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特開2023-43815収益不動産将来価格予測に基づく残価設定取引システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043815
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】収益不動産将来価格予測に基づく残価設定取引システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/16 20120101AFI20230322BHJP
   G06Q 40/06 20120101ALI20230322BHJP
【FI】
G06Q50/16
G06Q40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008984
(22)【出願日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2021150667
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】721000985
【氏名又は名称】株式会社耶馬台コーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】宮地忠継
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049CC27
5L055BB55
(57)【要約】      (修正有)
【課題】収益不動産に投資する人が将来の価格について一定の安心を得て、かつ、その時までの期間について低い金融負担になるというシステムを提供する。
【解決手段】システムは、収益不動産売買において、将来の一定時期の当該物件価格を関数を用いて予測し、一定期間後の残価を設定する。そして、一定期間後の残価とその時の売買価格の間に差があった時に、それを保証する差額保証人と差額保証人を補完する補完人を設定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収益不動産の売買取引において、収益不動産売却者が差額保証に対する保証料を支出し、収益不動産購入者が差額保証人との間で将来の一定の時期においての残価を設定し、その時点での売却価格が残価より低かった場合にはその差額について一定限度額までは差額保証人が収益不動産購入者に対して支払うという契約を締結する。この仕組みを実現する収益不動産残価設定取引システム。
【請求項2】
請求項1の収益不動産残価設定取引システムを構成する一部として、収益不動産売買の時点から見て一定の将来の時期における売買対象物件の予測価格をsin関数と周期概念に基づいて予測するシステム。
【請求項3】
請求項1の収益不動産残価設定取引システムを構成する一部として、その残価設定取引が実現した場合における収益不動産購入者の投資利益利回り希望額を入力した場合、実現可能最低賃料を提示するシステム。
【請求項4】
請求項1の収益不動産残価設定取引システムを構成する一部として、差額保証人が要求した場合、期限において差額保証人が収益不動産購入者に対して支払うべき金額に関しその金額を補完人が差額保証人に支払うという補完契約を差額保証人と補完人との間で契約する。この仕組みを実現するための物件価格、期間、残価金額等諸係数の変更システムと、その活用のために差額保証人と補完人にIDとパスワードを発行するシステム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
収益不動産売買取引において、物件価格の将来価格予測に基づいて残価が設定され、これを保証する差額保証人の選定により、物件購入者がより安心して参入できる取引システム
【背景技術】
【0002】
人々の富裕化及び収入手段の確保のために収益不動産投資は盛んになってきていますが、この場合普通の人々にとっては収益不動産の価格および表面利回りの優劣の判断は大変にむずかしく、また将来価格については全く投資家の判断するところとなっています。新規販売の収益不動産については、価格の査定および将来の収益性ついての明確な指標はなく市場のその時々の情勢に任されています。また中古収益不動産については相場と言うものはあるものの将来価格については決め手はありません。このような状況を打ち破るべく、一部には物件の将来価格を予測しようという動きはありますが、まだ将来予測の価格の幅が大きすぎ、論理的に正確なものとは言えません。