(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043645
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】建築板
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
E04F13/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151368
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺村 幸司
(72)【発明者】
【氏名】小栗 和則
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB23
2E110BA12
2E110BB04
2E110BB22
2E110BB33
2E110CC02
2E110CC25
2E110DA03
2E110GB01W
2E110GB23W
2E110GB62W
(57)【要約】
【課題】意匠面に疑似目地が形成された建築板において、この建築板により構成された壁面の美観を損ねないようにすることを目的とする。
【解決手段】建築板10の意匠柄部は、第1方向に隣り合って位置する複数の柄ユニットと、第2方向において意匠柄部の両端まで延び、第1方向に隣り合って位置する柄ユニットを区画する疑似目地を有している。建築板10の意匠面14には、柄ユニット毎に、第2方向に延び、第1方向での幅が疑似目地の目地幅よりも広い複数の帯状模様51と、第2方向に延び、第1方向での幅が疑似目地31の目地幅よりも狭い複数の細線模様53と、が塗装により形成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向、及び前記第1方向に直交する第2方向に延びる矩形状であり、裏面と表面とを有し、少なくとも前記表面に意匠面を有する建築板であって、
前記裏面側から前記表面側に向かう方向に突出する複数の凸部と、
複数の前記凸部により形成された意匠柄部と、を備え、
前記意匠柄部は、
複数の前記凸部を含み、
前記第1方向、及び前記第2方向で規定される形状が矩形状であって、前記第1方向に隣り合って位置する複数の柄ユニットと、
前記第2方向において前記意匠柄部の両端まで延び、前記第1方向に隣り合って位置する前記柄ユニットを区画する疑似目地と、
を有し、
前記柄ユニットは、
塗装により形成され、前記第2方向に延び、前記第1方向での幅が前記疑似目地の目地幅よりも広い複数の第1帯状模様と、
塗装により形成され、前記第2方向に延び、前記第1方向での幅が前記疑似目地の目地幅よりも狭い複数の第1細線模様と、を有する
建築板。
【請求項2】
前記第1方向に隣り合う前記柄ユニット同士は、複数の前記凸部における前記第1方向、及び前記第2方向の少なくとも一方向の前記凸部の配列が異なっており、
前記第1帯状模様は、前記凸部が前記第2方向に複数配列されて成る凸部列に沿って延びている
請求項1に記載の建築板。
【請求項3】
前記柄ユニットは、
前記第1方向、及び前記第2方向の少なくとも一方向に複数配列された前記凸部により成る複数のブロック部と、
隣り合う前記ブロック部を区画するブロック目地と、を有する
請求項1又は2に記載の建築板。
【請求項4】
前記疑似目地の底面、及び前記凸部の頂面の少なくとも一方には、前記第1方向において隣り合う前記第1帯状模様の境界が位置している
請求項1~3のいずれか一項に記載の建築板。
【請求項5】
前記意匠面は、塗装により形成され、前記第1方向に延び、前記第2方向での幅が前記疑似目地の目地幅よりも狭い複数の第2細線模様を有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の建築板。
【請求項6】
前記意匠面は、塗装により形成され、前記第1方向に延び、前記第2方向での幅が前記疑似目地の目地幅よりも広い複数の第2帯状模様を有する
請求項1~5のいずれか一項に記載の建築板。
【請求項7】
前記第1細線模様、及び前記第1帯状模様の少なくとも一方の前記第2方向での長さは、前記意匠柄部の前記第2方向の長さよりも短い
請求項1~6のいずれか一項に記載の建築板。
【請求項8】
前記第2細線模様は、前記第1方向で隣り合う前記柄ユニットを跨いで形成されている請求項5に記載の建築板。
【請求項9】
前記第1帯状模様は、前記第2方向に並ぶ少なくとも3つの前記凸部に亘り形成されている
請求項1~8のいずれか一項に記載の建築板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠面を有する建築板に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の例えば壁部を構成するための建築板として、窯業系サイディングボードや金属系サイディングボードなど、所定の意匠面を有する建築板が用いられる場合がある。このような建築板を複数並べてつなぎ合わせることで、壁面が形成される。
