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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043659
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】発泡成形品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 21/02 20060101AFI20230322BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B65D21/02 410
B65D1/26 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151393
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田窪 陽子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友則
【テーマコード(参考)】
3E006
3E033
【Fターム(参考)】
3E006AA01
3E006BA08
3E006CA02
3E006FA03
3E033AA08
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA22
3E033CA20
3E033DC10
3E033DD05
3E033FA02
(57)【要約】
【課題】複数の発泡成形品を積み重ねたとしても糸尻部に傷がつくことを回避することができ、かつ、成型後の金型の取外しに関しても問題がない、発泡成形品を提供する。
【解決手段】発泡成形品としての発泡成形容器101は、内部空間の外周を取り囲む周壁部12と、前記内部空間の下端を規定する底壁部13と、周壁部12の下端に連なって底壁部13より下方に延在する糸尻部30と、周壁部12の内側で底壁部13より上側の位置において周壁部12の半径方向内側に向かって張り出すようにして周方向に延在するスタック段部18とを備える。スタック段部18は、上面18aを有する。上面18aの内径は、糸尻部30の外径より小さく、上面18aの外径は、糸尻部30の外径より大きい。スタック段部18は、全周の中で1以上の切欠き17を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間の外周を取り囲む周壁部と、
前記内部空間の下端を規定する底壁部と、
前記周壁部の下端に連なって前記底壁部より下方に延在する糸尻部と、
前記周壁部の内側で前記底壁部より上側の位置において前記周壁部の半径方向内側に向かって張り出すようにして周方向に延在するスタック段部とを備える、発泡成形品であって、
前記スタック段部は、上面を有し、
前記上面の内径は、前記糸尻部の外径より小さく、
前記上面の外径は、前記糸尻部の外径より大きく、
前記スタック段部は、全周の中で1以上の切欠きを有する、発泡成形品。
【請求項2】
前記1以上の切欠きは、複数の切欠きであり、前記複数の切欠きは、均等に配置されている、請求項1に記載の発泡成形品。
【請求項3】
前記糸尻部は、外側に向かって張り出して上下方向に延在する糸尻部リブ部を含む、請求項1または2に記載の発泡成形品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡成形品を得るための製造方法であって、
第1部分および第2部分を含む内側金型を外側金型に組み合わせてキャビティを形成する工程と、
前記底壁部となるべき部位に向けて、超臨界流体を混入させた溶融した材料を射出する工程と、
射出された前記材料が冷えて固体化するのを待つ工程と、
前記材料が固体化したものである製品から前記外側金型を取り外す工程と、
前記第1部分と前記第2部分との境目から外側に向けてエアブローする工程と、
前記製品を前記内側金型から取り外す工程とを含み、
