(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004401
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】車車間通信車両、車車間通信方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20230110BHJP
H04W 4/46 20180101ALI20230110BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20230110BHJP
【FI】
H04B7/08 022
H04W4/46
H04W88/02 141
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106031
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】本 浩平
(72)【発明者】
【氏名】土屋 貴寛
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067CC24
5K067EE25
5K067KK03
(57)【要約】
【課題】車車間通信に選択ダイバーシティを用いた場合に、受信アンテナの切り替えを低減することのできる技術を提供する。
【解決手段】隊列走行車両(1)は、隊列走行車両と、他の車両との間の車間距離を測定する距離測定部(11)と、複数の受信アンテナ(13、14)と、複数の受信アンテナの各々が受信した電波の強度に応じて、車車間通信に使用する受信アンテナを選択する選択ダイバーシティ処理を行うダイバーシティ制御部(33)と、車間距離を参照して、選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定する判定部(32)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の車両と車車間通信を行う車車間通信車両であって、
当該車車間通信車両と、上記他の車両との間の車間距離を測定する車間距離測定部と、
複数の受信アンテナと、
上記複数の受信アンテナの各々が受信した電波の強度に応じて、上記車車間通信に使用する受信アンテナを選択する選択ダイバーシティ処理を行うダイバーシティ制御部と、
上記車間距離を参照して、上記選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定する判定部と、
を備えることを特徴とする車車間通信車両。
【請求項2】
上記判定部は、上記車車間通信に用いられる周波数帯をさらに参照して、上記選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車車間通信車両。
【請求項3】
当該車車間通信車両の位置を取得する位置情報取得部を更に備え、
上記判定部は、当該車車間通信車両の位置をさらに参照して、上記選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車車間通信車両。
【請求項4】
上記判定部は、上記位置を参照して、電波伝搬モデルを決定し、決定した電波伝搬モデルを参照して、上記選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の車車間通信車両。
【請求項5】
上記車間距離測定部は、カメラ、測距センサおよび測位装置の少なくとも一つを備えていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の車車間通信車両。
【請求項6】
複数の受信アンテナを備え、他の車両と車車間通信を行う車車間通信車両による車車間通信方法であって、
当該車車間通信車両と、上記他の車両との間の車間距離を測定する車間距離測定ステップと、
上記複数の受信アンテナの各々が受信した電波の強度に応じて、上記車車間通信に使用する受信アンテナを選択する選択ダイバーシティ処理を行うダイバーシティ制御ステップと、
上記車間距離を参照して、上記選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする車車間通信方法。
【請求項7】
請求項1から5の何れか1項に記載の車車間通信車両が備える制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記ダイバーシティ制御部、及び前記判定部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車車間通信車両、車車間通信方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ性能を向上させるための技術として、例えば、特許文献1には、電波強度に応じて受信アンテナを切り替える選択ダイバーシティ技術が開示されている。選択ダイバーシティ技術によれば、受信器側に設けられるダイバーシティコントローラ内で電波強度が最も高い受信アンテナへの切り替え処理を行うことにより、通信性能を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車車間通信でも、回路設計の容易さ、開発コストの低さ等により、選択ダイバーシティ技術を採用することが考えられる。