(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043460
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】取水制御システム
(51)【国際特許分類】
E02B 7/20 20060101AFI20230322BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20230322BHJP
E02B 9/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
E02B7/20 105
H02P9/04 D
E02B9/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151115
(22)【出願日】2021-09-16
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000241957
【氏名又は名称】北海道電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391026106
【氏名又は名称】電制コムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安井 伸輝
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 基
(72)【発明者】
【氏名】池田 豊
(72)【発明者】
【氏名】小原 裕司
(72)【発明者】
【氏名】工藤 有生
(72)【発明者】
【氏名】櫻元 正
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正輝
【テーマコード(参考)】
2D019
5H590
【Fターム(参考)】
2D019AA43
5H590CA11
5H590CE01
5H590EB11
5H590HA06
5H590HA22
(57)【要約】
【課題】 使用水量の増水制御、減水制御を適切に行って溢水電力の低減を図ることができる取水制御システムを提供すること。
【解決手段】 取水制御システム1は、堰2から導水路3を介して水槽4に取水し発電機6を用いて発電を行う発電所において堰側の取水ゲート5の開閉制御を行う。取水制御システム1を構成する取水ゲート制御装置10は、水槽の水槽水位を検出する水槽水位検出部21と、堰放流量を検出する堰放流量検出部23と、取水ゲート5の開閉を制御する取水ゲート開閉制御部35とを有する。取水ゲート開閉制御部35は、水槽水位が0以下であって、発電機6の出力が最大出力になっていない場合であって、堰放流量が0以上である場合に、取水ゲート5を開いて増水するように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堰から導水路を介して水槽に取水し発電機を用いて発電を行う発電所において堰側の取水ゲートの開閉制御を行うための取水制御システムであって、
前記取水ゲートの開度制御を行うための取水ゲート制御装置を有し、
取水ゲート制御装置は、
前記水槽の水槽水位を検出する水槽水位検出部と、
堰放流量を検出する堰放流量検出部と、
前記取水ゲートの開閉を制御する取水ゲート開閉制御部とを有し、
取水ゲート開閉制御部は、
前記水槽水位が0以下であって、前記発電機の出力が最大出力になっていない場合であって、堰放流量が0以上である場合に、前記取水ゲートを開いて増水するように制御する、
ことを特徴とする取水制御システム。
【請求項2】
前記取水ゲートから前記発電機への導水路の水位を検出する導水路水位検出部を有し、
前記取水ゲート開閉制御部は、
所定のH-Q曲線を利用して、現在の導水路水位としての第1の水位をH-Q換算して得られた第1の使用水量に、前記堰からあふれ出した堰放流量、または、予め設定された最大使用水量から発電機使用水量を減じて得られる増水可能使用水量のいずれか小さい方を増水量として、当該増水量を前記第1の使用水量に加算して第2の使用水量を算出し、前記H-Q曲線を利用して、前記第2の使用水量をQ-H換算して得られた第2の水位を算出し、
前記第2の水位に基づいて前記取水ゲートを開いて増水するように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の取水制御システム。
【請求項3】
前記取水ゲート開閉制御部は、
前記水槽水位が所定の上限値未満であり、かつ第1の水位が所定の上限値未満である場合に、前記第2の水位に基づいて前記取水ゲートを開いて増水するように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の取水制御システム。
