(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043900
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】穀物乾燥機
(51)【国際特許分類】
F26B 9/06 20060101AFI20230323BHJP
F26B 17/14 20060101ALI20230323BHJP
B02B 1/02 20060101ALI20230323BHJP
B02B 3/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
F26B9/06 G
F26B17/14 Z
B02B1/02
B02B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151627
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】佐々本 悟
(72)【発明者】
【氏名】舛金 秀秋
【テーマコード(参考)】
3L113
4D043
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB02
3L113AC04
3L113AC41
3L113AC48
3L113AC49
3L113AC60
3L113AC67
3L113AC74
3L113AC83
3L113BA03
3L113CB03
3L113CB22
3L113DA05
3L113DA24
4D043AA02
4D043BB02
4D043BB13
4D043CA01
4D043JB07
4D043JE02
(57)【要約】
【課題】枝梗付着率の高い籾米であっても、特別な脱ぼう機を用いることなく乾燥作業中に効率よく枝梗の除去を行うことが可能な穀物乾燥機を提供すること。
【解決手段】穀物乾燥部には円形孔を有するスクリーンで形成される穀物乾燥室を少なくとも一対備えるとともに、前記一対の穀物乾燥室を漏斗状に互いに内方へ傾斜してその下端結合部にロータリバルブを装着し、前記一対の穀物乾燥室で挟まれる空間を熱風室に、該熱風室以外の空間を排風室にそれぞれ形成した穀物乾燥機において、前記穀物乾燥室の前記排風室側のスクリーンに傾斜状長孔部を設けたことを特徴とする
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に穀物貯留部を、下部に穀物乾燥部を各々配設し、前記穀物貯留部から前記穀物乾燥部へ流下した穀物を前記穀物貯留部へ循環させる昇降機を一体的に立設した穀物乾燥機であって、前記穀物乾燥部には円形孔を有するスクリーンで形成される穀物乾燥室を少なくとも一対備えるとともに、前記一対の穀物乾燥室を漏斗状に互いに内方へ傾斜してその下端結合部にロータリバルブを装着し、前記一対の穀物乾燥室で挟まれる空間を熱風室に、該熱風室以外の空間を排風室にそれぞれ形成し、前記熱風室は、前記穀物乾燥部に設けた熱風発生装置に連通するとともに、前記排風室は、前記穀物乾燥部に設けた排風機に連通した穀物乾燥機において、前記穀物乾燥室の前記排風室側スクリーンに傾斜状長孔部を設けたことを特徴とする穀物乾燥機。
【請求項2】
前記傾斜状長孔部は、前記排風室側スクリーンの前記傾斜部に形成してなる請求項1の穀物乾燥機。
【請求項3】
前記排風室側スクリーンの前記傾斜部の一部を取り外し可能に分割し、前記取り外し可能な分割スクリーンは、前記排風室側スクリーンが前記傾斜状長孔形状の場合は円形孔部を設ける一方、前記排風室側スクリーンが前記円形孔形状の場合は前記傾斜状長孔部を設けてなる請求項2の穀物乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として米麦等の乾燥に用いる穀物乾燥機に係り、特に、イネ科植物の花の外殻にある、針のような突起である枝梗(しこう、別名、ノギ又はノゲともいう。)を乾燥作業中に除去することが可能な穀物乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等で圃(ほ)場から収穫した籾米には、コンバインの脱穀性能や稲の品種の違いにより枝梗の付着率が高い場合がある。枝梗付着率の高い籾米を一般的な循環式の穀物乾燥機で乾燥すると、乾燥機内での籾米の循環が円滑に行われず、特に、円形孔の多孔壁スクリーンで形成された比較的狭い穀物乾燥室を籾米が充満して流下する際、該籾米の枝梗どうしが互いに絡み合ってブリッジ現象を生じやすく、そのため、乾燥ムラを惹き起こして穀物の品質低下を招くことがあった。
