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特開2023-436785-スルホイソフタル酸・4水和物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043678
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】5-スルホイソフタル酸・4水和物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 309/58 20060101AFI20230322BHJP
   C07C 303/44 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C07C309/58 CSP
C07C303/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151428
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】391010895
【氏名又は名称】小西化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】乾 貴信
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AD15
4H006BB31
4H006BC51
(57)【要約】
【課題】不純物としての硫酸含有量が低減されているとともに、硫酸含有量を低減するために使用される物質が不純物として残留するという問題がない、5-スルホイソフタル酸及びその製造方法を提供する。
【解決手段】粗5-スルホイソフタル酸を、水を使用する特定の方法で精製する工程を含む製造方法により得られる5-スルホイソフタル酸・4水和物及びその製造方法により前記課題を解決する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-スルホイソフタル酸・4水和物。
【請求項2】
請求項1に記載の5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶。
【請求項3】
結晶の空間群がP-1(ここで、「-」は1のオーバーラインを示す)であり、単位格子の格子定数がa=7.139(2)Å、b=9.490(3)Å、c=10.535(3)Åであり、α=70.999(7)°、β=77.158(7)°、γ=85.530(8)°である、請求項2に記載の5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶。
【請求項4】
硫酸含有量が2.0質量%以下である、請求項2又は3に記載の5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶。
【請求項5】
5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を、水で懸濁又は晶析する工程を含む、5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法。
【請求項6】
5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を、水で懸濁した懸濁液を、34℃以下で5分以上保温する工程を含む、請求項5に記載の5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法。
【請求項7】
5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を、水に34℃~104℃の温度で溶解させる工程と、
前記工程で得られた水溶液を冷却する工程と、
前記水溶液が38℃以下で、且つ、過飽和又は結晶が析出した状態であるときに、5-スルホイソフタル酸・4水和物の種晶を加えて晶析させることにより、5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を得る工程と、を含む、請求項5に記載の5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は5-スルホイソフタル酸・4水和物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5-スルホイソフタル酸は、一般に、例えば、イソフタル酸に発煙硫酸等を反応させて、イソフタル酸をスルホン化することにより得られる(例えば、特許文献1~3)。このため、5-スルホイソフタル酸には、硫酸が不純物として含まれる(例えば、非特許文献1、特許文献2、3)。
【0003】
例えば、非特許文献1には、5-スルホイソフタル酸に対して3重量%の硫酸が含まれることが記載されている。特許文献2には、30%~40%の硫酸溶液を利用した生成物の沈殿工程を有する5-スルホイソフタル酸の製造方法の結果、当該5-スルホイソフタル酸から得られる5-スルホイソフタル酸・モノリチウム塩における硫酸塩のレベルが、1000ppm~3000ppmであることが記載されている。そして、硫酸塩のレベルを低減するために、酢酸、水、リチウムカチオン生成化合物及び5-スルホイソフタル酸を混合し、加熱することが記載されている。また、特許文献3には、従来5-スルホイソフタル酸から不純物である硫酸を除去することが困難であったこと、及び、粗5-スルホイソフタル酸を、脂肪族ケトン及び/又は脂環式ケトンを含む有機溶剤と混合して撹拌し、その後有機溶剤から固液分離により5-スルホイソフタル酸を分離することにより、硫酸含有量を低減することができたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-331527号公報