前記第1部分は前記底壁部となるべき部位に隣接する部分を占め、前記第2部分は、前記底壁部となるべき部位から見て前記第1部分よりも遠い部分を占め、前記境目は、前記底壁部となるべき部位から見て前記スタック段部となるべき部位よりも遠い位置において、前記周壁部となるべき部位に環状に露出するように配置されている、発泡成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形によって製造される有底円筒状の容器が知られている。このような複数の容器を搬送する際、または保管する際に、ある容器の内部に他の容器の底部を挿入することによって複数の容器が上下に積み重ねられた状態とされる場合がある。しかし、このように複数の容器が積み重ねられた状態では、周壁同士が接触することによって生じる摺動抵抗が大きくなりがちであり、引き抜き時に大きな力を必要としていた。そこで、容易に引き抜けるようにする構造が提案されていた。そのような構造は、たとえば特開2005-132472号公報(特許文献1)に記載されている。
【0003】
一方、高温の食品を容器内部に収容する場合に、ユーザが容器を手で持ったときに熱さを感じる度合いを緩和するために、容器の外周面に断熱目的のリブを設けた構造も知られている。そのような構造は、たとえば特開2002-193235号公報(特許文献2)、特開2018-144833号公報(特許文献3)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-132472号公報
【特許文献2】特開2002-193235号公報
【特許文献3】特開2018-144833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、周壁の下端近傍に略三角錐状の支持突起を設けた構成が記載されている。この支持突起が上方の容器の下端部を係止することによって、下方の容器に対する上方の容器の過度の挿入を規制することとなっている。容器を上から見たとき、支持突起は点状となっており、支持突起は周方向にいくつか点在するように配置されている。
【0006】
しかし、このように点状の支持突起が設けられている場合、複数の容器を積み重ねて、上方の容器の下端部が下方の容器の支持突起に当接することによって、上方の容器の糸尻部に傷がつくという問題がある。
【0007】
また、特許文献2,3のように外周面にリブが設けられた構造の容器を想定した場合、特許文献1に記載されたような支持突起が設けられているだけでは、支持突起が必ずしもリブに引っ掛からない。支持突起がリブとリブとの隙間を通り抜けてしまう可能性が高いので、上方の容器の過度な挿入を確実に防ぐことができない。
【0008】
さらに、射出成形が発泡成形である場合、金型を開放した際に不要な発泡が起こることを避けるために、適度に冷えてから金型を開放することとなる。すなわち、冷えるまでにある程度の時間が経過することとなる。発泡成形品は、射出直後の材料の収縮率は通常の成形品よりも大きいので、冷えるための時間によってさらに収縮が進む。過度の挿入を規制するための支持突起は、上方の容器の底部を受け止める水平部とそこから下方に向かって傾斜する傾斜部とを含んでおり、傾斜部は容器の抜き取る方向に対して逆勾配となっていて他の部分より厚肉となっていることが一般的である。厚肉の部分では、発泡がより進むので、収縮の度合いが大きくなる。その結果、製品が内側金型に被さった状態で締まって内側金型を外しにくくなるという問題が生じがちである。したがって、特に発泡成形容器の場合には、成型後に製品を金型から問題なく取り外せることも求められる。
【0009】
そこで、本発明は、複数の発泡成形品を積み重ねたとしても糸尻部に傷がつくことを回避することができ、かつ、成型後の金型の取外しに関しても問題がない、発泡成形品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に基づく発泡成形品は、内部空間の外周を取り囲む周壁部と、上記内部空間の下端を規定する底壁部と、上記周壁部の下端に連なって上記底壁部より下方に延在する糸尻部と、上記周壁部の内側で上記底壁部より上側の位置において上記周壁部の半径方向内側に向かって張り出すようにして周方向に延在するスタック段部とを備える、発泡成形品であって、上記スタック段部は、上面を有し、上記上面の内径は、上記糸尻部の外径より小さく、上記上面の外径は、上記糸尻部の外径より大きく、上記スタック段部は、全周の中で1以上の切欠きを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の発泡成形品を積み重ねたとしても糸尻部に傷がつくことを回避することができ、かつ、成型後の金型の取外しに関しても問題がない、発泡成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に基づく実施の形態1における発泡成形品の斜視図である。
