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特開2023-44004電力制御システム、電力制御方法、及び電力制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044004
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】電力制御システム、電力制御方法、及び電力制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20230323BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20230323BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J3/46
H02J3/38 120
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151804
(22)【出願日】2021-09-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】592090809
【氏名又は名称】松尾建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】松尾 哲吾
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 信博
(72)【発明者】
【氏名】健木 伸一
(72)【発明者】
【氏名】田中 英明
(72)【発明者】
【氏名】本山 定治
(72)【発明者】
【氏名】島 俊之
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA10
5G066HB06
5G066KA04
5G066KA06
5G066KA11
5G066KB06
5G066KD01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デマンド制御と再生可能エネルギーによって発電する発電装置による逆潮流防止制御の動作領域を自動的に判定し、電力の安定供給を実現する電力制御システム、電力制御方法及び電力制御プログラムを提供する。
【解決手段】電力制御システム1は、商用電力系統から供給される潮流電力に基づいて場内負荷40に対して消費電力を抑制するデマンド制御と、再生可能エネルギーに基づいて発電する発電システム30による逆潮流防止制御を実行する。制御部20は、切換判定部201において検出された潮流電力に基づいて、デマンド制御領域と逆潮流防止制御領域を判定し、判定結果に応じてデマンド制御及び逆潮流防止制御を切り換えることで、一つの制御システムで異なる制御を行うことが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統から供給される潮流電力を検出する潮流電力検出部と、
負荷の消費電力が所定のデマンド目標値となるデマンド信号を前記負荷に対して出力するデマンド信号出力部と、
再生可能エネルギーから電力を発電する発電装置、及び該発電装置で発電された発電電力を出力する電力変換機を有する発電システムと、
前記発電装置の発電量を制御して、前記商用電力系統への前記発電電力の逆潮流を防止する発電信号を前記発電システムに対して出力する発電信号出力部と、を備える電力制御システムにおいて、
前記潮流電力に基づいて、前記デマンド信号出力部、及び前記発電信号出力部へ出力する出力信号を切り換える出力切換部を含む制御部を有し、
該制御部は、前記潮流電力が所定の閾値以上である場合には前記出力切換部から前記デマンド信号出力部に対して前記デマンド信号を出力し、前記潮流電力が所定の閾値未満である場合には前記出力切換部から前記発電信号出力部に対して前記発電信号を出力する
電力制御システム。
【請求項2】
前記デマンド信号出力部から出力される前記デマンド信号により、前記消費電力と前記デマンド目標値との差分がゼロとなるように前記負荷の出力をネガティブ制御し、
前記発電信号出力部から出力される前記発電信号により、前記消費電力の入力値に比例して前記発電電力の出力値を増加させるポジティブ制御を行う
請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記デマンド信号出力部は、
前記消費電力が前記デマンド目標値未満となるように第1のデマンド信号を前記負荷に対して出力する第1の比例制御を実行し、該第1の比例制御の開始から予め設定された前記負荷の応答遅れ時間を考慮した遅延時間が経過した後に、前記消費電力の変化に応じた第2のデマンド信号を前記負荷に対して出力する第2の比例制御を実行する
請求項1または請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記デマンド目標値を設定するデマンド設定部は、
ダイヤルの回転によって抵抗値が変化する可変抵抗を有し、
前記デマンド目標値は、前記ダイヤルの回転により設定された前記可変抵抗の抵抗値に基づいて設定される
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記デマンド目標値と前記消費電力との偏差を表示する表示部を有し、
該表示部は、分圧抵抗、及び異なる動作電圧で点灯する複数の定電圧ダイオードからなる分圧回路を含む
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の電力制御システム。
【請求項6】
