(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043901
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】換気システム
(51)【国際特許分類】
F24F 3/00 20060101AFI20230323BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20230323BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
F24F3/00 B
F24F7/08 Z
F24F5/00 102K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151631
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】390019529
【氏名又は名称】株式会社土谷特殊農機具製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】土谷 紀明
【テーマコード(参考)】
3L053
【Fターム(参考)】
3L053BA01
3L053BA06
(57)【要約】
【課題】外気を地中で熱交換させてから室内に導入する換気システムにおいて、導入された外気と室内温度との差を低減する。
【解決手段】外気を吸い込むための外気吸込口(21)と、吸い込んだ外気を地中で熱交換させるために地中に埋設された地中熱交換部(22)とを具備する地中装置(20)と、前記地中熱交換部(22)で熱交換した後の外気を室内で熱交換させるために室内に設置された室内熱交換部(12、14)及び前記室内熱交換部(12、14)で熱交換した後の外気を給気として室内に吹き出す吹出口(16)を具備する室内装置(10)と、前記地中装置(20)と前記室内装置(10)とを接続する送気管(23)と、前記外気吸込口(21)から前記吹出口(16)まで外気を移動させるための送風ファン(30)と、
室内の空気を屋外に排出する排気口(55)と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を吸い込むための外気吸込口(21)と、吸い込んだ外気を地中で熱交換させるために地中に埋設された地中熱交換部(22)とを具備する地中装置(20)と、
前記地中熱交換部(22)で熱交換した後の外気を、建物の室内で熱交換させるために室内に設置された室内熱交換部と、前記室内熱交換部で熱交換した後の外気を給気として室内に吹き出す吹出口(16)とを具備する室内装置(10)と、
前記地中装置(20)と前記室内装置(10)とを接続する送気管(23)と、
前記外気吸込口(21)から前記吹出口(16)まで外気を移動させるための送風ファン(30)と、
室内空気を屋外に排出する排気口(55)と、を有することを特徴とする換気システム。
【請求項2】
外郭部材(44)に囲まれた氷室(41)と、前記氷室(41)内に設置された水槽(42)と、製氷時期に前記水槽(42)内の水を凍結させるべく前記氷室(41)内に外気を入出させるための製氷用外気入出口(43a、43b)とを具備する貯氷コンテナ(40)と、
前記貯氷コンテナ(40)から前記送気管(23)の中間点に空気を送り合流させるための往路管(45)と、
室内から前記貯氷コンテナ(40)に空気を戻すための復路管(46)と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記貯氷コンテナ(40)との間の空気の往復を許容又は停止させるための切換ダンパー(47)をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の換気システム。
【請求項4】
外郭部材(44)に囲まれた氷室(41)と、前記氷室(41)内に設置された水槽(42)と、製氷時期に前記水槽(42)内の水を凍結させるべく前記氷室(41)内に外気を入出させるための製氷用外気入出口(43a、43b)と、外気を吸い込むための換気用外気吸込口(48)と、を具備する貯氷コンテナ(40)と、
前記貯氷コンテナ(40)から送られた空気を、建物の室内で熱交換させるために室内に設置された室内熱交換部と、前記室内熱交換部で熱交換した後の外気を給気として室内に吹き出す吹出口(16)とを具備する室内装置(10)と、
前記貯氷コンテナ(40)と前記室内装置(10)とを接続する送気管(23)と、
前記換気用外気吸込口(48)から前記吹出口(16)まで外気を移動させるための送風ファン(30)と、
室内空気を屋外に排出する排気口(55)と、を有することを特徴とする換気システム。
【請求項5】