【0003】
建築板同士の継ぎ目において、目地の幅のばらつきや、目地のずれが生じる場合がある。そこで、特許文献1、特許文献2、特許文献3には、建築板同士の継ぎ目に形成される目地の幅のばらつきや、目地のずれを目立ちにくくする建築板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-031721号公報
【特許文献2】特開2013-167120号公報
【特許文献3】特開2013-204336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建築板には、意匠面側に疑似的に形成された疑似目地を有するものがある。このような構成の建築板において、建築板同士の継ぎ目で疑似目地のずれが生じることで、建築板により構成された壁面の美観を損なうおそれがある。疑似目地のずれは、例えば、建築板の寸法の製造誤差や、施工現場で、建築板における他の建築板とつなぎ合わせられる側の端部を切断することにより、この端部と疑似目地までの寸法が、各建築板でバラつくことによって生じる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、意匠面に疑似目地が形成された建築板において、この建築板により構成された壁面の美観を極力損ねないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の態様1は、第1方向、及び第1方向に直交する第2方向に延びる矩形状であり、裏面と表面とを有し、少なくとも表面に意匠面を有する建築板であって、裏面側から表面側に向かう方向に突出する複数の凸部と、複数の凸部により形成された意匠柄部と、を備える建築板である。意匠柄部は、複数の凸部を含み、第1方向、及び第2方向で規定される形状が矩形状であって、第1方向に隣り合って位置する複数の柄ユニットと、第2方向において意匠柄部の両端まで延び、第1方向に隣り合って位置する柄ユニットを区画する疑似目地と、を有している。柄ユニットは、塗装により形成され、第2方向に延び、第1方向での幅が疑似目地の目地幅よりも広い複数の第1帯状模様と、塗装により形成され、第2方向に延び、第1方向での幅が疑似目地の目地幅よりも狭い複数の第1細線模様と、を有する。
【0008】
上記構成の建築板では、光の入射により、疑似目地と、この疑似目地により区画される柄ユニットの側面とにより形成される溝に、この疑似目地の延びる方向である第2方向に沿って陰影が形成される。このとき、建築板に入射する光の角度に応じて、第1方向での陰影の幅が変化する。そこで、建築板の意匠面には、柄ユニット毎に、第2方向に延び、
第1方向での幅が疑似目地の目地幅よりも広い複数の帯状模様と、第2方向に延び、第1方向での幅が疑似目地の目地幅よりも狭い複数の細線模様と、が塗装により形成されている。これにより、意匠面には、帯状模様と細線模様とにより、疑似目地の延びる向きに合わせて陰影感が表現されるため、壁面を見る者が意匠面の陰影感に注視され、建築板同士の継ぎ目に生じる疑似目地のずれを目立ちにくくすることができる。
【0009】
本発明の態様2は、第1方向に隣り合う柄ユニット同士は、複数の凸部における第1方向、及び第2方向の少なくとも一方向の凸部の配列が異なっており、第1帯状模様は、凸部が第2方向に複数配列されて成る凸部列に沿って延びている。
【0010】
これにより、柄ユニットの意匠面における、複数の凸部の配列方向に沿って、帯状模様が延びているため、凸部の配列パターンに応じた陰影感を表現することができ、疑似目地のずれを、好適に目立ちにくくすることができる。
【0011】
本発明の態様3は、柄ユニットは、第1方向、及び第2方向の少なくとも一方向に複数配列された凸部により成る複数のブロック部と、隣り合うブロック部を区画するブロック目地と、を有する。
【0012】
これにより、意匠面に、ブロック目地の付近に形成される陰影感を表現することができ、視認する者に対して違和感のない陰影感を表現することができる。
【0013】
本発明の態様4は、疑似目地の底面、及び凸部の頂面の少なくとも一方には、第1方向において隣り合う第1帯状模様の境界が位置している。
【0014】
これにより、帯状模様の境界が疑似目地にかかることで、疑似目地を目立ちにくくすることができる。
【0015】
本発明の態様5は、意匠面は、塗装により形成され、第1方向に延び、第2方向での幅が疑似目地の目地幅よりも狭い複数の第2細線模様を有する。
【0016】
これにより、意匠面に形成された第2細線模様が、第2方向において隣り合う他の建築板との間の継ぎ目の延びる方向に延びているため、建築板同士の継ぎ目を目立ちにくくし、ひいては疑似目地のずれをいっそう目立ちにくくすることができる。
