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特開2023-43668電界効果トランジスタおよび電界効果トランジスタの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043668
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】電界効果トランジスタおよび電界効果トランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230322BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230322BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 301G
H01L29/78 301V
H01L29/78 301F
H01L29/78 301D
H01L29/78 653C
H01L29/78 652M
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/78 652P
H01L29/78 658F
H01L29/78 658G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151414
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】520366927
【氏名又は名称】ウィル セミコンダクター (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】松浦 伸悌
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AA24
5F140AC23
5F140BC15
5F140BD02
5F140BD05
5F140BD07
5F140BD10
5F140BD18
5F140BE07
5F140BE10
5F140BF04
5F140BF43
5F140BF45
5F140BF46
5F140BH25
5F140BH30
5F140BJ03
(57)【要約】
【課題】ゲート・ソース間リーク電流を低減する。
【解決手段】トレンチタイプFETであって、窒化絶縁層Nの外周側から上方に伸ばした線より内側の酸化絶縁層O1の厚みΔ1は、窒化絶縁層Nの厚みdの1/2以上であり、窒化絶縁層Nの上端と、ゲート領域との間の酸化絶縁層O3の厚みΔ2は、窒化絶縁層Nの厚みdの1/2以上である。
【選択図】図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果トランジスタであって、
半導体基板に形成されたトレンチと、
前記トレンチ内に収容される酸化絶縁層と、
前記酸化絶縁層中の下部に配置されるシールドゲート領域と、
前記酸化絶縁層中の前記シールドゲート領域の上方に間隔をあけて配置されるゲート領域と、
前記酸化絶縁層中であって、前記シールドゲート領域の側方の周囲および底部を、間隔をあけて覆うように配置される窒化絶縁層と、
を有し、
前記窒化絶縁層の外周側から上方に伸ばした線より内側の前記酸化絶縁層の厚みは、前記窒化絶縁層の厚みの1/2以上、または前記窒化絶縁層の上端と、前記ゲート領域との間の前記酸化絶縁層の厚みは、前記窒化絶縁層の厚みの1/2以上である、
電界効果トランジスタ。
【請求項2】
電界効果トランジスタであって、
半導体基板に形成されたトレンチと、
前記トレンチ内に収容される酸化絶縁層と、
前記酸化絶縁層中の下部に配置されるシールドゲート領域と、
前記酸化絶縁層中の前記シールドゲート領域の上方に間隔をあけて配置されるゲート領域と、
前記酸化絶縁層中であって、前記シールドゲート領域の側方の周囲および底部を、間隔をあけて覆うように配置される窒化絶縁層と、
を有し、
前記窒化絶縁層の上端と、前記ゲート領域との間の前記酸化絶縁層の厚みは、所定の厚み以上であって、前記窒化絶縁層の上端の上方の酸化絶縁層の表面は凸形状を有する、
電界効果トランジスタ。
【請求項3】
電界効果トランジスタの製造方法であって、
半導体基板にトレンチを形成し、