前記デマンド目標値の略50~80%となるデマンド保証目標値を設定するデマンド保証部を有し、
該デマンド保証部は、前記潮流電力検出部で前記潮流電力が検出されないと判定された場合に、前記負荷に対して前記デマンド保証目標値に基づくフェイルセーフデマンド信号を出力する
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の電力制御システム。
【請求項7】
前記負荷の消費電力に基づいて設定される前記潮流電力の下限閾値となる異常潮流電力を設定する発電保証部を有し、
該発電保証部は、前記潮流電力が前記異常潮流電力未満であると判定された場合に、前記発電システムに対して前記発電システムの最大発電電力の略2~5%の発電電力に制御するフェイルセーフ発電信号を出力する
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の電力制御システム。
【請求項8】
商用電力系統から供給される潮流電力を検出する潮流電力検出部と、
負荷の消費電力が所定のデマンド目標値となるデマンド信号を前記負荷に対して出力するデマンド信号出力部と、
再生可能エネルギーから電力を発電する発電装置、及び該発電装置で発電された発電電力を出力する電力変換機を有する発電システムと、
前記発電装置の発電量を制御して、前記商用電力系統への前記発電電力の逆潮流を防止する発電信号を前記発電システムに対して出力する発電信号出力部と、
前記潮流電力に基づいて、前記デマンド信号出力部、及び前記発電信号出力部へ出力する出力信号を切り換える出力切換部を有する制御部を備える電力制御システムの電力制御方法において、
前記潮流電力が所定の閾値以上であるか否かを判定する工程と、
前記潮流電力が所定の閾値以上であると判定された場合に、前記出力切換部から前記デマンド信号出力部に対して前記デマンド信号を出力する工程と、
前記潮流電力が所定の閾値未満であると判定された場合に、前記出力切換部から前記発電信号出力部に対して前記発電信号を出力する工程と、を備える
電力制御方法。
【請求項9】
商用電力系統から供給される潮流電力を検出する潮流電力検出部と、
負荷の消費電力が所定のデマンド目標値となるデマンド信号を前記負荷に対して出力するデマンド信号出力部と、
再生可能エネルギーから電力を発電する発電装置、及び該発電装置で発電された発電電力を出力する電力変換機を有する発電システムと、
前記発電装置の発電量を制御して、前記商用電力系統への前記発電電力の逆潮流を防止する発電信号を前記発電システムに対して出力する発電信号出力部と、
前記潮流電力に基づいて、前記デマンド信号出力部、及び前記発電信号出力部へ出力する出力信号を切り換える出力切換部を有する制御部と、を備える電力制御システムの前記制御部が実行するプログラムであって、
前記潮流電力が所定の閾値以上であるか否かを判定するステップと、
前記潮流電力が所定の閾値以上であると判定された場合に、前記出力切換部から前記デマンド信号出力部に対して前記デマンド信号を出力するステップと、
前記潮流電力が所定の閾値未満であると判定された場合に、前記出力切換部から前記発電信号出力部に対して前記発電信号を出力するステップと、を備える
電力制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システム、電力制御方法、及び電力制御プログラムに関する。詳しくは、デマンド制御と再生可能エネルギーによって発電する発電装置による逆潮流防止制御の動作領域を自動的に判定し、電力の安定供給を実現することができる電力制御システム、電力制御方法、及び電力制御プログラムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に電力会社の電気料金(家庭用電力料金を除く)は、契約電力で決まる「基本料金」と、電力使用量で決まる「電力量料金」により計算される。このうち、契約電力は30分間の平均電力により年間の基本料金が決定される仕組みとなっている。電気負荷のうち、特に空調装置の消費電力が最も大きく、空調装置や照明装置の消費電力を合わせると全消費電力の約72%を占める。従って、空調装置の節電を行うことは節電対策として極めて有効である。
【0003】
空調装置は一般的には室外機と室内機から構成され、このうち屋外に多数設置される空調装置の室外機は、各々の室内機からの信号でコンプレッサー等の電動機が運転されており、各室外機は他の室外機と連携することなく個別に運転停止を繰り返している。従って、全ての室外機が同時に運転されることにより電力要求量(デマンド)が急上昇する事態となる。
【0004】
そこで、最大需要電力(契約電力)を抑制する方法としてデマンド制御を導入し、複数の空調装置の室外機に対する協調運転を行うことが考えられる。ここで、デマンド制御とは、空調装置の室外機において、複数台が同時に稼働することを避けてデマンドの上昇を回避する制御のことである。言い換えると、最大需要電力が予想されるときには、一部の空調装置の室外機に対して運転停止信号を出力する運転制御のことである。
【0005】
デマンド制御に関する従来技術として、例えば特許文献1には受電点を介して電力会社から電力が供給される全ての負荷のうち、電力の自動制御が可能な負荷に対してのみデマンド制御信号を出力することを特徴とする制御装置が開示されている。係る特許文献1の技術によれば、電力の自動制御が可能な負荷に対してデマンド制御を行うため、デマンド制御の対象とならない負荷による生産効率の低下を回避しつつ、消費電力の適切な管理を行うことができるものとなっている。
【0006】
