(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004379
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】延伸フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106007
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓明
(72)【発明者】
【氏名】中川 卓治
(72)【発明者】
【氏名】水原 由郎
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AA43
4F071AA45
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AF21Y
4F071AF23Y
4F071AF30Y
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】
【課題】生分解性樹脂を主成分として含みながらも透明性、柔軟性及び耐衝撃性に優れる延伸フィルム及び該延伸フィルムを含む包装材用フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の延伸フィルムは、ポリ乳酸と、ポリブチレンアジペートテレフタレートとを樹脂成分として含有する層Aを備える。斯かる延伸フィルムは、生分解性樹脂を主成分として含みながらも透明性、柔軟性及び耐衝撃性に優れる。好ましくは、前記ポリ乳酸と前記ポリブチレンアジペートテレフタレートの総質量に対する前記ポリブチレンアジペートテレフタレートの含有割合は、3~70質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸と、ポリブチレンアジペートテレフタレートとを樹脂成分として含有する層Aを備える、延伸フィルム。
【請求項2】
前記ポリ乳酸と前記ポリブチレンアジペートテレフタレートの総質量に対する前記ポリブチレンアジペートテレフタレートの含有割合が3~70質量%である、請求項1に記載の延伸フィルム。
【請求項3】
前記ポリ乳酸は、D体の乳酸単位を0.1~5質量%含有する、請求項1又は2に記載に延伸フィルム。
【請求項4】
前記樹脂成分は相溶化剤を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
【請求項5】
ASTM-D3420によるフィルムインパクトテストに準拠して測定した耐衝撃性が5kgf・cm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
【請求項6】
ヘーズが16%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
【請求項7】
フィルム面上の少なくとも一方向の弾性率が1~3Gpaである、請求項1~6のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
【請求項8】
温度を170℃、圧力を0.2MPa、加圧時間を2秒間としてプレスしたときのヒートシール強度が1N/25mm以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
【請求項9】
延伸倍率が16倍以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
【請求項10】
少なくとも片面にヒートシール層を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
【請求項11】
二軸延伸フィルムである、請求項1~10のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の延伸フィルムを備える、包装材用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムは、耐湿性、耐水性及び耐油性等の諸性能に優れると共に、良好な機械強度を有することから、食品や薬品等の包装材料、ディスプレイ等の保護フィルムなど、種々の用途に広く適用されており、利用価値の高い機能性材料である。
【0003】
一方で、近年では、プラスチック材料の廃棄量が増大していること、また、プラスチック材料の焼却処理で発生する二酸化炭素による地球温暖化をもたらす懸念がある等の様々な問題が提起されている。このため、地球環境や人体への配慮等の観点から生分解性を有するバイオマスプラスチックが大きく注目されており、例えば、ポリ乳酸等のバイオマスプラスチックと汎用の樹脂とを組み合わせて様々な材料開発が盛んに進められている(例えば、特許文献1,2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/23758号
【特許文献2】特表2017-519863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のポリ乳酸等の生分解性樹脂を用いたフィルムは、高い透明性や柔軟性は有しているものの、耐衝撃性が十分でなかったため、その用途が制限されやすいという問題を有していた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、生分解性樹脂を主成分として含みながらも透明性、柔軟性及び耐衝撃性に優れる延伸フィルム及び該延伸フィルムを含む包装材用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸及びポリブチレンアジペートテレフタレートを用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
