(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043686
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】加熱収縮装置
(51)【国際特許分類】
B65B 53/00 20060101AFI20230322BHJP
B65B 53/02 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B65B53/00 Z
B65B53/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151439
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大岡 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 訓大
(57)【要約】
【課題】省エネルギー化を達成し得る熱収縮性フィルムの加熱収縮装置を提供する。
【解決手段】加熱収縮装置(1)は、容器(10)を被覆するフィルムを加熱収縮させる加熱室(2)と、容器(10)を載置するための載置面(31a)を有し容器(10)を加熱室(2)内において搬送するためのコンベア(3)と、加熱室(2)内の空気を載置面(31a)に設けられた開口部(31b)を介して加熱室(2)外に移動させるための吸引ダクト(42)と、加熱室(2)から移動させた空気を、加熱室(2)内に戻すための還気供給部(50)と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を被覆する熱収縮性のフィルムを加熱収縮させる加熱室と、
上記物品を載置するための載置面を有し、上記物品を上記加熱室内において搬送するための搬送部と、
上記加熱室内の空気を上記載置面に設けられた開口部を介して上記加熱室外に移動させるための内気移動部と、
上記加熱室内から上記加熱室外に移動させた空気を、上記加熱室内に戻すための内気返還部と、を備えることを特徴とする加熱収縮装置。
【請求項2】
上記物品に高温の空気を吹き付ける第1吹付部と、
上記第1吹付部によって上記フィルムを加熱収縮させた上記物品に上記加熱室内から上記加熱室外に移動させた空気を吹き付ける第2吹付部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の加熱収縮装置。
【請求項3】
上記加熱室は、上記搬送部によって搬送された上記物品が上記加熱室に入るための入口と、上記搬送部によって上記加熱室内を搬送された上記物品が上記加熱室から出るための出口と、を有し、
上記内気返還部は、上記加熱室内から上記加熱室外に移動させた空気を、上記入口及び上記出口の少なくとも一方の上部に戻すことを特徴とする請求項1または2に記載の加熱収縮装置。
【請求項4】
上記内気返還部は、上記加熱室内から上記加熱室外に移動させた空気を、上記加熱室の上部に戻すことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱収縮装置。
【請求項5】
上記加熱室は、上記搬送部によって上記加熱室内を搬送される物品を囲み、高温の空気を吹き付ける吹付部と、
上記加熱室の上部に設けられ、上記吹付部によって囲まれる加熱空間内の空気を上記加熱空間外まで吸い上げ、吸い上げた空気を上記加熱空間内に送りこむことで、上記加熱空間内外で空気を循環させる循環ブロアと、
上記循環ブロアにより循環される空気を加熱する加熱部材と、を備え、
上記内気返還部は、上記加熱室内から上記加熱室外に移動させた空気を、上記加熱室の上部から上記加熱空間外に戻すことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の加熱収縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性のフィルムを加熱収縮させる加熱収縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱収縮装置は、熱収縮性のフィルムを熱風や水蒸気によって加熱することにより収縮させて物品に密着させる。空容器など物品自体が軽い物にフィルムを密着させる場合、熱風の風速または水蒸気の圧力で物品が定位置から移動してしまうため、物品を移動させないための対策が必要である。その対策として、従来、例えば、特許文献1に開示されている技術等が利用されている。特許文献1には、コンベアの下部から空気を吸引することで、物品をコンベアに引きつける技術が開示されている。