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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044015
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】トイレ用手洗鉢、及び便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/24 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
E03D1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151821
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 純平
(72)【発明者】
【氏名】林 正裕
(72)【発明者】
【氏名】西尾 祐規
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 広大
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039CD01
(57)【要約】
【課題】外周壁部の外面の上部を容易に清掃することができるトイレ用手洗鉢を提供する。
【解決手段】トイレ用手洗鉢110は、鉢部130と、鉢部130の外周縁に連続して下方に延びた外周壁部150と、を備えており、外周壁部150の少なくとも一部の外面は、外周壁部150の上部に設けられた第1面154Aと、第1面154Aよりも下方に位置し、第1面154Aよりも傾斜が急な第2面154Bと、第1面154Aと第2面154Bとの間に横方向に延びており、第1面154A及び前記第2面154Bよりも上下方向の曲率半径が小さい屈曲面154Cと、を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉢部と、
前記鉢部の外周縁に連続して下方に延びた外周壁部と、
を備えており、
前記外周壁部の少なくとも一部の外面は、
前記外周壁部の上部に設けられた第1面と、
前記第1面よりも下方に位置し、前記第1面よりも傾斜が急な第2面と、
前記第1面と前記第2面との間に横方向に延びており、前記第1面及び前記第2面よりも上下方向の曲率半径が小さい屈曲面と、
を有しているトイレ用手洗鉢。
【請求項2】
前記鉢部は、前記外周縁から下方に向けて斜め内側に傾斜し、上下方向に貫通する貫通孔が形成された傾斜部を有しており、
前記貫通孔の上側開口の上端と、前記貫通孔の上側開口の上端から前記鉢部の最も近い前記外周縁とを通る仮想鉛直面によって切断された断面形状において、
前記貫通孔の下側開口の上端縁から前記外周壁部の内面の上端までの第1長さが、前記外周壁部の内面の上端から前記鉢部の前記外周縁の上端までの上下方向の第2長さよりも大きい請求項1に記載のトイレ用手洗鉢。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記鉢部に手洗水を吐水する吐水部材が差し込まれる請求項2に記載のトイレ用手洗鉢。
【請求項4】
前記外周壁部の後側の外面に前記第1面、前記第2面、及び前記屈曲面を有している請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のトイレ用手洗鉢。
【請求項5】
前記外周壁部は、外面側に形成された釉薬層を有しており、上部に塗布された釉薬と、下部に塗布された釉薬とが異なる請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のトイレ用手洗鉢。
【請求項6】
前記屈曲面よりも上側に塗布された釉薬と、前記屈曲面よりも下側に塗布された釉薬とが異なる請求項5に記載のトイレ用手洗鉢。
【請求項7】
前記鉢部の後側の外周縁の最上端と、前記鉢部に形成された排水口の中心とを通る仮想鉛直面によって切断された断面形状において、
