(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043692
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】充電制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20230322BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20230322BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H02J7/02 C
H02J7/10 B
H02M3/155 H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151451
(22)【出願日】2021-09-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】594170185
【氏名又は名称】大西 徳生
(72)【発明者】
【氏名】大 西 徳 生
【テーマコード(参考)】
5G503
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA02
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA12
5G503DA07
5G503FA06
5G503GB03
5H730AA14
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS17
5H730BB11
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD41
5H730FG05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な回路で通電損失の低減ができ、ドライブ回路構成が容易な昇降圧回路を構成すると共に、スイッチング信号に極狭のパルス幅を生じることなく、直流電源と二次電池との電圧関係に係わらず充電制御でき、必要に応じて直流電源と二次電池間での双方向充放電制御する充電制御装置を提供する。
【解決手段】充電制御システムは、インダクタLに流れる電流i
dを検出し、基準電流Idrと一致させるためのPI制御器の出力vcと、最小値が零で波高値がVpの三角波と、この三角波をVpだけ直流レベルシフトした三角波を比較し、スイッチング信号の最少パルス幅以下にならないようにスイッチング信号を発生し、ドライブ回路Driverを通して2つのスイッチS1、S2をドライブする。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の一端からインダクタ、二次電池、第1のダイオード、第1のスイッチを直列に接続して前記直流電源の他端に戻る回路と、第2のダイオードを前記二次電池と前記第1のダイオードの接続点と前記直流電源と前記インダクタの接続点の間に接続する回路、さらに、第2のスイッチを前記インダクタと前記二次電池の接続点と前記直流電源と前記第1のスイッチの接続点の間に接続する回路により昇降圧回路を構成して
前記インダクタに流れる電流が、基準電流値と一致するように前記第1のスイッチと前記第2のスイッチの通流幅を制御することにより、
昇降圧制御動作時の電流の通流経路におけるダイオード、スイッチの直列素子数の低減化と、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチが共通に接続できることによる両スイッチのドライブ回路構成の簡単化ができ、前記直流電源と前記二次電池の電圧の大小関係にかかわらず、前記直流電源から前記二次電池に充電制御することができることを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の充電制御装置におけるスイッチング制御方法として、
前記直流電源の電圧が充電される前記二次電池より高いときは、前記第2のスイッチをオフ状態とし、前記第1のスイッチの通流幅により降圧動作で前記インダクタの電流制御を、
前記直流電源の電圧が充電される前記二次電池より低いときは、前記第1のスイッチにオン信号を与え、前記第2のスイッチの通流幅により昇圧動作で前記インダクタの電流制御を、