【特許文献2】特表2013-508377号公報
【特許文献3】独国特許出願公開DE2804330A1公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Zhurnal Strukturnoi Khimii 1989,30(3),174.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような従来技術は、硫酸含有量を低減するために、酢酸とリチウム塩、又は有機溶剤を使用することから、これらが不純物として残留するという問題がある。
【0007】
本発明の一態様は、不純物としての硫酸含有量が低減されているとともに、硫酸含有量を低減するために使用される物質が不純物として残留するという問題がない、5-スルホイソフタル酸及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、粗5-スルホイソフタル酸を、水を使用する特定の方法で精製したところ、驚くべきことに、酢酸又は有機溶剤を使用せずとも硫酸含有量を低減することができることを見出した。さらに、X線結晶構造解析により、得られた5-スルホイソフタル酸がこれまで知られていなかった新規な5-スルホイソフタル酸・4水和物であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の態様を含む。
【0009】
〔1〕5-スルホイソフタル酸・4水和物。
【0010】
〔2〕〔1〕に記載の5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶。
【0011】
〔3〕結晶の空間群がP-1(ここで、「-」は1のオーバーラインを示す)であり、単位格子の格子定数がa=7.139(2)Å、b=9.490(3)Å、c=10.535(3)Åであり、α=70.999(7)°、β=77.158(7)°、γ=85.530(8)°である、〔2〕に記載の5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶。
【0012】
〔4〕硫酸含有量が2.0質量%以下である、〔2〕又は〔3〕に記載の5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶。
【0013】
〔5〕5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を、水で懸濁又は晶析する工程を含む、5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法。
【0014】
〔6〕5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を、水で懸濁した懸濁液を、34℃以下で5分以上保温する工程を含む、〔5〕に記載の5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法。
【0015】
〔7〕5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を、水に34℃~104℃の温度で溶解させる工程と、前記工程で得られた水溶液を冷却する工程と、前記水溶液が38℃以下で、且つ、過飽和又は結晶が析出した状態であるときに、5-スルホイソフタル酸・4水和物の種晶を加えて晶析させることにより、5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を得る工程と、を含む、〔5〕に記載の5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、不純物としての硫酸含有量が低減されているとともに、硫酸含有量を低減するために使用される物質が不純物として残留するという問題がない、5-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸の結晶及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例1で得られた5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の粉末X線回折パターンを示す図である。
図2図2は、実施例2で得られた5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の粉末X線回折パターンを示す図である。
図3図3は、実施例2で得られた5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の単結晶X線構造解析で得られたORTEP図である。
図4図4は、実施例2で得られた5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の単結晶X線構造解析で得られた分子パッキング図である。
