(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043953
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/10 20060101AFI20230323BHJP
D06F 39/08 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
D06F39/10 D
D06F39/10 E
D06F39/08 321
D06F39/08 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151722
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 真司
(72)【発明者】
【氏名】林 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】上甲 康之
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
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3B166JM03
(57)【要約】
【課題】リント捕集性能の確保とリント除去作業を容易にすることが可能な洗濯機を提供する。
【解決手段】筐体2と、筐体2に収容されて水を溜める外槽3と、外槽3に内包されて衣類を収容する回転ドラム4と、外槽3と機外とを繋ぐ排水経路と、排水経路の途中に設けられて洗濯中に衣類から発生するリントを捕集するリントフィルタ31と、リントフィルタ31を収容するリントフィルタケース32と、を有し、外槽3とリントフィルタ31との間に逆止弁50を設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体に収容されて水を溜める外槽と、前記外槽に内包されて衣類を収容する内槽と、前記外槽と機外とを繋ぐ排水経路と、前記排水経路の途中に設けられて洗濯中に衣類から発生するリントを捕集するリントフィルタと、前記リントフィルタを収容するリントフィルタケースと、を有し、
前記外槽と前記リントフィルタとの間に逆止弁を設けたことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記リントフィルタのリント捕集部は、メッシュ状に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記リントフィルタのリント捕集部は、クシ歯状に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記逆止弁は、前記リントフィルタケースに取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記逆止弁は、前記リントフィルタに一体に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記外槽の下部の洗濯水を前記内槽内に戻す循環ポンプを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記排水経路から機外に排出する排水ポンプを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の特許文献1によれば、リントフィルタのリント捕集部に複数の目孔を形成し、リントを絡めつけることで捕集性能を向上するものが知られている。また、従来技術の特許文献2によれば、リントフィルタのリント捕集部をクシ歯状に形成することで捕集したリントを剥がれ易くし、ユーザの清掃性を向上するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-80928号公報
【特許文献2】特開2017-189270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で示されるリントフィルタは、捕集したリントが目孔を跨り、ループすることで捕集性が向上する一方で、捕集したリントをユーザがフィルタから除去することが難しく、場合によってはループしたリントをはさみ等で切断する必要があり、清掃の煩雑性に課題があった。
【0005】
また、特許文献2で示されるリントフィルタは、リントが剥がれ易い形状であり、ユーザの清掃性は優位であるが、フィルタからリントが剥がれ易い反面、リントの捕集性は劣るため、捕集し切れないリントが機外に流出し、排水口に詰まり易いことが課題であった。
【0006】
