(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043934
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】鉄心構造及び変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20230323BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H01F27/24 H
H01F27/24 E
H01F30/10 A
H01F30/10 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151686
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎矢
(57)【要約】
【課題】フェライトコアからなる鉄心の巻線巻回部と非巻線巻回部との接合部の内周側への磁束集中及び鉄損の緩和を図る。
【解決手段】変圧器1は、フェライトコア21~25からなる中空角柱状の鉄心2と、この鉄心2に巻回される一次巻線3及び二次巻線4を備える。巻線巻回部26と非巻線巻回部27との接合部である鉄心2の角部28は横断面の異なる複数のフェライトコア21~25が配置及び一方向に積層されて成る。前記横断面は鉄心2の外周側から内周側に連れて小さくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライトコアからなる鉄心の巻線巻回部と非巻線巻回部との接合部において横断面の異なる前記フェライトコアが配されることを特徴とする鉄心構造。
【請求項2】
前記横断面は前記鉄心の外周側から内周側にかけて小さくなることを特徴とする請求項1に記載の鉄心構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄心構造を有する変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波大容量の変圧器の鉄心、特に、フェライトコアからなる鉄心の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量の変圧器の鉄心は、一般的に、例えばフェライトコアからなる板状の磁性体を額縁状に配置したものを一方向に積層した構造を成す(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実全昭58-12915号公報
【特許文献2】特開平5-326289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェライトコアが積層された鉄心は、隣り合うフェライトコアのギャップ(間隙)に起因する磁気抵抗により、特に鉄心の巻線巻回部と非巻線巻回部との接合部における磁束が鉄心の内周側に集中し、また、鉄損も当該内周側に集中して起こる。
【0005】
本発明は、以上の事情を鑑み、フェライトコアからなる鉄心の巻線巻回部と非巻線巻回部との接合部の内周側への磁束集中及び鉄損の緩和を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の一態様は、鉄心構造であって、フェライトコアからなる鉄心の巻線巻回部と非巻線巻回部との接合部は横断面の異なる前記フェライトコアが配される。
【0007】
本発明の一態様は、前記鉄心構造において、前記横断面は前記鉄心の外周側から内周側にかけて小さくなる。
【0008】
本発明の一態様は、上記の鉄心構造を有する変圧器である。
【発明の効果】
【0009】
以上の本発明によれば、フェライトコアからなる鉄心の巻線巻回部と非巻線巻回部との接合部の内周側への磁束集中及び鉄損の緩和を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1の変圧器における鉄心構造の横断面図。
【
図2】変圧器の鉄心の外層、中層及び内層を模した磁気回路の磁気抵抗の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1に示された実施形態1の鉄心構造は例えば内鉄形の変圧器1に適用される。
【0013】
変圧器1は、フェライトコア21~25からなる鉄心2と、この鉄心2に巻回される一次巻線3及び二次巻線4を備える。
【0014】
鉄心2は、例えば同図に示したように、直方体状若しくは長板状のフェライトコア21~25が額縁状に配置されたものがさらに一方向に積層されて中空角柱状を成す。
【0015】
一次巻線3,二次巻線4が各々券回される鉄心2のレグ部に相当する巻線巻回部26、並びに、一次巻線3,二次巻線4が券回されない鉄心2のヨーク部に相当する非巻線巻回部27は、同一寸法のフェライトコア21が配置及び一方向に積層されて成る。隣接のフェライトコア21は鉄心製造分野において周知の接着法により接着される。
【0016】
巻線巻回部26と非巻線巻回部27との接合部である鉄心2の角部28は、鉄心2の軸方向と直交する横断面の異なる複数のフェライトコア21~25が配置及び一方向に積層されて成る。前記横断面は鉄心2の外周側から内周側に連れて小さくなる。尚、隣接のフェライトコア21~25も前記周知の接着法により接着される。
【0017】
図1に例示された三層の鉄心2の場合、接合部29は横断面の形状が略正方形を成す。そして、この接合部29の外層OUT(
図2)には、通常寸法の横断面長方形のフェライトコア21及び当該通常寸法の略2/3である横断面長方形のフェライトコア22が配される。さらに、外層OUTよりも内周側の中層CEN(同図)には、フェライトコア21の略1/3若しくは略1/3~4/5の横断面のフェライトコア23,24が配される。そして、中層CENよりも内周側の内層IN(同図)には、フェライトコア21の略1/3若しくは略1/10の横断面のフェライトコア24,25が配される。
【0018】
特に、フェライトコア21~25は、鉄心2の内層IN、中層CEN及び外層OUTの磁気抵抗が略均等となるように配置及び積層される。すなわち、
図2に例示した三層の鉄心2の内層INの磁気抵抗Rm_IN、中層CENの磁気抵抗Rm_CEN及び外層OUTの磁気抵抗Rm_OUTは、以下の式(1)~式(3)により示される(但し、μ:鉄心2の透磁率、l
IN:内層INの磁路の長さ、l
CEN:中層CENの磁路の長さ、l
OUT:外層OUTの磁路の長さ、S:前記磁路の横断面積、μ
0:真空の透磁率、l
gap:内層IN,中層CEN,外層OUTにおいて隣接するフェライトコア21~25のギャップの長さ、S
gap:前記ギャップの断面積)。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
通常の磁気抵抗Rm_OUT、磁気抵抗Rm_CEN及び磁気抵抗Rm_INは、以下の式(4)により示される。
【0023】
【0024】
磁気抵抗Rm_OUT、磁気抵抗Rm_CEN及び磁気抵抗Rm_INは、フェライトコア21~25の磁気抵抗よりも、隣接するフェライトコア21~25のギャップの磁気抵抗が大きいので、当該ギャップの長さ及び数の調整により略均等に調整される。特に、磁気抵抗率μ(φ)は磁束φの関数であるので、磁気抵抗Rm_OUT、磁気抵抗Rm_CEN及び磁気抵抗Rm_INは以下の式(5)のように同等となるように有限要素法等の数値解析手法により前記ギャップの長さ及び数が調整される。
【0025】
【0026】
以上のように角部28は、例えば、隣り合うフェライトコア21~25のギャップの長さが鉄心2の外周から内周に近づくに連れて小さくなるように、前記横断面の寸法が異なるフェライトコア21~25は配置及び積層される。これにより、フェライトコア21~25間のギャップの数が鉄心2の外側で少なく内側で多くなり、当該外側及び内側の磁気抵抗が均一となるので、鉄心2の角部28(巻線巻回部26と非巻線巻回部27との接合部)における磁束の集中が緩和される。
【0027】
鉄心2のフェライトコア21~25の大型化は技術的な制約があるが、入手可能なサイズのフェライトコアの配置及び積層により実現が可能である。特に前記ギャップの数の調整による磁気抵抗の均一化により、鉄心2の内周側に磁束が集中し、鉄損が冷却しにくい内側に集中することを回避できる。
【0028】
尚、以上の実施形態の鉄心構造は内鉄形の変圧器に適用されたものであるが、本発明の鉄心構造は、外鉄形の変圧器にも適用しても当該実施形態と同様の効果が得られることは明らかである。また、鉄心2は三層の鉄心であるが、本発明の鉄心構造は四層以上の鉄心にも適用しても上記実施形態と同様の効果が得られることは明らかである。
【符号の説明】
【0029】
1…変圧器
2…鉄心、21~25…フェライトコア、26…巻線巻回部、27…非巻線巻回部、28…角部
3…一次巻線
4…二次巻線