(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043660
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】ロック機構
(51)【国際特許分類】
E05C 3/40 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
E05C3/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151395
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】鹿釜 稔
(72)【発明者】
【氏名】福田 晴行
(72)【発明者】
【氏名】島本 昌晃
(57)【要約】
【課題】
従来のロック機構と比較して小型な構造を有する技術を提供する。
【解決手段】
上枠に取り付けられた扉10をロックするためのロック機構であって、上枠に固定可能なロック装置102と、扉10に固定可能なロック受け部104とを備え、ロック装置102は、平板状のロック部材106を備え、ロック部材106は、少なくとも相対する二方向からロック受け部104と係合しロック受け部104をロック装置102に対して移動不能にする係合状態と、ロック受け部104との係合が解除される非係合状態との間で、ロック部材106に垂直な軸Y2回りで回転可能である。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に取り付けられた開閉体をロックするためのロック機構であって、
前記躯体に固定可能なロック装置と、
前記開閉体に固定可能なロック受け部とを備え、
前記ロック装置は、平板状のロック部材を備え、
前記ロック部材は、少なくとも相対する二方向から前記ロック受け部と係合し前記ロック受け部を前記ロック装置に対して移動不能にする係合状態と、前記ロック受け部との係合が解除される非係合状態との間で、前記ロック部材に垂直な軸回りで回転可能である、ロック機構。
【請求項2】
相対する二方向は、前記開閉体の開方向及び閉方向であり、
前記ロック部材は、係合状態において閉方向から前記ロック受け部に接触する第1接触部と、開方向から前記ロック受け部に接触する第2接触部とを備え、
前記ロック部材は、前記係合状態から前記非係合状態に回転するとき、前記ロック受け部と接触している前記第1接触部により前記ロック受け部を前記開閉体の開方向に押すと同時に、前記第2接触部が前記ロック受け部から離れるよう回転する、請求項1に記載のロック機構。
【請求項3】
前記ロック受け部は、前記第1接触部が閉方向から接触する第1受け部、及び前記第2接触部が開方向から接触する第2受け部を備える、請求項2に記載のロック機構。
【請求項4】
前記ロック部材は、係合状態にある前記ロック部材を前記軸に沿う方向から見たときに前記ロック部材の中央に向けて凹む凹形状を有し、当該凹形状を定める2つの凸部のうち閉方向側の凸部が前記第1接触部をなし、開方向側の凸部が前記第2接触部をなす、請求項3に記載のロック機構。
【請求項5】
前記第1接触部の開方向側の側面は、係合状態にある前記ロック部材を前記軸に沿う方向から見たときに、開方向に膨らむ曲面により形成されている、請求項4に記載のロック機構。
【請求項6】
前記ロック部材と同一平面に配置され、前記ロック部材の係合状態を保持するロックストップを備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のロック機構。
【請求項7】
前記ロックストップは、前記ロック部材が係合状態にあるときに前記ロック部材と係合し、前記ロック部材が非係合状態に回転するのを阻止する阻止部を備える、請求項6に記載のロック機構。
【請求項8】
前記ロック部材を係合状態から非係合状態に向けて回転するよう付勢する付勢部材を備える、請求項6又は7に記載のロック機構。
【請求項9】
前記ロック部材の係合状態から非係合状態に向けた回転を阻止するよう前記ロックストップを付勢する第2付勢部材を備える、請求項6乃至8のいずれか1項に記載のロック機構。
【請求項10】
前記ロックストップは、前記ロック部材の前記軸と平行な第2軸回りに回転可能に形成されている、請求項6乃至9のいずれか1項に記載のロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生活環境の様々な箇所において、扉やパネル等の開閉体を躯体に対して開閉可能に支持する構造が採用されている。このような構造において、開閉体の閉状態でロックするためのロック機構が知られている。ロック機構としては、利用者がアクセス可能な位置(例えば開閉体の表側)にロック解除部を備え、ロック解除部以外のロック機構本体は利用者が視認できない位置(例えば開閉体の裏側)に設けられているものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
