(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043781
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】宇宙エンターテイメント中継装置
(51)【国際特許分類】
B64G 1/10 20060101AFI20230322BHJP
B64G 1/36 20060101ALI20230322BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B64G1/10 600
B64G1/36 100
B64G1/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151581
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】716003571
【氏名又は名称】株式会社バサイ
(72)【発明者】
【氏名】西野 有
(57)【要約】
【課題】新しい技術を宇宙空間へ運び、運用するために必要な周辺技術を確立するための実証実験の機会を作るためには多くの費用がかかる。また、この費用を捻出する方法として、実証試験自体をエンターテイメントとし、それを視聴してもらうことで資金を得るという方法があるが、地上から小型の人工衛星を撮影することは困難である。
【解決手段】被写体である人工衛星に搭載されたGPS受信機により計算された当該人工衛星の位置と、カメラを搭載した撮影用の人工衛星に搭載されたGPS受信機で計算された位置と、撮影用衛星に搭載したスタートラッカーで得た撮影用衛星の姿勢方向から、搭載したカメラの方向あるいは撮影用人工衛星の向きを制御して被写体の人工衛星を撮影し、地上に映像を送信することで、いつでも指定した人工衛星の映像を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙空間において、GPS受信機を備えた第1の人工衛星と、カメラと、GPS受信機と、スタートラッカーを備えた第2の人工衛星において、第1の人工衛星のGPS受信機で得られた第1の人工衛星の位置と、第2の人工衛星のGPS受信機で得られた第2の人工衛星の位置と、第2の人工衛星のスタートラッカーで得られた第2の人工衛星の姿勢を用いて、第2の人工衛星に搭載したカメラの方向を、第1の人工衛星に向けることを特徴とした宇宙エンターテイメント中継装置。
【請求項2】
宇宙空間において、GPS受信機を備えた複数の人工衛星からなる第1のグループと、カメラと、GPS受信機と、スタートラッカーを備えた1つ以上の人工衛星からなる第2のグループと、この第2の人工衛星のグループが撮影した第1の人工衛星のグループの画像を配信する手段と、広告を配信する手段を備えた装置において、先の画像と、広告を同じ画面に表示することを特徴とした請求項1の宇宙エンターテイメント中継装置。
【請求項3】
宇宙空間において、GPS受信機を備えた複数の人工衛星からなる第1のグループと、カメラと、GPS受信機と、スタートラッカーを備えた1つ以上の人工衛星からなる第2のグループと、この第2の人工衛星のグループが撮影した第1の人工衛星のグループの画像を配信する手段と、上記第1のグループの各人工衛星を指定する手段と、金額を指定する手段と、指定した人工衛星に対して指定した金額を支払う手段を備えたことを特徴とする請求項1の宇宙エンターテイメント中継装置。
【請求項4】
第2の人工衛星のグループが撮影した第1の人工衛星のグループの画像を配信する手段としてインターネットと、ウェブブラウザを用いることを特徴とする請求項2あるいは請求項3の宇宙エンターテイメント中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙空間でのエンターテイメントの中継装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、宇宙開発は政府の主導により技術開発を進めてきたが、近年では振興の小規模事業者も宇宙開発に役立つ技術を開発しつつある。しかし、その有用性を示すには、宇宙へ打ち上げて実証する必要があり、そのためには、軌道投入から、宇宙空間での移動・制御、発電や排熱、通信といった周辺技術をすべて持っていなくてはならない。それができない場合には、有用な優れた技術が世の中に示されずに埋もれてしまう可能性がある。
