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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043582
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】電子機器および組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20230322BHJP
   H01L 23/40 20060101ALI20230322BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H05K7/20 E
H01L23/40 E
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151287
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 満城
(72)【発明者】
【氏名】安濃 守人
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB01
5E322AB04
5E322AB07
5E322AB11
5E322BA01
5E322BA05
5E322CA05
5E322EA11
5E322FA04
5F136BA03
5F136BB18
5F136BC01
5F136DA33
5F136EA02
5F136EA36
(57)【要約】
【課題】ヒートシンクを有する電子機器の技術に関して、ヒートシンクによる基板への負荷・力を低減し、基板の変形等を防止できる技術を提供する。
【解決手段】電子機器1は、第1ケース11と第2ケース12とを有するケースと、ケース内に収納され、発熱部品5を有し、主面が第1方向に延在するように配置されている基板2と、ケース内に収納され、発熱部品5に放熱グリスを介して接するように配置され、発熱部品5を放熱するためのヒートシンク3とを備える。ヒートシンク3は、発熱部品5を押圧するように、第1方向に対し垂直である第2方向で基板2に対し弾性体を介して固定され、基板2における発熱部品領域は、第2方向で第2ケース12との間にスペースを設けて配置され、ケースは、ヒートシンク3の荷重によって基板2に働く負荷を低減するように、ヒートシンク3へ向かって出てヒートシンク3を支持する支持部4を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケースと第2ケースとを有するケースと、
前記ケース内に収納され、発熱部品を有し、主面が第1方向に延在するように配置されている基板と、
前記ケース内に収納され、前記発熱部品に放熱グリスを介して接するように配置され、前記発熱部品を放熱するためのヒートシンクと、
を備え、
前記ヒートシンクは、前記発熱部品を押圧するように、前記第1方向に対し垂直である第2方向で前記基板に対し弾性体を介して固定され、
前記基板における前記発熱部品を有する発熱部品領域は、前記第2方向で前記第2ケースとの間にスペースを設けて配置され、
前記ケースは、前記ヒートシンクの荷重によって前記基板に働く負荷を低減するように、前記ヒートシンクへ向かって出て前記ヒートシンクを支持する支持部を有する、
電子機器。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器において、
前記ケースは、前記第1方向を鉛直方向、前記第2方向を水平方向とした縦置きの設置形態と、前記第1方向を水平方向、前記第2方向を鉛直方向とした横置きの設置形態とのいずれでも配置可能であり、
前記支持部は、前記ヒートシンクの主面の四辺を、辺ごとに少なくとも一箇所で、所定のクリアランスを介して支持する、
電子機器。
【請求項3】
請求項1記載の電子機器において、
前記ケースは、前記第1方向を鉛直方向、前記第2方向を水平方向とした縦置きの設置形態で配置され、
前記支持部は、前記縦置きで前記ヒートシンクの下面となる箇所を、所定のクリアランスを介して支持する、
電子機器。
【請求項4】
請求項1記載の電子機器において、
前記ケースは、前記第1方向を水平方向、前記第2方向を鉛直方向とした横置きの設置形態で配置され、
前記支持部は、前記横置きで前記ヒートシンクの下面となる箇所を、所定のクリアランスを介して支持する、
電子機器。
【請求項5】
請求項1記載の電子機器において、
前記基板は、前記第2方向で主面を平面視した場合に、前記発熱部品を有さない主基板領域から、開口領域および接続領域を介して、前記発熱部品領域が外側に出た形状を有し、前記発熱部品領域の隣には、前記ヒートシンクが露出する切り欠き領域が設けられている、
電子機器。
【請求項6】
請求項1記載の電子機器において、
前記ヒートシンクは、少なくとも前記第1方向に凹凸を有し、
前記支持部は、前記第1ケースの内側面に設けられ前記ヒートシンクの所定の箇所を支持する第1支持部と、前記第2ケースの内側面に設けられ前記ヒートシンクの所定の箇所を支持する第2支持部と、を有し、
前記ヒートシンクの凸部は、前記第2方向で前記基板に対し前記弾性体を介してねじ締結によって固定されている、
電子機器。
【請求項7】
電子機器を組み立てる組み立て方法であって、
前記電子機器は、
第1ケースと第2ケースとを有するケースと、
前記ケース内に収納され、発熱部品を有し、主面が第1方向に延在するように配置される基板と、
前記ケース内に収納され、前記発熱部品に放熱グリス(接触面の熱伝導を促進する部材)を介して接するように配置され、前記発熱部品を放熱するためのヒートシンクと、
を備え、
前記ヒートシンクは、前記発熱部品を所定の範囲内の押圧力で押圧するように、前記第1方向に対し垂直である第2方向で前記基板に対し弾性体を介して固定され、
前記基板における前記発熱部品を有する発熱部品領域は、前記第2方向で前記第2ケースとの間にスペースを設けて配置され、
前記ケースは、前記ヒートシンクの荷重によって前記基板に働く負荷を低減するように、前記ヒートシンクへ向かって出て前記ヒートシンクを支持する支持部を有し、
前記組み立て方法は、
前記第1ケースの前記支持部によって囲まれる領域に、前記ヒートシンクを配置するステップと、
前記第1ケースおよび前記ヒートシンクに対し、前記基板を固定するステップと、
前記第1ケースに対し前記第2ケースを固定するステップと、