このように、従来技術のリントフィルタでは、捕集性と清掃性にトレードオフ関係があり、どちらも両立するリントフィルタは実現できていない。この実現が困難な理由として、洗濯機におけるリントフィルタの取付構造によるものがある。ドラム式洗濯機を例にして説明すると、リントフィルタ及びそれを収容するリントフィルタケースは水を貯める槽よりも下部に配置されている。これは自然排水をするための水頭を確保する必要があるためである。これにより、洗濯工程、すすぎ工程の度にリントフィルタ及びリントフィルタケース内は水没し、工程間の排水・脱水では水が抜けることを繰り返す。この水が抜ける工程において、リントを含んだ水がフィルタを通過するため、ろ過された水は機外へ排水され、フィルタ部(リント捕集部)でリントが捕集される。このフィルタ部において、フィルタの清掃性を優先して、クシ歯状のフィルタ、又は、目開きの細かいフィルタを配置した場合、例えば洗い後の排水時に捕集したリントが、次のすすぎ工程で槽内に給水された際に、浮力でフィルタから剥離し、配管内に戻されることが発生する。
【0007】
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、リント捕集性能の確保とリント除去作業を容易にすることが可能な洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、筐体と、前記筐体に収容されて水を溜める外槽と、前記外槽に内包されて衣類を収容する内槽と、前記外槽と機外とを繋ぐ排水経路と、前記排水経路の途中に設けられて洗濯中に衣類から発生するリントを捕集するリントフィルタと、前記リントフィルタを収容するリントフィルタケースと、を有し、前記外槽と前記リントフィルタとの間に逆止弁を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リント捕集性能の確保とリント除去作業を容易にすることが可能な洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の洗濯機の内部構造を示す概略図である。
【
図2】リントフィルタケースに逆止弁を設けた構造を示し、逆止弁が開いた状態を示す断面図である。
【
図3】リントフィルタケースに逆止弁を設けた構造を示し、逆止弁が閉じた状態を示す断面図である。
【
図4】メッシュ状のリントフィルタを示す概略図である。
【
図5】クシ歯状のリントフィルタを示す概略図である。
【
図6】循環ポンプ駆動時における洗濯水の流れを示す模式図である。
【
図7】循環ポンプ停止時における洗濯水の流れを示す模式図である。
【
図9】
図8に示す状態からリントフィルタを取り出した状態を示す断面図である。
【
図10】第2実施形態の洗濯機の内部構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1本実施形態に係る洗濯機の内部構造を示す側面図である。
図1に示すように、洗濯機1Aは、ドラム式の洗濯機であり、筐体2(箱体)と、筐体2内に設けられる外槽3と、外槽3に内包されるとともに回転自在に支持される回転ドラム4(内槽)と、回転ドラム4を回転駆動させるドラムモータ(図示省略)と、送風ユニット10と、循環ポンプ20と、リントフィルタ装置30Aと、排水路40(排水経路)と、逆止弁50と、を備えて構成されている。
【0012】
筐体2は、板金(鉄板)をプレス加工等によって四角筒状に形成したものである。また、筐体2の下部には、合成樹脂製のベース2aが設けられている。なお、図示していないが、筐体2の内部は、補強部材を用いて筐体2が補強されている。筐体2の正面には、洗濯物(不図示)を出し入れするドア2bが設けられている。
【0013】
外槽3は、円筒形状を呈し、回転ドラム4を同軸上に内包し、前面が開口している。前面の開口部には、外槽3内への貯水を可能にする外槽カバー3aが設けられている。また、外槽3の下側は、図示しないダンパで防振支持されている。また、外槽3(外槽カバー3a)の開口部には、ゴム製のベローズ(不図示)が設けられ、ドア2bを閉じることで外槽3を水封するようになっている。
【0014】
回転ドラム4は、回転可能に支持された円筒状の洗濯兼脱水槽であり、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔(不図示)を有し、前側端面には、洗濯物を出し入れするための開口部(不図示)が設けられている。また、回転ドラム4の回転中心軸gは、前側が後側よりも高くなるように傾斜している。なお、回転ドラム4は、回転中心軸gが略水平となる構成であってもよい。
【0015】