【0003】
これに対して、新しい技術を宇宙空間へ運び、運用するために必要な周辺技術を確立するための実証実験の機会を作るという方策もあるが、それには多くの費用がかかる。この費用を捻出する方法として、実証試験自体をエンターテイメントとし、それを視聴してもらうことで資金を得るという方法があるが、地上から小型の人工衛星を撮影することは困難である。
【0004】
実証試験をエンターテイメントとして、それを視聴してもらうためには、複数の人工衛星が参加するコンテストやレースとし、それぞれの人工衛星の特徴的な技術が宇宙空間で使用されている映像を撮影し、それを地上へ送信する仕組みが必要である。
【0005】
また、レース中はそれぞれの衛星が移動している場所をタイムリーに知る装置が必要である。
【0006】
さらに、資金を集める方法として、視聴者が応援する人工衛星を開発した事業者に対して、レース中に寄付を行うことが効果的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、宇宙空間を移動する特定の人工衛星を撮影することである。また、少なくとも1つの特定の人工衛星の場所をタイムリーに表示することである。また、上記人工衛星が宇宙空間を移動する間に人工衛星の開発事業者に寄付をすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被写体である人工衛星に搭載されたGPS受信機により計算された当該人工衛星の位置を、カメラを搭載した撮影用の人工衛星に伝え、当該撮影用人工衛星に搭載されたGPS受信機で計算された位置と、被写体の人工衛星の位置、および撮影用衛星に搭載したスタートラッカーで得た撮影用衛星の姿勢方向から、カメラの方向あるいは撮影用人工衛星の向きを制御して被写体の人工衛星を撮影し、地上に画像を送信することで、常に特定の人工衛星の映像を得ることができる。
【0009】
また、少なくとも1つ以上の被写体の人工衛星の位置をインターネット上の特定のサイトで公開することで、そのサイトへの閲覧数を増やす効果が期待できる。
【0010】
さらに、上記特定のサイトに、各々の被写体の人工衛星の開発事業者向けの寄付を行うためのボタンや、寄付金額を決めるボタンを設けることで、開発資金を容易に得ることが期待できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の宇宙エンターテイメント中継装置は、被写体である人工衛星に搭載されたGPS受信機により計算された当該人工衛星の位置を、カメラを搭載した撮影用の人工衛星に伝え、当該撮影用人工衛星に搭載されたGPS受信機で計算された位置と、被写体の人工衛星の位置、および撮影用衛星に搭載したスタートラッカーで得た撮影用衛星の姿勢方向から、カメラの方向あるいは撮影用人工衛星の向きを制御して被写体の人工衛星を撮影し、中継衛星等を介して地上に画像を送信することで、常に特定の人工衛星の映像を得ることができるという利点がある。
【0012】
また、少なくとも1つ以上の被写体の人工衛星の位置をインターネット上の特定のサイトで公開することで、そのサイトへの閲覧数を増やす効果が期待でき、そのサイトに、各々の被写体の人工衛星の開発事業者向けの寄付や出資を行うためのボタンや、寄付・出資の金額を決めるボタンを設けることで、開発資金を容易に得ることが期待できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は宇宙エンターテイメント中継装置の実施例の構成図である。
【
図2】
図2は宇宙エンターテイメント中継装置の実施例の撮影時の説明図である。
【
図3】
図3は宇宙エンターテイメント中継装置の実施例の表示の概要図である。
【
図4】
図4は宇宙エンターテイメント中継装置の実施例の別の表示の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
宇宙空間を移動する特定の人工衛星を撮影するという目的を、特定の人工衛星に搭載されたGPS受信機、撮影のための人工衛星に搭載されたGPS受信機とスタートラッカーを用いてカメラの方向を特定の人工衛星の方に向けることで実現した。また、開発資金を容易に得るという目的を、人工衛星の位置をインターネット上の特定のサイトで公開して広告料を得たり、さらに人工衛星の開発事業者向けの寄付や出資を行うためのボタンや、寄付・出資の金額を決めるボタンを設けることで実現した。