を有する、組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクを有する電子機器の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の各種の電子機器は、電子回路基板(プリント基板など。基板と記載する場合がある)に実装されている半導体デバイスなどの発熱部品(言い換えると放熱を必要とする部品)の冷却性能向上を目的として、発熱部品に対しヒートシンクが取り付けられて使用されている。
【0003】
電子機器のケース(言い換えると筐体)内には、基板やヒートシンクが収納される。自然空冷方式の場合、ケースには、空気を通す通気孔が設けられている。従来、ヒートシンクは、基板に対し例えばねじ締結によって固定されている。
【0004】
先行技術例としては、国際公開第2008/139563号(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、例えば図2に示されるように、電子装置100の断面において、筐体210内に、プリント基板120などが搭載されている。プリント基板(配線板)120の半導体部品110に対し、ヒートシンク150が設けられている。ヒートシンク150は、プリント基板120に対し、ネジ156、ワッシャ157およびバネ158によって固定されている。特許文献1では、半導体部品110とプリント基板120との間隔を維持するとともに半導体部品110のバンプ117に加わる負荷を低減する負荷低減部130を有する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/139563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記電子機器におけるヒートシンクは、発熱部品の発熱量が多いほど、放熱のための表面積の確保のために大型になることが一般的である。ヒートシンクが大型になるほど、重くなる。ヒートシンクが重くなるほど、基板への負荷(言い換えると基板に加わる力)が増加する。これにより、基板の変形や破損などにつながるリスクがある。ヒートシンクの重さによって基板が変形した場合、この変形による影響として、ヒートシンクの近傍に実装されている部品(例えば面付け部品のはんだ)に、例えばクラックなどが発生するリスクもある。
【0007】
従来一般的であるヒートシンク固定構造では、ヒートシンクは基板に対しねじ締結などによって一定以上の押圧力で押圧されるように固定されている。これにより、ヒートシンクによる放熱・冷却性能が高められる。しかしながら、上記のように大型のヒートシンクを基板に対し直接的に取り付けるヒートシンク固定構造では、ヒートシンクの重さに応じた強い押圧力で固定する必要があり、その押圧力によって、基板の固定部位に大きな負荷がかかり、基板の変形などを招くおそれがある。
【0008】
また、上記ヒートシンク固定構造は、ケース内のスペースにおいて、発熱部品の搭載領域に対し、なるべく狭いスペースで実装される必要がある。
【0009】
上記ヒートシンクによる放熱・冷却性能を確保または向上するとともに、上記ヒートシンクによる基板への負荷・力を低減し、基板の変形等を防止できる構造が求められる。
【0010】
また、電子機器のケースの配置(言い換えると設置形態)としては、縦置きや横置きがある。縦置きや横置きのいずれの設置形態でも利用可能な電子機器もある。設置形態に応じて、上記ヒートシンクによる基板への負荷・力を低減できる構造が求められる。
【0011】
本発明の目的は、ヒートシンクを有する電子機器の技術に関して、ヒートシンクによる基板への負荷・力を低減し、基板の変形等を防止できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のうち代表的な実施の形態は以下に示す構成を有する。実施の形態の電子機器は、第1ケースと第2ケースとを有するケースと、前記ケース内に収納され、発熱部品を有し、主面が第1方向に延在するように配置されている基板と、前記ケース内に収納され、前記発熱部品に放熱グリスを介して接するように配置され、前記発熱部品を放熱するためのヒートシンクと、を備え、前記ヒートシンクは、前記発熱部品を押圧するように、前記第1方向に対し垂直である第2方向で前記基板に対し弾性体を介して固定され、前記基板における前記発熱部品を有する発熱部品領域は、前記第2方向で前記第2ケースとの間にスペースを設けて配置され、前記ケースは、前記ヒートシンクの荷重によって前記基板に働く負荷を低減するように、前記ヒートシンクへ向かって出て前記ヒートシンクを支持する支持部を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のうち代表的な実施の形態によれば、ヒートシンクを有する電子機器の技術に関して、ヒートシンクによる基板への負荷・力を低減し、基板の変形等を防止できる。上記した以外の課題、構成および効果等については、発明を実施するための形態において示される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1の電子機器の縦置きの場合の外観斜視図を示す。
図2】実施の形態1の電子機器の横置きの場合の外観斜視図を示す。
図3】実施の形態1の電子機器の、構成要素の分解斜視図を示す。
図4】実施の形態1の電子機器の組み立て方法のフロー、および比較例の組み立て方法のフローを示す。
図5】実施の形態1で、第1ケースの平面図を示す。
図6】実施の形態1で、第1ケースの支持部に対しヒートシンクが取り付けられた状態の平面図を示す。
図7】実施の形態1で、第1ケースのヒートシンクに対し基板が取り付けられた状態の平面図を示す。
図8】実施の形態1で、第1ケースの支持部に対しヒートシンクを取り付ける際の斜視図を示す。
図9】実施の形態1で、第1ケースの支持部に対しヒートシンクが取り付けられた状態の斜視図を示す。
図10】実施の形態1で、ヒートシンクの斜視図を示す。
図11】実施の形態1で、第1ケースのヒートシンクに対し基板を取り付ける際の斜視図を示す。
図12】実施の形態1で、位置決めピンの詳細構造例を示す。
図13】実施の形態1で、第1ケースのヒートシンクに対し基板が取り付けられた状態の斜視図を示す。
図14】実施の形態1で、第1ケースに対し第2ケースを取り付ける際の斜視図を示す。
図15】実施の形態1で、第2ケースの支持部の斜視図を示す。
図16】実施の形態1で、縦置きの場合のX-Z面での断面図を示す。
図17】実施の形態1で、縦置きの場合のX-Z面での模式断面におけるヒートシンクおよび支持部の構成例を示す。