ところで、近年では太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用して電力を発電する発電装置、或いは蓄電装置を備えた電力管理システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。このような再生エネルギーを利用した発電装置は、一般的には商用電力系統の電力網と接続されている。そして、例えば生産設備等が稼働しない休日は、消費電力に対して発電装置により発電される電力量が大きくなる。そのため、発電装置から商用電力系統への逆潮流を防止するために、発電装置による発電の停止が求められている。
【0007】
しかしながら、休日であっても可能な限り再生エネルギーによる発電を行うことができれば、電力料金の削減、及び二酸炭素排出量の削減を実現することができる。また、発電装置により発電した余剰電力を蓄電装置に蓄電することで非常時の電源として使用することもできる。そのため、一般的には、消費電力に応じて発電電力の逆潮流が生じない程度に発電装置の発電を抑制する逆潮流防止制御が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5606645号公報
【特許文献2】特開2005-185016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記した従来の技術において開示されているデマンド制御、或いは逆潮流防止制御を行う電力制御システムは、何れも電力会社から供給される電力量を潮流検出器により検出をしたうえでフィードバック制御するものであるが、それぞれ別体の電力制御システムとして設置がされていた。従って、負荷に対するデマンド制御と、再生エネルギーによる発電装置の逆潮流防止制御は、それぞれの目的に応じた制御装置を設置する必要があり、導入コストが非常に高いものとなっていた。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、デマンド制御と再生可能エネルギーによって発電する発電装置による逆潮流防止制御の動作領域を自動的に判定し、電力の安定供給を実現することができる電力制御システム、電力制御方法、及び電力制御プログラムに係るものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明の電力制御システムは、商用電力系統から供給される潮流電力を検出する潮流電力検出部と、負荷の消費電力が所定のデマンド目標値となるデマンド信号を前記負荷に対して出力するデマンド信号出力部と、再生可能エネルギーから電力を発電する発電装置、及び該発電装置で発電された発電電力を出力する電力変換機を有する発電システムと、前記発電装置の発電量を制御して、前記商用電力系統への前記発電電力の逆潮流を防止する発電信号を前記発電システムに対して出力する発電信号出力部と、を備える電力制御システムにおいて、前記潮流電力に基づいて、前記デマンド信号出力部、及び前記発電信号出力部へ出力する出力信号を切り換える出力切換部を含む制御部を有し、該制御部は、前記潮流電力が所定の閾値以上である場合には前記出力切換部から前記デマンド信号出力部に対して前記デマンド信号を出力し、前記潮流電力が所定の閾値未満である場合には前記出力切換部から前記発電信号出力部に対して前記発電信号を出力する。
【0012】
ここで、商用電力系統から供給される潮流電力を検出する潮流電力検出部を備えることにより、商用電力系統から負荷に対して供給される潮流電力を検出することができるため、検出された潮流電力に基づいて、後記するデマンド制御、或いは逆潮流防止制御を実行することができる。
【0013】
また、負荷の消費電力が所定のデマンド目標値となるデマンド信号を負荷に対して出力するデマンド信号出力部を備えることにより、設定したデマンド目標値となるようにデマンド信号を負荷に対して出力することで、負荷を所定の消費電力に抑制するデマンド制御を実行することができる。
【0014】
また、再生可能エネルギー(例えば太陽光や風力)から電力を発電する発電装置を備えることにより、再生可能エネルギーに基づいて発電電力を発電することで、商用電力系統から供給される潮流電力とは系統連係接続で電力を負荷に供給することができる。
【0015】
また、発電装置で発電された発電電力を出力する電力変換機を備えることにより、再生可能エネルギーに基づいて発電した直流電力を、電力系統に連係可能なように交流電力に変換することができる。
【0016】
また、発電装置の発電量を制御して、商用電力系統への発電電力の逆潮流を防止する発電信号を発電システムに対して出力する発電信号出力部を備えることにより、例えば発電装置により発電された再生可能エネルギーに基づく発電電力が急増したり、需要家の消費電力が急減した場合に、潮流電力の一部が商用電力系統に流れ込むことを防止する逆潮流防止制御を実行し、商用電力系統の安定的な運用を実現することができる。
【0017】
また、潮流電力に基づいて、デマンド信号出力部、及び発電信号出力部へ出力する出力信号を切り換える出力切換部を含む制御部を有することにより、一つの制御部において、負荷に対するデマンド制御と発電システムに対する逆潮流防止制御を適宜切り換えることができる。
【0018】
一般的に、工場等が稼働する平日は負荷電力が大きく、デマンド制御の需要が高くなる。一方、工場が休業する週末は負荷電力が小さくなるため逆潮流防止制御の需要が高まる。そこで、商用電力系統から負荷に供給される潮流電力に基づいて、デマンド制御領域、或いは逆潮流防止制御領域かを所定の閾値に基づいて判定し、判定結果に基づいてデマンド制御と逆潮流防止制御とを瞬時に切り換えることが可能となる。