前記直流電源の電圧が充電される前記二次電池と近いときは、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチの通流幅を互いに同期して昇圧動作期間と降圧動作期間を設ける昇降圧動作により前記インダクタの電流制御をかけることで、
極狭いパルス幅のスイッチング制御動作を伴うことなく、前記蓄電池に充電制御できることを特徴とする充電制御装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2記載の充電制御装置におけるスイッチング制御信号の発生方法として、前記インダクタに流れる電流を充電用二次電池の電圧や流れ込む電流、積算電力量など、二次電池の状態をもとに設定する基準電流値と一致させるためのPI制御器の出力と最小値が零の三角波の最大値と、その三角波を直流シフトさせた三角波の最小値が同じとなる2つの三角波との比較信号をもとに、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチに対するスイッチング信号を発生するとき、
前記PI制御器の出力レベルが、前記直流シフトレベルに近いときは、比較する前記2つの三角波の振幅を少し大きくして、一つの三角波の最大値と他の三角波の最小値を少しオーバーラップさせることより、極狭いパルス幅のスイッチング信号を発生することなく、前記二次電池に充電制御できることを特徴とする充電制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の充電制御装置において、第1のダイオードに逆並列に第3のスイッチを、第1のスイッチに逆並列に第3のダイオードを、第2のダイオードに逆並列に第4のスイッチを接続する回路構成として、
前記第3のスイッチと前記第4のスイッチをオフ状態として、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチの通流幅制御により、前記直流電源から前記二次電池を充電制御できる請求項1記載の動作に加えて
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチをオフ状態として、前記インダクタに流れる電流が、基準電流値と一致するように前記第3のスイッチと前記第4のスイッチの通流幅を制御することにより、
前記二次電池から前記直流電源への電流制御ができることを特徴とする充電制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の充電制御装置において、請求項2から3記載の前記直流電源側から前記二次電池側への充電制御技術を、前記直流電源と前記二次電池の対応関係を入れ替えて前記二次電池側から前記直流電源側への電流制御もできるように制御システムを構成して、前記基準電流の極性を切り替えることにより、前記直流電源から前記二次電池側への充電制御と前記二次電池から前記直流電源側への充電制御が双方向に電流制御できることを特徴とする充電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源から任意の動作電圧の二次電池に対して充電制御することができる昇降圧回路とその制御法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池をはじめとする近年の二次蓄電池の著しい進歩と、電子回路制御技術やパワーエレクトロニクス技術の発達により、小容量から大容量に至るまでの極めて幅広い分野で充電式の電気製品の実用化されてきている。
【0003】
二次電池を充電するための充電器としては、容量の大きいものでは、電気自動車の二次電池の充電用として、また太陽電池からの発電電力を一時的に蓄電したり、発電電力の平準化用や非常用電源として二次電池への充電するものなどがある。
【0004】
特に、電気自動車の充電スタンド用としての充電制御装置では、電気自動車に積載する蓄電池の総数によって様々な動作電圧の二次電池を対象に高効率で充電できることが望まれ、蓄電池によっては満充電電圧と終止電圧の幅広い電圧差にも対応できる必要がある。
【0005】
一方、小容量で二次電池の充電や放電の制御として小型の携帯機器などでは、専用充電器では二次電池の公称電圧が決まっているが、リチウムイオンなどの場合は満充電電圧に対して終止電圧は40%程度も変化に対して高い効率で充電制御できるものが必要となっている。
【0006】
