(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043520
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】回転電機の端子台
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20230322BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151200
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽我 高行
【テーマコード(参考)】
5H604
5H605
【Fターム(参考)】
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604DA02
5H604DB01
5H604QA04
5H604QB03
5H604QB16
5H605CC06
5H605EC07
5H605EC08
5H605GG02
5H605GG06
5H605GG18
(57)【要約】
【課題】回転電機の動力線の安定的な保持と、サージ電圧の抑制とを両立することのできる回転電機の端子台を提供すること。
【解決手段】帯状の形状で形成され、帯状の延在方向における一端側に電源端子31を有し、他端側に固定子接続部35を有する3つのバスバー30と、内側にバスバー30を通して3つのバスバー30を相対移動不可に保持する樹脂成形部21と、を備え、3つのバスバー30は、3つのバスバー30が厚み方向に互いに離隔しつつ重なって配置される区間であり樹脂成形部21の内側に位置する重なり部40を有し、樹脂成形部21は、バスバー30における重なり部40の位置ではバスバー30の厚み方向において隣り合うバスバー30同士の間に樹脂材料が入り込むことにより、バスバー30同士を離隔させた状態でバスバー30を保持する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなり帯状の形状で形成され、帯状の延在方向における一端側に外部電源の端子を接続可能な電源端子を有し、他端側に回転電機が有する固定子巻線に接続可能な固定子接続部を有する3つのバスバーと、
樹脂材料からなり、内側に3つの前記バスバーを通して3つの前記バスバーを相対移動不可に保持する樹脂成形部と、
を備え、
前記電源端子は、帯状の厚み方向に前記バスバーが折り曲げられることにより前記外部電源の端子を接続可能に形成され、
前記固定子接続部は、前記固定子巻線に溶接される複数の巻線接続端子を有することにより前記固定子巻線に接続可能に形成され、
3つの前記バスバーは、それぞれの前記電源端子が帯状の形状で形成される前記バスバーの幅方向に並んで前記樹脂成形部から露出し、且つ、3つの前記バスバーにおけるそれぞれの前記固定子接続部が、前記樹脂成形部における前記電源端子が露出する側の反対側から前記樹脂成形部の外側に露出し、
3つの前記バスバーは、3つの前記バスバーが厚み方向に互いに離隔しつつ重なって配置される区間であり前記樹脂成形部の内側に位置する重なり部を有し、
前記樹脂成形部は、前記バスバーにおける前記重なり部の位置では前記バスバーの厚み方向において隣り合う前記バスバー同士の間に樹脂材料が入り込むことにより、前記バスバー同士を離隔させた状態で前記バスバーを保持することを特徴とする回転電機の端子台。
【請求項2】
前記樹脂成形部は、3つの前記バスバーの延在方向におけるそれぞれの前記固定子接続部が位置する側の部分を、前記電源端子が露出する側の反対の面側から外側に延在させることにより前記固定子接続部を前記樹脂成形部の外側に露出させる請求項1に記載の回転電機の端子台。
【請求項3】
前記電源端子が並べて配置される3つの前記バスバーのうち、前記電源端子が並べられる方向における中央に位置する前記バスバーは、前記電源端子が並べられる方向において曲げられることなく前記電源端子側から前記固定子接続部側に向かって直線状に形成され、
前記電源端子が並べて配置される3つの前記バスバーのうち、両端に位置する前記バスバーは、それぞれ前記電源端子側から前記固定子接続部側に向かいつつ、中央に位置する前記バスバーに対して前記バスバーの厚み方向に重なって交差することにより、それぞれ前記電源端子が並べられる方向における中央の前記バスバーに対する前記固定子接続部の位置が前記電源端子が位置する側の反対側に位置し、
3つの前記バスバーは、前記バスバーの厚み方向に重なって交差することにより、前記重なり部を形成する請求項1または2に記載の回転電機の端子台。
【請求項4】
前記電源端子が並べて配置される3つの前記バスバーのうち、前記電源端子が並べられる方向における中央に位置する前記バスバーは、前記電源端子が並べられる方向において曲げられることなく前記電源端子側から前記固定子接続部側に向かって直線状に形成され、
前記電源端子が並べて配置される3つの前記バスバーのうち、両端に位置する前記バスバーは、それぞれ前記電源端子と前記固定子接続部との間の位置に、前記電源端子が並べられる方向において中央に位置する前記バスバー側に延び、且つ、折り返されるUターン部を有すると共に、それぞれ前記電源端子が並べられる方向における中央の前記バスバーに対する前記固定子接続部の位置が前記電源端子が位置する側と同じ側に位置し、