【0019】
また、デマンド信号出力部から出力されるデマンド信号により、消費電力とデマンド目標値との差分がゼロとなるように負荷の出力を制御するネガティブ制御を行う場合には、負荷の消費電力が瞬間的に上昇したとしてもデマンド制御に基づいて、負荷の消費電力がデマンド目標値を超えないように抑制される。従って、負荷の消費電力が常にデマンド目標値以内に抑制されるため、最大需要電力を超えることを防止することができる。
【0020】
また、発電信号出力部から出力される発電信号により、消費電力の入力値に比例して発電電力の出力値を増加させるポジティブ制御を行う場合には、消費電力の増加分を再生可能エネルギーに基づく発電電力により補うことができる。従って、商用電力系統から供給される潮流電力を抑制することができる。
【0021】
また、デマンド信号出力部は、消費電力がデマンド目標値未満となるように第1のデマンド信号を負荷に対して出力する第1の比例制御を実行し、第1の比例制御の開始から予め設定された負荷の応答遅れ時間を考慮した遅延時間が経過した後に、消費電力の変化に応じた第2のデマンド信号を前記負荷に対して出力する第2の比例制御を実行する場合には、制御ハンチングを防止して安定的なデマンド制御を実行することができる。
【0022】
即ち、一般的に、デマンド信号出力部からデマンド信号を受けた負荷は、デマンド目標値となるように消費電力が抑制されるが、デマンド信号を受けてから消費電力が抑制されるまでには所定の応答遅れ時間が発生する。この応答遅れ時間を考慮せずにデマンド制御を実行すると、負荷の消費電力が目標値に対して大幅に抑制されてしまう。この時、目標値からの乖離を修正するために、負荷に対して消費電力を増加する信号が出力されることで制御ハンチングが発生する。従って、負荷による応答遅れ時間を考慮することで、前記した制御ハンチングを未然に防止し、安定的なデマンド制御を実行することができる。
【0023】
また、デマンド目標値を設定するデマンド設定部は、ダイヤルの回転によって抵抗値が変化する可変抵抗を有し、デマンド目標値は、ダイヤルの回転により設定された可変抵抗の抵抗値に基づいて設定される場合には、ダイヤルを回転操作させるだけで、簡単にデマンド目標値を設定することができる。
【0024】
また、デマンド設定部により設定されたデマンド目標値と消費電力の偏差とを表示する表示部を有し、表示部は、分圧抵抗、及び異なる動作電圧で点灯する複数の定電圧ダイオードからなる分圧回路を含む場合には、デマンド制御の結果、デマンド目標値と消費電力との偏差を視覚的に確認することができる。従って、専門の作業員を配置しなくとも、デマンド制御の実行後の負荷の消費電力の状態を監視することができる。
【0025】
また、デマンド目標値の略50~80%となるデマンド保証目標値を設定するデマンド保証部を有し、デマンド保証部は、潮流電力検出部で潮流電力が検出されないと判定されると、負荷に対してデマンド保証目標値に基づくフェイルセーフデマンド信号を出力する場合には、潮流電力検出部が故障しても、負荷に対するデマンド制御を継続することができるため、最大需要電力の増加を防止することができる。
【0026】
即ち、潮流電力検出部は落雷等に起因して故障する場合がある。このとき、デマンド信号出力部が負荷の電力需要が減少したものと誤判定して、デマンド目標値を上昇させる方向にデマンド信号を出力すると、最大需要電力が増加するという不都合が生じる。これを防止するために、潮流電力が検出されないと判定した場合には、潮流電力検出部が故障したものと判定し、負荷の消費電力をデマンド目標値に対して所定に抑制するフェイルセーフデマンド信号を出力することで、前記した不具合を未然に防止することができる。
【0027】
また、負荷の消費電力に基づいて設定される潮流電力の下限閾値となる異常潮流電力を設定する発電保証部を有し、発電保証部は、潮流電力が異常潮流電力未満であると判定されると、発電システムに対して発電システムの最大発電電力の略2~5%の発電電力に制御するフェイルセーフ発電信号を出力する場合には、発電システムから商用電力系統への逆潮流を確実に防止することができるとともに、電力変換機の損傷を防止して安定的な発電制御を行うことができる。
【0028】
即ち、負荷の消費電力が何らかの原因により、予め設定した異常潮流電力未満となった場合には、一般的には逆潮流を防止するために発電システムによる発電の停止が求められる。しかしながら、発電システムを停止すると、その都度、電力変換機に内蔵する電磁開閉器のオンオフ制御を実行する必要がある。電磁開閉器のオンオフ制御を繰り返すと、電磁開閉器の損傷の原因となり、メンテナンス費用が増加する。
【0029】
従って、潮流電力が異常潮流電力未満となった場合には、発電システムから商用電力系統への逆潮流が生じない程度の発電電力を出力するようにフェイルセーフ発電信号を発電システムに対して出力することで、電磁開閉器を常にオン状態に維持し、逆潮流を防止しながら電磁開閉器の損傷も防止することができる。
【0030】
前記の目的を達成するために、本発明の電力制御方法は、商用電力系統から供給される潮流電力を検出する潮流電力検出部と、負荷の消費電力が所定のデマンド目標値となるデマンド信号を前記負荷に対して出力するデマンド信号出力部と、再生可能エネルギーから電力を発電する発電装置、及び該発電装置で発電された発電電力を出力する電力変換機を有する発電システムと、前記発電装置の発電量を制御して、前記商用電力系統への前記発電電力の逆潮流を防止する発電信号を前記発電システムに対して出力する発電信号出力部と、前記潮流電力に基づいて、前記デマンド信号出力部、及び前記発電信号出力部へ出力する出力信号を切り換える出力切換部を有する制御部を備える電力制御システムの電力制御方法において、前記潮流電力が所定の閾値以上であるか否かを判定する工程と、前記潮流電力が所定の閾値以上であると判定された場合に、前記出力切換部から前記デマンド信号出力部に対して前記デマンド信号を出力する工程と、前記潮流電力が所定の閾値未満であると判定された場合に、前記出力切換部から前記発電信号出力部に対して前記発電信号を出力する工程とを備える。
