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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043649
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】固定子鉄心
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/12 20060101AFI20230322BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H02K1/12 A
H02K1/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151373
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 文明
(72)【発明者】
【氏名】金田 数馬
(72)【発明者】
【氏名】青木 一男
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA01
5H601BB20
5H601CC01
5H601CC13
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD31
5H601EE20
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB48
5H601GC02
5H601GC12
5H601GD02
5H601GD08
5H601GD14
5H601GD22
5H601JJ04
5H601JJ06
5H601KK01
5H601KK08
5H601KK13
5H601KK15
5H601KK18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】分割鉄心の変形を抑制することが可能な固定子鉄心を提供する。
【解決手段】固定子鉄心は、鉄心板30が複数枚積層された分割鉄心11を備え、複数の分割鉄心が鉄心板の積層方向に平行な軸を中心とする円周方向に並んでいて、鉄心板は、積層方向に向けて突出するビード部40を含む円周方向に延びるヨーク部30Pと、ヨーク部の円周方向の幅よりも小さい幅でヨーク部から軸に向けて延出するティース部30Qと、を有し、ビード部は、ヨーク部の円周方向の両端から離間しティース部の幅よりも長い平行な一対の辺40a,40bを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心板が複数枚積層された分割鉄心を備え、
複数の前記分割鉄心が前記鉄心板の積層方向に平行な軸を中心とする円周方向に並んでいて、
前記鉄心板は、前記積層方向に向けて突出するビード部を含む前記円周方向に延びるヨーク部と、前記ヨーク部の前記円周方向の幅よりも小さい幅で前記ヨーク部から前記軸に向けて延出するティース部と、を有し、
前記ビード部は、前記ヨーク部の前記円周方向の両端から離間し前記ティース部の幅よりも長い平行な一対の辺を有する、
固定子鉄心。
【請求項2】
前記ビード部は、前記一対の辺に接続された平坦な一対の壁を有する、
請求項1に記載の固定子鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、固定子鉄心に関する。
【背景技術】
【0002】
モータや発電機などの回転電機は、円筒状の固定子と、固定子に対して回転自在に設けられた回転子とを備えている。固定子は、それぞれ巻線が巻装された複数の分割鉄心を円筒状に並べた固定子鉄心と、固定子鉄心の外周に嵌合された筒状のケースとを備えている。固定子鉄心は、ケースにより円筒状に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6615340号公報
【特許文献2】特許第5734153号公報
【特許文献3】特許第5387698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定子の組立てにおいて、焼き嵌めあるいは圧入などによりケースを固定子鉄心に嵌合させると、ケースは径方向内側に向けて固定子鉄心を締め付ける。ケースの固定子鉄心に対する締め付け力が増大すると、分割鉄心には座屈などによる変形の発生が懸念される。