3つの前記バスバーは、前記Uターン部がそれぞれ中央に位置する前記バスバーに対して前記バスバーの厚み方向に重なることにより、前記重なり部を形成する請求項1または2に記載の回転電機の端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機が有する固定子巻線と、回転電機に対して電力を供給する外部電源を接続する端子台は、口出し線でつながれている。平角線を使用した固定子巻線の場合、口出し線は絶縁被覆を有する導体を固定子巻線に溶接し反対側は固定穴を持った端子を端子台にボルト固定するのが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたバスバーユニットでは、回転電機の各相のコイルと外部電源とをそれぞれ電気的に接続する複数のバスバーをまとめて被覆して、複数のバスバー同士を電気的に絶縁した状態で成形された外側保持部を備えている。また、特許文献2に記載された回転電機用ステータでは、複数相のコイルと各相の端子部材を接続する各動力線は、その長手方向の少なくとも一部において互いに接触または近接して延伸している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-23222号公報
【特許文献2】特開2016-158452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、複数のバスバーを外側保持部で保持する場合、各相バスバーを別部品である外側保持部で保持しなければならず、またこれらのように外側保持部で保持された端子部を、さらに別部品の端子台に固定する必要がある。また、特許文献2のように、絶縁被覆導線を成形して各相を接触または近接させ端子台まで導き、ボルトによって固定をした場合、動力線の距離が不安定になる虞がある。これらのように、回転電機側の動力線を保持して動力線と外部電源端子とを安定的に接続するためには、いずれの場合においても外部電源端子を接続するための端子台を設置するのが有効的である。
【0006】
しかし、特許文献2のように、サージ電圧の低減を目的として動力線を接触させたり近接させたりする場合、動力線を端子台に接続しても、動力線の接触や近接は維持し難くなる。これらのように、回転電機側の動力線を保持する端子台を、さらにサージ電圧の低減も考慮して設けるのは、大変困難なものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回転電機の動力線の安定的な保持と、サージ電圧の抑制とを両立することのできる回転電機の端子台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の回転電機の端子台は、金属材料からなり帯状の形状で形成され、帯状の延在方向における一端側に外部電源の端子を接続可能な電源端子を有し、他端側に回転電機が有する固定子巻線に接続可能な固定子接続部を有する3つのバスバーと、樹脂材料からなり、内側に3つの前記バスバーを通して3つの前記バスバーを相対移動不可に保持する樹脂成形部と、を備え、前記電源端子は、帯状の厚み方向に前記バスバーが折り曲げられることにより前記外部電源の端子を接続可能に形成され、前記固定子接続部は、前記固定子巻線に溶接される複数の巻線接続端子を有することにより前記固定子巻線に接続可能に形成され、3つの前記バスバーは、それぞれの前記電源端子が帯状の形状で形成される前記バスバーの幅方向に並んで前記樹脂成形部から露出し、且つ、3つの前記バスバーにおけるそれぞれの前記固定子接続部が、前記樹脂成形部における前記電源端子が露出する側の反対側から前記樹脂成形部の外側に露出し、3つの前記バスバーは、3つの前記バスバーが厚み方向に互いに離隔しつつ重なって配置される区間であり前記樹脂成形部の内側に位置する重なり部を有し、前記樹脂成形部は、前記バスバーにおける前記重なり部の位置では前記バスバーの厚み方向において隣り合う前記バスバー同士の間に樹脂材料が入り込むことにより、前記バスバー同士を離隔させた状態で前記バスバーを保持する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る端子台が適用される回転電機の要部斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す固定子と端子台とを抜き出した詳細図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す端子台におけるバスバーの配置状態を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る端子台の変形例を示す説明図であり、バスバーの配置状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0011】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態に係る回転電機の端子台の一例について説明する。
【0012】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る端子台20が適用される回転電機1の要部斜視図である。実施形態に係る回転電機1は、略円筒形の形状で形成される部分を含む外郭ケース3と、外郭ケース3の内周面に配置される固定子10とを有している。回転電機1は、固定子10の内側に、回転子(図示省略)が取り付けられて固定子10に対して相対回転をするロータシャフト(図示省略)が配置されることにより構成されている。
【0013】
外郭ケース3は、回転電機1におけるケーシングとして設けられており、金属材料からなる略筒状の形状で形成されている。外郭ケース3は、外郭ケース3の形状である円筒の軸方向における端部に、鏡蓋(図示省略)を取り付ける取付面3aが形成されている。外郭ケース3は、ボルトを用いて鏡蓋を取付面3aに取り付けることにより、外郭ケース3の内側を閉塞することが可能になっている。
【0014】
