(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043721
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】分配器
(51)【国際特許分類】
H01P 5/19 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
H01P5/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151498
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】藤原 崇史
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型の分配器を提供する。
【解決手段】分配器Sは、入力端子1と第1出力端子21との間に設けられた入力信号の波長の12分の1の線路長の第1伝送線路31と、入力端子1と第1伝送線路31とを接続する信号線41とグランドとの間に設けられた第1コンデンサ51と、第1伝送線路31と第1出力端子21とを接続する信号線42とグランドとの間に設けられた第2コンデンサ52と、入力端子1と第2出力端子22との間に設けられた入力信号の波長の12分の1の線路長の第2伝送線路32と、入力端子1と第2伝送線路32とを接続する信号線43とグランドとの間に設けられた第3コンデンサ53と、第2伝送線路32と第2出力端子22とを接続する信号線44とグランドとの間に設けられた第4コンデンサ54と、信号線42と、信号線44との間に抵抗6を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子から入力された信号を2つに分配して第1出力端子と第2出力端子とに出力する分配器であって、
前記入力端子と前記第1出力端子との間に設けられた第1伝送線路と、
前記入力端子と前記第1伝送線路とを接続する信号線とグランドとの間に設けられた第1コンデンサと、
前記第1伝送線路と前記第1出力端子とを接続する信号線とグランドとの間に設けられた第2コンデンサと、
前記入力端子と前記第2出力端子との間に設けられた第2伝送線路と、
前記入力端子と前記第2伝送線路とを接続する信号線とグランドとの間に設けられた第3コンデンサと、
前記第2伝送線路と前記第2出力端子とを接続する信号線とグランドとの間に設けられた第4コンデンサと、
前記第2コンデンサと前記第1出力端子とを接続する信号線と、前記第4コンデンサと前記第2出力端子とを接続する信号線との間に設けられた抵抗と、
を有し、
前記第1伝送線路及び前記第2伝送線路は、前記入力端子に入力される信号の波長の12分の1の線路長を有する、
分配器。
【請求項2】
前記第1伝送線路及び前記第2伝送線路それぞれの特性インピーダンスは同一であり、
前記第1コンデンサ、前記第2コンデンサ、前記第3コンデンサ及び前記第4コンデンサそれぞれの容量は同一である、
請求項1の分配器。
【請求項3】
前記入力端子の特性インピーダンスをZとし、前記抵抗の抵抗値をRとした場合に、R=2×Zであり、
前記第1伝送線路及び前記第2伝送線路それぞれの特性インピーダンスをZ0とした場合に、Z0=2×√(R×Z)であり、
前記容量をCとし、前記入力端子から入力された信号の周波数をfとした場合に、C=1/(2πfZ0/2)である、
請求項2に記載の分配器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号を2つの出力信号に分配する分配器に関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号を2つの出力信号に分配する分配器が知られている。特許文献1には、入力信号に入力される信号の波長の4分の1の長さの伝送線路を有するウィルキンソン型分配器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウィルキンソン型分配器では、入力信号に入力される信号の波長の4分の1の長さの伝送線路を必要とするため、信号の波長の4分の1の長さよりも分配器を小さくすることができなかった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、分配器を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、入力端子から入力された信号を2つに分配して第1出力端子と第2出力端子とに出力する分配器であって、前記入力端子と前記第1出力端子との間に設けられた第1伝送線路と、前記入力端子と前記第1伝送線路とを接続する信号線とグランドとの間に設けられた第1コンデンサと、前記第1伝送線路と前記第1出力端子とを接続する信号線とグランドとの間に設けられた第2コンデンサと、前記入力端子と前記第2出力端子との間に設けられた第2伝送線路と、前記入力端子と前記第2伝送線路とを接続する信号線とグランドとの間に設けられた第3コンデンサと、前記第2伝送線路と前記第2出力端子とを接続する信号線とグランドとの間に設けられた第4コンデンサと、前記第2コンデンサと前記第1出力端子とを接続する信号線と、前記第4コンデンサと前記第2出力端子とを接続する信号線との間に設けられた抵抗と、を有し、前記第1伝送線路及び前記第2伝送線路は、前記入力端子に入力される信号の波長の12分の1の線路長を有する、分配器を提供する。
【0007】
前記第1伝送線路及び前記第2伝送線路それぞれの特性インピーダンスは同一であり、前記第1コンデンサ、前記第2コンデンサ、前記第3コンデンサ及び前記第4コンデンサそれぞれの容量は同一であってもよい。
【0008】
前記入力端子の特性インピーダンスをZとし、前記抵抗の抵抗値をRとした場合に、R=2×Zであり、前記第1伝送線路及び前記第2伝送線路それぞれの特性インピーダンスをZ0とした場合に、Z0=2×√(R×Z)であり、前記容量をCとし、前記入力端子から入力された信号の周波数をfとした場合に、C=1/(2πfZ0/2)であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分配器を小さくできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る分配器の構成を示す図である。