送風ユニット10は、送風機10a、ヒータ10bを備えて構成され、筐体2内の補強材(不図示)に固定されている。送風機10aは、駆動用のモータ(図示省略)、羽根車(図示省略)およびファンケース(図示省略)によって構成されている。ヒータ10bは、羽根車から送られる空気を加熱する。また、送風ユニット10の吐出口は、温風ダクト10cに接続されている。温風ダクト10cは、外槽カバー3aに設けた吐出口(不図示)に接続されている。また、筐体2の背面内側には、乾燥ダクト11が配置されている。この乾燥ダクト11は、上流側の端部が外槽3の後部に設けた吸気口に接続され、下流側の端部が送風ユニット10に接続されている。乾燥ダクト11内には、公知の水冷除湿機構(図示せず)が内蔵されている。なお、ヒータ、水冷除湿機構の代わりにヒートポンプを用いてもよい。
【0016】
循環ポンプ20は、外槽3の底に溜まった洗濯水を、循環配管21を介して吸い上げて回転ドラム4内の衣類に散布させる吸上力を発生させるものである。循環配管21は、循環ポンプ20に吸い込む循環路21a(排水経路)と、循環ポンプ20から吐出する循環路21bと、を備える。循環路21aは、上流側の端部が外槽3の底部に設けられた排水口3cに接続され、下流側の端部がリントフィルタ装置30Aを介して循環ポンプ20に接続されている。循環路21b(一部図示省略)は、上流側の端部が循環ポンプ20に接続され、下流側の端部が外槽カバー3aに接続されている。洗濯水は、外槽カバー3aの上部から回転ドラム4内に向かってシャワー状に散布されるようになっている。
【0017】
排水路40は、上流側の端部がリントフィルタ装置30Aに接続され、下流側の端部が排水弁41を介して機外に設けられた排水口(図示省略)と接続されるようになっている。
【0018】
図2は、リントフィルタケースに逆止弁を設けた構造を示し、逆止弁が開いた状態を示す断面図である。
図3は、リントフィルタケースに逆止弁を設けた構造を示し、逆止弁が閉じた状態を示す断面図である。
図2および
図3に示すように、リントフィルタ装置30Aは、リントを捕集するリント捕集部を有するリントフィルタ31と、このリントフィルタを収容するリントフィルタケース32と、を備えて構成されている。また、リントフィルタケース32は、洗濯機1Aの筐体2側に固定されている。
【0019】
リントフィルタ31は、合成樹脂材料で形成され、ユーザが手で操作してリントフィルタ31を着脱する取っ手31sが形成されている。また、リントフィルタ31は、機外から取り外し自在である。例えば,リントフィルタ31の取っ手31sを洗濯機1A(製品)に向かって反時計回り方向に回すと取り外すことができ、時計回り方向に回すと本体に固定、水封することができる構造となっている。
【0020】
また、リントフィルタ31は、リントフィルタケース32との隙間をふさぎ、水が漏れることを防ぐパッキン(不図示)を備えている。
【0021】
リントフィルタケース32は、リントフィルタ31が収められるフィルタ収容部32aと、外槽3の底から延びる循環路21aと接続される継手部32bと、を備えている。フィルタ収容部32aは、リントフィルタ31が挿入される開口部32cを備えている。フィルタ収容部32aは、略円筒状に形成され、前側(手前側)が上向きになるように傾斜している。継手部32bは、フィルタ収容部32aの上部から後方に向けて水平に延びている。
【0022】
また、リントフィルタケース32は、排水弁41に向けて延びる継手部32dが形成され、後方に向けて水平に延びている。この継手部32dは、継手部32bよりも鉛直方向の下方に位置し、かつ、継手部32bと略平行になるように配置されている。また、リントフィルタケース32には、循環ポンプ20が接続される接続部32eが形成されている。
【0023】
また、リントフィルタケース32には、逆止弁50が設けられている。この逆止弁50は、外槽3の排水口3c(
図1参照)からリントフィルタ31に向けて流れる洗濯水の流れを許容し、リントフィルタ31から外槽3の排水口3c(
図1参照)に向かう洗濯水の流れを遮断する機能を有する。
【0024】
逆止弁50は、リントフィルタケース32の継手部32bに設けられている。また、逆止弁50は、継手部32bに固定される弁箱51と、この弁箱51に回動自在に支持される弁体52と、を備えている。弁体52は、弁箱51の上部に回動支点となる軸を有している。
【0025】
図2に示すように、排水弁41(
図1参照)が閉じた状態において、循環ポンプ20(
図1参照)が駆動した場合、外槽3(
図1参照)内の底部に溜まった洗濯水が排水口3c(
図1参照)から吸い込まれ、循環路21a(