図18】実施の形態1で、横置きの場合のX-Z面での模式断面におけるヒートシンクおよび支持部の構成例を示す。
図19】実施の形態1で、縦置きの場合のX-Z面での模式断面におけるヒートシンク固定構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、各構成要素の表現は、発明の理解を容易にするために、実際の位置、大きさ、形状、および範囲等を表していない場合がある。
【0016】
<実施の形態1>
図1図19を用いて、本発明の実施の形態1の電子機器1について説明する。
【0017】
実施の形態1の電子機器1は、一例として光ネットワーク機器であり、ヒートシンク3が搭載される発熱部品5は、一例として光モジュールである。この電子機器は、勿論これに限定されずに適用可能である。光モジュールは、光と電気とを変換する機能を有するONU(Optical Network Unit)であり、比較的熱に弱いため、ヒートシンク3による放熱・冷却の対象となる。
【0018】
実施の形態1の電子機器1は、ユーザが利用する際の配置として、図示(図1図2)のように、縦置き、横置きのいずれの設置形態でも利用可能な電子機器である。ユーザは、所望の配置で電子機器1を利用する。実施の形態1の電子機器1は、いずれの設置形態でも、ヒートシンク3による基板2(図3等)への負荷を低減できる構造を有する。
【0019】
この構造は、具体的には後述するが、ケースに設けられた支持部4(図3等)によってヒートシンク3を支持する支持構造と、基板2に対し弾性体を介してヒートシンク3が固定される固定構造とを組み合わせた構造である。
【0020】
実施の形態1の電子機器1は、基板2およびヒートシンク3等を収納するケースにおいて、ヒートシンク3を支持する支持部4を設ける。支持部4は、ヒートシンク3に向かって出たリブである。電子機器1は、このケースの支持部4によってヒートシンク3を支持する支持構造を有する。これにより、ヒートシンク3の荷重を支持部4によって受け止めるので、基板2に対しヒートシンク3による負荷が直接的にはかからない構造となる。
【0021】
また、実施の形態1の電子機器1は、基板2に対するヒートシンク3の固定構造として、基板2に対し、ヒートシンク3(特に凸部)を、弾性体(図3の波ワッシャ6)を介して、固定ねじ7によって固定する構造とした。このヒートシンク固定構造では、発熱部品5とヒートシンク3との接触面が放熱グリス9を介して接触されるとともに、ヒートシンク3が基板2に対し所定の範囲内の押圧力で押圧されるように固定される。また、基板2におけるヒートシンク3が搭載される一方側に対しての他方側は、基板2(特に図7の発熱部品領域22)が第2ケース12と接触しないようにスペースが設けられる(図16等)。このヒートシンク固定構造により、ケース内に省スペースで基板2およびヒートシンク3を固定可能となり、通気のスペースもより広いスペースで確保されて、ヒートシンク3による冷却性能が高められる。
【0022】
そして、実施の形態1の電子機器1は、上記ヒートシンク固定構造と、上記ケースの支持部4によりヒートシンク3を支持するヒートシンク支持構造との相互作用により、いずれの設置形態でも、ヒートシンク3の重さによる基板2に対する負荷・力を低減でき、基板2の変形などを防止できる。
【0023】
実施の形態1の電子機器1では、縦置きと横置きの両方の設置形態に対応できる構造として、ケース(第1ケース11および第2ケース12)におけるヒートシンク3が配置される領域の全周に支持部4が設けられる。ヒートシンク3の主面(平面視した場合に最も面積が大きく見える面)の四辺のうち各辺の少なくとも一箇所に対応させて支持部4を有する。支持部4は、ヒートシンク3との間に所定のクリアランスを持つように設けられる。これにより、電子機器1は、縦置きと横置きとのいずれの設置形態での利用であっても、ヒートシンク3による基板2に対する負荷・力を低減できる。
【0024】
[電子機器-縦置き]
図1は、実施の形態1の電子機器1について、配置(設置形態)として縦置きの状態にした場合の外観の斜視図を示す。なお、説明上、電子機器1が設置される実空間の座標系および方向として(X,Y,Z)を用いる場合がある。X軸は第1水平方向、Y軸は第2水平方向、Z軸は鉛直方向である。図1の場合、X軸はケースの幅方向や厚さ方向、左右方向、Y軸は奥行き方向、前後方向、Z軸は高さ方向、上下方向に対応する。
【0025】
電子機器1のケース(言い換えると筐体)は、大別して、第1ケース11と、第2ケース12とで構成されている。第1ケース11と第2ケース12は、X方向で左右に分離される。第1ケース11は収納の容積が大きい本体ケースであり、第2ケース12は第1ケース11よりも収納の容積が小さいカバーである。図1では左手側に第1ケース11があり、右手側に第2ケース12がある。第1ケース11はケースの左側面部を構成し、第2ケース12は右側面部を構成する。
【0026】
電子機器1およびケースの前面部13は、Z方向に細長い領域を有する。図面では簡略化しているが、前面部13には、電子機器に応じたユーザインタフェースとして入出力端子やボタンやLEDなどが設けられる。前面部13に対し、図1では見えていない反対側にある後面部には、電子機器に応じた電源端子やボタンなどが設けられる。
【0027】
第1ケース11と第2ケース12とのそれぞれの主面(平面視した場合に最も面積が大きく見える面)の四辺の外周は、前面部13、後面部、上面部14、およびその反対側の下面部のそれぞれで接合されている。なお、電子機器1の設置面上に、図面では見えていない下面部が配置されている。また、電子機器1の下面部には、図示しないが、追加的な部品として、電子機器1を安定的に縦置きで配置するためのスタンドが設けられてもよい。
【0028】
図面ではケースを簡略化して図示している。実際のケースには、自然空冷方式でヒートシンク3を空冷するために、空気を通す孔(通気孔)などが設けられている。その通気孔の形状等の構成については特に限定されない。
【0029】
ケース内に破線で示す領域は、後述のヒートシンク3が配置されている概略的な領域を示している。図1の縦置きの場合において、ケース内の下部に、ヒートシンク3および後述(図3等)の基板2の発熱部品5等が配置されている。電子機器1の構成要素のうち金属製のヒートシンク3が最も重いことや、自然空冷方式によるヒートシンク3の放熱性能を考慮して、このような構成要素の配置とされている。
【0030】
[電子機器-横置き]