【
図2】出力信号のゲインの周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る分配器Sの構成を示す図である。分配器Sは、入力端子1から入力された入力信号を2つに分配して第1出力端子21と第2出力端子22とに出力する。分配器Sは、第1伝送線路31と、第2伝送線路32と、第1コンデンサ51と、第2コンデンサ52と、第3コンデンサ53と、第4コンデンサ54と、抵抗6とを備える。
【0012】
第1伝送線路31は、入力端子1と第1出力端子21との間に設けられている。第1伝送線路31は、入力信号の波長λの12分の1の線路長を有する。例えば、入力信号の周波数fが1000MHzである場合、入力信号の波長λは約300ミリメートルであり、第1伝送線路31の線路長は約25ミリメートルである。
【0013】
第2伝送線路32は、入力端子1と第2出力端子22との間に設けられている。第2伝送線路32は、第1伝送線路31と同様に、入力信号の波長λの12分の1の線路長を有する。
【0014】
第1コンデンサ51は、入力端子1と第1伝送線路31とを接続する信号線41とグランドとの間に設けられている。第2コンデンサ52は、第1伝送線路31と第1出力端子21とを接続する信号線42とグランドとの間に設けられている。
【0015】
第3コンデンサ53は、入力端子1と第2伝送線路32とを接続する信号線43とグランドとの間に設けられている。第4コンデンサ54は、第2伝送線路32と第2出力端子22とを接続する信号線44とグランドとの間に設けられている。
【0016】
抵抗6は、信号線42と信号線44との間に設けられている。具体的には、抵抗6は、信号線42と第2コンデンサ52が接続された接続点71と第1出力端子21とを接続する信号線と、信号線44と第4コンデンサ54が接続された接続点72と第2出力端子22とを接続する信号線との間に設けられている。
【0017】
以下、分配器Sが有する各部の値の決定方法について説明する。まず、抵抗6の抵抗値が、入力端子1の特性インピーダンスに基づいて定められる。具体的には、抵抗6の抵抗値をRとし、入力端子1の特性インピーダンスをZとした場合、Rは下記式(1)を用いて算出される。
R=2×Z…(1)
特性インピーダンスZの具体的な値は、例えば50Ωである。
【0018】
次に、第1伝送線路31及び第2伝送線路32の特性インピーダンスが、Rに基づいて定められる。なお、第1伝送線路31及び第2伝送線路32の特性インピーダンスは同一である。第1伝送線路31及び第2伝送線路32の特性インピーダンスをZ0とした場合、Z0は下記式(2)を用いて算出される。
Z0=2√(Z×R)…(2)
【0019】
そして、第1コンデンサ51、第2コンデンサ52、第3コンデンサ53及び第4コンデンサ54の容量が、Z0及び周波数fに基づいて定められる。なお、第1コンデンサ51、第2コンデンサ52、第3コンデンサ53及び第4コンデンサ54の容量は同一である。第1コンデンサ51、第2コンデンサ52、第3コンデンサ53及び第4コンデンサ54の容量は、容量をCとした場合、下記式(3)を用いて算出される。
C=1/(2πfZ0/2)…(3)
なお、πは円周率である。
【0020】
図2は、出力信号のゲインの周波数特性を示す図である。
図2の横軸は周波数[MHz]を示し、縦軸は出力信号のゲイン[dB]を示す。
【0021】
実線Aは、本実施形態に係る分配器Sの第1出力端子21から出力された出力信号のゲインの周波数特性を示す。実線Aは、0MHzから入力信号の周波数fである1000MHzにおいて-3.5~-3dBのゲインを示している。また、実線Aは、周波数が1000MHzよりも高くなるほど減衰している。このように、本実施形態に係る分配器Sは、0MHzから入力信号の周波数fまでの周波数の信号を通過させ、1000MHzよりも高い周波数の信号を減衰させるローパスフィルタとしても機能する。
【0022】
破線Bは、従来のウィルキンソン型分配器を用いた比較例の出力信号のゲインの周波数特性を示す。破線Bは、周波数が1000MHzよりも高くなっても減衰しない。このように、比較例に係る分配器は、ローパスフィルタとしては機能しない。
【0023】
[サイズの比較]
従来のウィルキンソン型分配器の伝送線路は、入力信号の波長の4分の1の線路長を必要とする。そのため、従来のウィルキンソン型分配器では、入力信号の波長の4分の1よりも小さくすることができない。例えば、波長が300ミリメートルの入力信号を分配するための従来のウィルキンソン型分配器は、75ミリメートルよりも小さくすることができない。
【0024】
一方、本実施形態に係る分配器Sの伝送線路は、入力信号の波長の12分の1の線路長を有すればよい。そのため、波長が300ミリメートルの入力信号を分配するための本実施形態に係る分配器Sの伝送線路の線路長は、25ミリメートルでよい。このように、本実施形態に係る分配器Sは、従来のウィルキンソン型分配器の大きさに対して3分の1程度の大きさにすることができる。
【0025】
[分配器Sの効果]
以上説明したとおり、本実施形態に係る分配器Sは、入力信号の波長の12分の1の線路長を有する2つの伝送線路、各伝送線路と入力端子1を接続する信号線とグランドとの間、及び各伝送線路と2つの出力端子それぞれを接続する信号線とグランドとの間に配置された4つのコンデンサ、及び2つの出力端子間に設けられた抵抗6を備える。このようにすることで、本実施形態に係る分配器Sは、2つの伝送線路の長さを入力信号の波長の4分の1よりも短くすることができる。したがって、本実施形態に係る分配器Sの大きさを、入力信号の波長の4分の1の長さよりも小さくできる。
【0026】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0027】
1 入力端子
21 第1出力端子
22 第2出力端子
31 第1伝送線路
32 第2伝送線路
41 信号線
42 信号線
43 信号線
44 信号線
51 第1コンデンサ
52 第2コンデンサ
53 第3コンデンサ
54 第4コンデンサ
6 抵抗