前記排水口の上側開口から前記鉢部の前側の外周縁の上端までの高低差を第1高低差H1、前記排水口の上側開口から前記鉢部の後側の外周縁の上端までの高低差を第2高低差H2とすると、以下の式1を満たす請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のトイレ用手洗鉢。
H2>2.2×H1 ・・・式1
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のトイレ用手洗鉢と、
前記トイレ用手洗鉢に取り付けられ、前記鉢部の後側の外周縁の上端よりも上方に延びており、前記鉢部に向けて手洗水を吐水する吐水部材と、
便蓋と、
を備えており、
起立状態における前記便蓋の上端は、前記吐水部材の上端よりも低く、前記鉢部の後側の外周縁の上端よりも高い便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はトイレ用手洗鉢、及び便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来のトイレ用手洗鉢を開示している。このトイレ用手洗鉢は、鉢部と、鉢部の外周縁に連続して下方に延びた外周壁部とを備えている。外周壁部の外面は、略平面である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-71020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のトイレ用手洗鉢は、外周壁部の外面の清掃性を考慮していない。このため、トイレ室の壁面に近接して設置された便器において、壁面に近接した外周壁部の外面は、清掃する際に手が届きにくく、清掃しにくいため、外周壁部の外面の上部の汚れが目立つおそれがある。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、外周壁部の外面の上部を容易に清掃することができるトイレ用手洗鉢を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のトイレ用手洗鉢は、鉢部と、前記鉢部の外周縁に連続して下方に延びた外周壁部と、を備えており、前記外周壁部の少なくとも一部の外面は、前記外周壁部の上部に設けられた第1面と、前記第1面よりも下方に位置し、前記第1面よりも傾斜が急な第2面と、前記第1面と前記第2面との間に横方向に延びており、前記第1面及び前記第2面よりも上下方向の曲率半径が小さい屈曲面と、を有している。外周壁部の上部は、外周壁部を上下方向に3等分した際の最も上側の部分である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の便器を示す側面図である。
図2】実施形態1のトイレ用手洗装置を示す斜視図である。
図3】実施形態1のトイレ用手洗装置を示す正面図である。
図4】実施形態1のトイレ用手洗装置を示す平面図である。
図5】実施形態1の吐水部材が取り付けられたトイレ用手洗鉢を示す左右中央断面図である。
図6図4の矢視X-X断面図である。
図7】実施形態1のトイレ用手洗鉢の平面図である。
図8】実施形態1のトイレ用手洗鉢を示す左右中央断面図である。
図9】実施形態1のトイレ用手洗鉢を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示のトイレ用手洗鉢を具備した便器を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
【0009】
<実施形態1>
実施形態1の便器1は、図1に示すように、便器本体10、便座装置30、洗浄タンク50、及びトイレ用手洗装置100を備えている。便器本体10は陶器製である。便器本体10は、便鉢部11を有している。便器本体10は、便鉢部11よりも後方の上面に、洗浄タンク50及び後述する便座装置30の支持部35を載置する載置部13を有している。以下の説明において、使用状態に設置した便器1を便鉢部11側から水平方向に見た際の左右方向が左右方向であり、上下方向が上下方向であり、手前方向が前方であり、奥方向が後方である。図1から図9において、X軸の正方向が左方向、X軸の負方向が右方向、Y軸の正方向が上方向、Y軸の負方向が下方向、Z軸の正方向が前方向、Z軸の負方向が後方向である。
【0010】