図1参照)を通過してリントフィルタ31によってリントが捕集される。この場合、逆止弁50の弁体52は水圧によって開状態となり、リントフィルタ31に向かって洗濯水が流れる。リントフィルタ31を通過した洗濯水は、循環ポンプ20(
図1参照)、循環路21b(
図1参照)を通って回転ドラム4内に戻る。
【0026】
図3に示すように、排水弁41(
図1参照)が閉じた状態において、循環ポンプ20(
図1参照)が停止している場合には、循環路21b(
図1参照)内の洗濯水が逆流し、循環ポンプ20の駆動時とは逆向きの流れが発生する。このため、リントフィルタ31から外槽3の排水口3c(
図1参照)への水圧が発生することで、逆止弁50の弁体52が閉状態となり、リントフィルタ31から外槽3の底面への洗濯水の流れが遮断される。
【0027】
図4は、メッシュ状のリントフィルタを示す概略図である。
図4に示すように、リントフィルタ31Aは、リントを捕集する捕集部(リント捕集部)31a1(31a)がメッシュ状に構成されたものである。捕集部31a1は、樹脂成型によって表面が格子状に形成されている。なお、捕集部31a1は、リントフィルタケース32(
図2参照)の円筒状の内壁面に沿って略半円筒状に形成されている。
【0028】
また、捕集部31a1は、樹脂成型によって格子状にするものではなく、金属製のメッシュ部材をインサート成形によって樹脂製の枠部材に一体に形成したものであってもよい。
【0029】
図5は、クシ歯状のリントフィルタを示す概略図である。
図5に示すように、リントフィルタ31Bは、リントを捕集する捕集部(リント捕集部)31a2(31a)がクシ歯(櫛歯)状に構成されたものである。この捕集部31a2は、板状のベースの一面側に複数のピンが一方向に向けて突出するとともに互いに離間して配置されるように構成されている。
【0030】
このように構成された洗濯機1Aでは、洗い工程、すすぎ工程等、外槽3に水を溜める場合には、排水弁41を閉じて給水することで槽内に貯水することができる。また、排水工程、脱水工程等、外槽3の水を機外に排水する場合には、排水弁41を開けて外槽3内の水を排水経路(排水路40)を通して機外へ排出することができる。このとき、外槽3内に溜まった水にリントが含まれている場合には、排水経路の途中に設けられたリントフィルタ31でリントを捕集し、ろ過した水を排水する。なお、前記した排水経路は、外槽3とリントフィルタケース32とを繋ぐ内部排水経路(循環路21a)と、リントフィルタケース32と機外を繋ぐ外部排水経路(排水路40)とに分けられる。
【0031】
ところで、洗い工程で衣類から発生したリントは,洗い工程後の排水時にリント捕集部(リントフィルタ31)で捕集される。次に1回目のすすぎ工程で外槽3内に給水された際、リントフィルタケース32内が再び水で満たされるため、捕集したリントには水による浮力が作用する。1回目のすすぎ後に再び排水される際、リント捕集部(リントフィルタ31)でまたろ過され外槽3内の水は排水される。その後、同様に2回目のすすぎ工程を実施した後、最終排水と最終脱水工程を経て運転は完了する。これによれば、洗い工程後の排水でリントフィルタ31でリントが捕集された後には、各2回の給水動作、排水動作が行われ、その度に、リントフィルタ31で捕集したリントには浮力が作用し、再ろ過が発生する。これにより、従来技術では、リント捕集部(リントフィルタ31)の形態によっては一度捕集したリントの再浮遊による槽内への逆流や、再ろ過時にリントがリントフィルタ31とリントフィルタケース32との隙間から漏れ出し、機外に排出してしまうことがあった。
【0032】
再浮遊を抑制するためには、リント捕集部(リントフィルタ31)がリントを絡み付けるような複雑な形態であればそれが可能となるが、リント捕集部(リントフィルタ31)はリントの捕集性だけではなく、ユーザの清掃性を考慮する必要がある。特許文献1で示したように、格子状のリント捕集部にすると、リントは目孔を跨り、捕集部にからみ付き易いため捕集性は向上するが、その反面ユーザの清掃性は悪化することが分かっている。また、特許文献2で示すように、清掃性を優先すると、リント捕集部でリントを保持することが難しく、水の浮力や、水流の影響を受けやすいことが課題であった。また、リント捕集部をメッシュ状の形態とする場合、目孔の細かい、例えば100μm~500μm角の大きさにしたとき、捕集したリントを容易に捕集部から剥がすことができ、清掃が容易となることも分かっているが、特許文献2と同様に、再浮遊の課題があった。
【0033】