外郭ケース3には、端子台20を取り付ける端子台取付部5が設けられている。端子台取付部5は、外郭ケース3の形状である円筒の軸方向における、一端寄りの位置に配置されており、外郭ケース3の外周面から、外郭ケース3の形状である円筒の径方向における外側に突出して形成されている。端子台取付部5は、取付面3aと同一平面上で開口する箱状に形成されており、外郭ケース3の取付面3aから連続する取付面5aが形成されている。端子台取付部5の取付面5aには、鏡蓋とは独立して端子台取付部5の取付面5aに取り付けられることにより、端子台取付部5の開口部を塞ぐ蓋部(図示省略)を取り付けることが可能になっている。また、端子台取付部5の内側には、端子台20を取り付けるための取付ボルト6が螺合するねじ孔(図示省略)が形成されている。
【0015】
端子台20は、回転電機1に対して電力を供給する外部電源(図示省略)が接続される部位になっている。端子台20は、端子台取付部5の内側に配置され、取付ボルト6によって端子台20を取り付けることが可能になっている。本実施形態では、端子台20は、3本の取付ボルト6によって端子台取付部5に取り付けられる。取付ボルト6は、外郭ケース3の形状である円筒の軸方向に沿った向きで、端子台取付部5に形成されるねじ孔に螺合する。
【0016】
図2は、
図1に示す固定子と端子台とを抜き出した詳細図である。固定子10は、固定子コア11と、固定子巻線15とを有している。固定子コア11は、外径が外郭ケース3の内径とほぼ同じ大きさとなる、略円筒形の形状で形成される鉄心になっている。固定子コア11の内周面側には、円筒の軸方向に延びる多数の溝12が円周方向に並んで形成されており、固定子巻線15は、固定子コア11の内周面側に、固定子コア11の多数の溝12に通されて配置されている。
【0017】
固定子巻線15は、U相とV相とW相により構成された、3相の巻線になっている。このため、固定子巻線15は、U相とV相とW相とのそれぞれに対応する巻線を有している。U相とV相とW相とのそれぞれに対応する巻線は、固定子コア11の形状である円筒の軸方向における、端子台20が位置する側の反対側の端部側で、溶接等により互いに接続されている。これらのように固定子コア11と固定子巻線15とを有して構成される固定子10は、略円環状の形態で、外郭ケース3の内周面に配置されている。
【0018】
端子台20は、金属材料からなり帯状の形状で形成される3つのバスバー30と、3つのバスバー30と一体に成形されてバスバー30を保持する樹脂成形部21とを有している。樹脂成形部21は、樹脂材料からなり、内側にバスバー30を通してバスバー30に固定されることにより、3つのバスバー30を相対移動不可に保持する。つまり、樹脂成形部21は、3つのバスバー30のそれぞれの一部が樹脂成形部21内に位置する状態で成形されることにより、3つのバスバー30と一体に成形されてバスバー30に固定され、3つのバスバー30を互いに相対移動不可の状態で保持する。バスバー30における樹脂成形部21によって保持されていない部分は、樹脂成形部21から露出している。
【0019】
3つのバスバー30はそれぞれ、帯状の形状で形成されるバスバー30の延在方向における一端側に、外部電源の端子を接続可能な電源端子31を有し、他端側に回転電機1が有する固定子巻線15に接続可能な固定子接続35部を有している。即ち、バスバー30は、外部電源から供給される電力を回転電機1に供給する動力線になっており、バスバー30は、固定子巻線15のU相とV相とW相とに対応して3つが設けられている。これらの3つのバスバー30は、それぞれのバスバー30が、電源端子31と固定子接続部35を有している。3つのバスバー30は、それぞれの電源端子31が、一方向に並んで樹脂成形部21から露出して配置されている。詳しくは、3つのバスバー30は、それぞれの電源端子31が、帯状の形状で形成されるバスバー30の幅方向に並んで、樹脂成形部21から露出して配置されている。
【0020】
3つのバスバー30を、これらのように保持する樹脂成形部21は、3つのバスバー30の電源端子31が並ぶ方向が長手方向となる、直方体に近い形状で形成されている。なお、以下の説明では、3つのバスバー30の電源端子31が並ぶ方向を、並び方向と称して説明する。
【0021】
また、帯状の形状で形成される各バスバー30は、電源端子31から固定子接続部35に亘って延在しており、固定子接続部35が、樹脂成形部21における電源端子31が露出する側の反対側から樹脂成形部21の外側に露出している。つまり、樹脂成形部21は、3つのバスバー30におけるそれぞれの固定子接続部35が位置する側を、電源端子31が露出する側の反対の面側から外側に延在させることにより、固定子接続部35を樹脂成形部21の外側に露出させている。
【0022】
バスバー30が有する固定子接続部35は、固定子巻線15における接続部分に合わせて分岐している。詳しくは、本実施形態に係る回転電機1は、固定子巻線15のU相とV相とW相とのそれぞれが、2本の動力線が並列で配置されることにより2並列で構成されている。バスバー30は、2並列の固定子巻線15に独立して接続することができるように、固定子接続部35が2本の巻線接続端子36に分岐している。3本のバスバー30は、固定子巻線15のU相、V相、W相の3相のうち、それぞれのバスバー30に対応する相の2並列の固定子巻線15に対して、各バスバー30の固定子接続部35が有する2本の巻線接続端子36が接続されている。固定子接続部35の各巻線接続端子36は、固定子巻線15に対して溶接により接続されている。
【0023】
図3は、
図2に示す端子台20の斜視図である。端子台20は、第1バスバー30aと、第2バスバー30bと、第3バスバー30cとの3つのバスバー30を有している。即ち、端子台20が取り付けられる回転電機1は、固定子巻線15が3相となっているため、固定子巻線15に対して電力を供給するバスバー30は、3相の固定子巻線15に合わせて3つが設けられている。樹脂材料からなる樹脂成形部21は、これらのように設けられる3つのバスバー30と一体に成形され、バスバー30を保持している。