洗浄タンク50は陶器製である。洗浄タンク50は、便鉢部11に供給する洗浄水を貯留する。洗浄タンク50は、便器本体10の載置部13の後部に取り付けられている。便座装置30は、便座31、便蓋33、及び支持部35を有している。支持部35は、洗浄タンク50より前側の便器本体10の載置部13に取り付けられている。支持部35は、便座31及び便蓋33を回転自在に支持している。支持部35は、内部に図示しない局部洗浄装置などの機能部を収納している。便座31は、便鉢部11の上方に位置し、使用者が着座することができる倒伏状態と、支持部35の上方に位置する起立状態との間を回転移動する。便蓋33は、便鉢部11の上方に位置し、便座31及び便鉢部11を上方から覆う倒伏状態と、支持部35の上方に位置する起立状態との間を回転移動する。
【0011】
トイレ用手洗装置100は、図1から図6に示すように、トイレ用手洗鉢110、及び吐水部材190を有している。トイレ用手洗装置100は洗浄タンク50の上端に着脱自在に載置されている。トイレ用手洗鉢110は、図3から図8に示すように、鉢部130、外周壁部150、及び連結壁部170を具備している。トイレ用手洗鉢110は、陶器製である。トイレ用手洗鉢110は、鉢部130、外周壁部150、及び連結壁部170の各部の厚さが略等しくなるように、排泥鋳込み成形法によって製造されている。
【0012】
鉢部130の外周縁131は、図4に示すように、トイレ用手洗鉢110を上方から見た平面視(以下、「平面視」という。)において、左右方向に長い略矩形状であり、各角部が円弧状に湾曲している。鉢部130の外周縁131は、前側の外周縁131F、後側の外周縁131B、左側の外周縁131L、及び右側の外周縁131Rを有している。
【0013】
前側の外周縁131Fは、平面視において、左右方向の中央部が前方に突出するように僅かに湾曲して左右方向に延びている。後側の外周縁131Bは、平面視において、左右方向の中央部が後方に突出するように僅かに湾曲して左右方向に延びている。左右両側の外周縁131L,242Rは、平面視において、前後方向に略直線状に延びている。
【0014】
後側の外周縁131Bの上端は、図3に示すように、トイレ用手洗鉢110を前方から見た正面視(以下、「正面視」という。)において、左右方向の中央部が上方に突出するように僅かに湾曲して左右方向に延びている。前側の外周縁131Fの上端は、正面視において、左右方向の中央部が下方に突出するように僅かに湾曲して左右方向に延びている。後側の外周縁131Bの上端は、前側の外周縁131Fの上端よりも高い位置で延びている。の左右両側の外周縁131L,131Rの上端は、図1に示すように、トイレ用手洗鉢110を左右両側から見た側面視において、前端から後端に向けて斜め上方に傾斜して前後方向に略直線状に延びている。鉢部130の外周縁131の上面は、図5及び図6に示すように、鉢部130の外周縁131に直交する仮想鉛直面によって切断された断面形状において、上方に膨らむように円弧状に湾曲した湾曲面に形成されている。
【0015】
鉢部130の鉢面133は、後側の鉢面133B、前側の鉢面133F、左側の鉢面133L、右側の鉢面133R、及び底面133Sを有している。後側の鉢面133Bは、図3から図8に示すように、後側の外周縁131Bの上面の前端から下方に向けて斜め前方に傾斜して平面状に広がっている。水平面に対する後側の鉢面133Bの傾斜角度は約54度である。水平面に対する後側の鉢面133Bの傾斜角度は、50度以上、かつ70度以下であればよい。後側の鉢面133Bの下端は、底面133Sの後端縁に連続している。底面133Sは、僅かに湾曲して凹んでいる。
【0016】
鉢部130は、後側の鉢面133Bを形成した後側の傾斜部135に上下方向に貫通する貫通孔137が形成されている。貫通孔137は、後側の傾斜部135の上部であって、左右中央に形成されている。貫通孔137は、平面視において、円形状である。貫通孔137は、後述する吐水部材190のパイプ部193が差し込まれる。
【0017】
前側の鉢面133Fは、図5及び図8に示すように、前側の外周縁131Fの上面の後端から下方に向けて斜め後方に傾斜している。前側の鉢面133Fは、前端から後方に向けて傾斜角度が徐々に小さくなるように湾曲している。前側の鉢面133Fの下端は、底面133Sの前縁に連続している。