図2は、実施の形態1の電子機器1について、配置(設置形態)として横置きの状態にした場合の外観の斜視図を示す。この横置きの状態では、図1での第2ケース12が下面部となって、電子機器1の設置面上に配置され、図1での第1ケース11が上面部となって配置されている。図1での上面部14は、図2では右側面部となって配置されている。なお、以下では主に図1の縦置きでの座標系や用語を用いて説明するが、横置きの場合には、縦置きに対し相対的な関係が変わると考えればよく、重複する同様の説明を省略する。
【0031】
なお、基板2(図3)の主面(平面視した場合に最も面積が大きく見える面)が延在する方向(特に長手方向)を第1方向とし、第1方向に対し垂直な方向を第2方向とする。図1の縦置きの場合、第1方向は鉛直方向、第2方向は水平方向であり、図2の横置きの場合、第1方向は水平方向、第2方向は鉛直方向である。
【0032】
[電子機器-分解]
図3は、実施の形態1の電子機器1について、図1の座標系(X,Y,Z)を同じとして、縦置きの電子機器1を、主な構成要素に分解した状態の斜視図を示す。図3で、電子機器1の構成要素は、左から順に、第1ケース11、ヒートシンク3、基板2、および第2ケース12を有する。第1ケース11の内側面には支持部4(複数のリブ)等が設けられている。ヒートシンク3には放熱グリス9が塗布される。基板2には、電子回路基板であり、下部の一部の領域(左側の面)に発熱部品5が搭載されている。第2ケース11の見えていない内側面にも支持部4が設けられている(後述の図15)。
【0033】
[組み立て方法]
図4は、実施の形態1の電子機器1の組み立て方法を概略的に示すフローである。図4のフローは、作業者による電子機器1の組み立て作業フローに相当し、ステップS1,S2,S3を有する。ステップS1は、第1ケース11の支持部4に対しヒートシンク3を取り付ける第1ステップである。ステップS2は、第1ケース11およびヒートシンク3に対し基板2を固定する第2ステップである。ステップS3は、第1ケース11に対し第2ケース12を取り付ける第3ステップである。
【0034】
ステップS1で、作業者は、第1ケース11の内側面の空間において、複数の支持部4によって構成される領域内に、ヒートシンク3を配置することで取り付ける(図3図5図6図8図9等)。ヒートシンク3は、支持部4との間に所定のクリアランス(余裕を持たせた距離)を有する。
【0035】
ステップS2で、作業者は、第1ケース11およびヒートシンク3に対し、基板2を取り付ける(図7図11図13等)。この際、ヒートシンク3の所定の箇所には放熱グリス9が塗布される。ヒートシンク3の放熱グリス9の領域に対して発熱部品5が接触するように、基板2が配置される。基板2は第1ケース11の位置決めピン8に対し位置合わせして配置される。放熱グリス9は、接触面の熱伝導を促進する部材である。また、この際、ヒートシンク3の凸部(図10等)のねじ穴33に対し、基板2の穴25を合わせて、波ワッシャ6を介在して、固定ねじ7によって、ねじ締結される(図19等)。これにより、ヒートシンク3は、発熱部品5に対し所定の押圧力以上で押圧された状態で、基板2に対し固定される。
【0036】
ステップS3で、作業者は、ヒートシンク3および基板2を含む各部が収納・取り付けられた第1ケース11に対し、第2ケース12を、ねじ締結によって固定する(図14等)。詳しくは、第1ケース11の4箇所の角の位置決めピン111のねじ穴に対し、基板2の3箇所の角の穴26および第2ケース12の4箇所の角の穴121を通じて、ねじ122によって固定される(図3等)。実施の形態1では、第1ケース11と第2ケース12との固定は、四辺(前後面および上下面)でのスナップ嵌合と、角でのねじ締結とによる固定である。
【0037】
図4の下部には、実施の形態1に対する比較例として、従来一般的な組み立て方法のフローを示し、ステップS11,S12,S13を有する。ステップS11で、作業者は、基板に対しヒートシンクを取り付ける。基板の発熱部品に対しヒートシンクがねじ締結によって固定される。作業者は、ヒートシンクが取り付けられた基板(ヒートシンク付き基板とも記載)を持って、その後の作業を行うこととなる。ステップS12で、作業者は、第1ケースに対し、ヒートシンク付き基板を取り付ける。ステップS13で、作業者は、ヒートシンク付き基板が取り付けられた第1ケースに対し、第2ケースを固定する。なお、他の方法では、ステップS12で第2ケースに基板が取り付けられ、ステップS13で第2ケースに対し第1ケースが固定されてもよい。
【0038】
比較例のフローでは、作業者がヒートシンク付き基板を持って作業を行う時間が生じる。作業全体において、この時間が比較的長くなる。この時間において、ヒートシンクの荷重による負荷・力が基板に対して働く。これにより、基板の変形などを生じる可能性がある。
【0039】
一方、実施の形態1の組み立て方法のフローによれば、ステップS1で第1ケース11の支持部4に対しヒートシンク3が取り付けられた後、ステップS2でヒートシンク3に対し基板2が取り付けられる。これにより、作業者がヒートシンク付き基板を持って作業を行う時間が生じない。もしくは、その時間が生じたとしても、比較例の時間よりも短い。また、実施の形態1は、支持部4による支持構造と、固定ねじ7等による固定構造とを組み合わせた構造によって、ヒートシンク3が基板2に対し安定的に配置される。これにより、実施の形態1では、ヒートシンク3の荷重によって基板2へかかる負荷・力の影響が小さくなる。実施の形態1の組み立て方法により、製造作業中にもヒートシンク3による基板2への負荷を抑制でき、基板2の変形などを防止できる。
【0040】
[第1ケース、支持部]
図5は、第1ケース11の内側面における支持部4等の構造例を、Y-Z平面の平面図で示す。第1ケース11の内側面の空間において、Z方向での下部には、複数の支持部4を有し、これらの複数の支持部4によって囲まれた領域400が、ヒートシンク3を配置するための領域として設けられている。領域400は、概略的に矩形である。第1ケース11の内側面から、ヒートシンク3に向かうX方向に、支持部4が出ている。
【0041】
領域400の周りには、所定の位置に、位置決めピン8および位置決めピン111も有する。本例では、3個の位置決めピン(8,111)を有する。位置決めピン8は、後述(図12)のように、軸部から周りに出るリブ部分も有し、そのリブ部分も支持部4として機能する。
【0042】
