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特開2023-43416付着物除去システム、及び付着物除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043416
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】付着物除去システム、及び付着物除去方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/56 20060101AFI20230322BHJP
   F23J 3/00 20060101ALI20230322BHJP
   F28G 7/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
F22B37/56 B
F23J3/00 101A
F28G7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151043
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】岩本 敬弘
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 浩道
【テーマコード(参考)】
3K261
【Fターム(参考)】
3K261GB03
(57)【要約】
【課題】熱交換器の伝熱性能を維持しつつ、圧力波式スートブロワのメンテナンス回数の低減を図ることができる付着物除去システムを提供する。
【解決手段】被燃焼物の燃焼に伴い発生した排ガスから熱回収する熱交換器の伝熱面に付着した付着物を、スートブロワ80の燃焼容器83に充填される燃焼用ガスの燃焼によって発生させた圧力波により除去する付着物除去システム100であって、熱交換器の伝熱性能の基準値を設定する基準値設定部301と、熱交換器の伝熱性能の評価値を算出する評価値算出部302と、燃焼用ガスの充填圧を調整する充填圧調整手段(82,110,303,304,305)とを備え、基準値と評価値との差分が所定以上になった場合、充填圧調整手段(82,110,303,304,305)は、燃焼用ガスの充填圧を増加させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被燃焼物の燃焼に伴い発生した排ガスから熱回収する熱交換器の伝熱面に付着した付着物を、圧力波式スートブロワに充填される燃焼用ガスの燃焼によって発生させた圧力波により除去する付着物除去システムであって、
前記熱交換器の伝熱性能の基準値を設定する基準値設定手段と、
前記熱交換器の伝熱性能の評価値を算出する評価値算出手段と、
前記燃焼用ガスの充填圧を調整する充填圧調整手段とを備え、
前記基準値と前記評価値との差分が所定以上になった場合、前記充填圧調整手段は、前記燃焼用ガスの充填圧を増加させる付着物除去システム。
【請求項2】
前記充填圧調整手段は、前記基準値と前記評価値との差分の変動に応じて、前記充填圧を変動させる請求項1に記載の付着物除去システム。
【請求項3】
前記伝熱性能は、前記排ガスの流量と、前記熱交換器の熱交換量との関係に基づいて定められる性能である請求項1に記載の付着物除去システム。
【請求項4】
前記伝熱性能は、前記排ガスの流量と、前記熱交換器での熱回収前後の前記排ガスの温度差との関係に基づいて定められる性能である請求項1に記載の付着物除去システム。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記排ガスから熱回収することで蒸気を過熱するように構成され、
前記伝熱性能は、前記排ガスの流量と、前記熱交換器の蒸気入口・出口の温度差との関係に基づいて定められる性能である請求項1に記載の付着物除去システム。
【請求項6】
前記伝熱性能は、前記排ガスの流量と、前記熱交換器の熱貫流率との関係に基づいて定められる性能である請求項1に記載の付着物除去システム。
【請求項7】
前記伝熱性能は、前記熱交換器を具備するボイラの蒸発量の設定値と、前記熱交換器の熱交換量との関係に基づいて定められる性能である請求項1に記載の付着物除去システム。
【請求項8】
前記伝熱性能は、前記被燃焼物の投入量と、前記熱交換器の熱交換量との関係に基づいて定められる性能である請求項1に記載の付着物除去システム。
【請求項9】
被燃焼物の燃焼に伴い発生した排ガスから熱回収する熱交換器の伝熱面に付着した付着物を、圧力波式スートブロワに充填される燃焼用ガスの燃焼によって発生させた圧力波により除去する付着物除去方法であって、
前記熱交換器の伝熱性能の基準値を設定する基準値設定工程と、
前記熱交換器の伝熱性能の評価値を算出する評価値算出工程と、
前記燃焼用ガスの充填圧を調整する充填圧調整工程と、
を包含し、
前記基準値と前記評価値との差分が所定以上になった場合、前記充填圧調整工程において、前記燃焼用ガスの充填圧が増加される付着物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被燃焼物の燃焼に伴い発生した排ガスから熱回収する熱交換器の伝熱面に付着した付着物を、圧力波式スートブロワに充填される燃焼用ガスの燃焼によって発生させた圧力波により除去する付着物除去システム、及び付着物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電設備が併設された廃棄物燃焼処理施設等での発電量向上が重要となっている。廃棄物燃焼処理施設等での発電は、燃焼炉での廃棄物の燃焼に伴い発生した高温の排ガスからボイラにて熱回収を行い、所定の温度、圧力の蒸気を生成してタービン発電機に導入することにより行われている。
