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特開2023-43535保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043535
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230322BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C08J5/18
B32B27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151221
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑耶
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F071AA31
4F071AA42
4F071AB18
4F071AB26
4F071AC12
4F071AC16
4F071AE02
4F071AE09
4F071AE17
4F071AF38Y
4F071AF39Y
4F071AF40Y
4F071AH12
4F071BA03
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4F100AA21B
4F100AB11A
4F100AK25B
4F100AK53B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA02B
4F100CA13B
4F100CA23B
4F100EJ08A
4F100EJ42A
4F100GB15
4F100JB12B
4F100JG04B
4F100JK07B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】保護膜付きチップを製造するための保護膜形成フィルムであって、エンボスキャリアテープ中の保護膜付きチップをエンボスキャリアテープから取り出すときに、エンボスキャリアテープを構成しているカバーテープへの保護膜付きチップの付着を抑制できる保護膜形成フィルムの提供。
【解決手段】硬化性又は非硬化性の保護膜形成フィルムであって、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの硬化物の最大帯電圧が、1000V以下であり、かつ、帯電圧の半減期が30秒以下であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの最大帯電圧が、1000V以下であり、かつ、帯電圧の半減期が30秒以下である、保護膜形成フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護膜形成フィルムであって、
前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの硬化物の最大帯電圧が、1000V以下であり、かつ、帯電圧の半減期が30秒以下であり、
前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの最大帯電圧が、1000V以下であり、かつ、帯電圧の半減期が30秒以下である、保護膜形成フィルム。
【請求項2】
前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物の表面抵抗率が、1.0×1012Ω/□超であり、
前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの表面抵抗率が、1.0×1012Ω/□超である、請求項1に記載の保護膜形成フィルム。
【請求項3】
前記保護膜形成フィルムが酸化チタンを含有している、請求項1又は2に記載の保護膜形成フィルム。
【請求項4】
前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物について動的粘弾性測定を行ったとき、23℃における損失正接が0.2未満であり、
前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムについて動的粘弾性測定を行ったとき、23℃における損失正接が0.2未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルム。
【請求項5】
支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、を備え、
前記保護膜形成フィルムが、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルムである、保護膜形成用複合シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや絶縁体ウエハ等のウエハには、その一方の面(回路面)に回路が形成されており、さらにその面(回路面)上にバンプ等の突状電極を有するものがある。このようなウエハは、分割によりチップとされ、その突状電極が回路基板上の接続パッドに接続されることにより、前記回路基板に搭載される。
このようなウエハやチップにおいては、クラックの発生等の破損を抑制するために、回路面とは反対側の面(裏面)を、保護膜で保護することがある。
【0003】
このような保護膜を形成するためには、ウエハの裏面に、保護膜を形成するための保護膜形成フィルムを貼付する。保護膜形成フィルムは、これを支持するための支持シート上に積層され、保護膜形成用複合シートの状態で使用されることもあるし、支持シート上に積層されずに使用されることもある。次いで、裏面に保護膜形成フィルムを備えたウエハは、その後の各種工程を経て、裏面に保護膜を備えたチップ(保護膜付きチップ)へと加工される。例えば、裏面に保護膜形成フィルムを備えたウエハにおいて、ウエハを分割してチップを作製するとともに、保護膜形成フィルムをチップと同様の大きさに切断した後、この切断後の保護膜形成フィルムを熱硬化させることで、保護膜付きチップを製造する手法が開示されている(特許文献1参照)。このような保護膜付きチップは、そのピックアップ後に、回路基板に搭載され、各種基板装置(例えば半導体装置)を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/105677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、ピックアップ後の保護膜付きチップは、次工程で使用されるまでの間、テープ状の梱包資材であるエンボスキャリアテープによって1個ずつ梱包され、リール状に巻回された状態で保管された後、エンボスキャリアテープから取り出されて、使用されることがある。保管中の保護膜付きチップは、さらに、搬送されたり、商取引されることもある。図1は、エンボスキャリアテープで梱包されている保護膜付きチップと、エンボスキャリアテープから取り出される途中の保護膜付きチップと、の一例を模式的に示す断面図である。
【0006】
エンボスキャリアテープ9は、保護膜付きチップ8を収納するためのポケット911aを備えたトレイ91と、カバーテープ92と、を備えて構成されている。テープ状のトレイ91には、その長手方向に一列に、複数個のポケット911aが設けられており、これらポケット911aの内部には、保護膜付きチップ8が1個ずつ収納されている。ポケット911aの内部においては、保護膜付きチップ8中のチップ80がポケット911aの底面側を向き、保護膜81がカバーテープ92側を向いて、保護膜付きチップ8が収納されている。そして、この状態でトレイ91のポケット911aの開口部側に、カバーテープ92が貼付され、前記開口部が閉塞されることにより、保護膜付きチップ8がエンボスキャリアテープ9によって梱包される。
【0007】
保護膜付きチップ8を次工程で使用するときには、例えば、エンボスキャリアテープ9をリール状のままマウンターにセットし、回路基板上に保護膜付きチップ8を実装する。このとき、カバーテープ92がトレイ91から剥離され、トレイ91中のポケット911aの内部から保護膜付きチップ8が取り出される。しかし、図1に示すように、保護膜付きチップ8が保護膜81によって、カバーテープ92に付着してしまい、保護膜付きチップ8を取り出すことができず、保護膜付きチップ8の回路基板上への実装が阻害されることがあるという問題点があった。
そして、特許文献1で開示されている保護膜付きチップは、この問題点を解決できるか定かではない。
【0008】
本発明は、保護膜付きチップを製造するための保護膜形成フィルムであって、エンボスキャリアテープ中の保護膜付きチップをエンボスキャリアテープから取り出すときに、エンボスキャリアテープを構成しているカバーテープへの保護膜付きチップの付着を抑制できる保護膜形成フィルムと、前記保護膜形成フィルムを備えた保護膜形成用複合シートと、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、保護膜形成フィルムであって、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの硬化物の最大帯電圧が、1000V以下であり、かつ、帯電圧の半減期が30秒以下であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの最大帯電圧が、1000V以下であり、かつ、帯電圧の半減期が30秒以下である、保護膜形成フィルムを提供する。
【0010】
前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物の表面抵抗率が、1.0×1012Ω/□超であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの表面抵抗率が、1.0×1012Ω/□超であることが好ましい。
前記保護膜形成フィルムは、酸化チタンを含有していることが好ましい。
【0011】
前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物について動的粘弾性測定を行ったとき、23℃における損失正接が0.2未満であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムについて動的粘弾性測定を行ったとき、23℃における損失正接が0.2未満であることが好ましい。
また、本発明は、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた前記保護膜形成フィルムと、を備えた、保護膜形成用複合シートを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、保護膜付きチップを製造するための保護膜形成フィルムであって、エンボスキャリアテープ中の保護膜付きチップをエンボスキャリアテープから取り出すときに、エンボスキャリアテープを構成しているカバーテープへの保護膜付きチップの付着を抑制できる保護膜形成フィルムと、前記保護膜形成フィルムを備えた保護膜形成用複合シートと、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】エンボスキャリアテープで梱包されている保護膜付きチップと、エンボスキャリアテープから取り出される途中の保護膜付きチップと、の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップの取り扱い方法の一例を、模式的に示す断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップの取り扱い方法の一例を、模式的に示す断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップの取り扱い方法の一例を、模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
◇保護膜形成フィルム
本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムは、硬化性又は非硬化性であり、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの硬化物の最大帯電圧が、1000V以下であり、かつ、帯電圧の半減期が30秒以下であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの最大帯電圧が、1000V以下であり、かつ、帯電圧の半減期が30秒以下である。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、例えば、後述するように、支持シートと積層することで、保護膜形成用複合シートを構成できる。
【0015】
本実施形態の保護膜形成フィルムは、チップと、前記チップの裏面(チップの裏面について、後ほど説明する)に設けられた保護膜と、を備えた保護膜付きチップの製造に使用できる。
保護膜付きチップは、回路基板に搭載され、各種基板装置(例えば半導体装置)を構成する。保護膜付きチップは、このように後の工程で使用されるまでの間、先の説明のとおり、テープ状の梱包資材であるエンボスキャリアテープによって1個ずつ梱包され、好ましくはリール状に巻回された状態で、保管されることがある。エンボスキャリアテープは、保護膜付きチップを収納するためのポケットを備えたトレイと、カバーテープと、を備えて構成され、前記ポケットの内部に、保護膜付きチップが1個ずつ収納された状態で、トレイのポケットの開口部側に、カバーテープが貼付されることにより、前記開口部が閉塞される。これにより、保護膜付きチップはエンボスキャリアテープによって梱包される。そして、梱包された保護膜付きチップは、この状態で保管され、保管中の保護膜付きチップは、さらに、搬送されたり、商取引されることもある。保護膜付きチップの使用時には、カバーテープがトレイから剥離され、トレイのポケットの内部から保護膜付きチップが取り出される。
このとき、本実施形態の保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップは、カバーテープへの付着が抑制される。この点で、本実施形態の保護膜形成フィルムは、従来の保護膜形成フィルムと相違する。本実施形態の保護膜形成フィルムがこのように優れた効果を奏するのは、上述の最大帯電圧と、帯電圧の半減期と、の両方の条件を満たすためである。
【0016】
本実施形態の保護膜形成フィルム、又はこれを備えた保護膜形成用複合シートを用いることにより、チップと、前記チップの裏面に設けられた保護膜と、を備えた保護膜付きチップを製造できる。
前記保護膜付きチップは、例えば、ウエハの裏面に保護膜形成フィルムを貼付した後、保護膜形成フィルムの硬化によって保護膜を形成し、ウエハをチップへと分割し、保護膜をチップの外周に沿って切断することによって、製造できる。
【0017】
本明細書において、「ウエハ」としては、シリコン、ゲルマニウム、セレン等の元素半導体や、GaAs、GaP、InP、CdTe、ZnSe、SiC等の化合物半導体、で構成される半導体ウエハ;サファイア、ガラス、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の絶縁体で構成される絶縁体ウエハが挙げられる。
これらウエハの一方の面上には、回路が形成されており、本明細書においては、このように回路が形成されている側のウエハの面を「回路面」と称する。そして、ウエハの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ウエハは、ダイシング等の手段により分割され、チップとなる。本明細書においては、ウエハの場合と同様に、回路が形成されている側のチップの面を「回路面」と称し、チップの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ウエハの回路面とチップの回路面には、いずれもバンプ、ピラー等の突状電極が設けられていることが好ましい。突状電極は、はんだで構成されていることが好ましい。
【0018】
さらに、前記保護膜付きチップを用いることにより、基板装置を製造できる。
本明細書において、「基板装置」とは、保護膜付きチップが、その回路面上の突状電極において、回路基板上の接続パッドにフリップチップ接続されて、構成されたものを意味する。例えば、ウエハとして半導体ウエハを用いた場合であれば、基板装置としては半導体装置が挙げられる。
【0019】
本実施形態の保護膜形成フィルムは、その硬化によって保護膜として機能するものであってもよいし、硬化していない状態で保護膜として機能するものであってもよい。硬化していない状態で保護膜として機能する前記保護膜形成フィルムは、例えば、ウエハの目的とする箇所に貼付された段階で、保護膜を形成したと見做せる。
【0020】
本実施形態の保護膜形成フィルムは、硬化性及び非硬化性のいずれであってもよい。
本実施形態の硬化性の保護膜形成フィルムは、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであってもよく、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有していてもよい。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、非エネルギー線硬化性であってもよい。
【0021】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
本明細書において、「非硬化性」とは、加熱やエネルギー線の照射等、如何なる手段によっても、硬化しない性質を意味する。
【0022】
前記保護膜形成フィルムを熱硬化させて、保護膜を形成する場合には、エネルギー線の照射によって硬化させる場合とは異なり、保護膜形成フィルムは、その厚さが厚くなっても、加熱によって十分に硬化するため、保護性能が高い保護膜を形成できる。また、加熱オーブン等の通常の加熱手段を用いることによって、多数の保護膜形成フィルムを一括して加熱し、熱硬化させることができる。
保護膜形成フィルムを、エネルギー線の照射によって硬化させて、保護膜を形成する場合には、熱硬化させる場合とは異なり、前記保護膜形成用複合シートは耐熱性を有する必要がなく、幅広い範囲の保護膜形成用複合シートを構成できる。また、エネルギー線の照射によって、短時間で硬化させることができる。