第1ケース11の内側面の領域において、4個の角付近の所定の位置には、基板2および第2ケース12を位置決めおよび固定するための位置決めピン111が設けられている。特に、位置決めピン111には、ねじ穴が設けられている。
【0043】
領域400に配置されるヒートシンク3(図6)の四辺に対し、各辺で少なくとも一箇所には、支持部4(位置決めピン8等も含む)を有する。これにより、実施の形態1の電子機器1は、縦置き、横置きのいずれの設置形態にも対応可能である。すなわち、いずれの配置で利用された場合でも、ヒートシンク3による基板2への負荷を少なくともいずれかの支持部4によって支持して低減することができる。
【0044】
図6は、図5の第1ケース11の支持部4による領域400内にヒートシンク3が配置された状態を示す。Y-Z面において、ヒートシンク3は、図示のように矩形の主面を有し、主面の四辺(Z方向での上下辺およびY方向での前後辺)は、いずれの辺も、少なくとも一箇所が、支持部4によって支持されている。本例では、上辺は3個の支持部4で支持されている。下辺は3個の支持部4で支持されている。右辺(Y方向で後辺)は位置決めピン8,111のリブ部分で支持されている。左辺(Y方向で前辺)は支持部4および位置決めピン111のリブ部分で支持されている。支持部4に対し、所定のクリアランスを介して、ヒートシンク3が配置される。
【0045】
[基板]
図7は、図6のヒートシンク3が配置された第1ケース11に対し、基板2が取り付けられた状態を示す。第1ケース11の角の位置決めピン111に対し、基板2の角の穴26が位置合わせされる。また、ヒートシンク3の凸部のねじ穴33に対し、基板2の発熱部品領域22の穴25(図3)が合わせられる。ねじ穴33に対し、波ワッシャ6を介して、固定ねじ7によって、ねじ締結される。
【0046】
基板2は、Y-Z平面の構成としては、最も大きい面積を持つ主基板領域から下側の左半分程度の領域に出た発熱部品領域22を有する。発熱部品領域22(左側面)には、発熱部品5である光モジュールが搭載されている。発熱部品領域22の一部は切り欠きとなっており、発熱部品5の一部が露出している。
【0047】
発熱部品領域22の右側(右半分程度の領域)は、切り欠き領域23となっており、ヒートシンク3が露出している。この切り欠き領域23は、自然空冷方式での空気が通る領域となる。
【0048】
図7の下部には、基板2の発熱部品領域22を拡大して示している。発熱部品領域22は、主基板領域に対し、橋状の接続領域24を介して接続されている。接続領域24の付近には、開口領域27が設けられている。開口領域27は、基板2の一部に穴を開けるようにして設けられている。このように、発熱部品領域22は、接続領域24および開口領域27を介して、主基板領域から外側(Z方向で下側)に出るような形状で設けられている。接続領域24および開口領域27により、基板2を伝わる熱を遮断(言い換えると熱伝導を低減)できる。これらにより、主基板領域から発熱部品領域22に伝わる熱、あるいは、発熱部品領域22から主基板領域に伝わる熱を遮断できる。
【0049】
また、開口領域27は、切り欠き領域23とともに、X方向での空気の通り道となるので、ヒートシンク3の冷却効率を上げることができる。特に、電子機器1を横置き(図2)に設置した場合、この開口領域27が、切り欠き領域23とともに、空気の通り道となるので、ヒートシンク3の冷却効率を上げることができる。
【0050】
また、ヒートシンク3の荷重によって、発熱部品領域22に対しX方向に負荷・力が働く可能性がある。この場合に、実施の形態1では、発熱部品領域22は、接続領域24および開口領域27があるため、また、第2ケース12との間に隙間(後述の図16)があるため、X方向にある程度動くことができる。これにより、ヒートシンク3による基板2への負荷・力を逃がし、特に発熱部品領域22付近の変形などを防止・低減できる。
【0051】
[支持部に対するヒートシンクの取り付け]
図8は、第1ケース11の支持部4の領域400(図5)に対するヒートシンク3の取り付けについての詳細を示す。第1ケース11の内側面に設けられた複数の支持部4に沿って、ヒートシンク3が配置される。支持部4とヒートシンク3の四辺との間には所定のクリアランスを有するので、領域400へのヒートシンク3の配置・取り付けは、完全固定ではなく、ヒートシンク3は、クリアランスに対応したある程度の可動の距離で、半固定となる。
【0052】
支持部4は、ヒートシンク3の主面の四辺(上下辺、前後辺)の各面に対して、所定のクリアランスを介して配置される(詳しくは後述の図16図17)。縦置きの状態とした場合、重力によって、ヒートシンク3の特にZ方向での下面となる箇所が、支持部4によって支持される度合いが大きくなる。
【0053】
図9は、第1ケース11の支持部4の領域400(図5)にヒートシンク3が取り付けられた状態を示す。図示のように、ヒートシンク3の主面の四辺(外周)は、支持部4によって外側から囲まれるようにして支持されている。
【0054】
領域400にヒートシンク3が取り付けられた後、ヒートシンク3の一部の領域、図9での領域360には、放熱グリス9(図3)が塗布される。なお、実施の形態1の組み立て方法では、ヒートシンク3側に放熱グリス9を塗布するものとしたが、これに限らず、他の方法では、発熱部品5の接触面に放熱グリス9を塗布するものとしてもよい。
【0055】
[ヒートシンク]
図10は、ヒートシンク3の斜視図を示す。ヒートシンク3は、図示のように、Z方向に凹凸(凹部および凸部)を有する。言い換えると、ヒートシンク3は、金属製の平板(主面を構成する平板)が凹凸状に折り曲げられた形状を有する。X方向で右側を凸、左側を凹とする。ヒートシンク3は、上下に2つの凸部として凸部301,302を有し、2つの凸部を介在するように3つの凹部として凹部311,312,313を有する。
【0056】
凸部301,302における所定の位置には、固定ねじ7(図3)のためのねじ穴33が設けられている。凸部301の左端付近には、ねじ穴33を有する。凸部302の左端から所定の距離の位置には、ねじ穴33を有する。凹部312において、2つのねじ穴33を結ぶ線を対角線とする領域は、発熱部品5が配置される領域であり、放熱グリス9が塗布される領域360を有する。
【0057】
ヒートシンク3は、主に、凹凸状の平板の左側の面(第1ケース11と対向する側の面)において、複数の放熱フィン32を有する。凹部311,312,313の左側面には、放熱フィン32を有する。また、下側の凹部313は、右側面にも放熱フィン32を有する。放熱フィン32は、本例では、Y方向に延在する長板形状を有し、Z方向に複数の放熱フィン32が並んでいる。放熱フィン32は、本例の形状に限定されず、ピン形状等としてもよい。