通常、ロック機構本体は、利用者によるロック解除部の操作に応じて各部をタイミング良く駆動させ、部品同士を係合したり係合解除したりする複雑な動作を行わせることで作動する。ロック機構本体の複雑な動作を実現するためには、ロック機構本体を小型化するのは困難であるという側面がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、従来のロック機構と比較して小型な構造を有する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、躯体に取り付けられた開閉体をロックするためのロック機構であって、前記躯体に固定可能なロック装置と、前記開閉体に固定可能なロック受け部とを備え、前記ロック装置は、平板状のロック部材を備え、前記ロック部材は、少なくとも相対する二方向から前記ロック受け部と係合し前記ロック受け部を前記ロック装置に対して移動不能にする係合状態と、前記ロック受け部との係合が解除される非係合状態との間で、前記ロック部材に垂直な軸回りで回転可能であるロック機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態によるロック機構が適用された扉の斜視図である。
【
図2】同ロック機構が適用された扉の斜視図である。
【
図7】同ロック機構のロックストップの上面図である。
【
図9】同ロック機構のベースカバーの上面図である。
【
図10】同ロック機構のロック受け部の上面図である。
【
図11】同ロック機構のロック受け部の斜視図である。
【
図12】同ロック機構の解除つまみの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態について説明する。実施形態では、壁内に設けられた収納の扉にロック機構を適用した例について説明する。ロック機構は、家具、家電、デザインパネル等のコンテンツを壁に着脱可能な形態で取り付けるため、又は収納家具の扉を閉状態でロックするために用いることができる。実施形態の説明では、方向を説明するためにXYZ軸からなる三次元直交座標を用いることがある。X軸は壁面と平行に水平方向に延び、Y軸は壁面と直交する方向に延び、Z軸は上下方向に延びるものとする。X軸は、人が壁に向かい合って立ったときを基準にして、人の正面方向に向けて延びる。また扉の開閉状態を基準にした場合、扉は+X軸側にあるときに閉状態となり、-X軸側にあるときに開状態となる。したがって+X方向は扉の閉方向ということができ、-X方向は扉の開方向ということもできる。Y軸は、人の左側から人の右側に向けて延びる。Z軸は、人の足下側から頭側に向けて延びる。
【0008】
図1及び
図2は、ロック機構が適用された扉の斜視図である。
図3は、
図2のA-A断面における断面図である。
図1は閉状態にある扉を示し、
図2及び
図3は開状態にある扉を示す。
図1乃至
図3に示すように、扉10は、壁12内に設けられた収納14を外部空間から仕切る。扉10は、Y軸に沿って延びる回転軸Y1回りで、閉状態と開状態との間で回転可能に保持される。閉状態では、扉10の-X側を向いた主面と、壁12の-X側を向いた主面とが略面一になっている。開状態では、扉10は壁12から-X方向に飛び出すよう傾斜している。図示の例では、回転軸Y1が扉10の下端に設けられており、扉10の上部が壁の-X方向に倒れ込むようになっている。回転軸Y1を扉10の上端に設け、開状態において扉10の下端が-X方向に飛び出すようにしてもよい。また回転軸Y1を扉10の左端又は右端に設け、開状態において扉10の右端又は左端が主面方向に飛び出すようにしてもよい。
【0009】
開状態において扉10を壁12から取り外せるようにしてもよい。この場合、回転軸Y1と重なる位置に、扉10が閉状態にあるときには互いに係合し、扉10が開状態にあるときには係合状態が解除されるフックとフック受けとを用いればよい。
【0010】
扉10の上端及び扉10を受け入れる開口の上部を定める上枠16には、それぞれロック機構100の一部が設けられている。具体的にはロック機構100は、上枠16(「躯体」に相当)に設けられたロック装置102と、扉10に固定されたロック受け部104とを備える。ロック機構100は、扉10が閉状態にあるときにロック装置102とロック受け部104を係合させて扉10を閉状態で保持する。またロック機構100は、使用者がロック装置102に対して所定の操作を行ったときにロック装置102とロック受け部104との係合を解除する。ロック機構100は、正面視において扉10と、壁12との隙間に、例えば指を差し込んで指で解除つまみ(詳細は後述する)をY軸に沿って移動させるだけで係合状態を解錠可能に構成されている。扉10が閉状態にあるときに、正面視においてロック機構100が露出しているのは実質的に解除つまみだけである。したがって、ロック機構100を正面から視認するのは困難であり、扉10及び壁12の美観を高められる。