直流電源の電圧に対して充電用二次電池の電圧が低い場合は、降圧動作により電流を制御しながら充電し、高い場合は昇圧動作により電流を制御しながら充電することができるが、両方のケースに対しても充電できる充電装置が必要になる。
【0007】
そこで、充電を行う直流電源に対して、幅広い二次電池の電圧に対して充電制御ができるものとして、昇降動作と降圧動作ができる昇降圧回路が望まれるが、スイッチ素子1個で構成できる昇降圧回路は、単独の昇圧回路や単独の降圧回路に比べて効率が低くなる。
【0008】
このため、直流電源にスイッチ回路とインダクタを介して負荷に導く回路にフリーフォイーリングダイオードを接続することにより構成できる一般的な降圧回路に対して、インダクタを介した後、インダクタにエネルギーを蓄積するための電流を流すスイッチ回路と負荷側から逆流防止ダイオードを接続した一般的な昇圧回路をインダクタを共有した構成の昇降圧回路が用いられている。
【0009】
また、二次電池側から直流電源側に充電制御、二次電池においては放電制御もできる双方向充電回路は、インダクタを共通にして上記昇降圧回路のスイッチ素子に逆並列に対称的に逆方向にも接続することにより構成することができるHブリッジ形昇降圧回路も用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4049333号
【特許文献2】特開2002-238250号
【特許文献3】特許第4094649号
【特許文献4】特許第5211678号
【特許文献5】特許第5966503号
【特許文献6】特許第5794982号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
充電制御装置においては、大きな電力を扱ったり限られた蓄電池のエネルギーを有効に活用するためには、通電電流による回路損失をできるだけ低減させることが重要であり、充電制御回路として現在までに用いられている回路に比べて少しでも低減でき、また、回路構成を複雑化することなく、スイッチ素子のドライブ制御回路の簡単化につながる昇降圧回路構成を提供することが本発明における課題の一つである。
【0012】
次に、スイッチング制御による充電制御動作においては、一般にスイッチング素子の通流比制御が用いられるが、直流電源と充電用二次電池の電圧が近いときは、極狭いパルス幅のオン期間やオフ期間動作となり、制御の安定性やスイッチング素子での損失増加の原因となることが考えられることから、極狭パルスが避けられる制御手法の開発が本発明における第2の課題である。
【0013】
そして、スイッチング制御信号を発生させるとき、直流電源と充電用二次電池の動作関係によって、降圧動作か昇圧動作かを選択する制御方式だと、制御方式を切り換える場合に電圧検出の精度の影響を受けることが考えられるので、こうした電圧検出によらない制御手法の開発が、本発明の第3の課題である。
【0014】
さらには、直流電源から充電用二次電池への充電動作だけでなく、二次電池から直流電源側に放電制御できる回路においても、通電電流による回路損失をできるだけ低減できる双方向電流制御ができる充電回路の開発が第4の課題である。
【0015】
(特許文献1)は、降圧回路と昇圧回路のインダクタを共通化して降圧チョッパ回路と昇圧チョッパ回路を組み合わせた回路であり、上述したスイッチ1個による昇降圧回路に比べて効率低下を抑えることができるので、一般的な一方向昇降圧制御充電回路として用いられている。
【0016】
(特許文献2)は、一方向充電回路におけるダイオードとスイッチを逆並列に接続して対称回路構成にすることにより、双方向電流制御ができる双方向昇降圧制御充電回路であり、現在は、一般的なHブリッジ形昇降圧回路として用いられている。
【0017】
しかし、昇降圧回路として、一般的な一方向昇降圧回路動作、双方向昇降圧回路のいずれの動作においてもダイオードまたはスイッチの素子が通電回路に2個直列に入る回路構成となっているので、これら素子に電流が流れることによる通電回路損失は2個の素子での電圧降下と通電電流積となるので、直列素子数を低減が望まれる。
【0018】
また、(特許文献1)~(特許文献5)のいずれの制御手法においても、これら昇降圧回路で降圧動作をさせるか昇圧動作をさせるかを、充電用二次電池の電圧を検出して選択制御する手法が採られており、(特許文献5)を除いては直流電源の電圧も検出し、充電用二次電池の電圧と比較して昇降圧制御の選択を行っており、上述した電圧検出の精度による課題が残るといえる。
【0019】