【0024】
3つのバスバー30における、樹脂成形部21から露出する固定子接続部35側の部分は、3つのバスバー30が並び方向に並んで、それぞれ樹脂成形部21から樹脂成形部21の外側に露出している。このため、バスバー30の固定子接続部35は、このように樹脂成形部21の外側で並んで配置される各バスバー30における先端部分に位置している。
【0025】
固定子接続部35が有する巻線接続端子36は、固定子接続部35において角棒状の形状で2本に分岐して、それぞれ固定子巻線15に対して溶接可能になっている。各バスバー30の固定子接続部35が有する巻線接続端子36は、バスバー30の厚み方向に折り曲げられている。これにより、巻線接続端子36は、端子台20を端子台取付部5に取り付けた際に、固定子コア11の軸方向に沿った方向に延びる向きで形成されている。
【0026】
また、固定子接続部35が接続される固定子巻線15が配置される固定子コア11は、略円筒形の形状で形成されているため、固定子巻線15における、固定子接続部35が接続される部分も、固定子コア11の形状である円筒の中心軸を中心とする円弧上に概ね位置することになる(
図2参照)。このため、3つのバスバー30の固定子接続部35がそれぞれ有する複数の巻線接続端子36は、円弧上に位置する、固定子巻線15における固定子接続部35が接続される部分に合わせて、樹脂成形部21からの相対的な距離や相対的な角度が、互いに異なっている。
【0027】
樹脂成形部21には、樹脂成形部21を回転電機1が有する外郭ケース3に設けられる端子台取付部5への、樹脂成形部21の取り付けに用いられるボルト固定部22が配置されている。ボルト固定部22には、樹脂成形部21の取り付けに用いる取付ボルト6用の孔であるボルト孔23が形成されており、ボルト孔23は、樹脂成形部21を端子台取付部5に取り付ける際に、取付ボルト6を通すことが可能になっている。
【0028】
本実施形態では、ボルト固定部22は、樹脂成形部21における、電源端子31が並べられる方向における樹脂成形部21の両側と、樹脂成形部21におけるバスバー30の固定子接続部35側が露出する側の面である端子台底面25との3箇所に配置されている。このうち、樹脂成形部21の端子台底面25に配置されるボルト固定部22は、バスバー30の並び方向において隣り合うバスバー30同士の間に配置されている。ボルト固定部22は、これらのように、樹脂成形部21の長手方向における両端の2箇所と、樹脂成形部21の端子台底面25における隣り合うバスバー30同士の間の1箇所との、合計3箇所に配置されている。
【0029】
このように配置されるボルト固定部22は、バスバー30の固定子接続部35が有する巻線接続端子36の延在方向における位置が、同方向における固定子接続部35の位置に近い位置になっている。つまり、ボルト固定部22と、バスバー30の固定子接続部35とは、端子台20を端子台取付部5に取り付けた際における、固定子コア11の軸方向における位置が、互いに近い位置となって配置されている。詳しくは、バスバー30は、固定子コア11の軸方向における固定子接続部35の位置が、同方向におけるボルト固定部22の位置と近い位置になるように、バスバー30における端子台底面25から露出している部分がバスバー30の厚み方向に屈曲している。これにより、ボルト固定部22と、バスバー30の固定子接続部35とは、固定子コア11の軸方向における位置が、互いに近い位置となって配置されている。
【0030】
バスバー30は、これらのように、樹脂成形部21のボルト固定部22と、固定子接続部35との相対的な位置関係が、回転電機1の端子台取付部5と、固定子10の固定子巻線15における固定子接続部35を溶接する部分との相対的な位置関係に適合するように、バスバー30における端子台底面25から露出する部分が、バスバー30の厚み方向に屈曲することによって調節されている。
【0031】
図4は、
図3に示す端子台20におけるバスバー30の配置状態を示す説明図である。なお、
図4は、
図3に示す端子台20から樹脂成形部21を取り除いてバスバー30のみを取り出した状態の斜視図であり、樹脂成形部21により一体成形されている3つのバスバー30の配置状態を示す説明図になっている。
【0032】
詳しくは、金属材料からなる3つのバスバー30は、
図4に示すように、帯状の形状、或いは、幅が狭い板状の形成されており、帯状の延在方向における一端側に電源端子31を有し、他端側に固定子接続部35を有している。これらの電源端子31と固定子接続部35とは、3つのバスバー30が樹脂成形部21によって一体に保持されている状態においても、樹脂成形部21から露出している(
図2参照)。
【0033】
電源端子31は、帯状のバスバー30が、厚み方向に約90°折り曲げられることにより形成されており、折り曲げた部分における、折り曲げの劣角側となる面に、ナット32が溶接により取り付けられている。また、電源端子31におけるナット32が取り付けられている部分には、バスバー30の板の厚み方向に貫通する孔であり、ナット32のねじ孔に連通する貫通孔(図示省略)が形成されている。
【0034】
3つのバスバー30は、それぞれに形成される電源端子31を、ナット32が取り付けられる側の面が同じ方向を向きで、且つ、折り曲げの角部が、ナット32が取り付けられる部分に対して同じ側に位置する向きで、一方向、即ち、並び方向に並べて配置されている。また、3つのバスバー30は、電源端子31におけるナット32が取り付けられる面の反対側の面が、略同一平面上に位置する位置関係で配置される。電源端子31は、3つのバスバー30が樹脂成形部21によって一体に保持した状態においては、ナット32が取り付けられる面の反対側の面が、樹脂成形部21における外側を向く向きで配置されており、端子台20における表面を成している。