保護膜形成フィルムを硬化させずに保護膜として用いる場合には、硬化工程を省略できるため、簡略化された工程で保護膜付きチップを製造できる。
【0023】
保護膜形成フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保護膜形成フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0024】
本明細書においては、保護膜形成フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0025】
前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの硬化物の最大帯電圧(帯電圧の最大値)は、1000V以下であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの最大帯電圧(帯電圧の最大値)は、1000V以下である。すなわち、この方法で保護膜形成フィルムの硬化物の帯電圧、及び、非硬化性である保護膜形成フィルムの帯電圧を測定したとき、その測定値は一貫して1000V以下である。
【0026】
本明細書においては、「保護膜形成フィルムの最大帯電圧」とは、特に断りのない限り、「硬化性保護膜形成フィルムの最大帯電圧」ではなく、「非硬化性保護膜形成フィルムの最大帯電圧」を意味する。
【0027】
保護膜形成フィルムが熱硬化性である場合には、後述する帯電圧と前記最大帯電圧を規定する保護膜形成フィルムの硬化物とは、保護膜形成フィルムを130℃で2時間加熱することにより、熱硬化させて得られた熱硬化物であり、保護膜に相当する。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性である場合には、後述する帯電圧と前記最大帯電圧を規定する保護膜形成フィルムの硬化物とは、保護膜形成フィルムに対して、照度220mW/cm、光量600mJ/cmの条件で、エネルギー線を照射することにより得られたエネルギー線硬化物であり、保護膜に相当する。
【0028】
保護膜形成フィルムの硬化物と、非硬化性保護膜形成フィルムと、の最大帯電圧は、850V以下であることが好ましく、700V以下であることがより好ましく、例えば、620V以下、及び540V以下のいずれかであってもよい。前記最大帯電圧が低い方が、上述の保護膜付きチップのカバーテープへの付着を抑制する効果が、より高くなる。
本明細書において、単なる「最大帯電圧」との記載は、特に断りのない限り、上述の保護膜形成フィルムの硬化物の最大帯電圧と、非硬化性保護膜形成フィルムの最大帯電圧と、の両方を意味する。
【0029】
前記最大帯電圧の下限値は、特に限定されない。例えば、前記最大帯電圧が50V以上である保護膜形成フィルムは、より容易に製造できる。
前記最大帯電圧は、例えば、50~1000V、50~850V、50~700V、50~620V、及び50~540Vのいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記最大帯電圧の一例である。
【0030】
さらに、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの硬化物の帯電圧の半減期は、30秒以下であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの帯電圧の半減期は、30秒以下である。
前記帯電圧の半減期とは、この方法で保護膜形成フィルムの硬化物又は非硬化性保護膜形成フィルムの帯電圧を測定したとき、測定開始時以降の帯電圧が測定開始時の帯電圧の1/2となるのに要する時間を意味する。帯電圧の測定開始と同時に、保護膜形成フィルムの硬化物又は非硬化性保護膜形成フィルムを帯電させる操作(例えば、コロナ放電場により帯電させる操作)を停止するため、測定開始時(測定開始から0秒)での帯電圧が、保護膜形成フィルムの硬化物又は非硬化性保護膜形成フィルムの最大帯電圧となる。
【0031】
保護膜形成フィルムの硬化物と、非硬化性保護膜形成フィルムと、の帯電圧の半減期は、28秒以下であることが好ましく、例えば、20秒以下、及び10秒以下のいずれかであってもよい。前記帯電圧の半減期が短い方が、上述の保護膜付きチップのカバーテープへの付着を抑制する効果が、より高くなる。
本明細書において、単なる「帯電圧の半減期」との記載は、特に断りのない限り、上述の保護膜形成フィルムの硬化物の帯電圧の半減期と、非硬化性保護膜形成フィルムの帯電圧の半減期と、の両方を意味する。
【0032】
前記帯電圧の半減期の下限値は、特に限定されない。例えば、前記帯電圧の半減期が0.5秒以上である保護膜形成フィルムは、より容易に製造できる。
前記帯電圧の半減期は、例えば、0.5~30秒、0.5~28秒、0.5~20秒、及び0.5~10秒のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記帯電圧の半減期の一例である。
【0033】
前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、はいずれも、保護膜形成フィルムの含有成分の種類と含有量を調節することで、適宜調節できる。特に、保護膜形成フィルムの金属酸化物の含有量を調節することで、より容易に前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、を調節できる。
【0034】
前記金属酸化物は、例えば、後述する組成物(III)における充填材(D)、組成物(IV)における充填材、又は組成物(V)における充填材に包含される。
好ましい前記金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられ、酸化チタンがより好ましい。すなわち、前記保護膜形成フィルムは、酸化チタンを含有していることがより好ましい。
【0035】
前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物の表面抵抗率は、1.0×1012Ω/□超であることが好ましく、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの表面抵抗率は、1.0×1012Ω/□超であることが好ましい。チップの種類及び用途によって、保護膜付きチップの誤動作の程度は異なるが、保護膜付きチップの表面の多少の電気伝導によって、保護膜付きチップが誤動作するおそれがあるのに対し、上記の表面抵抗率を満たすことで、そのおそれをより低減できる。
前記表面抵抗率を規定する保護膜形成フィルムの硬化物、及び非硬化性保護膜形成フィルムは、それぞれ、先に説明した前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、を規定する保護膜形成フィルムの硬化物、及び非硬化性保護膜形成フィルムと同じである。
【0036】
上述の保護膜付きチップの誤動作をさらに低減できる点では、保護膜形成フィルムの硬化物と、非硬化性保護膜形成フィルムと、の表面抵抗率は、1.0×1013Ω/□以上であることが好ましく、例えば、1.0×1014Ω/□以上、及び1.0×1015Ω/□以上のいずれかであってもよい。
本明細書において、単なる「表面抵抗率」との記載は、特に断りのない限り、上述の保護膜形成フィルムの硬化物の表面抵抗率と、非硬化性保護膜形成フィルムの表面抵抗率と、の両方を意味する。
【0037】
前記表面抵抗率の上限値は、特に限定されない。例えば、前記表面抵抗率が1.0×1016Ω/□以下である保護膜形成フィルムは、より容易に製造できる。
前記表面抵抗率は、例えば、1.0×1012Ω/□超1.0×1016Ω/□以下、1.0×1013~1.0×1016Ω/□、1.0×1014~1.0×1016、及び1.0×1015~1.0×1016Ω/□のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記表面抵抗率の一例である。
【0038】
前記表面抵抗率は、保護膜形成フィルムの含有成分の種類と含有量を調節することで、適宜調節できる。例えば、保護膜形成フィルムの金属酸化物、重合体成分等の含有量を調節することで、より容易に前記表面抵抗率を調節できる。
【0039】
前記金属酸化物は、先に説明したものと同じである。
前記重合体成分は、例えば、後述する組成物(III)における重合体成分(A)若しくは熱可塑性樹脂、組成物(IV)おけるエネルギー線硬化性成分(a)若しくはエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)、又は組成物(V)おける熱可塑性樹脂に包含される。
【0040】
前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物について動的粘弾性測定を行ったとき、23℃における損失正接が0.2未満であることが好ましく、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムについて動的粘弾性測定を行ったとき、23℃における損失正接が0.2未満であることが好ましい。保護膜形成フィルムがこのような条件を満たすことで、上述の保護膜付きチップのカバーテープへの付着を抑制する効果が、より高くなる。
前記損失正接を規定する保護膜形成フィルムの硬化物、及び非硬化性保護膜形成フィルムは、それぞれ、先に説明した前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、を規定する保護膜形成フィルムの硬化物、及び非硬化性保護膜形成フィルムと同じである。
【0041】
本実施形態において、保護膜形成フィルムの硬化物と、非硬化性保護膜形成フィルムと、のいずれにおいても、規定する前記「損失正接」は、通常「損失係数」又は「tanδ」とも称され、貯蔵弾性率と損失弾性率との比(損失弾性率/貯蔵弾性率)であり、本明細書においては、「tanδ」と称することがある。
前記tanδは、動的粘弾性測定装置を用いて、測定周波数を11Hzとし、-70~100℃の温度範囲で、昇温速度を3℃/分として、保護膜形成フィルムの硬化物、又は非硬化性保護膜形成フィルムを昇温し、23℃での貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定することで求められる。
【0042】
上述の動的粘弾性測定装置での測定に用いるための、前記保護膜形成フィルムの硬化物と、非硬化性保護膜形成フィルムの厚さは、前記貯蔵弾性率及び損失弾性率の測定の実施を妨げず、23℃における損失正接の測定精度を損なわない限り、特に限定されない。
前記貯蔵弾性率及び損失弾性率を、その精度を損なわずに測定するためには、複数枚の保護膜形成フィルム(硬化性保護膜形成フィルム)の積層物の硬化物、又は、複数枚の非硬化性保護膜形成フィルムの積層物を用いることが好ましく、これらの厚さは、190~210μmであることが好ましく、195~205μmであることがより好ましく、200μmであることが特に好ましい。複数枚の非硬化性保護膜形成フィルムの積層物で、その厚さが200μmであるものとしては、例えば、厚さが25μmである8枚の非硬化性保護膜形成フィルムの積層物が挙げられる。複数枚の保護膜形成フィルムの積層物の硬化物で、その厚さが200μmであるものとしては、例えば、厚さが25μmである8枚の保護膜形成フィルムの積層物の硬化物が挙げられる。
【0043】
上述の保護膜付きチップのカバーテープへの付着を抑制する効果がさらに高くなる点では、保護膜形成フィルムの硬化物と、非硬化性保護膜形成フィルムと、のtanδは、0.17以下であることが好ましく、例えば、0.14以下、及び0.12以下のいずれかであってもよい。
本明細書において、単なる「tanδ」との記載は、特に断りのない限り、上述の保護膜形成フィルムの硬化物のtanδと、非硬化性保護膜形成フィルムのtanδと、の両方を意味する。
【0044】
前記tanδの下限値は、特に限定されない。例えば、前記tanδが0.03以上である保護膜形成フィルムは、より容易に製造できる。
前記tanδは、例えば、0.03以上0.2未満、0.03~0.17、0.03~0.14、及び0.03~0.12のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記tanδの一例である。
【0045】
前記tanδは、保護膜形成フィルムの含有成分の種類と含有量を調節することで、適宜調節できる。例えば、保護膜形成フィルムの充填材、熱硬化性成分、エネルギー線硬化性成分等の含有量を調節することで、より容易に前記tanδを調節できる。
【0046】
前記充填材は、例えば、後述する組成物(III)における充填材(D)、組成物(IV)における充填材、又は組成物(V)における充填材に包含される。
前記熱硬化性成分は、例えば、後述する組成物(III)における熱硬化性成分(B)、又は組成物(IV)における熱硬化性成分に包含される。
前記エネルギー線硬化性成分は、例えば、後述する組成物(III)におけるエネルギー線硬化性樹脂(G)、又は組成物(IV)におけるエネルギー線硬化性成分(a)に包含される。
【0047】
好ましい前記保護膜形成フィルムの一例としては、前記保護膜形成フィルムが硬化性であり、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの硬化物の最大帯電圧が、1000V以下であり、かつ、帯電圧の半減期が30秒以下であり、さらに、下記(X1):
(X1)前記保護膜形成フィルムの硬化物の表面抵抗率が、1.0×1012Ω/□超である
及び下記(X2):
(X2)前記保護膜形成フィルムの硬化物について動的粘弾性測定を行ったとき、23℃における損失正接が0.2未満である
のいずれか一方又は両方を満たす保護膜形成フィルムが挙げられる。
【0048】
好ましい前記保護膜形成フィルムの他の例としては、前記保護膜形成フィルムが非硬化性であり、JIS L 1094:2014に準拠して測定した、前記保護膜形成フィルムの最大帯電圧が、1000V以下であり、かつ、帯電圧の半減期が30秒以下であり、さらに、下記(Y1):
(Y1)前記保護膜形成フィルムの表面抵抗率が、1.0×1012Ω/□超である
及び下記(Y2):
(Y2)前記保護膜形成フィルムについて動的粘弾性測定を行ったとき、23℃における損失正接が0.2未満である
のいずれか一方又は両方を満たす保護膜形成フィルムが挙げられる。
【0049】
前記保護膜形成フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、例えば、3~80μm、5~60μm、及び7~45μmのいずれかであってもよい。保護膜形成フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護性能がより高い保護膜を形成できる。保護膜形成フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが避けられる。
ここで、「保護膜形成フィルムの厚さ」とは、保護膜形成フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成フィルムの厚さとは、保護膜形成フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0050】
<<保護膜形成用組成物>>
前記保護膜形成フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、保護膜形成フィルムは、その形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。保護膜形成用組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成フィルムにおける前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0051】
熱硬化性保護膜形成フィルムは、熱硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、非硬化性保護膜形成フィルムは、非硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成できる。
本明細書においては、保護膜形成フィルムが、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有する場合、保護膜の形成に対して、保護膜形成フィルムの熱硬化の寄与が、エネルギー線硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成フィルムを熱硬化性のものとして取り扱う。これとは反対に、保護膜の形成に対して、保護膜形成フィルムのエネルギー線硬化の寄与が、熱硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成フィルムをエネルギー線硬化のものとして取り扱う。
【0052】
保護膜形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0053】
保護膜形成フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。ただし、熱硬化性保護膜形成用組成物は、この組成物自体と、この組成物から形成された熱硬化性保護膜形成フィルムと、が熱硬化しないように、加熱乾燥させることが好ましい。
【0054】
以下、熱硬化性保護膜形成フィルム、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルム及び非硬化性保護膜形成フィルムについて、順次説明する。
【0055】
◎熱硬化性保護膜形成フィルム
熱硬化性保護膜形成フィルムをウエハの目的とする箇所に貼付し、熱硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り、特に限定されず、熱硬化性保護膜形成フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、熱硬化性保護膜形成フィルムの熱硬化時の加熱温度は、100~200℃であることが好ましく、例えば、110~180℃、及び120~170℃のいずれかであってもよい。前記熱硬化時の加熱時間は、0.5~5時間であることが好ましく、例えば、0.5~3時間、及び1~2時間のいずれかであってもよい。