【0011】
図4はロック機構の正面図であり、
図5は
図4のB-B断面における断面図である。
図4及び
図5は、係合状態(扉10は閉状態)にあるロック機構100を示す。なお、以下の説明では、特に断りがない限りロック機構100が係合状態にあるものとし、各部を上面視している(つまり+Z側から-Z側を見ている)ものとする。
【0012】
図4及び
図5に示すように、ロック装置102は、上枠16の下面に固定されている。ロック受け部104は、正面視においてロック装置102と隣接する位置(図示の例では-Y側に隣接する位置)に配置されている。ロック受け部104の-X側の端部は扉10の主面に固定されている。
【0013】
ロック装置102は、複数の平板状の金属プレートを積層した構造を有する。ロック装置102を金属プレートの積層構造とすることにより、ロック装置102のZ軸に沿った厚さを薄くできる。ロック装置102は、ロック部材106と、ロックストップ108と、ベース部材110と、ベースカバー112と、解除つまみ114とを備える。ロック部材106、ロックストップ108、ベース部材110、及びベースカバー112は、平板状の金属プレートをそれぞれ所定形状に加工したものであり、Z軸に沿って僅かな隙間をもって積層されている。
【0014】
YZ平面においてロック装置102を見たとき、積層構造の最下層には、ベースカバー112が配置される。ベースカバー112の上には、同一平面上にロック部材106とロックストップ108とが配置される。ロック部材106及びロックストップ108の上には、ベース部材110が配置される。つまり、ロック装置102は、金属プレートの三層構造により形成されている。ロック部材106とロックストップ108とを同一平面上に配置することで、ロック装置102全体の厚みをさらに薄くできる。
【0015】
XY平面においてロック機構100を見たとき、ロック部材106の大部分は、ロックストップ108と、ロック受け部104との間に配置される。図示の例では、ロック部材106の-Y側にロック受け部104が配置され、+Y側にロックストップ108が配置される。
【0016】
図6は、ロック部材の上面図を示す。より具体的には
図6は、ロック機構100(
図3参照)が係合状態にあるときのロック部材106を示す。ロック部材106は、厚さ方向にわたり同一の形状を有する。ロック部材106の-Y側の半部は主にロック受け部104(
図4参照)と作用し、+Y側の半部は主にロックストップ108(
図4参照)と作用する。ロック部材106は、第1接触部118と、第2接触部120と、スライド部122と、受け部124とを備える。ロック部材106は、軸Y2(「ロック部材に垂直な軸」に相当)回りに回転自在にベース部材110に取り付けられている。ロック部材106は、軸Y2と同心に配置されたねじりバネS1により、矢印R1方向(図示の例では反時計周り方向)に付勢されている。ねじりバネS1は、2つのアームA1,A2を有する。一方のアームA1は、ベース部材110に対して固定されており、他方のアームA2は軸Y2回りで回転可能である。ロック部材106の-Y側の半部には、-Y側に向けて開口し、かつロック部材106の中央に向けて凹ませた凹形状126が形成されている。凹形状126を定める2つの凸部のうち、+X側にある凸部が第1接触部118をなし、-X側にある凸部が第2接触部120をなす。つまり、第1接触部118と第2接触部120は、凹形状126を挟むようにX軸に沿って並んで配置されているとも言える。
【0017】
第1接触部118は、ロック部材106の-X側(開方向側)の側面を、-X側に膨らませた曲面により形成されている。第1接触部118は、ロック受け部104の閉方向側の端と接触する。第1接触部118は、ロック受け部104(
図4参照)と点で接触するのがよい。ロック部材106が係合状態から非係合状態に移行する際、第1接触部118はロック受け部104を開方向に押す。第1接触部118を曲面により形成することで、第1接触部118がロック受け部104を押している間、第1接触部118とロック受け部104との接点において第1接触部118がロック受け部104に付与する力の方向を一定に保てる。したがって、第1接触部118は、ロック受け部104との接点よりも少なくとも閉方向側のみが曲面により形成されていればよい。
【0018】
第2接触部120は、凹形状126をなすロック部材106の-X側(開方向側)の側面を、Y軸に沿った平面とすることで形成されている。第2接触部120は、後述するロック受け部104の受け面に、開方向側から接触する。
【0019】