ポリ乳酸と、ポリブチレンアジペートテレフタレートとを樹脂成分として含有する層Aを備える、延伸フィルム。
項2
前記ポリ乳酸と前記ポリブチレンアジペートテレフタレートの総質量に対する前記ポリブチレンアジペートテレフタレートの含有割合が3~70質量%である、項1に記載の延伸フィルム。
項3
前記ポリ乳酸は、D体の乳酸単位を0.1~5質量%含有する、項1又は2に記載に延伸フィルム。
項4
前記樹脂成分は相溶化剤を含有する、項1~3のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
項5
ASTM-D3420によるフィルムインパクトテストに準拠して測定した耐衝撃性が5kgf・cm以上である、項1~4のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
項6
ヘーズが16%以下である、項1~5のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
項7
フィルム面上の少なくとも一方向の弾性率が1~3Gpaである、項1~6のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
項8
温度を170℃、圧力を0.2MPa、加圧時間を2秒間としてプレスしたときのヒートシール強度が1N/25mm以上である、項1~7のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
項9
延伸倍率が16倍以下である、項1~8のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
項10
少なくとも片面にヒートシール層を有する、項1~9のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
項11
二軸延伸フィルムである、項1~10のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
項12
項1~11のいずれか1項に記載の延伸フィルムを備える、包装材用フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の延伸フィルムは、生分解性樹脂を主成分として含みながらも透明性、柔軟性及び耐衝撃性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
本発明の延伸フィルムは、ポリ乳酸と、ポリブチレンアジペートテレフタレートとを樹脂成分として含有する層Aを備える。斯かる延伸フィルムによれば、ポリ乳酸及びポリブチレンアジペートテレフタレート等の生分解性樹脂を主成分として含みながらも透明性、柔軟性及び耐衝撃性に優れる。
【0012】
ここで「主成分」とは、延伸フィルムを形成する層Aに対する含有割合が50質量%以上であること、好ましくは70質量%以上であること、より好ましくは80質量%以上であること、さらに好ましくは90質量%以上であること(100質量%であってもよい))を意味する。
【0013】
(樹脂成分)
延伸フィルムに含まれるポリ乳酸の種類は特に限定されず、例えば、原料モノマーとして乳酸成分を縮重合させて得られるポリ乳酸等、公知のポリ乳酸を広く挙げることができる。以下、ポリ乳酸を「PLA」と表記することがある。
【0014】
PLAは、L-乳酸(L体)及びD-乳酸(D体)のいずれかの光学異性体のみ、あるいは、双方を含有することができる。中でもポリ乳酸は、L-乳酸を主要な構成単位とすることが好ましい。例えば、PLAは、D体の乳酸単位を0.1~5質量%含有することができ、この場合、PLAの構成単位の残部はL体の乳酸単位とすることができる。このようなPLAが延伸フィルムに含まれることで、延伸フィルムは透明性、柔軟性及び耐衝撃性に優れ、また延伸性にも優れる。なお、延伸フィルムが延伸性に優れるとは、延伸フィルムを形成するための材料(原反シート)が延伸しやすい結果、得られる延伸フィルムが十分に延伸された状態になり得るであることを意味する。
【0015】
PLAの製造方法は特に限定されず、例えば、公知のポリ乳酸の製造方法を広く採用することができる。また、PLAは、市販品等からも入手することができる。PLAの代表的な市販品としては、例えば、NatureWorks社製Ingeo「4032D」(融点163℃)、トタルコービオン社製Luminy「L175」(融点175℃)、「LX575」(融点165℃)「LX175」(融点155℃)、「LX975」(融点130℃)等が挙げられる。
【0016】
PLAの融点は、120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、135℃以上であることがさらに好ましく、140℃以上であることが特に好ましく、また、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましく、185℃以下であることがさらに好ましく、180℃以下であることが特に好ましい。