【0056】
常温の保護膜形成フィルムを、常温を超える温度になるまで加熱し、次いで常温になるまで冷却することにより、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムとし、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムの硬さと、加熱前の保護膜形成フィルムの硬さと、を同じ温度で比較したとき、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムの方が硬い場合には、この保護膜形成フィルムは、熱硬化性である。
【0057】
好ましい熱硬化性保護膜形成フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するものが挙げられる。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0058】
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III)>
好ましい熱硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物(III)(本明細書においては、単に「組成物(III)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0059】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。なお、本明細書において重合体化合物には、重縮合反応の生成物も含まれる。
【0060】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0061】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂が好ましい。
【0062】
重合体成分(A)における前記アクリル樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましく、200000~1200000であることがさらに好ましく、300000~1000000であることが特に好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。アクリル樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面(例えば、ウエハの粗い裏面)へ熱硬化性保護膜形成フィルムが追従し易くなる。また、アクリル樹脂の重量平均分子量が上記数値範囲内であることで、前記tanδを適切な範囲に調節することがより容易となる。
【0063】
本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0064】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~70℃であることが好ましく、-50~50℃であることがより好ましく、-50~20℃であることがさらに好ましい。アクリル樹脂のTgが前記下限値以上であることで、例えば、保護膜形成フィルムの硬化物と支持シートとの密着性が抑制されて、支持シートの剥離性が適度に向上する。アクリル樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成フィルム及びその硬化物の被着体との接着力が向上する。また、アクリル樹脂のTgが上記数値範囲内であることで、前記tanδを適切な範囲に調節することがより容易となる。
【0065】
アクリル樹脂がm種(mは2以上の整数である。)の構成単位を有し、これら構成単位を誘導するm種のモノマーに対して、それぞれ1からmまでのいずれかの重複しない番号を順次割り当てて、「モノマーm」と名付けた場合、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、以下に示すFoxの式を用いて算出できる。
【0066】
【数1】
(式中、Tgはアクリル樹脂のガラス転移温度であり;mは2以上の整数であり;Tgはモノマーmのホモポリマーのガラス転移温度であり;Wはアクリル樹脂における、モノマーmから誘導された構成単位mの質量分率であり、ただし、Wは下記式を満たす。)
【0067】
【数2】
(式中、m及びWは、前記と同じである。)
【0068】
前記Tgとしては、高分子データ・ハンドブック、粘着ハンドブック又はPolymer Handbook等に記載されている値を使用できる。例えば、アクリル酸メチルのホモポリマーのTgは10℃であり、メタクリル酸メチルのホモポリマーのTgは105℃であり、アクリル酸2-ヒドロキシエチルのホモポリマーのTgは-15℃であり、メタクリル酸グリシジルのホモポリマーのTgは41℃であり、アクリル酸2-エチルヘキシルのホモポリマーのTgは-70℃であり、アクリル酸のホモポリマーのTgは103℃であり、アクリロニトリルのホモポリマーのTgは97℃である。
【0069】
アクリル樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0070】
アクリル樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造を有する基を意味する。
【0071】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0072】
アクリル樹脂を構成するモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0073】
アクリル樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。
【0074】
好ましいアクリル樹脂の一例としては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導された構成単位と、前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルから誘導された構成単位と、を有するアクリル樹脂であって、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~18であり、前記アルキル基が鎖状構造であり、前記アクリル樹脂を構成する構成単位の全量に対する、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導された構成単位と、前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルから誘導された構成単位と、の合計量の割合(含有量)が、80~100質量%であるアクリル樹脂が挙げられる。
このようなアクリル樹脂において、前記アクリル樹脂を構成する構成単位の全量に対する、前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、7~20質量%であることが好ましい。
【0075】
本実施形態においては、重合体成分(A)として、アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、保護膜の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面(例えば、ウエハの粗い裏面)へ熱硬化性保護膜形成フィルムが追従し易くなることがある。
【0076】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0077】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0078】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0079】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0080】
組成物(III)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合は、重合体成分(A)の種類によらず、10~85質量%であることが好ましく、15~65質量%であることがより好ましく、15~45質量%であることがさらに好ましく、例えば、15~35質量%であってもよいし、30~45質量%であってもよい。
この内容は、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、重合体成分(A)の含有量の割合が、重合体成分(A)の種類によらず、10~85質量%であることが好ましく、15~65質量%であることがより好ましく、15~45質量%であることがさらに好ましく、例えば、15~35質量%であってもよいし、30~45質量%であってもよい、ことと同義である。
これは、溶媒を含有する樹脂組成物から溶媒を除去して、樹脂膜を形成する過程では、溶媒以外の成分の量は、通常、変化しないことに基づいており、樹脂組成物と樹脂膜とでは、溶媒以外の成分同士の含有量の比率は同じである。そこで、本明細書においては、以降、熱硬化性保護膜形成フィルムの場合に限らず、溶媒以外の成分の含有量については、樹脂組成物から溶媒を除去した樹脂膜での含有量のみ記載する。
【0081】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0082】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性保護膜形成フィルムを熱硬化させるための成分である。
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0083】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
本明細書において、熱硬化性ポリイミド樹脂とは、熱硬化することによってポリイミド樹脂を形成する、ポリイミド前駆体と、熱硬化性ポリイミドと、の総称である。
【0084】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0085】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0086】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0087】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成フィルムの硬化性、並びに、保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~950g/eqであることがより好ましい。
【0088】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0089】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0090】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0091】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
【0092】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は、軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0093】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0094】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0095】
熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、0.5~50質量部であることがより好ましく、例えば、0.5~25質量部、0.5~10質量部、及び0.5~5質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成フィルムの硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成フィルムを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0096】
熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、10~70質量部であることが好ましく、20~60質量部であることがより好ましく、25~50質量部であることがさらに好ましく、30~45質量部であることが特に好ましい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、例えば、保護膜形成フィルムの硬化物と支持シートとの密着性が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。
【0097】
[硬化促進剤(C)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、組成物(III)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0098】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0099】
硬化促進剤(C)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性保護膜形成フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなる。その結果、保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップの信頼性がより向上する。
【0100】
[充填材(D)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性保護膜形成フィルムと保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップの信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0101】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0102】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、酸化チタン(チタンホワイト)、酸化アルミニウム(アルミナ)、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
【0103】
前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、前記表面抵抗率と、前記tanδを、より容易に調節できる点では、前記無機充填材は、酸化チタン及び酸化アルミニウムのいずれか一方又は両方であることが好ましく、酸化チタンであることがより好ましい。すなわち、熱硬化性保護膜形成フィルムは、酸化チタン及び酸化アルミニウムのいずれか一方又は両方を含有していることが好ましく、酸化チタンを含有していることがより好ましい。
【0104】
充填材(D)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合は、15~70質量%であることが好ましく、25~60質量%であることがより好ましく、例えば、25~50質量%、及び25~40質量%のいずれかであってもよいし、35~60質量%、及び48~60質量%のいずれかであってもよいし、35~50質量%であってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、上記の、熱硬化性保護膜形成フィルムと保護膜の熱膨張係数の調整がより容易となり、保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップの信頼性がより向上する。また、前記割合がこのような範囲であることで、前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、前記表面抵抗率と、前記tanδを、適切な範囲に調節することがより容易となる。
【0105】
酸化チタン及び酸化アルミニウムのいずれか一方又は両方を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、充填材(D)の含有量(質量部)に対する、酸化チタン及び酸化アルミニウムの合計含有量(質量部)の割合は、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、99~100質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、前記表面抵抗率と、前記tanδを、適切な範囲に調節することがより容易となる。
【0106】
[カップリング剤(E)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性保護膜形成フィルムから形成された保護膜の被着体に対する接着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、前記保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0107】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
【0108】
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0109】
好ましい前記シランカップリング剤としては、1分子中に複数個のアルコキシシリル基を有するオリゴマー型シランカップリング剤も挙げられる。