スライド部122は、ロック部材106の-X側の側面を、-X側に膨らませた曲面により形成されている。スライド部122は、軸Y2を中心とした弧形状を有する。図示の例では、スライド部122は約120度の円弧をなしており、第2接触部120と受け部124との間で延びる。スライド部122を円弧形状とすることにより、ロック部材106が係合状態から非係合状態に機構する際、スライド部122がロック受け部104と干渉するのを防げる。また、スライド部122を円弧形状とすることにより、ロック部材106が非係合状態から係合状態に移行する際、ロックストップ108のロック部材106に対する姿勢を一定に保てる。この点についてロック機構100の作用と共に後述する。
【0020】
受け部124は、ロックストップ108(
図4参照)と係合する。受け部124は、ロック部材106の+Y側の側面を中央側に向けて凹ませることで形成されている。受け部124は、略直角の凹みにより形成されている。
【0021】
ロック部材106の中央には、ロック部材106をベース部材(
図4参照)に対して回転可能に保持するねじ(図示せず)を嵌め込むための孔128が設けられている。ここでいう中央とは、ロック部材106に外接する長方形の中央付近をいう。ロック部材106の回転軸となる軸Y2は孔128の中心に位置する。
【0022】
図7は、ロックストップの上面図を示す。
図7に示すようにロックストップ108は、阻止部130と、垂直壁132とを備える。阻止部130は、ロックストップ108の-Y側(ロック部材106が配置されている側)に設けられ、ロック部材106の受け部124(
図6参照)と係合する。阻止部130は、受け部124と相補的な形状を有しており、略直角の凸により形成されている。
【0023】
垂直壁132は、ロックストップ108の+Y側(ロック部材106が配置されている側とは反対側)に設けられている。垂直壁132は、ロック部材106が配置されているXY面から+Z方向に立ち上がる。垂直壁132には、解除つまみ114(
図4参照)が接触する。
【0024】
ロックストップ108には、ロックストップ108をベース部材(
図4参照)に対して回転可能に保持するねじ(図示せず)を嵌め込むための孔134が設けられている。孔134は、阻止部130から離れた位置に設けられているのがよく、この例では孔134はロックストップ108の+X側端部近傍に設けられている。ロックストップ108は、孔134の中心に位置する軸Y3(第2軸に相当)回りに回転する。孔134と阻止部130とを離れた位置に配置することにより、阻止部130がロック部材106に付与する力を増やせる。ロックストップ108は、軸Y3と同心に配置されたねじりバネS2により、矢印R2方向(図示の例では時計周り方向、つまり阻止部130をロック部材106に押し付ける方向)に付勢されている。ねじりバネS2は、2つのアームA3,A4を有する。一方のアームA3は、ベース部材110に対して固定されており、他方のアームA4は軸Y2回りで回転可能である。
【0025】
図8は、ベース部材の上面図を示す。
図4、
図5及び
図8を参照して、ベース部材110は、長方形状のプレートの長手方向両端をクランク状に立ち上げた形状を有する。ベース部材110の両端は、ベース部材110を上枠16に固定するための固定部136,138をなす。固定部136,138は、上枠16の下面と平行に延び、ねじ等の固定手段を用いて上枠16の下面に固定される。固定部136,138の間には、ロック装置102の他の構成部品を支持するための支持部140が設けられている。支持部140には、2つのガイド溝142,144、及び2つの孔146,148が設けられている。ガイド溝142,144には、それぞれねじりバネS1,S2(
図7参照)の自由端(つまりアームA2,A4)が挿入される。これにより、アームA2,A4の移動方向が規制される。孔146,148は、それぞれロック部材106の孔128(
図6参照)及びロックストップ108の孔134(
図7参照)に対応する位置、つまりZ軸に沿って一直線上に設けられている。
【0026】
図9は、ベースカバーの上面図を示す。
図9を参照して、ベースカバー112は、長方形状のプレート形状を有する。ベースカバー112には、2つのガイド溝150,152、及び2つの孔154,156が設けられている。ガイド溝150,152には、それぞれねじりバネS1,S2(
図7参照)の自由端が挿入される。これにより、アームA2,A4の移動方向が規制される。孔154,156は、それぞれロック部材106の孔128(
図6参照)、ロックストップ108の孔134(
図7参照)、及びベース部材110の孔146,148(
図8参照)に対応する位置、つまりZ軸に沿って一直線上に設けられている。孔146、孔128、及び孔154には、単一のねじが挿入され、孔148、孔134、及び孔156には、単一のねじが挿入される。2本のねじは、それぞれ軸Y2上に、及び軸Y3上に配置される。