【0017】
延伸フィルムに含まれるポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、「PBAT」と表記する。PBAT;Poly Butylene Adipate-co-Terephthalate)の種類は特に限定されず、例えば、公知のポリブチレンアジペートテレフタレートを広く採用することができる。以下、ポリブチレンアジペートテレフタレートを「PBAT」と表記する。
【0018】
PBATの製造方法は特に限定されず、例えば、公知のPBATの製造方法を広く採用することができる。また、PBATは、市販品等からも入手することができる。PBATの代表的な市販品としては、例えば、BASF社製の商品名「Ecoflex C1200」(融点115℃)、TUNHE社製「TH801T」(融点119℃)等が挙げられる。
【0019】
PBATの融点は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、95℃以上であることがさらに好ましく、100℃以上であることが特に好ましく、また、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
【0020】
延伸フィルムにおいて、前記ポリ乳酸(PLA)と前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の総質量に対するPBATの含有割合は特に限定されない。PLA及びPBATの相溶性が高く、得られる延伸フィルムが優れた透明性、柔軟性及び耐衝撃性を有しやすいという点で、PLAとPBATの総質量に対するPBATの含有割合は3~70質量%であることが好ましい。
【0021】
中でも、延伸フィルムの耐衝撃性が特に高まるという観点で、PLAとPBATの総質量に対するPBATの含有割合は5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上がさらにより好ましく、20質量%以上が特に好ましく、20質量%より多い(20質量%は含まない)ことが最も好ましい。また、延伸フィルムの耐衝撃性がより高まるという観点で、PLAとPBATの総質量に対するPBATの含有割合は60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましく、40質量%以下がさらにより好ましく、40質量%より少ない(40質量%は含まない)ことが特に好ましく、35質量%以下が最も好ましい。
【0022】
別の観点で、延伸フィルムの透明性が特に高まるという観点で、PLAとPBATの総質量に対するPBATの含有割合は20質量%以下、かつ、40質量%以上であることも好ましい(この好ましい態様を「延伸フィルム1」と表記する)。つまり、延伸フィルム1は、その透明性が特に高まるという観点で、PLAとPBATの総質量に対するPBATの含有割合は20~40質量%(ただし、20質量%及び40質量%は含まない)を除くことが好ましい。延伸フィルム1において、PLAとPBATの総質量に対するPBATの含有割合が20質量%以下である場合、PLAとPBATの総質量に対するPBATの含有割合は15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが特に好ましく、また、下限は3質量%であることが好ましい。さらに、延伸フィルム1において、PLAとPBATの総質量に対するPBATの含有割合が40質量%以上である場合、PLAとPBATの総質量に対するPBATの含有割合は45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、また、上限は80質量%であることが好ましい。
【0023】
層Aを形成する樹脂成分は、PLA及びPBATを主成分として含有する限り、その他の樹脂を含むこともできる。樹脂成分は、PLA及びPBATを70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましく、95質量%以上含むことが特に好ましい。樹脂成分は、PLA及びPBATのみからなるものであってもよい。
【0024】
樹脂成分がPLA及びPBAT以外のその他の樹脂を含む場合、その他の樹脂の種類は特に限定されず、例えば、PLA及びPBATの相溶化剤として作用する樹脂を含むことができる。つまり、樹脂成分は相溶化剤を含有することができる。
【0025】
相溶化剤としての樹脂の種類は特に限定されず、例えば、PLA及びPBATの相溶化剤として機能する熱可塑性樹脂を広く挙げることができる。斯かる熱可塑性樹脂としては、PLA及びPBATの相溶性が高まりやすいという点で、-60℃~10℃のガラス転移温度を有する公知の熱可塑性エラストマーを広く挙げることができる。ここでいうガラス転移温度は、示差走査熱量計(例えば、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSC)を用いて測定された値である。
【0026】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレングラフトポリエチレン、水素添加されたスチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEBS)、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体とアクリロニトリル-スチレン共重合体のグラフト化合物(EGMA-g-AS)等を挙げることができる。