図2】本発明に基づく実施の形態1における発泡成形品の平面図である。
図3】本発明に基づく実施の形態1における発泡成形品の第1の断面図である。
図4】本発明に基づく実施の形態1における発泡成形品の第2の断面図である。
図5】本発明に基づく実施の形態1における2つの発泡成形品を積み重ねた状態の断面図である。
図6】発泡成形によって容器を成形した後に金型と製品とを分離させるために行なわれるエアブローに関する説明図である。
図7】本発明に基づく実施の形態2における発泡成形品の斜視図である。
図8】本発明に基づく実施の形態2における発泡成形品の平面図である。
図9】本発明に基づく実施の形態3における発泡成形品の斜視図である。
図10】本発明に基づく実施の形態3における発泡成形品の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
糸尻部に傷がつくことを避けるためには、特許文献1に記載されていたような点状の支持突起を設ける代わりに、製品の内面の全周にわたって環状に延在する支持突起を設けることが考えられる。発泡成形によって容器を成形した後に金型と製品とを分離させるためには、内側金型の外周面の途中から周囲に向けてエアブローをして製品と金型との間に空気を行き渡らせることが行なわれる。これについて、図6を参照して説明する。内側金型41と外側金型42とが組み合わせられることによってキャビティ60が構成されている。ここでは、発泡成形品が薄肉のカップ形状の容器である例を示している。内側金型41は、第1部分61と、第2部分62とを含む。外側金型42は、第3部分63と、第4部分64とを含む。第3部分63の中央にはノズル68が貫通するように配置されている。ノズル68からキャビティ60内に向けて、溶融した材料が射出される。第1部分61と第2部分62との隙間には、空気の通り道が設けられており、矢印91に示すように、外に向けてエアブローを行なうことができる。溶融した材料の射出が終了し、材料が固体化した後、外側金型62が取り外され、第1部分61と第2部分62との隙間からエアブローが行なわれる。製品の底壁と内側金型との間を分離させるためには、エアブローされた空気が矢印92のように進んで底壁の内側にも入り込むことが必要である。しかし、全周にわたって環状に延在する支持突起がある場合には、この支持突起が空気流通の妨げとなって、エアブローされた空気が底壁と第1部分61との間に十分に入り込まずに矢印93のように流れてしまうという事態が起こりうる。特に、製品が薄肉容器である場合、外側金型62が既にない状態では、空気の流れが製品を押し広げて進行しやすいので、矢印93のように空気が流れやすくなる。こうなると、底壁と第1部分61との間は密着した状態のままとなる。その結果、底壁と内側金型との間の分離が正しく行なえない場合がある。このような不良を「離型不良」という。この問題については、本発明によって解消することができる。
【0014】
(実施の形態1)
(構成)
図1図5を参照して、本発明に基づく実施の形態1における発泡成形品について説明する。本実施の形態における発泡成形品は、発泡成形容器101である。発泡成形容器101の斜視図を図1に示す。図1は、発泡成形容器の内部を覗き込むようにして斜め上から見たところを示す。発泡成形容器101の平面図を図2に示す。発泡成形容器101の断面図を図3に示す。図3では、発泡成形容器101を半分に切ったところを示しており、発泡成形容器101の内面が奥に見えている。図3に示した状態から、発泡成形容器101を中心軸のまわりに少し回転させてから半分に切ったところを図4に示す。
【0015】
発泡成形品としての発泡成形容器101は、内部空間の外周を取り囲む周壁部12と、前記内部空間の下端を規定する底壁部13と、周壁部12の下端に連なって底壁部13より下方に延在する糸尻部30と、周壁部12の内側で底壁部13より上側の位置において周壁部12の半径方向内側に向かって張り出すようにして周方向に延在するスタック段部18とを備える。スタック段部18は、上面18aを有する。上面18aの内径は、糸尻部30の外径より小さく、上面18aの外径は、糸尻部30の外径より大きく、スタック段部18は、全周の中で1以上の切欠き17を有する。ここで示す例では、スタック段部18の下端は、底壁部13から上方に離隔した位置にあるが、スタック段部18の下端が底壁部13に接していてもよい。