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】リーウェイズ株式会社のインターネットサイトのGateシステムに よる Investment Planner の中の「区分マンション物件概要と査定表」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法は単に今現在の価格の提示と、また中古収益不動産については価格に加えて現在の表面利回りを提示するだけで、予測の分析はしていなかった。またたとえ予測しても、それは過去の最高表面利回りと最低表面利回りに基づいて価格を予測するものに過ぎず、その価格の間には大きな幅があり、その中間値を取っても意味が無い状態である。また、不動産購入者は、自分での判断だけではなしに、不動産の専門家の判断、あるいは保証を求めているのだが、そういう仕組みも現状はない。しかしながら収益用不動産について、一定の時期の将来残価が設定され、かつそれを保証するシステムが成立すれば、収益不動産購入者はそれに合わせた金融を組むことができ、それによって残価設定の時期までの金融負担は元本返済額が減るため減少する。このため収益不動産の経営も楽になる。そういう仕組みも現状は収益不動産については取り上げられていない。そこで本発明は、収益不動産に投資する人が将来の価格について一定の安心を得、かつその時までの期間について低い金融負担になるというシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明によれば、特定物件の取引において、差額保証人を参入させ、差額保証人は物件価格について本システムの提供するsin関数と周期による予測に自己の判断を加え、また保証料あるいは管理のメリット等による収益性を勘案し、そこで一定期間後の一定の残価を提案し、また本システムの提供する計算により期限までの物件購入者の金融負担の軽減を判断し、物件購入者に対して一定金額を限度とする差額保証を引き受けることにより物件購入者の将来価格に対する不安を解消できることを見出し、発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は収益不動産の売買取引において、収益不動産売却者が差額保証に対する保証料を支出し、収益不動産購入者が差額保証人との間で将来の一定の時期においての残価を設定し、その時点での売却価格が残価より低かった場合にはその差額について一定限度額までは差額保証人が収益不動産購入者に対して支払うという契約を締結する。この仕組みを実現する収益不動産残価設定取引システム。

ここで本願の用語を説明します。
表面利回り: 収益用賃貸物件の1年間の全収入の物件価格に対する割合。 1年間の全収入をこの表面利回りで除することにより物件価格を出すこともできる。
残価 :収益不動産の売買において、収益不動産購入者と差額保証人(後出)との間で将来の一定時期における残存価格を設定する。多くの場合、不動産売買取引は金融機関より収益不動産購入者は融資を受けるので、この残価が一定時期における元本返済額の残額となる。残価を設定することにより、債務者である収益不動産購入者は一定時期までの元利返済額が減少するので不動産経営については柔軟性を持てる。
差額保証人 : 収益不動産の売買において、物件の将来の一定時期における残価が設定された場合、その時期において当該物件が売却されたときに、その金額が設定残価より低ければ、その差額について一定限度額までを保証する人。保証料は収益不動産売却者が払う。差額保証人としては、その物件の賃貸管理業務を引き受ける賃貸管理業者、あるいは不動産業者が想定される。多くの場合収益不動産売買は金融機関が絡むので、差額保証人は残価に対して金融機関に対しても差額について一定限度額までは責任を持つことになる。
投資利益利回り希望額 :当該物件の総収入額から当該物件にかかる金融費用及び経費を控除した後に収益不動産購入者が期待する利益の事であり、物件価格に対するパーセンティジで表される。
実現可能最低賃料 :この当該物件にかかる金融費用と経費に投資利益利回り希望額を加算した金額を算出し、その金額を1戸(1室・賃貸総面積を総戸数で割ったもの)当たりの毎月の金額にしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、収益不動産に投資する人が将来の価格について一定の安心を得、かつその時までの期間について低い金融負担になるというシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は収益不動産物件の賃料の表面利回りと経過年数の関係を表した座標図を示している。
図2図2図1の座標図において、対象物件の現在位置と、予測価格を求める時点の位置を示している。
図3図3は本発明の全体構成で、プログラムを処理するサーバとネットワークを通じて入出力する情報処理端末を示している。