【0027】
相溶化剤は、市販品等からも入手することができ、代表的な市販品としては、例えば、JSR社製の水添SBR「ダイナロン」、旭化成社製「タフテック」、クラレ社製「セプトン」、日油製「モディパーA1100」、「モディパーA1401」「モディパーA3400」、「モディパーA5400」等を挙げることができる。
【0028】
樹脂成分が相溶化剤を含む場合、相溶化剤の含有割合は特に限定されない。例えば、PLAとPBATの総質量に対する相溶化剤の含有割合が0.1~15質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~8質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
樹脂成分は、その他、本発明の効果を阻害しない程度である限り、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、ポリイソブテン、ポリ(1-ペンテン)、ポリメチルペンテン(例えばポリ(4-メチル-1-ペンテン))等のポリオレフィン系樹脂又はこれらの共重合体樹脂;スチレン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ナイロン系樹脂等も挙げられる。これらの他の樹脂の含有量は、PLAとPBATの総質量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。他の樹脂の含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば0質量%、1質量%などである。
【0030】
(延伸フィルム)
本発明の延伸フィルムは、前記樹脂成分として含有する層Aを備える。層Aは、前記樹脂成分で形成される層であって、本発明の延伸フィルムのコア層として機能する層である。通常、層Aは単層構造である。
【0031】
層Aは、前記樹脂成分のみで形成することができ、あるいは、前記樹脂成分以外の他の成分を含有することもできる。他の成分として、例えば、延伸フィルムに適用される公知の添加剤を広く挙げることができ、例として、熱安定剤、酸化防止剤、有機及び無機滑剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤等が挙げられる。他の成分の含有割合は特に限定されず、例えば、層Aの質量を基準として、10質量%以下とすることができ、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明の延伸フィルムは、層Aのみで形成することができ、あるいは、層A以外の他の層を備えた、いわゆる積層構造をすることができる。
【0033】
層Aの厚さは特に限定されず、延伸フィルムの用途に応じて適宜設定することができる。層Aの厚さは、例えば、10~150μmであることが好ましく、より好ましくは15~100μm、さらに好ましくは20~60μmである。
【0034】
延伸フィルムが積層構造である場合、例えば、層Aの片面又は両面に、層A以外の層を貼り合わせてなる積層体が挙げられる。層A以外の層を「層B」と表記する。層Bは、層Aに直接貼り合わされていてもよいし、あるいは、層Aと層Bとの間には、さらに別の1又は二以上の層が介在していてもよい。延伸フィルムの透明性が高まりやすいという点で、層Bは、層Aに直接貼り合わされて積層されていることが好ましい。
【0035】
層Bとしては、例えば、樹脂で形成される層を挙げることができる。斯かる層に含まれる樹脂としては、例えば、結晶性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。この場合、層Bはいわゆるスキン層としての役割を果たすことができ、これにより、延伸フィルムがより平滑になって、ヘーズをより小さくすることができ、透明性を高めることができる。
【0036】
前記結晶性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンを重合してなるポリマーが例示され、好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数3~6のオレフィンを重合してなるポリマーを挙げることができる。具体的には、結晶性ポリオレフィン系樹脂として、結晶性であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ(1-ブテン)樹脂、ポリイソブテン樹脂、ポリ(1-ペンテン)樹脂、ポリ(4-メチルペンテン-1)樹脂が挙げられる他、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等のα-オレフィン同士の共重合体等が例示できる。結晶性ポリオレフィン系樹脂は、1種単独又は2種以上の混合物とすることができる。結晶性ポリオレフィン系樹脂の融点は、例えば、100~175℃である。
【0037】