前記トレンチ内に第1酸化絶縁層を堆積し、
前記酸化絶縁層上に窒化絶縁層を堆積し、
前記窒化絶縁層上に第2酸化絶縁層を堆積し、
前記第2酸化絶縁層の内側であって、前記トレンチ内の下部にシールドゲート領域を形成し、
前記シールドゲート領域の上方に中間絶縁層を堆積し、
前記トレンチ内の上部において第2酸化絶縁層を除去して前記窒化絶縁層を露出し、
前記トレンチ内の上部の前記窒化絶縁層を除去し、前記中間絶縁層と前記第1酸化絶縁層の間に、前記窒化絶縁層を除去したことによる、前記窒化絶縁層の厚みに対応する幅を有する凹部を形成し、
前記窒化絶縁層を除去して露出された第1酸化絶縁層および前記中間絶縁層上に第3酸化絶縁層を堆積するとともに、この際に、前記第3酸化絶縁層の形成する厚みを前記窒化絶縁層の厚みの1/2以上とすることによって、前記凹部を埋めてその部分の表面について平面又は上方に向けて凸状とし、
前記酸化絶縁層の内側であって、前記トレンチの上部にゲート領域を形成する、
電界効果トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電界効果トランジスタ、特にシールドゲートトレンチタイプFETに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートランジスタとして、電界効果トランジスタ(FET: field-effect transistor)が広く使用されており、その1つとして、シールドゲートトレンチタイプFETがある。なお、FETは、通常MOSFET(金属酸化半導体電界効果トランジスタ:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
【0003】
このシールドゲートトレンチタイプFETは、半導体基板に形成したトレンチ内にゲート領域(ゲート電極)を配置する縦型のトレンチタイプFETの1種であり、トレンチ内にゲート領域とは別のシールドゲート領域(シールドゲート電極)を設ける。
【0004】
シールドゲートトレンチタイプFETは、通常のトレンチタイプFETに比べ、ドレイン・ソース間のオン抵抗を低減でき、またゲートおよびゲート・ドレイン間容量の低減できるなどのメリットがあるといわれている(先行技術文献1参照)。
【0005】
ここで、シールドゲートトレンチタイプFETにおいては、トレンチの内側の酸化絶縁層(SiO:以下SiO2、酸化シリコンとも表記する)として、トレンチの内壁に熱酸化絶縁層を形成する場合が多い。そして、この場合に、熱酸化絶縁層の後工程での成長を抑制するために、熱酸化絶縁層の内側に窒化絶縁層(以下、SiN:窒化シリコンとも表記する)を形成することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009-505403号公報
【特許文献2】特開2010-537428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、シールドゲートトレンチタイプFETでは、トレンチ内下部の酸化絶縁層内にシールドゲート領域を形成した後に、その上方に比較的厚い酸化絶縁層を介在させてゲート領域を形成する。なお、ゲート・シールドゲート間の酸化絶縁層は、ゲート領域およびシールドゲート領域が通常ポリシリコンで形成されるため、インターポリ酸化絶縁層:IPOと呼ばれる。
【0008】
ゲート領域の形成は、トレンチ内のシールドゲート領域の上方の酸化絶縁層を除去した後にトレンチ内上部の窒化絶縁層を除去し、トレンチ内壁の酸化層を露出した状態で行われる。窒化絶縁層の除去を確実に行うことから、窒化絶縁層の上端は周辺の酸化絶縁層の上面より下に位置することになり、酸化絶縁層の表面に凹部が発生する。
【0009】