【0016】
図3および図4に示すように、糸尻部30は、糸尻部本体31と、糸尻部リブ部32とを含む。糸尻部リブ部32が最下端まである構造の場合には「糸尻部30の外径」とは、糸尻部リブ部32の下端の外径を意味する。糸尻部リブ部32がない構造の場合には「糸尻部30の外径」とは、糸尻部本体31の下端の外径を意味する。
【0017】
発泡成形容器101は、周壁部12の上端から外側に張り出すように設けられたフランジ部14を備える。発泡成形容器101は、さらにフランジ部14の外縁から下方に張り出すように設けられた垂下部15を備える。周壁部12の外側には、外側に向かって張り出して上下方向に延在する周壁部リブ部34が設けられている。周壁部リブ部34は、底壁部13より上方で終わっていてもよいが、底壁部13の高さにまで延在していてもよい。底壁部13より下方においては、糸尻部リブ部32が上下方向に延在しており、周壁部リブ部34と糸尻部リブ部32とは、連続している。周壁部リブ部34および糸尻部リブ部32の連なりは、全周にわたって均等に配置されている。
【0018】
ここで示した例では、スタック段部18は、3つの切欠き17によって隔てられている。したがって、スタック段部18は、3つの部分に分割されている。
【0019】
なお、発泡成形容器101は、薄肉の成形容器である。周壁部12の厚みは、たとえば1.0mm以下である。「周壁部12の厚み」といった場合、周壁部リブ部34、スタック段部18などを除いた胴部中央付近での厚みのことをいう。周壁部12の厚みは、0.2mm以上1.0mm以下であってもよい。周壁部12の厚みは、0.25mm以上0.5mm以下であれば、より好ましい。発泡成形容器101は、即席食品に適したものである。即席食品としては、即席めん、即席スープなどが挙げられる。発泡成形容器101の内部空間によって規定される内容量は、たとえば300ml以上600ml以下である。発泡成形容器101の高さは、たとえば75mm以上120mm以下である。周壁部12は、上方に向かうにつれて径が大きくなる形状である。周壁部12の主な部分の平均した勾配は、たとえば鉛直方向に対して6°以上10°以下である。この場合に、スタック段部18の上面18aの位置は、底面、すなわち、底壁部13の上面から10mm以上35mm以下であることが好ましく、10mm以上20mm以下であることがさらに好ましい。このような条件の発泡成形容器は、従来であれば離型不良が起こりやすい。しかし、本実施の形態では、後述するように、離型不良を避けることができる。
【0020】
2つの発泡成形容器101を積み重ねた状態を図5に示す。ここでは、説明の便宜のために、下側にある発泡成形容器101を発泡成形容器101aとし、上側にある発泡成形容器101を発泡成形容器101bとする。発泡成形容器101bの底部が発泡成形容器101aの内部に挿入されている。発泡成形容器101bの糸尻部30の下端は、発泡成形容器101aのスタック段部18の上面18aに当接して、それ以上下方へは変位しない。このようにして、発泡成形容器101aの内部への発泡成形容器101bの過度の挿入を防ぐことができる。
【0021】
(作用・効果)
本実施の形態では、周方向に延在するスタック段部18を備えているので、発泡成形容器101を積み重ねた際には、糸尻部30の下端がスタック段部18の上面に当接する形となり、圧力が作用する領域が広く分散するので、複数の容器を積み重ねたとしても糸尻部に傷がつくことを回避することができる。
【0022】
また、スタック段部18は、全周の中で1以上の切欠き17を有するので、射出成形の後に製品を金型から取り外すためのエアブローの工程においても、切欠き17を通って空気が底壁部13と外側金型との間に自由に入り込むことができるので、金型と製品との分離を円滑に行なうことができる。したがって、本実施の形態で示したように、離型不良が起こりやすい条件の発泡成形容器であっても、成型後の金型の取外しに関しても問題がない状態とすることができる。
【0023】
発泡成形品の製造方法について、図6を参照して、より詳しく説明する。
【0024】