層Bは、ヒートシール層とすることもできる。つまり、本発明の延伸フィルムは、少なくとも片面にヒートシール層を有することができる。ヒートシール層とは、ヒートシール機能を有する層であって、層Bどうしを互いに向き合うように重ねて熱圧着したときに両者が融着する性質を有する層であることを意味する。ヒートシール機能を有しているかどうかは、例えば、ヒートシールテスタTP-701-B(テスター産業製)を用いて130℃、0.5MPa、30秒の条件でヒートシールすることで判断することができる。
【0038】
層Bがヒートシール層である場合、その種類は特に限定されず、例えば、延伸フィルムに適用される公知のヒートシール層を広く適用することができる。ヒートシール層は、例えば、ポリエチレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体、結晶性プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体等を挙げることができる。α-オレフィンとしてはエチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィン等が挙げられ、エチレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等を用いることが好ましい。ヒートシール層は、エチレンもしくはブチレンを用いたコポリマーもしくはターポリマーを用いることがさらに好ましく、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体(住友化学工業株式会社製FL6741G)が特に好ましい。ヒートシール層には本発明の効果を損なわない範囲内で、アクリル樹脂系微粒子やシリカ等のブロッキング防止剤が含まれ得る。
【0039】
層Bが層Aの両面に形成されている場合、互いの層Bは同一の成分で形成されていてもよいし、あるいは互いの層は異なる成分で形成されていてもよい。
【0040】
本発明の延伸フィルムは、本発明の効果が阻害されない限り、層A及び必要に応じて備えられる層B以外の層Cをさらに備えることができる。層Cとしては、例えば、防曇性、帯電防止性、粘着性、平滑性、光沢性、印刷適性、耐ブロッキング性、滑り性、強度付与性、酸素ガス、エチレンガス等のガスバリア性、水蒸気バリア性、匂い成分のバリア性、包装内容物の成分移行の防止性、抗菌性、抗カビ性等の各種機能を一つ以上有する層が例示される。
【0041】
層Cは、層Aに直接貼り合わされて積層されてもよいし、あるいは、層A及び層Cの間に、他の層(例えば、前記層B)が介在されていてもよい。層Cが層Aの両面に形成されている場合、互いの層Cは同一の成分で形成されていてもよいし、あるいは互いの層Cは異なる成分で形成されていてもよい。
【0042】
本発明の延伸フィルムは、層Aをコア層として、必要に応じて、ヒートシール層等の層B及び層Cからなる群より選ばれる少なくとも1種の層が積層されていてもよい。より具体的には、本発明の延伸フィルムは、層Aをコア層として、この片面又は両面に層Bが直接貼り合わされてなる積層体(つまり、B/A/B)を含むことができる。また、本発明の延伸フィルムは、層Aをコア層として、この片面に層Bが直接貼り合わされ、逆側の面には、層Cが貼り合わされてなる積層体(つまり、B/A/C)を含むことができる。また、本発明の延伸フィルムは、層Aをコア層として、この両面にC層が直接貼り合わされてなる積層体(つまり、C/A/C)を含むことができる。
【0043】
本発明の延伸フィルムは、好ましくは、層Aをコア層として、この片面又は両面に層Bが直接貼り合わされた積層体であり、より好ましくは、層Aをコア層として、この片面又は両面にヒートシール層が直接貼り合わされた積層体である。
【0044】
本発明の延伸フィルムは、ASTM-D3420によるフィルムインパクトテストに準拠して測定すると、耐衝撃性が好ましくは5kgf・cm以上、より好ましくは8.0kgf・cm以上、さらに好ましくは10.0kgf・cm以上、さらにより好ましくは12.0kgf・cm以上となり得る。斯かる耐衝撃性は、例えば、PLA及びPBATの含有比率を変えることで調節することができ、あるいは、後記する延伸倍率を変えることで調節することができる。
【0045】
本発明の延伸フィルムは、例えば、ヘーズを16%以下とすることができる。この場合、延伸フィルムは優れた透明性を有することができる。延伸フィルムのヘーズは、15%以下であることが好ましく、14%以下であることがさらに好ましく、13%以下であることが特に好ましい。ヘーズの下限は、フィルムを極端に薄くしなければならないことを回避すべく、例えば、0.5%とすることができる。延伸フィルムのヘーズは、日本電色工業株式会社製ヘーズメーターNDH-5000を用いて、JIS-K7361に準拠して測定される値のことである。
【0046】
本発明の延伸フィルムは、透明又は半透明であることが好ましく、透明であることが好ましい(つまり、透明性延伸フィルムであることが好ましい)。
【0047】
本発明の延伸フィルムは、フィルム面上の少なくとも一方向の弾性率が1~3Gpaであることが好ましい。これにより、延伸フィルムはより優れた柔軟性を有することができる。ここで、フィルム面上の一方向は特に限定されず、例えば、フィルムのMD方向であってもよいし、フィルムのTD方向であってもよい。好ましくは、MD方向及びTD方向の少なくとも一方向の弾性率が1~3Gpaであり、より好ましくは、MD方向及びTD方向の両方向の弾性率が1~3Gpaである。
【0048】