前記室内熱交換部は、外気が鉛直方向に下方から上方に通過する第1の流路空間(13)と、前記第1の流路空間(13)を囲みかつ室内空間に面した第1の熱交換面(12a、12b)とを具備する第1の室内熱交換体(12)を少なくとも有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の換気システム。
【請求項6】
前記室内熱交換部は、前記第1の室内熱交換体(12)の前記第1の流路空間(13)の上端と連通しかつ外気が水平方向に通過する第2の流路空間(15)と、前記第2の流路空間(15)を囲みかつ室内空間に面した第2の熱交換面(14a、14b)とを具備する第2の室内熱交換体(14)をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の換気システム。
【請求項7】
前記室内装置(10)が、建物における上下の各階の室内にそれぞれ設置された前記室内熱交換部を有し、下側の階の第1の室内熱交換体(12)の上端が上側の階の第1の室内熱交換体(12)の下端に連結されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空気と外気とを入れ換える換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
換気とは、室内空気と新鮮な外気とを入れ換えることであり、換気によって室内空気中の有害物質を屋外に排出したり、希釈したりすることができる。昨今のウィルス感染症の蔓延により、集会場はもとより、事務所、病院、教室、高齢者施設など、様々な建物における換気の重要性が見直されている。
【0003】
外気は、室内空気に比べて寒暖差が大きいため、そのまま室内に導入すると室内の温度に大きく影響する。特許文献1~3では、地中の恒温性を利用して外気を地中熱と熱交換した後に室内に取り入れる換気システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-90202号公報
【特許文献2】特開2005-351514号公報
【特許文献3】特開2014-231982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地中温度は、一年を通して10℃前後であるので、冬期及び夏期のいずれの外気温度であっても、外気を地中で熱交換することによって外気温度を、22~24℃である室内温度に近づけてから室内に導入することが可能である。しかしながら、通年換気を行う場合、地域によっては、外気温度が夏期には35℃以上、冬期には-30℃以下となることもある。そのような時期には、地中熱との熱交換を行っただけでは、取り入れた外気の温度と室内温度との差が大きすぎて冷暖房の負荷が大きくなる。
【0006】
以上の問題点に鑑み、本発明の目的は、換気システムにおいて、導入される外気の温度と室内温度の差を効率的に低減することを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
- 本発明の換気システムの態様は、外気を吸い込むための外気吸込口(21)と、吸い込んだ外気を地中で熱交換させるために地中に埋設された地中熱交換部(22)とを具備する地中装置(20)と、
前記地中熱交換部(22)で熱交換した後の外気を、建物の室内で熱交換させるために室内に設置された室内熱交換部と、前記室内熱交換部で熱交換した後の外気を給気として室内に吹き出す吹出口(16)とを具備する室内装置(10)と、
前記地中装置(20)と前記室内装置(10)とを接続する送気管(23)と、
前記外気吸込口(21)から前記吹出口(16)まで外気を移動させるための送風ファン(30)と、
室内空気を屋外に排出する排気口(55)と、を有することを特徴とする。
- 上記態様において、外郭部材(44)に囲まれた氷室(41)と、前記氷室(41)内に設置された水槽(42)と、製氷時期に前記水槽(42)内の水を凍結させるべく前記氷室(41)内に外気を入出させるための製氷用外気入出口(43a、43b)とを具備する貯氷コンテナ(40)と、
前記貯氷コンテナ(40)から前記送気管(23)の中間点に空気を送り合流させるための往路管(45)と、
室内から前記貯氷コンテナ(40)に空気を戻すための復路管(46)と、をさらに有することが、好適である。
- 上記態様において、前記貯氷コンテナ(40)との間の空気の往復を許容又は停止させるための切換ダンパー(47)をさらに有することが、好適である。
- 本発明の換気システムの別の態様は、外郭部材(44)に囲まれた氷室(41)と、前記氷室(41)内に設置された水槽(42)と、製氷時期に前記水槽(42)内の水を凍結させるべく前記氷室(41)内に外気を入出させるための製氷用外気入出口(43a、43b)と、外気を吸い込むための換気用外気吸込口(48)と、を具備する貯氷コンテナ(40)と、