【0003】
ボイラは、放射室と対流伝熱室とを有している。放射室には、放射伝熱管が放射伝熱面として配設され、対流伝熱室には、例えば、過熱器が対流伝熱面として配設されている。過熱器は、水平方向に伝熱管(過熱管)が複数配設された伝熱管群が高さ方向に複数段配設されて構成されている。
【0004】
燃焼炉からの排ガスには、腐食成分や、重金属類等を含む煤塵(ダスト)が含まれている。このため、運転経過に伴い、ボイラの放射伝熱面や、対流伝熱面に徐々にダストが付着、堆積し、伝熱性能の低下や、ガス流路の閉塞、伝熱管の腐食といった障害を招き、正常な運転の継続が困難な状態に陥ることがある。
【0005】
このような不具合を防止するため、ダスト除去装置としてのスートブロワをボイラに設置し、スートブロワを所定の時間間隔(一定周期)で起動(運転)して、ボイラの伝熱面に付着したダストを除去するようにしている。しかし、伝熱面上のダスト堆積量が少ない場合、スートブロワを運転しても、除去されるダストの量が少ないため、スートブロワの運転に必要な費用に対するダスト除去効果が低い。一方、伝熱面上のダスト堆積量が多い場合、一定周期毎のスートブロワの運転では十分にダストを除去することができず、除去されずに伝熱面上に残置されたダストが、次回のスートブロワの運転までに固化してしまい、スートブロワによるダスト除去が困難になる虞がある。
【0006】
そこで、スートブロワを用いて伝熱面に付着したダストを適切に除去すべく、付着物除去システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
特許文献1には、ボイラの熱貫流率が所定値以上の場合に所定のインターバルを置いてスートブロワを1回運転し、熱貫流率が所定値未満の場合に付着灰判定処理を実行し、その結果に応じてスートブロワを連続運転させるようにした付着物除去システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6761558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された付着物除去システムにおいては、熱貫流率に基づいてスートブロワの1回運転と連続運転とを使い分け、熱貫流率が所定値未満である場合に、付着灰判定処理を実行し、スートブロワを連続運転するか否かを適切に判定するようにしている。このため、スートブロワの連続運転が無駄に行われることを回避できて経済的であり、且つ適切にダスト除去を行うことができるので、過熱器等の熱交換器の伝熱性能を維持することができる。しかしながら、熱貫流率が所定値未満で、且つ所定条件が成立すれば、スートブロワの連続運転が行われることになり、スートブロワの運転回数自体は増加することになる。
【0010】
近年、市場導入されている圧力波式スートブロワにおいて、メンテナンス頻度は、スートブロワの運転回数に依拠している。このため、特許文献1の付着物除去システムでは、メンテナンス費用の増加を招くことになる。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、熱交換器の伝熱性能を維持しつつ、圧力波式スートブロワのメンテナンス回数の低減を図ることができる付着物除去システム、及び付着物除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明に係る付着物除去システムの特徴構成は、
被燃焼物の燃焼に伴い発生した排ガスから熱回収する熱交換器の伝熱面に付着した付着物を、圧力波式スートブロワに充填される燃焼用ガスの燃焼によって発生させた圧力波により除去する付着物除去システムであって、
前記熱交換器の伝熱性能の基準値を設定する基準値設定手段と、
前記熱交換器の伝熱性能の評価値を算出する評価値算出手段と、
前記燃焼用ガスの充填圧を調整する充填圧調整手段とを備え、
前記基準値と前記評価値との差分が所定以上になった場合、前記充填圧調整手段は、前記燃焼用ガスの充填圧を増加させることにある。
【0013】
本構成の付着物除去システムによれば、熱交換器の伝熱性能の基準値(熱交換器の伝熱性能として要求される標準値)が基準値設定手段によって設定される。また、熱交換器の伝熱性能の評価値(熱交換器の現在の伝熱性能の評価結果を数値化したもの)が評価値算出手段によって算出される。設定された基準値と算出された伝熱性能の評価値との差分が所定以上になった場合には、例えば、熱交換器の伝熱面に付着物が過剰に付着・堆積していたり、付着物が強固に付着・堆積していたりすること等が予測される。そこで、圧力波式スートブロワに充填される燃焼用ガスの充填圧を充填圧調整手段によって増加させて、燃焼用ガスの燃焼によって発生される圧力波の威力を増加させる。これにより、従来のようなスートブロワの連続運転に依らずとも、付着物を十分に除去することができる。こうして、伝熱性能を早期に回復させることができるとともに、圧力波式スートブロワの運転回数を低減することができる。従って、熱交換器の伝熱性能を維持しつつ、圧力波式スートブロワのメンテナンス回数の低減を図ることができる。
【0014】
本発明に係る付着物除去システムにおいて、
前記充填圧調整手段は、前記基準値と前記評価値との差分の変動に応じて、前記充填圧を変動させることが好ましい。
【0015】