しかしながら、車車間通信に実際に選択ダイバーシティ技術を採用した場合に、どのような問題が生じるかについては十分な知見が得られていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る車車間通信車両は、他の車両と車車間通信を行う車車間通信車両であって、当該車車間通信車両と、上記他の車両との間の車間距離を測定する車間距離測定部と、複数の受信アンテナと、上記複数の受信アンテナの各々が受信した電波の強度に応じて、上記車車間通信に使用する受信アンテナを選択する選択ダイバーシティ処理を行うダイバーシティ制御部と、上記車間距離を参照して、上記選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定する判定部と、を備える。
【0006】
本発明の一態様に係る車車間通信方法は、複数の受信アンテナを備え、他の車両と車車間通信を行う車車間通信車両による車車間通信方法であって、当該車車間通信車両と、上記他の車両との間の車間距離を測定する車間距離測定ステップと、上記複数の受信アンテナの各々が受信した電波の強度に応じて、上記車車間通信に使用する受信アンテナを選択する選択ダイバーシティ処理を行うダイバーシティ制御ステップと、上記車間距離を参照して、上記選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定する判定ステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態1に係る隊列走行車両の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る隊列走行車両の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る制御装置による選択ダイバーシティ処理のオンオフ制御の一例を説明するフロー図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る受信アンテナのRSSIの一例を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施形態1に係る選択ダイバーシティ処理をオンオフした場合のRSSIの一例を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施形態1に係る車間距離が更に長い範囲において、選択ダイバーシティ処理を実行せずに済む車間距離の範囲を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る隊列走行車両の構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】本発明の実施形態2に係るテーブル情報のデータ構成を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る制御装置による選択ダイバーシティ処理のオンオフ制御の一例を説明するフロー図である。
【
図10】本発明の実施形態3に係る隊列走行車両の構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】本発明の実施形態3に係るテーブル情報のデータ構成を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態3に係る制御装置による選択ダイバーシティ処理のオンオフ制御の一例を説明するフロー図である。
【
図13】各実施形態に係る制御装置として利用可能なコンピュータの構成を例示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
<構成例>
以下、本発明の実施形態1について、詳細に説明する。なお、各実施形態においては、他の車両と車車間通信を行う車車間通信車両の一例として、隊列走行車両1および1aについて説明する。但し、本実施形態は、他の車両と車車間通信を行う車両一般に適用することができ、隊列走行車両に限定されない。
【0009】
<隊列走行車両1>
図1は、本実施形態に係る隊列走行車両1(以下、車両1ともいう)の一例を示す模式図である。
図2は、本実施形態に係る隊列走行車両1の構成の一例を示すブロック図である。隊列走行車両1は、車両1aと、車車間通信を用いて隊列走行を行う。なお、車両1に後続する車両1aは、車両1と同様の構成であってもよい。
【0010】
隊列走行車両1は、車両駆動部10、距離測定部(車間距離測定部)11、送信アンテナ12、受信アンテナ13および14、送信部15、ダイバーシティコントローラ16、受信部17、ならびに、制御装置20を備えていてもよい。
【0011】
車両駆動部10は、車両1の走行を行うための駆動部であり、例えば、操舵装置、ギアボックス、エンジン、モータ等を含んでいてよい。
【0012】
距離測定部11は、車両1と、前方および後方を走行する車両との間の車間距離を測定する測定装置である。距離測定部11は、例えば、車両1の前方に設けられた距離測定部11a、および、車両1の後方に設けられた距離測定部11bを備えていてよい。距離測定部11aは、車両1aと、前方を走行する車両との間の車間距離を測定してよい。距離測定部11bは、車両1と、後方を走行する車両との間の車間距離を測定してよい。