【0018】
左側の鉢面133Lは、図6に示すように、左側の外周縁131Lの上面の右端から下方に向けて斜め右方向に傾斜している。右側の鉢面133Rは、右側の外周縁131Rの上面の左端から下方に向けて斜め左方向に傾斜している。左右両側の鉢面133L,133Rは、左右両側から左右中央部に向けて傾斜角度が徐々に小さくなるように湾曲している。左右両側の鉢面133L,133Rの下端は、底面133Sの左右両縁に連続している。
【0019】
鉢部130は、図5及び図6に示すように、下面から下方に延びる円筒部132を有している。円筒部132の内部は、鉢部130を上下方向に貫通する排水口134を形成している。排水口134は、円筒部132の上下方向に直線状に延びる内周面134Aと、この内周面134Aの上端に連続して上方に延びる円弧状の湾曲面134Bとによって形成されている。排水口134の上側開口134Uの周縁は、排水口134の上部を形成する湾曲面134Bの上端によって構成されている。排水口134の上側開口134Uは、鉢面133の最も低い部分に開口している。排水口134は、鉢部130の左右中央に形成されている。
【0020】
外周壁部150は、鉢部130の外周縁131に連続して下方に延びている。外周壁部150の下端部は、鉢部130の裏面に連続した連結壁部170の外周縁部に連続している。トイレ用手洗鉢110は、鉢部130、外周壁部150、及び連結壁部170に囲まれた空洞部Sが形成されている。空洞部Sは、鉢部130の下方において、鉢部130の周りを一周している。連結壁部170は、鉢部130の傾斜部135を貫通した貫通孔137の直下に後述する吐水部材190のパイプ部193の下端部が挿通する挿通孔171が形成されている。
【0021】
前側の外周壁部151は、鉢部130の前側の外周縁131Fに連続している。前側の外周壁部151の外面151Aは、下方に向けて僅かに前方に傾斜している。前側の外周壁部151の外面151Aは、左右中央部が前方に突出して僅かに湾曲して左右方向に延びている。左右両側の外周壁部152,153は、鉢部130の左右両側の外周縁131L,131Rに連続している。左右両側の外周壁部152,153の外面152A,153Aは、下方に向けて僅かに左右外方向に傾斜している。左右両側の外周壁部152,153の外面152A,153Aは、略直線状に前後方向に延びている。
【0022】
後側の外周壁部154は、鉢部130の後側の外周縁131Bに連続している。後側の外周壁部154の外面は、図2図5図8,及び図9に示すように、第1面154A、第2面154B、及び屈曲面154Cを有している。第1面154Aは、鉢部130の後側の外周縁131Bの上面の後端に連続しており、略平面状である。第1面154Aの上下方向の長さは、外周壁部154の上下方向の長さの約1/8である。第1面154Aは、下方に向けて後方に傾斜している。屈曲面154Cは、第1面154Aの下端に連続して、左右方向に延びている。第2面154Bは、屈曲面154Cの下端に連続しており、略平面状である。第2面154Bは、下方に向けて後方に僅かに傾斜しており、第1面154Aよりも傾斜が急である。屈曲面154Cの上下方向の幅は、わずかである。屈曲面154Cは、第1面154A及び第2面154Bよりも上下方向の曲率半径が小さい。
【0023】
このトイレ用手洗鉢110は、図9に示すように、鉢部130の後側の外周縁131Bに直交する仮想鉛直面によって切断された断面形状において、第1角度αが第2角度βよりも大きい。第1角度αは、第1面154Aに沿って上方に延びる第1仮想直線L1と、鉢部130の後側の鉢面133Bに沿って上方に延びる第2仮想直線L2とが交差した角度である。鉢部130の後側の外周縁131Bと後側の外周壁部150とが連続する部分の内側角部Cの角度は、第1角度αと略等しい。第2角度βは、第2面154Bに沿って上方に延びる第3仮想直線L3と、鉢部130の後側の鉢面133Bに沿って上方に延びる第2仮想直線L2とが交差した角度である。
【0024】