これにより、物品がコンベアに固定されるため、物品に熱風や水蒸気があたっても、物品が移動してしまうことを防ぐことができる。特許文献1では、吸引した空気を建物の外部に放出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加熱収縮装置において上述のような従来技術を用いる場合、熱風や水蒸気を物品にあてる加熱室内においてコンベアの下部から空気を吸引して物品をコンベアに固定する。その場合、加熱室内の熱が加熱室内の空気と共に吸引されてしまい、吸引した空気と共に加熱室内の熱も建物外部に排出されてしまう。そのため、加熱室内の温度が下がり、熱収縮による物品へのフィルムの密着の仕上がりに必要な温度を確保できなくなる。このため、加熱室内の温度を高めに制御する必要が生じ、省エネルギー化の観点で問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、省エネルギー化を達成し得る熱収縮性フィルムの加熱収縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加熱収縮装置は、物品を被覆する熱収縮性のフィルムを加熱収縮させる加熱室と、上記物品を載置するための載置面を有し、上記物品を上記加熱室内において搬送するための搬送部と、上記加熱室内の空気を上記載置面に設けられた開口部を介して上記加熱室外に移動させるための内気移動部と、上記加熱室内から上記加熱室外に移動させた空気を、上記加熱室内に戻すための内気返還部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、内気移動部により加熱室内から加熱室外に移動された空気は、内気返還部により加熱室内に戻される。これにより、加熱室の空気と共に移動された加熱室の熱も内気返還部により加熱室に戻して、熱収縮による物品へのフィルムの密着に利用することができるので、省エネルギーを実現できる。
【0008】
上記加熱収縮装置は、上記物品に高温の空気を吹き付ける第1吹付部と、上記第1吹付部によって上記フィルムを加熱収縮させた上記物品に上記加熱室内から上記加熱室外に移動させた空気を吹き付ける第2吹付部と、を有していてもよい。
【0009】
上記構成によれば、熱収縮性のフィルムを加熱収縮させた物品に、加熱室内から加熱室外に移動させた空気を吹き付けることができる。これにより、熱収縮性のフィルムを予備収縮させることができ、熱収縮による物品へのフィルムの密着の仕上がりを補助することができる。また、加熱室内から加熱室外に移動させた空気の物品への吹き付けは、加熱室の出口付近で行われるため、上記吹き付けがエアカーテンの役目を果たし、熱気が加熱室からでることを防ぐことができる。
【0010】
上記加熱収縮装置において、上記加熱室は、上記搬送部によって搬送された上記物品が上記加熱室に入るための入口と、上記搬送部によって上記加熱室内を搬送された上記物品が上記加熱室から出るための出口と、を有し、上記内気返還部は、上記加熱室内から上記加熱室外に移動させた空気を、上記入口及び上記出口の少なくとも一方の上部に戻していてもよい。
【0011】
上記構成によれば、加熱室内から加熱室外に移動させた空気が入口及び出口の少なくとも一方の上部から下部に流れるので、熱気が加熱室における搬送部の入口または出口からでることを防ぐことができる。これにより、加熱室内に熱を留めることができるので、加熱室の熱利用効率を向上させることができる。
【0012】
上記加熱収縮装置において、上記内気返還部は、上記加熱室内から上記加熱室外に移動させた空気を、上記加熱室の上部に戻してもよい。
【0013】
上記構成によれば、加熱室内から加熱室外に移動させた空気を加熱室の上部に戻すことで、加熱室の上部に滞留する高温の空気を、加熱室内から加熱室外に移動させた空気により加熱室の下部に移動させることができる。これにより、加熱室内の温度を安定させることができる。
【0014】
上記加熱収縮装置において、上記加熱室は、上記搬送部によって上記加熱室内を搬送される物品を囲み、高温の空気を吹き付ける吹付部と、上記加熱室の上部に設けられ、上記吹付部によって囲まれる加熱空間内の空気を上記加熱空間外まで吸い上げ、吸い上げた空気を上記加熱空間内に送りこむことで、上記加熱空間内外で空気を循環させる循環ブロアと、上記循環ブロアにより循環される空気を加熱する加熱部材と、を備え、上記内気返還部は、上記加熱室内から上記加熱室外に移動させた空気を、上記加熱室の上部から上記加熱空間外に戻してもよい。
【0015】