【請求項4】
前記取水ゲート開閉制御部は、
前記H-Q曲線を利用して、現在の導水路水位としての第1の水位をH-Q換算して得られた現在の使用水量を第1の使用水量として、当該第1の使用水量から発電機使用水量と予め設定された最大使用水量の差分である使用水量超過分を減算して第2の使用水量を算出し、前記H-Q曲線を利用して、前記第2の使用水量をQ-H換算して得られた第2の水位を算出し、前記第2の水位に基づいて前記取水ゲートを閉めて減水するように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の取水制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取水制御システムに関し、特に流込発電所における取水制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水力発電所においては,発電機の最大出力(最大電力)を恒常的に超過しないよう河川流況に応じて導水路水位の設定値を変更し,発電機の出力に必要な使用水量を調整している(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、発電所を構成する少なくとも一つの発電機の合計出力(発電機出力)を最大出力として、その値が予め定められている。その最大出力は導水路の水位が所定の水位を超えているか否かを判定して、導水路の水位が所定の水位を超えていない場合に、発電機出力が最大出力になっていないとして導水路の水位を上げるべく取水口(取水ゲート)が制御(増水制御)される。一方、導水路の水位が所定の水位に達している場合には、発電機出力が最大出力になっているとして導水路の水位を下げるべく取水口(取水ゲート)を制御(減水制御)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のような増水制御、減水制御においては、発電機出力が最大出力になっていない状態であるにもかかわらず、導水路の水位が所定の水位を満たしている状態である場合があり、その場合には、これ以上導水路の水位を上げるべく取水口の増水制御は行われない。しかし、洪水等予期せぬ原因によりダム又は堰の水位が上昇し、ダム又は堰から下流に放流される場合があり、この放流される水は導水路にも流れず無駄に流されていた。そのため、より大きな溢水電力の低減を図るという課題を解決するには至っていない。
【0006】
本発明は、使用水量の増水制御、減水制御を適切に行って溢水電力の低減を図ることができる取水制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る取水制御システムの一側面は、堰から導水路を介して水槽に取水し発電機を用いて発電を行う発電所において堰側の取水ゲートの開閉制御を行うための取水制御システムであって、取水ゲートの開度制御を行うための取水ゲート制御装置を有し、取水ゲート制御装置は、水槽水位を検出する水槽水位検出部と、堰放流量を検出する堰放流量検出部と、取水ゲートの開閉を制御する取水ゲート開閉制御部とを有し、取水ゲート開閉制御部は、
水槽水位が0以下であって、発電機の出力が最大出力になっていない場合であって、堰放流量が0以上である場合に、取水ゲートを開いて増水するように制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の取水制御システムの他の側面は、取水ゲートから発電機への導水路の水位を検出する導水路水位検出部を有し、取水ゲート開閉制御部は、所定のH-Q曲線を利用して、現在の導水路水位としての第1の水位をH-Q換算して得られた第1の使用水量に、堰からあふれ出した堰放流量、または、予め設定された最大使用水量から発電機使用水量を減じて得られる増水可能使用水量のいずれか小さい方を増水量として、当該増水量を第1の使用水量に加算して第2の使用水量を算出し、H-Q曲線を利用して、第2の使用水量をQ-H換算して得られた第2の水位を算出し、第2の水位に基づいて取水ゲートを開いて増水するように制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の取水制御システムの他の側面は、取水ゲート開閉制御部は、水槽水位が所定の上限値未満であり、かつ第1の水位が所定の上限値未満である場合に、第2の水位に基づいて取水ゲートを開いて増水するように制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の取水制御システムの他の側面は、取水ゲート開閉制御部は、H-Q曲線を利用して、現在の導水路基準水位としての第1の水位をH-Q換算