本構成の付着物除去システムによれば、充填圧調整手段が、設定された基準値と算出された評価値との差分の変動に応じて、充填圧を変動させるので、圧力波の威力を過不足なく適切に増加させることができ、圧力波式スートブロワの運転に必要な費用に対するダスト除去効果のバランスを良くすることができる。
【0016】
本発明に係る付着物除去システムにおいて、
前記伝熱性能は、前記排ガスの流量と、前記熱交換器の熱交換量との関係に基づいて定められる性能であることが好ましい。
【0017】
本構成の付着物除去システムによれば、排ガス流量と、熱交換器の熱交換量との関係に基づいて熱交換器の伝熱性能が定められるので、伝熱性能の基準値を適切に設定することができるとともに、伝熱性能の評価値を適切に算出することができる。
【0018】
本発明に係る付着物除去システムにおいて、
前記伝熱性能は、前記排ガスの流量と、前記熱交換器での熱回収前後の前記排ガスの温度差との関係に基づいて定められる性能であることが好ましい。
【0019】
本構成の付着物除去システムによれば、排ガス流量と、熱交換器での熱回収前後の排ガスの温度差との関係に基づいて熱交換器の伝熱性能が定められるので、伝熱性能の基準値を適切に設定することができるとともに、伝熱性能の評価値を適切に算出することができる。
【0020】
本発明に係る付着物除去システムにおいて、
前記熱交換器は、前記排ガスから熱回収することで蒸気を過熱するように構成され、
前記伝熱性能は、前記排ガスの流量と、前記熱交換器の蒸気入口・出口の温度差との関係に基づいて定められる性能であることが好ましい。
【0021】
本構成の付着物除去システムによれば、排ガスの流量と、熱交換器の蒸気入口・出口の温度差との関係に基づいて熱交換器の伝熱性能が定められるので、伝熱性能の基準値を適切に設定することができるとともに、伝熱性能の評価値を適切に算出することができる。
【0022】
本発明に係る付着物除去システムにおいて、
前記伝熱性能は、前記排ガスの流量と、前記熱交換器の熱貫流率との関係に基づいて定められる性能であることが好ましい。
【0023】
本構成の付着物除去システムによれば、排ガスの流量と、熱交換器の熱貫流率との関係に基づいて熱交換器の伝熱性能が定められるので、伝熱性能の基準値を適切に設定することができるとともに、伝熱性能の評価値を適切に算出することができる。
【0024】
本発明に係る付着物除去システムにおいて、
前記伝熱性能は、前記熱交換器を具備するボイラの蒸発量の設定値と、前記熱交換器の熱交換量との関係に基づいて定められる性能であることが好ましい。
【0025】
本構成の付着物除去システムによれば、熱交換器を具備するボイラの蒸発量の設定値と、熱交換器の熱交換量との関係に基づいて熱交換器の伝熱性能が定められるので、伝熱性能の基準値を適切に設定することができるとともに、伝熱性能の評価値を適切に算出することができる。
【0026】
本発明に係る付着物除去システムにおいて、
前記伝熱性能は、前記被燃焼物の投入量と、前記熱交換器の熱交換量との関係に基づいて定められる性能であることが好ましい。
【0027】
本構成の付着物除去システムによれば、被燃焼物の投入量と、熱交換器の熱交換量との関係に基づいて伝熱性能が定められるので、伝熱性能の基準値を適切に設定することができるとともに、伝熱性能の評価値を適切に算出することができる。
【0028】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る付着物除去方法の特徴構成は、
被燃焼物の燃焼に伴い発生した排ガスから熱回収する熱交換器の伝熱面に付着した付着物を、圧力波式スートブロワに充填される燃焼用ガスの燃焼によって発生させた圧力波により除去する付着物除去方法であって、
前記熱交換器の伝熱性能の基準値を設定する基準値設定工程と、
前記熱交換器の伝熱性能の評価値を算出する評価値算出工程と、
前記燃焼用ガスの充填圧を調整する充填圧調整工程と、
を包含し、
前記基準値と前記評価値との差分が所定以上になった場合、前記充填圧調整工程において、前記燃焼用ガスの充填圧が増加されることにある。
【0029】
本構成の付着物除去方法によれば、基準値設定工程において、熱交換器の伝熱性能の基準値が設定される。また、評価値算出工程において、熱交換器の伝熱性能の評価値が算出される。設定された基準値と算出された伝熱性能の評価値との差分が所定以上になった場合には、例えば、熱交換器の伝熱面に付着物が過剰に付着・堆積していたり、付着物が強固に付着・堆積していたりすること等が予測される。そこで、充填圧調整工程において、圧力波式スートブロワに充填される燃焼用ガスの充填圧を増加させて、燃焼用ガスの燃焼によって発生される圧力波の威力を増加させる。これにより、従来のようなスートブロワの連続運転に依らずとも、付着物を十分に除去することができる。こうして、伝熱性能を早期に回復させることができるとともに、圧力波式スートブロワの運転回数を低減することができる。従って、熱交換器の伝熱性能を維持しつつ、圧力波式スートブロワのメンテナンス回数の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る付着物除去システムを適用する燃焼処理施設の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る付着物除去システムの概略構成を示す模式図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るダスト除去方法において実施されるスートブロワの運転制御の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、熱交換器の伝熱性能に係る排ガス流量と熱交換量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、廃棄物燃焼処理施設の燃焼炉に並設されるボイラ、及び節炭器に適用された付着物除去システム、及び付着物除去方法を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0032】