図4図4は具体的な物件について収益不動産売却希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタントが物件概要をサーバーに入力し、差額保証人がそれに対して自己の計算を入力し、その後収益不動産購入希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタントが自己の投資収益をサーバーに計算させる処理を示したシーケンス図である。
図5図5は新規取引のデータベースへの入力画面
図6図6は予測価格提示において対象物件はデータベースからの引用の場合の入力画面
図7図7は予測価格提示において対象物件については直接データ入力の場合の入力画面
図8図8は期日における表面利回り及び予測価格の出力画面
図9図9は対象物件に対して実現可能最低賃料を計算させるため投資利益利回り希 望額を指定する入力画面
図10図10は実現可能最低賃料の出力画面
図11図11は補完人参入による残価設定取引のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
先ず本発明についての中心的概念である『周期』について説明します。結論的にはこの『周期』はプログラム的にはシステムの利用者が自由に入れられますが、当分の間は17年を使う事を強制します。以下その理由を述べます。我が国の不動産市場は1973年の日本列島改造論の影響によるピーク、その後落ち込み再び1990年のバブル経済によるピーク、そしてその後の落ち込み後2008年のリーマンショック前の大回復とここ50年程は17年の周期をつけています。そして現在はオリンピック後でもあるにもかかわらず、まだ不動産価格は落ちておらず、一部の有力意見によると2025年がピークでその後急速に落ち込むとされています。その意味で17年周期説は維持されていると考えられます。これは別な角度よりの考察をすれば、不動産・建設にとって理屈のあることのようにも見えます。つまり不動産・建設は景気が良くなってくると一気に建設に走るが、その間2、3年を要し、物件が市場に出る頃はもうピークを過ぎて、そこにおける供給過剰のために一気に下落を促進させる。市場淘汰が進むと物件不足のためにまた徐々に価格が高騰しだし再びピークに至るというもので、この間はそれほど短いものでは無く、17年前後かかるというものです。これらを根拠に出願者は17年周期説を取っています。しかしこれは絶対ではなく、ある段階でもし周期に対する見方が世間全体で変わり、それが正当性を持った時はその数字を入力すればよいと考えます。その意味で『周期』は入力可能にしてあるのであり、恣意的に入力してよいものとは考えておりません。
【0009】
ここに前項の『周期』説をとると『周期』と言うものの持つ特色、つまり波動性について着目することになります。一定の周期があるとき、それを表しているのは波動であり、それはsin関数と考えます。つまり不動産価格の周期はsin関数でとらえられるのであり、更には賃料と言うものは変動幅は小さいので、不動産価格を求めるには、具体的にはX軸には時間(年数)Y軸には表面利回りを表現すればよいことになります。Y = sinXと言う形になります。
【0010】
ここでまず当該物件の期限における賃料水準を考えます。これは物件選択時の賃料水準に対して(1)当該地域の賃料動向とそこから出てくる期間終了時の一般的賃料予測(パーセント)(2)当該地域の人口動態による期間終了時における人口予測(パーセント)(3)当該建物劣化による期間終了時におけるそこから出てくる賃料予測(パーセント)についてこの(1)、(2)、(3)を全部乗算します。そしてこの(1)、(2)、(3)は地域における現状の調査、行政のデータ、リフォームと長期修繕計画等の一般的データおよびシステム利用者の判断によるデータとなります。この計算による賃料の将来水準が出ればこれに戸数と12か月を乗ずることにより当該物件の期限における年間賃料収入を得ることができます。この期限における年間賃料水準をその時の表面利回りで除することにより物件価格は出ます。
【0011】
さて期限における表面利回りをシステムがいかに計算するかですが、ここにおいてこのsin関数を現実の不動産市場に合わせるため若干の修正が必要になります。表面利回りの最高値をA(パーセント)、最低値をB(パーセント)とします。物件の将来価格を求めたい時期までの期間をC(年数)とします。sin関数は単純にはY軸の1とー1の間で波動を描いて展開します。この波動の高さは2です。Y軸のAとBとの間の大きさでこの関数に波動を描かせるためには関数は拡大されY = (AーB)/2sinXとなります。更にこの関数がY軸のA点とB点との間で波動を描かねばなりませんから関数はY = (AーB)/2sinX + (AーB)/2 +Bとなります。これでこの関数の表す波動はきれいにY軸のAとBとの間で展開します。
