(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043413
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】水質予測装置及び水質予測方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230322BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20230322BHJP
【FI】
G06Q50/06
C02F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151039
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄喜
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 正一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 正佳
(72)【発明者】
【氏名】庭川 誠
(72)【発明者】
【氏名】高▲瀬▼ 信彰
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】データの取得間隔が不定であっても、恣意的なデータ補間を行うことなく、一貫した定式化で処理水質を予測可能なモデルを構築する技術を提供すること。
【解決手段】学習に用いるデータを取得して学習データを生成する学習用データ取得部と、
予測に用いる説明変数データを取得する予測対象データ取得部と、学習データを用いて、予測モデルのパラメータを更新して更新済み予測モデルパラメータを生成する予測モデルパラメータ更新部と、予測モデルパラメータ更新部からの更新済み予測モデルパラメータを記憶する予測モデルパラメータ記憶部と、予測対象データ取得部から取得した予測対象の説明変数データと、予測モデルパラメータ記憶部に記憶されている更新済み予測モデルパラメータと、を用いて将来時刻の処理水質をニューラル常微分方程式で時間発展をさせることにより導出する処理水質予測部と、を備える水質予測装置とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも予測対象から手分析で取得した水質データを蓄積するデータ蓄積部と、
前記データ蓄積部に蓄積されたデータのうち学習に用いるデータを取得して学習データを生成する学習用データ取得部と、
前記データ蓄積部に蓄積されたデータのうち予測に用いる説明変数データを取得する予測対象データ取得部と、
前記学習用データ取得部から取得した前記学習データを用いて、予測モデルのパラメータを更新して更新済み予測モデルパラメータを生成する予測モデルパラメータ更新部と、
前記予測モデルパラメータ更新部からの前記更新済み予測モデルパラメータを記憶する予測モデルパラメータ記憶部と、
前記予測対象データ取得部から取得した予測対象の前記説明変数データと、予測モデルパラメータ記憶部に記憶されている前記更新済み予測モデルパラメータと、を用いて将来時刻の処理水質をニューラル常微分方程式で時間発展をさせることにより導出する処理水質予測部と、を備える水質予測装置。
【請求項2】
予測対象に設置された計測器によりリアルタイムに取得したリアルタイム計測データを所定時間の代表値に加工するとともに、前記リアルタイム計測データの前記代表値と前記予測対象の手分析水質データとをマージしたマージ済みデータを生成するデータ加工部を更に備え、
前記データ蓄積部は、前記水質データとして前記マージ済みデータを蓄積する請求項1に記載の水質予測装置。
【請求項3】
少なくとも予測対象から手分析で取得した水質データを蓄積するデータ蓄積部と、
前記データ蓄積部に蓄積されたデータのうち学習に用いるデータを取得して処理水質予測モデル学習データを生成する処理水質予測モデル学習用データ取得部と、
前記データ蓄積部に蓄積されたデータのうち水質変動予測及び処理水質予測に用いる説明変数データを取得する予測対象データ取得部と、
前記処理水質予測モデル学習用データ取得部から取得した前記処理水質予測モデル学習データを用いて、処理水質予測モデルのパラメータを更新して更新済み処理水質予測モデルパラメータを生成する処理水質予測モデルパラメータ更新部と、
前記処理水質予測モデルパラメータ更新部からの前記更新済み処理水質予測モデルパラメータを記憶する処理水質予測モデルパラメータ記憶部と、
前記データ蓄積部に蓄積されたデータのうち学習に用いるデータを取得して水質変動予測モデル学習データを生成する水質変動予測モデル学習用データ取得部と、
前記水質変動予測モデル学習用データ取得部から取得した前記水質変動予測モデル学習データを用いて、水質変動予測モデルのパラメータを更新して更新済み水質変動予測モデルパラメータを生成する水質変動予測モデルパラメータ更新部と、
前記水質変動予測モデルパラメータ更新部からの前記更新済み水質変動予測モデルパラメータを記憶する水質変動予測モデルパラメータ記憶部と、
前記予測対象データ取得部から取得した予測対象の説明変数データと水質変動予測モデルパラメータ記憶部に記憶されている更新済みの水質変動予測モデルパラメータとを用いて水質変動を導出する水質変動予測部と、