して得られた現在の使用水量を第1の使用水量として、当該第1の使用水量から発電機使用水量と予め設定された最大使用水量の差分である使用水量超過分を減算して第2の使用水量を算出し、H-Q曲線を利用して、第2の使用水量をQ-H換算して得られた第2の水位を算出し、第2の水位に基づいて取水ゲートを閉めて減水するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用水量の増水制御、減水制御を適切に行って溢水電力の低減を図ることができる取水制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る取水制御システムの構成を示した図である。
【
図4】取水制御システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【
図5】H-Q換算およびQ-H換算を利用して増水制御実施による目標水量および目標水位を説明するための図である。
【
図6】H-Q換算およびQ-H換算を利用して減水制御実施による目標水量および目標水位を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、
図1および
図2を参照して本発明の一実施の形態に係る取水制御システム1について説明する。なお、以下の説明では、取水制御システム1が流込発電所における取水制御に関するシステムとして説明する。
【0014】
[取水制御システム1の構成]
発電所における取水制御システム1は、
図1に示すように、堰水位検出部(堰水位計)11、導水路水位検出部(導水路水位計)12、水槽水位検出部(発電所水槽水位計)21、堰放流量検出部23、取水ゲート制御装置10、流込発電所における流木対策のためのスクリーン7および発電機制御装置20を有して構成される。
【0015】
堰水位検出部11は、堰2の堰水位を測定する。導水路水位検出部12は、導水路3の水位を測定する。水槽水位検出部21は、発電所の水槽4の水位(以下、「水槽水位」と称する。)を測定する。堰放流量検出部23は、堰2から溢れた水の量(堰放流量)を測定する。
【0016】
発電機制御装置20は、水槽水位を測定するための水槽水位検出部21からの水槽水位の情報と発電機6から出力される発電機出力の情報とに基づいて発電機出力制御量を算出して、算出した発電機出力制御量情報を発電機6に出力することにより、発電機出力の制御をしている。
【0017】
取水ゲート制御装置10は、
図2に示すように、堰水位検出部11からの堰水位、導水路水位検出部12からの導水路水位、堰放流量、水槽水位検出部21からの水槽水位および発電機出力に基づいて、後述する増水制御若しくは減水制御のいずれかを決定し、取水ゲート5の開度制御を行う制御部24と、堰水位、導水路水位、堰放流量および発電機出力の情報、並びに、それらの値と比較判定するための所定の基準値(閾値)を記憶する記憶部25を有している。
【0018】
制御部24は、水槽水位判定部31、発電機出力判定部32、導水路水位判定部33、堰放流量判定部34および取水ゲート開閉制御部35を有している。水槽水位判定部31は、水槽水位検出部21で検出された水槽水位が0以下であるか否かを判定する。ここで、水槽水位が0以下とは、水槽4の水位の最大値を0と規定した場合において水槽4の水位が最大値を下回っている場合をいう。
【0019】
発電機出力判定部32は、発電機6の発電機出力が最大出力以下であるか否かを判定する。ここで、最大出力とは、発電所を構成する少なくとも一つの発電機6の合計出力(以下、「発電機出力」と呼ぶ。)を、最大出力という。なお、
図1の発電機6は単一の発電機の場合と複数の発電機で構成される場合の両方を含む概念である。導水路水位判定部33は、導水路水位検出部12で検出された導水路水位が所定の導水路水位上限値未満であるか判定する。堰放流量判定部34は、堰放流量検出部23で検出された堰放流量が0より大きいか否かを判定する。
【0020】
すなわち、堰2から溢れて発電所外部の川へ放流される放流水量が僅かでもあれば、堰放流量が0より大きい(堰放流量>0)と判定される。取水ゲート開閉制御部35は、上記した水槽水位、発電機出力、堰放流量、導水路水位について後述する各判定結果に基づいて取水ゲート5の開度制御を行っている。
【0021】
[取水ゲート制御装置10の動作]
以下に、取水ゲート制御装置10の動作について
図2~
図6を参照して増水制御と減水制御に分けて説明する。
【0022】
<増水制御>