そこで、本実施形態では、外槽3とリントフィルタケース32とを繋ぐ循環路21a(内部排水経路)に逆止弁50を設けることで、これら従来の課題を解決することが可能であることが見出された。前記したリントの再浮遊による槽内への逆流は、この逆止弁50によって解消でき、リントフィルタ31(リント捕集部)周辺にリントを滞在させることが可能になる。これにより、一度捕集したリントの再浮遊と、再ろ過時のリントの漏れ出しを抑制する効果が得られる。また、循環ポンプ20を備えた洗濯機1Aにおいては、この効果はより顕著なものとなる。
【0034】
次に、循環ポンプを備えた洗濯機を例に挙げて課題について説明する。
図6は、循環ポンプ駆動時における洗濯水の流れを示す模式図である。
図7は、循環ポンプ停止時における洗濯水の流れを示す模式図である。
図6に示すように、循環ポンプ20はリントフィルタケース32に接続されており、循環ポンプ20の羽根車20aが回転することで、外槽3の底部の排水口3cから水を吸込み、循環路21a,21b(循環水路)を通って外槽カバー3a(
図1参照)の上部から回転ドラム4内へシャワーとして供給される。そのため、リントフィルタ31は外槽3と羽根車20aとの間に位置する。
【0035】
図6に矢印で示すように、洗い又はすすぎ工程において、循環ポンプ20が駆動(ON)すると、外槽3内に貯水した水が外槽カバー3a(
図1参照)内に設けた循環水路(循環路21a,21b)を通って外槽カバー3aの上部のシャワーの吐出口3bまで揚水され、回転ドラム4内の衣類に供給される。その後、
図7に矢印で示すように、循環ポンプ20が停止(OFF)した場合、循環水路(循環路21a,21b)内の残水は水頭を持つため、循環水路(循環路21b)内の水位が下がると同時にリントフィルタケース32内には逆流が発生する。このとき、リントフィルタ31(リント捕集部)で捕集したリントも水流によって勢いよく引き剥がされ、循環路21a(内部排水経路)乃至は槽(外槽3、回転ドラム4)内にまで逆流する可能性がある。そのため、循環ポンプ20を備えた洗濯機1Aにおいては、リントの再浮遊による槽内への逆流や再ろ過時の漏れ出しによる機外排出がより顕著となる。なお、これは後記する排水ポンプ60を備えた洗濯機1Bにおいても同様である。
【0036】
そこで、循環ポンプ20を備えた洗濯機1Aにおいて、外槽3とリントフィルタ31との間に逆止弁50を設けることで、循環水路(循環路21a,21b)の残水による逆流を抑止することができるため、リントフィルタ(リント捕集部)31の再浮遊等の不具合を抑制することが可能になる。
【0037】
以上説明したように、第1実施形態の洗濯機1Aは、筐体2と、筐体2に収容されて水を溜める外槽3と、外槽3に内包されて衣類を収容する回転ドラム4と、外槽3と機外とを繋ぐ排水経路(循環路21a、排水路40)と、排水経路の途中に設けられて洗濯中に衣類から発生するリントを捕集するリントフィルタ31と、リントフィルタ31を収容するリントフィルタケース32と、を有し、外槽3とリントフィルタ31との間に逆止弁50を設けたものである。これによれば、リントフィルタ31で捕集したリントが、給水及び排水時に発生する水流による剥離や再浮遊することを防ぎ、高いリント捕集性能を確保できるとともに、ユーザがリントフィルタ31のリント除去作業を容易に行うことができる。また、運転時に発生したリントを確実に捕集できるため、衣類への再付着を抑制でき、良好な洗濯仕上りを実現でき、またリントの再浮遊や取り逃しを抑制できるため、排水口詰まりのトラブルを防止できる。
【0038】
また、第1実施形態において、リントフィルタ31Aの捕集部31a1は、メッシュ状に構成されている。これによれば、ユーザの清掃性が良好な目孔の細かいメッシュ状であっても、捕集したリントの再浮遊による逆流や、再ろ過による機外排出を抑制し、高いリント捕集性能を確保できる。
【0039】
また、リントフィルタ31Bの捕集部31a2は、クシ歯状に構成されていてもよい。これによれば、ユーザの清掃性が良好なクシ歯状であっても、捕集したリントの再浮遊による逆流や、再ろ過による機外排出を抑制し、高いリント捕集性能を確保できる。
【0040】
また、第1実施形態において、逆止弁50は、リントフィルタケース32に取り付けられている。これによれば、逆止弁50がユーザによって取り外されることがないので、逆止弁50の付け忘れや紛失、破損などのおそれがなくなる。また、逆止弁50を安定して固定することができる。
【0041】
図8は、逆止弁の変形例を示す概略断面図である。
図9は、
図8に示す状態からリントフィルタを取り出した状態を示す断面図である。
図8に示すように、逆止弁55は、リントフィルタ31に一体に取り付けられている。この逆止弁55は、外槽3からリントフィルタ31への水の流れを許容し、リントフィルタ31から外槽3への水の流れを遮断する機能を有する。