上記構成によれば、循環ブロアにより、加熱室内の空気は、物品を囲む加熱空間内から加熱空間外に吸い上げられて、加熱空間外から加熱空間内に送りこまれる循環経路で循環される。また、循環される加熱室内の空気は、上記循環経路上で加熱部材により加熱される。内気返還部により、加熱室内から加熱室外に移動させた空気を、加熱室の上部から加熱空間の外部に戻すことで、循環ブロアによる加熱室内の空気の循環経路上に加熱室内から加熱室外に移動させた空気を戻すことができる。これにより、加熱室内の空気の循環効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、省エネルギー化を達成し得る熱収縮性フィルムの加熱収縮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加熱収縮装置の構成を示す部分断面図である。
【
図2】上記加熱収縮装置の加熱室の内部構造を示す縦断面図である。
【
図3】上記加熱収縮装置における循環部の概略構成を示す模式図である。
【
図4】上記加熱収縮装置の循環部の吸込側の経路図である。
【
図5】上記加熱収縮装置の循環部の吐出側の経路図である。
【
図6】従来の加熱収縮装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図6を参照して詳細に説明する。なお、以下において、加熱収縮装置1のコンベア3側を下部、循環ブロア12側を上部として説明する。
【0019】
[加熱収縮装置の概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る加熱収縮装置1の構成を示す部分断面図であり、
図1において破断線Dの下側は加熱収縮装置1の断面を示す。加熱収縮装置1は、熱収縮性のラベル101(フィルム)が被覆された容器10(物品)に水蒸気または熱風をあてることで、ラベル101を熱収縮させ、容器10にラベル101を密着させる装置である。
図1に示すように、加熱収縮装置1は、加熱室2と、コンベア3(搬送部)と、循環部40(
図3参照)と、を備えている。
【0020】
コンベア3は、熱収縮性のラベル101が被覆された容器10を所定の方向に搬送する。コンベア3は、例えばベルトコンベアで構成され、コンベアベルト31と、駆動軸32と、コンベアモータ33(
図3参照)と、従動軸34とを有する。コンベアベルト31は輪状に形成され、コンベアベルト31の内面には、略平行に配置された駆動軸32及び従動軸34が両端に配置される。言い換えると、コンベアベルト31は駆動軸32及び従動軸34に巻き掛けられている。これにより、コンベアベルト31の内面側には、空間35が形成されている。駆動軸32にはコンベアモータ33が接続されている。コンベアモータ33の回転が駆動軸32に伝えられ、コンベアベルト31は、コンベアモータ33の回転に伴って移動する。従動軸34はコンベアベルト31の回動に伴って回転する。
【0021】
コンベアベルト31は、容器10が載置される載置面31aを有している。載置面31aには、所定の間隔で複数の開口部31bが形成されている。開口部31bは、コンベアベルト31の載置面31aと内面との間を貫通するように形成されている。コンベア3は、容器10が開口部31bを塞ぐように載置面31aに載置された状態で加熱室2を移動する。コンベアベルト31の内面側の空間35には、循環部40(
図3参照)の吸引ダクト42が開口部31bと同じ間隔で配置されている。
【0022】
循環部40(
図3参照)は、開口部31bの下方から加熱室2の空気を加熱室2外に吸引するとともに、加熱室2から吸引した吸引空気(加熱室2から移動させた空気)を加熱室2内に戻すように、空気を循環させる。吸引ダクト42は、
図1に示すように、加熱室2の空気を吸引する配管として設けられている。吸引ダクト42は、空間35の下部から上部に向かって、上部に位置するコンベアベルト31の内面付近まで延伸しており、吸引ダクト42の一端である上端42aは上部に位置するコンベアベルト31の内面付近で開口されている。吸引ダクト42の他端は吸引ブロア41(
図3参照)に接続されている。
【0023】
加熱室2では、ラベル101を容器10に密着させる際、ラベル101に向かって熱風または水蒸気をあてる。その際、容器10がコンベアベルト31に固定されていないと、熱風の風速または水蒸気の圧力により容器10が定位置から移動してしまい、容器10の所望の箇所に熱風または水蒸気があたらない。そこで、加熱収縮装置1では、循環部40を用いてコンベア3に容器10を固定する。具体的には、移動しているコンベアベルト31は、開口部31bの位置と吸引ダクト42の上端42aの開口の位置とが略一致すると停止する。そして、加熱室2において加熱が始まると、開口部31bの下方から吸引ダクト42を通じて吸引ブロア41が加熱室2の空気を吸引する。これにより、容器10の底面より下方の空間が負圧状態となり、開口部31bに載置された容器10がコンベア3に固定される。循環部40について詳しくは後述する。