X軸の数値は通常はπ(パイ)で表します。sin関数の周期は2πです。そこで本プログラムの周期は17年なので1年は2π/17となります。関数は当初の初期(つまりX = 0 (つまりY = (AーB)/2+B ) から出発して17年の周期を展開します。出発点よりπ/2年経過して表面利回りの最高値、つまり物件価格の最低値と言うことになります。この後はX軸の年数がたつごとにY軸の表面利回りは下がり(つまり価格は上がり)、X軸が3/2πになった時に表面利回りは最低値のBになります。(つまり価格は最高値)。 この後は今度は表面利回りは上がっていくのであり(つまり価格が下落)17年で(つまり2π)で当初の表面利回り(つまり当初の価格)になります。この事を勘案、本プログラムでは現在物件価格が上昇を初めて何年か、あるいは下降を始めて何年かを入力させています。この数字により座標軸上の位置が定まり、その後の予測時期までの年数(C)をX軸で加えることによりsin関数によりY軸の数字が出ます。その数字から価格が出ます。
図1ご参照
【0012】
本発明の重要なポイントである具体的な現在時点の決め方、および期限における処置について少し詳しく説明します。本システムの利用者が、その利用者及び対象物件が今まで述べてきた周期のグラフのどこにいるのかは、なかなか分かりにくいところでありますが、本発明では、物件相場が上がり始めて何年目か(表面利回りが下がり始めて何年目か)、あるいは下がり始めて何年目か(表面利回りが上がり始めて何年目か)という事を外部入力させる事にしました。それは、こういう数字ならば、利用者が感覚的に掴みやすいと考えたからです。そして、相場が上がり始める最初の地点はグラフ上の最高点、つまりX軸のπ/2点です。こうすれば出発点が定まり、それより何年後かははっきりと決まります(P点)。この後期限までの年数(C)をX軸で1年を2π/17として加算すれば (F点) おのずとその時の表面利回りは出ます。物件相場が下がり始めている状況のもとでは、同様にして現時点が下がり始めて何年目かを入れれば、下がり始の地点(X軸の3/2π点)からの年数が決まり現時点が決まります。この後は同様に現時点に対して期限までの年数を加算すれば、予測すべき時点の表面利回りが出ます。
図2ご参照
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する
【0014】
図1図2については11段落、12段落で説明しました。
【0015】
図3は本発明の実施形態にかかわるサーバ100を含むネットワークの構成を示した構成図である。サーバ100はインターネット等の通信ネットワークを介して、複数の情報処理端末200のそれぞれと通信可能に接続されている。サーバ100は情報処理端末200を通じて物件の売り手(収益不動産売却希望者)もしくは仲介者もしくはコンサルタントにより設定された不動産物件情報につき情報処理端末200を操作する物件の買い手(収益不動産購入希望者)もしくは仲介者もしくはコンサルタントに提供し、本システムを動かしていく。
【0016】
サーバ100は一般的なコンピューターとしての構成を有する。すなわちサーバ100はCPUまたはGPUとして使われるプロセッサ101と、DRAM等によって構成されデータやプログラムを一時的に記憶するメモリ105と、物件の売り手(収益不動産売却希望者)もしくは仲介者もしくはコンサルタントまたは買い手(収益不動産購入希望者)もしくは仲介者もしくはコンサルタントとの間で情報のやり取りを行う入出力インターフェイス121と、有線または無線の通信を制御する通信インターフェイス122と、磁気ディスクまたはフラッシュメモリ等によって構成されデータやプログラムを記憶するストレージ130とを備える。プロセッサ101はストレージ130に記憶されているデータやプログラムをメモリに呼び込んで当該プログラムに含まれている命令を実行する。
【0017】
入出力インターフェイス121はキーボード、マウス、カメラ等により構成され、通信インターフェイス122はネットワークアダプター、各種の通信ソフトウェアー等によって構成される。
【0018】
本実施形態においてストレージ130はデータベースを格納しており、本システム運用者が今までの不動産取引で作成した情報データベース133を持つ。
【0019】