【0058】
実施の形態1では、ヒートシンク3の形状は、図示のように、発熱部品5の領域をZ方向で上下に凸部301と凸部302によって囲むことができる凹凸形状としている。これに限らず、変形例では、ヒートシンク3の形状は、例えば、発熱部品5の領域を、Y方向でも囲むことができるように、Y方向に凹凸を設けた形状としてもよい。
【0059】
[ヒートシンクに対する基板の取り付け]
図11は、図9の第1ケース11のヒートシンク3に対する基板2の取り付けについての詳細を示す。第1ケース11の位置決めピン、例えばヒートシンク3に対し右上の位置決めピン8、および左下の位置決めピン111に対し、基板2の対応する2つの位置の穴28が位置合わせされる。また、ヒートシンク3の放熱グリス9の領域に対し左上および右下の2つのねじ穴33に対し、発熱部品領域22の対応する2つの位置の穴25が合わせられる。これにより、ヒートシンク3の凹部312の放熱グリス9に対し、発熱部品領域22の発熱部品5が接触するように配置される。
【0060】
図12は、第1ケース11の位置決めピン8の詳細の構造例を示す。位置決めピン8は、X方向に延在する円柱形状の軸部を有し、その軸部の周囲に、例えばZ方向の上下およびY方向の前後のそれぞれの方向に、リブ部分84が出ている。このリブ部分84は、それぞれ支持部4として機能する。例えば、4個のリブ部分84のうち、少なくともいずれか1つのリブ部分84が、ヒートシンク3を支持する部分として使用されればよい。図11の例では、右上の位置決めピン8における図12の左側のリブ部分84が、ヒートシンク3の右辺(Y方向での後辺)を所定のクリアランスで支持している。
【0061】
図13は、図11のヒートシンク3に対し基板2が取り付けられた状態を示す。ヒートシンク3の凸部312(図10)の対角線上の2つのねじ穴33に対し、発熱部品領域22の対応する2つの穴25を介して、それぞれ、弾性体である波ワッシャ6を挟んで、固定ねじ7によって、ねじ締結される(詳しくは後述の図19)。これにより、発熱部品5に所定の押圧力以上の押圧力がかかる状態で、基板2に対しヒートシンク3が固定される。この固定は、弾性体を介した半固定であるため、ヒートシンク3によって基板2にかかる負荷・力は、所定の範囲内の負荷・力となるように抑制される。
【0062】
[第1ケースに対する第2ケースの取り付け]
図14は、図13の基板2が取り付けられた第1ケース11に対する第2ケース12の取り付けの詳細を示す。第1ケース11の角付近における、ねじ穴を有する位置決めピン111に対し、第2ケース12の対応する位置の穴121が位置合わせされて、ねじ122(図3)によって、ねじ締結される。これにより、第1ケース11に第2ケース12が固定される。第2ケース12の側面部分(前面13などを構成する一部)は、第1ケース11の側面部分(前面13などを構成する一部)よりも、X方向での長さが短い。
【0063】
基板2の切り欠き領域23(図7)では、ヒートシンク3の一部が露出しており、この切り欠き領域23は、第2ケース12との間に、通気のための空間を形成する。また、この通気の空間に対応させて、第2ケース12の面には、図示しない通気孔が設けられている。また、発熱部品領域22についても、第2ケース12との間には、接触しないように隙間が設けられる(後述の図16)。
【0064】
[第2ケースの支持部]
図15は、第2ケース12の内側面における支持部4の構造例を示す。図15は、X方向で反対方向(図3での左から右への方向)から第2ケース12の内側面の下部を見た斜視図である。実施の形態1では、第2ケース12側の複数の支持部4(特に支持部4Bとする)は、ヒートシンク3の主面の四辺の付近に限らず、主面内の凸部301,302(図10)を支持できるように、所定の位置や形状で形成されている。支持部4Bは、第2ケース12の内側面からヒートシンク3に向かってX方向で出ている。ある支持部4Bは、例えば凸部301(図10)の上面、下面および右側面に対し所定のクリアランスで支持するように、図示のような凹形状を有する。
【0065】
第1ケース11の支持部4の領域400内に配置されたヒートシンク3は、第2ケース12側から支持部4Bによって挟まれる。これにより、ヒートシンク3は、概略的に所定の位置に配置される。厳密には、各支持部4とヒートシンク3の各面との間にはクリアランスがあるので、ヒートシンク3は、設置形態に応じた重力によって可動であり、それに応じて配置領域内での配置位置が定まる。
【0066】
[電子機器-断面図]
図16は、組み立て後の電子機器1における、縦置きのX-Z面での断面図を示す。図16は、発熱部品5(発熱部品領域22)がある位置での一部の断面を示す。図16では、ヒートシンク3の2つのねじ止め箇所の断面をまとめて図示している。
【0067】
第1ケース11は、図示のように、ベースとなる平板から、ヒートシンク3に向かうX方向(図面での右方向)で、支持部4(特に支持部4Aとする)が出ている。図16の断面では、ヒートシンク3の上辺や下辺が支持部4Aによって支持されている。特に、縦置きの場合には、Z方向での重力に対応して、ヒートシンク3の下辺となる箇所(例えば凹部313の下辺)に対し下側に配置されている支持部4Aは、その支持部4Aの上にヒートシンク3の下辺部分を載せて支持することで、ヒートシンク3による負荷を受け止める。
【0068】
第2ケース12は、図示のように、ベースとなる平板から、ヒートシンク3に向かうX方向(図面での左方向)で、支持部4(特に支持部4B)が出ている。図16の断面では、ヒートシンク3の凸部301が支持部4Bによって支持されている。図示していないが、支持部4Aと同様に、ヒートシンク3の下辺となる箇所に対し下側に配置されている支持部4Bは、その支持部4Bの上にヒートシンク3の下辺部分を載せて支持することで、ヒートシンク3による負荷を受け止める。
【0069】
ヒートシンク3のZ方向での上側にはスペース1501が設けられており、自然空冷方式での空気の通路となる。このスペース1501は、前述のY方向での後側のスペース(図7の切り欠き領域23等)とも通じている。
【0070】
基板2に対し、X方向での右側で、第2ケース12(支持部4Bを含む)との間に、接触しないように、スペース1502が設けられている。基板2に対し、ヒートシンク3によって、X方向に負荷・力が働いた場合でも、スペース1502があるので、基板2の特に発熱部品領域22は、第2ケース12には接触しない。これにより、基板2(特に発熱部品領域22付近)の変形などが防止・低減される。