【0005】
本発明の実施形態の課題は、分割鉄心の変形を抑制することが可能な固定子鉄心を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、固定子鉄心は、鉄心板が複数枚積層された分割鉄心を備え、複数の前記分割鉄心が前記鉄心板の積層方向に平行な軸を中心とする円周方向に並んでいて、前記鉄心板は、前記積層方向に向けて突出するビード部を含む前記円周方向に延びるヨーク部と、前記ヨーク部の前記円周方向の幅よりも小さい幅で前記ヨーク部から前記軸に向けて延出するティース部と、を有し、前記ビード部は、前記ヨーク部の前記円周方向の両端から離間し前記ティース部の幅よりも長い平行な一対の辺を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る回転電機の固定子の固定子鉄心とケースとを分解して示す分解斜視図。
図2図2は、前記固定子鉄心の分割鉄心部を示す斜視図。
図3図3は、前記分割鉄心部の分割鉄心を示す斜視図。
図4図4は、前記分割鉄心の平面図。
図5図5は、図4のV-V線に沿って示す前記分割鉄心の断面図。
図6図6は、第2実施形態に係る分割鉄心の平面図。
図7図7は、図6のVII-VII線に沿って示す前記分割鉄心の断面図。
図8図8は、第3実施形態に係る分割鉄心の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状などを実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。
【0009】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る回転電機の固定子1の固定子鉄心10とケース20とを分解して示す分解斜視図である。回転電機は、例えば、鉄道車両、ハイブリッド自動車および電気自動車において、主電動機、駆動モータあるいは発電機などに適用される。回転電機は、例えば、3相(U相、V相およびW相)の交流電源によって駆動される。
【0010】
図1に示すように、固定子1は、固定子鉄心10と、複数本のコイル17と、電極端子15と、固定子鉄心10の外周に嵌合される筒状のケース20と、を備えている。固定子鉄心10は、複数、例えば、24個の分割鉄心部10Aを軸Cに対して円筒状に並べて形成される。隣合う分割鉄心部10Aが互いに連結することにより、固定子鉄心10を構成している。以下の説明では、軸Cの延在方向を軸方向Z、軸Cを中心とする円周方向DR、軸方向Zおよび円周方向DRに直交する方向を径方向DCと定義する。
【0011】
各々の分割鉄心部10Aは、分割鉄心11と、分割鉄心11に装着された絶縁性を有する巻線ホルダ(第1巻線ホルダ12および第2巻線ホルダ13)とで構成されている。コイル17は、分割鉄心部10Aに対して、集中巻きの構成で巻き付けられている。すなわち、1本のコイル17が、1つの分割鉄心部10Aに巻き付けられている。
【0012】
電極端子15は、外部の電源からコイル17に入力される電流の入力端子である。電極端子15は、U相の8本のコイル17に接続されるU相電極端子15Uと、V相の8本のコイル17に接続されるV相電極端子15Vと、W相の8本のコイル17に接続されるW相電極端子15Wと、を含んでいる。
【0013】
固定子鉄心10がケース20内に挿入され、固定子鉄心10の外周面がケース20の内周面20aに嵌合する。ケース20は、固定子鉄心10を径方向DC外側から支持する。ケース20は、それぞれ外周部から突出した複数(例えば、4つ)の固定部20bを有し、これらの固定部20bは円周方向DRにほぼ等しい間隔を置いて設けられている。各々の固定部20bは、例えば、ボルトなどを用いて図示しない保持部材に固定される。
【0014】
次に、分割鉄心部10Aの構成について説明する。図2はコイル17が装着された1つの分割鉄心部10Aを示す斜視図であり、図3は分割鉄心部10Aの分割鉄心11を示す斜視図である。
【0015】