【0031】
また、前記の目的を達成するために、本発明の電力制御プログラムは、商用電力系統から供給される潮流電力を検出する潮流電力検出部と、負荷の消費電力が所定のデマンド目標値となるデマンド信号を前記負荷に対して出力するデマンド信号出力部と、再生可能エネルギーから電力を発電する発電装置、及び該発電装置で発電された発電電力を出力する電力変換機を有する発電システムと、前記発電装置の発電量を制御して、前記商用電力系統への前記発電電力の逆潮流を防止する発電信号を前記発電システムに対して出力する発電信号出力部と、前記潮流電力に基づいて、前記デマンド信号出力部、及び前記発電信号出力部へ出力する出力信号を切り換える出力切換部を有する制御部と、を備える電力制御システムの前記制御部が実行するプログラムであって、前記潮流電力が所定の閾値以上であるか否かを判定するステップと、前記潮流電力が所定の閾値以上であると判定された場合に、前記出力切換部から前記デマンド信号出力部に対して前記デマンド信号を出力するステップと、前記潮流電力が所定の閾値未満であると判定された場合に、前記出力切換部から前記発電信号出力部に対して前記発電信号を出力するステップとを備える。
【0032】
以上の電力制御方法、及び電力制御プログラムにおいて、商用電力系統から供給される潮流電力を検出する潮流電力検出部を備えることにより、商用電力系統から負荷に対して供給される潮流電力を検出することができるため、検出された潮流電力に基づいて、後記するデマンド制御、或いは逆潮流防止制御を実行することができる。
【0033】
また、負荷の消費電力が所定のデマンド目標値となるデマンド信号を負荷に対して出力するデマンド信号出力部を備えることにより、設定したデマンド目標値となるようにデマンド信号を負荷に対して出力することで、負荷を所定の消費電力に抑制することができる。
【0034】
また、再生可能エネルギー(例えば太陽光や風力)から電力を発電する発電装置を備えることにより、再生可能エネルギーに基づいて発電電力を発電することで、商用電力系統から供給される潮流電力とは別系統で電力を負荷に供給することができる。
【0035】
また、発電装置で発電された発電電力を出力する電力変換機を備えることにより、再生可能エネルギーに基づいて発電した直流電力を、電力系統に連係可能なように交流電力に変換することができる。
【0036】
また、発電装置の発電量を制御して、商用電力系統への発電電力の逆潮流を防止する発電信号を発電システムに対して出力する発電信号出力部を備えることにより、逆潮流が生じない範囲において、再生可能エネルギーに基づく発電電力量を制御し商用電力系統の安定的な運用を実現することができる。
【0037】
潮流電力に基づいて、デマンド信号出力部、及び発電信号出力部へ出力する出力信号を切り換える出力切換部を有する制御部を備えることにより、一つの制御部において、負荷に対するデマンド制御と発電システムに対する逆潮流防止制御を適宜切り換えることができる。
【0038】
そして、潮流電力が所定の閾値以上であるか否かを判定する工程(ステップ)と、前記潮流電力が所定の閾値以上であると判定された場合に、出力切換部からデマンド信号出力部に対してデマンド信号を出力する工程(ステップ)と、潮流電力が所定の閾値未満であると判定された場合に、出力切換部から発電信号出力部に対して発電信号を出力する工程(ステップ)を備えることにより、一台の電力制御システムにおいて、デマンド制御領域と逆潮流防止制御領域の動作領域を潮流電力に基づいて判定し、判定結果に応じてデマンド制御と逆潮流防止制御を瞬時に切り換えることが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る電力制御システム、電力制御方法、及び電力制御プログラムは、デマンド制御と再生可能エネルギーによって発電する発電装置による逆潮流防止制御の動作領域を自動的に判定し、電力の安定供給を実現することができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施形態に係る電力制御システムの全体概略図である。
図2】デマンド制御と逆潮流防止制御の作動領域を示す図である。
図3】デマンド目標値を設定するための操作部を示す図である。
図4】デマンド設定部の回路図を示す図である。
図5】デマンド制御における負荷電力と消費電力との関係を示すグラフである。
図6】点灯表示部の回路図を示す図である。
図7】デマンド信号と負荷の出力信号との関係を示すグラフである。
図8】発電制御における負荷電力と発電電力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。まず、本発明の実施形態に係る電力制御システムの全体概要について、図1に基づいて説明する。
【0042】
本発明の実施形態に係る電力制御システム1は、電力網から供給される潮流電力を検出する潮流検出部10、デマンド制御と逆潮流防止制御を切り換える制御部20、再生可能エネルギーによる電力を発電する発電システム30から主に構成されている。
【0043】
[潮流検出部]