制御部24は、ステップS101において、発電機制御装置からの発電機出力の信号に基づいて発電機6が運転中か否かを判定する。ステップS101において、発電機出力が確認され、発電機6が運転中であると判定された場合には、制御部24は、ステップS102において、導水路水位が所定の水位範囲で定義される不感帯の範囲内か否かを判定する。なお、ステップS102における不感帯判定とは、後述するステップS110とステップS112で増水/減水制御した後に、「導水路水位」が安定(=不感帯)しているか否かを判定するという意味である。一方、ステップS101において、発電機出力が確認されず、発電機6が運転中でないと判定された場合にはその後の処理は何も行われず終了する。
【0023】
ステップS102において導水路水位が所定の水位範囲で定義される不感帯の範囲内であると判定された場合に、制御部24は、ステップS103において取水対象の川から取水してから水槽4に着水するまでの着水時間を計測し、着水時間が経過したか否かを判定する。一方、ステップS102において導水路水位が所定の水位範囲で定義される不感帯の範囲内でないと判定された場合には、導水路水位が不感帯の範囲内でないにもかかわらず増水制御をすれば発電機の出力が最大出力を超える虞があるため、ステップS101の処理に戻る。
【0024】
ステップS103において着水時間が経過したと判定された場合には、ステップS104において、水槽水位判定部31は、水槽水位検出部21で検出された水槽水位が0以下であるか否かを判定する。一方、ステップS103において着水時間が経過していないと判定された場合には、ステップS101の処理に戻る。
【0025】
ステップS104において水槽水位検出部21で検出された水槽水位が0以下であると判定された場合には、ステップS105において、発電機出力判定部32は、発電機6の発電機出力が最大出力以下であるか否かを判定する。一方、ステップS104において水槽水位検出部21で検出された水槽水位が0を超えていると判定された場合には、後述するステップS111に移行する。
【0026】
ステップS105において発電機6の発電機出力が最大出力以下であると判定された場合には、ステップS106において、堰放流量判定部34は、堰放流量検出部23で検出された堰放流量が0より大きいか否かを判定する。ステップS106において、堰放流量検出部23で検出された堰放流量が0より大きいと判定された場合には、ステップS107において、導水路水位判定部33は、導水路水位検出部12で検出された導水路水位が所定の導水路水位上限値未満であるか否かを判定する。一方、ステップS106において、堰放流量検出部23で検出された堰放流量が0未満であると判定された場合には、堰放流量がないにもかかわらず増水制御しても溢水電力の低減にはならないためステップS101の処理に戻る。
【0027】
ステップS107において、導水路水位検出部12で検出された導水路水位が所定の導水路水位上限値未満であると判定された場合には、ステップS108において、水槽水位判定部31は、水槽水位検出部21で検出された水槽水位が所定の上限値0未満であるか否かを判定する。一方、ステップS107において、導水路水位検出部12で検出された導水路水位が所定の導水路水位上限値以上であると判定された場合には、最終的に増水制御した場合に発電機の出力が最大出力を超える虞があるためステップS101の処理に戻る。
【0028】
ステップS108において、水槽水位検出部21で検出された水槽水位が所定の上限値0未満であると判定された場合には、ステップS109において、取水ゲート開閉制御部35は、取水ゲート5からの取水量を増大するための増水量(詳細は後述する)を算出する。その後、ステップS110において、取水ゲート開閉制御部35は、算出された増水量に基づいて、取水ゲート5を開ける制御(開制御)を行う。その後は、ステップS101に戻る。一方、ステップS108において、水槽水位検出部21で検出された水槽水位が所定の上限値0以上であると判定された場合には、最終的に増水制御した場合に発電機の出力が最大出力を超える虞があるためステップS101の処理に戻る。
【0029】
なお、取水ゲート開閉制御部35の開制御は、具体的には、開度制御量を算出して、算出した開度制御量の情報を取水ゲート5の駆動装置(図示せず)に出力して取水ゲート5の開度制御をしながら目標水量範囲で堰2から導水路3を介して水槽4に取水している。
【0030】
次に、
図5を参照して、増加制御について、使用水量(Q)における現在水量および増水制御後の水量(目標水量)、並びに、導水路基準水位(H)における現在水位および増水制御後の水位(目標水位)について説明する。
図5は所定のH-Q換算およびQ-H換算を利用して増水制御実施による目標水量および目標水位を説明するための図である。なお、H-Q曲線(
図5中の点線部分)は至近2ヶ年の所定のH-Qプロット図から近似的に近似直線を適用したものである。
【0031】