さらに、これら昇降圧回路のスイッチング信号の発生方法として、(特許文献4)、(特許文献5)は、電圧制御器からの誤差信号と2種の三角波を用いた2つの比較器でPWMスイッチング信号を得る手段が示されているが、(特許文献1)~(特許文献3)の場合も含めてPWMスイッチング信号の狭パルス幅の発生を回避する制御については述べられていない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
図1は、本発明による昇降圧回路あり、二つのスイッチの一端が共通して直流電源の負側に接続されており、
図2では、スイッチS1がオンすると直流電源Edから二つのスイッチの一端が共通して直流電源の正側に接続されている回路構成となっている。
【0021】
図3は、
図1に示す昇降圧回路動作を、降圧動作時の電流経路と昇圧動作時の電流経路を
示しており、降圧動作時は動作モード(1)、(2)、昇圧動作時は動作モード(3)、(4)の回路を形成するが、動作モード(1)と(4)は同じ回路となるので、昇降圧動作としては(1)~(3)の3つの動作モード間をスイッチ制御することとなる。
【0022】
同図から明らかなように、降圧動作での動作モード(1)においてはスイッチS1がオンのとき直流電源EdからインダクタL,二次電池EB、ダイオードD1とスイッチS1が直列に接続され、ダイオードD1とスイッチS1の2個の素子が直列に接続されるが、動作モード(2)ではスイッチS1がオフになると、1個のダイオードD2のみでフリーフォイーリング回路が形成できる。
【0023】
また、昇圧動作での動作モード(3)においては、スイッチS1をオン状態のもとで、1個のスイッチS2をオンするときの通電回路素子は1個にでき、スイッチS2がオフになったときの動作モード(4)ではダイオードD1とスイッチS1の2個の素子が直列に接続される。
【0024】
このため、降圧動作、昇圧動作いずれの動作においても一般の昇降圧回路と比べて通電時の素子数を低減することができるので、通電時の回路損失の低減に効果が期待できる。
【0025】
なお、
図1に示す回路で、スイッチ素子としてNPNトランジスタ、IGBT,NMOSFETなどを用いると、2個のスイッチのエミッタあるいはソースと直流電源の負側のラインをコモンにできるのでドライブ回路構成も簡単化できる。
【0026】
上述したように本発明の昇降圧回路は、(1)~(3)の3つの動作モード間をスイッチ制御することとなるが、ここで、一方向昇降圧回路における降圧制御と昇圧制御時の通流経路を再掲してフリーフォイーリングダイオードD2 の両端電圧exの動作波形をもとにPWMスイッチングパルス幅と直流電源電圧と出力電圧の関係を考察する。
【0027】
図4は、一方向昇降圧回路において、インダクタの電流が連続して流れているときのスイッチS1のオン、オフ動作による降圧制御時の通流経路とダイオードD2の両端電圧exの波形を示している。
【0028】
直流電源の電圧をEd,二次電池の電圧をEBとし、スイッチング周期をT,スイッチS1のオン期間をTon1、スイッチS1の通流比をα1とすると、インダクタの両端の平均電圧は零であるので、ダイオードD2の両端電圧exの平均電圧は二次電池の電圧に等しくなることから、
【数1】
で関係づけられる。
【0029】
また、スイッチS1のオフ期間Toff1のスイッチング周期Tに対する割合をβ1とおくと
【数2】
直流電源の電圧と二次電池の電圧EBが近い値のときは、α1は1に近い値となり、スイッチS1のオフ期間Toff1は、極めて狭いパルス幅となる。
【0030】
図5は、一方向昇降圧回路において、インダクタの電流が連続して流れているときのスイッチS2のオン、オフ動作による昇圧制御時の通流経路とダイオードD2の両端電圧exの波形を示している。
【0031】
スイッチング周期をT,スイッチS2のオン期間をTon2、スイッチS2の通流比をα2とすると、ダイオードD2の両端電圧exの平均値が二次電池の電圧EBとなるので
【数3】
で関係づけられる。
【0032】
この場合は、直流電源の電圧と二次電池の電圧EBが近い値のときは、α2は0に近い値となり、スイッチS2のオン期間Toon2は極めて狭いパルス幅となる。
【0033】
このように、降圧動作においても昇圧動作においても直流電圧Edと二次電池の電圧EBが近い値の関係にあるときは、スイッチS1あるいはスイッチS2のスイッチングパルス幅は極めて狭くなり、特に、スイッチング周期が短くなると、正確な通流比制御が難しくなる。