潮流検出部10は、電力会社が提供する商用電力系統の電力網から流れ込む潮流電力(瞬時電力)を検出する機能を有する。潮流検出部10で検出した潮流電力は潮流信号として出力される。そして、潮流検出部10から出力された潮流信号に基づいて、後記するように場内負荷40に対するデマンド制御、或いは発電システム30に対する逆潮流防止制御が実行される。
【0044】
また、潮流検出部10は、全ての場内負荷40に流れるリアルタイムの潮流電力を検出するものであり、所定のサンプリング期間の電力量を検出するものではない。なお、潮流検出部10から出力される潮流信号としては、直流アナログ信号(DC4~20mA,又は1~5V)が用いられるが、これに対応した多種多様なデジタル信号を用いてもよい。
【0045】
ここで、必ずしも、潮流検出部10で検出される潮流電力は、リアルタイムで検出する必要はなく、所定のサンプリング期間の平均値としてもよい。但し、リアルタイムの潮流電力を検出することで、デマンド制御、及び逆潮流防止制御をより正確に行うことが可能となる。
【0046】
[制御部]
制御部20は、潮流検出部10で検出された潮流電力に基づいて、場内負荷40に対するデマンド制御と、発電システム30に対する逆潮流防止制御を切り換える機能を有している。この制御部20における制御は、まず潮流検出部10からの出力信号が制御部20に入力されると、切換判定部201において、デマンド制御と逆潮流防止制御の何れを実行するかが判定される。
【0047】
図2に示すように、潮流検出部10から入力された潮流電力が200kw以上であると切換判定部201が判定した場合には、制御切換部202に対してデマンド制御の実行を指示する信号が出力される。デマンド制御の実行を指示する信号を受信した制御切換部202は、デマンド設定部203で設定されたデマンド目標値に基づいて、以後、場内負荷40に対するデマンド制御が実行される。
【0048】
一方、潮流検出器から入力された潮流電力が200kw未満であると切換判定部201が判断した場合には、制御切換部202に対して逆潮流防止制御の実行を指示する信号が出力される。逆潮流防止制御の実行を指示する信号を受信した制御切換部202は、発電量設定部204で設定された発電量に基づいて、発電システム30に対する逆潮流防止制御が実行される。
【0049】
ここで、必ずしも、制御切換部202におけるデマンド制御と逆潮流防止制御の切換制御において、潮流電力が200kwを閾値として設定する必要はなく、制御の切換閾値としては適宜変更することが可能である。
【0050】
また、制御部20におけるデマンド制御と逆潮流防止制御を切り換えるパラメータとして、必ずしも潮流電力を使用する必要はなく、例えば日付データに基づいて、場内負荷40の消費電力が増加する平日はデマンド制御を実行し、場内負荷40の消費電力が減少する休日は逆潮流防止制御を実行するように切り換えてもよい。
【0051】
[デマンド制御]
制御切換部202においてデマンド制御を実行する信号が受信されると、デマンド制御が実行される。デマンド制御は、場内負荷40の消費電力がデマンド設定部203で設定されたデマンド目標値となる消費電力に制御するための制御信号(デマンド信号)を場内負荷40に対して出力する。
【0052】
なお、本発明の実施形態においては、図1に示すように、場内負荷40としてA、A´、B、B´を想定し、このうち電力の自動制御が可能な負荷A、A´に対して、デマンド信号を出力してデマンド制御を実行するものとする。
【0053】
ここで、負荷A、A´は、例えば電力の自動制御が可能な負荷であって、出力制御がされたとしても影響が少ない装置、例えば工場内、或いはオフィスビル内に設置される空調装置である。一方、負荷B、B´は、電力の自動制御が不可能な負荷であって、出力制御がされると、生産等に大きな影響を与える装置であり、例えば生産設備である。
【0054】
また、本発明の実施形態においては、電力の自動制御が可能な負荷として、空調装置を挙げたが、例えば照明装置のように、デマンド制御により生産や社会活動に大きな影響を与えない設備であれば特に限定されない。さらに、電力の自動制御が不可能な負荷として生産設備を挙げたが、例えば医療機械、厨房機械等を対象とすることも可能である。
【0055】
デマンド設定部203は、例えば図3に示す操作部100のダイヤル101を回転させることで、任意のデマンド値に設定することが可能である。操作部100には、現在のデマンド値を表示するデマンド表示部102、ダイヤル101で設定した目標デマンド値103を表示する目標デマンド表示部103を備えており、作業者が各デマンド値を監視できるものとなっている。
【0056】
図4はデマンド設定部203における電気回路を示す図である。デマンド設定部203は可変抵抗Rを備えており、その回転角度によって抵抗値が変化することにより、増幅器に入力される印加電圧も変化する。
【0057】
デマンド設定部203で設定されたデマンド目標値は、目標値設定部205に出力される。そして、潮流検出部10で検出された潮流電力とデマンド目標値の偏差が比較部206で演算される。比較部206による演算結果はデマンド比較信号として調節部207に入力される。
【0058】
調節部207にデマンド比較信号が入力されると、所定の感度に応じた値に補正され、デマンド制御対象である負荷A、A´の消費電力を制御するためのデマンド信号SD1が、出力切換部208からデマンド信号出力部60を通じて負荷A、A´に出力される。
【0059】
図5は、デマンド制御における負荷A、A´の負荷電力(入力値)と消費電力(出力値