図5図5は、実施例2で得られた5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の熱重量測定の結果を示す図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法の一例を示す図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法の一例を示す図である。
図8図8は、比較例1で得られた5-スルホイソフタル酸・1水和物の結晶の粉末X線回折パターンを示す図である。
図9図9は、比較例1で得られた5-スルホイソフタル酸・1水和物の結晶の単結晶X線構造解析で得られたORTEP図である。
図10図10は、比較例1で得られた5-スルホイソフタル酸・1水和物の結晶の単結晶X線構造解析で得られた分子パッキング図である。
図11図11は、比較例1で得られた5-スルホイソフタル酸・1水和物の結晶の熱重量測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔1〕5-スルホイソフタル酸・4水和物
本発明者は、粗5-スルホイソフタル酸を、水で懸濁又は晶析する特定の方法で精製したところ、硫酸含有量が低減した結晶が得られることを見出した。さらに、当該結晶のX線結晶構造解析により、得られた5-スルホイソフタル酸がこれまで知られていなかった新規な5-スルホイソフタル酸・4水和物であることを見出した。すなわち、本発明の一態様は、5-スルホイソフタル酸・4水和物である。また、本発明の他の実施形態は、5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶である。
【0019】
本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物における、5-スルホイソフタル酸純度は、好ましくは62質量%~78質量%、より好ましくは67質量%~78質量%、さらに好ましくは73質量%~77質量%である。なお、ここで「5-スルホイソフタル酸純度」とは、結晶中に含まれる5-スルホイソフタル酸(結晶水を除く)の純度を意味し、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0020】
本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物における、硫酸含有量は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。従来、5-スルホイソフタル酸を原料として製造される5-スルホイソフタル酸の金属塩及び5-スルホイソフタル酸エステル等のポリマー添加剤としての用途等において、不純物として含まれる硫酸が問題となっていた。5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶における硫酸含有量が低減されていることにより、5-スルホイソフタル酸金属塩及び5-スルホイソフタル酸エステル等に含まれる硫酸の問題を解決することができる。なお、ここで「硫酸含有量」とは、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0021】
本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物を水に溶かして得た、5-スルホイソフタル酸の濃度が50質量%の水溶液のハーゼン単位色数は、好ましくは、200以下、より好ましくは180以下、さらに好ましくは160以下である。前記ハーゼン単位色数の下限は10である。前記ハーゼン単位色数が、200以下であることにより、結晶の着色を低減することができる。それゆえ、5-スルホイソフタル酸及びこれを原料とする工業製品の着色の原因となる不純物を低減することができるという効果を奏する。なお、ここで「ハーゼン単位色数」とは、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0022】
本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の平均粒径は、好ましくは50μm~2500μm、より好ましくは100μm~2000μm、さらに好ましくは150μm~1600μmである。平均粒径が上記範囲内であることにより、ろ過性が向上する。また、結晶への母液の付着が低減することにより5-スルホイソフタル酸の品質が向上するという効果を奏する。なお、ここで、結晶の「平均粒径」とは、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0023】
本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶は、空間群がP-1(ここで、「-」は1のオーバーラインを示す)であり、単位格子の格子定数がa=7.139(2)Å、b=9.490(3)Å、c=10.535(3)Åであり、α=70.999(7)°、β=77.158(7)°、γ=85.530(8)°であり得る。ここで、上記括弧内に記載する数値は標準偏差を示す。
【0024】
本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶は、粉末X線回折スペクトルにおいて、下記の2θ角:18.2±0.2°、20.3±0.2°、24.7±0.2°、27.4±0.2°、30.5±0.2°、32.0±0.2°に特徴的ピークを有する。
【0025】
本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の形状は、柱状晶であり得る。