【0024】
容器10は、例えば、ブロー成形により形成されたポリエステル製のPETボトルである。ただし、ラベル101が被覆される対象は容器10に限定されず、ラベル101を巻き付けて使用される物品であればよい。
【0025】
ラベル101は、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC等から成る熱収縮性のフィルム(シュリンクフィルム)により形成される。ラベル101は、その両端を接合させることにより筒状に形成した後にロール状に巻き取り、このロールを繰り出しながら所定の長さに切断したものである。ラベル101は、図示しない開口装置により筒状に開口されて容器10に被覆されるように装着される。
【0026】
加熱室2は、コンベア3によって搬送される容器10を被覆するラベル101を加熱する空間を形成する。加熱室2は、容器10を被覆するラベル101を加熱収縮させ容器10に密着させる。ラベル101を加熱収縮させる温度は、例えば、160℃以上かつ220℃以下である。
【0027】
[加熱室の詳細]
続いて、加熱室2の内部構造について
図1及び
図2に基づき説明する。
図2は、
図1のA-A線矢視断面図であり、加熱収縮装置1の加熱室2の内部構造を示す縦断面図である。
図2に示すように、加熱室2は、外郭体11と、循環ブロア12と、ヒータ13(加熱部材)と、導風部14とを有している。
【0028】
外郭体11は、加熱室2の外郭を成す。外郭体11は、上面壁11aと、上面壁11aの両側端からそれぞれ下方に伸びる側壁11bとを有しており、下端が開放されている。加熱室2はコンベア3に覆設されており、外郭体11には、コンベア3によって搬送された容器10が加熱室2に入るための入口21、及び、コンベア3によって加熱室2内を搬送された容器10が加熱室2から出るための出口22が形成されている。
【0029】
循環ブロア12は、加熱室2の上部に設けられ、加熱室2内の空気を吸い上げて側方に吹き出すことによりヒータ13により加熱された空気を加熱室2内で循環させる。言い換えると、循環ブロア12は、後述するノズル壁17によって囲まれる加熱ゾーン19内の空気を加熱ゾーン19外まで吸い上げ、吸い上げた空気を加熱ゾーン19外に向けて吹き出し、加熱ゾーン19内に送りこむことで、加熱ゾーン19内外で空気を循環させる。循環ブロア12は、ブロアモータ12aと、羽根12bと、ケーシング12cとを有している。ブロアモータ12aは、外郭体11の上面壁11a上に取り付けられている。羽根12bは、ブロアモータ12aの駆動軸を介して回転する。羽根12bは、外郭体11の上面壁11aの内面の近傍に配置されたケーシング12cの内部に設けられている。羽根12bの回転によりケーシング12cの下方より吸い上げられた空気は、羽根12bの側方に設けられたケーシング12cの吹き出し口から羽根12bの直径方向に吹き出される。
【0030】
ヒータ13は、シーズヒータなどの発熱体であり、円形を成している。ヒータ13は、ケーシング12cの周囲に配置されるように、外郭体11の上面壁11aの内面に取り付けられている。ヒータ13は、ケーシング12cの吹き出し口から吹き出される空気を加熱する。言い換えると、ヒータ13は、循環ブロア12の側方に取り付けられ、循環ブロア12により側方に吹き出された加熱室2内を循環する空気を加熱する。
【0031】
導風部14は、固定壁16と、2つのノズル壁17(第1吹付部)とを有している。
【0032】
固定壁16は、上面部と、上面部の両側端からそれぞれ下方に伸びる側面部とを有しており、下端が開放されている。上面部は、ケーシング12cと接続されており、ケーシング12cと導風部14とを連通させる貫通孔を有している。側面部の下端の位置は、外郭体11の側壁11bの下端の位置と同じである。また、固定壁16は、外郭体11よりも小さく形成されるとともに、固定壁16の側面部の外面が外郭体11の側壁11bの内面と所定の間隔をおくような位置に配置されている。これにより、外郭体11の側壁11bの内面と固定壁16の側面部の外面との間には、循環空間18が形成されている。
【0033】