【0027】
図10はロック受け部の上面図であり、
図11はロック受け部の斜視図である。
図10及び
図11に示すようにロック受け部104は、X軸に沿って長尺な基調形状を有する。ロック受け部104の一端(-X側の端)は、扉10に対して片持ち上枠の形態で扉10に固定される(
図3参照)。ロック受け部104は、基部162と、壁部164と、天井部166と、緩衝部168とを備える。基部162、壁部164、及び天井部166は、一枚の金属プレートを所定形状に曲げ成形した一体構造を有する。基部162は、XY平面と平行な主面を有するプレート形状を有する。壁部164は、基部162の幅方向一端(ロック装置102が設けられていない側の端)において基部162から垂直に+Z方向に延びる。壁部164のX軸方向中間には、開口164bが設けられている。開口164bのX軸に沿った位置及びX軸に沿った長さは、ロック部材106の第2接触部120(
図6参照)の回転軌跡に基づいて決定される。具体的には開口164bを定める壁部164の+Z軸側の面164a(第2受け部に相当)は、ロック部材106が係合状態にあるときに第2接触部120と接触するよう位置決めされる。ロック部材106は、面164aに対して、開方向から接触する。開口164bのZ軸に沿った長さは、ロック部材106が係合状態にあるときに第2接触部120を含むロック部材106の凸部を受け入れることができ、かつロック部材106が非係合状態から係合状態に移行するときにロック部材106と接触しないよう決定される。
【0028】
天井部166は、壁部164の上端から+Y方向に延びる。天井部166と、基部162との間には緩衝部168(第1接触部に相当)が固定されている。緩衝部168は、ロック受け部104の+X方向端部に配置されている。緩衝部168は、ロック部材106が非係合状態から係合状態に移行するときに、ロック部材106に接触する。このときロック部材106は、緩衝部168と接触することで回転力が付与され、回転を始める。緩衝部168は、プラスチック等の比較的硬質な非金属材料により形成されるのがよい。
【0029】
緩衝部168、及び面164aは、互いに異なる方向(X軸に沿って異なる方向)からロック部材106に接触する。緩衝部168とロック部材106との接点と、面164aとロック部材106との接点は、X軸方向において離れた位置にある。つまり、ロック受け部104は、X軸沿って離れた位置で異なる2方向からロック部材106と係合する。図示の例では、2つの接点は、Y軸方向においても離れた位置にある。これはロック受け部104がロック部材106の回転軌跡に干渉しないようにするために導き出された配置である。従って、ロック受け部104とロック部材106の形状によっては、2つの接点をX軸と平行な線上に配置することもできる。
【0030】
図12は、解除つまみの上面図である。
図4、
図5、及び
図12を参照して、解除つまみ114は、把持部170と、基部172と、連結部174とを備える。把持部170は、ロック機構100(
図3参照)の係合状態を解除する際に使用者が把持し、操作する部材である。把持部170は、XY平面と平行な主面を有するプレート状の部材である。把持部170は、扉10と壁12との間から-X方向に突出する。基部172は、Y軸に沿って延びる長方形のプレート状の部材である。基部172は、連結部174を介して把持部170と一体形成されている。基部172の+Y方向側の端部は、ロックストップ108の垂直壁132(
図7参照)と接触可能な高さ位置に設けられている。解除つまみ114は、図示せぬ付勢手段により、-Y方向に付勢されている。係合状態において基部172は、垂直壁132から離れており、使用者が付勢手段に抗して把持部170を+Y方向に移動させたときに垂直壁132と接触する。
【0031】
以下、ロック機構100の作用について説明する。
図13及び
図14は、ロック機構の上面図である。具体的には
図13は、係合状態にあるロック機構100の主要構成部品を示す。
図14は、非係合状態にあるロック機構100の主要構成部品を示す。
【0032】
まず