【0034】
本発明では、直流電圧Edと二次電池の電圧EBが近くなったときは、スイッチングの1周期間で降圧動作モードと昇圧動作モードを働かせることにより、狭いパルス幅の発生の問題を防いでいる。
【0035】
図6は、一方向昇降圧回路において、この昇降圧動作におけるインダクタの電流が連続して流れているときのスイッチS1とスイッチS2のオンオフ動作による通流経路とダイオードD2の両端電圧exの波形を示している。
【0036】
スイッチング周期をT,スイッチS1のオフ期間をToff1,スイッチS2のオン期間をTon2とすると、ダイオードD2の両端電圧exの平均値がEBとなることから、次式を得ることができる。
【数4】
【0037】
このとき、直流電圧Edと二次電池の電圧EBが等しいとき、スイッチS1のオフ期間Toff1とスイッチS2のオン期間Ton2の関係は
【数5】
となり等しくなる。
【0038】
したがって、スイッチS1のオフ期間Toff1とスイッチS2のオン期間Ton2のパルス幅が最少のパルス幅Tmin以上に設定することで、スイッチング制御における極狭パルスの問題は解消することができる。
【0039】
しかし、直流電圧Edと二次電池の電圧EBに近いが、EdがEBに対して±ΔEだけ電圧差(プラス(+) のとき降圧動作、マイナス(-)のとき昇圧動作となる)があるとき、
【数6】
【0040】
このため、EBのEdに対する電圧偏差が降圧動作(+ΔE)になるときは
【数7】
スイッチS2のオンパルス幅Ton2が狭くなるので、最少パルス幅をTminとおくと、 (Ton2>Tmin)を確保する必要があり、スイッチS1のオフパルス幅は
【数8】
となる。
【0041】
また、EBのEdに対する電圧偏差が昇圧動作(-ΔE)になるときは
【数9】
スイッチS1のオフパルス幅Toff1が狭くなるので、最少パルス幅をTminとおくと、(Toff1>Tmin)を確保する必要があり、スイッチS2のオンパルス幅を決める通流比α2は
【数10】
となる。
【0042】
そして、EBのEdに対する電圧偏差が (+ΔE)を超えるときに単独の降圧動作モードあるいは単独の昇圧動作モードに入るようにスイッチング制御信号の発生方法を切り替えることとなる。
【0043】
このとき、単独の降圧動作モードにおけるスイッチS1のオフ期間Toff1で、最少パルス幅Tm 以上確保するとき、
【数11】
【0044】
また、単独の昇圧動作モードにおけるスイッチS2のオン期間Ton2が、最少パルス幅Tm 以上で働かせる必要があるので
【数12】
【0045】
以上より、降圧動作におけるスイッチS1のスイッチングオフ信号のパルス幅が狭くなり、最少パルス幅Tmになったときに、昇降圧動作モードに切り換えると、スイッチS1のスイッチングオフ信号のパルス幅は2Tmとなり、スイッチS2のオン期間のパルス幅はTm となり、極狭パルスの発生を防ぐことができる。
【0046】
また、昇圧動作におけるスイッチS2のスイッチングオン信号のパルス幅が狭くなり、最少パルス幅Tmになったときに、昇降圧動作モードに切り換えると、スイッチS2のスイッチングオン信号のパルス幅は2Tmとなり、スイッチS1のオン期間のパルス幅はTm となり、極狭パルスの発生を防ぐことができる。
【0047】
以上は、本発明による直流電源から充電用二次電池を充電制御するため、一方向昇降圧回路で制御システムを構成したときの説明であったが、充電されている二次電池から直流電源や外部電源に電気エネルギーを取り出すための放電制御法について述べる。
【0048】
図7は、
図1に示した一方向充電回路におけるスイッチとダイオードに対して逆並列にダイオードとスイッチを接続した対称回路構成にすることにより、直流電源から充電用二次電池への充電経路に対して、二次電池から直流電源側に放電制御する経路を設けた双方向昇降圧回路の主回路構成例を示している。
【0049】
図8は、この双方向昇降圧回路による直流電源から二次電池への充電制御動作における降圧動作時の電流経路と昇圧動作時の電流経路を示しており、降圧動作時は動作モード(1)、(2)、昇圧動作時は動作モード(3)、(4)の回路を形成するが、この場合も、動作モード(1)と(4)は同じ回路となるので、昇降圧動作としては(1)~(3)の3つの動作モード間をスイッチ制御することとなる。
【0050】
そして、
図7に示す双方向昇降圧回路は、二次電池から直流電源側に放電制御することができ、
