(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043788
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】形成材料、形成材料生成方法及び練り菓子
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
A23G3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151588
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】516136527
【氏名又は名称】株式会社手毬
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】御園井 裕子
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GP02
4B014GP23
(57)【要約】
【課題】練り菓子の製造に関する専門家と同等の知識や経験が乏しい一般者が、専門家から提供される練り菓子と同等の味を、容易に再現することを可能とする。
【解決手段】練り菓子を形成するための形成材料は、練り菓子の原材料を調理し、練り、練り菓子を形成可能な第1次材料を得て、第1次材料を、乾燥させて第2次材料を得て、第2次材料を粉砕したものであり、所定の温度範囲に加熱された液体が加えられ、練られてから、密封され、所定時間経過後に、練り菓子に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
練り菓子を形成するための形成材料であって、
前記練り菓子の原材料を調理し、練り、前記練り菓子を形成可能な第1次材料を得て、
前記第1次材料を、乾燥させて第2次材料を得て、
前記第2次材料を粉砕したものであることを特徴とする形成材料。
【請求項2】
所定の温度範囲に加熱された液体が加えられ、練られてから、密封され、所定時間経過後に、前記練り菓子に形成されることを特徴とする請求項1に記載の形成材料。
【請求項3】
加えられる前記液体の量が、練られてから前記練り菓子に形成されるまでの時間に応じて異なることを特徴とする請求項2に記載の形成材料。
【請求項4】
請求項1に記載の形成材料に、
所定の温度範囲に加熱された液体が加えられ、練られてから、密封され、所定時間経過後に、外観が形成された練り菓子。
【請求項5】
練り菓子を形成するための形成材料を生成する形成材料生成方法であって、
練り菓子の原材料を調理し、練り、前記練り菓子を形成可能な第1次材料を得るステップと、
前記第1次材料を、乾燥させて第2次材料を得るステップと、
前記第2次材料を粉砕するステップと、
を含むことを特徴とする形成材料生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形成材料に関する。さらに詳細には、本発明は、練り菓子を形成するための形成材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、練り菓子は、小豆や砂糖等の原材料が調理された餡や着色料等に、水を加えながら混ぜたり、加熱したりすることで、生地を作成し、この生地を所定形状に形成することで、完成させる。
【0003】
このような練り菓子として、甘味料としてソルボース単独あるいはソルボースと他の甘味料とを組み合わせて含有することを特徴とする保存性の良い練り物菓子が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、練り菓子を、生成する経験と知識を有する者である専門家(例えば、和菓子屋等)から購入するのではなく、専門家と同等の知識や経験が乏しい一般者が、自分で、練り菓子を作りたいという要望がある。練り菓子は、例えば、小豆や砂糖等の原材料が調理された餡を生成し、この餡を、所定の形状に形成することで、作ることができる。
【0006】
しかしながら、練り菓子を形成する餡は、専門家の知識や経験に基づく、原材料の配分や、調理における加熱管理等により生成されることで、一般者が美味しいと感じるものとなる。このため、専門家と同等の知識や経験が乏しい一般者が、自分で、餡を生成した場合、専門家から購入した練り菓子と同等の味を再現するのは困難である。
【0007】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、練り菓子の製造に関する専門家と同等の知識や経験が乏しい一般者が、専門家から提供される練り菓子と同等の味を、容易に再現することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る形成材料は、
(1) 練り菓子を形成するための形成材料であって、
前記練り菓子の原材料を調理し、練り、前記練り菓子を形成可能な第1次材料を得て、
前記第1次材料を、乾燥させて第2次材料を得て、
前記第2次材料を粉砕したものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の形成材料の上記(1)の構成によれば、練り菓子を形成するための形成材料は、練り菓子の原材料を調理し、練り、練り菓子を形成可能な第1次材料を得て、この第1次材料を、乾燥させて第2次材料を得る。
そして、形成材料は、この第2次材料を粉砕したものである。
【0010】
これにより、例えば、練り菓子を、生成する経験と知識を有する者である専門家(例えば、和菓子屋等)が、練り菓子の原材料(例えば、小豆、砂糖、着色料等)を調理し、練り、練り菓子を形成可能な第1次材料(例えば、餡等)を生成する。これにより、専門家により生成された第1次材料が得られる。
【0011】
ここで、第1次材料の状態では、賞味期限が限られ、例えば、第1次材料を、専門家と同等の知識や経験が乏しい一般者に提供する場合、流通方法が限られる(例えば、冷凍・冷蔵による輸送等)。また、一般者がこの第1次材料を使用して練り菓子を生成する場合、賞味期限内の使用に制限される。