【0013】
距離測定部11は、例えば、カメラ、測距センサおよび測位装置の少なくとも一つを備え、これらによって車両1と他の車両(例えば、車両1a)との車間距離を測定してもよい。例えば、距離測定部11がカメラを備えている場合、距離測定部11は、ステレオカメラ等を用いて車間距離を測定してもよい。また、距離測定部11がLiDAR(Light Detection And Ranging)センサ、ミリ波レーダー、TOF(Time Of Flight)センサ、超音波センサ等の測距センサを備え、これらのセンサ出力に応じて車間距離を測定してもよい。また、距離測定部11が、GNSS(Global Navigation Satellite System)等を利用した測距装置を備え、車両1の位置を測定するとともに、他の車両(例えば、車両1a)との車車間通信を介して、他の車両の位置情報を取得して、得られた2つの位置に基づいて車間距離を測定してもよい。
【0014】
送信アンテナ12ならびに受信アンテナ13および14は、他の車両(例えば、車両1a)との車車間通信のためのアンテナであってよい。送信部15は、送信アンテナ12を介して、送信信号を他の車両に送信する無線回路部であってよい。受信部17は、ダイバーシティコントローラ16によって選択された受信アンテナ13または14を介して他の車両から受信信号を受信する無線回路部であってよい。送信アンテナ12ならびに受信アンテナ13および14が送受信する電波は特に限定されず、例えばミリ波であってよい。また、受信アンテナは複数であればよく、3本以上であってもよい。
【0015】
<制御装置20>
制御装置20は、メモリ21、記憶部22、および、主制御部30を備えていてもよい。メモリ21は、データの一時的な記憶を行う揮発性メモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)等であってもよい。記憶部22は、データを記憶する不揮発性記録媒体であり、例えば、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等であってもよい。
【0016】
主制御部30は、車両1、または、制御装置20全体を制御する部分であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)等であってもよい。主制御部30は、機能ブロックとして、隊列制御部31、判定部32、および、ダイバーシティ制御部33を備えていてもよい。
【0017】
隊列制御部31は、距離測定部11が測定した車間距離、および、送信部15および受信部17を介した車車間通信に基づいて、車両駆動部10を制御することにより、隊列走行車両1を隊列走行させてよい。一態様において、隊列制御部31は、隊列走行の隊列に含まれる車両を示す情報、車両1の隊列における順序を示す情報、車両1が追従すべき車両を示す情報、車両1が追従すべき車両の位置、進行方向、速度等を、車車間通信により取得し、これらの情報および車間距離に基づいて車両駆動部10を制御してよい。隊列走行のアルゴリズムは特に限定されず、公知のアルゴリズムを用いることができる。
【0018】
ダイバーシティ制御部33は、複数の受信アンテナ(受信アンテナ13および14)の各々が受信した電波の強度に応じて、車車間通信に使用する受信アンテナを選択する選択ダイバーシティ処理を行ってよい。すなわち、受信部17は、受信アンテナ13および受信アンテナ14を介して受信される電波の強度をそれぞれ取得し、ダイバーシティ制御部33に提供してよい。ダイバーシティ制御部33は、より強い電波強度を受信した受信アンテナを、車車間通信に使用する受信アンテナとして選択することにより、選択ダイバーシティ処理を実現することができる。なお、電波の強度の指標としては、これに限定するものではないが、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)を用いてもよい。
【0019】
判定部32は、距離測定部11が測定した他の車両(例えば、車両1a)との車間距離を参照して、ダイバーシティ制御部33が選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定してよい。
図3は、本実施形態に係る制御装置20による選択ダイバーシティ処理のオンオフ制御の一例を説明するフロー図である。
【0020】
ステップS1において、距離測定部11は、車両1と、他の車両との間の車間距離を測定してもよい。
図1の例では、車両1の距離測定部11bが、車両1と、車両1の後方を走行する車両1aとの間の車間距離を測定してよいが、本実施形態はこれに限定されず、車両1aの距離測定部11aが、車両1aと、車両1aの前方を走行する車両との間の車間距離を測定してもよい。
【0021】
次に、ステップS2において、判定部32は、距離測定部11が測定した車間距離を取得するとともに、記憶部22から第1閾値A1および第2閾値A2(>A1)を読み出してよい。そして、判定部32は、車間距離が第1閾値A1よりも小さいか否かを判定してよい。車間距離が第1閾値A1よりも小さい場合(ステップS2のYES)、選択ダイバーシティ処理を実行すると頻繁に受信アンテナが切り替わり不具合が生じる可能性があり、選択ダイバーシティ処理を実行せずとも電波強度が基準値以上となる可能性が高いため、ステップS4において、判定部32は、選択ダイバーシティ処理を実行しない(オフにする)と決定し、選択ダイバーシティ処理を実行しないようにダイバーシティ制御部33を制御してよい。