【0071】
なお、支持部4(4A,4B)は、ケース(11,12)のベース平面と一体的に形成された部分としてもよいし、別部品として取り付けられた部分としてもよい。支持部4は、第1ケース11の主面からX方向に延在して出る部分(支持部4A)としてもよいし、第2ケース12の主面からX方向に延在して出る部分(支持部4B)としてもよい。支持部4は、ケースの底面(例えば図17での下面1640)からZ方向で上に延在して出る部分としてもよいし、ケースの前後側面(例えば図1の前面13)からY方向で延在して出る部分としてもよい。
【0072】
[支持部の構造例]
図17は、図16の断面図を簡略化して、ケースの支持部4によってヒートシンク3を支持する構造例に関する模式説明図を示す。第1ケース11側の支持部4Aと第2ケース12側の支持部4Bとによって、ヒートシンク3の全周が挟み込まれるようにして固定される。図17の縦置きでは、Z方向の重力が電子機器1の長手方向(第1方向)に働く。ヒートシンク3の重さは、支持部4を通じてケースによって受け止められる。これにより、ヒートシンク3による基板2に対する負荷が低減される。なお、一点鎖線は、固定ねじ7などが配置される軸J1,J2の位置を示す。破線枠の領域1605には、発熱部品5が配置されている。
【0073】
支持部4における破線で示す部分(例えば部分1601,1602)は、ケース(11,12)によってヒートシンク3を挟み込む箇所の例であり、支持部4の面とヒートシンク3の面とが所定のクリアランスで接する箇所の例である。図17の例では、第2ケース12側から出た支持部4Bは、ヒートシンク3の凸部301,302を支持する。このような破線で示す部分(例えば部分1601,1602)では、設計上、支持部4とヒートシンク3との間に、所定のクリアランスが設けられている。所定のクリアランスは、例えば0.5mmである。
【0074】
ヒートシンク3に対し、左右にある第1ケース11と第2ケース12が、ヒートシンク3を両側から所定のクリアランスで支持部4によって挟み込むように配置されている。この支持部4は、ヒートシンク3を押圧して保持するわけではなく、ヒートシンク3はクリアランスを用いてある程度可動である。
【0075】
また、ヒートシンク3において、点線で示す箇所(例えば下面1631,1632)は、縦置きの状態の場合に、下面となる箇所の例である。ヒートシンク3における下面となる箇所は、主面の下辺に限らず、図示のように各位置に存在する。例えば主面内の凸部301にも下面1632,1633を有する。縦置きでのヒートシンク3の下面、例えば凹部313の下面1631や、凸部301の下面1632は、支持部4によって支持され、特に、Z方向での重力による荷重が支えられる。これにより、基板2に対しヒートシンク3によって働く負荷・力を低減できる。
【0076】
実施の形態1での図示するようなヒートシンク3の下面の箇所および支持部4に限らずに、他の箇所に支持部4を設けてもよい。ヒートシンク3の主面の四辺の付近に限らず、他の箇所に支持部4を設けてもよい。他の箇所の例として、凸部301の左側の下面1633に対して支持部4を設けてもよい。その場合、凸部301による左側の窪みのスペースに、破線で示すような突起部を支持部4Cとして設けてもよい。その支持部4Cは、第1ケース11の主面からX方向に延在する部分としてもよいし、第1ケース11の側面などから延在する部分としてもよい。
【0077】
図18は、図16図17の電子機器1を横置きの状態とした場合での概略断面図を図17と同様に示す。図18で、図17とは異なる、ヒートシンク3の下面となる箇所の例を、点線で示している。図18の横置きでは、Z方向での重力が、電子機器1の厚さ方向に働く。横置きでヒートシンク3の下面となる箇所、特に凸部301,302の下面1701,1702が、第2ケース12側の支持部4B(特に凹部)によって支持されている。これにより、Z方向での重力による荷重が支えられ、ヒートシンク3によって基板2に対し働く負荷・力を低減できる。
【0078】
横置きでヒートシンク3における下面となる箇所は、図示の下面1701,1702の箇所に限らず、図示のように各位置に存在する。他の箇所に支持部4を設けてもよい。他の箇所の例として、凹部311,312,313の下面に対して支持部4を設けてもよい。一部の放熱フィンに対して支持部4を設けてもよい。例えば、凹部311の下面1703に対し支持部4を追加してもよい。その場合、例えば、凹部311の下側のスペースに、ケースの前面13(図1)からY方向に延在して出るような突起部が支持部4Dとして設けられてもよい。
【0079】
[ヒートシンクと基板との固定構造]
図19は、ヒートシンク3と基板2との固定構造の詳細について、縦置きの場合のX-Z面での模式断面図を示す。構成要素は、左から、ヒートシンク3、放熱グリス9、発熱部品5、基板2の発熱部品領域22、波ワッシャ6、固定ねじ7等を有する。ヒートシンク3の2つの凸部301,302における軸J1,J2の位置のねじ穴33に対し、基板2の穴25が位置合わせされて、波ワッシャ6を介在させて、固定ねじ7が締結される。穴25は、ねじ穴ではない開口部である。
【0080】
固定ねじ7は、段付きねじであり、構成部分として、ねじ頭71、段部(言い換えると不完全ねじ部)72、およびねじ部(言い換えると完全ねじ部)73を有する。段部72は、X方向に基板2の厚さよりも大きい所定の長さを有し、基板2の穴25に挿入される。段部72は、穴25の径よりも小さい所定の径を有し、基板2との間に隙間を生じる。ねじ部73は、段部72よりも径が小さく、ねじ穴33に嵌合する。
【0081】
固定ねじ7による固定時には、図示のように、段部72が基板2の穴25を通り、段部72の一方端がヒートシンク3の例えば凸部301の面に当接する。また、ねじ部73は、凸部301のねじ穴33に嵌合する。また、基板2の穴25付近の右側の面とねじ頭71との間の隙間1002に、弾性体である波ワッシャ6が挟まれ、固定ねじ7が締結される。また、段部72により、基板2の穴25付近の左側の面とヒートシンク3の凸部301の面との間にも隙間1001が設けられ、ヒートシンク3の凸部301は基板2の面に対し接触しない。
【0082】