図2に示すように、分割鉄心部10Aは、分割鉄心11と、分割鉄心11に装着された巻線ホルダと、を有している。巻線ホルダには、コイル17が巻き付けられ保持されている。巻線ホルダは、分割鉄心11の軸方向Zの一方側に装着された絶縁性を有する第1巻線ホルダ12と、分割鉄心11の軸方向Zの他方側に装着された絶縁性を有する第2巻線ホルダ13とで構成されている。
【0016】
第1巻線ホルダ12は、コイル17が巻き付けられる装着部12Bと、バスバーリングあるいは接続配線をガイドするガイド部12Cとを一体に有している。第2巻線ホルダ13は、コイル17が巻き付けられる装着部13Bと、バスバーリングあるいは接続配線をガイドするガイド部13Cとを一体に有している。コイル17は、第1巻線ホルダ12および第2巻線ホルダ13を介して、後述する分割鉄心11のティース11Qに巻き付けられている。
【0017】
図3に示すように、分割鉄心11は、薄板状の鉄心板30を軸方向Zに複数枚積層して構成されている。鉄心板30は、一例として磁性を有する電磁鋼板である。鉄心板30の積層方向は、軸Cに平行な方向である。鉄心板30は、例えば電磁鋼板をプレス成形することにより形成される。分割鉄心11は、円周方向DRに延びる円弧状のヨーク11Pと、ヨーク11Pの内周から軸Cに向けて径方向DC内側に延出したほぼ長方形状のティース11Qと、を有している。ヨーク11Pおよびティース11Qは、分割鉄心11の軸方向Zに延びている。
【0018】
ヨーク11Pは、円弧状の外周面11aと、円弧状の内周面11bと、それぞれ径方向DCに延び互いに円周方向DRに対向した一対の端面11c,11dと、軸方向Zに突出するビード11Sと、を有している。端面11cには軸方向Zに延びた凸部11eが形成され、端面11dには軸方向Zに延びた凹部11fが形成されている。複数の分割鉄心11を円周方向DRに並べて配置した際、ヨーク11Pの凸部11eが隣接するヨーク11Pの凹部11fに嵌合することで、隣合う分割鉄心11同士を連結することができる。
【0019】
ティース11Qは、ヨーク11Pの円周方向DRの幅よりも小さい幅を置いて互いに対向する一対の側面11g,11hと、一対の側面11g,11hの一端同士を接続する先端面11iと、を有している。図3に示す例において、ティース11Qは、先端部から円周方向DRに突出し軸方向Zに延びる一対の凸部11Rを一体に有している。
【0020】
図2に示した第1巻線ホルダ12は、軸方向Zの一方側から分割鉄心11に装着され、ヨーク11Pおよびティース11Qに重ねて配置される。図2に示した第2巻線ホルダ13は、軸方向Zの他方側から分割鉄心11に装着され、ヨーク11Pおよびティース11Qに重ねて配置される。
【0021】
上述した複数の分割鉄心部10Aが円周方向DRに並び、分割鉄心11の凸部11eを隣接する他の分割鉄心11の凹部11fに嵌合し、隣合う分割鉄心11を互いに連結することにより、図1に示した固定子鉄心10が構成される。
【0022】
次に、分割鉄心11を構成する鉄心板30について主に説明する。図4は分割鉄心11の平面図であり、図5図4のV-V線に沿って示す分割鉄心11の断面図である。図5は、軸方向Zに積層する複数枚の鉄心板30の一部を示している。
【0023】
図4に示すように、鉄心板30は、円周方向DRに延びる円弧状のヨーク部30Pと、ほぼ長方形状のティース部30Qと、を有している。ヨーク部30Pには、ビード部40が形成されている。
【0024】
ヨーク部30Pは、円弧状の外周部30aと、円周方向DRに離間した円弧状の一対の内周部30bと、それぞれ径方向DCに延び互いに円周方向DRに対向した一対の端部30c,30dとを有している。端部30cは外周部30aと一方の内周部30bとを接続し、端部30dは外周部30aと他方の内周部30bとを接続している。端部30cには凸部30eが形成され、端部30dには凹部30fが形成されている。軸方向Zに並ぶ複数枚の鉄心板30は、例えば外周部30aが溶接されて互いに連結される。
【0025】