【0017】
本発明の態様6は、意匠面は、塗装により形成され、第1方向に延び、第2方向での幅が疑似目地の目地幅よりも広い複数の第2帯状模様を有する。
【0018】
これにより、意匠面に形成された第2帯状模様が、第2方向において隣り合う他の建築板との間の継ぎ目の延びる方向に延びているため、建築板同士の継ぎ目を目立ちにくくし、ひいては疑似目地のずれをいっそう目立ちにくくすることができる。
【0019】
本発明の態様7は、第1細線模様、及び第1帯状模様の少なくとも一方の第2方向での長さは、意匠柄部の第2方向の長さよりも短い。
【0020】
これにより、第1細線模様における第2方向での長さは、意匠柄部における第2方向での長さよりも短いため、第1細線模様の長さに注視され、建築板の第2方向の長さが長い建築板と第2方向の長さが短い建築板が組み合わせられている様に見えるので、建築板の第2方向の両端に形成され、第1方向に延びる建築板の接合位置が一定間隔で並んでいない様に見え、第1方向に延びる接合線を分かりにくくできる。
【0021】
本発明の態様8は、第2細線模様は、第1方向で隣り合う柄ユニットを跨いで形成されている。
【0022】
これにより、帯状模様の境界により凸部の頂面が擬似目地よりも注視され易くなるため、疑似目地のズレを目立ちにくくすることができる。
【0023】
本発明の態様9は、第1帯状模様は、第2方向に並ぶ少なくとも3つの凸部に亘り形成されている。
【0024】
これにより、第1方向で隣り合う柄ユニットを跨いで第2細線模様が形成されている。即ち、疑似目地を跨いで隣り合う柄ユニットの中間部分に、第2細線模様の延びる方向における端部が形成されているので、建築板の柄ユニット間における疑似目地の位置とは異なる位置にも柄ユニットの端部が形成されているように錯覚し、疑似目地のずれを目立ちにくくできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、建築板同士の継ぎ目における疑似目地のずれを目立ちにくくすることができる。また、この建築板で構成される壁面の美観の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、第1実施形態の建築板を意匠面側から見た図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の建築板を意匠面側から見た写真である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の柄ユニットに対応する意匠面を説明する図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の柄ユニットに対応する意匠面を説明する図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の疑似目地付近の模様を説明する図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る疑似目地付近の模様を説明する図である。
【
図10】
図10は、変形例に係る建築板を意匠面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本実施形態に係る建築板を、図面を参照しつつ説明する。
図1~5に示す建築板10は、建築物の外壁や内壁等の壁部を構成するために用いられる板材である。なお、
図3は、
図1で示す建築板10の一部の柄を省略して示している。
【0028】
建築板10は、外壁を構成する一例であり、
図4,5に示すように、施工された際に壁面の屋内側を向く裏面13と、この裏面13と反対側の表面側において意匠面14とを有している。建築板10は、施工された際に左右となる左右方向D1に延びる長辺11と、左右方向D1に直交し、施工された際に上下となる上下方向D2に延びる短辺12を有している。言い換えると、建築板10は、左右方向D1と上下方向D2とで規定される形状が矩形状の板材である。建築板10において、厚み方向D3を、裏面13を基準として定義する。厚み方向D3は、裏面13から屋外側を向く法線方向でもある。本実施形態では、左右方向D1が第1方向の一例であり、上下方向D2が第2方向の一例であり、厚み方向D3が第3方向の一例である。
【0029】
建築板10における上下方向D2での両縁である長辺11には、他の建築板と接合するための接合部である接合部15,16が形成されている。
図4に示すように、図中、裏面13を下方に向けた状態で、上下方向D2の一方(左側)の長辺11には、下接合部16
が形成され、上下方向D2の他方(右側)には、下接合部16と対になる上接合部15が形成されている。上接合部15は上実、下接合部16は下実と呼ばれる部分である。
【0030】