【0026】
本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶は、熱重量測定(TG)の結果では、27℃付近及び49℃付近から吸熱開始するピークで、5-スルホイソフタル酸に対して水分子3当量分の質量減少を示し、142℃付近から吸熱開始するピークで、5-スルホイソフタル酸に対して水分子1当量分の質量減少を示す。なお、本明細書において、「付近」とは±5℃を意味する。
【0027】
〔2〕5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法
本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物又はその結晶は、5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を、水で懸濁又は晶析することにより製造することができる。よって、本発明には、5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を、水で懸濁又は晶析する工程を含む、5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法も含まれる。
【0028】
水で懸濁又は晶析する工程を含む前記製造方法によれば、酢酸とリチウム塩、又は有機溶剤等を使用することなく、硫酸含有量が低減された5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を得ることができる。それゆえ、酢酸とリチウム塩、又は有機溶剤等が不純物として残留するという問題がない。さらに、有機溶剤を使用しないことから、環境への負荷を低減することができ、これにより、例えば、目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」等の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0029】
〔2.1〕水で懸濁する工程を含む製造方法
本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法は、5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を、水で懸濁した懸濁液を、34℃以下で5分以上保温する工程を含んでいればよい。
【0030】
5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物とは、5-スルホイソフタル酸の合成により得られる粗製物であり、通常5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む。前記粗製物は、一旦結晶(粗結晶)として取り出したものを使用することが好ましい。
【0031】
図6に、本実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法の一例を示す。前記粗製物を水に懸濁する。前記粗製物を懸濁する水の量は、前記粗製物が完全に溶解せずに懸濁する量であれば特に限定されないが、粗製物中の5-スルホイソフタル酸(結晶水を除く)に対して、好ましくは0.19質量倍~0.60質量倍であり、より好ましくは0.28質量倍~0.55質量倍であり、さらに好ましくは0.35質量倍~0.50質量倍である。
【0032】
前記粗製物を懸濁する水の温度も前記粗製物が完全に溶解せずに懸濁する温度であれば特に限定されないが、好ましくは-20℃~34℃であり、より好ましくは0℃~30℃であり、さらに好ましくは7℃~25℃である。前記粗製物を懸濁する水の温度が-20℃以上であれば前記粗製物を懸濁する溶液が凍らないため好ましい。また、前記粗製物を懸濁する水の温度が34℃以下であれば5-スルホイソフタル酸・4水和物が生じる時間が短いため好ましい。
【0033】
前記粗製物を水に懸濁する方法も特に限定されるものではなく、例えば前記粗製物を水に投入してもよいし、前記粗製物に水を添加してもよいが、前記粗製物を水に投入することがより好ましい。また、前記粗製物を、水に撹拌しながら投入することがさらに好ましい。
【0034】
その後、前記粗製物を水で懸濁した懸濁液を、34℃以下で5分以上保温する。前記懸濁液を保温する温度が34℃以下であることにより、ろ過性のよい5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を得ることができる。前記懸濁液を保温する温度は34℃以下であれば特に限定されないが、より好ましくは30℃以下であり、さらに好ましくは25℃以下である。前記懸濁液を保温する温度の下限も-20℃以上であれば特に限定されるものではないが、より好ましくは0℃以上、さらに好ましくは7℃以上である。
【0035】
前記懸濁液を34℃以下で保温する時間は5分以上であることにより、ろ過性のよい5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を得ることができる。前記懸濁液を34℃以下で保温する時間は、より好ましくは15分以上であり、さらに好ましくは30分以上である。保温する時間の上限もこれに限定されるものではないが、製造効率の観点から好ましくは12時間以下である。ろ過性のよい5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を得ることができるという観点から、保温する時間全体にわたって、保温温度は一定であることがより好ましいが、前述の温度範囲内であれば温度は変動してもよい。