【0012】
そこで、本発明では、第1次材料を、乾燥させて第2次材料を得ることで、賞味期限を延長できる。また、この第2次材料を粉砕して、練り菓子を形成するための形成材料とすることで、形成材料を粉状態にして流通することが可能となるので、例えば、所定量を小分けにして流通することが可能となる。
【0013】
このような形成材料は、専門家により生成された第1次材料に基づくものである。このため、一般者は、この形成材料を使用して、練り菓子を形成することで、専門家から提供される練り菓子と同等の味を、容易に再現することが可能となる。
したがって、本発明の形成材料の上記(1)の構成によれば練り菓子の製造に関する専門家と同等の知識や経験が乏しい一般者が、専門家から提供される練り菓子と同等の味を、容易に再現することが可能となる。
【0014】
本発明の形成材料の上記(1)の形成材料は、以下の(2),(3)のような構成にすることが好ましい。
【0015】
(2) 所定の温度範囲に加熱された液体が加えられ、練られてから、密封され、所定時間経過後に、前記練り菓子に形成される。
【0016】
上記(2)の好ましい構成によれば、例えば、一般者は、専門家から提供された形成材料に、所定の温度範囲に加熱された液体(例えば、20℃~80℃に加熱された水等)を加え、練り、練ったものを密封し、所定時間(例えば、1日等)寝かせる。
これにより、一般者は、専門家から提供された形成材料から、専門家が生成した第1次材料と同等のものを生成することができる。
【0017】
そして、一般者は、専門家が生成した第1次材料と同等のものを、所望の形状に形成することで、専門家から提供される練り菓子と同等の味を有し、所望の形状に形成した練り菓子を得ることができる。
【0018】
(3) 加えられる前記液体の量が、練られてから前記練り菓子に形成されるまでの時間に応じて異なる。
【0019】
ここで、形成材料に液体を加え練った練り材料は、徐々に乾燥していく。練り材料の乾燥が進むと、粘度が低下し、所望の形状に形成するのが困難になる。ところが、練り材料を所定の外観の練り菓子に形成する時間は、この作業を行う者により、様々である。例えば、専門家であれば手早く形成できるし、経験が乏しい一般者であれば形成に時間がかかる。
【0020】
(3)の構成によれば、練り材料を所定の外観の練り菓子に形成する時間に応じて、液体の量を調整できるので、練り材料を所定の外観の練り菓子に形成する者の技量を問わず、練り材料を適正な状態とすることができるので、練り菓子の形成が容易になる。
【0021】
本発明の第2の態様に係る練り菓子は、(1)に記載の形成材料に、
所定の温度範囲に加熱された液体が加えられ、練られてから、密封され、所定時間経過後に、外観が形成されている。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、上記(2)と同様に作用効果を奏する。
【0023】
本発明の第3の態様に係る形成材料生成方法は、
練り菓子を形成するための形成材料を生成する形成材料生成方法であって、
練り菓子の原材料を調理し、練り、前記練り菓子を形成可能な第1次材料を得るステップと、
前記第1次材料を、乾燥させて第2次材料を得るステップと、
前記第2次材料を粉砕するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、上記(1)と同様に作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、練り菓子の製造に関する専門家と同等の知識や経験が乏しい一般者が、専門家から提供される練り菓子と同等の味を、容易に再現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態における練り菓子を形成する工程を説明する図である。
【
図2】本発明の一実施形態における形成材料に加える水の温度と量の一例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態における練り菓子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態では、小豆等を原材料とする餡により形成する練り菓子の一例である練り切りを例に説明するが、これに限らず、栗や芋等のその他の食材を原材料とする餡を用いてもよい。また、本発明は、和菓子に限らず、調理し、練った食材を形成する菓子であれば、和菓子に限らず、洋菓子や中華菓子にも適用できる。
【0028】
[練り菓子の形成工程]
まず、本発明の一実施形態における形成材料の形成工程について、
図1を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態における練り菓子を形成する工程を説明する図である。
本実施形態において、少なくともステップS1は、練り菓子を、生成する経験と知識を有する者である専門家(例えば、和菓子屋等の専門家)により行われる。ステップS2及びステップS3は、例えば、フリーズドライを行う者により行われてもよいし、専門家が行ってもよい。また、ステップS3により生成された形成材料は、専門家や、流通業者から、ステップS1を行った専門家とは別の者(例えば、専門家と同等の知識や経験が乏しい一般者等)に提供される。そして、ステップS4及びステップS5は、この別の者により行われる。
【0030】
ステップS1においては、小豆や砂糖や着色料等を、それぞれ適量混ぜて、加熱等の調理を行い、練り、練り菓子を形成可能な第1次材料を生成する。第1次材料は、そのまま外観を形成することで、練り菓子とすることが可能である。
【0031】
ステップS2においては、ステップS1で生成した第1次材料を乾燥した第2材料を生成する。なお、本実施形態では、ステップS2において、第1次材料を、公知の技術により凍結乾燥しているが、例えば、温風乾燥してもよい。