<廃棄物燃焼処理施設の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る付着物除去システム100(図2参照)を適用する燃焼処理施設1の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、燃焼処理施設1は、主として、被燃焼物受入部2、給じん装置3、燃焼炉4、ボイラ5、及び節炭器6を備えている。この燃焼処理施設1においては、計量機能を有するクレーン(ごみクレーン)10によって被燃焼物(例えば、都市ごみ等の廃棄物)が、被燃焼物受入部2に投入される。被燃焼物受入部2で受け入れられた被燃焼物は、給じん装置3により燃焼炉4内へ供給されて燃焼される。燃焼炉4での燃焼に伴い発生した排ガスは、図示されない誘引ファンの誘引作用により、ボイラ5、及び節炭器6に順次導入されて熱回収される。その後、排ガスは、減温塔(図示省略)で減温され、中和薬剤等と共にバグフィルタ(図示省略)に導入され、バグフィルタにおいて酸性ガス成分や煤塵(ダスト)等が除去された後、脱硝装置(図示省略)に導入され、脱硝処理後に煙突(図示省略)を介して外部へと放出される。なお、燃焼処理施設1には、図示されない発電設備が併設されており、ボイラ5で生成した蒸気が発電設備に導入されることにより発電が行われる。
【0033】
給じん装置3は、被燃焼物受入部2の下方における平板状の床面に沿って往復動されて被燃焼物を押し出すプッシャー7と、プッシャー7を往復駆動する駆動機構8と、駆動機構8を制御する制御盤9とを備え、駆動機構8が制御盤9からの制御信号に基づき制御されることにより、燃焼炉4内への被燃焼物の供給量が制御されるように構成されている。
【0034】
<ボイラ>
ボイラ5は、排ガス流れ方向の上流側から下流側に順に区画形成される、第一放射室11、第二放射室12、及び対流伝熱室13を備えている。
【0035】
第一放射室11は、燃焼炉4の燃焼室に繋がるように鉛直方向に延設されている。第一放射室11と第二放射室12とは、第一変向部15を介して接続されている。第二放射室12は、第一放射室11と隣接するように鉛直方向に延設されている。第二放射室12と対流伝熱室13とは、第二変向部16を介して接続されている。対流伝熱室13は、第二放射室12と隣接するように鉛直方向に延設されている。
【0036】
ボイラ5において、燃焼炉4から導入される排ガスは、第一放射室11の下方から上方へと流れ、第一変向部15を経て第二放射室12の上方から下方へと更に流れ、そして、第二変向部16を経て対流伝熱室13の下方から上方へ流れる。
【0037】
第一放射室11、及び第二放射室12には、排ガスからの放射熱を受けて蒸気を発生させるための放射伝熱面を構成する多数の放射伝熱管(図示省略)が配設されている。
【0038】
対流伝熱室13には、スクリーン管20、及び同一種類の熱交換部よりなる複数の過熱器21,22,23が配設されている。本例では、対流伝熱室13において、排ガス流れの最上流部にスクリーン管20が配設され、スクリーン管20の下流側に、三次過熱器21、二次過熱器22、及び一次過熱器23が互いに所定間隔を存して排ガス流れ方向の上流側から下流側に向けて順に配設されている。スクリーン管20は、伝熱管が旗形に配設されてなるものであって、対流伝熱室13に導入される排ガスを冷却するように構成されている。過熱器21,22,23は、水平方向に配列した複数の伝熱管を高さ方向に多段に設けた伝熱管群を備え、伝熱管が対流伝熱面を構成しており、排ガスとの熱交換により蒸気を発生して更に過熱するように構成されている。なお、ここでは、スクリーン管20、及び複数の過熱器21,22,23を対流伝熱室13に配設する例を示したが、これに限定されるものではなく、スクリーン管20や過熱器21,22,23の他に、蒸発管、エコノマイザ等を対流伝熱室13に適宜に配設してもよい。
【0039】
<節炭器>
ボイラ5と節炭器6とは、第三変向部17を介して接続されている。節炭器6は、対流伝熱室13と隣り合うように鉛直方向に延設される対流伝熱室14を備えている。対流伝熱室14には、複数のエコノマイザ部31,32,33が互いに所定間隔を存して配設されている。本例では、第一エコノマイザ部31、第二エコノマイザ部32、及び第三エコノマイザ部33が排ガス流れ方向の上流側から下流側に向けて順に配設されている。エコノマイザ部31,32,33は、水平方向に配列した複数のエコノマイザ水管を高さ方向に多段に設けたエコノマイザ水管群を備えてなるものである。
【0040】
[排ガス温度計]
第一変向部15には、第一放射室11から第二放射室12へと流れる排ガスの温度を計測する排ガス温度計41が配設されている。第二変向部16には、第二放射室12から対流伝熱室13へと流れる排ガスの温度を計測する排ガス温度計42が配設されている。
【0041】