【0036】
本実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法は、さらに、前記工程により得られた5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶をろ過する工程を含んでいてもよい。5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶をろ過する方法は特に限定されるものではないが、通常のろ材を用いたろ過、遠心ろ過等のろ過、加圧ろ過、及び減圧ろ過等を挙げることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法は、さらに、5-スルホイソフタル酸を合成して5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を得る合成工程を含んでいてもよい。前記合成工程も、特に限定されるものではないが、例えば、下記式に示すように、イソフタル酸に発煙硫酸等を反応させて、イソフタル酸をスルホン化する方法を挙げることができる。
【0038】
【化1】
【0039】
例えば、前述のスルホン化後、水に反応物を滴下して、析出した結晶をろ過することにより、5-スルホイソフタル酸・1水和物の含水結晶を得ることができる。当該含水結晶を、5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物として使用することができる。
【0040】
〔2.2〕水で晶析する工程を含む製造方法
本発明の一実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法は、5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を、水に34℃~104℃の温度で溶解させる工程(a)と、前記工程(a)で得られた水溶液を冷却する工程(b)と、前記水溶液が38℃以下で、且つ、過飽和又は結晶が析出した状態であるときに、5-スルホイソフタル酸・4水和物の種晶を加えて晶析させることにより、5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を得る工程(c)を含んでいればよい。種晶を加えなくても析出する場合があるが、工業的には加えた方が好ましい。図7に、本実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法の一例を示す。
【0041】
<工程(a)>
5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物とは、前述の水で懸濁する工程を含む製造方法にて説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0042】
5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を、水に34℃~104℃の温度で溶解させる工程は、5-スルホイソフタル酸・1水和物が完全に溶解するのが好ましいが、一部が溶解していなくてもよい。
【0043】
なお、「水に34℃~104℃の温度で溶解させる」とは、34℃~104℃で溶解状態にするという意味であり、水に前記粗製物を34℃未満で溶解させた水溶液を昇温して、34℃~104℃で溶解状態にする場合も含まれる。
【0044】
例えば、図7に示すように、前記粗製物を水に懸濁し、得られた懸濁液を34℃~104℃で昇温して5-スルホイソフタル酸・1水和物を溶解させる方法を好適に用いることができる。或いは、前記粗製物を、34℃~104℃に昇温した水に投入して溶解させてもよい。
【0045】
前記粗製物を溶解させる水の量は、特に限定されないが、粗製物中の5-スルホイソフタル酸(結晶水を除く)に対して、好ましくは0.19質量倍~0.60質量倍であり、より好ましくは0.28質量倍~0.55質量倍であり、さらに好ましくは0.35質量倍~0.50質量倍である。
【0046】
また、5-スルホイソフタル酸・1水和物を水に溶解させる温度は、34℃~104℃であればよいが、より好ましくは45℃~95℃であり、さらに好ましくは60℃~80℃である。5-スルホイソフタル酸・1水和物を水に溶解させる温度が34℃以上であれば得られる5-スルホイソフタル酸・4水和物の粒径が大きくなるため好ましい。また、5-スルホイソフタル酸・1水和物を水に溶解させる温度が104℃以下であれば常圧下で昇温可能なため好ましい。
【0047】
5-スルホイソフタル酸・1水和物を水に34℃~104℃の温度で溶解させるために、前記粗製物を水に懸濁して得られた懸濁液を34℃~104℃にした後、或いは前記粗製物を、34℃~104℃の水に投入後、得られた溶液を当該温度で保温してもよい。
【0048】
<工程(b)>
工程(a)で得られた34℃~104℃の水溶液を冷却する工程(b)における冷却方法も特に限定されるものではなく、自然冷却、水浴を用いた冷却、ブラインを用いた冷却等を挙げることができる。
【0049】
冷却の速度も特に限定されるものではないが、好ましくは20℃/時間以下であり、より好ましくは10℃/時間以下であり、さらに好ましくは5℃/時間以下である。冷却の速度が前述の範囲内であれば、粒径が大きい5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を得ることができるため好ましい。