前記オリゴマー型シランカップリング剤は、揮発しにくく、1分子中に複数個のアルコキシシリル基を有することから、耐久性向上に効果的である点で好ましい。
前記オリゴマー型シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤である「X-41-1053」、「X-41-1059A」、「X-41-1056」及び「X-40-2651」(いずれも信越化学社製);メルカプト基含有オリゴマー型シランカップリング剤である「X-41-1818」、「X-41-1810」及び「X-41-1805」(いずれも信越化学社製)等が挙げられる。
【0110】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0111】
カップリング剤(E)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.02~5質量部であることがより好ましく、0.03~2質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(E)の前記含有量がこのような範囲であることで、熱硬化性保護膜形成フィルムと被着体との化学的な相性を若干制御して、粘着性と剥離性をより調整し易くすることができる。一方、カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性保護膜形成フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0112】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性保護膜形成フィルムの粘着力及び凝集力を調節できる。
【0113】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0114】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0115】
架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III)において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0116】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0117】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物、又はエネルギー線硬化性化合物から合成されたと見做せるオリゴマー若しくはポリマー(重合体)である。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0118】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0119】
前記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0120】
前記オリゴマー若しくはポリマーの合成に用いる前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0121】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0122】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量の割合は、1~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることが特に好ましい。
【0123】
[光重合開始剤(H)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0124】
組成物(III)における光重合開始剤(H)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物が挙げられる。
また、光重合開始剤(H)としては、例えば、アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0125】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する光重合開始剤(H)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0126】
光重合開始剤(H)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0127】
[着色剤(I)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、着色剤(I)を含有していることが好ましい。着色剤(I)を含有させることにより、熱硬化性保護膜形成フィルム及び保護膜の光透過性を容易に調節できる。
【0128】
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0129】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0130】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0131】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する着色剤(I)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0132】
着色剤(I)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、熱硬化性保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量を調節し、熱硬化性保護膜形成フィルムの光透過性を調節することにより、熱硬化性保護膜形成フィルム又は保護膜に対してレーザー印字を行った場合の印字視認性を調節できる。また、熱硬化性保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量を調節することで、保護膜の意匠性を向上させたり、ウエハの裏面の研削痕を見え難くすることもできる。これらの点を考慮すると、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、着色剤(I)の含有量の割合は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~7.5質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、着色剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。例えば、被着体から熱硬化性保護膜形成フィルムを剥離したときに、熱硬化性保護膜形成フィルムの被着体における残存の有無を、目視によって容易に確認できる。前記割合が前記上限値以下であることで、着色剤(I)の過剰使用が抑制される。
【0133】
[汎用添加剤(J)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0134】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0135】
[溶媒]
組成物(III)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III)は、取り扱い性が良好となる。
本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、対象成分を溶解させるものだけでなく、対象成分を分散させる分散媒も含む概念とする。
【0136】
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0137】
組成物(III)が含有する溶媒で、より好ましいものとしては、例えば、組成物(III)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0138】
組成物(III)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0139】
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III)の製造方法>
組成物(III)は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0140】
◎エネルギー線硬化性保護膜形成フィルム
エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムをウエハの目的とする箇所に貼付し、エネルギー線硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムのエネルギー線硬化時における、エネルギー線の照度は、120~280mW/cmであることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cmであることが好ましい。
【0141】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV)>
好ましいエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV)(本明細書においては、単に「組成物(IV)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0142】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するとともに、硬化後に硬質の保護膜を形成するための成分でもある。
エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
【0143】
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0144】
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が反応した構造を有するアクリル樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0145】
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造を有する基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、ウエハやチップ等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0146】
・官能基を有するアクリル重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリルモノマーと、前記官能基を有しないアクリルモノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリルモノマー以外のモノマー(非アクリルモノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよく、重合方法についても公知の方法を採用できる。
【0147】
前記官能基を有するアクリルモノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0148】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0149】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0150】
前記官能基を有するアクリルモノマーは、水酸基含有モノマーが好ましい。
【0151】
前記アクリル重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリルモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0152】
前記官能基を有しないアクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0153】
また、前記官能基を有しないアクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0154】
本明細書において、ある特定の化合物において、1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造が想定される場合、このような置換された構造を有する化合物を、上述の特定の化合物の「誘導体」と称する。
本明細書において、「基」とは、複数個の原子が結合した構造を有する原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0155】
前記アクリル重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリルモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0156】
前記非アクリルモノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル重合体(a11)を構成する前記非アクリルモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0157】
前記アクリル重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量に対する、前記官能基を有するアクリルモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた前記アクリル樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量が好適な保護膜形成フィルムとなり易く、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に調節可能となる。
【0158】
前記アクリル樹脂(a1-1)を構成する前記アクリル重合体(a11)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0159】
エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムにおける、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、アクリル樹脂(a1-1)の含有量の割合は、1~70質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが特に好ましい。
【0160】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル重合体(a11)のこの水酸基と反応する。
【0161】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が、その1分子中に有する前記エネルギー線硬化性基の数は、特に限定されず、例えば、目的とする保護膜に求められる収縮率等の物性を考慮して、適宜選択できる。
例えば、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
【0162】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0163】
前記アクリル樹脂(a1-1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0164】
前記アクリル樹脂(a1-1)において、前記アクリル重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムの硬化物の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0165】
前記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
【0166】
組成物(IV)及びエネルギー線硬化性保護膜形成フィルムが含有する前記重合体(a1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0167】
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)中の前記エネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0168】
前記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0169】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0170】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、「国際公開第2017-188197号」の段落0195等に記載の化合物が挙げられる。
【0171】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分を構成する樹脂にも該当するが、組成物(IV)においては前記化合物(a2)として取り扱う。
【0172】
前記化合物(a2)の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0173】
組成物(IV)及びエネルギー線硬化性保護膜形成フィルムが含有する前記化合物(a2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0174】
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