前記予測対象データ取得部から取得した予測対象の前記説明変数データと、前記処理水質予測モデルパラメータ記憶部に記憶されている処理水質予測モデルパラメータと、前記水質変動予測部から取得した水質変動のデータと、を用いて将来時刻の処理水質をニューラル常微分方程式で時間発展をさせることにより導出する処理水質予測部と、を備える水質予測装置。
【請求項4】
少なくとも予測対象から手分析で取得した水質データを蓄積すること、
前記蓄積されたデータのうち学習に用いるデータを取得して学習データを生成すること、
前記蓄積されたデータのうち予測に用いる説明変数データを取得すること、
前記学習データを用いて、予測モデルのパラメータを更新して更新済み予測モデルパラメータを生成すること、
前記更新済み予測モデルパラメータを記憶すること、
前記取得した予測対象の前記説明変数データと、前記更新済み予測モデルパラメータと、を用いて将来時刻の処理水質をニューラル常微分方程式で時間発展をさせることにより導出すること、を含む水質予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理場等に適用される水質予測装置及び水質予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)技術の進歩により、例えば汚水処理施設の施設内各所に設置した計測器によるリアルタイム計測データを運転管理に用いるケースが増えている。
【0003】
従来技術の一例である特許文献1には、制御対象プラントで処理が必要な水質の計測により得られる統計情報と、操作値情報とを入力として、夫々異なるアルゴリズムの複数の推定モデルを用いて処理水質の推定値を算出し、算出した複数の処理水質の推定値を、複数の集約演算モデルから入力情報に基づいて選択した1つの集約演算モデルを用いて集約することで、与えられる状況に応じて複数の推定モデルを適切に、且つ自動で切り替え、又は組み合わせて、高い精度の推定結果を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、水質制御の予測対象である水処理環境は、時々刻々と変化しつつも、時間の前後で繋がりがあることを考慮していない、という問題があった。
更には、上記の従来技術では、入力情報に基づいて複数の推定モデルから選択又は組合せの重み係数を更新しているが、取得間隔が不定である、手分析で取得された水質データが運転判断に支配的であることを考慮していない、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、データの取得間隔が不定であっても、恣意的なデータ補間を行うことなく、一貫した定式化で処理水質を予測可能なモデルを構築する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決して目的を達成する本発明の一態様は、少なくとも予測対象から手分析で取得した水質データを蓄積するデータ蓄積部と、前記データ蓄積部に蓄積されたデータのうち学習に用いるデータを取得して学習データを生成する学習用データ取得部と、前記データ蓄積部に蓄積されたデータのうち予測に用いる説明変数データを取得する予測対象データ取得部と、前記学習用データ取得部から取得した前記学習データを用いて、予測モデルのパラメータを更新して更新済み予測モデルパラメータを生成する予測モデルパラメータ更新部と、前記予測モデルパラメータ更新部からの前記更新済み予測モデルパラメータを記憶する予測モデルパラメータ記憶部と、前記予測対象データ取得部から取得した予測対象の前記説明変数データと、予測モデルパラメータ記憶部に記憶されている前記更新済み予測モデルパラメータと、を用いて将来時刻の処理水質をニューラル常微分方程式で時間発展をさせることにより導出する処理水質予測部と、を備える水質予測装置である。
【0008】
上述の構成において、予測対象に設置された計測器によりリアルタイムに取得したリアルタイム計測データを所定時間の代表値に加工するとともに、前記リアルタイム計測データの前記代表値と前記予測対象の手分析水質データとをマージしたマージ済みデータを生成するデータ加工部を更に備え、前記データ蓄積部は、前記水質データとして前記マージ済みデータを蓄積するとよい。
【0009】
又は、上述の課題を解決して目的を達成する本発明の一態様は、少なくとも予測対象から手分析で取得した水質データを蓄積するデータ蓄積部と、前記データ蓄積部に蓄積されたデータのうち学習に用いるデータを取得して処理水質予測モデル学習データを生成する処理水質予測モデル学習用データ取得部と、前記データ蓄積部に蓄積されたデータのうち水質変動予測及び処理水質予測に用いる説明変数データを取得する予測対象データ取得部と、前記処理水質予測モデル学習用データ取得部から取得した前記処理水質予測モデル学習データを用いて、処理水質予測モデルのパラメータを更新して更新済み処理水質予測モデルパラメータを生成する処理水質予測モデルパラメータ更新部と、前記処理水質予測モデルパラメータ更新部からの前記更新済み処理水質予測モデルパラメータを記憶する処理水質予測モデルパラメータ記憶部と、前記データ蓄積部に蓄積されたデータのうち学習に用いるデータを取得して水質変動予測モデル学習データを生成する水質変動予測モデル学習用データ取得部と、前記水質変動予測モデル学習用データ取得部から取得した前記水質変動予測モデル学習データを用いて、水質変動予測モデルのパラメータを更新して更新済み水質変動予測モデルパラメータを生成する水質変動予測モデルパラメータ更新部と、前記水質変動予測モデルパラメータ更新部からの前記更新済み水質変動予測モデルパラメータを記憶する水質変動予測モデルパラメータ記憶部と、前記予測対象データ取得部から取得した予測対象の説明変数データと水質変動予測モデルパラメータ記憶部に記憶されている更新済みの水質変動予測モデルパラメータとを用いて水質変動を導出する水質変動予測部と、前記予測対象データ取得部から取得した予測対象の前記説明変数データと、前記処理水質予測モデルパラメータ記憶部に記憶されている処理水質予測モデルパラメータと、前記水質変動予測部から取得した水質変動のデータと、を用いて将来時刻の処理水質をニューラル常微分方程式で時間発展をさせることにより導出する処理水質予測部と、を備える水質予測装置である。
【0010】
又は、上述の課題を解決して目的を達成する本発明の一態様は、少なくとも予測対象から手分析で取得した水質データを蓄積すること、前記蓄積されたデータのうち学習に用いるデータを取得して学習データを生成すること、前記蓄積されたデータのうち予測に用いる説明変数データを取得すること、前記学習データを用いて、予測モデルのパラメータを更新して更新済み予測モデルパラメータを生成すること、前記更新済み予測モデルパラメータを記憶すること、前記取得した予測対象の前記説明変数データと、前記更新済み予測モデルパラメータと、を用いて将来時刻の処理水質をニューラル常微分方程式で時間発展をさせることにより導出すること、を含む水質予測方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、データの取得間隔が不定であっても、恣意的なデータ補間を行うことなく、一貫した定式化で処理水質を予測するモデルを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1,2に係る水質予測装置を適用可能な水処理施設の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る水質予測装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、最も単純な常微分ソルバーの例を示す図である。
【
図4】
図4は、forward処理のイメージを示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態1における学習処理及び予測処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態2における予測処理の概要を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る水質予測装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、実施形態2における学習処理及び予測処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
ただし、本発明は、以下の実施形態の記載によって限定解釈されるものではない。
【0014】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係る水質予測装置100を適用可能な水処理施設200の構成を示す図である。
図1に示す水処理施設200は、最初沈殿池1と、反応槽2と、最終沈殿池3と、塩素混和池4と、送風機5と、風量調整バルブ6と、散気装置7と、第1のポンプ8と、第2のポンプ9と、重力濃縮槽10と、機械濃縮槽11と、消化槽12と、脱水槽13と、配管21,22,23,24,25と、を備える。
【0015】
最初沈殿池1は、原水が導入される沈殿池である。
この原水は、有機物を含む排水である。
最初沈殿池1では、原水の固液分離が行われ、最初沈殿池1からの流出水は、配管21を通じて反応槽2に送られる。
最初沈殿池1に沈殿した汚泥である生汚泥は、配管25を通じて重力濃縮槽10に送られる。
【0016】
反応槽2は、微生物を含み、該微生物によって最初沈殿池1からの流出水を浄化する槽である。
反応槽2では、該微生物が最初沈殿池1からの流出水に含まれる有機物を資化することで増殖し、該微生物を用いた生物処理により活性汚泥が形成される。
反応槽2からの流出水は、配管22を通じて最終沈殿池3に送られる。
【0017】
最終沈殿池3は、反応槽2からの流出水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿池である。
最終沈殿池3の上澄みは、配管24を通じて塩素混和池4に送られる。
最終沈殿池3で沈殿した汚泥の一部は、第1のポンプ8によって配管23を通じて反応槽2に戻されて再利用される。
最終沈殿池3で沈殿した残りの汚泥は、余剰汚泥として第2のポンプ9によって機械濃縮槽11に送られる。
塩素混和池4は、最終沈殿池3からの流出水を塩素消毒する混和池である。
塩素混和池4において塩素消毒された処理水は、水処理施設200の外へ放出される。
【0018】
送風機5は、散気装置7に空気を供給する。
風量調整バルブ6は、散気装置7に通した配管に設けられており、開閉により送風量を調整する。
散気装置7は、反応槽2の下部に設けられており、風量調整バルブ6に通された配管に接続されて、風量調整バルブ6によって送風量が調整された空気を反応槽2内に供給する。