【0050】
<工程(c)>
工程(b)にて冷却した前記水溶液が38℃以下で、且つ、過飽和又は結晶が析出した状態であるときに、5-スルホイソフタル酸・4水和物の種晶を加えて晶析させることにより、5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を得ることができる。
【0051】
5-スルホイソフタル酸・4水和物の種晶としては、前述の水で懸濁する工程を含む製造方法により得られた、5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を使用することができる。
【0052】
前記種晶を加える時点は、前記水溶液が過飽和又は結晶が析出した状態で、且つ、38℃以下であればよいが、より好ましくは37℃以下であり、さらに好ましくは35℃以下である。前記時点で種晶を加えることにより、工程(b)にて一部析出する板状晶の形態を柱状晶に変化させることができ、5-スルホイソフタル酸・4水和物が生じる。種晶を加えなければスラリー粘度が高くなり、撹拌やろ過が困難となる。
【0053】
加える前記種晶の量は、特に限定されるものではないが、粗製物中の5-スルホイソフタル酸(結晶水を除く)に対して、好ましくは0.1ppm~10質量%であり、より好ましくは1.0ppm~1.0質量%であり、さらに好ましくは10ppm~0.1質量%である。種晶の量が0.1ppm以上であれば、5-スルホイソフタル酸・4水和物が短時間で析出するため好ましい。また、種晶の量が10質量%以下であれば、5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶が大きく成長し、ろ過性がよくなるため好ましい。
【0054】
前記種晶を加えた後、水溶液の冷却をそのまま継続することが好ましい。冷却を継続することにより、短い時間で5-スルホイソフタル酸・4水和物が生じる。冷却は、水溶液が、好ましくは-20℃~34℃、より好ましくは0℃~30℃、さらに好ましくは7℃~25℃になるまで継続することが好ましい。
【0055】
本実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法は、さらに、前記工程により得られた5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶をろ過する工程を含んでいてもよい。ろ過の方法については、前述の水で懸濁する工程を含む製造方法と同様であるので説明を省略する。
【0056】
また、本実施形態に係る5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の製造方法は、さらに、5-スルホイソフタル酸を合成して5-スルホイソフタル酸・1水和物を含む粗製物を得る合成工程を含んでいてもよい。当該工程についても、前述の水で懸濁する工程を含む製造方法と同様であるので説明を省略する。
【0057】
本実施形態に係る製造方法によれば、特に平均粒径が大きい5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を得ることができる。本実施形態に係る製造方法により得られる5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の平均粒径は、好ましくは200μm~2500μm、より好ましくは400μm~2000μm、さらに好ましくは500μm~1600μmである。
【0058】
また、本実施形態に係る製造方法によれば、着色がより低減された5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶を得ることができる。本実施形態に係る製造方法により得られる5-スルホイソフタル酸・4水和物を水に溶かして得た、5-スルホイソフタル酸の濃度が50質量%の水溶液のハーゼン単位色数は、好ましくは、200以下、より好ましくは180以下、さらに好ましくは50以下である。
【実施例0059】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
〔測定方法〕
<5-スルホイソフタル酸純度及び硫酸含有量>
5-スルホイソフタル酸のウェットケーキ(遠心ろ過により得られた含水結晶)中の5-スルホイソフタル酸純度及び硫酸含有量は以下の方法により測定した。まず、ウェットケーキ1.5gを精秤し、80mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解した。得られた溶液を、自動滴定装置(株式会社HIRANUMA製、型式:COM-1750)を使用して、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定(メソッド:変曲点検出、検出感度:1000)し、変曲点を検出することにより、5-スルホイソフタル酸純度及び硫酸含有量を測定した。
【0061】
硫酸含量が1質量%以下の5-スルホイソフタル酸のウェットケーキの硫酸含量は、イオンクロマトグラフィー[電導度検出器(株式会社日立ハイテクサイエンス製、L-2470)、ポンプ(株式会社日立ハイテクサイエンス製、L-2130)、分析カラム(株式会社日立ハイテクフィールディング製、品名#2740(4.6mmI.D.×150mm))、カラムオーブン(株式会社日立ハイテクサイエンス製、L-2350)]を用いて、カラム温度:40℃、移動相:2.5mol/Lトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2.3mol/Lフタル酸を含む蒸留水、流量:1.5mL/分の条件で測定した。