図13を参照して、ロック機構100を非係合状態から係合状態に移行させる際の一連の動作について説明する。非係合状態では、扉10は開いた状態にあり、ロック受け部104は、ロック装置102からX軸方向に沿って離れた位置にある。また、非係合状態では、ロック部材106は、ねじりバネS1の付勢力により、第1接触部118がロック受け部104と、X軸に平行な直線状に並んでいる。また、非係合状態では、ロックストップ108は、スライド部122によって+Y方向に押し込まれている。非係合状態において使用者が扉10を+X側に押すと、ロック受け部104が+X側に移動する。ロック受け部104が移動する(矢印R3)と、ロック受け部104の緩衝部168と、第1接触部118とが接触する。緩衝部168が第1接触部118と接触すると、緩衝部168の+X側への移動に伴って、ロック部材106が軸Y2回りに、時計方向に回転する(矢印R4)。これによりロック部材106は、スライド部122をロックストップ108に対してスライドさせながら回転する。ロック部材106が回転し続けて受け部104が阻止部130の位置に到達すると、ねじりバネS2の付勢力によりロックストップ108が時計方向に回転し(矢印R5)、阻止部130が受け部104に嵌まる。これと同時にロック部材106の第2接触部120が、面164aに接触する。ロック部材106が回転を開始してから、第2接触部120が面164aに接触するまで、緩衝部168は第1接触部118に接触したままでロック部材106を押し続ける。したがって、阻止部130が受け部104に嵌まったとき、ロック受け部104は、-X方向及び+X方向の相対する二方向(つまり、一つの平面XY内にある反対側を向いた二方向)から、ロック部材106により挟み込まれた状態となる。これにより、ロック受け部104はX軸方向に移動不能になり、扉10は閉じた状態で維持される(
図14に示す状態)。
【0033】
次に
図14を参照して、ロック機構100を係合状態から非係合状態に移行させる際の一連の動作について説明する。係合状態において使用者が解除つまみ114+Y方向に操作すると、解除つまみ114は+Y方向に移動する(矢印R6)。解除つまみ114が移動すると、解除つまみ114は垂直壁132に接触し、ロックストップ108が軸Y3回りに反時計回りに回転する(矢印R7)。ロックストップ108が回転すると、阻止部130が受け部104から退避する(矢印R8)。阻止部130が退避すると、ロック部材106はねじりバネS1の付勢力により反時計周りに回転する(矢印R9)。ロック部材106が回転すると、第1接触部118が緩衝部168を-X方向に押し、これによりロック受け部104が-X方向に押される。これにより扉10は-X方向に押され、開状態になる。
【0034】
以上のように、ロック機構100によれば、扉10を閉状態で保持し、又は開状態にすることができる。このとき、ロック部材106を、相対する二方向からロック受け部104と係合しロック受け部104を係合状態と、非係合状態との間で回転させられる。新規なロック部材106の構成により、ロック装置102を薄い三層構造により実現でき、ロック装置102を小型化できる。
【0035】
またロック部材106が係合状態から非係合状態に移行する際に、ロック部材106が第1接触部118によりロック受け部104を-X方向に押すと同時に、第2接触部120がロック受け部104から離れるよう回転することにより、ロック部材106がロック受け部104の移動に干渉することなく、ロック受け部104を-X方向に押し出せる。
【0036】
またロック受け部104に第1受け部としての面164a及び第2受け部としての緩衝部168を設けることにより、より確実にロック部材106によりロック受け部104を保持できる。
【0037】
またロック部材106に凹形状126を形成し、凹形状126を定める2つの凸部のうちの一方を第1接触部118とし、他方を第2接触部120とすることにより、ロック部材106を1枚のプレートにより実現し構造を単純化できる。
【0038】
また第1接触部118を曲面により形成することで、第1接触部118がロック受け部104を押している間、第1接触部118とロック受け部104との接点において第1接触部118がロック受け部104に付与する力の方向を一定に保てる。
【0039】
また、ロックストップ108をロック部材106と同一平面内に配置することで、ロック装置102を薄型化できる。
【0040】
また、ロックストップ108に阻止部130を設けることにより、ねじりバネS1の付勢力に抗してロック部材106が回転するのを防止できる。
【0041】
また、ロック部材106を係合状態から非係合状態に向けて回転するよう付勢するねじりバネS1を設けることにより、ロックストップ108を退避させたときにロック部材106が自動的に回転してロック受け部104を押すように構成できる。
【0042】
また、ロックストップ108を付勢するねじりバネS2を設けることにより、係合状態においてロックストップ108の阻止部130を受け部124に留めることができる。
【0043】
またロックストップ108の軸Y3を、ロック部材106の軸Y2と平行にすることでロックストップ108及びロック部材106を同一平面内で回転させられ、ロック装置102を薄型化できる。
【符号の説明】
【0044】
100;ロック機構、 102;ロック装置、 104;ロック受け部、 106;ロック部材、 108;ロックストップ、 118;第1接触部、 120;第2接触部、130; 阻止部、 168;緩衝部