このように反応槽2への送風量が調整されると、反応槽2内の溶存酸素量であるDO(Dissolved Oxygen)値が調整され、生物処理の進行が調整される。
【0019】
第1のポンプ8は、最終沈殿池3で沈殿した汚泥の一部を、配管23を通じて反応槽2に送る返送汚泥ポンプである。
第2のポンプ9は、最終沈殿池3で沈殿した残りの汚泥を余剰汚泥として機械濃縮槽11に送る余剰汚泥引抜ポンプである。
【0020】
図1に示す計測点MP1,MP2,MP3は、水質を示す各パラメータを手分析するための水を採水する計測点である。
計測点MP1は、反応槽2の入口に配置されている。
計測点MP2は、反応槽2の出口に配置されている。
計測点MP3は、塩素混和池4の出口に配置されている。
ここで、水質を示す各パラメータとしては、溶存酸素量であるDO値及び浮遊物質濃度であるMLSS(Mixed Liquor Suspended Solids)値を例示することができる。
水処理施設200の運転員は、計測点MP1,MP2,MP3において採水された水の手分析による水質を示す各パラメータを参照することで、制御対象の操作量を決定する。
【0021】
重力濃縮槽10は、最初沈殿池1に沈殿した生汚泥を濃縮処理する槽である。
機械濃縮槽11は、第2のポンプ9によって最終沈殿池3から引き抜かれた余剰汚泥を濃縮処理する槽である。
重力濃縮槽10及び機械濃縮槽11において濃縮された汚泥は、消化槽12に送られる。
【0022】
消化槽12は、濃縮された汚泥の消化処理を行う槽である。
ここで、消化処理は、例えば嫌気性消化処理方式によって行われるとよい。
嫌気性消化処理方式では、嫌気性微生物によって有機性の汚泥が分解される。
消化処理によって分解された汚泥は、脱水槽13に送られる。
【0023】
脱水槽13は、消化処理によって分解された汚泥を脱水することで、汚泥の含水率を低下させて減容化を行う槽である。
【0024】
配管21は、最初沈殿池1と反応槽2との間に配置され、最初沈殿池1からの流出水を反応槽2に送る配管である。
配管22は、反応槽2と最終沈殿池3との間に配置され、反応槽2からの流出水を最終沈殿池3に送る配管である。
配管23は、第1のポンプ8と反応槽2との間に配置され、最終沈殿池3の汚泥の一部を反応槽2に送る配管である。
配管24は、最終沈殿池3と塩素混和池4との間に配置され、最終沈殿池3からの流出水を塩素混和池4に送る配管である。
配管25は、最初沈殿池1と重力濃縮槽10との間に配置され、最初沈殿池1の生汚泥を重力濃縮槽10に送る配管である。
【0025】
図1に示す水処理施設200において、主な操作設定項目は、最初沈殿池1から反応槽2への水量である流入量、反応槽2内に供給される空気量である送風量、第1のポンプ8によって反応槽2に返送される汚泥の量である返送汚泥量、及び第2のポンプ9によって最終沈殿池3から引き抜かれる汚泥の量である余剰汚泥引抜量である。
これらの操作項目の各々は、処理場によって設定が異なる。
【0026】
反応槽2の制御は、例えば、送風量一定制御、比率一定制御及びDO一定制御によって行うことが可能である。
ここで、送風量一定制御は、目標送風量値として設定された一定の送風量となるように行う制御である。
また、比率一定制御は、最初沈殿池1から反応槽2への流入量に応じた送風量となるように、すなわち流入量と送風量との比率が一定となるように行う制御である。
また、DO一定制御は、反応槽2のDO値が設定された目標DO値となるように行う制御である。
【0027】
ここで、制御対象の操作量である操作設定値としては、水処理施設200の最終沈殿池3からの返送汚泥量を調整する第1のポンプ8の回転数、水処理施設200の最終沈殿池3の余剰汚泥引抜量を調整する第2のポンプ9の単位時間あたりの引抜量又は余剰汚泥の引抜時間、水処理施設200の脱水槽13への高分子凝集剤の注入率を例示することができる。
これらの操作設定値は、計測点MP1,MP2,MP3において週に数回程度の頻度で採水した手分析水質データに基づいて、運転員の総合的な判断により決定される。
また、運転員は、上記の手分析水質データに加えて、水処理施設200においてリアルタイムに測定された、全リン、全窒素等の流入及び流出水質、DO値(溶存酸素量)、MLSS値(活性汚泥浮遊物質量)等の反応槽2におけるリアルタイム計測データ、全リン、全窒素等の処理水質を参照してもよい。
【0028】
近年、IoT(Internet of Things)技術の進歩により、水処理施設200のような汚水処理施設等の施設内各所に設置した計測器によるリアルタイム計測データを運転管理に用いるケースが増えている。
しかしながら、現状では、このような計測器自体が高価であるため、限られた箇所への設置に留まり、設置したとしても設置場所又は校正のタイミング等により精度が大きく異なる。
そのため、運転の判断を行う場面では、信頼度の高い、手分析により得られる水質データ等の人的管理で得られるデータへの依存度が高い。
このような手分析で得られる水質データは、汚水処理施設を運用する上で欠かすことのできないデータである。
しかしながら、通常、手分析による水質データの取得は、計測器によるリアルタイム計測データのようにリアルタイムに一定間隔で行われるわけではなく、上述のように、週に数回程度の不定期な間隔で行われる。