【0062】
<ハーゼン単位色数>
5-スルホイソフタル酸のウェットケーキのハーゼン単位色数は、50質量%の5-スルホイソフタル酸水溶液を50mLネスラー管に50mL加え、ブランクを水として、ハーゼン測定器(Tintometer製、型式:Nessleriser2150)を用いて測定した。
【0063】
<平均粒径>
5-スルホイソフタル酸のウェットケーキの平均粒径は、分散溶媒として5-スルホイソフタル酸・1水和物ではウェットケーキをろ過した際のろ液、5-スルホイソフタル酸・4水和物では5-スルホイソフタル酸・4水和物の飽和水溶液を用い、超音波洗浄機(株式会社エスエヌディ製、型式:US-705)を用いて超音波を30秒間当てて分散させ、顕微鏡(株式会社キーエンス製、型式:VHX-500F)を使用し、1000個以上の結晶のフェレー径を測定した平均測定値である。
【0064】
<粉末X線回折>
5-スルホイソフタル酸のウェットケーキの結晶相は、全自動多目的X線回折装置(株式会社リガク製、型式:SmartLab)を用いた粉末X線回折分析により確認した。
【0065】
<単結晶X線構造解析>
5-スルホイソフタル酸のウェットケーキの結晶構造は、湾曲イメージングプレート単結晶自動X線構造解析装置(株式会社リガク製、型式:R-AXIS RAPID IIα)を用いた単結晶構造解析により決定した。
【0066】
<熱重量測定(TG)>
5-スルホイソフタル酸のウェットケーキの熱重量測定(TG)は、以下の方法により行った。まず、ウェットケーキ10~12mgをアルミナオープン型試料容器に精秤し、示差熱熱重量同時測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、型式:TG/DTA6200)を用いて、流量200mL/分で窒素を送りながら、20℃から180℃まで2℃/分で昇温測定した。
【0067】
〔実施例1〕
イソフタル酸(300g)を、当該イソフタル酸に対して2.74質量倍の28質量%発煙硫酸(822g)に撹拌しながら投入し、このイソフタル酸と発煙硫酸の混合物を190℃で2時間保温した後、100℃まで冷却した。次に、反応混合物をイソフタル酸に対して1.86質量倍の水(558g)に、撹拌しながら滴下して、30℃まで冷却した後、析出物を回転数5000rpmで15分間、遠心ろ過した。得られた柱状晶は5-スルホイソフタル酸の含水結晶(489g)であり、自動滴定装置で評価した結果、含水結晶中の5-スルホイソフタル酸含有量は89質量%、硫酸含有量は3質量%であった。イソフタル酸からの収率は98%であった。
【0068】
次に、上記の操作により得られた5-スルホイソフタル酸の含水結晶(163g)を、含水結晶中の5-スルホイソフタル酸に対して0.42質量倍の20℃の水(61g)に撹拌しながら投入し、懸濁状態のまま20℃で3時間保温した。このとき、5-スルホイソフタル酸の結晶が保温開始から18分後に柱状晶へと変化した。20℃で3時間保温した後にこの懸濁液を回転数5000rpmで15分間、遠心ろ過した。得られた柱状晶は5-スルホイソフタル酸の含水結晶(73g)であり、平均粒径は314μmであった。自動滴定装置で評価した結果、含水結晶中の5-スルホイソフタル酸の含有量が77質量%であり、イオンクロマトグラフィーで評価した結果、含水結晶中の硫酸の含有量が0.1質量%であった。イソフタル酸からの収率は38%であった。この含水結晶を水に溶かして得た、5-スルホイソフタル酸の濃度が50質量%の水溶液のハーゼン単位色数は140であった。
【0069】
また、この含水結晶の粉末X線回折スペクトルを図1に示した。この含水結晶は粉末X線回折スペクトルにおいて、下記の2θ角:18.1±0.2°、20.2±0.2°、24.6±0.2°、27.3±0.2°、30.5±0.2°、31.9±0.2°に特徴的ピークを有していた。
【0070】
〔比較例1〕
実施例1の製造工程において、反応混合物を30℃まで冷却した後、析出物を遠心ろ過して得られた、3質量%の硫酸が含まれる5-スルホイソフタル酸の含水結晶の平均粒径を測定したところ30μmであった。この含水結晶を水に溶かして得た、5-スルホイソフタル酸の濃度が50質量%の水溶液のハーゼン単位色数は240であった。
【0071】
また、この含水結晶の単結晶X線構造解析を行った結果、173Kで測定した場合、単位格子寸法:a=14.1445(14)Å;b=10.9611(10)Å;c=13.5039(13)Å;β=98.727(7)°;単位格子体積:V=2069.4(3)Å;格子内非対称単位数:Z=8;を有し、かつ空間群がC2/c;であった。単結晶X線構造解析で得られたこの含水結晶の分子構造をORTEP図で図9に、分子パッキング図を図10に示した。この含水結晶は、5-スルホイソフタル酸・1水和物であった。
【0072】
また、この含水結晶の粉末X線回折スペクトルを図8に示した。この含水結晶は粉末X線回折スペクトルにおいて、下記の2θ角:10.4±0.2°、11.8±0.2°、21.1±0.2°、25.3±0.2°、32.7±0.2°、42.1±0.2°に特徴的ピークを有していた。
【0073】