組成物(IV)及びエネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、前記エネルギー線硬化性成分(a)として前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
【0175】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル重合体(以下、「アクリル重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0176】
アクリル重合体(b-1)としては、例えば、上述の重合体成分(A)と同じものが挙げられる。ただし、アクリル重合体(b-1)はエネルギー線硬化性基を有しない。
【0177】
前記重合体(b)が、グリシジル基、水酸基、置換アミノ基、カルボキシ基、アミノ基等の官能基を有している場合には、前記重合体(b)は、架橋剤によって架橋されていてもよい。
前記官能基は、前記架橋剤の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物である場合には、前記官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤がエポキシ系化合物である場合には、前記官能基としては、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、ウエハやチップの回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0178】
組成物(IV)及びエネルギー線硬化性保護膜形成フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0179】
組成物(IV)としては、前記重合体(a1)及び前記化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。そして、組成物(IV)は、前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに前記(a1)を含有することも好ましい。また、組成物(IV)は、前記化合物(a2)を含有せず、前記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0180】
組成物(IV)が、前記重合体(a1)、前記化合物(a2)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、組成物(IV)において、前記化合物(a2)の含有量は、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0181】
エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムにおける、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムの造膜性、可撓性及びエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0182】
組成物(IV)は、エネルギー線硬化性成分(a)以外に、目的に応じて、熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0183】
組成物(IV)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤としては、それぞれ、組成物(III)における熱硬化性成分(B)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、光重合開始剤(H)、着色剤(I)及び汎用添加剤(J)と同じものが挙げられる。
これらの成分を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、これらの成分を含有する熱硬化性保護膜形成フィルムと、同様の効果を奏する。特に、光重合開始剤は、エネルギー線硬化の反応を効率よく進めることから、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0184】
前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、前記表面抵抗率と、前記tanδを、より容易に調節できる点では、組成物(IV)及びエネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、前記充填材として、酸化チタン及び酸化アルミニウムのいずれか一方又は両方を含有することが好ましく、酸化チタンを含有することがより好ましい。すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、酸化チタン及び酸化アルミニウムのいずれか一方又は両方を含有していることが好ましく、酸化チタンを含有していることがより好ましい。
【0185】
組成物(IV)において、前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤は、それぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0186】
組成物(IV)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0187】
前記充填材を用いる場合、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムにおける、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、前記充填材の含有量の割合は、15~70質量%であることが好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムと保護膜の熱膨張係数の調整がより容易となる。また、前記割合がこのような範囲であることで、前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、前記表面抵抗率と、前記tanδを、適切な範囲に調節することがより容易となる。
【0188】
酸化チタン及び酸化アルミニウムのいずれか一方又は両方を用いる場合、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムにおける、前記充填材の含有量に対する、酸化チタン及び酸化アルミニウムの合計含有量の割合は、80~100質量%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、前記表面抵抗率と、前記tanδを、適切な範囲に調節することがより容易となる。
【0189】
組成物(IV)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(IV)が含有する溶媒としては、例えば、組成物(III)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(IV)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
組成物(IV)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0190】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV)の製造方法>
組成物(IV)は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した熱硬化性保護膜形成用組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0191】
◎非硬化性保護膜形成フィルム
好ましい非硬化性保護膜形成フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂及び充填材を含有するものが挙げられる。
【0192】
<非硬化性保護膜形成用組成物(V)>
好ましい非硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記熱可塑性樹脂及び充填材を含有する非硬化性保護膜形成用組成物(V)(本明細書においては、単に「組成物(V)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0193】
[熱可塑性樹脂]
前記熱可塑性樹脂は、特に限定されない。
前記熱可塑性樹脂として、より具体的には、例えば、上述の組成物(III)の含有成分として挙げた、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等の、硬化性ではない樹脂と同様のものが挙げられる。
【0194】
組成物(V)及び非硬化性保護膜形成フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0195】
非硬化性保護膜形成フィルムにおける、非硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合は、25~75質量%であることが好ましい。
【0196】
[充填材]
充填材を含有する非硬化性保護膜形成フィルムは、充填材(D)を含有する熱硬化性保護膜形成フィルムと、同様の効果を奏する。
【0197】
組成物(V)及び非硬化性保護膜形成フィルムが含有する充填材としては、組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する充填材(D)と同じものが挙げられる。
【0198】
前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、前記表面抵抗率と、前記tanδを、より容易に調節できる点では、組成物(V)及び非硬化性保護膜形成フィルムは、前記充填材として、酸化チタン及び酸化アルミニウムのいずれか一方又は両方を含有することが好ましく、酸化チタンを含有することがより好ましい。すなわち、非硬化性保護膜形成フィルムは、酸化チタン及び酸化アルミニウムのいずれか一方又は両方を含有していることが好ましく、酸化チタンを含有していることがより好ましい。
【0199】
組成物(V)及び非硬化性保護膜形成フィルムが含有する充填材は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0200】
非硬化性保護膜形成フィルムにおける、非硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材の含有量の割合は、15~70質量%であることが好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、組成物(III)を用いた場合と同様に、非硬化性保護膜形成フィルム及び保護膜の熱膨張係数の調整が、より容易となる。また、前記割合がこのような範囲であることで、前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、前記表面抵抗率と、前記tanδを、適切な範囲に調節することがより容易となる。
【0201】
酸化チタン及び酸化アルミニウムのいずれか一方又は両方を用いる場合、非硬化性保護膜形成フィルムにおける、前記充填材の含有量に対する、酸化チタン及び酸化アルミニウムの合計含有量の割合は、80~100質量%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、前記表面抵抗率と、前記tanδを、適切な範囲に調節することがより容易となる。
【0202】
組成物(V)は、前記熱可塑性樹脂及び充填材以外に、目的に応じて、他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記熱可塑性樹脂及び着色剤を含有する組成物(V)を用いることにより、形成される非硬化性保護膜形成フィルム及び保護膜は、先に説明した熱硬化性保護膜形成フィルムが着色剤(I)を含有する場合と同様の効果を発現する。
【0203】
組成物(V)において、前記他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0204】
組成物(V)の前記他の成分の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0205】
組成物(V)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(V)が含有する溶媒としては、例えば、上述の組成物(III)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(V)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
組成物(V)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0206】
<非硬化性保護膜形成用組成物(V)の製造方法>
組成物(V)は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
非硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した熱硬化性保護膜形成用組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0207】
◎保護膜形成フィルムの例
図2は、本実施形態の保護膜形成フィルムの一例を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0208】
ここに示す保護膜形成フィルム13は、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13a上に第1剥離フィルム151を備え、前記第1面13aとは反対側の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13b上に第2剥離フィルム152を備えている。
このような保護膜形成フィルム13は、例えば、ロール状として保存するのに好適である。
【0209】
保護膜形成フィルム13は、前記最大帯電圧と、前記帯電圧の半減期と、の条件を満たす。
【0210】
保護膜形成フィルム13は、上述の保護膜形成用組成物を用いて形成できる。
【0211】
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、いずれも公知のものでよい。
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、互いに同じものであってもよいし、例えば、保護膜形成フィルム13から剥離させるときに必要な剥離力が互いに異なるなど、互いに異なるものであってもよい。
【0212】
図2に示す保護膜形成フィルム13は、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152のいずれか一方が取り除かれ、生じた露出面が、ウエハ(図示略)の裏面への貼付面となる。そして、後述する支持シート又はダイシングシートを用いる場合には、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152の残りの他方が取り除かれ、生じた保護膜形成フィルム13の露出面が、前記支持シート又はダイシングシートの貼付面となる。
【0213】
図2においては、剥離フィルムが保護膜形成フィルム13の両面(第1面13a、第2面13b)に設けられている例を示しているが、剥離フィルムは、保護膜形成フィルム13のいずれか一方の面のみ、すなわち、第1面13aのみ、又は第2面13bのみに、設けられていてもよい。
【0214】
本実施形態の保護膜形成フィルムは、後述する支持シートと併用することで、保護膜の形成とダイシングを共に行うことができる、保護膜形成用複合シートを構成可能である。以下、このような保護膜形成用複合シートについて、説明する。
【0215】
◇保護膜形成用複合シート
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、を備えており、前記保護膜形成フィルムが、上述の本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムである。
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、その中の保護膜形成フィルムによって、ウエハの裏面に貼付できる。
【0216】
本明細書においては、保護膜形成フィルムが硬化した後であっても、支持シートと、保護膜形成フィルムの硬化物と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
【0217】
以下、前記保護膜形成用複合シートを構成する各層について、詳細に説明する。
【0218】
◎支持シート
前記支持シートは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層の構成材料及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0219】
支持シートは、透明及び非透明のいずれであってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、支持シートはエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0220】
支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの;基材のみからなるもの;等が挙げられる。支持シートが粘着剤層を備えている場合、粘着剤層は、保護膜形成用複合シートにおいては、基材と保護膜形成フィルムとの間に配置される。
【0221】
基材及び粘着剤層を備えた支持シートを用いた場合には、保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートと保護膜形成フィルムとの間の、密着性及び剥離性を容易に調節できる。
基材のみからなる支持シートを用いた場合には、低コストで保護膜形成用複合シートを製造できる。
【0222】