本実施の形態における発泡成形品の製造方法は、上述の発泡成形品を得るための製造方法であって、第1部分61および第2部分62を含む内側金型41を外側金型42に組み合わせてキャビティ60を形成する工程と、底壁部13となるべき部位に向けて、超臨界流体を混入させた溶融した材料を射出する工程と、射出された前記材料が冷えて固体化するのを待つ工程と、前記材料が固体化したものである製品から外側金型42を取り外す工程と、第1部分61と第2部分62との境目67から外側に向けてエアブローする工程と、前記製品を内側金型41から取り外す工程とを含む。第1部分61は底壁部13となるべき部位に隣接する部分を占める。第2部分62は、底壁部13となるべき部位から見て第1部分61よりも遠い部分を占める。境目67は、底壁部13となるべき部位から見てスタック段部18となるべき部位よりも遠い位置において、周壁部12となるべき部位に環状に露出するように配置されている。境目67においては、空気が通過可能な程度のわずかな間隙があいている。この間隙の幅は、たとえば10μm以上30μm以下である。溶融した材料は、溶融した樹脂である。外側金型42を取り外す工程は、エアブローする工程より先に行なわれる。エアブローする工程では、図6における矢印91に示すように空気を送り込む。境目67からキャビティ60に噴出した空気のうちのある一部は、矢印92に示すように製品と第1部分61との間に侵入し、製品と第1部分61とを分離させる。境目67からキャビティ60に噴出した空気のうちの他の一部は、矢印93に示すように製品と第2部分62との間に侵入し、製品と第2部分62とを分離させる。エアブローする工程より後で、製品を内側金型41から取り外す工程が行なわれる。
【0025】
このような発泡成形品の製造方法を実施することによって、本実施の形態で説明したような発泡成形品を得ることができる。
【0026】
境目67の位置は、発泡成形容器101の高さ方向の中央とスタック段部18との間である。境目67の位置は、特に、スタック段部18の上面18aの上方15mm以上40mm以下の位置であることが好ましい。
【0027】
本実施の形態においては、発泡成形容器101を得るために、超臨界流体を混入させた溶融樹脂を射出している。この溶融樹脂としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系のうちのいずれかの熱可塑性樹脂が用いられる。特に、プロピレンエチレンブロック共重合体でメルトフローレート(MFR)が40g/10min以上100g/10min以下のものが使用可能である。また、含有させるガスは、窒素ガス、二酸化炭素ガスのいずれかであってよい。窒素ガスの場合は、樹脂材料中に1%以上1.5%以下の比率で含有させればよい。二酸化炭素ガスの場合は、樹脂材料中に2%以上4%以下の比率で含有させればよい。この場合、成形品としては、発泡により3%以上10%以下の軽量化を図ることができる。これにより、使用する樹脂量の削減効果が期待できる。また、このような超臨界流体を混入させた溶融樹脂は、成形時の流動性が良く、上述したような薄肉成形品の成形を実現しながら、本実施の形態における発泡成形品の製造方法により離型不良の問題を解決することができる。
【0028】
本実施の形態で示したように、前記1以上の切欠きは、複数の切欠きであり、前記複数の切欠きは、均等に配置されていることが好ましい。発泡成形容器101においては、図2に明らかに示されているように、複数の切欠き17は、均等に配置されている。この例においては、切欠き17の数は3個であり、切欠き17は120°ピッチで均等に配置されている。切欠き17の配置は必ずしも均等でなくてもよいが、均等に配置されていた方が、金型取外しのためのエアブローの際に、全周にわたって空気を均等に送り込むことができるので、好ましい。なお、切欠き17の数は、1つであってもよい。
【0029】
なお、本実施の形態で示したように、糸尻部30は、外側に向かって張り出して上下方向に延在する糸尻部リブ部32を含むことが好ましい。この構成を採用することにより、容器の下端に至るまで断熱性を確保することができる。
【0030】
本実施の形態で示したように、周壁部12の外側には、外側に向かって張り出して上下方向に延在する周壁部リブ部34が設けられており、周壁部リブ部34と糸尻部リブ部32とは連なっていることが好ましい。この構成を採用することにより、容器の大部分にわたって断熱性を確保することができる。
【0031】