【0022】
一方、車間距離が第1閾値A1以上である場合(ステップS2のNO)、ステップS3において、判定部32は、車間距離が第2閾値A2よりも大きいか否かを判定してよい。車間距離が第2閾値A2よりも大きい場合(ステップS3のYES)、選択ダイバーシティ処理を実行せずとも電波強度が基準値以上となる可能性が高く、そもそも車両が隊列走行していない場合が多い。そのため、ステップS4において、判定部32は、選択ダイバーシティ処理を実行しない(オフにする)と決定し、選択ダイバーシティ処理を実行しないようにダイバーシティ制御部33を制御してよい。なお、車間距離が第2閾値A2よりも大きい場合について、選択ダイバーシティ処理を実行しない距離区間を限定してもよい。その詳細は、後述する。
【0023】
そして、ステップS3において車間距離が第2閾値A2よりも大きくない(車間距離が第2閾値A2以下)場合(ステップS3のNO)、選択ダイバーシティ処理を実行することにより、電波強度を改善できる可能性が高い。そのため、ステップS5において、判定部32は、選択ダイバーシティ処理を実行する(オンにする)と決定し、選択ダイバーシティ処理を実行するようにダイバーシティ制御部33を制御してよい。
【0024】
これにより、制御装置20は、車車間通信における電波強度を確保するとともに、ダイバーシティコントローラ16内における切り替え処理が頻繁に発生し、処理遅延や、切り替え処理自体が機能しない等の不具合が生じることを抑制することができる。この理由の詳細を、以下に説明する。
【0025】
図4は、車間距離を変化させたときの受信アンテナ13および14を介して受信される電波のRSSIの一算出例を示すグラフである。
図4は、アンテナの位置および周囲の環境(電波を反射する路面等の条件)を仮定して作成されたモデルに基づいて算出されたRSSIを示す。
図4において、横軸は、車両1と、他の車両との間の車間距離を示す。縦軸は、受信アンテナ13および14のRSSIを示す。一例において、受信アンテナ13を介して受信される電波のRSSI、および、受信アンテナ14を介して受信される電波のRSSIは、車間距離に依存して、
図4のように変化し得る。
【0026】
ここで、車車間通信において最低限必要となる電波強度(RSSI)を、-80dBm以上であるとする。
図4の例において、黒三角は、受信アンテナ13を介して受信される電波のRSSIが-80dBmを割り込んだ極小値を示す。白三角は、受信アンテナ14を介して受信される電波のRSSIが-80dBmを割り込んだ極小値を示す。
【0027】
一例において、車間距離が比較的短い範囲(R1)では、受信アンテナ13および14を介して受信される電波の強度の大小関係が激しく変化し得る。そのため、車間距離が僅かに変化しただけで、選択ダイバーシティ処理によって選択される受信アンテナが頻繁に切り替わり得る。したがって、車間距離が比較的短い範囲において、ダイバーシティ制御部33が選択ダイバーシティ処理を実行する場合、ダイバーシティコントローラ16内における切り替え処理が頻繁に発生し、処理遅延や、切り替え処理自体が機能しない等の不具合が生じ得る。
【0028】
また、車間距離が比較的短い範囲では、受信アンテナ13を介して受信される電波の強度は-80dBmを割り込まない。ゆえに、車間距離が比較的短い範囲では、ダイバーシティ制御部33が選択ダイバーシティ処理を実行せず、車車間通信に使用する受信アンテナとして受信アンテナ13を選択することで、車車間通信を十分な強度の電波を介して行うことができる。
【0029】
一方で、車間距離が比較的長い範囲(R2)では、受信アンテナ13および14を介して受信される電波の強度の大小関係は穏やかに変化し得る。そのため、車間距離が長い範囲(R2)内にある状況において、ダイバーシティ制御部33が選択ダイバーシティ処理を実行しても、ダイバーシティコントローラ16内における切り替え処理はそれほど頻繁に発生することがない。
【0030】
そして、車間距離が比較的長い範囲(R2)では、
図4中において黒三角および白三角によって示すように、受信アンテナ13および14を介して受信される電波の強度は度々一方のみが-80dBmを割り込む。したがって、車間距離が比較的長い範囲において、ダイバーシティ制御部33が選択ダイバーシティ処理を実行することにより、受信電波の強度が-80dBmを割り込むことを避け、車車間通信を十分な強度の電波を介して行うことができる。
【0031】
以上のように、車間距離が比較的短い範囲(R1)では、選択ダイバーシティ処理を実行せず、車間距離が比較的長い範囲(R2)では、選択ダイバーシティ処理を実行することにより、車車間通信を十分な強度の電波を介して行いつつ、処理遅延や、切り替え処理自体が機能しない等の不具合を避けることができる。
【0032】
図5は、車間距離が比較的短い範囲(R1)では、選択ダイバーシティ処理を実行せず、車間距離が比較的長い範囲(R2)では、選択ダイバーシティ処理を実行した場合、受信アンテナにより受信されるRSSIの一算出例を示すグラフである。