ノズル壁17は、固定壁16の2つの側面部に対向するように嵌め込まれている。ノズル壁17は、多数のノズル孔17aを有している。ノズル孔17aは、行列状に配置されており、ノズル壁17を水平方向に貫通するように形成されている。ノズル壁17はノズル孔17aにより容器10に高温の空気を吹き付ける。容器10は、対向するノズル壁17の間に形成される空間である加熱ゾーン19(加熱空間)を通過する。言い換えると、ノズル壁17は、コンベア3によって加熱室2内を搬送される容器10を囲み、高温の空気を容器10に吹き付ける。なお、ノズル孔17aの形状は
図2の形状に限定されず、適宜設定できる。
【0034】
[加熱室における空気循環]
上記のように構成される加熱室2において、固定壁16内の加熱ゾーン19の空気は、循環ブロア12によって吸い上げられ、羽根12bによってヒータ13の側方に吹き出されて、ヒータ13によって加熱される。加熱された空気は、循環空間18を通り、ノズル壁17の各ノズル孔17aから加熱ゾーン19に吹き出された後、容器10に被覆されたラベル101を加熱して再び循環ブロア12によって吸い上げられる。
【0035】
このように、循環ブロア12は、ヒータ13により加熱された空気を加熱室2の内部で循環させる空気の流れを発生させる。これにより、加熱室2において、加熱された空気が循環する。
【0036】
加熱収縮装置1は、図示しない制御部を備えている。制御部は、循環空間18に配置された図示しない温度センサによって検出された空気の温度が所定の温度となるように、ヒータ13の発熱温度を制御する。
【0037】
なお、ノズル壁17は、ノズル孔17aが開閉可能となるように設けられていてもよい。これにより、容器10の所望の箇所に熱風を吹き出すことができる。
【0038】
[循環部]
循環部40について、
図1~
図5に基づき説明する。
図3は、加熱収縮装置1における循環部40の概略構成を示す模式図である。
図3の二点鎖線は仮想線であり、加熱室2を示している。
図4は、
図3のB-B矢視断面図の一部であり、加熱収縮装置1の循環部40の吸込側の経路図である。
図5は、
図3のB-B矢視断面図の他の一部であり、加熱収縮装置1の循環部40の吐出側の経路図である。なお、
図5の還気ダクト43については、コンベアモータ33側から加熱室2を見た側面図を図示している。
【0039】
図1及び
図3~
図5に示すように、循環部40は、開口部31bから加熱室2の空気を加熱室2外に吸引する。また、循環部40は、還気供給部50を介してラベル101を加熱収縮させた容器10に吸引空気を吹き付ける。以下に詳しく説明する。
【0040】
図3に示すように、循環部40は、吸引ブロア41(内気移動部、内気返還部)と、吸引ダクト42(内気移動部)と、還気ダクト43(内気返還部)と、還気供給部50(内気返還部)と、を有している。吸引ブロア41は吸引口から空気を吸引し、吸引口から吸引した吸引空気を吐出口から吐出する。
【0041】
(循環部の吸込側(内気移動部))
循環部40の吸込側は、加熱室2内の空気を載置面31aに設けられた開口部31bを介して加熱室2外に移動させる。
図1、
図3及び
図4に示すように、循環部40は吸引ブロア41の吸込側において、吸引ダクト42を有する。吸引ダクト42の一端は吸引ブロア41の吸込口に接続され、吸引ダクト42の他端はコンベア3の内側の空間35において、空間35の下部から上部に向けて延伸し、上部に位置するコンベアベルト31の内面付近において開放されている。吸引ダクト42は、各開口部31bが配置されている間隔と同じ間隔に立ち上げられており、空間35において立ち上げられるように分岐した各吸引ダクト42は合流して吸引ブロア41に接続されている。
【0042】
加熱室2において加熱が始まると、吸引ブロア41が吸引を開始し、開口部31bの下方から加熱室2の加熱された空気を吸引ブロア41が吸引する。これにより、
図3及び
図4の矢印に示すように、加熱室2の加熱された空気が、加熱室2の外部に吸引される。吸引ブロア41による吸引力は、手動で設定可能であり、容器10に応じて変更できる。吸引力の設定後は吸引ブロア41を一定の吸引力で駆動させ、加熱収縮装置1の稼働中は吸引力の変更は行わない。なお、本実施形態では、吸引ブロア41により加熱室2内の空気を吸引して加熱室2外に移動させるが、加熱室2内の空気を加熱室2外に移動させる方法は上記に限らず、加熱室2内の空気を加熱室2外に移動させることができればどのような方法を用いてもよい。
【0043】
(循環部の吐出側(内気返還部))
循環部40の吐出側は、加熱室2内から加熱室2外に移動させた空気を、加熱室2内に戻す。
図1、
図3及び
図5に示すように、循環部40は吸引ブロア41の吐出側において、還気ダクト43と、還気供給部50と、を有する。還気ダクト43は、一端が吸引ダクト42の吐出口に接続され、他端が還気供給部50に接続されている。
【0044】