【0035】
バスバー30が有する電源端子31は、厚み方向に折り曲げられて形成されているため、電源端子31は、バスバー30において厚み方向に突出している。このため、バスバー30を保持する樹脂成形部21には、電源端子31の周囲を覆う張り出し部26(
図2、
図3参照)が形成されている。張り出し部26は、直方体状の形状で形成される樹脂成形部21において、電源端子31が折り曲げられる方向に張り出して形成されている。
【0036】
3つのバスバー30は、電源端子31から同じ側に向かって延びて形成される。つまり、3つのバスバー30は、電源端子31から、電源端子31におけるナット32が取り付けられる面が位置する側に延びて形成されている。このため、バスバー30の固定子接続部35は、電源端子31から見た場合、電源端子31におけるナット32が取り付けられる面側に位置している。
【0037】
これらのように電源端子31から延びる3つのバスバー30は、互いに離隔しつつバスバー30の厚み方向に重ねて配置される区間である重なり部40を形成して配置されている。つまり、樹脂成形部21は、バスバー30の重なり部40を樹脂成形部21の内側に位置させ、バスバー30における重なり部40の位置ではバスバー30の厚み方向において隣り合うバスバー30同士の間に樹脂材料が入り込むことにより、バスバー30同士を離隔させた状態でバスバー30を保持している。
【0038】
本実施形態では、3つのバスバー30は、3つが並べられる電源端子31のうち、並び方向における両端に位置する電源端子31に対応する2つのバスバー30は、重なり部40で交差し、中央のバスバー30に対する相対的な位置が、電源端子31側と固定子接続部35側とで入れ替わっている。
【0039】
詳しくは、3つが並べられる電源端子31のうち、並び方向における一端側に位置する電源端子31を有するバスバー30である第1バスバー30aは、電源端子31から固定子接続部35に向かって延びつつ、電源端子31の並び方向における他端側に向かって延びている。これとは反対に、3つが並べられる電源端子31のうち、並び方向における他端側に位置する電源端子31を有するバスバー30である第3バスバー30cは、電源端子31から固定子接続部35に向かって延びつつ、電源端子31の並び方向における一端側に向かって延びている。
【0040】
一方で、3つが並べられる電源端子31のうち、並び方向における中央に位置する電源端子31を有するバスバー30である第2バスバー30bは、電源端子31から固定子接続部35に向かって延びる際に、並び方向における位置が変化することなく、固定子接続部35に向かって延びている。即ち、第2バスバー30bは、並び方向において曲げられることなく、電源端子31側から固定子接続部35側に向かって直線状に形成されている。
【0041】
これらにより、3つのバスバー30は、固定子接続部35の位置での並び方向におけるバスバー30の配置の順番が、電源端子31の位置での並び方向におけるバスバー30の配置の順番に対して逆になっている。つまり、電源端子31の位置では、バスバー30は並び方向における一端側から他端側に向かって、第1バスバー30a、第2バスバー30b、第3バスバー30cの順で並んでいるのに対し、固定子接続部35の位置では、バスバー30は並び方向における一端側から他端側に向かって、第3バスバー30c、第2バスバー30b、第1バスバー30aの順で並んでいる。
【0042】
3つのバスバー30は、これらのように電源端子31側での並びの順番と固定子接続部35側での並びの順番が異なっているため、バスバー30は、電源端子31と固定子接続部35との間で交差している。このように、電源端子31と固定子接続部35との間でバスバー30同士が交差する部分が、本実施形態では重なり部40になっている。
【0043】
換言すると、電源端子31が並べて配置される3つのバスバー30のうち、電源端子31が並べられる方向における両端に位置するバスバー30は、それぞれ電源端子31側から固定子接続部35側に向かいつつ、中央に位置するバスバー30に対してバスバー30の厚み方向に重なって交差することにより、電源端子31が並べられる方向における中央のバスバー30に対する固定子接続部35の位置が、電源端子31が位置する側の反対側に位置している。3つのバスバー30は、このようにバスバー30の厚み方向に重なって交差することにより、重なり部40を形成する。
【0044】
即ち、3つのバスバー30のうち、電源端子31の位置において並び方向における両端に位置する第1バスバー30aと第3バスバー30cとは、重なり部40で交差し、中央のバスバー30である第2バスバー30bに対する相対的な位置が、電源端子31側と固定子接続部35側とで入れ替わっている。その際に、バスバー30は、重なり部40では第1バスバー30aと第3バスバー30cとのみでなく、第2バスバー30bも重なって配置されている。
【0045】
具体的には、3つのバスバー30のうち、電源端子31が、第2バスバー30bの電源端子31に対して並び方向における一端側に位置する第1バスバー30aは、電源端子31側から固定子接続部35側に向かって延びる際に、並び方向における一端側から他端側に向かっても延びている。これにより、第1バスバー30aの固定子接続部35は、第2バスバー30bの固定子接続部35に対して並び方向における他端側に位置しており、第1バスバー30aは、電源端子31と固定子接続部35との間の部分で、第2バスバー30bに対して交差している。第1バスバー30aは、第2バスバー30bに対して、バスバー30に厚み方向に離隔しつつ、互いに対向する面が略平行となる向きで交差している。