糸尻部リブ部32および周壁部リブ部34の両方に共通してあてはまる好ましい条件について以下に述べる。リブとリブとの間の壁状の部分の厚みは、0.25mm以上0.5mm以下であることが好ましい。すなわち、周壁部12および糸尻部本体31がこの厚みとなることが好ましい。リブ部の半径方向の高さは、高い部分で1.0mm以上2.5mm以下であることが好ましい。容器の上下方向の中央における周方向の間隔は、4.0mm以上8.0mm以下であることが好ましい。個々のリブ部を水平な面で切ったときの断面形状は、三角形であってもよく台形であってもよい。個々のリブ部の厚みは、リブ部の前記断面形状の高さ方向の中央で、たとえば0.5mm以上0.8mm以下であることが好ましい。このようなリブ部によって断熱効果が得られる。ユーザは、リブ部を把持することによって、熱い内容物などの熱が手にあまり伝わらない状態で持つことができる。
【0032】
(実施の形態2)
(構成)
図7図8を参照して、本発明に基づく実施の形態2における発泡成形品について説明する。本実施の形態における発泡成形品は、発泡成形容器102である。発泡成形容器102の斜視図を図7に示す。発泡成形容器102の平面図を図8に示す。
【0033】
発泡成形品としての発泡成形容器102の基本的な構成については、実施の形態1で説明した発泡成形容器101と同様である。発泡成形容器101においては、周壁部12の内側のスタック段部18に3つの切欠き17が設けられていたが、発泡成形容器102においては、切欠き17の数が異なる。発泡成形容器102においては、周壁部12の内側のスタック段部18に6つの切欠き17が設けられている。したがって、スタック段部18は、6つの部分に分割されている。本実施の形態における切欠き17は、実施の形態1の切欠き17に比べて数が増えたが、切欠き17の1つ当りの幅は小さくなっていてもよい。これは、切欠き17の数が多くなったことによりエアブロー時の空気の通りやすさが確保され、切欠き17の1つ当りの幅は小さくても足りるからである。
【0034】
(作用・効果)
本実施の形態においても、実施の形態1で説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0035】
(実施の形態3)
(構成)
図9図10を参照して、本発明に基づく実施の形態3における発泡成形品について説明する。本実施の形態における発泡成形品は、発泡成形容器103である。発泡成形容器103の斜視図を図9に示す。発泡成形容器103の平面図を図10に示す。
【0036】
発泡成形品としての発泡成形容器103の基本的な構成については、実施の形態1で説明した発泡成形容器101と同様である。発泡成形容器101においては、周壁部12の内側のスタック段部18に3つの切欠き17が設けられていたが、発泡成形容器103においては、切欠き17の数が異なる。発泡成形容器103においては、周壁部12の内側のスタック段部18に8つの切欠き17が設けられている。したがって、スタック段部18は、8つの部分に分割されている。
【0037】
(作用・効果)
本実施の形態においても、実施の形態1で説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0038】
なお、上記各実施の形態では、発泡成形容器の外周面にリブがある例を示したが、外周面にリブがない構成であってもよい。
【0039】
ここまで、発泡成形品が発泡成形容器である例について説明してきたが、発泡成形品は、容器に限らない。すなわち、発泡成形品は、内容物を収容することを目的とする物に限らない。発泡成形品は、たとえば何らかのキャップ、何らかのカバーなどであってもよい。発泡成形容器は、超臨界発泡を利用した発泡成形容器であってもよい。
【0040】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
【0041】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0042】
12 周壁部、13 底壁部、14 フランジ部、15 垂下部、17 切欠き、18 スタック段部、18a (スタック段部の)上面、30 糸尻部、31 糸尻部本体、32 糸尻部リブ部、34 周壁部リブ部、41 内側金型、42 外側金型、60 キャビティ、61 第1部分、62 第2部分、63 第3部分、64 第4部分、68 ノズル、91,92,93 矢印、101,101a,101b,102,102a,102b,103,103a,103b 発泡成形容器。
図1
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図10