図9に降圧動作時による電流経路と昇圧動作による電流経路を示しており、インダクタに流れる電流が逆方向に流れており、二次電池側から直流電源側への放電経路が形成できることが分かる。
【0051】
このため、
図7に示す双方向昇降圧回路による制御システムでは、二次蓄電池への充電制御動作と逆方向の電流制御による放電制御動作が、インダクタの電流制御における電流基準の正負によって容易に切り替えることができる。
【0052】
次に、本発明の充電制御装置における狭いパルス幅を発生させない具体的なのスイッチング制御信号の発生手法を述べる。
【0053】
図10は、本発明による一方向昇降圧制御回路を用いて、直流電源Edから充電用二次電池EBへの充電制御を行う制御システムを示している。
【0054】
この制御システムでは、インダクタLに流れる電流idを検出し、基準電流Idrと一致させるためのPI制御器の出力vcと、最小値が零で波高値がVpの三角波vtr1と、この三角波をVpだけ直流レベルシフトした三角波Vtr2とを比較することにより、単独の降圧動作時や単独の昇圧動作時のスイッチS1とスイッチS2のスイッチング信号を発生するが、PI制御器の出力vcと三角波の波高値Vpと差Δvが小さくなってきたとき、2つの三角波の大きさやレベルをシフトしてPI制御器の出力と比較し、1スイッチング周期内に降圧動作と昇圧動作をさせるスイッチングパルスを発生することにより、スイッチング信号の最少パルス幅Tm以下にならないように制御している。
【0055】
図中、三角波比較器への入力としてPI制御器の出力vcと三角波vtおよび2つの三角波vtr1の最小値付近の波形とvtr2の最大値付近の波形が重なる程度を決める制御量kとを入力としてスイッチング信号を発生し、ドライブ回路を通して2つのスイッチS1,S2をドライブする構成となっている。
【0056】
ここで、制御量kは、単独の降圧動作や昇圧動作時にスイッチS1のオフ期間Toff1やスイッチS2のオン期間Ton2が最少パルス幅Tm以下にならないように設定する。
【0057】
また、基準電流Idrは、充電用二次電池の電圧や流れ込む電流、積算電力量など、二次電池の充電の状態量をもとに演算設定する。
【0058】
なお、本発明の昇降圧制御回路の制御システムでは、単独の降圧動作と単独の昇圧動作および昇降圧動作の各動作モードの切り換えは、インダクタに流れる電流idが基準電流Idrと一致させるためのPI制御器の出力vcのレベルによって、自動的に行うことができるため、各動作モードの切り換えのために直流電源の電圧Edや充電用二次電機の電圧EBを検出する必要がなく、電圧検出精度の問題も解消することができる。
【0059】
これにより、本発明の充電制御装置は、直流電源と充電用二次電池の電圧の大小関係に係わらず、電流制御システムだけで自動的に降圧動作、昇圧動作あるいは昇降圧動作が切り換えられ充電制御ができる優れた特徴を有している。
【0060】
図11及び
図12は、直流電源電圧と充電用二次電池の電圧EBが近いときに、単独の降圧制御動作や単独の昇圧動作だけでスイッチング信号を発生した時の動作波形を示している。
【0061】
このときの、単独の降圧動作だけでスイッチング制御をかけると、
図11に示すようにスイッチS1のオフ期間Toff1が極めて狭くなってしまうことが分かる。
【0062】
また、
図12は、単独の昇圧動作だけでスイッチング制御をかけたときの制御動作波形を示しており、り、スイッチS2のオン期間Ton2が極めて狭くなってしまうことを示している。
【0063】
これに対して、
図13は、直流電源電圧と充電用二次電池の電圧EBが近いときに、スイッチング周期内に昇圧動作パルスと降圧動作パルスを入れる昇降圧動作をさせたときの制御動作波形を示しており、直流電源電圧Edと充電用二次電池電圧EBが等しくなっても、一定にパルス幅のスイッチング信号を発生しており、極狭パルスを発生することなく制御システムが動作できることが分かる。
【0064】
図14および
図15は、直流電源電圧と充電用二次電圧の電圧が近くなったときの昇降圧動作モードを決める上記の制御量kによって、単独の降圧動作および単独の昇圧動作における最少パルス幅を設定したときの動作波形例を示している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】一方向昇降圧制御回路(直流電源の負側コモン)
【
図2】一方向昇降圧制御回路(直流電源の正側コモン)
【
図3】一方向昇降圧制御回路の降圧動作と昇圧動作における電流経路