図4は以下のプロセスを表しています。収益不動産売却希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタントが物件データをシステムに入力しこれはシステムのデータベースに蓄えられる。これに対して差額保証人が自己の判断により係数を変更して計算する。物件データの係数が固まったところでシステムはそれを一部の収益不動産購入希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタントに公開する。このあと収益不動産購入希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタントは係数について検証し、変更要求があればそれを差額保証人に連絡する。係数について合意が達成されれば関係者は金融機関交渉及び契約へと進む。
【0020】
図4の中の実現可能最低賃料提示プログラムは収益不動産購入希望者が物件を選びその物件番号とともに投資利益利回り希望額を情報処理端末200から送信した時に実現可能最低賃料を計算し、収益不動産購入希望者の情報処理端末200に返却するように構成されている。

この場合、投資利益利回り希望額とは当該物件の総収入額から当該物件にかかる金融費用及び経費を控除した後に収益不動産購入希望者が期待する利益の事であり、物件価格に対するパーセンティジで表される。投資利益利回り希望額の計算は例えば1%とか、1.1%とか、あるいは3.3%とか0.1%刻みで入力する。

金融費用とは当該物件の購入に伴う金融機関借入のうち、一定期間までに返済するべき金額の毎年の元利均等返済額にその一定期間の時の残価金額についての毎年の利息額を加算したものである。
金融費用の計算式は以下のようになります。
条件: 融資金額:A 残価金額:B 期間(年):C 利率(年): D
残価金額以外の毎年の元利均等返済額 = ( AーB ) ×D / { 1 ー 1 / ( 1 + D)のC乗}
残価金額についてに毎年の利息 = B × D
金融費用 = 残価金額以外の毎年の元利返済額 + 残価金額についてに毎年の利息

実現可能最低賃料とはこの当該物件にかかる金融費用と経費に投資利益利回り希望額を加算した金額を算出し、その金額を1戸(1室・平均値は賃貸総面積を総戸数で割ったもの)当たりの毎月の金額にしたものである。

ここで出てくる実現可能最低賃料で1戸当たりが賃貸できれば、つまりその金額(賃料)が収益不動産購入希望者が想定する市場賃料より低ければ、この実現可能最低賃料で貸し出すことにより収益不動産購入希望者は投資利益利回り希望額を毎年得ることができることになる。またこの実現可能最低賃料が市場賃料より低ければ低いほど、その不動産の賃貸は競争力があることになる。そしてこの実現可能最低賃料は金融市場の金利が低ければ低いほど下げ得るものである。
【0021】
差額保証人及び収益不動産購入希望者のあいだの本プログラムを活用しての交渉

当初差額保証人は収益不動産売却希望者との話し合いをベースとしながら、収益不動産売却希望者等がデータベース入力した物件情報に対して、自己の判断で物件の売却価格、残価設定時期までの期間を決め、そして本プログラムが出力する物件の予測価格を参考にしながら残価設定額を決め、さらに経費、金融機関利息などを決めて入力する。差額保証人としては、残価設定額は最高額でも予測価格より低く、できればできるだけ低く設定したいところである。しかしその場合、今後出てくる収益不動産購入希望者の利益を無視しては始まらない。だから差額保証人は自ら本プログラムを運用して、収益不動産購入希望者の投資利益利回り希望額と実現可能最低賃料とを想定しなければならない。しかしながら、現実に収益不動産購入希望者が登場してきたときに、彼は最大限の投資利益利回り希望額と最低限の実現可能最低賃料を要求するので、ここに売却価格、残価設定時期までの期間、残価設定額を修正する必要が出てくる。ここに差額保証人と収益不動産購入希望者との間の交渉が本プログラムを運用しながら発生する。具体的には以下のような形となる。

東京都杉並区にある物件価格450,000,000円、賃料81,500円、戸数27戸のマンションを前提とする。残価設定までの期間を15年として、予測価格は279,000,000円と出た。
そこで差額保証人は設定残価額を270,000,000円として本プログラムに計算させたところ
収益不動産購入希望者の投資利益利回り希望額を1%(物件価格に対して)として計算させると実現可能最低賃料は86,016円(1戸当たり)と出た。これでは収益不動産購入希望者は満足しないであろうから、投資利益利回り希望額を0.5%とすると実現可能最低賃料は
79,072円となる。収益不動産購入希望者がこれで満足すればそれでよいのだが、利益が少ないと考え得ることを勘案、投資利益利回り希望額を1%にすることを追求する。そうすると次の策は、価格を下げるか、設定残価を上げるかである。物件価格を430,000,000円に下げた。そうすると、投資利益利回り希望額を1%にしたままで実現可能最低賃料は80,595円となる。これだと取引成立の可能性がある。こういう交渉を本プログラムを使いながら、差額保証人は収益不動産購入希望者に条件を送り、また収益不動産購入希望者から条件を送り返され進めていくのである。