本実施形態において、建築板10の長辺11の寸法は、例えば910[mm]~4000[mm]である。建築板10の短辺12の寸法は、例えば、303[mm]~1100[mm]である。建築板10の厚み方向D3の寸法は、例えば、14[mm]~35[mm]である。建築板10の材質は、例えば、窯業系サイディング、金属サイディング、セメント板、コンクリート板、ALC(Autoclaved Lightweight Aerated Concrete)板、木質板、金属板などである。
【0031】
各建築板10を、裏面13を建築物における取付け箇所に向けた状態で、長辺11が水平となるように配置する。即ち、短辺12が鉛直方向となるように配置する。次に、短辺12同士をつなぎ合わせることで、建築物の壁面の長さを左右に延ばすことができる。具体的には、短辺12が延びる方向を、建築物における上下に向けた状態で、建築板10同士が左右につなぎ合わせられる。この場合において、
図5に示すように建築板10同士の短辺12の間に公知のシーリング等の目地材70、及び公知のハットジョイナー71等を介して、建築板10同士をつなぎ合わせてもよい。このとき、左右方向D1に隣り合う建築板10の長辺11同士が、一直線状となるように、建築板10同士がつなぎ合わせられる。また、建築板10同士の長辺11を、下接合部16及び上接合部15を介してつなぎ合わせることで、建築物の壁面の長さを上下に延ばすことができる。以下、下接合部16と上接合部15との接合箇所に形成される領域、即ち、長辺11同士とのつなぎ目、及び左右接合箇所に形成される領域である短辺12同士のつなぎ目を、接合目地とも称する。
【0032】
本実施形態では、建築板10は、長辺11に下接合部16(下実)、及び上接合部15(上実)を有する構成であるが、これに代えて、建築板10は、長辺11に下接合部16、及び上接合部15を有していなくともよい。
【0033】
建築板10は、基部18と、この基部18に対して厚み方向D3で連続して位置する意匠柄部17と、裏面13とを備えている。基部18は、左右方向D1、及び上下方向D2で規定される形状が矩形状の部位である。また、基部18における意匠柄部17とは反対側の面が、裏面13とされている。
【0034】
意匠柄部17は、建築板10における意匠面14の凹凸柄を形成する部位であり、格子状に配列される複数の凸部20を有している。ここで、格子状に配列される凸部20とは、左右方向D1及び上下方向D2それぞれに配列されることで、格子状に配列された目地に囲まれている凸部20のことを表している。凸部20は、矩形状の頂面21を有する略四角錐台の部位であり、凸部20の断面は略台形状を成し、凸部20の頂面21は、厚み方向D3において、裏面13から表面側、即ち意匠面14側に向けて突出する部位である。各凸部20は、格子状に配列することで、意匠面14における凹凸柄を形成している。凸部20は、その頂面21の寸法が、例えば20[mm]~50[mm]の矩形状であり、好ましくは長方形状である。複数の凸部20が格子状に配列して成る配列パターンの詳細については後述する。
【0035】
意匠柄部17は、複数の柄ユニット30と、複数の柄ユニット30を区画する疑似目地31とを有している。
図1に示すように、1つの柄ユニット30は、左右方向D1、及び上下方向D2で規定される形状が矩形状の部位である。複数の柄ユニット30は、左右方向D1に隣り合って位置するとともに、疑似目地31により区画されている。なお、
図1,2では、建築板10のうち、擬似目地31の延びる位置に破線を付し、柄ユニット30同士を区別できるように示している。以下、意匠柄部17を構成する各柄ユニット30を区別する場合、符号にアルファベット(a,b…)を付与する。
【0036】
図3に示すように、柄ユニット30は、複数の凸部20が配列して成るブロック部40と、このブロック部40を区画するブロック目地41とにより構成されている。即ち、複数の凸部20が配列してブロック部40が形成され、このブロック部40が複数配列して柄ユニット30が形成されている。以下、柄ユニット30における各ブロック部40を区別する場合、符号にアルファベット(a,b…)を付与する。
【0037】
疑似目地31は、上下方向D2において意匠柄部17の両端である長辺11まで延びている。即ち、疑似目地31は、建築板10を壁面として施工した際に、建築物に対して上下に延びることで、隣接する建築板10同士における短辺12の継ぎ目である接合目地を疑似的に表現する部位である。
図5に示すように、疑似目地31は、厚み方向D3での高さが、裏面13を基準とした場合に、凸部20の頂面21よりも低い面として形成されている。具体的には、厚み方向D3での疑似目地31の高さH1は、凸部20の頂面21までの高さH2よりも低い。また、本実施例では、疑似目地31の高さH1は、接合目地の高さと等しく、疑似目地31の左右方向D1での幅寸法である目地幅Wは略一定である。
【0038】