ティース部30Qは、ヨーク部30Pから軸Cに向けて径方向DC内側に延出している。ティース部30Qは、ヨーク部30Pの円周方向DRの幅よりも小さい幅で互いに対向する一対の側部30g,30hと、一対の側部30g,30hの一端同士を接続する先端部30iと、を有している。ティース部30Qは、それぞれ先端から円周方向DRに突出する一対の凸部30Rを一体に有している。ティース部30Qの円周方向DRの中央と軸Cを通り径方向DCに延びる線を線QCとし、ヨーク部30Pの径方向DCの中央を通り円周方向DRに延びる線を線PCとする。
【0026】
ここで、ヨーク部30Pの円周方向DRの幅を幅WPとし、ティース部30Qの円周方向DRの幅をWQとする。幅WPは、一例としてヨーク部30Pの外周部30aの両端間の直線距離である。幅WQは、一例としてティース部30Qのうちヨーク部30Pから延出する根元部における一対の側部30g,30hの間の直線距離である。直線距離とは、それぞれ線QCと直交する直線の距離である。ティース部30Qの円周方向DRの幅WQは、ヨーク部30Pの円周方向DRの幅WPよりも小さい(WP>WQ)。
【0027】
図5に示すように、鉄心板30は、軸方向Zの一方側に位置する面30jと、軸方向Zの他方側に位置する面30kとを有している。図4および図5に示す例において、ビード部40は、軸方向Zにおいて面30kから面30jに向けて突出している。
【0028】
ビード部40は、一対の辺40a,40bと、一対の辺40a,40bを接続する一対の辺40c,40dと、一対の辺40a,40bおよび一対の辺40c,40dに接続された突出部41と、を有している。突出部41により、空洞部41Aが形成されている。
【0029】
複数枚の鉄心板30を軸方向Zに並べて配置した際、ビード部40の突出部41に他の鉄心板30におけるビード部40の空洞部41Aを隙間が生じないように重ね合わせて、鉄心板30同士が積層される。分割鉄心11において、ヨーク11Pはヨーク部30Pにより構成され、ティース11Qはティース部30Qにより構成され、ビード11Sはビード部40により構成される。
【0030】
分割鉄心11のヨーク部30Pにおいて、外周面11aは外周部30aにより構成され、内周面11bは内周部30bにより構成される。端面11cは端部30cにより構成され、端面11dは端部30dにより構成される。凸部11eは凸部30eにより構成され、凹部11fは凹部30fにより構成される。ビード11Sは、ビード部40が軸方向Zに積層されることで構成される。
【0031】
一対の辺40a,40bおよび一対の辺40c,40dは、それぞれ間隔を置いて対向している。図4に示す例において、一対の辺40a,40bは互いに平行であり、一対の辺40c,40dは互いに平行である。辺40aの長さは辺40bの長さと等しく、辺40cの長さは辺40dの長さと等しい。一対の辺40a,40bは、一対の辺40c,40dよりも長い。図4に示すようにビード部40は、軸方向Zから見た平面視において矩形状である。ビード部40において、一対の辺40a,40bは長辺に相当し、一対の辺40c,40dは短辺に相当する。
【0032】
径方向DCにおいて、辺40aは外周部30a側に位置し、辺40bは内周部30b側に位置している。円周方向DRにおいて、辺40cは端部30c側に位置し、辺40dは端部30d側に位置している。一対の辺40a,40bには、屈曲する部分および曲線状の部分が含まれていない。一対の辺40a,40bは、円周方向DRに沿って延びていない。
【0033】
ビード部40は、一対の辺40a,40bおよび一対の辺40c,40dにより囲まれた領域を有している。図4に示す例において、ビード部40は、当該領域が軸方向Zにおいて線QCと線PCとの交点と重なるようにヨーク部30Pに形成されている。線QCは、ヨーク部30Pの外周部30aのほぼ中央を通っている。
【0034】
一対の辺40a,40bの長さW40は、幅WQよりも長く、幅WPよりも短い(WP>W40>WQ)。一対の辺40a,40bは、線QCと交差している。図4に示す例において、一対の辺40a,40bは、線QCと直交している。一対の辺40a,40bと線QCとがなす角度は90度に限られず、他の角度で交差してもよい。一対の辺40a,40bと線QCとの交点は、例えば辺40a,40bの各中点とほぼ一致する。図4に示す例において、一対の辺40c,40dは、線PCと交差している。
【0035】