対流伝熱室13には、スクリーン管20を通過し三次過熱器21へと流れる排ガスの温度を計測する排ガス温度計43が配設されている。対流伝熱室13には、三次過熱器21を通過し二次過熱器22へと流れる排ガスの温度を計測する排ガス温度計44が配設されている。対流伝熱室13には、二次過熱器22を通過し一次過熱器23へと流れる排ガスの温度を計測する排ガス温度計45が配設されている。対流伝熱室13には、一次過熱器23を通過し第三変向部17へと流れる排ガスの温度を計測する排ガス温度計46が配設されている。
【0042】
対流伝熱室14には、第三変向部17から第一エコノマイザ部31へと流れる排ガスの温度を計測する排ガス温度計47が配設されている。対流伝熱室14には、第三エコノマイザ部33を通過し節炭器6の底部へと流れる排ガスの温度を計測する排ガス温度計48が配設されている。
【0043】
[蒸気流量計]
三次過熱器21、二次過熱器22、及び一次過熱器23には、それぞれ蒸気の流量を計測する蒸気流量計51、蒸気流量計52、及び蒸気流量計53が付設されている。
【0044】
[蒸気温度計]
三次過熱器21には、入口側の蒸気温度を計測する蒸気温度計61a、及び出口側の蒸気温度を計測する蒸気温度計61bが付設されている。同様に、二次過熱器22には、入口側の蒸気温度を計測する蒸気温度計62a、及び出口側の蒸気温度を計測する蒸気温度計62bが付設されている。同様に、一次過熱器23には、入口側の蒸気温度を計測する蒸気温度計63a、及び出口側の蒸気温度を計測する蒸気温度計63bが付設されている。
【0045】
[給水温度計、給水流量計]
節炭器6には、入口側の給水温度を計測する給水温度計71、及び出口側の給水温度を計測する給水温度計72が付設されている。第一エコノマイザ部31、第二エコノマイザ部32、及び第三エコノマイザ部33には、それぞれ給水温度を計測する給水温度計54、給水温度計55、及び給水温度計56が付設されている。節炭器6には、給水流量を計測する給水流量計75が付設されている。第一エコノマイザ部31、第二エコノマイザ部32、及び第三エコノマイザ部33には、それぞれ給水流量を計測する給水流量計57、給水流量計58、及び給水流量計59が付設されている。
【0046】
<付着物除去システム>
図2は、本発明の一実施形態に係る付着物除去システム100の概略構成を示す模式図である。図2に示すように、付着物除去システム100は、圧力波式スートブロワ(以下、単に「スートブロワ」と略称する。)80と、スートブロワ80の動作を制御する制御盤110と、制御盤110と通信可能に接続される制御器120とを備えている。
【0047】
<スートブロワ>
スートブロワ80としては、例えば、国際公開第2020/225984号に開示された付着物除去装置が用いられる。図1に示すように、スートブロワ80は、第二放射室12において、上下方向中間位置に圧力波放出口が位置するようにボイラ5に配置されているスートブロワ80aと、対流伝熱室13において、スクリーン管20と三次過熱器21との間に圧力波放出口が位置するようにボイラ5に配置されるスートブロワ80bと、対流伝熱室14において、第一エコノマイザ部31と第二エコノマイザ部32との間に圧力波放出口が位置するように節炭器6に配置されるスートブロワ80cとを含む。
【0048】
図2に示すように、スートブロワ80は、スートブロワ本体81と、ガス供給手段82とを備えている。
【0049】
スートブロワ本体81は、開口部83aを有する燃焼容器83と、開口部83aを塞ぐ帯板状の封止体84と、開口部83aに対する封止体84の押付状態と非押付状態とを切り換える切換機構85と、開口部83aに対し封止体84が非押付状態のときに、封止体84を開口部83aへと供給する封止体供給機構86とを備えている。
【0050】
ガス供給手段82は、燃焼に必要な可燃性ガスや酸化剤ガス等の燃焼用ガスを燃焼容器83に供給するものであり、主として、主供給管路90、可燃性ガス供給管路91、及び酸化剤ガス供給管路92を備えている。主供給管路90の一端側は、燃焼容器83の内部にガスを供給可能なように燃焼容器83の端壁部に接続されている。主供給管路90の他端側には、可燃性ガス供給管路91を介して可燃性ガス供給源93が接続されるとともに、酸化剤ガス供給管路92を介して酸化剤ガス供給源94が接続されている。こうして、燃焼容器83の内部には、可燃性ガス供給源93からの可燃性ガスが、可燃性ガス供給管路91、及び主供給管路90を介して供給可能であるとともに、酸化剤ガス供給源94からの酸化剤ガスが、酸化剤ガス供給管路92、及び主供給管路90を介して供給可能とされる。ここで、可燃性ガスとしては、例えば、メタン、水素等が挙げられる(本例ではメタン)。一方、酸化剤ガスとしては、例えば、酸素、空気等が挙げられる(本例では酸素)。
【0051】
主供給管路90の途中には、主供給弁95が介設されている。主供給管路90における主供給弁95のガス流れ上流側には、燃焼容器83の内部の圧力を計測するための圧力計96が接続されている。可燃性ガス供給管路91には、可燃性ガス供給弁97が介設されている。酸化剤ガス供給管路92には、酸化剤ガス供給弁98が介設されている。そして、圧力計96の計測信号に基づいて、燃焼容器83に充填される燃焼用ガスの所定の充填圧(後述するPs又はPv)において、可燃性ガスと酸化剤ガスとが所定の混合比となるように、主供給弁95、可燃性ガス供給弁97、及び酸化剤ガス供給弁98のそれぞれの弁開度、弁開時間、又は弁開閉回数を調整する。これにより、燃焼用ガスの所定の充填圧において燃焼容器83の内部で可燃性ガスと酸化剤ガスとが所定の混合比で混合される。
【0052】