前記貯氷コンテナ(40)から送られた空気を、建物の室内で熱交換させるために室内に設置された室内熱交換部と、前記室内熱交換部で熱交換した後の外気を給気として室内に吹き出す吹出口(16)とを具備する室内装置(10)と、
前記貯氷コンテナ(40)と前記室内装置(10)とを接続する送気管(23)と、
前記換気用外気吸込口(48)から前記吹出口(16)まで外気を移動させるための送風ファン(30)と、
室内空気を屋外に排出する排気口(55)と、を有することを特徴とする。
- 上記いずれかの態様において、前記室内熱交換部は、外気が鉛直方向に下方から上方に通過する第1の流路空間(13)と、前記第1の流路空間(13)を囲みかつ室内空間に面した第1の熱交換面(12a、12b)とを具備する第1の室内熱交換体(12)を少なくとも有することが、好適である。
- 上記いずれかの態様において、前記室内熱交換部は、前記第1の室内熱交換体(12)の前記第1の流路空間(13)の上端と連通しかつ外気が水平方向に通過する第2の流路空間(15)と、前記第2の流路空間(15)を囲みかつ室内空間に面した第2の熱交換面(14a、14b)とを具備する第2の室内熱交換体(14)をさらに有することが、好適である。
- 上記いずれかの態様において、前記室内装置(10)が、建物における上下の各階の室内にそれぞれ設置された前記室内熱交換部を有し、下側の階の第1の室内熱交換体(12)の上端が上側の階の第1の室内熱交換体(12)の下端に連結されていることが、好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、換気システムにおいて、室内空気と熱交換させる室内装置を設けたことによって、導入される外気と室内温度との差をほぼ通年に亘って低減することができる。この結果、暖房及び冷房の負荷を軽減できる省エネルギーの換気システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明による換気システムの第1の実施形態の構成例を概略的に示した図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1に示した換気システムにおける室内装置の斜視図、(b)は(a)のI-I断面、(c)は(a)のII-II断面を概略的に示した図である。
【
図3】
図3は、本発明による換気システムの第2の実施形態の構成例を概略的に示した図である。
【
図4】
図4は、本発明による換気システムの第3の実施形態の構成例を概略的に示した図である。
【
図5】
図5は、本発明による換気システムの第4の実施形態の構成例を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を示した図面を参考しつつ、本発明の実施形態を説明する。図面中、各実施形態において同一又は類似する構成要素については同じ符号で示している。
【0011】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明による換気システムの第1の実施形態の構成例を概略的に示した図である。例えば戸建て住宅である建物50は、1階の床51、1階の天井(2階の床)52、2つの外壁53、床下空間54の一部のみを概略的に示している。図中の黒矢印は、換気システムによる空気の流れを概略的に示している(他の図においても同様)。
【0012】
第1の実施形態の換気システムは、室内に設置された室内装置10と、地中に設置された地中装置20とを有する。
【0013】
地中装置20は、外気OAを吸い込むための外気吸込口21を有する。外気吸込口21は、建物50の外部の地表Gから鉛直上方に所定の高さ位置まで延びる管とその先端の開口を具備する。雨水が入らないように、管がU字状に曲がり先端が下向きに開口することが好ましい。開口にはフィルタを取り付けてもよい。外気吸込口21の管は、地中に延びてその下端は、地中の適切な深度に埋設された熱交換パイプ22の一端と接続されている。
【0014】
外気吸込口21から吸い込まれた外気OAは、熱交換パイプ22の内部を通過する間に、地中温度を有する周囲地盤との間で熱交換を行う。図示の熱交換パイプ22は、地中熱交換部の一例である。熱交換パイプ22は多数のフィンを設けた環状部材であるが、地中熱交換部の形状はこれに限定されず、熱交換効率のよい形状であればよい。熱交換パイプ22の他端には、送気管23の下端が連結されている。送気管23は、地中装置20と室内装置10とを接続しており、地中装置20から室内装置10へ向かう外気の流路となる。図示の例では、送気管23は、鉛直方向に延びて床下空間54を通って1階の床51を貫通している。
【0015】