本発明の延伸フィルムは、延伸倍率が16倍以下であることが好ましい。この場合、延伸フィルムは、優れた透明性、柔軟性及び耐衝撃性を有しやすい。ここで、延伸フィルムの延伸倍率とは、延伸フィルムを得るための後記原反シートを基準として、原反シートのMD方向への延伸倍率とTD方向への延伸倍率とを掛け合わせた値(つまり、MD方向の延伸倍率×TD方向の延伸倍率)を意味する。延伸フィルム延伸倍率は、延伸フィルムの耐衝撃性が高まりやすいという点で、4倍以上であることが好ましく、8倍以上であることがより好ましい。
【0049】
MD方向の延伸倍率は2倍~4倍であることが好ましく、また、TD方向の延伸倍率は、2倍~5倍であることが好ましい。
【0050】
本発明の延伸フィルムにおいて、二軸延伸フィルムであることが好ましい。この場合、本発明の延伸フィルムの耐衝撃性が特に高まりやすい。
【0051】
一般に、PLAは耐衝撃性が弱い材料として知られている。しかしながら、驚くべきことに本発明者らは、生分解性樹脂であるPLAとPBATとを組み合わせた樹脂を用いた二軸延伸フィルムにあっては、含有比率が耐衝撃性に及ぼす影響が大きいことを見出している。この結果、従来困難であった、生分解性樹脂を有しながら優れた耐衝撃性を有する延伸フィルムの完成に至ったものである。
【0052】
本発明の延伸フィルムの厚さは特に限定されず、延伸フィルムの用途に応じて適宜設定することができる。延伸フィルムの厚さは、例えば、10~150μmであることが好ましく、より好ましくは15~100μm、さらに好ましくは20~60μmである。
【0053】
本発明の延伸フィルムは、包装用、食品包装用、薬品包装用、装飾用(ファッション用含む)、ラベル用、テープ用基材、印刷用基材、文具用、家電用、ポスター用紙、感熱紙基材、記録用紙基材、住宅の内装用及び外装用、自動車用、等に好適に用いることができる。
【0054】
中でも、延伸フィルムは、包装材用フィルムへの使用に特に好適である。包装材用フィルムは、本発明の延伸フィルムを備えるので、優れた透明性、柔軟性及び耐衝撃性を有し得る。包装材用フィルムは、本発明の延伸フィルムを備える限り、例えば、公知の包装材用フィルムと同様の構成とすることができる。
【0055】
(延伸フィルムの製造方法)
本発明の延伸フィルムの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。例えば、PLA及びPBATを含有する樹脂原料を押出成形して樹脂シートを得て、この樹脂シートの延伸を施すことにより、本発明の延伸フィルムを製造することができる。斯かる製造方法を「製造方法A」と略記する。
【0056】
製造方法Aで使用する樹脂原料は、前記樹脂成分を意味する。従って、樹脂原料中の各成分の含有割合は、前述の層Aに含まれる樹脂成分中の各樹脂の含有割合と同様であり、好ましい含有割合も同様である。
【0057】
当該樹脂原料の調製方法は、例えば、公知の調製方法と同様とすることができ、樹脂のペレットや粉体等を、タンブラーやミキサー等のバッチ式混合装置や、あるいは連続計量式混合装置を用いてドライブレンドする方法;もしくは、樹脂のペレットや粉体等を、必要に応じて他の樹脂のペレットや粉体及び/又は添加剤と共に混練機に供給し、溶融混練してメルトブレンド樹脂組成物を得る方法;等が挙げられる。中でも、溶融混錬することで、樹脂原料を調製することが好ましい。
【0058】
溶融混練に用いる混練機としては公知の混錬機を使用でき、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、又はそれ以上の多軸スクリュータイプを用いてよく、さらに、2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のいずれの混練タイプをも用いてよい。PLA及びPBATが均一に混ざりやすい点で、同方向回転の2軸スクリュータイプの混錬機が好ましい。
【0059】
溶融混錬の混練温度は、150℃~260℃の範囲が好ましく、180℃~240℃がより好ましい。上記温度範囲とすることで、PLA及びPBATが均一に混ざり合うことができる。溶融混錬の際の樹脂の劣化防止のため、窒素等の不活性ガスをパージすることもできる。溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズすることによってメルトブレンド樹脂組成物ペレットを得ることができる。
【0060】
製造方法Aでは、上述の通り得られた樹脂原料を用いて樹脂シートを得ることができる。具体的には、樹脂原料を押出機に供給し、加熱溶融して、必要に応じて、フィルター等により微小異物等を除去した後、Tダイよりシート状に溶融押出することで、樹脂シートを得ることができる。
【0061】
樹脂シートを得るために使用する押出機は、例えば、公知の押出機を広く使用することができる。押出機のスクリュータイプに制限は無く、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、又はそれ以上の多軸スクリュータイプを用いて良く、樹脂原料を前記ドライブレンドで調製した場合は、2軸スクリュータイプ、又はそれ以上の多軸スクリュータイプを用いると混合及び分散性に優れやすい。押出温度は、200℃~300℃の範囲が好ましく、220℃~280℃がより好ましい。押出の際の樹脂の熱劣化防止のため、窒素等の不活性ガスパージをすることができる。
【0062】