一方、予測技術においては、時系列データに対して深層学習を適用することで、高精度な予測を実現した事例が多数報告されている。
特に、汚水処理施設の処理水質のような時系列データを扱う場合、時間の前後関係を考慮するために、状態遷移を扱う深層学習手法として、再帰型ニューラルネットワーク(リカレントニューラルネットワーク)を適用することが一般的である。
リカレントニューラルネットワークを用いることにより、汚水処理施設の運転判断に支配的な、手分析で得られる水質データを高精度に予測することが可能となる。
しかしながら、リカレントニューラルネットワークでは、通常、各状態間の時間間隔は一定であることを前提としており、手分析で得られる水質データのように取得間隔が不定期なデータを扱う場合には、各状態間の間隔が一定になるようなデータ補間を要する。
このとき、欠損したデータをどのように補間するかによって予測精度が大きく変わり、また、どの補間方法が妥当なのかといった判断は、予測モデル設計者に委ねられることになる。
そのため、深層学習自体はデータ駆動型であるものの、予測モデルには恣意的な要素が多分に入り込んでしまい、その予測精度は、予測モデル設計者の技量に依存してしまう。
【0029】
本実施形態に係る水質予測装置100は、これらの操作項目を決める際の将来的な手分析水質データを予測するものであり、予測に、ニューラル常微分方程式の方法を適用するものである。
そして、運転員は、将来的な手分析水質データの予測に基づき、制御対象の操作量である操作設定値を決定する。
このようにして、勘、経験及びノウハウを有していない者を運転員とすることが可能となる。
【0030】
図2は、本実施形態に係る水質予測装置100の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示す水質予測装置100は、データ加工部101と、データ蓄積部102と、学習用データ取得部103と、予測モデルパラメータ更新部104と、予測モデルパラメータ記憶部105と、予測対象データ取得部106と、処理水質予測部107と、を備える。
【0031】
データ加工部101は、予測対象に設置された計測器によりリアルタイムに取得したリアルタイム計測データを所定時間の代表値に加工するとともに、リアルタイム計測データの代表値と予測対象の手分析水質データとをマージしたマージ済みデータを生成する。
なお、データ加工部101は、例えば、計測器によるリアルタイム計測データが用いられず、予測対象の手分析水質データのみが用いられる場合には、水質予測装置100に設けられていなくてもよい。
リアルタイム計測データとしては、流入水量、DO設定値、T-P(放流水)及びT-N(放流水)を例示することができる。
T-P(放流水)は、放流水に含まれる、リン化合物及び有機性リン等のリン化合物の総和の濃度である。
T-N(放流水)は、放流水に含まれる、アンモニア性窒素、硝酸性窒素等の窒素化合物の総和の濃度である。
手分析水質データとしては、BOD(処理水)、NH4-N(処理水)及びPO4-P(処理水)を例示することができる。
BOD(処理水)は、処理水の有機物による水質汚濁の程度を示す値であって、有機物等が微生物によって酸化又は分解される時に消費する酸素の量を濃度で表した値である。
NH4-N(処理水)は、処理水に含まれるアンモニウムイオンをその窒素量で表した値であって、窒素系による汚染の消長を表す指標である。
PO4-P(処理水)は、処理水に含まれるリン酸イオンをそのリンの量で表した値であって、リン系による汚染の消長を表す指標である。
リン酸を含むリン化合物は富栄養化の主要因子であるため、リン酸イオンをそのリンの量で表した値は、汚染の指標の一つである。
【0032】
データ蓄積部102は、少なくとも予測対象から手分析で取得した水質データを蓄積する。
データ加工部101によってマージ済みデータが生成される際には、水質データとしてマージ済みデータを蓄積する。
【0033】
学習用データ取得部103は、データ蓄積部102に蓄積されたデータのうち学習に用いるデータを取得して学習データを生成する。
予測モデルパラメータ更新部104は、学習用データ取得部103から取得した学習データを用いて、予測モデルのパラメータを更新して更新済み予測モデルパラメータを生成する。
予測モデルパラメータ記憶部105は、予測モデルパラメータ更新部104からの更新済み予測モデルパラメータを記憶する。
予測対象データ取得部106は、データ蓄積部102に蓄積されたデータのうち予測に用いる説明変数データを取得する。
処理水質予測部107は、予測対象データ取得部106から取得した予測対象の説明変数データと、予測モデルパラメータ記憶部105に記憶されている更新済み予測モデルパラメータと、を用いて、ニューラル常微分方程式で時間発展をさせることにより、将来時刻の処理水質を導出する。
【0034】
まず、通常のリカレントニューラルネットワークとニューラル常微分方程式の方法との違いについて説明する。
【0035】
通常のリカレントニューラルネットワークによる時系列予測では、各時刻における情報が状態として保持され、状態間の関係がニューラルネットワークで学習される。
これに対し、ニューラル常微分方程式の方法では、状態の時間変化を表す関数をニューラルネットワークにより構成する。