図5に示すように、受信アンテナにより受信されるRSSIは、殆ど基準(-80dBm)を割り込むことがない。また、受信アンテナ13および14を介して受信される電波の強度の大小関係が頻繁に変化する車間距離が比較的短い範囲(R1)において、選択ダイバーシティ処理を実行しないことで、ダイバーシティコントローラ16内における切り替え処理が頻繁に発生することに起因する、処理遅延や、切り替え処理自体が機能しない等の不具合を抑制することができる。
【0033】
なお、一例として、車間距離が比較的短い範囲(R1)と車間距離が比較的長い範囲(R2)とを区分する閾値(第1の閾値)は、受信アンテナの切り替え回数が最小になるように設定してもよい。すなわち、選択ダイバーシティ処理を実行せずに、基準以上の強度の電波を受信できる最大の範囲をR1とし、その上限を第1の閾値としてもよい。
【0034】
なお、上述したように、車間距離がR2よりも更に長い場合(第2の閾値を越える場合)には、受信アンテナ13および14を介して受信される電波の強度の大小関係の変化がさらに乏しくなる。そのため、選択ダイバーシティ処理を実行せずとも電波強度が基準値以上となる可能性が高く、そもそも車両が隊列走行していない場合が多いため、選択ダイバーシティ処理を実行しないようにしてもよい。この第2の閾値についても、受信アンテナの切り替え回数が最小になるように設定してもよい。すなわち、第2の閾値を越えた範囲(R3)において選択ダイバーシティ処理を実行せずに、基準以上の強度の電波を受信できるようになる下限を第2の閾値としてもよい。
【0035】
また、車間距離が第2閾値A2よりも大きい範囲(R3)において、選択ダイバーシティ処理を実行しない距離区間を限定してもよい。
図6は、車間距離がR2よりも更に長い範囲(R3)において、選択ダイバーシティ処理を実行せずに済む車間距離の範囲(R31)を示す図である。車間距離の範囲(R3)において、選択ダイバーシティ処理が全く不要であるという訳ではなく、
図6に示すように、受信アンテナ13のRSSIが例えば-70dBmより高い車間距離の範囲(R31)において選択ダイバーシティ処理を実行しないように制御してもよい。-70dBmは、車車間通信に最低限必要なRSSIの値-80dBmに10dBmだけマージンを積んだ値である。
【0036】
そこで、隊列走行車両1の制御装置20では、車間距離の範囲(R31)を事前に記憶部22に記憶しておき、車間距離が第2閾値A2よりも大きい場合、判定部32は、さらに車間距離が、記憶部22に記憶した車間距離の範囲(R31)内であるときに、選択ダイバーシティ処理を実行しないように制御してもよい。
【0037】
また、上記では、第1閾値および第2閾値の両方を用いる構成について説明したが、本実施形態はこれに限定されず、一方の閾値のみを使用してもよい。すなわち、一態様において、ステップS2またはS3の一方を実行しなくともよい。
【0038】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態に係る判定部32は、車車間通信に用いられる周波数帯をさらに参照して、選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定してもよい。
【0039】
<隊列走行車両1>
図7は、本実施形態に係る隊列走行車両1の構成の一例を示すブロック図である。実施形態1に係る隊列走行車両1の構成と異なるのは、本実施形態に係る隊列走行車両1では、記憶部22がテーブル情報221を記憶している点である。
【0040】
<テーブル情報221>
図8は、本実施形態に係るテーブル情報221のデータ構成を示す図である。テーブル情報221は、周波数帯ごとに閾値が設定されたテーブルであり、モデル、周波数帯、第1閾値、および、第2閾値を含む、複数のレコードを含む。モデルには、低周波用、中周波数用、および、高周波数用の3つのモデルがあってもよい。周波数帯には、モデルごとに、データの送受信に使用される周波数(使用周波数)の範囲が設定されてもよい。第1閾値、および、第2閾値には、モデルごとに車間距離の閾値が設定されてもよい。なお、B1<B2、C1<C2、D1<D2との関係が成り立つように、第1閾値、および、第2閾値が設定されてもよい。
【0041】
<選択ダイバーシティ処理のオンオフ制御の一例>
図9は、本実施形態に係る制御装置20による選択ダイバーシティ処理のオンオフ処理の一例を説明するフロー図である。制御装置20は、ステップS11において、判定部32が、送信部15、または、受信部17から使用周波数を取得してもよい。次に、判定部32は、記憶部22からテーブル情報221を読み出し、当該使用周波数がどの周波数帯に含まれるかを特定してもよい。そして、ステップS12において、判定部32は、特定した周波数帯のモデルに応じた第1閾値および第2閾値を特定してもよい。
【0042】
図8の例では、例えば、使用周波数が低周波数用の周波数帯に含まれていれば、判定部32は、第1閾値B1および第2閾値B2を特定する。
【0043】
ステップS13~S17の処理は、
図3のS1~S5の処理と同様なので、説明を割愛する。
【0044】
以上のように、判定部32が、車車間通信に用いられる周波数帯を参照して、当該周波数帯に対応する閾値を使用して、選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを判定してもよい。
図4~