【0032】
ステップS3においては、ステップS2で生成した第2次材料を粉砕し、粉状態(例えば、平均粒径:5~10μm)の形成材料を生成する。
【0033】
例えば、ステップS3で生成した形成材料は、所定量(例えば、50g、100g等)毎に容器に封入され、流通され、ステップS1で第1次材料を生成した者とは別の者に提供される。このとき、容器に封入された形成材料の所定量に加える液体(例えば、加熱された水等)の量を示唆する情報も提供することで、形成材料の提供を受けた別の者は、形成材料に、上記情報に基づく液体を加え、練ることで、適正な状態の練り材料を得ることができる。
【0034】
ステップS4においては、ステップS3で生成された形成材料に、所定の温度範囲に加熱された液体(例えば、水等)を加え、練って練り材料を得る。そして、この練り材料を密封する(例えば、食品用ラップフィルムで覆い、水分の蒸発を防止する。)。
【0035】
図2は、本発明の一実施形態における形成材料に加える水の温度と量の一例を示す図である。
図2に示すように、形成材料に加える液体(例えば、水等)の好適な量は、練り材料の密封を開放してから練り菓子に形成されるまでの時間(外観形成時間)に応じて異なる。
【0036】
外観形成時間が5分を超える場合(例えば、専門家と同等の知識や経験が乏しい一般者が外観を形成する場合)、形成材料量50gに対して、液体量は30gが望ましい。このような配合の場合、練り材料の状態は、比較的柔らかく、色が比較的濃くなる。
【0037】
このような配合の場合、液体の温度は、60℃以上だと、練り材料において、形成材料の溶け残りが少なく、形成材料と液体の馴染みが早い(混ざりやすい)。
また、液体の温度は、35℃以上~60℃未満の範囲だと、形成材料の溶け残りが少しあり、形成材料と液体の馴染みは普通である。
また、液体の温度は、20℃以上~35℃未満の範囲だと、だまになり易い。
【0038】
次に、外観形成時間が3分~5分の場合(例えば、専門家又は専門家と同等の知識や経験を有する者が外観を形成する場合)、形成材料量50gに対して、液体量は25gが望ましい。このような配合の場合、練り材料の状態は、普通(比較的、所望の形に形成し易く、滑らかな状態)である。
【0039】
このような配合の場合、液体の温度は、60℃以上だと、練り材料において、形成材料の溶け残りが少なく、形成材料と液体の馴染みが早い(混ざりやすい)。
また、液体の温度は、35℃以上~60℃未満の範囲だと、形成材料の溶け残りが少しあり、形成材料と液体の馴染みは普通である。
また、液体の温度は、20℃以上~35℃未満の範囲だと、だまになり易いが、比較的長く寝かせることで、所望の形に形成し易い状態となる。
【0040】
次に、外観形成時間が3分未満の場合(例えば、抜き型等により、外観を形成する場合)、形成材料量50gに対して、液体量は20gが望ましい。このような配合の場合、練り材料の状態は、硬くなる。
【0041】
このような配合の場合、液体の温度は、60℃以上だと、練り材料において、形成材料の溶け残りが少なく、形成材料と液体の馴染みが早い(混ざりやすい)。
また、液体の温度は、35℃以上~60℃未満の範囲だと、形成材料の溶け残りが少しあり、形成材料と液体の馴染みは普通である。
また、液体の温度は、20℃以上~35℃未満の範囲だと、だまになり易い。
【0042】
図1に戻って、ステップS4で得た練り材料を密封した後、所定時間(例えば、12時間~36時間等)経過後、ステップS5において、練り材料を密封から開放し、所望の形状にすることで、練り菓子を形成する。
【0043】
図3は、本発明の一実施形態における練り菓子の一例を示す図である。
練り菓子100は、土台となる1つのベース110と、ベース110に付加される複数の付加部120と、を備える。なお、
図3に示す例は、一例であり、ベース110を複数設けてもよいし、付加部120を1つとしたり、付加部120を省略したりしてもよい。
【0044】
ベース110は、任意の形状とすることができるが、
図3に示す例では、上面視で、20mm~50mmの大きさの葉の形状に形成され、5mm~20mmの高さを有する。
【0045】
図3に示すベース110のような形状を形成する際、ステップS5(
図1参照)を行う者が、専門家と同等の知識や経験が乏しい一般者の場合、ステップS4(
図1参照)では、形成材料量50gに対して、温度が35℃以上~60℃未満の範囲の液体(例えば、水)を30g加えることで、ステップS5で所望の形状にし易くなる。
また、ステップS5(
図1参照)を行う者が、専門家又は専門家と同等の知識や経験を有する者の場合、ステップS4(
図1参照)では、形成材料量50gに対して、温度が35℃以上~60℃未満の範囲の液体(例えば、水)を25g加えることで、ステップS5で所望の形状にし易くなる。
【0046】
付加部120は、任意の形状とすることができるが、
図3に示す例では、上面視で、3mm~10mmの大きさの花の形状に形成され、0.5mm~3mmの高さを有する。このような形状は、通常、練り材料を0.5mm~3mm程度の厚さに伸ばして板形状にして、この板形状にした練り材料に、花の形状の抜き型を押しつけ、花の形状の練り材料を抜き取る。
【0047】
図3に示す付加部120のような形状を形成する際、ステップS4(
図1参照)では、形成材料量50gに対して、温度が35℃以上~60℃未満の範囲の液体(例えば、水)を20g加えることで、ステップS5で所望の形状にし易くなる。これにより、練り材料の状態が、比較的硬くなり、抜き型に練り材料が付着しにくく、抜き型で抜いた練り材料の縁の角が立ち、形成した練り菓子の美観が向上する。
【0048】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0049】
100 練り菓子
110 ベース
120 付加部