【0042】
リントフィルタ31は、捕集部31aを備え、この捕集部31aに逆止弁55の弁体55aが回動自在に支持されている。また、捕集部31aには、弁体55aによって開閉される開口部55bが形成されている。弁体55aが開くことで、継手部32bからリントフィルタ31への水の流れが許容され、弁体55aが閉じることで、リントフィルタ31から継手部32bへの水の流れが遮断される。なお、捕集部31aは、メッシュ状(格子状)であってもクシ歯状であってもよい。
【0043】
図9に示すように、リントフィルタ31がリントフィルタケース32から取り外されると、逆止弁55とともにリントフィルタ31が機外に取り外される。なお、逆止弁55は、リントフィルタ31をリントフィルタケース32から取り外すときに、リントフィルタケース32と干渉しない位置に設けられている。
【0044】
このように逆止弁55をリントフィルタ31に一体に取り付けることで、逆止弁55を清掃することが可能になり、また逆止弁55の清掃および交換を容易に行うことができる。
【0045】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態の洗濯機の内部構造を示す概略図である。
図10に示すように、洗濯機1Bは、ドラム式の洗濯機であり、筐体2(箱体)と、筐体2内に設けられる外槽3と、外槽3に内包されるとともに回転自在に支持される回転ドラム4(内槽)と、回転ドラム4を回転駆動させるドラムモータ(図示省略)と、送風ユニット10と、排水ポンプ60と、リントフィルタ装置30Aと、排水経路70と、逆止弁50と、を備えて構成されている。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0046】
排水ポンプ60は、槽内の水を排水経路70から機外に排水する機能を有し、排水経路70の途中に設けられている。排水経路70は、排水路71,72によって構成されている。排水路71は、上流側の端部が外槽3の底に設けられた排水口3cに接続され、下流側の端部がリントフィルタ装置30Aを介して排水ポンプ60に接続されている。排水路72は、上流側の端部が排水ポンプ60に接続され、下流側の端部が機外に延びている。また、排水路72は、洗濯機1Bの背面を通って上方に向かって延びている。また、排水路72の端部の排出口72aは、回転ドラム4の回転中心軸gよりも上方に位置している。
【0047】
ところで、排水ポンプを備えた洗濯機においても、洗い又はすすぎ工程において、排水ポンプ60が駆動(ON)すると、外槽3内に貯水した水が排水経路(排水路71,72)を通って、排出口72aまで揚水される。その後、排水ポンプ60が停止(OFF)した場合、排水経路(排水路71,72)内の残水は水頭を持つため、排水経路(排水路72)内の水位が下がると同時にリントフィルタケース32内には逆流が発生する。このとき、リントフィルタ31(リント捕集部)で捕集したリントも水流によって勢いよく引き剥がされ、排水路71乃至は槽(外槽3、回転ドラム4)内にまで逆流する可能性がある。そのため、排水ポンプ60を備えた洗濯機1Bにおいては、リントの再浮遊による槽内への逆流や再ろ過時の漏れ出しによる機外排出がより顕著となる。
【0048】
そこで、排水ポンプ60を備えた洗濯機1Bにおいて、外槽3とリントフィルタ31との間に逆止弁50を設けることで、排水経路(排水路71,72)の残水による逆流を抑止することができるため、リントフィルタ(リント捕集部)31の再浮遊等の不具合を抑制することが可能になる。
【0049】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、実施形態に記載した構成を適宜組み合わせないし選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。例えば、本実施形態では、ドラム式の洗濯機1A,1Bを例に挙げて説明したが、縦型の洗濯機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1A,1B 洗濯機
2 筐体
3 外槽
4 回転ドラム(内槽)
20 循環ポンプ
21a 循環路(排水経路)
21b 循環路
30 リントフィルタ装置
31 リントフィルタ
31a 捕集部(リント捕集部)
32 リントフィルタケース
32a フィルタ収容部
23b 継手部
40 排水路(排水経路)
41 排水弁
50 逆止弁
51 弁箱
52 弁体
55 逆止弁
55a 弁体
60 排水ポンプ
70 排水経路
71,72 排水路
72a 排出口