加えて、枝梗の付着率の高い状態で乾燥作業を終えた場合、乾燥作業の後工程における籾摺作業においても、脱ぷロールへの前記籾米の飲み込み(供給)が悪く、脱ぷ性能の低下等、籾摺作業に支障を来すことがある。
【0003】
枝梗付着率を低減させる目的で、穀物乾燥機の昇降機(バケットエレベータ)上部に枝梗除去装置を設けることが特許文献1に記載されている。前記枝梗除去装置は、バケットから投擲(てき)される穀物を下方に案内させる多孔壁の案内板と該案内板の後方に設けた排塵口とからなり、籾米が何度も投てきされる過程で次第に枝梗が除去され、除去された枝梗片は排塵口から機外へ排出されるものである。
しかしながら、前記案内板は穀物乾燥機内の全穀物量に対して極めて小面積であって除去効率が悪く、また、籾米が前記案内板に衝突する際の圧力も比較的小さく、積極的な枝梗除去効果は望めない。
一方、特許文献2には種籾の枝梗を除去する脱ぼう機が開示されている。該脱ぼう機は立設した脱ぼう室内に回転する脱ぼう爪板を設けてなる種籾用の脱ぼう機であって、収穫直後の大量の生籾を該脱ぼう機で枝梗を除去した後に前記穀物乾燥機に供給することは非常に長時間を要するため生の籾米が変質するといった問題もあり、通常の穀物乾燥作業の前処理として該脱ぼう機を使用することは現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭54-110573号公報
【特許文献2】実開平7-31137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記問題点にかんがみ、枝梗付着率の高い籾米であっても、特別な脱ぼう機を用いることなく乾燥作業中に効率よく枝梗の除去を行うことが可能な穀物乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、上部に穀物貯留部を、下部に穀物乾燥部を各々配設し、前記穀物貯留部から前記穀物乾燥部へ流下した穀物を前記穀物貯留部へ循環させる昇降機を一体的に立設した穀物乾燥機であって、前記穀物乾燥部には円形孔を有するスクリーンで形成される穀物乾燥室を少なくとも一対備えるとともに、前記一対の穀物乾燥室を漏斗状に互いに内方へ傾斜してその下端結合部にロータリバルブを装着し、前記一対の穀物乾燥室で挟まれる空間を熱風室に、該熱風室以外の空間を排風室にそれぞれ形成し、前記熱風室は、前記穀物乾燥部に設けた熱風発生装置に連通するとともに、前記排風室は、前記穀物乾燥部に設けた排風機に連通した穀物乾燥機において、前記穀物乾燥室の前記排風室側スクリーンに傾斜状長孔部を設けたことを特徴とする。
【0007】
そして、前記傾斜状長孔部は、前記排風室側スクリーンの前記傾斜部に形成することが好ましい。
【0008】
さらに、前記排風室側スクリーンの前記傾斜部の一部を取り外し可能に分割し、前記取り外し可能な分割スクリーンは、前記排風室側スクリーンが前記傾斜状長孔形状の場合は円形孔部を設ける一方、前記排風室側スクリーンが前記円形孔形状の場合は前記傾斜状長孔部を設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、穀物乾燥室の排風室側スクリーンに傾斜状長孔部を設けることにより、前記穀物乾燥室内を充満状態で一定の圧力の下で流下する籾米の一部は、前記傾斜状長孔のエッジ部に沿って移動し、その際、前記籾米の枝梗が前記傾斜状長孔に入り込み、前記エッジにより籾米の枝梗が容易に除去される。こうして、穀物乾燥機内の籾米は、何度も機内を循環しながら前記傾斜状長孔に接触する機会を得ることによって効率よく枝梗が除去される。除去された枝梗は、前記乾燥室を横切る乾燥風と共に直ちに排風室内に移動し、排風とともに機外へ排出されるため、特別な排塵手段は不要である。