【実施例0015】
図1は、本発明装置の実施例の撮影衛星の概要図であって、
100は宇宙ステーション、
110は第1の競技衛星、
111は第2の競技衛星、
112は第3の競技衛星、
121は第1の目標衛星、
122は第2の目標衛星、
131は第1の撮影衛星、
132は第2の撮影衛星、
133は第3の撮影衛星、
である。
【0016】
第1の競技衛星110、第2の競技衛星111および第3の競技衛星112は、競技に参加するそれぞれの事業者が設計、製造した衛星であり、事業者が開発した機器の他に、競技の主催者が支給あるいは販売する標準機器を搭載している。このように、設計を分担し合うことで、より早く宇宙空間で事業者の開発した技術を実証できる。
【0017】
宇宙ステーション100は、地球から宇宙輸送機で物資の輸送が可能で、地上との通信が可能であり、宇宙輸送機で運ばれた先の競技衛星を保管し、宇宙空間に放出する能力を有する。
【0018】
第1の目標衛星121と第2の目標衛星122は、先の競技衛星110~112が通過すべきコースを決定するとともに、競技衛星が実行すべき課題を搭載している。この実施例では、第1の目標衛星121にはQRコード表示板が搭載されている。また、第2の目標衛星122には数字の記載されたボタンが搭載されている。(QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です)
【0019】
第1の撮影衛星131と第2の撮影衛星132と第3の撮影衛星133は、競技のコース上にあらかじめ配置されているか、各競技衛星と共に移動する。撮影衛星にはジンバルを介してカメラが備えられており、カメラの方向を自由に変えられる。撮影した動画は撮影衛星内のデータレコーダに一旦記録され、無線回線を介してISSに送られる。こうすることで、データ容量の大きい高分解能の動画を、時間をかけて低データ容量の無線回線で送ることができる。
【0020】
各競技衛星110から112は、同時刻に宇宙ステーション100を出発し、第1の目標衛星に向けて移動する。
【0021】
各競技衛星は、第1の目標衛星121および第2の目標衛星122に近づいた際に、各目標衛星に表示されたQRコードを読み取ることで、コースの指定の場所を通過したこととする。その場合は、各競技衛星は読み取ったQRコードの数字をISSを介して地上に送信し、地上にてあらかじめ決められた数字と照合し、数字が適合したことを確認することで通過とする。
【0022】
あるいは目標衛星から発せられる微弱な電波を各競技衛星が受信し、複号して得られた数字をISSを介して地上に送信し、地上にてあらかじめ決められた数字と照合し、数字が適合したことを確認することで通過とする。
【0023】
あるいは各競技衛星から発せられる微弱な電波を各目標衛星が受信し、複号して得られた数字をISSを各競技衛星ごとにあらかじめ決められた数字と照合し、数字が適合したことで通過とする。この場合は通過と同時に目標衛星に通過した競技衛星の番号や名前を表示する表示機を備えておくことで、各競技衛星は通過を確認されたことを知ることができる。
【0024】
第1の目標衛星121および第2の目標衛星122の課題をクリアした競技衛星は、宇宙ステーション100へ帰還し、ゴールする。
【0025】
図2は、本発明装置の実施例の撮影時の説明図であって、
100は宇宙ステーション、
110は第1の競技衛星、
131は第1の撮影衛星、
201はカメラ、
202はスタートラッカー、
210は第1の恒星、
211は第2の恒星、
220は第1の競技衛星の位置情報、
221は第1の競技衛星の位置情報、
230はカメラの視野、
である。
【0026】
この実施例の中で、第1の競技衛星110を第1の撮影衛星131が撮影する場合を用いて撮影の説明をする。
【0027】
第1の競技衛星110と第1の撮影衛星131はともにGPS受信機を搭載し、自分の位置を知ることができる。第1の競技衛星110は、自分の位置情報220を宇宙ステーション100へ送信する。宇宙ステーション100は、再び第1の競技衛星の位置情報221を第1の撮影衛星131へ送信する。第1の撮影衛星131は搭載したGPS信号受信機により自分の位置を知っているので、第1の競技衛星110がどの方向にいるのかを知ることができる。しかし、これだけでは、カメラ201を第1の競技衛星に向けることはできない。なぜなら、第1の撮影衛星131がどの方向を向いているかを知る必要があるからである。第1の撮影衛星131にはスタートラッカー202が搭載されており、これにより自分の向いている方向を知ることができ、すなわち、自分の衛星に対してカメラをどの方向に向ければ、第1の競技衛星110の方向を向くかを知ることができる。