送気管23の上端は、室内装置10の底面に連結されている。図示の例では、送気管23の上端部に送風ファン30が設置されている。送風ファン30を稼動することによって、外気OAが外気吸込口21から吸い込まれ、地中装置20及び室内装置10を通過して、給気SAとして室内に吹き出す。外気吸込口21から吹出口16まで外気を移動させる送風ファン30の設置位置は図示の位置に限られず、例えば室内装置10又は地中装置20の一部に設けてもよい。
【0016】
室内装置10は、ここでは一例として1階の一室に設置されており、例えば一方の壁53の近傍に配置されている。室内装置10は、例えば平板状の支持固定部11により床51上に固定され、安定に支持されている。室内装置10は、室内熱交換部を有する。室内熱交換部は、一例として、鉛直方向に延在する第1の室内熱交換体12と、水平方向に延在する第2の室内熱交換体14とを有する。地中装置20から送られた外気は、室内熱交換体12の底面から鉛直方向の流路空間13に流入し、さらに室内熱交換体14の水平方向の流路空間15を通過する。流路空間13、15を通過する間に、外気は、室内温度である室内空気RAとの間でさらに熱交換する。熱交換中、外気と室内空気は直接的に接触しない。室内熱交換部で熱交換した後、外気は、室内装置10の吹出口16から給気SAとして室内に吹き出される。
【0017】
さらに、室内の空気を排気EAとして屋外に排出するための排気口55が設けられている。排気口55は、室内装置10から離れた壁53に設けられることが好ましい。なお、排気口55は、建物50の既設の排気口でもよい。
【0018】
図2(a)は、
図1に示した換気システムにおける室内装置10の斜視図、(b)は(a)のI-I断面、(c)は(a)のII-II断面を概略的に示した図である。
【0019】
室内装置10は、図示の例では、
図2(b)の側面図に示すように側面視にて逆L字状の室内熱交換部を有する。室内熱交換部は、第1の室内熱交換体12と、第2の室内熱交換体14とを有する。第1の室内熱交換体12は、鉛直方向に延在する中空部材から形成されている。室内熱交換体12は、外気が鉛直方向に下方から上方に通過する第1の流路空間13を有する。第1の流路空間13は、好ましくは、厚さ(
図2(b)の左右方向の長さ)に比べて他の2辺が数倍以上の長さを有する平たい略直方体である。第1の流路空間13を囲みかつ室内空間に面した4つの側面のうち、広い面積を有する互いに反対向きの一対の第1の熱交換面12a、12bが、第1の流路空間13内の外気と室内空気RAとの熱交換に主に寄与する。第1の室内熱交換体12の上端は、天井近傍に位置することが好ましい。
【0020】
さらに、第2の室内熱交換体14は、第1の室内熱交換体12の上端から水平方向に一方向に延在する中空部材から形成されている。第2の室内熱交換体14は、外気が水平方向に通過する第2の流路空間15を有する。第2の流路空間15は、第1の流路空間13の上端と連通している。第2の流路空間15もまた、好ましくは、厚さ(
図2(b)の上下方向の長さ)に比べて他の2辺が数倍以上の長さを有する平たい略直方体である。第2の流路空間15を囲みかつ室内空間に面した4つの側面のうち、広い面積を有する互いに反対向きの一対の第2の熱交換面14a、14bが、第2の流路空間15内の外気と室内空気RAとの熱交換に主に寄与する。
【0021】
なお、図示の例では、第1の熱交換面12a、12b及び第2の熱交換面14a、14bは平坦面であるが、熱交換効率を向上させるために凹凸を有する面としてもよい。
【0022】
室内装置10の底面に開口する送気管23から第1の流路空間13に流入した外気は、第1の流路空間13で帯状に広がって上昇し、屈曲して第2の流路空間15を水平に移動し、第2の室内熱交換体14の先端に開口する吹出口16から室内に吹き出される。なお、吹出口16には、適宜フィルタや風向フィンを取り付けてもよい。
【0023】
図示しないが、別の例として、第2の室内熱交換体14が、第1の室内熱交換体12の上端から互いに反対向きの2つの方向に延在し、両端に吹出口16が開口してもよい。この場合、室内装置10は、側面視にてT字状となる。さらに別の例として、室内熱交換部が、第1の室内熱交換体12のみで構成され、第1の室内熱交換体12の上端部において上向き又は横向きに吹出口16が開口してもよい。この場合、室内装置10は、側面視にてI字状となる。
【0024】
また図示しないが、別の例として、室内装置10を壁53の近傍に設置する替わりに、部屋の中央に設置して室内間仕切り等として利用することもできる。
【0025】
第1の実施形態の換気システムの稼動方法の例を説明する。
冬期において、外気温度が-10℃、地中温度が8℃、暖房されている室内温度が22℃とする。