従って、状態間の時間間隔が不揃いなデータに対してリカレントニューラルネットワークを適用すると、時間間隔の長い状態同士の関係及び時間間隔の短い状態同士の関係のいずれも一律に同じ学習パラメータを生成することになり、状態の時間的変化に対して不整合な予測モデルが構築されてしまう。
他方で、ニューラル常微分方程式を用いると、状態間の関係そのものではなく、状態の時間変化を表す関数をニューラルネットワークで構成するため、状態間の時間間隔に依存することなく学習パラメータを生成することができる。
また、一旦、状態の時間変化を表す関数が生成されると、生成された関数に従って時間発展させれば、任意の将来時刻における状態を導出することが可能となる。
すなわち、上記のことを式で表せば、ニューラル常微分方程式では、状態をxで表したとき、下記の微分方程式(1)を満たすfをニューラルネットワークで求め、予測するときにはこのfに従って、下記の式(2)のように積分計算により時間発展させることで初期状態の時刻t0における状態x(t0)から時刻t1における状態x(t1)を導くことができる。
【0036】
【0037】
【0038】
次に、ニューラル常微分方程式における学習処理、すなわち予測パラメータ更新処理について説明する。
一般に、ニューラルネットワークの学習は、forward処理とbackward処理とを、学習データを追加しつつ繰り返し実行することにより行われる。
ここで、forward処理では、予測値の導出を行う。
また、backward処理では、予測値と実測値の誤差を最小化するようにニューラルネットワークの重み係数を更新する。
【0039】
ニューラル常微分方程式における学習処理においても、forward処理とbackward処理とを繰り返しつつ誤差を最小化するように重み係数を決定していく点は同様である。
しかしながら、ニューラル常微分方程式における学習処理においては、forward処理及びbackward処理の双方において、常微分ソルバーを用いる。
常微分ソルバーは、初期状態から与えられた関数に従って時間発展した結果を導出する関数である。
【0040】
図3は、最も単純な常微分ソルバーの例を示す図である。
図3には、時刻t
0における初期状態x
0を関数fに従って、時刻t
1まで時間発展させる常微分ソルバーs(x
0,t
0,t
1,f)が示されている。
なお、
図3に示す例とは異なる常微分ソルバーとして、ルンゲ-クッタ法等の様々なものが提案されているが、本発明においては適宜、適したものを選択すればよく、本発明の常微分ソルバーは
図3に示す例に限定されるものではない。
【0041】
図4は、forward処理のイメージを示す図である。
forward処理では、常微分ソルバーを用いて、入力(初期状態)を、その時点で生成されているニューラルネットワークf[w]に従って導出先の時刻分だけ時間発展させる。
ここで、wは、ニューラルネットワークのパラメータである。
このようにして、一旦、学習が完了して予測モデルが構築されると、任意の時間分だけ時刻を進めた予測結果を導出することが可能である。
【0042】
次に、backward処理について以下に説明する。
一般に、ニューラルネットワークにおけるbackward処理では、ニューラルネットワークのforward処理による予測結果と実測との誤差に対して、勾配降下法を適用することで、ニューラルネットワークのパラメータが更新される。
例えば、入力xに対する目的変数の実測値をyとし、ニューラルネットワークの予測値をΦ[w](x)とし、その誤差を二乗誤差で測るとした場合、誤差関数L(w)は下記の式(3)で表される。
【0043】
【0044】
そして、このとき、勾配降下法によるパラメータの更新式は、下記の式(4)で表される。
【0045】
【0046】
ここでtは、学習パラメータの更新回数を表し、wtとwt+1の誤差が一定の値未満になった時点で学習が終了する。
学習率ηは、1回の更新でパラメータをどの程度更新するのかを調整するパラメータである。
従って、ニューラルネットワークのパラメータwに対する誤差関数Lの微分が計算されると、backward処理を実行することができる。
しかしながら、ニューラル常微分方程式の場合には、forward処理を常微分ソルバーによる時間発展で行っているため、通常のニューラルネットワークのように関数の微分の形で誤差関数Lのパラメータwによる下記の式(5)で表される微分係数を得ることができない。
【0047】
【0048】
そこで、ニューラル常微分方程式の場合には、常微分ソルバーを用いて時間を逆向きに時間発展させることで、パラメータwによる予測結果と実測との誤差である上記の式(5)の微分係数を計算する。
時刻tにおける状態をz(t)とし、その時点におけるニューラルネットワークがパラメータwを用いてf(・、w)で表されるものとして、すなわち、下記の式(6)が成立するとする。
【0049】
【0050】
このとき、上記の式(5)で表される微分係数の計算のために、下記の式(7)に示すPontryaginの随伴ベクトルa(t)を導入する。
【0051】
【0052】
このとき、随伴ベクトルa(t)に関して、下記の式(8),(9)が成立する。
【0053】
【0054】
【0055】
ここで、誤差関数Lのパラメータwに関する微分係数である第2式が求まると、勾配降下法によりbackward処理が可能である。
これは、下記の式(10)に示すb(t)により表すことができる。
【0056】
【0057】