還気供給部50は、略直方体の箱体である。還気供給部50は一対であり、一対の還気供給部50は、加熱室2の出口付近の両側に設置され、還気供給部50の間をコンベアベルト31が通過する。すなわち、加熱収縮装置1の両側に配置された還気供給部50の間には、加熱収縮によりラベル101を密着した容器10が通過する。還気供給部50は、加熱室2においてラベル101を加熱収縮させた容器10に吸引空気を吹き付ける還気ノズル壁51(第2吹付部)を有している。具体的には、還気供給部50のコンベアベルト31が通過する側の側面には、還気ノズル壁51が形成されている。還気ノズル壁51は、多数の還気ノズル孔50aを有している。還気ノズル孔50aは、行列状に配置されており、還気供給部50の還気ノズル壁51を水平方向に貫通するように形成されている。なお、還気ノズル孔50aの形状は
図5の形状に限定されず、適宜設定できる。
【0045】
吸引ブロア41により吸引された吸引空気は、
図5の矢印に示すように、還気ダクト43を通り、還気供給部50を介して還気ノズル孔50aにより、ラベル101を加熱収縮により密着させた容器10に吹き付けられる。上記容器10に吸引空気をさらに吹き付けることで、ラベル101を予備収縮させることができ、ラベル101の加熱収縮の仕上がりを補助することができる。容器10に吹き付けられた空気は、上述した加熱室2における空気循環により、再度加熱室2で循環される。
【0046】
ここで、吸引ブロア41が加熱室2の外部にあるため、加熱室2から吸引された空気は一度加熱室2外にでることになるが、その時間が極めて短いため、空気の温度はほとんど下がらない。そのため、外部から新たな空気を加熱室2に取り入れて循環するよりも、加熱室2内の循環空気の昇温の時間が短くなり、加熱収縮装置1の熱効率が向上する。
【0047】
還気ノズル孔50aから容器10に吹き付けられる空気の風速は早い方が望ましい。これにより、加熱室2の出口からの加熱室2の熱が外部に漏れるのを防ぐことができる。なお上記風速が遅くても、ラベル101の収縮には影響しない。
【0048】
[効果]
図6は、従来の加熱収縮装置の一例である加熱収縮装置100の概略構成を示す模式図である。
図6の二点鎖線は仮想線であり、加熱室2を示している。
図6に示すように、従来の加熱収縮装置100では、コンベアベルト31の開口部31bから吸引された加熱室2の加熱された空気は、加熱収縮装置100が設置された部屋の室内に排気されていた。そのため、加熱収縮装置100が設置された部屋の温湿度や、室内の気圧が変動するなど、加熱収縮装置100が設置された部屋の室内環境に影響が出ていた。このような問題を解決するには、上述した特許文献1に開示された技術のように吸引した空気を建物外部に排出すればよいが、建物外部への排気構造を必要とする別の問題がある。
【0049】
また、加熱収縮装置100及び特許文献1の技術を採用した加熱収縮装置では、加熱室2の熱も加熱室2の空気と共に加熱室2外に排出してしまう。そのため、加熱室2内の温度が下がり、ラベル101を容器10に密着させる加熱収縮の仕上がりに必要な温度を確保できなくなる。このような状態では、循環空間18に設けられた温度センサの検出温度が低下するため、制御部は、熱収縮による容器10へのラベル101の密着の仕上がりに必要な加熱室2内の温度を確保するために、ヒータ13の発熱温度を高くしなければならなかった。例えば、ヒータ13の発熱温度(仕上がり温度)を250℃程度まで高める必要があった。
【0050】
それに対し、本実施形態では、加熱室2の空気と共に吸引された加熱室2の熱が循環部40により加熱室2に戻されるため、加熱室2に外部から新たな空気を導入する従来の場合に比べて、省エネルギーを実現することができる。具体的には、上記従来の場合では、容器10へのラベル101の密着に必要な仕上がり温度が約150℃であったのに対し、本願発明によれば、上記仕上がり温度を約125℃まで下げることができる。すなわち、仕上がり温度については約17%の省エネルギーを実現することができる。また、上記従来の場合では、ノズル孔17aにより容器10に吹き付ける空気の風速が、約55m/sであったのに対し、本願発明によれば、上記風速を約45m/sまで下げることができる。すなわち、風速については約18%の省エネルギーを実現することができる。さらに、吸引した加熱室2の熱を再利用することができるので、排熱を減らすことができる。
【0051】
また、吸引した加熱室2の空気が、加熱室2の出口22付近で吹き出されるので、加熱室2の出口22から加熱室2の熱が外部に漏れるのを防ぐことができる。
【0052】