図1の外気吸込口21から吸い込まれた外気OAは、地中装置20及び室内装置10で2段階の熱交換を行うことによって温度上昇し、吹出口16から10~11℃の給気SAとして吹き出される。
【0026】
夏期において、外気温度が30℃、地中温度が12℃、冷房されている室内温度が24℃とする。
図1の外気吸込口21から吸い込まれた外気OAは、地中装置20及び室内装置10で2段階の熱交換を行うことによって温度降下し、吹出口16から26~27℃の給気SAとして吹き出される。
【0027】
冬期及び夏期のいずれにおいても、地中装置20及び室内装置10で熱交換することによって、地中装置20のみで熱交換する場合に比べて、給気SAと室内空気RAとの温度差をさらに低減することができる。室内に吹き出された給気SAは、室内空気RAと混合されて室内温度となり、排気EAとして排気口55から出て行く。これにより換気が行われると共に、換気による暖房及び冷房の負荷を軽減することができる。
【0028】
(2)第2の実施形態
図3は、本発明による換気システムの第2の実施形態の構成例を概略的に示した図である。第2の実施形態は、上述した第1の実施形態の換気システムの構成に加え、貯氷コンテナ40を併用する換気システムである。
図3では、貯氷コンテナ40の外郭部材44の一部を切り欠いて内部を示している。
【0029】
貯氷コンテナ40は、好ましくは可搬式であり、建物50の隣に設置される。貯氷コンテナ40は、断熱構造を備えた外郭部材44に囲まれた内部空間である氷室41を有する。氷室41内には、多数の水槽42が設置されている。多数の水槽42は、例えば、鉛直方向に複数段及び水平方向に複数列を有する適宜の棚に配置されている。外郭部材44の正面には、開閉可能な製氷用外気入口43aと製氷用外気出口43bが設けられている。
【0030】
また、外郭部材44の側面には、往路管45と復路管46の各々の一端がそれぞれ連結されている。往路管45の他端は、地中装置20と室内装置10とを接続する送気管23の中間点に連結されている。往路管45によって、貯氷コンテナ40の氷室41内の空気が送気管23に送られ、そこを通過する空気に混合させられる。
【0031】
また、復路管46の他端は、建物50の外壁53に設けられた戻り口56に連結されている。復路管46によって、室内空気RAが貯氷コンテナ40の氷室41に送られる。往路管45及び復路管46により、貯氷コンテナ40と建物50の室内との間で空気が循環することができる。貯氷コンテナ40における往路管45と復路管46の各々の連結位置は、互いにできるだけ離れた位置とすることが好ましい。
【0032】
さらに、貯氷コンテナ40との間の空気の往復を許容又は停止させるための切換ダンパー47を有することが好ましい。例えば、外気温度が0℃より高くかつ室内温度よりも低い期間には、貯氷コンテナ40からの空気を停止させる。図示の例では、貯氷コンテナ40との間の空気の移動も、送風ファン30によって行われるが、貯氷コンテナ40との間の空気の移動のために第2の送風ファンを設けてもよい。
【0033】
製氷時期(冬期)に、貯氷コンテナ40内の水槽42に水を充填し、製氷用外気入口43a及び製氷用外気出口43bを開放することによって、氷点下の自然冷気を氷室41内に導入することで水槽42の水を凍結させる。なお、製氷時期においても、氷室41内の温度が氷点下となってしまわないように、すなわち水槽42内に水と氷が共存する状態を維持するように、製氷用外気入口43a及び製氷用外気出口43bの開閉を調節する。それにより、氷室41内の空気は、温度0℃、湿度100%の状態に維持される。非製氷時期(春期~秋期)においては、氷が完全に融解しなければ、氷室41内の空気は、温度0℃、湿度100%の状態に維持される。
【0034】
第2の実施形態の換気システムの稼動方法の例を説明する。
冬期において、外気温度が-30℃、地中温度が8℃、暖房されている室内温度が22℃とする。
図3の外気吸込口21から吸い込まれた外気OAは、地中装置20で第1段階の熱交換して温度上昇した後に、貯氷コンテナ40から送られた0℃の空気と混合されてさらに温度上昇した後、室内装置10で第2段階の熱交換を行うことによってさらに温度が上昇し、吹出口16から13~14℃の給気SAとして吹き出される。貯氷コンテナ40からの湿度100%の空気と混合されることで、給気SAの湿度も42~40%に加湿されている。吹き出された給気SAは、室内空気RAと混合されて室内温度となり、排気EAとして排気口55から出て行くか、又は、戻り口56から貯氷コンテナ40に戻る。
【0035】
夏期において、外気温度が30℃、地中温度が12℃、冷房されている室内温度が24℃とする。