【0046】
また、3つのバスバー30のうち、電源端子31が、第2バスバー30bの電源端子31に対して並び方向における他端側に位置する第3バスバー30cは、電源端子31側から固定子接続部35側に向かって延びる際に、並び方向における他端側から一端側に向かっても延びている。これにより、第3バスバー30cの固定子接続部35は、第2バスバー30bの固定子接続部35に対して並び方向における一端側に位置しており、第3バスバー30cは、電源端子31と固定子接続部35との間の部分で、第2バスバー30bに対して交差している。第3バスバー30cは、第2バスバー30bに対して、バスバー30に厚み方向に離隔しつつ、互いに対向する面が略平行となる向きで交差している。
【0047】
さらに、第3バスバー30cは、第1バスバー30aと第2バスバー30bとが交差する位置で第2バスバー30bに対して交差しており、第2バスバー30bにおける、第1バスバー30aに対して対向する面の反対側の面に対向して交差している。このように、第1バスバー30aと第2バスバー30bと第3バスバー30cとが交差する部分は、第2バスバー30bを間に挟んで互いに離隔しつつ、第1バスバー30aと第2バスバー30bと第3バスバー30cとがバスバー30の厚み方向に重ねて配置される重なり部40になっている。これらのように重なり部40で重ねられるバスバー30は、電源端子31と固定子接続部35との間で厚み方向に屈曲し、バスバー30同士の間で厚み方向における位置が調節されることにより、重なり部40で重ねられる。
【0048】
これらのように形成されるバスバー30の重なり部40は、樹脂成形部21の内側に位置し、重なり部40におけるバスバー30同士の間に、樹脂成形部21を形成する樹脂が入り込んだ状態で樹脂成形部21に固定され、保持されている。このため、3つのバスバー30が、樹脂成形部21によって相対移動不可となって保持された状態では、重なり部40の位置では、バスバー30は、バスバー30同士の間に位置する樹脂によってバスバー30同士が厚み方向に離隔しつつ、重ねられて配置される。重なり部40における離隔するバスバー30同士の距離は、バスバー30を通じて回転電機1に対して電力を供給する際に、回転電機1の通常の運転時にバスバー30同士の間で電力の絶縁を行いつつ、バスバー30同士の距離を極力小さくして近接させることのできる距離になっている。
【0049】
本実施形態に係る回転電機1の端子台20は、以上のような構成を含み、以下、その作用の一例について説明する。本実施形態に係る端子台20は、外部電源の端子の配列の順番に対して、回転電機1が有する固定子巻線15のU相、V相、W相に対して印加する順番を入れ替えて接続する回転電機1に取り付けられる。
【0050】
端子台20を回転電機1に取り付ける際には、まず、端子台20を回転電機1の外郭ケース3に設けられる端子台取付部5に取り付ける。端子台20は、バスバー30における固定子接続部35側の部分が、回転電機1の径方向における内側に位置する向きで、樹脂成形部21に形成されるボルト固定部22によって端子台取付部5に取り付ける。即ち、端子台20は、樹脂成形部21に形成されるボルト固定部22のボルト孔23に取付ボルト6を通し、端子台取付部5に形成されるねじ孔(図示省略)に取付ボルト6を螺合させることにより、端子台取付部5に取り付ける。
【0051】
端子台20を端子台取付部5に取り付けたら、バスバー30の固定子接続部35を、回転電機1が有する固定子巻線15に溶接する。バスバー30は、3相の固定子巻線15に対して3つが設けられているため、固定子巻線15への固定子接続部35の溶接は、固定子巻線15の3相のそれぞれの相に対応するバスバー30の固定子接続部35を、固定子巻線15に溶接する。
【0052】
本実施形態では、回転電機1の固定子巻線15は、U相とV相とW相とのそれぞれが2並列で構成されており、バスバー30の固定子接続部35は、これに対応して各固定子接続部35が2本の巻線接続端子36を有している。このため、固定子接続部35を固定子巻線15に溶接する際には、固定子巻線15の相ごとに、相に対応するバスバー30の固定子接続部35が有する2本の巻線接続端子36を独立して溶接する。これにより、端子台20を回転電機1に取り付ける。
【0053】
端子台20を回転電機1に取り付け、回転電機1のその他の部分も組み立てた後、回転電機1を駆動させる際には、外部電源の端子(図示省略)を、電源端子31に接続する。外部電源の端子を電源端子31に接続する際には、電源端子31に取り付けられるナット32のサイズに適合するボルト(図示省略)を使用して接続する。つまり、電源端子31におけるナット32が取り付けられている側の反対の面側に外部電源の端子を位置させ、当該端子に形成されるボルト孔にボルトを通し、当該端子を電源端子31とボルトで挟み込んだ状態で、ボルトをナット32に螺合させる。これにより、外部電源の端子を、端子台20の電源端子31に電気的に接続する。
【0054】
外部電源の端子が接続された回転電機1を駆動させる際には、外部電源から、外部電源の端子が接続される電源端子31、即ち、端子台20で保持するバスバー30に対して電力を供給する。バスバー30に対して供給された電力は、バスバー30から固定子10の固定子巻線15に対して供給される。
【0055】
固定子10は、固定子巻線15に供給された電力により磁力を発生する。その際に、固定子10は、3つのバスバー30が接続される固定子巻線15の3相で、外部電源からの電力供給に応じて順に磁力が発生する。ロータシャフト(図示省略)に取り付けられる回転子(図示省略)は、固定子10で発生する磁力により、回転子が有する永久磁石と固定子10との間で吸引力や反発力が発生し、ロータシャフトと一体となって回転する。これにより、回転電機1は、回転駆動をする。