上部の窒化絶縁層を除去した後、例えばCVD(chemical vapor deposition)により酸化物を堆積し、ゲート側方の酸化絶縁層の層厚を調整するが、CVDによる酸化絶縁層により、窒化絶縁層除去に伴い発生する凹部が十分埋められず、ここに凹部が残る場合がある。CVDによる酸化絶縁層の形成後、トレンチ内の上部空間にはゲート領域が形成されるが、上述の窒化絶縁層除去後の凹部がゲート領域の突起部となる。ゲート領域に突起があると、ここにおいて電界の集中を起こしやすく、ゲート・ソース間のリーク電流が大きくなってしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、電界効果トランジスタであって、半導体基板に形成されたトレンチと、前記トレンチ内に収容される酸化絶縁層と、前記酸化絶縁層中の下部に配置されるシールドゲート領域と、前記酸化絶縁層中の前記シールドゲート領域の上方に間隔をあけて配置されるゲート領域と、前記酸化絶縁層中であって、前記シールドゲート領域の側方の周囲および底部を、間隔をあけて覆うように配置される窒化絶縁層と、を有し、前記窒化絶縁層の外周側から上方に伸ばした線より内側の前記酸化絶縁層の厚みは、前記窒化絶縁層の厚みの1/2以上、または前記窒化絶縁層の上端と、前記ゲート領域との間の前記酸化絶縁層の厚みは、前記窒化絶縁層の厚みの1/2以上である。
【0011】
また、電界効果トランジスタであって、半導体基板に形成されたトレンチと、前記トレンチ内に収容される酸化絶縁層と、前記酸化絶縁層中の下部に配置されるシールドゲート領域と、前記酸化絶縁層中の前記シールドゲート領域の上方に間隔をあけて配置されるゲート領域と、前記酸化絶縁層中であって、前記シールドゲート領域の側方の周囲および底部を、間隔をあけて覆うように配置される窒化絶縁層と、を有し、前記窒化絶縁層の上端と、前記ゲート領域との間の前記酸化絶縁層の厚みは、所定の厚み以上であって、前記窒化絶縁層の上端の上方の酸化絶縁層の表面は凸形状を有する。
【0012】
本開示は、電界効果トランジスタの製造方法であって、半導体基板にトレンチを形成し、前記トレンチ内に第1酸化絶縁層を堆積し、前記酸化絶縁層上に窒化絶縁層を堆積し、前記窒化絶縁層上に第2酸化絶縁層を堆積し、前記第2酸化絶縁層の内側であって、前記トレンチ内の下部にシールドゲート領域を形成し、前記シールドゲート領域の上方に中間絶縁層を堆積し、前記トレンチ内の上部において第2酸化絶縁層を除去して前記窒化絶縁層を露出し、前記トレンチ内の上部の前記窒化絶縁層を除去し、前記中間絶縁層と前記第1酸化絶縁層の間に、前記窒化絶縁層を除去したことによる、前記窒化絶縁層の厚みに対応する幅を有する凹部を形成し、前記窒化絶縁層を除去して露出された第1酸化絶縁層および前記中間絶縁層上に第3酸化絶縁層を堆積するとともに、この際に、前記第3酸化絶縁層の形成する厚みを前記窒化絶縁層の厚みの1/2以上とすることによって、前記凹部を埋めてその部分の表面について平面又は上方に向けて凸状とし、前記酸化絶縁層の内側であって、前記トレンチの上部にゲート領域を形成する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、窒化絶縁層の除去に伴う凹部の穴埋めを行い、ゲート領域による電界の集中を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る電界効果トランジスタ(シールドゲートトレンチタイプFET(nチャネル))の構造を模式的に示す図である。
図2A】本実施形態に係るシールドゲートタイプFETの製造方法(トレンチの形成)を示す図である。
図2B】本実施形態に係るシールドゲートタイプFETの製造方法(ポリシリコン52の充填)を示す図である。
図2C】本実施形態に係るシールドゲートタイプFETの製造方法(シールドゲート領域34の形成)を示す図である。
図2D】本実施形態に係るシールドゲートタイプFETの製造方法(酸化絶縁層O3の形成)を示す図である。
図3A】本実施形態に係るシールドゲートタイプFETの製造方法(酸化絶縁層O1の除去)を示す図である。
図3B】本実施形態に係るシールドゲートタイプFETの製造方法(窒化絶縁層Nの除去)を示す図である。
図3C】本実施形態に係るシールドゲートタイプFETの製造方法(CVDによる凹部の穴埋め)を示す図である。
図3D】本実施形態に係るシールドゲートタイプFETの製造方法(ゲート領域用ポリシリコン54の形成)を示す図である。
図4A】比較例におけるシールドゲートタイプFETの製造方法(酸化絶縁層O1の除去)を示す図である。
図4B】比較例におけるシールドゲートタイプFETの製造方法(窒化絶縁層Nの除去)を示す図である。
図4C】比較例における凹部の穴埋めを示す図である。
図5】比較例における電界の集中を示す図である。