疑似目地31は、この疑似目地31を基準として左右方向D1に隣り合って位置する柄ユニット30の境界において、裏面13に対して意匠面14側に開口する溝を形成している。疑似目地31と、柄ユニット30が有する凸部20の頂面21を接続する側面22とのなす角、即ち、側面22と裏面13とのなす角は、例えば45[°]~60[°]である。このなす角Dは、全ての疑似目地31において一定であることが好ましい。疑似目地31の目地幅W、即ち、目地底面の幅は、2[mm]~8[mm]であり、目地深さ、即ち凸部20の頂面21から目地底面までの長さは、4[mm]~8[mm]である。
【0039】
図3に示す柄ユニット30は、2以上のブロック部40と、ブロック部40同士を区画するブロック目地41とを有している。
図3では、柄ユニット30aは、ブロック部40aと、このブロック部40aよりも上下方向D2において図中下方に配列するブロック部40b、及びブロック部40cを有している。各ブロック部40a~40cは、ブロック目地41により区画されている。なお、ブロック部40は、ブロック目地41を介して上下方向D2に配列することに限定されず、左右方向D1に配列してもよいし、上下方向D2、及び左右方向D1方向を組み合わせて配列してもよい。
【0040】
図4に示すように、本実施形態においては、ブロック目地41は、裏面13を基準とした場合に、厚み方向D3での高さが、凸部20の頂面21よりも低く、かつ疑似目地31と同じ高さの面として形成されている。言い換えると、厚み方向D3でのブロック目地41の高さH3は、凸部20の頂面21までの高さH2よりも低く、かつ疑似目地31の高さH1(
図5)と同じ高さとなっている。
【0041】
ブロック部40は、格子状に配列する複数の凸部20と、凸部20同士を区画する凸部目地45とを有している。複数の凸部20が左右方向D1、及び上下方向D2において格子状に複数配列することで、左右方向D1、及び上下方向D2で規定される形状が矩形状のブロック部40を形成している。
【0042】
ブロック部40において、格子状に配列する凸部20同士の間隔は、凸部目地45の目地底の寸法に応じて異なっている。
図3に示すように、凸部目地45は、左右方向D1に延びる第1凸部目地46と、上下方向D2に延びる第2凸部目地47とを有している。第1凸部目地46と第2凸部目地47とは、寸法が広い部位と、この部位よりも寸法が狭い部位とを有している。具体的には、第1凸部目地46は、上下方向D2での寸法が所定寸法よりも大きい拡張部46aと、上下方向D2での寸法が所定寸法よりも小さい縮小部46bとを有することで、左右方向D1に配列する凸部20の配列パターンを変化させてい
る。第2凸部目地47は、左右方向D1での寸法が所定寸法よりも大きい拡張部47aと、左右方向D1での寸法が所定寸法よりも小さい縮小部47bとを有することで、第2方向に配列する凸部20同士の配列パターンを変化させている。これにより、意匠面14の表面形状を形成する各凸部20は、格子状に配列しつつ各凸部20の間隔が不均一となっている。例えば、所定寸法の示す目地幅は、8~12[mm]であり、拡張部47aの目地幅は、10[mm]~25[mm]であり、縮小部47bの目地幅は、3[mm]~10[mm]である。
【0043】
図5に示すように、凸部目地45は、裏面13を基準として厚み方向D3で見た場合に、凸部20の頂面21よりも低く、かつ疑似目地31よりも高い面として形成されている。言い換えると、厚み方向D3での凸部目地45の高さH4は、凸部20の頂面までの高さH2よりも低く、かつ疑似目地31の高さH1よりも高い。例えば、H2-H4、即ち、凸部目地の高さは、0.5[mm]~4[mm]である。
【0044】
次に、
図3、及び
図6~8を参照して、意匠面14に形成された模様について説明する。
図6,7は、
図3で示した建築板10のうち、1つの柄ユニット30における意匠面14を示している。太い実線で区画された領域は、
図3で示す柄ユニット30の凸部20、及び凸部目地45が上下方向D2に配列する位置を示している。このうち、
図7は、
図8で示す柄ユニット30の意匠面14の模様を簡略化して示した図である。
【0045】
意匠面14には、第1帯状模様51と、第2帯状模様52と、第1細線模様53と、第2細線模様54とが塗装により形成されている。具体的には、意匠柄部17の意匠面14は、各模様51,52,53,54を含む塗装層と、この塗装層を保護する保護層とにより形成されている。塗装層は、インクジェット塗装機により、意匠柄部17の表面にインクを噴射することで形成されている。例えば、コンピューターを使用して、模様や色彩のデーターを作成し、このデーターに基づきインクジェット塗装機を制御し、意匠柄部17の表面側にインクを噴射して塗装層を形成する。また、保護層は、塗装層が形成された意匠柄部17の表面に、クリアー塗料をスプレー等の塗装機を使用して塗装することにより形成される。
【0046】