一対の辺40a,40bは、ヨーク部30Pの円周方向DRの両端から離間している。より具体的には、辺40cは端部30cから間隔を置いて設けられ、辺40dは端部30dから間隔を置いて設けられている。他の観点からは、円周方向DRにおいて、辺40cは端部30cと側部30gとの間に位置し、辺40dは端部30dと側部30hとの間に位置している。すなわち、一対の辺40a,40bは、一対の端部30c,30dまで延びていない。
【0036】
図4および図5に示すように、突出部41は、一対の壁42a,42bと、一対の壁42c,42dと、一対の壁42a,42bおよび一対の壁42c,42dを連結する連結壁43と、を有している。壁42aは辺40aに接続され、壁42bは辺40bに接続され、壁42cは辺40cに接続され、壁42dは辺40dに接続されている。
【0037】
一対の辺40a,40bに接続された一対の壁42a,42bは平坦であり、屈曲する部分および曲線状の部分を有していない。さらに、一対の壁42a,42bは、ティース部30Qの円周方向DRの幅WQよりも長い。一対の辺40c,40dに接続された一対の壁42c,42dは平坦であり、屈曲する部分および曲線状の部分を有していない。
【0038】
図5に示す例において、一対の壁42a,42bは、一対の辺40a,40bから軸方向Zに離れるに従い、互いに近づくように傾斜している。より具体的には、軸方向Zに面30kから面30jに向かって、壁42aは径方向DC外側から径方向DC内側に向けて傾斜し、壁42bは径方向DC内側から径方向DC外側に向けて傾斜している。連結壁43の短手方向の長さは、一対の辺40a,40bの間隔よりも短い。一対の壁42c,42dは、一対の辺40c,40dから軸方向Zに離れるに従い、互いに近づくように傾斜している。
【0039】
ヨーク部30Pのうちビード部40が形成されていない平坦部30Aと壁42aとの角度θaは、平坦部30Aと壁42bとのなす角度θbとほぼ等しい。角度θa,θbは、90度に近いほうが好ましい。図4および図5に示す例において、連結壁43は、平坦部30Aに対してほぼ平行な平坦な壁である。他の観点からは、軸方向Zにおける平坦部30Aと連結壁43との間隔は、ほぼ一定である。
【0040】
空洞部41Aは、一対の壁42a,42b、一対の壁42c,42d、および連結壁43により囲まれる空間である。ビード部40の断面の一つである横断面において、空洞部41Aは、例えば矩形状、あるいは略台形状である。ここで、「矩形状」および「略台形状」とは、1辺のない形状である。図5に示す例において空洞部41Aは、略台形状である。
【0041】
ケース20が固定子鉄心10に嵌合される前において、ケース20の内径は固定子鉄心10の外径よりも小さいため、ケース20を固定子鉄心10の外周に嵌合させると、ケース20は固定子鉄心10の外径を縮小するように締め付ける。この場合、固定子鉄心10を構成する分割鉄心11の端面11cは円周方向DRに隣合う他の分割鉄心11の端面11dに押圧され、分割鉄心11の端面11dは隣合う他の分割鉄心11の端面11cに押圧される。その際、分割鉄心11の端面11c,11dには圧縮力が作用する。
【0042】
ケース20を固定子鉄心10に嵌合させた際にケース20の固定子鉄心10に対する締め付け力が増大し圧縮力が増大すると、分割鉄心11を構成する鉄心板30は、座屈などにより変形する可能性がある。例えば、鉄心板30のヨーク部30Pが座屈する場合、ヨーク部30Pが軸方向Zの少なくともどちらか一方に膨らむように変形する。
【0043】
以上のように構成された本実施形態に係る固定子鉄心10によれば、鉄心板30においてヨーク部30Pには、ビード部40が形成されている。これにより、鉄心板30のヨーク部30Pにおける円周方向DRの剛性を大きくすることができる。ケース20を固定子鉄心10に嵌合させた際に、分割鉄心11を構成する鉄心板30のヨーク部30Pは変形しにくい。
【0044】
ビード部40は平坦な一対の壁42a,42bを有するため、作用する圧縮力に対して一対の壁42a,42bがヨーク部30Pの変形を抑制する構造材となり、ヨーク部30Pにおける円周方向DRの剛性を大きくすることができる。一対の壁42a,42bの長さは長いほうが好ましく、一対の壁42a,42bの軸方向Zの高さは高いほうが好ましい。一対の壁42a,42bは一対の辺40a,40bに接続されているため、一対の辺40a,40bを長くすることで一対の壁42a,42bを長くすることができる。