図6A】本実施形態における窒化絶縁層Nの除去を示す図である。
図6B】本実施形態における凹部の穴埋めを示す図である。
図7】本実施形態における電界の集中を示す図である。
図8】本実施形態におけるCVDによる酸化絶縁層の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示に係る実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本開示は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0016】
「シールドゲートトレンチタイプFETの構成」
図1は、本実施形態に係る電界効果トランジスタ(シールドゲートトレンチタイプFET(nチャネル))の構造を模式的に示す図である。
【0017】
半導体基板10には、その表面から内方に向けて縦穴形状のトレンチ12が形成される。本実施形態において、半導体基板10は、シリコン(Si)基板である。
【0018】
半導体基板10の裏面側には、n+領域であるドレイン領域14が形成され、ドレイン領域14の上方にn領域16が形成される。この例では、トレンチ12の下部は、表面側からこのn領域16内にまで伸びている。なお、n領域16とn+領域20の境界にまでトレンチ12の下部が達してもよい。
【0019】
トレンチ12の外側のn領域16上方には、p領域18が形成され、その上方にn+領域であるソース領域20が形成されている。トレンチ12の上部がp領域18およびソース領域20の内側に位置する。
【0020】
また、この例では、ソース領域20の側方(トレンチ12から遠い側)には、半導体基板10の内方に向けてトレンチ12と平行に伸び、p領域18内で終端する、導電性の導電部22が形成される。この導電部22の下端とp領域18との間には側方および底部がp領域18に取り囲まれたp+領域24が形成され、このp+領域24により、p領域18をソース(グランド)接続する。なお、導電部22はp領域18とn領域16の境界にまで達し、p+領域24はp領域18に取り囲まれておらず、p+領域24の下部はn領域16であってもよい。
【0021】
トレンチ12内には、絶縁性のSiO2から形成される酸化絶縁層30が充填され、この酸化絶縁層30はトレンチ12の上方まで至り、そこからソース領域20の上方にまで所定の厚みで広がっている。酸化絶縁層30について、ゲート領域32の周辺の酸化絶縁層30を、酸化絶縁層30a、ゲート領域32の上方の酸化絶縁層30を酸化絶縁層30dという。
【0022】
そして、トレンチ12内の上部の酸化絶縁層30の内部にゲート領域32が配置され、ゲート領域32の下方のトレンチ12の下部の酸化絶縁層30内には、シールドゲート領域34が配置される。このゲート領域32およびシールドゲート領域34は導電性のポリシリコンで形成されている。
【0023】
ゲート領域32およびシールドゲート領域34の周辺の酸化絶縁層30は、例えば熱酸化シリコンやCVD(Chemical Vaper Deposition)の酸化シリコンで形成される。
【0024】
ここで、本実施形態では、トレンチ12内のシールドゲート領域34の外側(側方および下方)について、酸化絶縁層30中に絶縁性の窒化絶縁層40を配置したONO構造を有する。すなわち、外側から酸化絶縁層(SiO2)30b/窒化絶縁層(SiN)40/酸化絶縁層(SiO2)30cという構造になっている。なお、ONO構造をとるにより、熱酸化を防止するための窒化絶縁層を別途形成することが不要になり、製造工程を簡略化することができる。
【0025】
また、シールドゲート領域34とゲート領域32との間には、比較的厚い酸化絶縁層30eが配置されている。この酸化絶縁層30eは、ポリシリコンで形成されるシールドゲート領域34とゲート領域32の間に位置するので、インターポリ酸化絶縁層(IPO)と呼ばれる。なお、本明細書では、ゲート・シールドゲート間の酸化絶縁層30eを、中間絶縁層という。
【0026】
このようなシールドゲートタイプFET(nチャネル)において、ソース領域20とドレイン領域14間に所定の電圧を印加した状態で、ゲート領域32に正の電圧を印加すると、発生する電界によりゲート領域32の周辺のp領域18に縦方向のチャネルが形成され、ソース・ドレイン間が導通されて電流が流れる。なお、シールドゲート領域34は、ゲート領域32またはソース領域20に電気的に接続されるとよい。