差額保証人の収益としては 保証料:残価金額のうちの差額保証をする限度額を15%と仮定する。その金額に対して10%とすると(4,050,000円)、
管理料:賃料の5%で15年分(19,804,500円)、で合計23,854,500円となる。
更に期間内の新規賃貸仲介手数料、更新取扱手数料などがあり、そして、期限における売買仲介手数料及び売買価格が残価を上回った時のボーナス(上回った部分の10%)で合計は40,000,000円以上となりうる。もとよりこの間、差額保証人には、事業運転経費が掛かる。

差額保証人にはリスクがある。収益とリスクを見比べて差額保証人は本件参加の可否を決定するのである。
【0022】
図5は新規取引のデータベースへの入力画面です。物件番号はデータベースが自動作成するIDを採用しているため入力する必要が無く、マンション名からの必要項目の入力になります。
【0023】
図6はデータベースからの引用の場合の入力画面です。物件番号(ID)を入力し、一定期間後の予測価格をシステムに計算させるデータを入力します。
【0024】
図7は直接データ入力の場合の入力画面です。「物件価格」、「期間(期限までの期間)」、「現在賃料」、「戸数」を入力し、一定期間後の予測価格をシステムに計算させるデータを入力します。この場合は、まだ物件情報がデータベースに入力されておらず、仮の計算と言う意味で使われます。
【0025】
図8は期日における表面利回り及び予測価格の出力画面です。物件番号入力により既に蓄積されているデータベースより対象物件を引用してきたときは、そこに保存されている当事者が任意に入力した期日における金融残高の数字である残価金額も出力されます。
【0026】
図9はデータベースにある物件に対して実現可能最低賃料を計算させるため投資利益利回り希望額を指定する入力画面です。収益不動産購入希望者が入力しますが差額保証人も使います。
【0027】
図10図9入力の場合の実現可能最低賃料の出力画面です。データベースにある物件なので、物件の概要も出ます。
【0028】
新要素の追加

以上述べたシステムはシステムとして運用可能なのであるが、この場合、差額保証人にリスクが生じる。差額保証人の保証限度額を設けることによりこのリスクは一部減少するのだが、それでも一定のリスクはある。この問題を解決するため、差額保証人が要求するときには補完人を設けることにした。
補完人の役割 : 補完人は差額保証人が行った、収益不動産購入者に対する差額保証について、期限において差額保証人がそれを払わなければならない時は、その金額を差額保証人に支払い、差額保証人が存在しない時は直接収益不動産購入者に対してそれを支払う。
補完人の収入 : 補完契約成立時に一定金額の補完料について、差額保証人よりコンサルタント料として支払いを受ける。また、補完契約未成立の場合には差額保証人の権限になっていたところの、期限到来時における対象物件売買の仲介の権利を譲り受ける。
取引のイメージ : 補完人設定により、差額保証人は収益不動産購入者に不動産管理等サービスを提供し、補完人は差額保証の実態を受け持つ。
補完人の見通し : 補完人は目先の補完料が欲しく、かつ期限においても支払い能力の高い人である。ここより現在の資金繰りに困っているが、資産は多い不動産所有者や、同様の事情にある優良企業などが該当する。然しながら更に、補完人が期限において対象物件を取り扱う権利を有することは、別な側面を現出する。つまり状況次第では補完人が対象物件を設定残価金額で購入できうるという事であり、また、相場高騰時には交渉次第で補完人が相場より少し安い価格で対象物件を収益不動産購入者より購入できることを意味する。こういう観点からは、物件次第であるが、意欲ある不動産業者が補完人になる事は十分にありうる。
【0029】
補完人を入れた取引のプロセス
コンサルタントは差額保証人及び補完人に本システムを通じてIDとパスワードを発行する。
物件入力及び売買価格、残価設定額、期間、経費、金利その他の取引条件を変更する入力は、IDとパスワードを保有している者でなければできない。
差額保証人及び補完人はコンサルタントの補助を受けながら、本システムを稼働し、データベースを引用しながら実現可能最低賃料を計算し、諸条件が合意に達したら売買取引組成に取り掛かる。
【0030】