図5に示した車間距離に応じた電波強度の変化は、周波数帯によって変化し得る。そのため、車車間通信に用いられる周波数帯に対応する閾値を使用して、選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを判定することにより、ダイバーシティコントローラ16内における切り替え処理が頻繁に発生することに起因する、処理遅延や、切り替え処理自体が機能しない等の不具合をより抑制することができる。
【0045】
なお、本実施形態においても、第1閾値および第2閾値の両方を用いる構成について説明したが、これに限定されず、一方の閾値のみを使用してもよい。すなわち、一態様において、ステップS14またはS15の一方を実行しなくともよい。
【0046】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1、2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態に係る判定部32は、隊列走行車両1の位置をさらに参照して、選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定してもよい。さらに、判定部32は、隊列走行車両1の位置を参照して、電波伝搬モデルを決定し、決定した電波伝搬モデルを参照して、選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定してもよい。
【0047】
<隊列走行車両1>
図10は、本実施形態に係る隊列走行車両1の構成の一例を示すブロック図である。実施形態1に係る隊列走行車両1の構成と異なるのは、本実施形態に係る隊列走行車両1では、位置情報取得部18をさらに備え、記憶部22がテーブル情報222および地図情報223を記憶している点である。
【0048】
位置情報取得部18は、隊列走行車両1の位置を取得する部分であり、例えば、GPS(Global Positioning System)測位機等であってもよい。テーブル情報222については、後述する。地図情報223は、現在位置を示す位置情報から現在位置における道路環境が特定可能な地図の情報である。
【0049】
<テーブル情報222>
図11は、本実施形態に係るテーブル情報222のデータ構成を示す図である。テーブル情報222は、道路環境ごとに閾値が設定されたテーブルであり、モデル、道路環境、第1閾値、および、第2閾値を含む、複数のレコードを含む。モデルには、2波用、3波用、および、4波以上用の3つのモデルがあってもよい。道路環境には、モデルごとに、道路環境の特徴が設定されてもよい。第1閾値、および、第2閾値には、モデルごとに車間距離の閾値が設定されてもよい。なお、P1<P2、Q1<Q2、R1<R2との関係が成り立つように、第1閾値、および、第2閾値が設定されてもよい。
【0050】
なお、テーブル情報222は、モデルごとに、さらに各周波数帯の第1閾値および第2閾値が設定されていてもよい。これにより、さらに精度よく、選択ダイバーシティ処理のオンオフ制御を行うことができる。
【0051】
図12は、本実施形態に係る制御装置20による選択ダイバーシティ処理のオンオフ制御の一例を説明するフロー図である。制御装置20は、ステップS21において、位置情報取得部18から隊列走行車両1の現在位置を取得してもよい。ステップS22において、判定部32は、記憶部22から地図情報223を読み出してもよい。次に、判定部32は、地図情報223を参照して、隊列走行車両1の現在位置から道路環境を特定してもよい。そして、ステップS23において、判定部32は、特定した道路環境のモデルに応じた第1閾値および第2閾値を特定してもよい。
【0052】
図11の例では、例えば、道路環境がトンネルであれば、判定部32は、第1閾値R1および第2閾値R2を特定する。
【0053】
ステップS24~S28の処理は、
図3のS1~S5の処理と同様なので、説明を割愛する。
【0054】
以上のように、判定部32が、車両1の現在位置を参照して、記憶部22に記憶されている情報に基づいて、当該位置に対応する道路環境を特定し、当該道路環境に対応する電波伝搬モデルを特定し、当該電波伝搬モデルから導かれる閾値を使用して、選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを判定してもよい。これにより、より実際の電波の伝搬に対応する制御を行うことができるため、ダイバーシティコントローラ16内における切り替え処理が頻繁に発生することに起因する、処理遅延や、切り替え処理自体が機能しない等の不具合をより抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態においても、第1閾値および第2閾値の両方を用いる構成について説明したが、これに限定されず、一方の閾値のみを使用してもよい。すなわち、一態様において、ステップS25またはS26の一方を実行しなくともよい。
【0056】
また、上記では、記憶部22に地図情報223およびテーブル情報222が保存されている構成について説明したが、本実施形態はこれに限定されず、記憶部22には、車両1の現在位置から、閾値を求めるための情報が保存されていればよい。例えば、記憶部22には、車両1の位置と閾値との対応関係を示す情報が保存されていてもよいし、道路環境と閾値との対応関係を示す情報が保存されていてもよい。