【0045】
一対の辺40a,40bの長さW40は、ティース部30Qの円周方向DRの幅WQよりも長い。そのため、一対の壁42a,42bの長さは、ティース部30Qの円周方向DRの幅WQよりも長い。このように一対の壁42a,42bの長さを長くすることで、鉄心板30のヨーク部30Pの剛性を大きくすることができる。さらに、角度θa,θbを90度近くにすることで、鉄心板30のヨーク部30Pの剛性をさらに大きくすることができる。
【0046】
ビード部40の一対の壁42a,42bは、一対の辺40a,40bに接続され切れ目のない一続きの形状であるため、応力が集中する部分が発生しにくい。ビード部40は一対の辺40c,40dに接続された一対の壁42c,42dを有するため、径方向DCの剛性を大きくすることができる。一対の壁42c,42dの径方向DCの長さは、図4および図5に示す例よりも長くてもよいし、短くてもよい。
【0047】
以上説明したように本実施形態によれば、分割鉄心11の変形を抑制することが可能な固定子鉄心10を提供することができる。鉄心板30のヨーク部30Pには、ビード部40が形成されている。ビード部40が壁42a,42bを有することで、ヨーク部30Pの円周方向DRにおける剛性が大きくなり、ヨーク部30Pが軸方向Zに変形しにくい。
【0048】
そのため、複数枚の鉄心板30を積層して構成される分割鉄心11の剛性が大きくなり、分割鉄心11の変形を抑制することが可能な固定子鉄心10を得ることができる。
【0049】
次に、他の実施形態について説明する。なお、以下に述べる他の実施形態において、上述した第1実施形態と同一の部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略あるいは簡略化する場合がある。
【0050】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態に係る分割鉄心11の平面図であり、図7は、図6のVII-VII線に沿って示す分割鉄心11の断面図である。図7は、軸方向Zに積層する複数枚の鉄心板30の一部を示している。
【0051】
図6に示すように、鉄心板30は、円周方向DRに延びる円弧状のヨーク部30Pと、ほぼ長方形状のティース部30Qと、を有している。ヨーク部30Pには、ビード部40が形成されている。
【0052】
図6および図7に示すように、ビード部40は、軸方向Zにおいて面30kから面30jに向けて突出している。ビード部40は、一対の辺40a,40bと、一対の辺40a,40bを接続する一対の円弧44c,44dと、一対の辺40a,40bおよび一対の円弧44c,44dに接続された突出部41と、を有している。
【0053】
突出部41により、空洞部41Aが形成されている。図7に示す例において、突出部41は、横断面が円弧状に形成されている。ここで、円弧状とは、真円の円弧を含む形状だけでなく、楕円弧などの湾曲する種々の曲線を含む形状である。
【0054】
一対の辺40a,40bおよび一対の円弧44c,44dは、それぞれ間隔を置いて対向している。図6に示す例において、一対の辺40a,40bは互いに平行である。辺40aの長さは、辺40bの長さと等しい。一対の辺40a,40bは、円周方向DRに沿って延びていない。円弧44cの長さは、円弧44dの長さと等しい。
【0055】
ビード部40は、一対の辺40a,40bおよび一対の円弧44c,44dにより囲まれた領域を有している。図6に示す例において、ビード部40は、当該領域が軸方向Zにおいて線QCと線PCとの交点と重なるようにヨーク部30Pに形成されている。
【0056】
一対の辺40a,40bの長さW40は、幅WQよりも長く、幅WPよりも短い(WP>W40>WQ)。一対の辺40a,40bは、線QCと交差している。図6に示す例において、一対の辺40a,40bは、線QCと直交している。一対の辺40a,40bと線QCとがなす角度は90度に限られず、他の角度で交差してもよい。一対の辺40a,40bと線QCとの交点は、例えば辺40a,40bの各中点とほぼ一致する。図6に示す例において、一対の円弧44c,44dは、線PCと交差している。