図3の外気吸込口21から吸い込まれた外気OAは、地中装置20で第1段階の熱交換して温度降下した後に、貯氷コンテナ40から送られた0℃の空気と混合されてさらに温度降下した後、室内装置10で第2段階の熱交換を行うことによってさらに温度が降下し、吹出口16から20~26℃の給気SAとして吹き出される。吹き出された給気SAは、室内空気RAと混合されて室内温度となり、排気EAとして排気口55から出て行くか、又は、戻り口56から貯氷コンテナ40に戻る。
【0036】
第2の実施形態では、貯氷コンテナ40を併用することにより、第1の実施形態よりもさらに、給気SAと室内空気RAとの温度差を低減することができ、暖房及び冷房の負荷をさらに軽減することができる。
【0037】
(3)第3の実施形態
図4は、本発明による換気システムの第3の実施形態の構成例を概略的に示した図である。第3の実施形態の換気システムには地中装置はなく、室内装置10と、第2の実施形態で用いた貯氷コンテナ40とを利用した形態である。
【0038】
第3の実施形態で利用する貯氷コンテナ40は、第2の実施形態で説明したものと類似しているが、異なる点がある。1つは、貯氷コンテナ40の正面に、換気用外気吸込口48が設けられている点である。換気用外気吸込口48は、製氷用外気出入口43a、43bに比べて開口面積すなわち流量が小さい。また、貯氷コンテナ40の側面には、送気管49の一端が連結されており、送気管49の他端は、室内装置10の底面に連結されている。
【0039】
送風ファン30は、一例として、送気管49の他端近傍に設けられている。第3の実施形態では、外気OAは、換気用外気吸込口48から貯氷コンテナ40に吸い込まれ、貯氷コンテナ40を経由して室内装置10に送られ、室内装置10で熱交換して給気SAとして室内に吹き出される。吹き出された給気SAは、室内空気RAと混合されて室内温度となり、排気EAとして排気口55から出て行く。
【0040】
第3の実施形態の換気システムの稼動方法を説明する。
貯氷コンテナ40の氷室41は、上述した通り、温度0℃、湿度100%に維持されている。冬期においては、氷点下の外気OAが、貯氷コンテナ40内で温度上昇し、さらに室内装置10で熱交換することで温度上昇して給気SAとして室内に吹き出される。これにより、暖房の負荷を軽減して換気を行うことができる。
【0041】
夏期においては、室内温度より遙かに高い温度の外気OAが、貯氷コンテナ40内に吸い込まれるが、外気OAの流量よりも氷室41の容量が遙かに大きいので、貯氷コンテナ40からは、ほぼ温度0℃、湿度100%の空気が室内装置10に送られる。室内装置10に送られた空気は、室内装置10での熱交換により温度上昇して室内温度に近づいて給気SAとして室内に吹き出される。夏期においては冷房の補助と換気の両方の役割を果たすことになる。
【0042】
(4)第4の実施形態
図5は、本発明による換気システムの第4の実施形態の構成例を概略的に示した図である。第4の実施形態の換気システムは、室内装置10の変形形態を有する。ここでは、室内装置10が、1階と2階の両方において換気を行うことができる。室内装置10は、上下の各階の室内にそれぞれ設置された室内熱交換部を有する。そして、1階に設置された室内熱交換部の第1の室内熱交換体12の上端が、鉛直方向に延びて1階の天井を貫通して2階に設置された室内熱交換部の第1の室内熱交換体12の下端に連通している。また、水平方向に延びる第2の室内熱交換体14は、1階と2階の天井近傍にそれぞれ形成されている。この実施形態は、3階以上の建物にも適用可能である。
【0043】
図示しないが、別の例として、第4の実施形態において、水平方向に延びる第2の室内熱交換体14を設けず、第1の室内熱交換体12の側面に吹出口16を形成してもよい。
【0044】
室内装置10以外の構成については、上述したいずれかの実施形態の地中装置10及び/又は貯氷コンテナ40を組み合わせることができる。
【0045】
以上に述べた本発明の実施形態は一例を示したものであり、これら以外にも種々の公知技術を適用した多様な変形形態が可能であり、それらについても本発明に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0046】
10 室内装置
11 支持固定部
12 第1の室内熱交換体
12a、12b 第1の熱交換面
13 第1の流路空間
14 第2の室内熱交換体
14a、14b 第2の熱交換面
15 第2の流路空間
16 吹出口
20 地中装置
21 外気吸込口
22 熱交換パイプ
23 送気管
30、31 送風ファン
40 貯氷コンテナ
41 氷室
42 水槽
43a 製氷用外気入口
43b 製氷用外気出口
44 外郭部材
45 往路管
46 復路管
47 切換ダンパー
48 換気用外気吸込口
49 送気管
50 建物
51 床
52 天井
53 外壁
54 床下空間
55 排気口
56 戻り口
G 地表
OA 外気
SA 給気
RA 室内空気
EA 排気