図8は、意匠柄部17において疑似目地31の周囲を拡大して示している。第1帯状模様51は、上下方向D2に延び、左右方向D1での幅が疑似目地31の目地幅Wよりも広い模様である。第1帯状模様51は、ブロック部40a,40b,40c毎に、左右方向D1に複数配列している。具体的には、左右方向D1に配列する各第1帯状模様51は、各ブロック部40a,40b,40cにおいて、格子状に配列する凸部20のうち、上下方向D2に複数配列して成る凸部列の延びる方向に沿って上下方向D2に延びている。また、第1帯状模様51は、上下方向D2に3つ以上配列して成る凸部列に沿って形成されていてもよい。各ブロック部40a,40b,40cに形成された第1帯状模様51の幅は異なっていてもよい。第1帯状模様51の左右方向D1での幅は、例えば、50[mm]~100[mm]である。
【0047】
疑似目地31やブロック目地41、凸部目地45を含む「目地」の目地幅方向の断面は、略逆台形状に形成されている。そのため、本実施形態において、「目地幅」とは、目地において、所謂、目地底の幅である。これ以外にも、目地幅は、目地と、この目地の側壁部における目地底とは反対側の開口部の幅、即ち、目地を基準として隣り合って位置する凸部20の側面22とで形成される溝において、意匠面14側の開口の幅であってもよい。
【0048】
図7に示すように、各ブロック部40a,40b,40cにおいて、左右方向D1に隣
り合って位置する第1帯状模様51は、配色が異なっている。「配色が異なる」とは、第1帯状模様51における色の、色相、彩度、明度、塗り潰しのパターンのうち、1つ以上が異なっていることをいう。ここで、塗り潰しのパターンが異なるとは、インクジェット塗装機により形成される模様が異なっていることであり、例えば、市松、縞、格子、千鳥、鱗文、唐草、七宝、雷文、青海波、アラベスク、モノグラム等の幾何学的な模様が異なることや、模様と背景の配色が入れ替わったりすることを意味している。
【0049】
第1帯状模様51は、配色の違いにより、明度が所定明度よりも高い高明度模様51aと、明度が所定明度よりも低い低明度模様51bとを有している。ここで、所定明度とは、例えば、意匠面14全体の明度の平均値を意味している。高明度模様51aは、疑似目地31に光が入射した場合に、入射光により明度が高く見えるハイライトとなる領域を疑似的に表現した模様である。低明度模様51bは、疑似目地31に光が入射した場合に、入射光により影になり暗く見えるシャドーとなる領域を疑似的に表現した模様である。本実施形態では、意匠面14において、高明度模様51aと、低明度模様51bとが、左右方向D1に隣り合って位置することで、意匠面14にハイライト部分とシャドー部分とを含む陰影感を表現している。左右方向D1で隣り合う第1帯状模様51の配色は、陰影感を表現できるものであればよく、明度の異なる高明度模様51a同士、又は、明度の異なる低明度模様51b同士が隣り合って位置していてもよい。
【0050】
図8に示すように、疑似目地31上、即ち、疑似目地31の目地底や目地の側壁22には、左右方向D1に隣り合って位置する第1帯状模様51同士の境界Lが位置している。これにより、疑似目地31上に疑似的な陰影が表現されることで、疑似目地31の左右方向D1の位置のずれを目立ちにくくすることができる。また、ブロック部40を区画するブロック目地41上にも、各第1帯状模様51同士の境界が位置している。柄ユニット30内において、ブロック部40が左右方向D1に隣り合って位置している場合、第1帯状模様51は、上下方向D2に隣り合って位置するブロック部40を跨いで形成されていてもよい。また、ブロック目地41上にも、各第2帯状模様52同士の境界が位置している。柄ユニット30内において、ブロック部40が上下方向D2に隣り合って位置している場合、第2帯状模様52は、左右方向D1に隣り合って位置するブロック部40を跨いで形成されていてもよい。
【0051】
意匠面14には、左右方向D1に延びる第2帯状模様52が形成されている。第2帯状模様52は、左右方向D1に延び、上下方向D2での幅が疑似目地31の目地幅Wよりも広い模様である。第1帯状模様51と、第2帯状模様52との交差部の色調は、第1帯状模様51、及び第2帯状模様52のいずれか、又は、それらの中間の色により描かれている。また、交差部の塗り潰しのパターンは、いずれかのパターン、又は、2つのパターンの中間的なパターンや、2つのパターンとは異なるパターンが描かれている。なお、塗り潰しのパターンとは、上述した塗り潰しのパターンと同じである。
【0052】
このようにして、交差部での色や塗り潰しのパターンの変化により、例えば、第1帯状模様51が、第2帯状模様52により途中で分断されたように見えたり、複数の並列する第1帯状模様51が繋がって幅の広い帯状に見えたり、第1,第2帯状模様51,52が、各交差部で小間切れに見えたりする。即ち、視線が第1,第2帯状模様51,52に注視され易くなり、建築板10の接合目地を目立ちにくくし、仮に、疑似目地31がずれた場合でも、その疑似目地31のずれを目立ちにくくすることができる。