溶融押出された樹脂シートは、例えば、25~120℃の温度に設定した少なくとも1個以上の金属ドラム上にエアナイフや他のロール、又は静電気等により密着させるといった公知の方法により、シート状に成形され、樹脂シートは、いわゆる原反シートとして得られる。金属ドラムのより好ましい温度は30~80℃である。
【0063】
製造方法Aは、例えば、積層工程をさらに備えることができ、例えば、層Aの片面または両面に前記層Bが形成された延伸フィルムを得ようとする場合に、製造方法Aは積層工程を備えることができる。
【0064】
積層工程では、例えば、従来から採用されている積層方法を広く使用することができ、例えば、共押出法、ラミネート法、ヒートシール法等を用いて積層することにより得られるフィルムが挙げられる。
【0065】
具体的には、積層構造を有する延伸フィルムを製造する場合、2以上のドライブレンド及び/又はメルトブレンド樹脂組成物(各樹脂組成物の組成は異なっていても同じであってもよい)を共押出して積層構造を有する樹脂シートを得て、斯かる積層構造を有する樹脂シートを延伸させることができる。あるいは、単層構造の延伸フィルムと、他のフィルムとをラミネートすることによっても積層構造を有する延伸フィルムを製造することができる。その他、単層として押出しされた無延伸フィルムを2層以上互いに貼り合わせて得られる多層無延伸フィルム(各層を構成する樹脂組成物の組成は異なっていても同じであってもよい)を延伸することによっても積層構造を有する延伸フィルムを製造することができる。
【0066】
前記共押出法としては、溶融樹脂を金型手前のフィードブロック内で接触させるダイ前積層法、金型、例えばマルチマニホールドダイの内部の経路で接触させるダイ内積層法、同心円状の複数リップから吐出し接触させるダイ外積層法等が挙げられる。例えばダイ内積層法の場合には、3層マルチマニホールドダイ等の多層ダイを用いると3層構成とすることができる。
【0067】
ラミネート法としては、Tダイ法に用いる溶融押出成型法の設備を使用し、溶融樹脂のフィルムを別のフィルム上に直接押し出して積層フィルムを成型する押出ラミネート法等が挙げられる。
【0068】
ヒートシール法としては、貼り合わせた複数のフィルムに加熱した金属体をフィルム外部から押し当て、伝導した熱がフィルムを溶融させて接着する外部加熱法、及び高周波の電波や超音波によってフィルムに熱を発生させ接合する内部発熱法等が挙げられる。
【0069】
製造方法Aでは、上記の積層方法を単独で又は複数組み合わせて用いることができる。
【0070】
以上のように、製造方法Aが積層工程を有する場合、樹脂シートは積層構造を有することができ、製造方法Aが積層工程を有さない場合、樹脂シートは単層構造を有する。単層構造を有する樹脂シートを用いて後記延伸をすることで、層Aからなる延伸フィルムを得ることができる。多層構造を有する樹脂シートを用いて後記延伸をする場合は、層Aを少なくとも備える多層の延伸フィルムを得ることができる。
【0071】
製造方法Aでは、上述の単層又は積層構造を有する樹脂シート(原反シート)の延伸を施す。延伸方法としては、周速差を設けたロール間で延伸する方法、テンター法、チューブラー法等公知の方法を用いることができる。延伸方向としては、一軸延伸、二軸延伸、斜め方向への二軸延伸等が可能であり、二軸以上の延伸では、逐次延伸及び同時延伸がいずれも適用可能である。これらのうち所望の延伸フィルムが得られ易い点から、テンター法による同時二軸延伸法、テンター法による逐次二軸延伸法、及び周速差を設けたロール間で縦(流れ、MD)延伸した後テンター法にて横(巾、TD)延伸する逐次二軸延伸法が好ましい。以下、逐次二軸延伸法により本発明の延伸フィルムを得る方法を説明するが、これに限定されるものではない。
【0072】
逐次二軸延伸方法では、使用する樹脂の融点及びガラス転移温度に応じて延伸温度や延伸倍率を調整することが好ましい。まず、樹脂シート(原反シート)を好ましくは30~90℃、より好ましくは50~70℃の温度に保ち、周速差を設けたロール間に通して、あるいはテンター法にて、縦方向(MD方向)に所望の倍数に延伸する。引き続き、当該延伸フィルムをテンター法にて、好ましくは40~90℃、より好ましくは50~80℃の温度で、横方向(TD方向)に所望の倍数に延伸した後、熱固定、緩和、熱セットを施し巻き取る。
【0073】
巻き取られたフィルムは、好ましくは20~45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施した後、所望の製品幅に断裁することができる。
【実施例0074】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0075】
(実施例1)
後掲の表1に示すように、PLA(メーカートタルコービオン社製、Luminy L-175製品名、D体含有率0.5%)90質量部と、PBAT(BASF社製、Ecoflex C1200)10質量部とを混合し、ミキサーにてドライブレンドして樹脂原料を調製した。得られた樹脂原料を、株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミルμ(登録商標)にTダイを備えた2軸押出機(L/D=25)を接続した装置に、ホッパーから投入し、バレル1を235℃、バレル2を235℃、ダイを200℃にして溶融し、単層ダイより押し出した。押し出された樹脂層を、45℃に制御した冷却ドラム上にエアナイフを用い空気圧で押しつけながら冷却固化して原反シートを得た。