【0010】
前記傾斜状長孔部を前記排風室側スクリーンの前記傾斜部に形成することにより、前記傾斜状長孔に接触する籾米は穀物の流動圧を受けて前記エッジに押し付けられながら前記エッジよる枝梗の切断が効果的に行われる。
【0011】
さらに、前記排風室側スクリーンの前記傾斜部の一部を取り外し可能に分割し、前記分割スクリーンに前記排風室側スクリーンの傾斜部に形成する多孔壁形状とは相異なる傾斜状長孔部又は円形孔部を形成することにより、前記分割スクリーンを傾斜状長孔部としたり、通常の円形孔部としたり変更することにより枝梗の除去率を変えることができ、また、前記傾斜状長孔が摩耗した場合に容易に交換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態を示す穀物乾燥機の縦断面図である。
【
図2】
図1におけるスクリーンの一部拡大図である。
【
図4】本発明の別の実施形態を示すスクリーンの一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1において、符号1は穀物乾燥機であり、上部の穀物貯留部2と下部の穀物乾燥部3とを箱型に一体にして周知の穀物乾燥機1を構成してある。前記穀物乾燥部3内の中央部に熱風室4を設けるとともに、前記穀物乾燥部3内の両側部に一対の排風室5を配設する。そして、前記熱風室4と前記排風室5を仕切るように断面がV字形状の穀物乾燥室6を設ける。すなわち、前記一対の穀物乾燥室5を漏斗状に互いに内方へ傾斜してその下端結合部にロータリバルブ14を装着する。
なお、漏斗状の前記穀物乾燥室5の傾斜の角は55度~75度の範囲であることが望ましい。この範囲とすることで、穀物の流動圧により籾米が傾斜状長孔のエッジに強く押し付けられるので、枝梗の切断を効率よく行うことができる。
【0015】
前記熱風室4の一端はバーナ等からなる熱風発生装置に連通し(図示せず)、前記排風室5は、前記熱風発生装置と反対側に設けた排風機9に連通してある。前記穀物乾燥部5の下部には断面が漏斗状の集穀板19が設けられ、前記集穀板19の中央底部に下部螺旋20が横設される。また、前記穀物乾燥部5の下部一側には前記下部螺旋20を駆動するためのモータ16が設置される。
なお、図示していないが、前記ロータリバルブ14を間歇的に駆動するモータは別途設けられる。
【0016】
該穀物乾燥機1の前面壁又は背面壁のいずれかに添わせてバケット式の昇降機21を立設する。前記昇降機21の上部壁面に前記昇降機21を駆動するモータ17を設ける。前記昇降機21の下部供給部は前記下部螺旋20の搬送終端部に接続する一方、前記昇降機21上部の吐出部は、前記穀物貯留部2の天井部に横設する上部螺旋22に接続し、さらに、前記上部螺旋22の搬送終端部は、前記穀物貯留部2の中央部に垂設した分散装置13に接続してある。
【0017】
次に、前記穀物乾燥室6について詳述する。
前記一対の穀物乾燥室6は、その上部を前記穀物貯留部2連通するとともに、互いに内方へ漏斗状に傾斜した各下端部は共通の前記ロータリバルブ14に接続される。前記ロータリバルブ14の間歇的な正逆転駆動によって前記穀物貯留部2の籾米は前記穀物乾燥室6内を断続的に流下し、その間、籾米は、前記熱風室4から前記排風室5内へ通過する熱風を浴びて乾燥作用を受けることになる。
【0018】
前記穀物乾燥室6を形成するのは、前記排風室6に接する排風室側スクリーン6aと前記熱風室4に接する熱風室側スクリーン6bである。
図3で示すように、前記熱風室側スクリーン6bは周知の円形孔7によって形成されている。すなわち、直径2mmの真円からなる円形孔7を、3mmピッチで開孔率約40%となるよう千鳥状に多数設けることにより、穀粒が前記円形孔7から漏れることがなく、かつ、強度も保持されている。