本実施形態の保護膜形成用複合シートの例を、このような支持シートの種類ごとに、以下、図面を参照しながら説明する。
【0223】
◎保護膜形成用複合シートの一例
図3は、本実施形態の保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート101は、支持シート10と、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に設けられた保護膜形成フィルム13と、を備えて構成されている。
支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面(第1面)11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されている。保護膜形成用複合シート101中、粘着剤層12は、基材11と保護膜形成フィルム13との間に配置されている。
すなわち、保護膜形成用複合シート101は、基材11、粘着剤層12及び保護膜形成フィルム13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート10の第1面10aは、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aと同じである。
【0224】
保護膜形成用複合シート101は、さらに保護膜形成フィルム13上に、治具用接着剤層16及び剥離フィルム15を備えている。
保護膜形成用複合シート101においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成フィルム13が積層され、保護膜形成フィルム13の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。さらに、保護膜形成フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない領域と、治具用接着剤層16の保護膜形成フィルム13側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)16aに、剥離フィルム15が積層されている。保護膜形成フィルム13の第1面13aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13bには、支持シート10が設けられている。
【0225】
保護膜形成用複合シート101の場合に限らず、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルム(例えば、後述する図4図6に示す剥離フィルム15)は任意の構成であり、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、剥離フィルムを備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0226】
治具用接着剤層16は、リングフレーム等の治具に、保護膜形成用複合シート101を固定するために用いる。
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分又は粘着剤成分を含有する単層構造を有していてもよいし、芯材となるシートと、前記シートの両面に設けられた、接着剤成分又は粘着剤成分を含有する層と、を備えた複数層構造を有していてもよい。
【0227】
保護膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成フィルム13の第1面13aにウエハの裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0228】
図4は、本実施形態の保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成フィルムの形状及び大きさが異なり、治具用接着剤層が保護膜形成フィルムの第1面ではなく、粘着剤層の第1面に積層されている点以外は、図3に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0229】
より具体的には、保護膜形成用複合シート102において、保護膜形成フィルム23は、粘着剤層12の第1面12aの一部の領域、すなわち、粘着剤層12の幅方向(図3における左右方向)における中央側の領域に、積層されている。さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成フィルム23が積層されていない領域に、保護膜形成フィルム23をその幅方向の外側から非接触で取り囲むように、治具用接着剤層16が積層されている。そして、保護膜形成フィルム23の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)23aと、治具用接着剤層16の第1面16aとに、剥離フィルム15が積層されている。保護膜形成フィルム23の第1面23aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)23bには、支持シート10が設けられている。
【0230】
図5は、本実施形態の保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート103は、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、図4に示す保護膜形成用複合シート102と同じである。
【0231】
図6は、本実施形態の保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート104は、支持シート10に代えて支持シート20を備えて構成されている点以外は、図3に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0232】
支持シート20は、基材11のみからなる。
すなわち、保護膜形成用複合シート104は、基材11及び保護膜形成フィルム13が、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート20の保護膜形成フィルム13側の面(一方の面、第1面)20aは、基材11の第1面11aと同じである。
【0233】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、図3図6に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図3図6に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0234】
次に、支持シートを構成する各層について、さらに詳細に説明する。
【0235】
○基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
前記樹脂は、耐熱性に優れる点では、ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0236】
基材を構成する樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0237】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0238】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~100μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、保護膜形成用複合シートの可撓性と、ウエハへの貼付適性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0239】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0240】
基材は、透明及び非透明のいずれであってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0241】
基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、保護膜形成フィルム、又は前記他の層)との密着性を調節するために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;親油処理;親水処理等が表面に施されていてもよい。また、基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
【0242】
基材は、特定範囲の成分(例えば、樹脂等)を含有することで、少なくとも一方の面において、粘着性を有するものであってもよい。
【0243】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0244】
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられる。
【0245】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0246】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、3~60μmであることがより好ましく、5~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0247】
粘着剤層は、透明及び非透明のいずれであってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、粘着剤層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0248】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性粘着剤層は、その硬化前及び硬化後での物性を調節できる。例えば、後述する保護膜付きチップのピックアップ前に、エネルギー線硬化性粘着剤層を硬化させることにより、この保護膜付きチップをより容易にピックアップできる。
【0249】
本明細書においては、エネルギー線硬化性粘着剤層がエネルギー線硬化した後であっても、基材と、エネルギー線硬化性粘着剤層の硬化物と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「支持シート」と称する。
【0250】
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0251】
粘着剤組成物の塗工及び乾燥は、例えば、上述の保護膜形成用組成物の塗工及び乾燥の場合と同じ方法で行うことができる。
【0252】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0253】
粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、前記非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)等が挙げられる。
【0254】
[非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル樹脂であることが好ましい。
【0255】
前記アクリル樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル重合体が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0256】
前記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となるものが挙げられる。
【0257】
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0258】
前記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0259】
前記粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)、粘着剤組成物(I-3)及び粘着剤組成物(I-4)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-4)」と略記する)において、前記アクリル重合体等の前記アクリル樹脂が有する構成単位は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0260】
前記アクリル重合体において、構成単位の全量に対する、官能基含有モノマー由来の構成単位の量の割合は、1~35質量%であることが好ましい。
【0261】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0262】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0263】
[エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0264】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0265】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0266】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0267】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0268】
[エネルギー線硬化性化合物]
前記粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0269】
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーの重合体であるオリゴマー等が挙げられる。
【0270】
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0271】
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましい。
【0272】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
また、粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0273】
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士又は粘着性樹脂(I-2a)同士を架橋する。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0274】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0275】
前記粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましい。
前記粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましい。
【0276】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)」と略記する)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0277】
前記光重合開始剤としては、例えば、上述の光重合開始剤(H)と同様のものが挙げられる。
【0278】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0279】
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
【0280】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)~(I-4)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制する成分である。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
【0281】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有するその他の添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0282】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0283】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していることで、その塗工対象面への塗工適性が向上する。
【0284】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0285】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0286】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0287】
○粘着剤組成物の製造方法
粘着剤組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した熱硬化性保護膜形成用組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0288】
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0289】
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
また、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせる方法でも、基材上に粘着剤層を積層できる。このとき、粘着剤組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。また、この場合の剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