【0076】
得られた原反シートに対して、ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機KAROを用いて延伸を行った。延伸方法は、縦方向に延伸した後、横方向に延伸する逐次二軸延伸法にて実施した。設定温度75℃のオーブン内にてフィルム温度(Ts)が65℃に達するまで予熱してから、縦方向に延伸速度6倍/秒にて3倍まで延伸した。次いで、横方向に延伸速度1倍/秒にて延伸し、続いて設定温度100℃のオーブン内にてフィルム温度が90℃に達するまで予熱し、緩和速度0.5倍/秒にて横方向を3倍まで緩和し、次いで10秒間熱セットした後、オーブンより排出して室温へ冷却し、厚さ30μmの延伸フィルムを得た。
【0077】
(実施例2)
PLAを80質量部に、PBATを20質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmの延伸フィルムを得た。
【0078】
(実施例3)
PLAを70質量部に、PBATを30質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmの延伸フィルムを得た。
【0079】
(実施例4)
PLAを60質量部に、PBATを40質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmの延伸フィルムを得た。
【0080】
(実施例5)
PLAを50質量部に、PBATを50質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmの延伸フィルムを得た。
【0081】
(比較例1)
PLAを100質量部と、PBATを不使用(0質量部)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmの延伸フィルムを得た。
【0082】
(比較例2)
原反シートを延伸しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmの原反シートを得た。
【0083】
(比較例3)
原反シートを延伸しなかったこと以外は実施例3と同様の方法で厚さ30μmの原反シートを得た。
【0084】
(比較例4)
原反シートを延伸しなかったこと以外は実施例4と同様の方法で厚さ30μmの原反シートを得た。
【0085】
(比較例5)
原反シートを延伸しなかったこと以外は実施例5と同様の方法で厚さ30μmの原反シートを得た。
【0086】
(実施例6)
PLAを25質量部に、PBATを75質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmの延伸フィルムを得た。
【0087】
(比較例6)
PLAを55質量部、PBATを45質量部とからなる混合物を混合し、ミキサーにてドライブレンドして樹脂原料を調製した。得られた樹脂原料を、押出機シリンダー温度235℃のスクリュー径65mmの一軸押出機に供給し、直径300mm、リップクリアランス1.0mm、温度200℃のスパイラル型環状ダイスより、ブロー比2.8にてバブル状に上向きに押出し、冷却リングにより空冷し、ダイス上方のニップロールで折りたたみながら引き取り、ワインダーにてフィルムを巻き取った。吐出量と引き取り速度の調整により、ドロー比25、最終厚みが30μmのインフレーション製膜法によるフィルムを得た。
【0088】
[厚み]
延伸フィルムの厚みは、シチズンセイミツ株式会社製紙厚測定器MEI-11を用いて、JIS-C2330に準拠して測定した。
【0089】
[ヘーズ]
延伸フィルムのヘーズは、日本電色工業株式会社製ヘーズメーターNDH-5000を用いて、JIS-K7361に準拠して測定した。
【0090】
[全光線透過率]
JIS K 7361-1に準拠した測定を3回行い、平均値を全光線透過率の値とした。測定には、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業社製、NDH-5000)を用いた。
【0091】
[弾性率、破断点応力及び破断点伸度]
各実施例及び比較例で得られたフィルム又はシートを、MD方向およびTD方向に、長手150mm、幅15mmに切り出し引張試験サンプルを作製した。サンプルをテンシロン万能試験機(オリエンテック社製)にセットし、300mm/minのスピードでサンプルが破断するまで引張り、このときの破断点応力(引張強度)及び破断点伸度を計測すると共に、SSカーブの立ち上がり傾きとサンプルの断面積(幅×厚み)より、MD方向及びTD方向の(引張)弾性率を算出した。
【0092】
[耐衝撃試験]
安田精機製フィルムインパクトテスターを使用し、ASTM-D3420に基づき衝撃強度を測定した。当該測定には、15Kgf・cmの錘を使用し、先端球として1/4インチ金属球を使用した。衝撃強度測定は1サンプルあたり3回の測定を行い、その平均値を衝撃強度とした。
【0093】
【0094】
表1には、各実施例及び比較例で得た延伸フィルム又はシートの作製条件と、評価結果を示している。各実施例で得られた延伸フィルムは、PLA及びPBATからなる生分解性樹脂を主成分として含みながらも、透明性、柔軟性及び耐衝撃性に優れることがわかった。比較例1は、PBATを含まないので、耐衝撃性が低く、また、比較例2~5のように無延伸である場合も耐衝撃性に劣るものであった。