【0028】
カメラ201はジンバルを介して第1の撮影衛星131に搭載されているため、第1の撮影衛星131を動かさなくても第1の競技衛星110の方向を向くことができる。
【0029】
このように第1の撮影衛星131は、撮影すべき目標の位置を知ることができ、また自分の位置を知ることができ、また自分の向いている方向を知ることができるため、撮影すべき衛星の方向にカメラ201を向けることができる。
【0030】
図3は、本発明装置の実施例の表示の概要図であって、
300は視聴者のコンピュータ、
310はウェブブラウザ、
311、312はウェブページのタブ
320は中継画像、
331は宇宙ステーション、
332は第1の競技衛星、
333は第2の競技衛星、
340は広告、
である。
【0031】
視聴者のコンピュータ300上で、ウェブブラウザ310を本発明の提供するサイトに接続すると、Dataというタグ311とMovieというタグ312が表示される。Movieというタグ312には、第1の撮影衛星の画像320が映し出されており、その画像には宇宙ステーション331、第1の競技衛星332、第2の競技衛星333が映っている。また、中継画像の横には広告340が載っている。
【0032】
このように視聴者はいつでも競技の様子を見ることができ、また競技の主催者は広告収入を得ることができる。
【0033】
図4は、本発明装置の実施例の別の表示の概要図であって、
300は視聴者のコンピュータ、
310はウェブブラウザ、
311、312はウェブページのタブ
410はウェブブラウザ、
411は宇宙ステーションを示すマーク、
412は第1の目標衛星を示すマーク、
413は第2の目標衛星を示すマーク、
414は第1の競技衛星の飛行経路、
415は第2の競技衛星の飛行経路、
416は第3の競技衛星の飛行経路、
417は第1の撮影衛星を示すマーク、
418は第2の撮影衛星を示すマーク、
419は第3の撮影衛星を示すマーク、
420は第1の競技衛星の写真、
421は第2の競技衛星の写真、
422は第3の競技衛星の写真、
430は第3の競技衛星への寄付ボタン、
431は寄付金額設定ボタン、
440は広告、
である。
【0034】
視聴者のコンピュータ300上で、ウェブブラウザ310を本発明の提供するサイトに接続すると、Dataというタグ311とMovieというタグ312が表示される。Dataというタグ311には、宇宙ステーションを示すマーク411、第1の目標衛星を示すマーク412、第2の目標衛星を示すマーク413、第1の競技衛星の飛行経路414、第2の競技衛星の飛行経路415、第3の競技衛星の飛行経路416、第1の撮影衛星を示すマーク417、第2の撮影衛星を示すマーク418、第3の撮影衛星を示すマーク419が図示されている。また、その横には第1の競技衛星の写真420、第2の競技衛星の写真421、第3の競技衛星の写真422が表示されている。それぞれの写真の近くに
各競技衛星への寄付ボタンがあり、第3の競技衛星の写真422の近くに第3の競技衛星への寄付ボタン430が表示されている。また、寄付金額設定ボタン431と広告440も表示されている。
【0035】
このように表示されるため、視聴者は各競技衛星のこれまでの飛行経路や、現在の位置を知ることができる。また、写真420から422をクリックすることで、各競技衛星の性能や、ストーリーを表示させることもできる。寄付金額設定ボタン431に第3の競技衛星の開発事業者に寄付したい金額を入力し、第3の競技衛星への寄付ボタン430をクリックすることで、第3の競技衛星の開発事業者に寄付することができる。また、広告440を掲載することで、競技の主催者は広告収入を得ることができる
宇宙空間を移動する特定の人工衛星を撮影し、人工衛星の場所をタイムリーに表示することで、エンターテイメントとしての競技を行い、それを視聴してもらうことで資金を集め、人工衛星を開発した事業者に還元することで、新規事業者が新しい技術の開発資金を容易に得ることを容易にする。