【0027】
シールドゲートタイプFETでは、ゲート領域32に加えシールドゲート領域34を有する。シールドゲート領域34はソースに接続されるため、ドレインソース間への電圧印加時にp領域18からだけではなく、ONO構造30bの側面からも空乏層が広がり、トレンチ12-トレンチ12間のn領域16を素早く空乏化できる。その結果、ゲート-ドレイン間の容量を低減することが可能となり、高速スイッチング・スイッチング損失低減が可能となりる。
【0028】
「製造方法」
次に、本実施形態に係る電界効果トランジスタ(シールドゲートタイプFET)の製造方法について、図2A図2D図3A図3Dを参照して説明する。
【0029】
半導体基板10に対する、フォトリソグラフィ―(フォトレジストの堆積、露光、現像、エッチングなどの工程を含む処理)によって、トレンチ12を表面から内方に向けての縦穴として形成する(図2A)。
すなわち、表面に酸化膜50が形成された半導体基板10について、フォトレジストを用いて酸化膜50をエッチングし、フォトレジストを除去後、酸化膜50をマスクに半導体基板をエッチング(Siエッチング)してトレンチ12を形成する。図においては、酸化膜50がトレンチ12の上方周辺の半導体基板10の表面上に残留している。
【0030】
酸化膜50を除去した後、トレンチ12の内壁および上部周辺に第1酸化絶縁層(SiO2)O1、窒化絶縁層(SiN)N(40)、第2酸化絶縁層(SiO2)O2(30c)をこの順番で形成し、その内部および上部にポリシリコン52を形成する(図2B)。なお、外側酸化絶縁層O1を第1酸化絶縁層といい、通常熱酸化で形成され、これが図1の酸化絶縁層30bに対応する。窒化絶縁層Nは、後に上部が除去され、図1の窒化絶縁層40となる。第2酸化絶縁層O2は、CVDなどで堆積され、図1の酸化絶縁層30cとなる。
【0031】
次に、ポリシリコン52を、所定の高さまでエッチバックして、シールドゲート領域34に対応する形に整形する(図2C)。
【0032】
シールドゲート領域34の上方および上部側壁の酸化層O2上と、シールドゲート領域34の上方にIPO(酸化絶縁層30e)となる酸化絶縁層O3を形成する(図2D)。
【0033】
シールドゲート領域34の上方に所定量の酸化絶縁層O3(30e)を残し、トレンチ12内上部の窒化絶縁層40の内側の酸化絶縁層O2、O3(側壁)を除去し、この部分の窒化絶縁層Nを露出する(図3A)。
【0034】
露出した部分の窒化絶縁層Nをエッチングによって除去し(図3B)、残った下部を窒化絶縁層40とする。ここで、除去対象の窒化絶縁層Nの除去を確実に行うため、その残った窒化絶縁層40の上端は、周辺の酸化絶縁層O3の表面に対し凹み、凹部60が形成される。
【0035】
後でゲート領域32を形成する部分の側壁となる、酸化絶縁層30aの厚みを適切なものとするために、CVDにより酸化絶縁層O3を追加堆積する(図3C)。本実施形態では、このときに窒化絶縁層Nの除去によって生じた凹部60を十分埋める。酸化絶縁層O3の表面は凸形状となる。そして、ゲート領域32用のポリシリコン54を堆積する(図3D)。
【0036】
この後、ポリシリコン54をエッチバックして所定の大きさに整形し、これをゲート領域32とし、さらにその上に酸化絶縁層を堆積する。その後、ソースなどを形成し、シールドゲートトレンチタイプFETを形成する。
【0037】
「窒化絶縁層の除去」
図4A図4Cには、ここで、従来手法(比較例)による、窒化絶縁層40の除去からその後の酸化絶縁層O3の形成の状態を示してある(図3A図3Cに対応)。
【0038】
このように、窒化絶縁層Nを除去した後に形成された凹部60について、その後のCVDによる酸化絶縁層(第3酸化絶縁層という)形成によって十分穴埋めできず、凹部が残留する。
【0039】