ここまでは、基材上に粘着剤層を積層する場合を例に挙げたが、上述の方法は、例えば、基材上に粘着剤層以外の他の層を積層する場合にも適用できる。
【0290】
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、基材上に積層済みのいずれかの層(以下、「第1層」と略記する)上に、新たな層(以下、「第2層」と略記する)を形成して、連続する2層の積層構造(換言すると、第1層及び第2層の積層構造)を形成する場合には、前記第1層上に、前記第2層を形成するための組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させる方法が適用できる。
ただし、第2層は、これを形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、第1層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
ここでは、粘着剤層上に保護膜形成フィルムを積層する場合を例に挙げたが、例えば、粘着剤層上に保護膜形成フィルム以外の層(フィルム)を積層する場合など、対象となる積層構造は、任意に選択できる。
【0291】
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
【0292】
なお、保護膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、保護膜形成フィルム)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることで、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートが得られる。
【0293】
◇保護膜付きチップの製造方法(保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シートの使用方法)
前記保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シートは、前記保護膜付きチップの製造に用いることができる。そして、保護膜付きチップの製造方法としては、公知の方法を採用できる。以下、保護膜付きチップの製造方法の一例について、説明する。
【0294】
<<製造方法1>>
ウエハの裏面に対して、保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルムを貼付する場合の保護膜付きチップの製造方法(本明細書においては、「製造方法1」と称することがある)としては、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シートを構成していない前記保護膜形成フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物が前記保護膜であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記ウエハの裏面に貼付された後の前記保護膜形成フィルムが前記保護膜であり、前記保護膜付きチップの製造方法は、前記保護膜形成フィルムを、前記ウエハの裏面に貼付することにより、前記ウエハの裏面に前記保護膜形成フィルム又は保護膜が設けられた(積層された)第1積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は保護膜の前記ウエハ側とは反対側の面、あるいは前記ウエハの前記保護膜形成フィルム側又は保護膜側とは反対側の面に、ダイシングシートを積層する積層工程と、前記積層工程の後に、前記ウエハを分割(ダイシング)することにより、前記チップを作製する分割工程と、前記積層工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は保護膜を切断する切断工程と、切断後の前記保護膜形成フィルム又は保護膜を備えた前記チップを、前記ダイシングシートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有し、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルムを硬化させることにより、前記保護膜を形成する硬化工程を有する、保護膜付きチップの製造方法が挙げられる。
【0295】
前記製造方法1は、前記貼付工程と前記ピックアップ工程との間に、さらに、前記第1積層体における前記保護膜形成フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成フィルム又は保護膜の前記ウエハ側とは反対側の外部から、レーザー光を直接又は前記ダイシングシートを介して照射することにより、前記保護膜形成フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程を有していてもよい。
【0296】
前記積層工程の前に前記印字工程を有する場合、前記積層工程において、ダイシングシートの積層対象となる、保護膜形成フィルム又は保護膜の面は、印字工程で印字が行われた面であることが好ましい。
前記ダイシングシートは、公知のものであってよく、前記支持シートと同様のものであってもよい。
前記積層工程は、公知の方法で行うことができる。
【0297】
本実施形態においては、前記積層工程後、前記分割工程と前記切断工程を同時に行うか、又は前記分割工程を行ってから前記切断工程を行うことが好ましい。
本実施形態においては、ウエハの分割と、保護膜形成フィルム又は保護膜の切断とを、その順序によらず、中断することなく同じ操作によって連続的に行った場合には、分割工程及び切断工程を同時に行ったものとみなす。
【0298】
前記分割工程及び切断工程は、いずれも、これらを行う順番に応じて、公知の方法で行うことができる。
【0299】
分割工程を行ってから切断工程を行う場合、特にウエハが半導体ウエハである場合には、ウエハの分割(換言すると個片化)は、例えば、ステルスダイシング(登録商標)又はレーザーダイシング等によって行うことができる。
ステルスダイシング(登録商標)とは、以下のような方法である。すなわち、まず、半導体ウエハの内部において、分割予定箇所を設定し、この箇所を焦点として、この焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、半導体ウエハの内部に改質層を形成する。半導体ウエハの改質層は、半導体ウエハの他の箇所とは異なり、レーザー光の照射によって変質しており、強度が弱くなっている。そのため、半導体ウエハに力が加えられることにより、半導体ウエハの内部の改質層において、半導体ウエハの両面方向に延びる亀裂が発生し、半導体ウエハの分割の起点となる。次いで、半導体ウエハに力を加えて、前記改質層の部位において半導体ウエハを分割し、半導体チップを作製する。
【0300】
分割工程を行ってから切断工程を行う場合には、保護膜形成フィルム又は保護膜の切断は、例えば、保護膜形成フィルム又は保護膜を、そのチップへの貼付面に対して平行な方向に引っ張る、所謂エキスパンドによって行うことができる。エキスパンドされた保護膜形成フィルム又は保護膜は、チップの外周に沿って切断される。このようなエキスパンドによる切断は、-20~5℃等の低温下において、行うことが好ましい。
【0301】
分割工程及び切断工程を同時に行う場合には、ブレードを用いるブレードダイシング、レーザー照射によるレーザーダイシング、又は研磨剤を含む水の吹き付けによるウォーターダイシング等の各ダイシングによって、ウエハの分割と、保護膜形成フィルム又は保護膜の切断と、を同時に行ことができる。
また、ステルスダイシング(登録商標)により改質層を形成し、かつ分割を行っていない半導体ウエハと、保護膜形成フィルム又は保護膜と、をともに、上記と同様の方法でエキスパンドすることにより、半導体ウエハの分割と、保護膜形成フィルム又は保護膜の切断と、を同時に行こともできる。
【0302】
切断工程を行ってから分割工程を行う場合には、上記と同様の各ダイシング時の手法によって、ウエハを分割することなく、保護膜形成フィルム又は保護膜を切断することができ、次いで、ウエハをブレーキング又は上記と同様の各ダイシング時の手法によって分割することができる。
【0303】
前記ピックアップ工程において、切断後の保護膜形成フィルム又は保護膜を備えたチップは、引き離し手段として真空コレットを用いる方法等、公知の方法で、ダイシングシートから引き離すことができる。
【0304】
製造方法(1)は、前記貼付工程、硬化工程、印字工程、積層工程、分割工程、切断工程、及びピックアップ工程、の各工程以外に、これらのいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類と、これを行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0305】
<<製造方法2>>
ウエハの裏面に対して、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを貼付する場合の保護膜付きチップの製造方法(本明細書においては、「製造方法2」と称することがある)としては、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物が前記保護膜であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記ウエハの裏面に貼付された後の前記保護膜形成フィルムが前記保護膜であり、前記保護膜付きチップの製造方法は、前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成フィルムを、前記ウエハの裏面に貼付することにより、前記ウエハの裏面に前記保護膜形成用複合シートが設けられた(積層された)第2積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記ウエハを分割することにより、前記チップを作製する分割工程と、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は保護膜を切断する切断工程 と、切断後の前記保護膜形成フィルム又は保護膜を備えた前記チップを、前記支持シートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有し、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルムを硬化させることにより、前記保護膜を形成する硬化工程を有する、保護膜付きチップの製造方法が挙げられる。
【0306】
前記製造方法2は、前記貼付工程の後に、さらに、前記第2積層体における前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの前記支持シート側の外部から、レーザー光を照射することにより、前記保護膜形成フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程を有していてもよい。
【0307】
製造方法2は、保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルムに代えて保護膜形成用複合シートを用いる点と、前記積層工程を行わない点と、を除けば、製造方法1と同じであり、必要に応じて、製造方法1の場合とは異なる他の工程を追加して行ってもよい。
【0308】
◇保護膜付きチップの取り扱い方法
前記保護膜付きチップは、エンボスキャリアテープによって1個ずつ梱包し、保管した後、その使用時にエンボスキャリアテープから正常に取り出すことができる。
より具体的には、前記保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップの取り扱い方法は、エンボスキャリアテープによって前記保護膜付きチップを梱包する梱包工程と、前記エンボスキャリアテープによって梱包した前記保護膜付きチップを保管する保管工程と、保管後の前記保護膜付きチップを、前記エンボスキャリアテープから取り出す取り出し工程と、を有し、前記エンボスキャリアテープは、前記保護膜付きチップを収納するためのポケットを備えたトレイと、カバーテープと、を備えて構成されており、前記梱包工程において、前記ポケットの内部に、1個の前記保護膜付きチップを、その中の保護膜を前記ポケットの開口部側に向けて収納し、前記保護膜付きチップを収納した前記トレイ中の前記ポケットの前記開口部側に、前記カバーテープを貼付して、前記開口部を閉塞することにより、前記保護膜付きチップを前記エンボスキャリアテープによって梱包し、前記取り出し工程において、前記カバーテープを前記トレイから剥離し、前記ポケットの内部から前記保護膜付きチップを取り出す。前記取り扱い方法によれば、保護膜付きチップ中の保護膜が、上述の本実施形態の保護膜形成フィルムを用いて設けられていることにより、前記保管工程から前記取り出し工程の間に、前記ポケットの内部に収納されている保護膜付きチップ中の保護膜が、カバーテープに付着することが抑制される。したがって、前記取り出し工程において、前記ポケットの内部から保護膜付きチップを正常に取り出すことができる。
【0309】
前記トレイは、テープ状であり、かつ、その長手方向に、複数個の前記ポケットが設けられていることが好ましく、前記長手方向に一列に、複数個の前記ポケットが設けられていることがより好ましい。
【0310】
前記エンボスキャリアテープは、公知のものであってよい。
前記トレイの構成材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレン等の樹脂が挙げられる。
前記トレイ中の前記ポケットの形状及び大きさは、収納対象の保護膜付きチップに応じて、任意に設定できる。例えば、ポケットをその上方から見下ろして平面視したときの形状(すなわち平面形状)が、四角形である場合には、ポケットの1辺の長さは0.5mm~30mmであることが好ましく、ポケットの深さは0.1mm~10mmであることが好ましい。
前記カバーテープの構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂が挙げられる。
前記カバーテープの厚さは、は10~100μmであることが好ましい。
【0311】
前記トレイがテープ状である場合、前記保管方法においては、前記開口部を閉塞後の前記エンボスキャリアテープを、リール状に巻回してもよい。
【0312】
前記エンボスキャリアテープをリール状に巻回して、保護膜付きチップを保管した後は、エンボスキャリアテープをリール状のまま装置(例えば、マウンター等)に設置し、エンボスキャリアテープから保護膜付きチップを取り出してもよい。
【0313】
前記エンボスキャリアテープから取り出した後の保護膜付きチップは、公知の方法によって、その後の工程(例えば、保護膜付きチップの回路基板上への実装工程)に供することが可能である。
【0314】
図7図9は、上述の保護膜付きチップの取り扱い方法の一例を模式的に示す断面図である。
ここでは、保護膜付きチップとして、チップ80と、チップ80の裏面に設けられた保護膜71と、を備えており、保護膜71が上述の本実施形態の保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップ7を適用した場合について、説明する。
【0315】
前記梱包工程においては、図7に示すように、トレイ91中のポケット911aの内部に、1個の保護膜付きチップ7を、その中の保護膜71をポケットの開口部側に向け、チップ80をポケット911aの底面側に向けて収納する。エンボスキャリアテープ9は、保護膜付きチップ8を収納するためのポケット911aを備えたトレイ91と、カバーテープ92と、を備えて構成されている。テープ状のトレイ91には、その長手方向に一列に、複数個のポケット911aが設けられている。次いで、保護膜付きチップ7を収納したトレイ91中のポケット911aの開口部側に、カバーテープ92を貼付して、前記開口部を閉塞する。図7中、矢印Dは、カバーテープ92をトレイ91に貼付するときの、カバーテープ92の移動方向を示している。これにより、複数個の保護膜付きチップ7を1個ずつエンボスキャリアテープ9によって梱包する。
【0316】
トレイ91へのカバーテープ92の貼付は、例えば、カバーテープ92とトレイ91の一方の端部から開始して、他方(反対側)の端部へ向けて順次行うことができる。
【0317】
前記保管工程においては、図8に示すように、エンボスキャリアテープ9によって梱包した保護膜付きチップ7を保管する。このとき、エンボスキャリアテープ9をリール状に巻回した状態で、保護膜付きチップ7を保管してもよい。
【0318】
前記取り出し工程においては、図9に示すように、カバーテープ92をトレイ91から剥離し、ポケット911aの内部から保護膜付きチップ7を取り出す。図9中、矢印Dは、カバーテープ92をトレイ91から剥離するときの、カバーテープ92の移動方向を示している。
【0319】
トレイ91からのカバーテープ92の剥離は、例えば、カバーテープ92とトレイ91の一方の端部から開始して、他方(反対側)の端部へ向けて順次行うことができる。
トレイ91とカバーテープ92の剥離を開始する端部は、貼付を開始した端部と同じであってもよいし、異なっていても(反対側の端部であっても)よい。
【0320】
保護膜付きチップ7を用いた場合には、前記保管工程から前記取り出し工程の間に、ポケット911aの内部に収納されている保護膜付きチップ7中の保護膜71が、カバーテープ92に付着することが抑制される。したがって、前記取り出し工程において、ポケット911aの内部から保護膜付きチップ7を正常に取り出すことができる。
【0321】
◇基板装置の製造方法
上述の使用方法により保護膜付きチップを取り出した後は、従来の保護膜付きチップに代えて、この保護膜付きチップを用いる点を除けば、従来の基板装置の製造方法と同じ方法で、基板装置を製造できる。
【0322】
このような基板装置の製造方法としては、例えば、前記保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップ上の突状電極を、回路基板上の接続パッドに接触させることにより、前記突状電極と、前記回路基板上の接続パッドと、を電気的に接続するフリップチップ接続工程を有する製造方法が挙げられる。