燃焼容器83の端壁部には、電気的着火手段としてのグロープラグ99が取り付けられている。グロープラグ99に通電することにより、燃焼容器83の内部の燃焼用ガス(メタンガス及び酸素ガスの混合ガス)が着火し、火炎が伝播しながら急激に膨張することで、圧力波を発生させることができる。なお、電気的着火手段としては、グロープラグ99に限定されるものではなく、電気火花により燃焼用ガスに着火爆発を起こす点火プラグを用いてもよい。
【0053】
スートブロワ80においては、燃焼容器83内に燃焼用ガスを充填し、充填した燃焼用ガスをグロープラグ99による着火にて燃焼させて燃焼容器83内の圧力を高めることにより、封止体84を破壊して圧力波を発生させ、発生させた圧力波を圧力波放出口87から放出して伝熱管に付着した付着物(ダスト)を除去する付着物除去動作(圧力波の打ち込み動作)を行うことができるように構成されている。さらに、スートブロワ80においては、切換機構85と封止体供給機構86との協働により、一定時間をあけて周期的に1回ずつ付着物除去動作を行うことができるように構成されている。
【0054】
<制御盤>
制御盤110は、CPU、メモリ、ストレージ、I/Oポート、周辺機器等を具備するコンピュータを主体に構成されている。制御盤110は、スートブロワ80の動作、例えば、切換機構85による押付状態と非押付状態との切換動作や、封止体供給機構86による封止体供給動作、ガス供給手段82による燃焼容器83内への燃焼用ガスの充填動作、充填した燃焼用ガスに対するグロープラグ99による着火動作等を制御する。
【0055】
<制御器>
制御器120は、CPU、メモリ、ストレージ、I/Oポート、周辺機器等を具備するコンピュータを主体に構成されている。制御器120は、メモリに格納されている所定プログラムをCPUが読み込んで実行することにより、基準値設定部301、評価値算出部302、充填圧算出部303、充填圧目標値設定部304、及び運転制御部305の機能が発揮される。なお、制御器120としては、例えば、分散制御システム(DCS)や、プログラマブルロジックコントローラ、サーバー、ワークステーション、その他のコンピュータ装置等が挙げられる。基準値設定部301、評価値算出部302、充填圧算出部303、充填圧目標値設定部304、及び運転制御部305のそれぞれの機能については、後述するスートブロワ80の運転制御の手順を示すフローチャート(図3参照)の説明と併せて説明することとする。なお、基準値設定部301が、本発明の「基準値設定手段」に相当する。評価値算出部302が、本発明の「評価値算出手段」に相当する。ガス供給手段82、制御盤110、充填圧算出部303、充填圧目標値設定部304、及び運転制御部305を含む構成が、本発明の「充填圧調整手段」に相当する。
【0056】
図3は、本発明の一実施形態に係るダスト除去方法において実施されるスートブロワ80の運転制御の手順を示すフローチャートである。図3において、記号「S」はステップを表わす。なお、図3のフローチャートの開始段階では、燃焼容器83に対する燃焼用ガスの充填圧の目標値は、初期設定圧Psに設定されているものとする。
【0057】
以下においては、一例として、ボイラ5に配置されるスートブロワ80a,80bを用いた、第二放射室12の放射伝熱管、並びに対流伝熱室13のスクリーン管20、及び過熱器21,22,23に対するダスト除去動作について、図3のフローチャートを用いて説明する。ここで、第二放射室12の放射伝熱管、対流伝熱室13のスクリーン管20、及び過熱器21,22,23は何れも熱交換器であり、これらを総称して「熱交換器200」と称する。
【0058】
<S1:基準値設定工程>
図3に示すフローチャートにおけるステップS1において、基準値設定部301(図2参照)は、熱交換器200の伝熱性能の基準値として、図4に示すように、伝熱性能基準値ラインLaを設定する。ここで、熱交換器200の伝熱性能の基準値とは、熱交換器200の伝熱性能として要求される標準値であって、熱交換器200の伝熱面(伝熱管の外表面)にダストが付着していない状態における熱交換器200の伝熱性能として排ガス流量と熱交換量との関係から得られるデータに基づいて設定されるものである。
【0059】
図4は、熱交換器200の伝熱性能に係る排ガス流量と熱交換量との関係を示すグラフである。熱交換器200の伝熱性能は、排ガス流量と熱交換量との関係に基づいて定められる性能である。図4において、縦軸は、熱交換量を示し、横軸は、排ガス流量を示す。図4において、伝熱性能基準値ラインLaの下方位置に示す伝熱性能閾値ラインLbは、伝熱性能基準値ラインLaに対し熱交換量(評価値)が所定値だけ低い水準を示すラインである。
【0060】
<S2:評価値算出工程>
図3に示すフローチャートにおけるステップS2において、評価値算出部302(図2参照)は、熱交換器200の伝熱性能の評価値を算出する。すなわち、燃焼炉4からの現在の排ガス流量Mgを演算するとともに、熱交換器200における現在の熱交換量Mqを演算する。
【0061】
[排ガス流量の演算]
評価値算出部302(図2参照)は、燃焼炉4からの排ガス流量の演算について、燃焼炉4からの排ガス流路に設けられた節炭器6を用い、節炭器6における交換熱量Qeと、排ガスと給水の出入口温度(Tgi,Tgo,Twi,Two)、及び排ガス流量Mgと給水量Mwの関係に基づいて、以下の式(1)及び(2)を用いて、リアルタイムの排ガス流量Mgを算出する。
Qe[kJ/h] = Mg×Cpg×(Tgo-Tgi)
= Mw×Cpw×(Two-Twi)+Qa ・・・(1)
Mg[mN/h] = (Mw×Cpw×(Two-Twi)+Qa)/Cpg/(Tgo-Tgi) ・・・(2)