【0019】
一方、前記排風室側スクリーン6aは前記熱風室側スクリーン6bと対向配置され、その上下の端部を除いて、
図2で示すように、45度に傾斜した幅1.7mmで長さ15mmの傾斜状長孔8を多数設けて開孔率40.2%の傾斜状長孔部8aとしてある。前記排風室側スクリーン6aの上下端部は無孔壁としてある。前記傾斜状長孔8は籾米が漏出せず、かつ、強度上の観点から上記のとおりとしたが、長さとしては12~20mmの範囲から選択されうる。
なお、傾斜状長孔8の傾斜角は45度~75度の範囲とすることが望ましい。この範囲とすることで、前述のエッジによる枝梗の切断を効率よく行える。
【0020】
また、前記傾斜状長孔部8aは、
図4に示すように、前記傾斜状長孔8の傾斜方向を互い違いに多段状に形成することもできるし、図示していないが、前記傾斜状長孔部8aと前記円形孔部7aとを交互に多段状に形成することもできる。さらに、前記穀物乾燥室6の上部寄りを垂直状に、下部寄りを漏斗状にそれぞれ形成した場合、前記下部寄りの漏斗状排風室側スクリーンのみを前記傾斜状長孔部8aとし、その他のスクリーンは全て前記円形孔部7aとすることもできる。
【0021】
本実施の形態は上述のように構成したので、前記ロータリバルブ14の間歇駆動により前記穀物貯留部2内の籾米は、前記穀物乾燥室6内を間歇的に流下する。その際、滑り台状に傾斜した排風室側スクリーンには籾米の流動圧(体積加重)が大きくかかり、前記籾米の枝梗が前記傾斜状長孔8に入り込み、前記枝梗は前記傾斜状長孔8のエッジ部に強く押し当てられて切断される。その時、前記籾米の流下方向は下方であるのに対し、前記傾斜状長孔8は45度に傾斜しているため、長孔が垂直状の場合に比して前記枝梗の切断・除去が行われやすい。前記傾斜状長孔8によって切断された枝梗は前記熱風室4から前記排風室5へ通過する乾燥風(熱風)によって前記排風室5内へ誘導され、直ちに排風とともに排風機9から機外へ排出される。そのため、特別に排塵機等を要さず、前記枝梗は他夾雑物と共に処理される。
【0022】
次に、別の実施形態について
図5と共に説明する。
前記排風室側スクリーン6aを分割して分割スクリーン6cとなし、前記分割スクリーン6cを取り外し可能としてある。本実施形態においては2つの分割スクリーン6cを設けた。そして、前記排風室側スクリーン6aには前記円形孔7を形成し、前記分割スクリーン6cには前記円形孔7とは相異なる前記傾斜状長孔8を形成してある。
【0023】
このように、前記排風室側スクリーン6aの一部を傾斜状長孔8で形成することにより、籾米の枝梗付着率に応じて傾斜状長孔8で形成される分割スクリーン6cを適宜装着したり脱着したりすることができる。また、前記分割スクリーン6cが摩耗した場合は容易に交換可能である。さらに、枝梗付着率の極めて少ない籾米の場合は、前記円形孔7で形成した分割スクリーン6cとして、すべてのスクリーンを円形孔部7aで形成することも洗濯できる。
なお、前記排風室側スクリーン6aには前記傾斜状長孔8を形成し、前記分割スクリーン6cには前記傾斜状長孔8とは相異なる前記円形孔7を形成することもできる。
【0024】
本発明の枝梗には、「芒」も含まれる。この芒とは籾についているヒゲ状のものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の穀物乾燥機は、排風室側スクリーンのパンチング加工を変更するだけで乾燥作業を行いながら籾米の枝梗を除去でき、極めて利用価値が高い。
【符号の説明】
【0026】
1 穀物乾燥機
2 穀物貯留部
3 穀物乾燥部
4 熱風室
5 排風室
6 穀物乾燥室
6a 排風室側スクリーン
6b 熱風室側スクリーン
6c 分割スクリーン
7 円形孔
8 傾斜状長孔
9 排風機
13 分散装置
14 ロータリバルブ
16 モータ
17 モータ
19 集穀板
20 下部螺旋
21 昇降機
22 上部螺旋