【実施例0323】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0324】
<樹脂の製造原料>
本実施例及び比較例において略記している、樹脂の製造原料の正式名称を、以下に示す。
MA:アクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0325】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(A)]
(A)-1:MA(85質量部)及びHEA(15質量部)を共重合してなるアクリル重合体(重量平均分子量400000、ガラス転移温度6℃)。
[エポキシ樹脂(B1)]
(B1)-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828」、エポキシ当量184~194g/eq)
(B1)-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER1055」、エポキシ当量800~900g/eq)
(B1)-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200HH」、エポキシ当量274~286g/eq)
[熱硬化剤(B2)]
(B2)-1:ジシアンジアミド(熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、ADEKA社製「アデカハードナーEH-3636AS」、活性水素量21g/eq)
[硬化促進剤(C)]
(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール(登録商標)2PHZ-PW」)
[充填材(D)]
(D)-1:酸化チタンフィラー(大日精化工業社製「DIMIC SZ 7030 ホワイト」)
(D)-2:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、エポキシ系化合物で表面修飾された球状シリカフィラー、平均粒子径0.5μm)
[カップリング剤(E)]
(E)-1:エポキシ基、メチル基及びメトキシ基を有するオリゴマー型シランカップリング剤(信越化学工業社製「X-41-1056」、エポキシ当量280g/eq)
[架橋剤(F)]
(F)-1:トリレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」)
[着色剤(I)]
(I)-1:黒色顔料(トーヨーカラー社製「マルチラック(登録商標) A903 ブラック」)
【0326】
[実施例1]
<<保護膜形成フィルムの製造>>
<保護膜形成用組成物(III)の製造>
重合体成分(A)-1(25質量部)、エポキシ樹脂(B1)-1(9.4質量部)、エポキシ樹脂(B1)-2(1.6質量部)、エポキシ樹脂(B1)-3(4.7質量部)、熱硬化剤(B2)-1(0.31質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.31質量部)、充填材(D)-1(56.3質量部)、カップリング剤(E)-1(0.03質量部)、架橋剤(F)-1(0.35質量部)及び着色剤(I)-1(2質量部)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が60質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III)-1を得た。ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0327】
<保護膜形成フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(第1剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET382150」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(III)-1を塗工し、120℃で2分乾燥させることにより、厚さ25μmの熱硬化性の保護膜形成フィルムを製造した。
【0328】
さらに、得られた保護膜形成フィルムの、第1剥離フィルムを備えていない側の露出面に、剥離フィルム(第2剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせることにより、保護膜形成フィルムと、前記保護膜形成フィルムの一方の面に設けられた第1剥離フィルムと、前記保護膜形成フィルムの他方の面に設けられた第2剥離フィルムと、を備えて構成された剥離フィルム付き保護膜形成フィルムを得た。
【0329】
<<保護膜付きチップの製造>>
<保護膜付きシリコンチップ(1)の製造>
上記で得られた剥離フィルム付き保護膜形成フィルムから、第2剥離フィルムを取り除いた。また、一方の面が#2000研磨されたシリコンウエハ(直径200mm、厚さ280μm)を用意した。テープマウンター(リンテック社製「Adwill RAD-3600F/12)を用いて、保護膜形成フィルムを70℃に加熱しながら、その露出面(第2剥離フィルムを備えていた面)を、前記シリコンウエハの研磨面に貼付することにより、第1剥離フィルムと、前記保護膜形成フィルムと、前記シリコンウエハと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、保護膜形成フィルム付きシリコンウエハ(前記第1積層体に相当)を作製した(前記貼付工程)。
次いで、この保護膜形成フィルム付きシリコンウエハ中の保護膜形成フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。
次いで、この保護膜形成フィルム付きシリコンウエハ中の保護膜形成フィルムを、130℃で2時間加熱して熱硬化させることにより、保護膜と、前記シリコンウエハと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、保護膜付きシリコンウエハを作製した(前記硬化工程)。
【0330】
上記で得られた保護膜付きシリコンウエハ中の保護膜の露出面に、ダイシングシート(リンテック社製「Adwill D-676H」)を貼付し(前記積層工程)、ダイシング装置 (ディスコ社製「DFD6361」)を用いて、保護膜付きシリコンウエハ中のシリコンウエハを3mm×3mmの大きさに分割(ダイシング)し、同時に保護膜を同じ大きさに切断することにより、目的とする保護膜付きシリコンチップ(1)を、前記ダイシングシート上に複数個作製した(前記分割工程、前記切断工程)。すなわち、保護膜付きシリコンチップ(1)において、保護膜の厚さは25μmであり、シリコンチップの厚さは280μmであり、保護膜及びシリコンチップの大きさは3mm×3mmであった。
次いで、紫外線照射装置を用いて、照度230mW/cm、光量190mJ/cmの条件で、前記ダイシングシートに紫外線を照射して、ダイシングシートを硬化させた。
【0331】
<保護膜付きシリコンチップ(2)の製造>
直径200mm、厚さ280μmのシリコンウエハに代えて、直径200mm、厚さ150μmのシリコンウエハを用い、保護膜及びシリコンチップの大きさを、3mm×3mmに代えて5mm×3mmとした点以外は、保護膜付きシリコンチップ(1)の場合と同じ方法で、目的とする保護膜付きシリコンチップ(2)を、前記ダイシングシート上に複数個作製した。すなわち、保護膜付きシリコンチップ(2)において、保護膜の厚さは25μmであり、シリコンチップの厚さは150μmであり、保護膜及びシリコンチップの大きさは5mm×3mmであった。
次いで、紫外線照射装置を用いて、照度230mW/cm、光量190mJ/cmの条件で、前記ダイシングシートに紫外線を照射して、ダイシングシートを硬化させた。
【0332】
<<保護膜形成フィルムの評価>>
<保護膜形成フィルムの硬化物の最大帯電圧の測定、及び帯電圧の半減期の測定>
上記で得られた剥離フィルム付き保護膜形成フィルムを130℃で2時間加熱することにより、保護膜形成フィルムを熱硬化させ、剥離フィルム付き熱硬化物とした。この保護膜形成フィルムの熱硬化物は、保護膜に相当する。そして、この剥離フィルム付き熱硬化物から、大きさが45mm×45mmの細片を切り出し、前記熱硬化物から第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムを取り除いて、得られたもの(大きさが45mm×45mmの前記熱硬化物)を試験片とした。
【0333】
次いで、半減期測定機として、シシド静電気社製「STATIC HONESTMETER Type S-5109」を用い、上記で得られた試験片について、JIS L 1094:2014に準拠して、帯電圧を連続的に測定した。このとき、半減期測定機中の印加部の針電極の先端を、試験片の一方の表面に接近させ、試験片をコロナ放電場で帯電させた後、帯電圧の測定開始と同時に、試験片を帯電させる操作(コロナ放電場により帯電させる操作)を停止し、試験片の前記一方の表面側において、帯電圧を測定した。そして、このとき得られた測定値から、試験片の最大帯電圧を求め、さらに、試験片の帯電圧が最大帯電圧の1/2に減衰するまでの時間を求めて、試験片の帯電圧の半減期とした。結果を表1に示す。このとき、帯電圧の測定開始と同時に、試験片を帯電させる操作を停止するため、帯電圧の測定開始時(測定開始から0秒)での帯電圧が、試験片の最大帯電圧となる。
【0334】
<保護膜形成フィルムの硬化物の表面抵抗率の測定>
上記で得られた剥離フィルム付き保護膜形成フィルムを130℃で2時間加熱することにより、保護膜形成フィルムを熱硬化させ、剥離フィルム付き熱硬化物とした。この保護膜形成フィルムの熱硬化物は、保護膜に相当する。そして、前記熱硬化物から第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムを取り除き、表面抵抗率計(アドバンテスト社製「R12704 Resistivity chamber」)を用いて、印加電圧を100Vとして、前記熱硬化物の表面において、表面抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0335】
<保護膜形成フィルムの硬化物のtanδ(23℃)の測定>
上記で得られた2枚の剥離フィルム付き保護膜形成フィルムを用いて、これらから第2剥離フィルムを取り除いて、生じた保護膜形成フィルムの露出面同士を貼り合わせることで、2枚の保護膜形成フィルムが積層された第1積層物を作製した。第1積層物は合計で4枚作製した。さらに、2枚の第1積層物を用いて、これらからそれぞれ、一方の第1剥離フィルムを取り除いて、生じた保護膜形成フィルムの露出面同士を貼り合わせることで、4枚の保護膜形成フィルムが積層された第2積層物を作製した。第2積層物は合計で2枚作製した。さらに、2枚の第2積層物を用いて、これらからそれぞれ、一方の第1剥離フィルムを取り除いて、生じた保護膜形成フィルムの露出面同士を貼り合わせることで、第1剥離フィルムと、8枚の保護膜形成フィルム(合計の厚さ200μm)と、第1剥離フィルムと、がこの順に積層されて構成された第3積層物を作製した。そして、この第3積層物から、幅が5mmで長さが25mmの切片を切り出した。このとき、切片の長さ方向を保護膜形成フィルムのMD方向(樹脂の流れ方向)と一致させた。この切片を130℃で2時間加熱することにより、切片中の保護膜形成フィルムを熱硬化させ、剥離フィルム付き熱硬化物とした。この保護膜形成フィルムの熱硬化物は、保護膜に相当する。そして、前記剥離フィルム付き熱硬化物から最表面の2枚の第1剥離フィルムを取り除いて、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製「DMAQ800」)を用いて、チャック間距離を15mmとし、引張法(引張モード)により、前記熱硬化物に対して、測定周波数を11Hzとし、-70~100℃の温度範囲で、昇温速度を3℃/分として、昇温したときの動的粘弾性測定を行った。そして、23℃での貯蔵弾性率と損失弾性率との比(損失弾性率/貯蔵弾性率)であるtanδ(23℃)を算出した。結果を表1に示す。
【0336】
<パッケージ信頼性の評価>
上記で得られた保護膜付きシリコンチップ(1)を、以下に示すプレコンディションに置いて、半導体チップが実装されるときのプロセスを模倣した。
すなわち、保護膜付きシリコンチップ(1)を125℃で20時間ベイキングした後、温度85℃、相対湿度85%の条件下で168時間吸湿させ、次いで、この吸湿環境から取り出した直後の保護膜付きシリコンチップ(1)を、プレヒート160℃、ピーク温度260℃の条件のIRリフロー炉に3回通した。そして、ここまでの操作を行った25個の保護膜付きシリコンチップ(1)を冷熱衝撃装置(ESPEC社製「TSE-11-A」)中に入れ、-65℃で10分間保持した後、150℃で10分間保持する冷熱サイクルを1000回繰り返した。
次いで、冷熱衝撃装置からすべての保護膜付きシリコンチップ(1)を取り出し、走査型超音波探傷装置(Sonoscan社製「D9600TMCSAM」)を用いて、保護膜付きシリコンチップ(1)を観察することにより、シリコンチップと保護膜との接合部における保護膜の浮き又は剥がれの有無を確認した。そして、この保護膜の浮き又は剥がれ(不具合)が生じている保護膜付きシリコンチップ(1)の個数を数え、その個数が2以下の場合は「A」(信頼性合格)と判定し、3以上の場合は「B」(信頼性不合格)と判定した。その結果を、不具合が生じている保護膜付きシリコンチップ(1)の個数とともに、表1に示す。
【0337】
<カバーテープに対する保護膜付きチップの付着抑制効果の評価>
ダイボンダー(キャノンマシナリー社製「BESTEM-D510」)を用いて、上記で得られた100個の保護膜付きシリコンチップ(2)を、前記ダイシングシートからピックアップした。
【0338】
次いで、そのうちの20個の保護膜付きシリコンチップ(2)を、大きさが12cm×12cmで、厚さが5mmの鉄板の表面に、網目状に載置した。このとき、保護膜付きシリコンチップ(2)中の前記シリコンチップを、前記鉄板に接触させ、前記鉄板の表面上で、隣り合う保護膜付きシリコンチップ(2)同士の間隔を均等にして、保護膜付きシリコンチップ(2)を4行、5列に配置した。
次いで、この鉄板の表面に載置した20個の保護膜付きシリコンチップ(2)に、大きさが12cm×3.8cmのカバーテープ(住友ベークライト社製「CSL-Z7302」)を被せた。このとき、保護膜付きシリコンチップ(2)中の前記保護膜を、前記カバーテープに接触させた。このようにして得られた前記鉄板、保護膜付きシリコンチップ(2)及び前記カバーテープの積層物を、前記鉄板を下にして、40℃に加熱した熱板上に載置し、さらに、前記カバーテープ上に金属板を載置した。これにより、保護膜付きシリコンチップに加える圧力を3.43N(350gf)として、この状態のまま、前記積層物を2分間、加熱加圧した。
次いで、前記積層物上から前記金属板を取り除き、保護膜付きシリコンチップ(2)上から前記カバーテープを取り除いて、前記カバーテープへの保護膜付きシリコンチップ(2)の付着の有無を確認した。
【0339】
ここまでの20個の保護膜付きシリコンチップ(2)を用いた試験を、さらに4回繰り返し、合計で5回行い、合計で100個の保護膜付きシリコンチップ(2)について、上記の試験を行った。そして、100個の保護膜付きシリコンチップ(2)のうち、カバーテープに付着した保護膜付きシリコンチップ(2)の数を数えた。このときの保護膜付きシリコンチップ(2)のカバーテープへの付着数を表1に示す。
【0340】
<<保護膜形成フィルムの製造、保護膜付きチップの製造、及び保護膜形成フィルムの評価>>
[実施例2~3、比較例1]
保護膜形成フィルムの含有成分と含有量が、表1に示すとおりとなるように、配合成分の種類及び配合量の少なくとも一方を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成フィルム及び保護膜付きチップを製造し、保護膜形成フィルムを評価した。結果を表1に示す。
【0341】
【表1】
【0342】
上記結果から明らかなように、実施例1~3においては、カバーテープに対する保護膜付きシリコンチップ(2)の付着が高度に抑制されていた。実施例1~3においては、保護膜形成フィルムの硬化物の最大帯電圧が650V以下であり、帯電圧の半減期が27秒以下であった。
【0343】
また、実施例1~3においては、パッケージ信頼性も高かった。実施例1~3においては、保護膜形成フィルムの硬化物の表面抵抗率が1.9×1013Ω/□以上であった。なかでも、実施例1及び2において、パッケージ信頼性が特に高く、これら実施例において、保護膜形成フィルムの硬化物の表面抵抗率が1.4×1014Ω/□以上であった。
【0344】
このように、実施例1~3の保護膜形成フィルムは、エンボスキャリアテープ中の保護膜付きチップをエンボスキャリアテープから取り出すときに、カバーテープへの保護膜付きチップの付着を抑制するのに好適なものであり、さらに、信頼性の高いパッケージの製造を可能としていた。
【0345】
これに対して、比較例1においては、カバーテープに対する保護膜付きシリコンチップ(2)の付着が抑制されていなかった。比較例1においては、保護膜形成フィルムの硬化物の最大帯電圧が1280Vと高く、さらに帯電圧の半減期が48秒と長かった。これは、保護膜形成フィルムが、これら物性の良化に有用な、酸化チタン等の成分を含有していないためであった。
【産業上の利用可能性】
【0346】
本発明は、半導体装置をはじめとする各種基板装置の製造に用いるための保護膜付きチップの製造及び保管に利用可能である。
【符号の説明】
【0347】
10,20・・・支持シート、10a,20a・・・支持シートの一方の面(第1面)、
11・・・基材、
12・・・粘着剤層、
13,23・・・保護膜形成フィルム、
101,102,103,104・・・保護膜形成用複合シート、
71・・・保護膜
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