【0053】
図6,7に示すように、第1細線模様53は、意匠面14において、上下方向D2に延び、左右方向D1での幅が疑似目地31の目地幅Wよりも狭い模様である。各ブロック部40a,40b,40c内において、複数の第1細線模様53は、上下方向D2での長さが異なっている。各ブロック部40a,40b,40cに形成された第1細線模様53の
うち、上下方向D2での長さ寸法が最長のものでも、意匠柄部17における上下方向D2での長さ寸法(即ち、短辺12の寸法)よりも短い。なお、各ブロック部40a,40b,40cに形成された第1細線模様53には、上下方向D2において、各ブロック部40を跨いで形成されるものがある。
【0054】
第2細線模様54は、意匠面14において、左右方向D1に延び、上下方向D2での幅が疑似目地31の目地幅Wよりも狭い模様である。本実施形態では、第2細線模様54は、意匠面14上において、左右方向D1で隣り合う柄ユニット30を跨いで形成されているものがある。
【0055】
第1,第2細線模様53,54は、この第1,第2細線模様53,54の下地となる第1,第2帯状模様51,52の色に対して、配色が異なっている。このため、第1,第2細線模様53,54と、第1,第2帯状模様51,52とは、交差する位置である交差部での陰影が変化することにより途中で分断されたように視認される。これにより、意匠面14に形成される陰影のバリエーションが増えたように見え、視線が陰影の違いに注視され、接合目地上での疑似目地31のずれをいっそう目立ちにくくすることができる。また、第1細線模様53と第2細線模様54との交差部については、第1帯状模様51と第2帯状模様52と交差部の関係と同じである。
【0056】
第1,第2細線模様53,54は、例えば、その幅が約5[mm]~約10[mm]であり、長さは約100[mm]~約1000[mm]である。
【0057】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏する。
建築板10を、左右方向D1、及び上下方向D2それぞれにつなぎ合わせることで建築物における壁面が形成される。建築板10の製造誤差や、施工現場で、建築板10を短辺12と平行に切断するときの誤差により、左右方向D1での端から疑似目地31までの寸法が、各建築板10でバラつくことがある。このため、建築板10の長辺11付近の接合目地において、疑似目地31のつなぎ目がずれる場合がある。しかし、建築板10の意匠面14には、第1帯状模様51と第1細線模様53とにより、疑似目地31の延びる向きである第2方向に合わせて疑似的な陰影感が表現される。これにより、壁面が視認された場合に、意匠面14の陰影感に注視され易くなることで、接合目地における疑似目地31のずれを目立ちにくくすることができる。
【0058】
意匠柄部17を構成する柄ユニット30における、複数の凸部20の配列方向に沿って、第1帯状模様51が延びているため、意匠面14上に凸部20の配列パターンに応じた陰影感を表現することができる。これにより、疑似目地31のずれを、好適に目立ちにくくすることができる。
【0059】
柄ユニット30は、格子状に複数配列する凸部20により成る複数のブロック部40と、左右方向D1、又は、上下方向D2において隣り合うブロック部40を区画するブロック目地41と、を有している。これにより、第1帯状模様51と第1細線模様53とによりブロック目地41の付近に形成される陰影感を疑似的に表現することで、建築板10により形成される壁面を視認する者に対して違和感のない陰影感を表現することができる。
【0060】
意匠面14において、疑似目地31上には、左右方向D1で隣り合う第1帯状模様51の境界Lが位置している。これにより、第1帯状模様51の境界Lが疑似目地31にかかることで、疑似目地31のずれを目立ちにくくすることができる。
【0061】
意匠面14に形成された第2細線模様54が、上下方向D2において隣り合う他の建築板10との間の継ぎ目である接合目地の延びる方向、即ち左右方向D1方向に延びている
ため、上下の建築板10同士の継ぎ目を目立ちにくくし、ひいては上下に連なる疑似目地31のずれをいっそう目立ちにくくすることができる。
【0062】
意匠面14に形成された第2帯状模様52が、上下方向D2において隣り合う他の建築板10との間の継ぎ目の延びる方向に延びているため、上下方向D2における建築板10同士の継ぎ目を目立ちにくくし、ひいては疑似目地31のずれをいっそう目立ちにくくすることができる。
【0063】
上下方向D2に延びる第1細線模様53における上下方向D2での長さ寸法は、意匠柄部17における上下方向D2での長さ寸法よりも短い。即ち、第1細線模様53の少なくとも一端は意匠面14の長辺11側の接合目地とは交差しない。これにより、第1細線模様53と同方向に延びる疑似目地31が、意匠面14に形成された模様により目立ちにくくなり、疑似目地31のつなぎ目のずれを目立ちにくくすることができる。