第1角度αが小さいと、トイレ用手洗鉢110の製造時に、鉢部130の後側の外周縁131Bと後側の外周壁部154とが連続する部分の内側角部Cから上方に向けてひび割れが発生しやすい。このトイレ用手洗鉢110は、第2面154Bよりも傾斜が緩やかな第1面154Aを形成することによって、第1角度αを大きくすることができる。このトイレ用手洗鉢110は、第1角度αをひび割れの発生率が低くなる大きさにして、ひび割れの発生を防止している。
【0025】
このトイレ用手洗鉢110は、第2面154Bよりも傾斜が緩やかな第1面154Aを形成することによって、清掃する際、後側の外周壁部154の外面の上部である第1面154Aに手が届きやすくなり、第1面154Aを容易に清掃することができる。
【0026】
このトイレ用手洗鉢110は、図8に示すように、貫通孔137の上側開口138の上端縁138Tと、貫通孔137の上側開口138の上端縁138Tから鉢部130の最も近い外周縁P(図7参照)とを通る仮想鉛直面によって切断された断面形状において、第1長さS1が第2長さS2よりも大きい。第1長さS1は、貫通孔137の下側開口139の上端縁139Tから後側の外周壁部154の内面の上端Cまでの長さである。第2長さS2は、後側の外周壁部154の内面の上端Cから鉢部130の後側の外周縁131Bの上端までの上下方向の長さである。「外周壁部150の内面の上端C」は、鉢部130の後側の外周縁131Bと後側の外周壁部154とが連続する部分の内側角部Cである。「鉢部130の後側の外周縁131Bの上端」は、貫通孔137の上側開口138の上端縁138Tから鉢部130の最も近い外周縁Pの上端である。このトイレ用手洗鉢110において、鉢部130の後側の外周縁131Bの上端は、鉢部130の後側の外周縁131Bの左右中央部である。
【0027】
第1長さS1が短いと、トイレ用手洗鉢110の製造時に、鉢部130の後側の外周縁131Bと後側の外周壁部154とが連続する部分の内側角部Cから上方に向けてひび割れが発生しやすい。このため、このトイレ用手洗鉢110は、第1長さS1をひび割れの発生率が低い長さにして、ひび割れの発生を防止している。
【0028】
このトイレ用手洗鉢110は、図8に示すように、鉢部130の後側の外周縁131Bの最上端と、排水口134の中心とを通る仮想鉛直面によって切断された断面形状において、第1高低差H1と第2高低差H2とが以下の式1を満たしている。このトイレ用手洗鉢110において、鉢部130の後側の外周縁131Bの最上端は、鉢部130の後側の外周縁131Bの左右中央部である。
H2>2.2×H1 ・・・式1
【0029】
第1高低差H1は、排水口134の上側開口134Uから鉢部130の前側の外周縁131Fの上端までの高低差である。第2高低差H2は、排水口134の上側開口134Uから鉢部130の後側の外周縁131Bの上端までの高低差である。排水口134の上側開口134Uの高さは、排水口134の上側開口134Uの周縁の高さである。このトイレ用手洗鉢110において、排水口134の上側開口134Uの周縁は、排水口134の上部を形成する湾曲面134Bの上端によって構成されている。
【0030】
第1高低差H1と第2高低差H2との関係は、H2>2.5×H1であると好ましい。この場合、このトイレ用手洗鉢110は、手洗水が鉢部130よりも後方に飛散することをより防ぐことができる。第1高低差H1と第2高低差H2との関係は、H2<3.5×H1であってもよく、H2<3.0×H1であると好ましい。この場合、このトイレ用手洗鉢110は、後側の鉢面133Bに衝突して跳ね返った手洗水が、鉢部130よりも前方に飛散することを抑制することができる。
【0031】
トイレ用手洗鉢110は、鉢部130の鉢面133側、及び外周壁部150の外面151A,152A,153A,154A,154B,154C側に釉薬層が形成されている。鉢面133、前側の外周壁部151の外面151A、左右両側の外周壁部152,153の外面152A,153A、及び後側の外周壁部154の第1面154Aからなる第1領域に塗布された釉薬と、後側の外周壁部154の第2面154Bからなる第2領域に塗布された釉薬とが異なっている。後側の外周壁部154の屈曲面154Cと、屈曲面154C近傍の第1面154A及び第2面154Bは、第1領域に塗布された釉薬及び第2領域に塗布された釉薬のどちらも塗布される。第1領域は、便器1の使用者などに視認されるため、意匠性を考慮して釉薬層を形成し、第2領域は、便器1の使用者などに視認されにくいため、第1領域に比べて意匠性の劣る釉薬層を形成する。これにより、トイレ用手洗鉢110は、高い意匠性を維持しつつ、製造効率をよくし、製造コストの低減を図ることができる。