【0056】
ここで、回転電機1は、起動時等に瞬間的に発生する大きな電圧である、いわゆるサージ電圧が発生することがある。サージ電圧は、電圧が非常に大きいため、サージ電圧が発生した場合、回転電機1の電気回路に損傷が発生する虞があるが、本実施形態に係る端子台20は、バスバー30同士を小さな距離で離隔させつつ重ねる重なり部40を有している。また、樹脂成形部21は、重なり部40の位置では、バスバー30の厚み方向において隣り合うバスバー30同士の間に樹脂材料が入り込むことにより、バスバー30同士を離隔させた状態でバスバー30を保持している。このため、サージ電圧で発生した場合、異相間のサージ電圧を、重なり部40の位置でバスバー30同士の間で逃がすことができる。これにより、サージ電圧が発生する状況でも、電圧が大きくなり過ぎることを抑制でき、サージ電圧を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る端子台20は、外部電源から供給される電力を回転電機1に対して供給する動力線である3つのバスバー30を、樹脂成形部21によって相対移動不可に保持している。このため、バスバー30を保持するための部材を別途用いることなく、端子台20と固定子巻線15との間に安定してバスバー30を配置することができる。これらの結果、回転電機1の動力線の安定的な保持と、サージ電圧の抑制とを両立することができる。
【0058】
また、3つのバスバー30を樹脂成形部21で一体化するので、端子台20の構造を単純な構成にすることができる。また、3つのバスバー30を1つの樹脂成形部21で一体成形するので、バスバー30の位置が固定されて、バスバー30と固定子巻線15との溶接が容易になる。これらにより、部品構成を簡素化することができるため、部品コストを削減することができ、また、組み立て工数を削減することができる。
【0059】
また、3つのバスバー30は、重なり部40の位置で近接しているため、各バスバー30の熱を、他のバスバー30へと分散することができる。この結果、バスバー30の温度が高くなり過ぎることに起因する電気回路の損傷を抑制することができる。
【0060】
また、3つのバスバー30は、電源端子31が並べられる方向における両端に位置するバスバー30が、それぞれ電源端子31側から固定子接続部35側に向かいつつ、中央に位置するバスバー30に対して重なり部40で交差している。つまり、3つのバスバー30は、並び方向における両端に位置する電源端子31に対応する2つのバスバー30が、重なり部40で交差しており、並び方向における中央のバスバー30に対する相対的な位置が、電源端子31側と固定子接続部35側とで入れ替わっている。
【0061】
これにより、電源端子31に接続される外部電源の端子の配列の順番と、端子台20側から見た固定子巻線15のU相、V相、W相の順番とが反対となる回転電機1において、バスバー30同士を離隔させつつ近接させる重なり部40を効率よく設けることができる。この結果、電力の供給経路が電源端子31側と固定子接続部35側とで入れ替わる回転電機1において、回転電機1の動力線の安定的な保持と、サージ電圧の抑制とを両立することができる。
【0062】
また、バスバー30が有する固定子接続部35は、固定子巻線15における接続部分に合わせて分岐しているため、固定子巻線15が複数並列の場合でも、電力の経路を相ごとに1つのバスバー30にまとめることができる。この結果、回転電機1の動力線をより容易に安定的に保持することができる。
【0063】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、バスバー30は、重なり部40で交差しているが、バスバー30は重なり部40で交差していなくてもよい。
図5は、実施形態に係る端子台20の変形例を示す説明図であり、バスバー30の配置状態を示す説明図である。なお、
図5は、端子台20から樹脂成形部21を取り除いてバスバー30のみを取り出した状態の斜視図及び平面図であり、樹脂成形部21により一体成形されている3つのバスバー30の配置状態を示す説明図になっている。また、
図5では、樹脂成形部21を図示していないが、樹脂成形部21は、上述した実施形態と同じ形態で形成されている。
【0064】
端子台20が有する3つのバスバー30は、例えば、
図5に示すように、電源端子31側と固定子接続部35側とで、3つのバスバー30の並び方向における配置の順番が変わることなく、重なり部40でバスバー30の厚み方向に重ねられていてもよい。
【0065】
つまり、電源端子31が並べて配置される3つのバスバー30のうち、電源端子31が並べられる方向における両端に位置するバスバー30は、それぞれ電源端子31と固定子接続部35との間の位置に、中央に位置するバスバー30側に延び、且つ、折り返されるUターン部38を有していてもよい。この場合、3つのバスバー30は、Uターン部38がそれぞれ中央に位置するバスバー30に対してバスバー30の厚み方向に重なることにより、重なり部40を形成する。また、3つのバスバー30は、電源端子31が並べられる方向における両端に位置するバスバー30が有するUターン部38の位置で互いに重なって重なり部40を形成することにより、電源端子31が並べられる方向における両端に位置するバスバー30は、中央のバスバー30に対する固定子接続部35の位置が、電源端子31が位置する側とそれぞれ同じ側に位置する。
【0066】