ここで、上記の式(6),(8),(10)に基づいて、時刻t0におけるz(t0),a(t0)、b(t0)を並べて書くと、下記の式(11)で表される。
【0058】
【0059】
ここで、上記の式(11)の右辺に注目する。
a(t0)は、下記の式(12)で表される被積分関数にz(τ)を代入することで求まる。
b(t0)の被積分関数は、a(τ)と下記の式(13)で表される式に、z(τ)を代入することで求まる。
【0060】
【0061】
【0062】
そのため、下記の式(14)に示す3つの被積分関数について常微分ソルバーで微小時間ずつ時間を遡り、z(τ)、a(τ)、b(τ)の順で求めつつ、時刻t1から時刻t0まで時間発展させると、最終的には、下記の式(15)に示す時刻t0における3つの組を得ることができる。
【0063】
【0064】
【0065】
上記の式(15)のうち、b(t0)は、誤差関数Lのパラメータwに関する微分であり、下記の式(16)で表されることから、勾配降下法によるニューラルネットワークのパラメータを更新することができ、backward処理が実行される。
【0066】
【0067】
次に、本実施形態における水質予測方法について説明する。
図5は、本実施形態における学習処理及び予測処理を示すフローチャートである。
学習処理においては、まず、データ加工部101が、計測器により取得したリアルタイム計測データ及び手分析により取得した手分析水質データを予測モデルが学習できる形に加工する(データ加工S11)。
予測対象は、手分析の処理水質であるため、計測器により連続的に取得されたリアルタイム計測データは、例えば一定時間の平均をとるなどして手分析水質データの取得頻度に合わせる形に加工し、手分析水質データとの対応付けを行う。
対応付けられたリアルタイム計測データ及び手分析水質データに対しては、必要であれば正規化処理等を行う。
また、データによっては閾値を設けて大小で二値化する等、データの分布に合わせて加工方法を決定する。
データ蓄積部102は、データ加工部101からのデータを学習処理及び予測処理で用いることができるように蓄積する(データ蓄積S12)。
学習用データ取得部103は、データ蓄積部102に蓄積されたデータから、予測モデル構築に要するデータを取得する(学習対象データ取得S13)。
予測モデルパラメータ更新部104は、取得したデータを用いてニューラル常微分方程式の予測モデルを更新する(予測モデルパラメータ更新S14)。
ここで、更新ロジックの詳細は、上述の通りである。
予測モデルパラメータ記憶部105は、更新済みの予測モデルパラメータを予測時に取得できるように記憶して蓄積する(予測モデルパラメータ蓄積S15)。
【0068】
予測処理においては、まず、予測対象データ取得部106が、データ蓄積部102に蓄積されたデータから予測対象のデータを取得する(予測対象データ取得S21)。
処理水質予測部107は、学習済みの予測モデルパラメータを取得し(予測パラメータモデル取得S22)、取得した予測モデルパラメータを用いて、取得した予測対象のデータを入力として予測したい将来時刻の処理水質をニューラル常微分方程式で時間発展をさせることにより導出することで処理水質予測を行う(処理水質予測S23)。
【0069】
本実施形態によれば、データの取得間隔が不定であっても、恣意的なデータ補間を行うことなく、一貫した定式化で処理水質を予測するモデルを構築することができる。
【0070】
<実施形態2>
本実施形態においては、予測対象の処理水質予測前に、急激な水質変動の有無を分類問題として予測することで、運転判断において重要な水質の急激な変動を考慮した予測を可能とする技術を提供する。
水質データには平常時のデータが多く含まれるため、予測結果として平常時の、変動の少ない予測結果が出力されやすい。
本実施形態においては、水質変動が別モデルとして予測され、処理水質予測時に入力されるため、運転判断において重要な水質の急激な変化を考慮した予測が可能となる。
なお、本実施形態の説明においては、実施形態1と異なる点を説明し、特段の説明を行っていない点については実施形態1の説明を援用する。
【0071】
図6は、本実施形態における予測処理の概要を説明する図である。
処理水質予測時にはリアルタイム計測データ及び手分析水質データに加え、さらに水質変動予測結果の状態、例えばパラメータの急上昇、変化なし又は急降下が入力される。
ただし、本発明において水質変動予測結果の状態は、急上昇、変化なし又は急降下に限定されるものではないし、水質変動予測結果の状態は3つに限定されるものではない。
【0072】
図7は、本実施形態に係る水質予測装置100aの構成を示す機能ブロック図である。
図7に示す水質予測装置100aは、データ加工部101と、データ蓄積部102と、処理水質予測モデル学習用データ取得部103aと、処理水質予測モデルパラメータ更新部104aと、処理水質予測モデルパラメータ記憶部105aと、水質変動予測モデル学習用データ取得部103bと、水質変動予測モデルパラメータ更新部104bと、水質変動予測モデルパラメータ記憶部105bと、予測対象データ取得部106と、処理水質予測部107と、水質変動予測部108と、を備える。
すなわち、