ここで、
Mw :給水流量計75の計測値
Twi:給水温度計71の計測値
Two:給水温度計72の計測値
Cpw:節炭器6の平均給水定圧比熱
Tgi:排ガス温度計47の計測値
Tgo:排ガス温度計48の計測値
Cpg:節炭器6の平均排ガス定圧比熱
Qa :節炭器6の放熱量の設定値
【0062】
[熱交換量の演算]
評価値算出部302(図2参照)は、各過熱器21~23の蒸気流量、蒸気入口・出口温度から、以下の式(3)を用いて、各過熱器21~23におけるリアルタイムの熱交換量Qqを演算する。
QqN = MsN×(TsoN-TsiN) ・・・(3)
ここで、
N:自然数
Ms1~Ms3:蒸気流量計51~53の計測値
Tsi1~Tsi3:蒸気温度計61a~63a(入口側)
Tso1~Tso3:蒸気温度計61b~63b(出口側)
【0063】
<S3~S5>
現在の排ガス流量Mgに対する熱交換量Mqの値は、熱交換器200の現在の伝熱性能を示す評価値である。ステップS3においては、設定した基準値と熱交換器200の伝熱性能の現在の評価値との差分が所定以上であるか否かを判断する(S3:比較・判断工程)。図4のグラフにおいて、例えば、現在の排ガス流量Mgが横軸上のMgxであるときの現在の熱交換量Mqが縦軸上のMqaである場合、MgxとMqaとで特定されるグラフ上の点Aは、伝熱性能閾値ラインLbよりも下側に位置しているため、設定した基準値と熱交換器200の伝熱性能の現在の評価値との差分は所定以上であると判断する(ステップSにおいて「YES」)。この場合、充填圧算出部303(図2参照)は、現在の排ガス流量MgがMgxであるときの伝熱性能の基準値Mqxと伝熱性能の評価値Mqaとの差分(ΔMq)に応じた充填圧Pvを算出する(S4:充填圧算出工程)。そして、充填圧目標値設定部304(図2参照)は、到達すべき充填圧Pの目標値としてステップS4で算出された充填圧Pvを設定する(S5:充填圧設定工程)。
【0064】
一方、図4のグラフにおいて、例えば、現在の排ガス流量Mgが横軸上のMgxであるときの現在の熱交換量Mqが縦軸上のMqbである場合、MgxとMqbとで特定される排ガス流量-熱交換量の座標系における点Bは、伝熱性能基準値ラインLaと伝熱性能閾値ラインLbとの間に位置しているため、設定した基準値と熱交換器200の伝熱性能の現在の評価値との差分は所定以上ではないと判断する(ステップSにおいて「NO」)。この場合、充填圧目標値設定部304(図2参照)は、到達すべき充填圧Pの目標値として、初期設定圧Psに設定する(S6:充填圧設定工程)。
【0065】
<S7:運転指令工程>
ステップS7において、運転制御部305(図2参照)は、充填圧Pの目標値を充填圧Pv、又は初期設定圧Psに設定する指令信号を含む運転指令信号を制御盤110に向けて送信する。
【0066】
制御盤110は、運転制御部305からの運転指令信号をトリガーとして、スートブロワ80がダスト除去動作を行うべくスートブロワ80を制御する。すなわち、図2に示すように、燃焼容器83の開口部83aを封止体84で塞ぎ、ガス供給手段82により燃焼容器83内に充填圧がPv又はPsとなるように燃焼用ガスを充填し、グロープラグ99への通電により燃焼用ガスに点火して燃焼させ、燃焼容器83内の圧力を高めることで封止体84を破壊して圧力波を発生させる。これにより、圧力波放出口87から圧力波がボイラ5の第二放射室12内、及び対流伝熱室13内に放出され、圧力波による風圧、振動により、第二放射室12の放射伝熱面を構成する放射伝熱管に付着・堆積しているダストが除去されるとともに、対流伝熱室13のスクリーン管20及び過熱器21~23の伝熱管に付着・堆積しているダストが除去される。こうして、伝熱管に付着したダストを広範囲に除去することができる。
【0067】
なお、ステップS4の充填圧算出工程、ステップS5の充填圧設定工程、及びステップS7の運転指令工程を包む工程が、本発明の「充填圧調整工程」に相当する。
【0068】
図3のフローチャートにおいては、ステップS2の伝熱性能の評価値算出工程において算出された評価値が、ステップS1の伝熱性能の基準値設定工程において設定された基準値よりも所定以下の値である場合、すなわち、設定した基準値と熱交換器200の伝熱性能の現在の評価値との差分が所定以上である場合(ステップS3にいおいて「YES」)には、熱交換器200の伝熱面にダストが過剰に付着・堆積していたり、ダストが強固に付着・堆積していたりすること等が予測される。そこで、ステップS4,S5及びS7の一連の工程よりなる充填圧調整工程において、スートブロワ80a,80bの燃焼容器83の内部に充填される燃焼用ガスの充填圧を増加させて、燃焼用ガスの燃焼によって発生される圧力波の威力を増加させる。これにより、従来のようなスートブロワの連続運転に依らずとも、ダストを十分に除去することができる。こうして、伝熱性能を早期に回復させることができるとともに、スートブロワ80a,80bの運転回数を低減することができる。従って、熱交換器200の伝熱性能を維持しつつ、スートブロワ80a,80bのメンテナンス回数の低減を図ることができる。
【0069】
ステップS4の充填圧算出工程において、現在の排ガス流量MgがMgxであるときの伝熱性能の基準値Mqxと伝熱性能の評価値Mqaとの差分(ΔMq:図4参照)の変動に応じた充填圧Pvが充填圧算出部303(図2参照)によって算出され、算出された充填圧Pvが、ステップS5の充填圧設定工程において、到達すべき充填圧Pの目標値として充填圧目標値設定部304(図2参照)によって設定されるので、圧力波の威力を過不足なく適切に増加させることができ、スートブロワ80a,80bの運転に必要な費用に対するダスト除去効果のバランスを良くすることができる。