すなわち、ゲート領域32を形成する前に、ゲート領域32の形成のために酸化絶縁層(SiO2)をエッチングし、次に窒化絶縁層Nをエッチングする。これによって、窒化絶縁層Nの上端の上に凹部60が形成される。その後のCVDによる追加の酸化絶縁層O3の形成においては、その層厚は所望のゲート酸化層の層厚を適切なものに調整するため十分に厚くはなく、窒化絶縁層N上端の凹部60は十分には埋まらない。そのため、シールドゲート領域34の上方に存在する酸化絶縁層O3(IPO)の上にゲート領域32を形成した際に、窒化絶縁層40上にゲート領域32の下向きの突起部が生じる。
【0040】
ゲート領域32への電圧印加時には、このゲート領域32の突起部に電界の集中が起こり、リーク電流が増加する。
【0041】
図5は、CVDによる酸化絶縁層30の追加形成によっても凹部が残留した場合における電界強度を示す模式図であり、黒塗りの部分が電界強度の大きな部分である。このように、ゲート領域32の突出部に対向する酸化絶縁層30の薄い部分において、電界強度大きな部分が発生する。従って、この部分に電流が流れやすく、ゲート・ソース間のリーク電流が増加しやすい。
【0042】
図6A図6Bは、本実施形態による、窒化絶縁層40の除去からその後の酸化絶縁層の形成の状態を示してある(図3(a)~図3(c)に対応)。このように、CVDによる酸化絶縁層を所定厚み以上に厚く形成することで、窒化絶縁層N(40)の除去に伴う凹部を埋め戻し、ここの表面を凸形状にして、酸化絶縁層O3における凹部の形成を防止する。
【0043】
特に、図6(b)に示す、側壁の酸化絶縁層の厚みΔ1を、窒化絶縁層の厚みdの1/2倍以上(Δ1≧d/2)、窒化絶縁層40からゲート領域32までの酸化絶縁層O3(30e)の厚みΔ2を窒化絶縁層の厚みdの1/2倍以上(Δ2≧d/2)とする。
【0044】
これによって、酸化絶縁層O3(30e)の周辺部の凹みはなくなり、従ってゲート領域32の突出部もなくなり、図7に示すように、電界の集中を避けることができる。
【0045】
窒化絶縁層40の除去に伴う凹部の幅は、窒化絶縁層40の厚みdに応じたものである。そして、CVDによる酸化絶縁層は、凹部の側壁、底面の表面上に堆積する。厚みd/2の酸化絶縁層が側壁に堆積すれば、凹部は埋まるはずである。従って、Δ1≧d/2の条件を満たせば、凹部は埋まるはずであり、これに底面への堆積を合わせれば、凹部を埋めた以上の酸化絶縁層の堆積が見込まれる。
【0046】
そして、Δ2≧d/2を満足すれば、電界の集中を確実に避けることが可能になる。
【0047】
ここで、Δ1≧d/2またはΔ2≧d/2のいずれかを満足することで、電界の集中を避けることが可能であるが、両方を満足することでより効果がある。
なお、トレンチ内のゲート領域の外側(側壁)の酸化絶縁層の厚みを適切なものに維持するために、窒化絶縁層の外側の酸化絶縁層を比較的薄くしておき、CVDによる厚い絶縁層の形成によってもゲート領域の側方の絶縁層の厚みを適切なものに維持することが好ましい。
【0048】
すなわち、図8に示すように、トレンチ12の内壁には、熱酸化による酸化絶縁層30bが形成されている。これは、トレンチ12の内壁から窒化絶縁層40までの厚さとなっている。そして、窒化絶縁層40の上方および内側の酸化絶縁層30eの上にCVDの酸化絶縁層30fが形成される。そして、この例においては、酸化絶縁層30bの厚みを通常に比べ薄くしておく。これによって、CVDによる酸化絶縁層30fを比較的厚めにしても、トレンチ12の内壁から内側の酸化絶縁層30b,30fを合わせた厚さDを目的とする厚さにすることができる。
【0049】
「実施形態の効果」
本実施形態に係るシールドゲートトレンチタイプFETによれば、シールドゲート領域34の周辺の酸化絶縁層30について、ONO(酸化絶縁層/窒化物層/酸化絶縁層)の三層構造とするが、IPOの周辺部における窒化絶縁層の除去に伴い発生する凹部をCVDにより酸化絶縁層によって十分埋めることができる。そこで、ゲート領域に突起部が生じることを防止して、リーク電流の発生を効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 半導体基板、12 トレンチ、14 ドレイン領域、16 n領域、18 p領域、20 ソース領域、22 導電部、24 p+領域、30 酸化絶縁層、32 ゲート領域、34 シールドゲート領域、40 窒化絶縁層。


図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8