また、このような構成によれば、排熱を減らし、熱収縮による物品へのフィルムの密着に必要な仕上がり温度を下げることができる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の達成に貢献できる。
【0053】
[変形例]
本発明の変形例について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0054】
上記実施形態では、吸引ブロア41により吸引された加熱室2の加熱された空気を、還気供給部50により容器10に吹き付けていたが上記に限らない。循環部40は、吸引ブロア41により吸引された加熱室2の加熱された空気を、例えば、
図1に示す、加熱室2内の入口21及び出口22の少なくとも一方の上部に戻してもよい。これにより、加熱室2の入口21及び出口22の少なくとも一方から加熱室2の熱が外部に漏れるのを防ぐことができる。
【0055】
さらに、循環部40は、吸引ブロア41により吸引された加熱室2の加熱された空気を、加熱室2の上部より加熱室2内に戻してもよい。具体的には、
図2に示すように、加熱ゾーン19の上部に吹出口60を配置し、循環部40は吹出口60から加熱ゾーン19の下部に向けて吸引空気を吹き出してもよい。傾向として加熱ゾーン19では上部に熱が溜まりやすく、加熱ゾーン19の下部の熱が低くなる。そこで、加熱ゾーン19の上部に配置されている吹出口60から加熱ゾーン19の下部に向けて吸引空気を吹き出すことで、加熱ゾーン19の上部に溜まった熱を加熱ゾーン19の下部に送ることができる。これにより、加熱ゾーン19内の熱を均一にすることができ、ラベル101の仕上がりを均一にすることができる。
【0056】
また、吸引ブロア41により吸引された加熱室2の加熱された空気を、加熱室2の上部から加熱室2内であって加熱ゾーン19外に戻してもよい。具体的には、
図2に示すように、外郭体11の上面壁11aに吹出口70を形成し、循環部40は吸引空気を吹出口70から加熱室2の下部に向けて吹き出してもよい。このように、循環ブロア12による加熱室2内の空気の循環経路上に吸引空気を戻すことで、加熱室2内の空気の循環効率を向上させることができる。また、図示はしないが、外郭体11の側壁11b上部に吹出口を形成してもよい。この吹出口は、側壁11bの外面から内面にかけて下り傾斜となるように形成されている。循環部40は、このような吹出口から斜め下方に向けて加熱室2内に吸引空気を吹き出してもよい。
【0057】
また、循環部40は、加熱室2以外でラベル101を加熱する空間、例えば予熱室に、吸引空気を加熱室2と同様に供給してもよい。予熱室は、加熱室2による加熱の前にラベル101をある程度収縮させるように加熱室2の温度より低い温度でラベル101を加熱する。循環部40によって吸引された加熱室2の空気は、加熱室2と予熱室との間に接続されたダクトを通じて予熱室に供給される。ダクトを通る間に外気の温度の影響を受けて予熱室に供給される吸引空気の温度が低下した場合は、予熱室内のヒータにより吸引空気を適温まで加熱する。このように、加熱室2から吸引された空気を予熱室に供給すことにより、予熱室における熱効率を向上させることができる。
【0058】
また、循環部40により吸引空気を循環空間18に戻してもよい。具体的には、例えば、
図5に示すように、還気供給部50のノズル壁17側の壁面が上部から下部にかけて孔50bを備え、孔50bにより吸引空気を循環空間18側に戻してもよい。これにより、還気供給部50における開口面積が大きくなり、循環部40の加熱室2内の空気の吸引力を高めることができる。また、孔50aによる加熱室2の出口22から熱気が出ることを防ぐ効果をより高めることができる。さらに、
図5に示すように、還気供給部50の上面が孔50cを備え、孔50cにより吸引空気を循環空間18に戻してもよい。これにより、循環ブロア12に近い箇所に吸引空気を戻すことができる。
【0059】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる構成についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 加熱収縮装置
2 加熱室
3 コンベア(搬送部)
10 容器(物品)
12 循環ブロア
13 ヒータ(加熱部材)
17 ノズル壁(第1吹付部、吹付部)
19 加熱ゾーン(加熱空間)
21 入口
22 出口
31a 載置面
31b 開口部
41 吸引ブロア(内気移動部、内気返還部)
42 吸引ダクト(内気移動部)
43 還気ダクト(内気返還部)
50 還気供給部(内気返還部)
51 還気ノズル壁(第2吹付部)
101 ラベル(フィルム)