図11は補完人を入れた取引のプロセスです。収益不動産売却希望者とIDとパスワードの授受を受けた差額保証人は売却予定の不動産をシステムに登録します。一方でシステムにおける物件検索後、あるいはコンサルタントの接触により選定された補完人は、コンサルタントおよびシステムを通じてIDとパスワードの授受を受けます。差額保証人と補完人は、システムおよびデータベースに入力により、自己の行いうる取引条件を設定しあう。この場合、差額保証人は収益不動産購入者を確保するために、残価設定額は高い方が良い。補完人は自己のリスクを下げるために残価設定額は低い方が良い。この角逐となります。また収益不動産売却希望者にリフォームを要求するすることは、補完人の方がニーズが強いと思われるが、この場合はシステムの「リフォーム金額加算」で入力することになります。一定条件で合意に達した場合、差額保証人及びコンサルタントはその条件のもとにおける収益不動産購入希望者を探します。システムを通じて、あるいは個人的ルートから収益不動産購入希望者が見つかれば取引成立となります。
【0031】
対象物件売買に際しての諸条件上の差額保証人と補完人との間の交渉プロセスを書きます。
上記は明大前のある収益1棟マンションのケースです。物件価格は450,000千円です。現在の賃料は1戸当たり81,500円で総戸数は27戸です。投資期間を10年にしました。この時に計算される10年後の予測価格は以下の3点を前提とします。(1)不動産価格の変化の周期を20年とする。(2)この周期の期間において、収益不動産の表面利回りはA-7%から5%の間で変化する。B-6%から5%の間で変化する。の2つの想定がありうる。
(3)現在の位置を物件価格の上昇が始まってから10年とする。(物件価格上昇のピークである。)
賃料の予測は物件価格予測プログラムにより10年後は71,231円と出ているから、ここより10年後の予測価格はA論を取ると329,697千円、B論を取ると384,647千円となる。
A論かB論かで差額保証人と補完人の間で論争があったが、結局差額保証人が押し切ってB論を取ることになった。
設定される残価金額は予測価格より低くなければならない。A論の可能性もあると考えると残価金額は315,000千円がありうるが、B論で考えれば360,000千円でもよい。実現可能最低賃料は現在および将来の賃料とは関係なく計算されるが、その金額が比較される相手としての賃料はなるべく現実的な方が良い。当初は現在賃料の81,500円で良いが、期間を通しては期限の時の賃料71,231円との平均値76,365円が妥当である。差額保証人が買い手(収益不動産購入者)の立場であるとすると、実願可能最低賃料を少しでも下げたい。そうすれば買い手はもうかるからである。残価金額を上げれば、買い手の金融負担は小さくなるので実現可能最低賃料は低くなる。補完人の立場は逆である。残価金額が低ければ低いほど補完人は有利となる。
そういう訳で差額保証人は買い手有利のためにB論が通ったこともあり設定残価金額を360,000,000円(ケース3)にしたい。補完人はできればそれを315,000,000円(ケース4)にしたい。他の条件が変わらないとした場合、両者の妥協により設定残価金額は337,500,000円(ケース5)となった。この場合実現可能最低賃料は78,619円で、もし現実賃料が少しずつ減少していって、想定値の76,365円になっていたら買手不利である。実際には細かい計算で、残価金額はもう少し上がる可能性がある。差額保証人あるいは買い手とすれば、期限における賃料予測を前提とすれば残価金額を最大382,500千円まで持っていきたかった面もある。(ケース6)
【0032】
収益不動産取引に、残価を設定し、差額保証人、補完人を入れる意義
我が国の不動産売買取引は、現在において、購入者の立場からは将来の価格について全くの関係者の不参加の状況で、その価格のリスクは一身で負う事になっている。これは収益不動産取引で、ことに融資を伴う取引の場合、不動産購入者の立場を非常に不安定なものにする。一方でそういう不動産取引に絡んでリスクなしに利益を受けている人々がいる。
収益不動産取引をする人が、全てが将来価格の賭けを望んでいるわけではなく、安定的なものを望んでいる人もいる。そこで、収益不動産取引のリスクをその取引からメリットを受ける関係者も入れて分散しようというのが本システムである。これにより我が国の収益不動産取引は、初めて安定した、合理的なものになる。
価格リスクを取るものは、すでに出願したように(令和3年9月16日付 特願2021‐150667)売り手(収益不動産売却希望者)または差額保証人があり、それらがリスクを取ればそれでよいのだが、現実的には更に別な観点からリスクを取るものの必要性を認識した。それで今回補完人を案出し加えました。

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