)の関係を示すグラフである。図5に示すように、デマンド目標値として負荷電力が500kwに設定される場合、負荷A、A´の負荷電力が増加するにつれて、消費電力とデマンド目標値との差分がゼロとなうようにデマンド信号SD1が出力され、その結果、消費電力は低下する。即ち、デマンド制御においては、入力値と出力値が相反する動きとなるネガティブフィードバック制御となる。
【0060】
デマンド制御の結果については、作業者に対してリアルタイムで表示させることができる。例えば図6の電気回路のように、増幅機から出力された電圧を、複数の抵抗R1、R2、R3を設けた分圧回路で分圧して定電圧ダイオードD1、D2、D3に各々接続する。ここで各定電圧ダイオードD1、D2、D3は、動作電圧に応じて異なる発光色を有するものを使用することで、出力電圧によって異なる表示色が表示される。
【0061】
定電圧ダイオードD1、D2、D3の表示色については任意に設定することができるものとする。例えば、デマンド目標値に対する消費電力が80%である場合には青、70%である場合には緑、50%未満の場合には赤、のようにデマンド目標値と消費電力の偏差に応じて発光色を切り換えて操作部100の点灯表示部104に表示させることで、作業者は視覚的にデマンド制御の結果をリアルタイムで把握することが可能となる。
【0062】
ここで、必ずしも、定電圧ダイオードD1、D2、D3の表示形態としては前記したものに限定されるものではない。デマンド目標値と消費電力の偏差の範囲や、それに応じた表示色については任意に変更することができるものとする。
【0063】
図7は、デマンド制御の対象となる負荷A、A´の消費電力とデマンド信号SD1との関係を示すグラフである。まず負荷A、A´の消費電力が上昇すると、図7中の符号aからbに示すように、負荷A、A´に対して消費電力が抑制される方向にデマンド信号SD1が出力される。このとき、負荷A、A´の消費電力は抑制される方向に働くが、一般的に負荷A、A´の応答速度は約30~60秒以上の応答遅れがある。この応答遅れを考慮せずに、bからさらにcまで消費電力を抑制する方向にデマンド信号SD1を出力すると、消費電力は過度に低減されてしまい、これを放置すると制御ハンチングが生じ、結果として安定したデマンド制御が実現できなくなる。
【0064】
以上のハンチング現象を防止するには、bにおけるデマンド信号SD1の出力を、負荷A、A´の応答遅れ時間を考慮したdの時間(約30~60秒)だけ維持することで、負荷A、A´の消費電力の応答遅れの影響を解消することが可能となる。そして、調節部207はeから改めて比例制御を開始するので、調節部207はハンチング現象を生じることなく安定したデマンド制御を実行することが可能となる。
【0065】
ここで、必ずしも、デマンド信号SD1の出力からの待機時間(d)として約30~60秒である必要はない。待機時間(d)は、場内負荷40の種類に応じて適宜変更することができるものとする。
【0066】
[発電システム]
本発明の実施形態に係る発電システム30について説明する。発電システム30は、再生可能エネルギー(本発明の実施形態においては太陽光)に基づいて電力を発電する発電装置としての太陽光パネル301と、太陽光パネル301により発電された電力を直流から交流に変換し、電力分岐部110を介して場内負荷40に対して出力する電力変換機302と、太陽光パネル301により発電された発電電力量を検出して発電量信号を出力する発電量検出部303とを備えている。
【0067】
[逆潮流防止制御]
制御切換部202において逆潮流防止制御を実行する信号が受信されると、発電システム30に対する逆潮流防止制御が実行される。一般的に、平日のように場内負荷40の消費電力が大きい場合には、潮流電力と発電システム30による発電目標値の偏差に応じて発電システム30に対して発電信号が出力される。そして、発電信号に基づいて発電システム30で発電された発電電力が場内負荷40に対して常時供給されることで、潮流電力を一定に保つことができる。
【0068】
図8は、場内負荷40の負荷電力(入力値)と発電システム30による発電電力(出力値)の関係を示すグラフである。図8に示すように、場内負荷40の負荷電力が増加するにつれて、発電システム30による発電電力も増加するように発電信号が出力される。即ち、発電制御においては、入力値と出力値が同じ動きとなるポジティブフィードバック制御となる。
【0069】
一方、休日のように場内負荷40の消費電力が小さい場合には、発電システム30により発電された発電電力が消費電力に対して過大となる。この状態を放置すると、発電システム30で発電された発電電力が商用電力系統に逆流する逆潮流が生じ、商用電力系統の不安定化の要因となる。逆潮流防止制御は、この逆潮流を防止して潮流電力を一定値に保つために、発電システム30による発電電力を抑制する制御である。
【0070】
図2に示すように、潮流検出部10から入力された潮流電力が200kw未満となった場合に、逆潮流が起こる可能性が高いものと判断して、切換判定部201から制御切換部202に対して逆潮流防止制御を実行する信号が出力される。
【0071】
制御切換部202において逆潮流防止制御を実行する信号が受信されると、発電量設定部204で設定された発電量が目標値設定部205に出力される。次に目標値設定部205に入力された発電量と、発電量検出部303で検出された発電システム30の発電量が比較部206で比較され、発電量比較信号として調節部207に入力される。調節部207において発電量比較信号が入力されると、所定の感度に応じた値に補正された発電信号SE1が出力切換部208から信号変換部304で信号変換された後に、発電信号出力部70を通じて発電システム30に出力される。