まず、取水ゲート開閉制御部35を構成する演算部(図示せず)は、現在の導水路基準水位(現在水位)HsからH-Q換算(
図5のラインa)により現在水量Qs(現在使用水量)を算出する。その後、上記した演算部は、堰放流量(取水堰溢水量)または増水可能使用水量(最大使用水量-発電機使用水量(発電機出力から算出))のいずれか小さい方を増水量(不足使用水量分)Qpとして、当該増水量Qpを現在水量Qsに加算する(
図5のラインb)。
【0032】
増水量Qpを現在水量Qsに加算された使用水量を目標使用水量(以下、「目標水量」と称する。)Qmsとして当該目標水量Qmsが記憶部25に記憶される。上記した演算部は、目標水量Qmsを
図5に示すH-Q曲線(H-Q換算テーブル)を用いて目標水位Hmsを算出し(
図5のラインc)、取水ゲート開閉制御部35は、導水路水位が算出された目標水位Hmsになるように取水ゲートを開ける開制御を実行する。
【0033】
なお、導水路水位が予め設定された「導水路水位上限値」を超える場合には増水制御は行わない。また、水槽水位が予め設定された「水槽水位上限値」を超えている場合(ステップS108参照)、増水制御は行わない。
【0034】
以上のように、本実施の形態に係る取水制御システムにおける増水制御によれば、発電機出力および堰放流量を監視して、水槽水位が0でなく、発電機出力が最大出力未満であって堰放流量が0を超えている場合に増水制御を行うようにしている。そのため、水槽水位も上げることも可能であって、まだ発電機における出力の増加が見込める場合であって、堰放流が行われている場合に、取水ゲートを開けて取水量を増加(増水)させることができるので、溢水電力の低下を図ることができる。
【0035】
<減水制御>
減水制御については、ステップS101~S104までの処理は増水制御の場合と同じであるので、説明は省略する。
【0036】
ステップS105において発電機6の発電機出力が最大出力を超えていると判定された場合には、ステップS111において、取水ゲート制御装置10を構成する演算部(図示せず)は、取水ゲート5からの取水量を減水するための減水量(詳細は後述する)を算出する。その後、ステップS112において、取水ゲート開閉制御部35は、算出された減水量に基づいて、取水ゲート5を閉める制御(閉制御)を行う。その後は、ステップS101に戻る。
【0037】
なお、取水ゲート開閉制御部35の閉制御は、具体的には、開度制御量を算出して、算出した開度制御量の情報を取水ゲート5の駆動装置(図示せず)に出力して目標水量範囲になるように制御している。
【0038】
次に、
図6を参照して、減水制御について、使用水量(Q)における現在水量および減水制御後の水量(目標水量)、並びに、導水路基準水位(H)における現在水位および減水制御後の水位(目標水位)について説明する。
【0039】
図6は所定のH-Q換算およびQ-H換算を利用して減水制御実施による目標水量および目標水位を説明するための図である。なお、H-Q曲線(
図6中の点線部分)は至近2ヶ年の所定のH-Qプロット図から近似的に近似直線を適用したものである。
【0040】
まず、上記した演算部は、現在の導水路基準水位(現在水位)HsからH-Q換算(
図6のラインa´)により現在水量Qs(現在使用水量)を算出する。その後、上記した演算部は、発電機使用水量と予め設定された最大使用水量の差分である使用水量超過分を減水量Qpとして、当該減水量Qpを現在水量Qsから減算する(
図6のラインb´)。現在水量Qsから減水量Qpを減算して得られた使用水量を目標水量Qmsとして当該目標水量Qmsが記憶部25に記憶される。
【0041】
上記した演算部は、目標水量Qmsを
図6に示すH-Q曲線(H-Q換算テーブル)を用いて目標水位Hmsを算出し(
図6のラインc´)、取水ゲート開閉制御部35は、導水路水位が算出された目標水位Hmsになるように取水ゲートを閉める閉制御を実行する。なお、最大使用水量は予め入力装置(図示せず)を介して設定された水量であって許認可最大使用水量とは異なるものである。
【0042】
以上のように、本実施の形態に係る取水制御システムにおける減水制御によれば、発電機出力および堰放流量を監視して、水槽から越流している状態の時には取水ゲートを閉めて取水量を減少(減水)させているので、溢水電力の低下を図ることができる。
【0043】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記した実施の形態では取水口が堰2である場合を例として説明したがダムであってもよい。また、発電機6については複数の発電機で構成されるものであってもよい。
【0044】
[効果のまとめ]
本実施の形態に係る取水制御システム(1)は、