固定ねじ7が段付きねじであり、弾性体である波ワッシャ6を介在して固定する構造であるため、固定ねじ7が締結された状態で、ヒートシンク3は、基板2に対し直接的には固定されておらず(言い換えると完全固定ではなく)、X方向に弾性を伴って可動である(言い換えると半固定である)。弾性体である波ワッシャ6の弾性は、基板2に対し固定ねじ7をX方向右に離そうとする力、すなわち、固定ねじ7で連結されたヒートシンク3を基板2に近づけようとする力を発生させる。
【0083】
固定後、ヒートシンク3(特に凹部312)は、波ワッシャ6の弾性により、常時に、発熱部品5に対して所定の押圧力以上の押圧力で押圧されて、放熱グリス9を介して接している。
【0084】
このような固定構造と、前述の支持部4による支持構造とを組み合わせた構成により、ヒートシンク3から基板2にかかる負荷・力は、所定の範囲内の負荷・力に抑制される。
【0085】
[放熱性能]
実施の形態1に対する比較例として、基板2における島状に張り出した発熱部品領域22および切り欠き領域23(図7等)を設けない構成とした場合、第2ケース12の通気孔から流入した空気は、基板2によって遮られるため、ヒートシンク3等がある方の空間に流入しにくい。そのため、ヒートシンク3による放熱性能が高めにくい。一方、実施の形態1では、前述(図7等)のように、切り欠き領域23等を設ける構成であるため、第2ケース12の通気孔から流入した空気は、基板2の切り欠き領域23を経由して、ヒートシンク3等がある方の空間に流入しやすい。ヒートシンク3等の付近を流れた空気は、第1ケース11の通気孔を通じて外部に流出する。これにより、実施の形態1では、比較例よりも、ヒートシンク3による放熱性能を高めることができる。
【0086】
[効果等]
以上のように、実施の形態1の電子機器1によれば、ヒートシンク3による基板2への負荷・力を低減し、基板2の変形などを防止・低減できる。実施の形態1の電子機器1は、ケースの支持部4によってヒートシンク3を支持する支持構造を設けたので、ヒートシンク3の荷重による基板2への負荷・力を低減できる。実施の形態1の電子機器1は、ケース(第1ケース11および第2ケース12)とヒートシンク3とが基本的に分離できる構造を有する。支持構造として、ケースの支持部4の領域400内にヒートシンク3が所定のクリアランスで配置され、設置形態に応じた重力の方向で、支持部4によってヒートシンク3が支持される。これにより、ヒートシンク3の荷重による基板2への負荷・力を低減できる。
【0087】
また、実施の形態1の電子機器1では、基板2へのヒートシンク3の固定構造として、波ワッシャ6(弾性体)を介して固定ねじ7(段付きねじ)によって押圧して固定する構造を設けたので、ヒートシンク3による基板2への負荷・力を低減できる。また、この固定構造は、従来の固定構造よりも省スペースで実装でき、省スペースにできる分、付近にはヒートシンク3を空冷するためのスペースも広く確保することができる。
【0088】
実施の形態1の電子機器1は、上記固定構造と支持構造とを組み合わせた構造を有することにより、ケース内に省スペースでヒートシンク3を配置・実装でき、ヒートシンク3による基板2への負荷・力を抑制できるとともに、発熱部品5への押圧力については十分に確保できる。これにより、ヒートシンク3による放熱性能を高く確保することができる。この構造は、基板2とケースとの間にスペースが設けられ、基板2およびヒートシンク3がケースに対して直接的には固定されない構造、言い換えると支持部4を介して固定される構造である。これにより、ヒートシンク3による発熱部品5への押圧力を所定の押圧力以上の好適な押圧力としながら、ヒートシンク3による基板2への負荷を所定の範囲内の負荷となるように抑制している。これにより、基板2の例えば面付け部品のはんだのクラック等も防止できる。
【0089】
従来の電子機器におけるヒートシンク固定構造は、特許文献1の例のように、基板に対して直接的にヒートシンクがねじ締結によって固定される。この固定構造では、ヒートシンクの重さに応じて大きな押圧力によって固定する必要があるため、ヒートシンクによる基板への負荷・力が大きく、基板の変形などが生じやすい。それに対し、実施の形態1の電子機器1は、上記固定構造とともに支持構造を設けたので、ヒートシンク3による基板2への負荷・力を低減でき、基板2の変形などを防止できる。
【0090】
[変形例(1)]
上記実施の形態1では、支持部4による領域400(図5)内に所定のクリアランスを介してヒートシンク3を配置・収納する構成としたが、これに限らず、支持部4による領域400内に、ヒートシンク3を押圧によって固定する構成としてもよい。例えば、ヒートシンク3の主面の四辺が、それぞれ、支持部4によって、上下・前後の各方向にヒートシンク3内部に向かって押圧されるようにして固定されてもよい。この変形例の場合、実施の形態1よりもクリアランスの距離が小さく、支持部4とヒートシンク3との押圧は所定の範囲内の押圧力とされる。この変形例でも、ヒートシンク3による基板2への負荷を低減できる。
【0091】
[変形例(2)]
上記実施の形態1は、縦置き、横置きのいずれの設置形態にも対応できる構造としたが、変形例としては、電子機器が、縦置きの設置形態のみで利用される製品である場合や、横置きの設置形態のみで利用される製品である場合にも、その設置形態に対応させた専用のヒートシンク3や支持部4の構造とすることができる。具体的には以下の通りである。縦置き専用の電子機器の場合、ケースは、第1方向を鉛直方向、第2方向を水平方向とした縦置きで配置され、支持部4は、縦置きでヒートシンク3の下面となる箇所を、所定のクリアランスを介して支持する(前述の図17と同様)。横置き専用の電子機器の場合、ケースは、第1方向を水平方向、第2方向を鉛直方向とした横置きで配置され、支持部4は、横置きでヒートシンク3の下面となる箇所を、所定のクリアランスを介して支持する(前述の図18と同様)。
【0092】
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。特に限定しない場合、各構成要素は、単数でも複数でもよい。各種構成例について組み合わせた形態も可能である。各種構成例において、必須構成要素を除き、構成要素の追加・削除・置換などが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1…電子機器、2…基板、3…ヒートシンク、4…支持部、5…発熱部品、6…波ワッシャ、7…固定ねじ、8…位置決めピン、9…放熱グリス、11…第1ケース、12…第2ケース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19