【0072】
なお、逆潮流防止制御においては、発電システム30により発電した発電電力のうち、一部を場内負荷40に供給するとともに、一部を図示しない充電装置に充電するように指示して、逆潮流を防止することも可能である。
【0073】
[デマンド保証部]
次に、デマンド制御のフェイルセーフ機能について説明する。デマンド制御のフェイルセーフ機能はデマンド保証部80により実行される。負荷A、A´が平常運転する場合には、前記した通り、潮流検出部10で検出された潮流電力とデマンド設定部203で設定されたデマンド目標値とが比較部206で比較され、その結果に応じたデマンド信号SD1が出力切換部208からデマンド信号出力部60を通じて負荷A、A´に対して出力される。
【0074】
一方、デマンド制御の実行中に、落雷等の影響により潮流検出部10が故障したことにより、潮流検出部10による潮流電力が検出されない場合、調節部207においては負荷A、A´のデマンドに余裕が生じたと判断し、負荷A、A´の消費電力が増大する方向にデマンド信号SD1が出力される。これにより、負荷A、A´は正常なデマンド制御が実行されずに消費電力が上昇し、最大需要電力を上回ることになる。そして、負荷A、A´の消費電力が最大需要電力を上回る状態が所定の時間継続することにより、電力会社との契約金額も変動する事態が生じる。
【0075】
これを防止するために、デマンド保証部80においては、潮流検出部10において潮流電力E1が検出されない場合(E1=0)には、潮流検出部10が故障したものと判断する。そして、デマンド保証部80はデマンド信号出力部60にデマンド切換信号SR1を出力する。
【0076】
デマンド信号出力部60においてデマンド切換信号SR1を受信すると、デマンド保証部80において予め設定されたデマンド保証目標値(デマンド目標値の略70%程度に抑制された目標値)となるフェイルセーフデマンド信号SD2が出力され、係るデマンド信号SD2がデマンド信号出力部60から負荷A、A´に対して出力される。これにより、何らかの原因で潮流検出部10が故障して潮流電力が検出されなくなったとしても、引き続き負荷A、A´に対するデマンド制御が継続されることになる。
【0077】
[発電保証部]
次に、逆潮流防止制御におけるフェイルセーフ機能について説明する。逆潮流防止制御のフェイルセーフ機能は発電保証部90により実行される。場内負荷40が平常運転する場合における逆潮流制御は、前記した通り、潮流検出部10で検出された潮流電力と発電量設定部204で設定された発電量が比較部206で比較され、その結果に応じた発電信号SE1が出力切換部208から発電システム30に対して出力される。
【0078】
一方、場内負荷40の消費電力が急減し、潮流検出部10において検出される潮流電力E1が一時的に低い値となった場合、発電信号SE1を発電システム30に出力し続けると、発電システム30から商用電力系統への逆潮流が生じる虞がある。
【0079】
これを防止するために、発電保証部90においては、潮流検出部10で検出された潮流電力E1と発電保証部90で予め設定された異常潮流電力E2とを比較して、E1<E2である場合には、発電切換信号SR2を発電信号出力部70に出力する。発電信号出力部70において発電切換信号SR2を受信すると、発電保証部90から、発電システム30の最大発電電力に対して2~5%程度となるフェイルセーフ発電信号SE2が発電信号出力部70を通じて発電システム30に出力される。
【0080】
これにより、場内負荷40の消費電力が何らかの原因で急減して、潮流検出部10による潮流電力が一時的に低い値となったとしても、発電システム30から商用電力系統への逆潮流を防止することができる。また、場内負荷40の消費電力が急減したとしても、発電システム30による発電を停止させることなく、発電を継続させることができるため、発電システムを安定的に運用することが可能となる。
【0081】
以上のように、本発明の実施形態においては、検出された潮流電力に基づいてデマンド制御と逆潮流防止制御とを制御部20にて適宜切り換えることにより、従来、異なる制御システムとして実行していたデマンド制御と逆潮流防止制御とを一つの制御システムにおいて実現することを可能としている。
【0082】
また、デマンド制御、及び逆潮流防止制御において、それぞれフェイルセーフ機能を有していることにより、場内負荷40に異常が発生した場合でも、確実にデマンド制御、及び逆潮流防止制御を実行することが可能となる。
【0083】
以上、本発明に係る電力制御システム、電力制御方法、及び電力制御プログラムは、デマンド制御と再生可能エネルギーによって発電する発電装置による逆潮流防止制御の動作領域を自動的に判定し、電力の安定供給を実現することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 電力制御システム
10 潮流検出部
20 制御部
201 切換判定部
202 制御切換部
203 デマンド設定部
204 発電量設定部
205 目標値設定部
206 比較部
207 調節部
208 出力切換部
30 発電システム
301 太陽光パネル
302 電力変換機
303 発電量検出部
304 信号変換部
40 場内負荷
60 デマンド信号出力部
70 発電信号出力部
80 デマンド保証部
90 発電保証部
100 操作部
101 ダイヤル
102 デマンド表示部
103 目標デマンド表示部
104 点灯表示部
110 電力分岐部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8