堰(2)から導水路(3)を介して水槽(4)に取水し発電機(6)を用いて発電を行う発電所において堰側の取水ゲート(5)の開閉制御を行うための取水制御システム(1)であって、
前記取水ゲート(5)の開度制御を行うための取水ゲート制御装置(10)を有し、
取水ゲート制御装置(10)は、
前記水槽(4)の水槽水位を検出する水槽水位検出部(21)と、
堰放流量を検出する堰放流量検出部(23)と、
前記取水ゲート(5)の開閉を制御する取水ゲート開閉制御部(35)とを有し、
取水ゲート開閉制御部(35)は、
前記水槽水位が0以下であって、前記発電機(6)の出力が最大出力になっていない場合であって、堰放流量が0以上である場合に、前記取水ゲート(5)を開いて増水するように制御する。
したがって、上記構成によれば、発電機出力および堰放流量を監視して、水槽水位が0でなく、発電機出力が最大出力未満であって堰放流量が0を超えている場合に増水制御を行うようにしている。そのため、水槽水位も上げることも可能であって、まだ発電機における出力の増加が見込める場合であって、堰放流が行われている場合に、取水ゲートを開けて取水量を増加(増水)させることができるので、溢水電力の低下を図ることができる。
【0045】
本実施の形態に係る取水制御システム(1)は、
取水ゲート(5)から発電機(6)への導水路(3)の水位を検出する導水路水位検出部(12)を有し、
前記取水ゲート開閉制御部(35)は、
所定のH-Q曲線を利用して、現在の導水路基準水位(現在水位)としての第1の水位をH-Q換算して得られた第1の使用水量(現在使用水量)に、前記堰からあふれ出した堰放流量、または、最大使用水量から発電機使用水量を減じて得られる増水可能使用水量のいずれか小さい方を増水量として、当該増水量を前記第1の使用水量に加算して第2の使用水量を算出し、前記H-Q曲線テーブルを利用して、前記第2の使用水量をQ-H換算して得られた第2の水位を算出し、
前記第2の水位に基づいて前記取水ゲートを開いて増水するように制御する。
したがって、上記構成によれば、増水制御における増水量をH-Q曲線を利用して、現在導水路水位を現在使用水量に換算し、堰放流量または増水可能使用水量のいずれか小さい方を増水量として、当該増水量を現在使用水量に加算したものをQ-H換算して得られた目標水位を算出し、この目標水位に基づいて前記取水ゲートを開いて増水するように制御している。そのため、増水制御における増水量を適切な値に設定することができる。
【0046】
本実施の形態に係る取水制御システム(1)においては、
前記取水ゲート開閉制御部(35)は、
前記水槽水位が所定の上限値未満であり、かつ第1の水位が所定の上限値未満である場合に、前記第2の水位に基づいて前記取水ゲートを開いて増水するように制御する。
したがって、上記構成によれば、水槽水位が所定の上限値未満であり、かつ第1の水位が所定の上限値未満である場合にのみ増水制御を行っているので、水槽水位が所定の上限値を超えたときに起こりうる発電機出力の超過状態を抑制することができる。
【0047】
本実施の形態に係る取水制御システム(1)においては、
前記水槽水位が0を超えている場合に、
前記取水ゲート開閉制御部(35)は、
前記H-Q曲線を利用して、現在の導水路基準水位(現在水位)としての第1の水位をH-Q換算して得られた現在の使用水量を第1の使用水量として、当該第1の使用水量から発電機使用水量と予め設定された最大使用水量の差分である使用水量超過分を減算して第2の使用水量を算出し、前記H-Q曲線テーブルを利用して、前記第2の使用水量をQ-H換算して得られた第2の水位を算出し、前記第2の水位に基づいて前記取水ゲートを閉めて減水するように制御する。
したがって、上記構成によれば、減水制御における減水量をH-Q曲線を利用して、現在水位をH-Q換算して得られた現在使用水量から発電機使用水量と予め設定された最大使用水量の差分である使用水量超過分を減算して目標水量を算出し、H-Q曲線テーブルを利用して、目標水量をQ-H換算して得られた目標水位に基づいて取水ゲートを閉めて減水するように制御している。そのため、減水制御における減水量を適切な値に設定することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 取水制御システム
2 堰
3 導水路
4 水槽(ヘッドタンク)
5 取水ゲート
6 発電機
7 スクリーン
10 取水ゲート制御装置
11 堰水位検出部
12 導水路水位検出部
20 発電機制御装置
21 水槽水位検出部
23 堰放流量検出部
24 制御部
25 記憶部
31 水槽水位判定部
32 発電機出力判定部
33 導水路水位判定部
34 堰放流量判定部
35 取水ゲート開閉制御部