【0057】
また、記憶部22には、各位置、各道路環境または各電波伝搬モデル毎に、複数の周波数帯ごとの閾値が保存されていてもよい。これにより、判定部32は、車両1の現在位置および車車間通信の周波数帯を参照して、記憶部22に記憶されている情報に基づいて、当該位置に対応する道路環境を特定し、当該道路環境に対応する電波伝搬モデルを特定し、当該電波伝搬モデルおよび周波数帯から導かれる閾値を使用して、選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを判定することができる。
【0058】
〔ハードウェア構成およびソフトウェアによる実現例〕
制御装置20の制御ブロック(特に主制御部30に含まれる各部等)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。後者の場合、制御装置20は、
図13に示すようなコンピュータ(電子計算機)を用いて構成されてよい。
【0059】
図13は、制御装置20として利用可能なコンピュータ910の構成を例示したブロック図である。コンピュータ910は、バス911を介して互いに接続された演算装置912と、主記憶装置913と、補助記憶装置914と、入出力インターフェース915とを備えている。演算装置912、主記憶装置913、および補助記憶装置914は、それぞれ、例えばCPU、RAM(random access memory)、ソリッドステートドライブまたはハードディスクドライブであってもよい。入出力インターフェース915には、ユーザがコンピュータ910に各種情報を入力するための入力装置920、および、コンピュータ910がユーザに各種情報を出力するための出力装置930が接続される。入力装置920および出力装置930は、コンピュータ910に内蔵されたものであってもよいし、コンピュータ910に接続された(外付けされた)ものであってもよい。例えば、入力装置920は、ボタン、キーボード、マウス、タッチセンサなどであってもよく、出力装置930は、ランプ、ディスプレイ、プリンタ、スピーカなどであってもよい。また、タッチセンサとディスプレイとが一体化されたタッチパネルのような、入力装置920および出力装置930の双方の機能を有する装置を適用してもよい。そして、通信インターフェース916は、コンピュータ910が外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0060】
補助記憶装置914には、コンピュータ910を、端末装置100またはサーバ200として動作させるための情報処理プログラムが格納されている。そして、演算装置912は、補助記憶装置914に格納された上記情報処理プログラムを主記憶装置913上に展開して該情報処理プログラムに含まれる命令を実行することによって、コンピュータ910を、端末装置100またはサーバ200が備える各部として機能させる。なお、補助記憶装置914が情報処理プログラム等の情報の記録に用いる記録媒体は、コンピュータ読み取り可能な「一時的でない有形の媒体」であればよく、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブル論理回路などであってもよい。
【0061】
また、コンピュータ910の外部の記録媒体に記録されているプログラム、あるいは任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介してコンピュータ910に供給されたプログラムを用いてコンピュータ910を機能させる構成を採用してもよい。そして、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
〔付記事項〕
本明細書に記載の発明の一部は以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0064】
(付記1)
他の車両と車車間通信を行う車車間通信車両であって、当該車車間通信車両と、上記他の車両との間の車間距離を測定する車間距離測定部と、複数の受信アンテナと、上記複数の受信アンテナの各々が受信した電波の強度に応じて、上記車車間通信に使用する受信アンテナを選択する選択ダイバーシティ処理を行うダイバーシティ制御部と、上記車間距離を参照して、上記選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定する判定部と、を備える。
【0065】
(付記2)
複数の受信アンテナを備え、他の車両と車車間通信を行う車車間通信車両による車車間通信方法であって、当該車車間通信車両と、上記他の車両との間の車間距離を測定する車間距離測定ステップと、上記複数の受信アンテナの各々が受信した電波の強度に応じて、上記車車間通信に使用する受信アンテナを選択する選択ダイバーシティ処理を行うダイバーシティ制御ステップと、上記車間距離を参照して、上記選択ダイバーシティ処理を実行するか否かを決定する判定ステップと、を含む。
【符号の説明】
【0066】
1 車両、隊列走行車両(車車間通信車両)
11 距離測定部(車間距離測定部)
12 送信アンテナ
13、14 受信アンテナ
15 送信部
16 ダイバーシティコントローラ
17 受信部
18 位置情報取得部
32 判定部
33 ダイバーシティ制御部
221、222 テーブル情報
223 地図情報