【0064】
意匠面14には、上下方向D2に延びる第2細線模様54が、第1方向で隣り合う柄ユニット30を跨いで形成されているため、意匠面14において複数の柄ユニット30を跨いだ陰影感を表現することができる。これにより、柄ユニット30を区画する疑似目地31を目立ちにくくし、ひいては、隣接する柄ユニット30同士が合わせられ、1つの柄ユニットのように見え、壁面を構成した際に、疑似目地31のずれを目立ちにくくできる。
【0065】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。第2実施形態において第1実施形態と同一の箇所については同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0066】
第1実施形態では、疑似目地31上に、左右方向D1に隣り合って位置する帯状模様51の境界が位置していた。この構成に代えて、又は、この構成とともに、
図9に示すように、凸部20の頂面21に、左右方向D1に隣り合って位置する帯状模様51の境界Lが位置している。これにより、凸部20の頂面21に形成された帯状模様51の境界が注視されやすくなることで、接合目地における疑似目地31のずれをいっそう目立ちにくくすることができる。
【0067】
(その他の実施形態)
建築板10の構成は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上述の実施形態では、柄ユニット30の左右方向D1の縁は、凸部20の側面22により構成されていた。そのため、疑似目地31は、凸部20の側面22により左右方向D1に挟まれることで凹状の溝を形成していた。これに代えて、本実施形態では、
図10に示すように、柄ユニット30を構成するブロック部40は、凸部20よりも厚み方向D3で一段下がった座面部60を有している。言い換えると、本実施形態のブロック部40では、座面部60の表面側から凸部20が厚み方向D3に向けて突出している。本実施形態では、裏面13から座面部60までの高さH5は、疑似目地31の目地底までの高さH1よりも高く、かつ、凸部20の頂面21までの高さH2よりも低くなっている。
図10において、例えば、疑似目地31aは、柄ユニット30aを構成するブロック部40における座面部60の側面と、柄ユニット30bを構成するブロック部40における座面部60の側面とにより左右方向D1に挟まれることで、凹状の溝を形成している。
【0068】
上述の実施形態では、第1,第2帯状模様51,52は、インクジェット塗装機による塗装により、意匠面14に形成されていた。これに代えて、第1,第2帯状模様51,52には、エンボス加工により、エンボス模様が意匠面14に形成されていてもよい。第1,第2帯状模様51,52には、エンボス加工により、例えば、砂岩などの堆積岩や花崗
岩など火成岩の劈開面や、割石面、切石面、組石面、煉瓦面などの模様が形成されていてもよい。これ以外にも、第1,第2帯状模様51,52には、例えば、モルタルや、土壁、漆喰、積み瓦、布目、木目等の表面形状を形成する模様が擬似的に形成されていてもよい。また、上述の塗装とエンボス加工を組み合わせることも可能である。これらにより、リアリティーに富んだ意匠柄部17を構成することができ、建築板10の意匠性を高めることができる。
【0069】
上述の実施形態では、意匠面14には、第1,第2帯状模様51,52が形成されていた。これに代えて、意匠面14には、第2帯状模様52が形成されておらず、第1帯状模様51のみが形成されていてもよい。
【0070】
上述の実施形態では、意匠面14には、第1,第2細線模様53,54が形成されていた。これに代えて、意匠面14には、第2細線模様54が形成されておらず、第1細線模様53のみが形成されていてもよい。
【0071】
上述の実施形態では、建築板10の長辺11に、接合部15,16が形成されていた。建築板10の長辺11に加えて、短辺12にも、一対の接合部が形成されていてもよい。即ち、建築板10は、四方合决りの板材でもよい。
【0072】
上述の実施形態では、建築板10において表面側の全ての領域が意匠面14として構成されていた。これに代えて、建築板10の表面における一部の領域が意匠面14として構成されていてもよい。この場合において、意匠柄部17は、複数の凸部20が左右方向D1、及び上下方向D2に配列することで、意匠面14を形成していればよく、格子状に配列することに限定されない。
【符号の説明】
【0073】
10…建築板、
13…裏面、
14…意匠面、
17…意匠柄部、
18…基部、
20…凸部、
21…頂面、
22…側面、
30…柄ユニット、
31…疑似目地、
40…ブロック部、
41…ブロック目地、
45…凸部目地、
51…第1帯状模様、
53…第1細線模様、