また、熱重量測定(TG)の結果を図11に示した。
【0074】
〔実施例2〕
実施例1の製造工程において、反応混合物を30℃まで冷却した後、析出物を遠心ろ過して得られた、5-スルホイソフタル酸・1水和物の含水結晶(163g)を、含水結晶中の5-スルホイソフタル酸に対して0.40質量倍の水(58g)に撹拌しながら投入し、70℃まで昇温後、1時間保温し、5-スルホイソフタル酸・1水和物の結晶を完全に溶解した。得られた溶液を47℃まで冷却すると板状晶が析出した。さらに冷却し、当該溶液が35℃になった時点で、実施例1で得られた硫酸の含有量が0.1質量%である5-スルホイソフタル酸の含水結晶(18mg)を投入し、冷却を継続したところ、34℃で結晶の形態が柱状晶へと変化した。さらに15℃まで冷却を継続し、回転数5000rpmで15分間、遠心ろ過して得られた柱状晶は5-スルホイソフタル酸の含水結晶(94g)であり、平均粒径は1222μmであった。自動滴定装置で評価した結果、当該含水結晶中の5-スルホイソフタル酸の含有量は76質量%であり、イオンクロマトグラフィーで評価した結果、該含水結晶中の硫酸の含有量は0.1質量%であった。イソフタル酸からの収率は49%であった。
【0075】
この含水結晶を水に溶かして得た、5-スルホイソフタル酸の濃度が50質量%の水溶液のハーゼン単位色数は15であった。
【0076】
また、この含水結晶の単結晶X線構造解析を行った結果、173Kで測定した場合、単位格子寸法:a=7.139(2)Å;b=9.490(3)Å;c=10.535(3)Å;α=70.999(7)°;β=77.158(7)°;γ=85.530(8)°;単位格子体積:V=658.0(3)Å;格子内非対称単位数:Z=2;を有し、かつ空間群がP-1;であった。単結晶X線構造解析で得られたこの含水結晶の分子構造をORTEP図で図3に、分子パッキング図を図4に示した。この含水結晶は、5-スルホイソフタル酸・4水和物であることが確認された。
【0077】
また、この含水結晶の粉末X線回折スペクトルを図2に示した。この含水結晶は粉末X線回折スペクトルにおいて、下記の2θ角:18.2±0.2°、20.3±0.2°、24.7±0.2°、27.4±0.2°、30.5±0.2°、32.0±0.2°に特徴的ピークを有していた。
【0078】
実施例1と2のX線解析結果から、両含水結晶は5-スルホイソフタル酸・4水和物であった。
【0079】
また、熱重量測定(TG)の結果を図5に示した。
【0080】
〔比較例2〕
イソフタル酸(300g)、当該イソフタル酸に対して2.74質量倍の28質量%発煙硫酸(822g)、及び1.74質量倍の水(521g)を用いて、比較例1と同様の方法で、5-スルホイソフタル酸・1水和物(497g)を含水結晶として得た。自動滴定装置で評価した結果、含水結晶中の含有量は、5-スルホイソフタル酸が88質量%、硫酸が4質量%であり、イソフタル酸からの収率は98%であった。また、平均粒径を測定したところ35μmであった。この含水結晶を水に溶かして得た、5-スルホイソフタル酸の濃度が50質量%の水溶液のハーゼン単位色数は250であった。
【0081】
〔まとめ〕
実施例及び比較例で得られた5-スルホイソフタル酸水和物の5-スルホイソフタル酸純度及び硫酸含有量、並びに、ハーゼン単位色数及び平均粒径を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示すように、実施例1及び2で得られた5-スルホイソフタル酸水和物は4水和物であり、比較例1及び2で得られた5-スルホイソフタル酸水和物は1水和物であることが確認された。比較例1及び2で得られた5-スルホイソフタル酸・1水和物の結晶における5-スルホイソフタル酸純度と硫酸含有量を除く量は8質量%であり、実施例1及び2で得られた5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶における5-スルホイソフタル酸純度と硫酸含有量を除く量は約23質量%~24質量%である。この8質量%と約23質量%~24質量%の差は、結晶水の含有量の差によるものであることが分かる。
【0084】
実施例1及び2で得られた5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶の平均粒径は、比較例1及び2で得られた5-スルホイソフタル酸・1水和物の結晶と比較して大きい。実施例1及び2では、5-スルホイソフタル酸・4水和物は5-スルホイソフタル酸・1水和物よりろ過性が向上した。これは、粒径が大きいことによりろ過性が向上したものであると考えられる。また、5-スルホイソフタル酸・4水和物の結晶は、5-スルホイソフタル酸・1水和物の結晶と比較して、硫酸含有量が顕著に低減されており、また着色が低減されたことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
5-スルホイソフタル酸は、ポリマー製造時の添加剤として使用される、5-スルホイソフタル酸の金属塩、ポリエステルの改質剤として用いられる5-スルホイソフタル酸アルキルエステル等の原料として工業的に非常に有用である。また、5-スルホイソフタル酸に不純物として含まれる硫酸が、これらの添加剤及び改質剤としての用途において好ましくない影響を及ぼすことから、硫酸含有量を低減した本願の5-スルホイソフタル酸は工業的に非常に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11