【0057】
一対の辺40a,40bは、ヨーク部30Pの円周方向DRの両端から離間している。より具体的には、円弧44cは端部30cから間隔を置いて設けられ、円弧44dは端部30dから間隔を置いて設けられている。他の観点からは、円周方向DRにおいて、円弧44cは端部30cと側部30gとの間に位置し、円弧44dは端部30dと側部30hとの間に位置している。すなわち、一対の辺40a,40bは、一対の端部30c,30dまで延びていない。平面視において、突出部41は、一対の辺40a,40bに沿って直線状に形成されている。
【0058】
一対の辺40a,40bの長さを長くすることで突出部41の長さを長くすることができる。突出部41の長さは、長いほうが好ましく、突出部41の軸方向Zの高さは高いほうが好ましい。このような突出部41を形成することで、鉄心板30のヨーク部30Pの剛性を大きくすることができる。
【0059】
上述の構成の第2実施形態においても、分割鉄心11の変形を抑制することが可能な固定子鉄心10を提供することができる。ケース20を固定子鉄心10に嵌合させた際、ビード部40の突出部41が作用する圧縮力に対してヨーク部30Pの変形を抑制するため、ヨーク部30Pにおける円周方向DRの剛性を大きくすることができる。
【0060】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態に係る分割鉄心11の平面図である。図8は、分割鉄心11の一部を示している。図8に示すように、鉄心板30のヨーク部30Pには、ビード部40が2箇所形成されている。
【0061】
ビード部40は、軸方向Zに突出している。一例としては、ビード部40は、第1実施形態において説明したビード部40と同様の形状である。より具体的には、ビード部40の突出部41は、平坦な一対の壁42a,42b、平坦な一対の壁42c,42d、および連結壁43を有している。
【0062】
ビード部40の一方は径方向DCにおいて外周部30aと線PCとの間に位置し、ビード部40の他方は径方向DCにおいて内周部30bと線PCとの間に位置している。一例として、2箇所に形成されたビード部40は、互いに平行に配置されている。図8に示す例において、2箇所に形成されたビード部40は、ほぼ同じ大きさである。より具体的には、一対の辺40a,40bの長さは、それぞれほぼ等しい。
【0063】
上述の構成の第3実施形態においても、分割鉄心11の変形を抑制することが可能な固定子鉄心10を提供することができる。ビード部40がヨーク部30Pに2箇所形成されることで、鉄心板30のヨーク部30Pにおける円周方向DRの剛性を一層、大きくすることができる。図8に示す例においては、一対の壁42a,42bがヨーク部30Pに2つ形成されている。
【0064】
なお、第3実施形態において、ヨーク部30Pに形成されるビード部40は、2箇所に限らず、3箇所以上としてもよい。ヨーク部30Pの一対の辺40c,40dは、円周方向DRに揃っているが、ずれてもよい。ビード部40の一対の辺40a,40bの長さおよび一対の辺40c,40dの長さの各々は、ほぼ等しい場合に限らず、異なってもよい。
【0065】
一例として、外周部30a側に位置するビード部40の一対の辺40a,40bの長さは、内周部30b側に位置するビード部40の一対の辺40a,40bの長さよりも長くてもよいし、短くてもよい。ビード部40の形状は、第2実施形態において説明した形状でもよい。第1実施形態および第2実施形態において説明したビード部40がヨーク部30Pにそれぞれ形成されてもよい。
【0066】
なお、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。なお、ビード部40は、軸方向Zにおいて面30jから面30kに向けて突出してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…固定子、10…固定子鉄心、11…分割鉄心、30…鉄心板、30P…ヨーク部、30Q…ティース部、40…ビード部、40a,40b…辺。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8