住所係数は比較的大きい数値にすることができる。
【0055】
また、地域係数は、例えば地域に対する法的措置(緊急事態宣言等)に起因してガス使用量が異なることを勘案して需要家宅20毎に定めたものである。この場合、需要家宅20の地域に緊急事態宣言等の法的措置が発出されていれば、当該需要家宅20における需要家の在宅時間が比較的多くなることが見込まれるため、地域係数は比較的大きい数値にすることができる。一方、需要家宅20の地域に緊急事態宣言等の法的措置が発出されていなければ、当該需要家宅20における需要家の在宅時間は比較的少ないことが見込まれるため、地域係数は比較的小さい数値にすることができる。
【0056】
また、天候係数は、上記住所係数に類似する係数であるが、雨や雪の多い地域とこれらが少ない地域とではガス使用量が異なることを勘案して需要家宅20毎に定めたものである。この場合、需要家宅20の地域が雨や雪の多い地域であれば、ガス機器14におけるガス消費量は比較的多いことが見込まれるため、天候係数は比較的大きい数値にすることができる。一方、需要家宅20の地域が雨や雪の少ない地域であれば、ガス機器14におけるガス消費量は比較的少ないことが見込まれるため、天候係数は比較的小さい数値にすることができる。なお、図4に示すように、需要家宅Aの天候係数について最大値k5と最小値k6とを定め、需要家宅Bの天候係数について最大値k7と最小値k8とを定めることで、近年の顕著な気候変動に応じて各最大値と各最小値を使い分けてもよい。
【0057】
以上のような構成において、予測部3は、上記ロジック(演算式)により予測されるガス使用量に対して、住所係数、地域係数および天候係数のうち少なくとも一つの係数を乗算してもよい。これによって、信頼性がより向上した予測値を得ることが可能となる。
【0058】
或いは、次のような付帯情報を採用してもよい。図5に示すように、第3付帯情報テーブルTdにおいては、号数係数、家族係数および職業係数が需要家宅20毎に定められている。第3付帯情報テーブルTdにおけるk11~k16は所定の係数である。号数係数は、より多くのガスを消費する需要家宅20ほど、より大きなガス容器11の容量に対応する号数のガスメータ13が用いられることを勘案して需要家宅20毎に定めたものである。この場合、ガスメータ13の号数が比較的大きければ、ガス機器14におけるガス消費量は比較的多いことが見込まれるため、号数係数は比較的大きい数値にすることができる。一方、ガスメータ13の号数が比較的小さければ、ガス機器14におけるガス消費量は比較的少ないことが見込まれるため、号数係数は比較的小さい数値にすることができる。
【0059】
また、家族係数は、需要家宅20における家族の構成人数に起因してガス使用量が異なることを勘案して需要家宅20毎に定めたものである。この場合、需要家宅20における家族の構成人数が比較的多ければ、ガス機器14におけるガス消費量は比較的多いことが見込まれるため、家族係数は比較的大きい数値にすることができる。一方、需要家宅20における家族の構成人数が比較的少なければ、ガス機器14におけるガス消費量は比較的少ないことが見込まれるため、家族係数は比較的小さい数値にすることができる。
【0060】
また、職業係数は、需要家宅20における需要家の職業に起因してガス使用量が異なることを勘案して需要家宅20毎に定めたものである。この場合、需要家宅20が例えば料理店等である場合には、ガス機器14におけるガス消費量は比較的多いことが見込まれるため、職業係数は比較的大きい数値にすることができる。一方、需要家宅20が例えば一般家庭等である場合には、ガス機器14におけるガス消費量は比較的少ないことが見込まれるため、職業係数は比較的小さい数値にすることができる。
【0061】
以上のような構成において、予測部3は、上記ロジック(演算式)により予測されるガス使用量に対して、号数係数、家族係数および職業係数のうち少なくとも一つの係数を乗算してもよい。これによって、信頼性がより向上した予測値を得ることが可能となる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、ガス使用量の収集期間における需要家宅20によるガスの使用状況に基づき、分類部2によって複数の需要家宅20の各々がそれぞれ複数のグループの一に分類される。これにより、ガスの使用傾向が同一又は類似する各需要家宅20を一つのグループに分類することができる。すなわち、ガスの使用傾向が似ている需要家宅20同士が一のグループに分類される。その上で、各グループに対応するロジックにより将来的なガス使用量が予測される。このように、一つの需要家宅20のガス使用状況に基づき当該需要家宅20のガス使用量を予測する従来システムとは異なり、一のグループに属する各需要家宅20にとって最適且つイレギュラーなガス使用量が除かれた平均的なロジックを用いて予測されるため、予測が偏らずそれ故当該予測の精度が従来よりも向上する。
【0063】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0064】
上記実施形態では、予測部3の人工知能3aが分類部2により分類された各グループに対応するロジック(演算式)に基づき、収集部1による最後の収集の日以降のガス使用量を予測するように構成したが、これに限定されるものではない。予測部3は上記ロジックとして例えば収集部1による収集データと当該収集データに対応する予測値との関係を示すテーブル又は関数グラフ等を用いて上記ガス使用量を予測してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、ガスメータ13は、需要家宅20のガス機器14にて使用されたガスの流量の情報を無線通信によりセンターサーバ10に送ることとしたが、これに限定されるものではない。ガスメータ13はガスの流量の情報を有線通信によりセンターサーバ10に送る態様としてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、2つのガス容器11および2つのガス機器14を例示したが、これに限定されるものではなく、ガス容器11は1つ又は3つ以上でもよく、ガス機器14は1つ又は3つ以上でもよい。
【0067】
さらに、上記実施形態では、ガス容器11にガスの一例としてのLPガス(液化石油ガス)を充填したが、これに限定されるものではなく、ガス容器11に酸素等の他のガスを充填してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 収集部
2 分類部
3 予測部
3a 人工知能
4 記憶部
10 センターサーバ
11 ガス容器
13 ガスメータ
14 ガス機器
20 需要家宅
100 ガス消費予測システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7