【
図4】一方向昇降圧制御回路の降圧動作時の通電経路と動作波形
【
図5】一方向昇降圧制御回路の昇圧動作時の通電経路と動作波形
【
図6】一方向昇降圧制御回路の昇降圧動作時の通電経路と動作波形
【
図8】双方向昇降圧制御回路の充電制御時の通電経路
【
図9】双方向昇降圧制御回路の放電制御時の通電経路
【
図11】単独の降圧動作時におけるスイッチングパルス波形
【
図12】単独の昇圧動作時におけるスイッチングパルス波形
【
図13】昇降圧動作時におけるスイッチングパルス波形
【
図14】昇降圧組み合わせ制御降圧動作時におけるスイッチングパルス波形
【
図15】昇降圧組み合わせ制御昇圧動作時におけるスイッチングパルス波形
【
図16】半導体スイッチング素子(IGBT,MOSFET)による一方向昇降圧制御回路の構成例
【
図17】IGBTスイッチによる双方向昇降圧制御回路の構成例
【
図18】一方向昇降圧制御回路の均等充電回路の電流源としての適用回路例
【
図19】MOSFETスイッチによる一方向昇降圧回路の充電制御システムの実施例
【
図20】シミュレーション条件と回路 (a) 二次電池、(b) 抵抗負荷
【
図21】降圧動作条件下(Ed=100V,EB=96V)でのシミュレーション波形
【
図22】昇圧動作条件下(Ed=100V,EB=104V)でのシミュレーション波形
【
図23】昇降圧動作条件下(Ed=100V,EB=100V)でのシミュレーション波形
【
図24】出力電圧基準変化(0~200V)に対する抵抗負荷(R=10ohm)時のシミュレーション波形
【発明を実施するための形態】
【0066】
図16は、本発明による
図1に示す昇降圧回路の具体的な実施回路構成例であり、同図(a)は、スイッチ素子としてIGBTを用いた回路例、同図(b)とはNMOSFETを用いた回路例を示している。
【0067】
図示するように、半導体スイッチとして2個のIGBTを用いた場合はエミッタが、2個のNMOSFETを用いた場合はソースがいずれも直流電源の負側とコモン接続ができるので、ドライブ回路の構成が容易となる。
【0068】
図17は、本発明による
図7に示した双方向昇降圧回路の4個のスイッチをIGBTで構成した実施回路例であり、IGBTと逆並列に接続したスイッチングアームを直列に接続したスイッチングレグを2個用いて構成することができる。
【0069】
本発明による二次電池の充電制御装置は、小型の携帯機器など小容量蓄電池の充電や数多くの二次蓄電池セルを直列に接続されていても組蓄電池や二次蓄電池セル単位で別途の均等充電等の管理制御がなされている場合など、一括充電制御する目的としても適している。
【0070】
二次電池セルの管理制御手段が必要な場合の、本発明の充電装置の適用例を示す。
【0071】
(特許文献6)は、数多くの二次蓄電池を直列に接続して用いられる場合の組蓄電池単位の均等充放電制御を目的に、簡単化主回路構成で組蓄電池単位での二次電池の充電制御委を行った後、一括充電制御するものである。
【0072】
図18は、このようなケースにおける本発明の一方向昇降圧充電装置の適用例の一つとして、(特許文献6)に示されている二次蓄電池の充電用電流源と用いた時の主回路構成を示している。
【実施例0073】
図19は、本発明による一方向昇降圧制御回路のスイッチにNMOSFTEを用いて構成し、インダクタに流れる電流が基準電流と一致させるPI制御器の出力と、狭いパルスを発生させない2組の三角波と比較して、各スイッチ素子に対するスイッチング信号を発生する
図10に示した制御システムに充電用二次蓄電池の電圧制御ループを付加した制御システムである。
【0074】
ここで、インダクタに流れる電流の基準値は、充電用二次蓄電池の電圧が充電完了電圧基準と一致するようにPI制御器の出力を飽和回路を介して出力より得ており、飽和回路により過電流抑制しながら充電した後は、二次電池が充電完了電圧でフローティング充電することができる。
【0075】
本発明の実施例として、
図20に動作確認をシミュレーション解析により行った主回路構成と回路条件を示す。
【0076】
同図(a)は、直流電圧源(Ed=100V)から二次蓄電池電圧 (EB-100V±4V)に対してシミュレーション解析における回路条件であり、同図(b)は抵抗負荷(R-10 ohm)に対して、出力電圧の基準値Vorを0~200Vまでランプ状に変化させたときのシミュレーション解析における回路条件を示している。