【0070】
以上、本発明の付着物除去システム、及び付着物除去方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0071】
(別実施形態1)
上記実施形態における、排ガス流量と熱交換器200の熱交換量との関係に基づいて定められる伝熱性能において、熱交換器200の熱交換量に代えて、熱交換器200での熱回収前後の排ガスの温度差であってもよい。すなわち、第二放射室12、及び対流伝熱室13を流れる排ガスの流量と、熱交換器200での熱回収前後の排ガスの温度差である、排ガス温度計41、及び排ガス温度計46の計測値の差分との関係に基づいて熱交換器200の伝熱性能を定めるようにしてもよい。
【0072】
(別実施形態2)
上記実施形態における、排ガス流量と熱交換器200の熱交換量との関係に基づいて定められる伝熱性能において、熱交換器200の熱交換量に代えて、熱交換器200の蒸気入口・出口の温度差であってもよい。すなわち、第二放射室12、及び対流伝熱室13を流れる排ガスの流量と、熱交換器200の蒸気入口・出口の温度差である、蒸気温度計61a,62a,63a、及び蒸気温度計61b,62b,63bの計測値の差分との関係に基づいて熱交換器200の伝熱性能を定めるようにしてもよい。
【0073】
(別実施形態3)
上記実施形態における、排ガス流量と熱交換器200の熱交換量との関係に基づいて定められる伝熱性能において、熱交換器200の熱交換量に代えて、熱交換器200の熱貫流率であってもよい。すなわち、第二放射室12、及び対流伝熱室13を流れる排ガスの流量と、以下の式(4)により求められる熱交換器200の熱貫流率との関係に基づいて熱交換器200の伝熱性能を定めるようにしてもよい。
【0074】
【数1】
【0075】
(別実施形態4)
上記実施形態における、排ガス流量と熱交換器200の熱交換量との関係に基づいて定められる伝熱性能において、排ガス流量に代えて、熱交換器200を具備するボイラ5の蒸発量の設定値であってもよい。すなわち、以下に述べる算出法により求められるボイラ蒸発量と熱交換器200の熱交換量との関係に基づいて熱交換器200の伝熱性能を定めるようにしてもよい。
[ボイラ蒸発量の算出]
以下の式(5)及び(6)に示すような被燃焼物発熱量とボイラ蒸発量との関係に基づいて算出された被燃焼物発熱量からボイラ蒸発量を得ることができる。
(被燃焼物の燃焼熱量) = (被燃焼物の発熱量)×(被燃焼物の投入量)
= (ボイラ蒸発量×蒸気エンタルピ+持出熱量-持込熱量) ・・・(5)
(ボイラ蒸発量) = (被燃焼物の燃焼熱量-持出熱量+持込熱量)/(蒸気エンタルピ) ・・・(6)
ここで、被燃焼物の投入量は、被燃焼物を被燃焼物受入部2に投入する際にクレーン10で掴んだ被燃焼物の重量測定値に基づいて、例えば、1時間あたりの重量測定値の積算により算出される。なお、被燃焼物の投入量については、給じん装置3のプッシャー7の往復動速度により定まる被燃焼物の供給速度(単位時間あたりの供給量)に基づいて算出することも可能であり、プッシャー7を往復駆動する駆動機構8を制御する制御盤9からのデータに基づいてリアルタイムに算出することができる。また、蒸気エンタルピ、持出熱量および持込熱量についても、排ガス温度計41~48や、蒸気流量計51~53、蒸気温度計61a~63a、蒸気温度計61b~63b、給水温度計71,72、給水流量計75等の計測値によってリアルタイムに算出することができる。
【0076】
(別実施形態5)
上記実施形態における、排ガス流量と熱交換器200の熱交換量との関係に基づいて定められる伝熱性能において、排ガス流量に代えて、被燃焼物の投入量であってもよい。すなわち、上述したように、例えば、クレーン10で掴んだ被燃焼物の1時間あたりの重量測定値の積算や、制御盤9からのデータにより算出することができる被燃焼物の投入量と熱交換量との関係に基づいて熱交換器200の伝熱性能を定めるようにしてもよい。
【0077】
なお、上記の別実施形態4や別実施形態5のように、排ガス流量に代えて、ボイラ蒸発量の設定値や被燃焼物の投入量を用いる場合は、節炭器6についても、上記実施形態の熱交換器200に対するダスト除去方法と同様のダスト除去方法を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の付着物除去システム、及び付着物除去方法は、例えば、火力発電施設、製鉄所、石油精製施設等において、化石燃料の燃焼によって発生した排ガスや、廃棄物燃焼施設において、廃棄物の燃焼によって発生した排ガス、バイオマス発電施設において、バイオマス燃料の燃焼によって発生した排ガスから熱回収するボイラ、節炭器(エコノマイザ)、空気予熱器等の熱交換器の伝熱面に付着した煤塵等の付着物を除去する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 燃焼処理施設
80 スートブロワ(圧力波式スートブロワ)
82 ガス供給手段(充填圧調整手段)
100 付着物除去システム
110 制御盤(充填圧調整手段)
200 熱交換器
301 基準値設定部(基準値設定手段)
302 評価値算出部(評価値算出手段)
303 充填圧算出部(充填圧調整手段)
304 充填圧目標値設定部(充填圧調整手段)
305 運転制御部(充填圧調整手段)
図1
図2
図3
図4