図7に示す水質予測装置100aは、学習用データ取得部103に代えて処理水質予測モデル学習用データ取得部103a及び水質変動予測モデル学習用データ取得部103bを備え、予測モデルパラメータ更新部104に代えて処理水質予測モデルパラメータ更新部104a及び水質変動予測モデルパラメータ更新部104bを備え、予測モデルパラメータ記憶部105に代えて処理水質予測モデルパラメータ記憶部105a及び水質変動予測モデルパラメータ記憶部105bを備える点が、
図2に示す水質予測装置100と異なる。
【0073】
次に、本実施形態における水質予測方法について説明する。
図8は、本実施形態における学習処理及び予測処理を示すフローチャートである。
学習処理においては、まず、データ加工部101が、計測器により取得したリアルタイム計測データ及び手分析により取得した水質データを水質変動予測モデル及び処理水質予測モデルの各々が学習できる形に加工する(データ加工S31)。
水質変動予測モデルについては学習データとして、目的変数を急上昇、変動なし、急降下の3分類に加工する。
ここで、予測対象の処理水質については、前回の手分析水質データとの差分が閾値以上であれば急上昇とし、閾値以下であれば急降下とし、それ以外であれば変化なしとして、3分類に加工する。
予測対象は、手分析の処理水質であるため、計測器により連続的に取得されたリアルタイム計測データは、例えば一定時間の平均をとるなどして手分析水質データの取得頻度に合わせる形に加工し、手分析水質データとの対応付けを行う。
対応付けられたリアルタイム計測データ及び手分析水質データに対しては、必要であれば正規化処理等を行う。
また、データによっては閾値を設けて大小で二値化する等、データの分布に合わせて加工方法を決定する。
データ蓄積部102は、データ加工部101からのデータを学習処理及び予測処理で用いることができるように蓄積する(データ蓄積S32)。
処理水質予測モデル学習用データ取得部103aは、データ蓄積部102に蓄積されたデータから、処理水質予測モデル構築に要するデータを取得し、水質変動予測モデル学習用データ取得部103bは、データ蓄積部102に蓄積されたデータから、処理水質予測モデル構築に要するデータを取得する(学習対象データ取得S33)。
処理水質予測モデルパラメータ更新部104aは、取得したデータを用いてニューラル常微分方程式の処理水質予測モデルを更新し、水質変動予測モデルパラメータ更新部104bは、取得したデータを用いてニューラル常微分方程式の水質変動予測モデルを更新する(予測モデルパラメータ更新S34)。
ここで、更新ロジックの詳細は、実施形態1にて説明した通りである。
処理水質予測モデルパラメータ記憶部105aは、更新済みの処理水質予測モデルパラメータを予測時に取得できるように記憶して蓄積し、水質変動予測モデルパラメータ記憶部105bは、更新済みの処理水質予測モデルパラメータを予測時に取得できるように記憶して蓄積する(予測モデルパラメータ蓄積S35)。
【0074】
なお、本実施形態においては、処理水質予測の前に水質変動予測処理が行われる。
水質変動予測処理においては、まず、予測対象データ取得部106が、データ蓄積部102に蓄積されたデータから水質変動予測対象のデータ及び処理水質予測対象のデータを取得する(予測用データ取得S41)。
水質変動予測部108は、学習済みの水質変動予測モデルパラメータを取得し(変動予測パラメータモデル取得S42)、取得した水質変動予測モデルパラメータを用いて、予測対象データ取得部106が取得した水質変動予測対象のデータを入力として将来時刻の水質変動をニューラル常微分方程式で時間発展をさせることにより導出することで水質変動予測を行う(処理水質変動予測S43)。
処理水質予測部107は、学習済みの処理水質予測モデルパラメータを取得し(処理水質予測パラメータモデル取得S44)、取得した処理水質予測モデルパラメータを用いて、予測対象データ取得部106が取得した処理水質予測対象のデータを入力として将来時刻の処理水質をニューラル常微分方程式で時間発展をさせることにより導出することで処理水質予測を行う(処理水質予測S45)。
【0075】
本実施形態によれば、データの取得間隔が不定であっても、恣意的なデータ補間を行うことなく、一貫した定式化で処理水質を予測するモデルを構築することができるという実施形態1の効果に加えて、運転判断において重要な水質の急激な変動を考慮した予測が可能となる。
【0076】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、上述の構成に対して、構成要素の付加、削除又は転換を行った様々な変形例も含むものとする。
【符号の説明】
【0077】
1 最初沈殿池
2 反応槽
3 最終沈殿池
4 塩素混和池
5 送風機
6 調整バルブ
7 散気装置
8 第1のポンプ
9 第2のポンプ
10 重力濃縮槽
11 機械濃縮槽
12 消化槽
13 脱水槽
21,22,23,24,25 配管
100,100a 水質予測装置
101 データ加工部
102 データ蓄積部
103 学習用データ取得部
103a 処理水質予測モデル学習用データ取得部
103b 水質変動予測モデル学習用データ取得部
104 予測モデルパラメータ更新部
104a 処理水質予測モデルパラメータ更新部
104b 水質変動予測モデルパラメータ更新部
105 予測モデルパラメータ記憶部
105a 処理水質予測モデルパラメータ記憶部
105b 水質変動予測モデルパラメータ記憶部
106 予測対象データ取得部
107 処理水質予測部
108 水質変動予測部
200 水処理施設