具体的には、Uターン部38は、3つのバスバー30のうち、電源端子31側の位置において並び方向における一端側に位置する第1バスバー30aと、他端側に位置する第3バスバー30cとに形成される。このため、第1バスバー30aは、電源端子31から固定子接続部35に向かって延びる際に、Uターン部38の位置では、並び方向における一端側から第2バスバー30bが位置する側に向かい、第2バスバー30bと重なった後、第2バスバー30bの位置から並び方向における一端側に向かう。これにより、第1バスバー30aの固定子接続部35は、バスバー30の並び方向において電源端子31が位置する側と同じ側に配置される。このように、第1バスバー30aに形成されるUターン部38おける、第2バスバー30bに重なる部分は、第2バスバー30bと離隔しながら厚み方向に重なった状態で、第2バスバー30bに沿って電源端子31側から固定子接続部35側に向かって延びている。
【0067】
また、第3バスバー30cは、電源端子31から固定子接続部35に向かって延びる際に、Uターン部38の位置では、並び方向における他端側から第2バスバー30bが位置する側に向かい、第1バスバー30aと第2バスバー30bとが重なる位置で第1バスバー30aと第2バスバー30bとに重なった後、第2バスバー30bの位置から並び方向における他端側に向かう。これにより、第3バスバー30cの固定子接続部35は、バスバー30の並び方向において電源端子31が位置する側と同じ側に配置される。このように、第3バスバー30cに形成されるUターン部38における、第1バスバー30aと第2バスバー30bとに重なる部分は、第1バスバー30aが第2バスバー30bに重なる部分と同じ長さで形成され、第1バスバー30aと離隔しながら厚み方向に重なった状態で、第2バスバー30bに沿って電源端子31側から固定子接続部35側に向かって延びている。
【0068】
また、第3バスバー30cが第1バスバー30aと第2バスバー30bとに重なる部分では、第3バスバー30cは、第1バスバー30aにおける、第2バスバー30bに対して対向する面の反対側の面に対向して重なっている。このように、第1バスバー30aと第2バスバー30bと第3バスバー30cとが重なる部分は、第1バスバー30aと第2バスバー30bと第3バスバー30cとは互いに離隔しつつ、3つのバスバー30の厚み方向に重ねて配置される重なり部40になっている。
【0069】
3つのバスバー30を相対移動不可に保持する樹脂成形部21は、重なり部40がこのように形成される場合でも、重なり部40を樹脂成形部21の内側に位置させて成形する。これにより、重なり部40におけるバスバー30同士の間には、樹脂成形部21を形成する樹脂が入り込む。このため、バスバー30の重なり部40では、バスバー30同士の間に位置する樹脂によって、バスバー30同士が離隔しつつ重ねられて配置される。重なり部40における離隔するバスバー30同士の距離は、バスバー30を通じて回転電機1に対して電力を供給する際に、回転電機1の通常の運転時にバスバー30同士の間で電力の絶縁を行いつつ、バスバー30同士の距離を極力小さくして近接させることのできる距離になっている。
【0070】
3つのバスバー30を、このように樹脂成形部21で保持することにより、バスバー30を保持するための部材を別途用いることなく、端子台20と固定子巻線15との間に安定してバスバー30を配置することができる。
【0071】
また、第1バスバー30aの電源端子31と固定子接続部35とは並び方向における一端側に位置させ、第3バスバー30cの電源端子31と固定子接続部35とは並び方向における他端側に位置させて3つのバスバー30を重ねることにより、電源端子31側と固定子接続部35側とで並び方向における3つのバスバー30の配置の順番が変わることなく、重なり部40で3つのバスバー30を厚み方向に重ねることができる。これにより、電源端子31に接続される外部電源の端子の配列の順番と、端子台20側から見た固定子巻線15のU相、V相、W相の順番とが同じ順番になる回転電機1において、バスバー30同士を離隔させつつ近接させる重なり部40を設けることができる。
【0072】
従って、電力の供給経路が電源端子31側と固定子接続部35側とで同じ順番で並ぶ回転電機1において、異相間のサージ電圧を、重なり部40の位置でバスバー30同士の間で逃がすことができ、サージ電圧を抑制することができる。これらの結果、電力の供給経路が電源端子31側と固定子接続部35側とで同じ順番で並ぶ回転電機1において、回転電機1の動力線の安定的な保持と、サージ電圧の抑制とを両立することができる。
【0073】
また、上述した実施形態では、端子台20は、固定子巻線15のU相とV相とW相とのそれぞれが2並列で構成される回転電機1に取り付けられるが、端子台20が取り付けられる回転電機1は、固定子巻線15が2並列以外で構成される回転電機1であってもよい。端子台20が取り付けられる回転電機1は、固定子巻線15のU相とV相とW相との各相が、例えば、3並列以上であってもよく、または、各相が単列であってもよい。これらの場合、バスバー30の固定子接続部35は、固定子巻線15に接続される巻線接続端子36が、固定子巻線15の構成に応じた本数で形成されるのが好ましい。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 回転電機
3 外郭ケース
3a、5a 取付面
5 端子台取付部
6 取付ボルト
10 固定子
11 固定子コア
12 溝
15 固定子巻線
20 端子台
21 樹脂成形部
22 ボルト固定部
23 ボルト孔
25 端子台底面
26 張り出し部
30 バスバー
30a 第1バスバー
30b 第2バスバー
30c 第3バスバー
31 電源端子
32 ナット
35 固定子接続部
38 Uターン部
36 巻線接続端子
40 重なり部