【0032】
吐水部材190は、図1から図6に示すように、トイレ用手洗鉢110に取り付けられ、トイレ用手洗鉢110の上端よりも上方に延びている。吐水部材190は、図5に示すように、本体部191と、本体部191の下端から下方に延びるパイプ部193とを有している。パイプ部193の下部は外周面にねじ山が形成されている。パイプ部193は、鉢部130の傾斜部135に形成された貫通孔137に上方から差し込まれ、連結壁部170の挿通孔171を挿通して、連結壁部170よりも下方に突出する。吐水部材190は、連結壁部170よりも下方に突出したパイプ部193の下端から図示しないナットを締め付けることによって、トイレ用手洗鉢110に取り付けられる。
【0033】
吐水部材190の本体部191は、図5に示すように、後側の鉢面133Bの上端部から上方に延びている。本体部191は、トイレ用手洗装置100を右側から見た側面視において、上方に向けて前方に湾曲しながら傾斜している。本体部191は、図6に示すように、トイレ用手洗装置100を前方から見た正面視において、上下方向にまっすぐ延びている。本体部191の左右幅は、下端から上端に向けて徐々に狭くなっている。本体部191は、略円筒状の吐水部195が上端部の下面から下方に突出して設けられている。吐水部195は手洗水が吐水される吐水口が形成されている。吐水部195の吐水口から吐水された手洗水は、吐水状態にばらつきがあるため、図5に示すように、排水口134の中心を狙わずに排水口134の中心よりも後側に向けて吐水される。
【0034】
このトイレ用手洗装置100は、鉢部130の後側の外周縁131Bの最上端と、排水口134の中心とを通る仮想鉛直面によって切断された断面形状において、第1高低差H1と第3高低差H3との関係は、H3=3.8×H1である。第3高低差H3は、鉢部130の前側の外周縁131Fの上端から吐水部195の下端縁の前端までの高低差である。
【0035】
第1高低差H1と第3高低差H3との関係は、4.5×H1>H3>3.0×H1であってもよく、4.0×H1>H3>3.5×H1であると好ましい。この場合、このトイレ用手洗装置100は、便器1の使用者が手を洗いやすい。
【0036】
便器本体10、便座装置30、洗浄タンク50、及びトイレ用手洗装置100を備えた便器1は、図1に示すように、起立状態における便蓋33の上端33Tが、吐水部材190の上端よりも低く、鉢部130の後側の外周縁131Bの上端よりも高い。この便器1は、便蓋33が起立状態であっても、便器1の使用者がトイレ用手洗装置100を利用して手を洗うことができる。
【0037】
以上説明したように、実施形態1の便器1におけるトイレ用手洗鉢110は、鉢部130と、鉢部130の外周縁131に連続して下方に延びた外周壁部150と、を備えている。このトイレ用手洗鉢110の後側の外周壁部154の外面は、外周壁部150の上部に設けられた第1面154Aと、第1面154Aよりも下方に位置し、第1面154Aよりも傾斜が急な第2面154Bと、第1面154Aと第2面154Bとの間に横方向に延びており、第1面154A及び第2面154Bよりも上下方向の曲率半径が小さい屈曲面154Cと、を有している。
【0038】
このトイレ用手洗鉢110は、第2面154Bよりも傾斜が緩やかな第1面154Aを形成することによって、清掃する際、外周壁部150の第1面154Aに手が届きやすくなり、第1面154Aを容易に清掃することができる。
【0039】
このトイレ用手洗鉢110は、第2面154Bよりも傾斜が緩やかな第1面154Aを形成することによって、第1角度αを大きくすることができる。このトイレ用手洗鉢110は、第1角度αをひび割れの発生率が低くなる大きさにして、ひび割れの発生を防止している。
【0040】
このトイレ用手洗鉢110において、鉢部130は、外周縁131から下方に向けて斜め内側に傾斜し、上下方向に貫通する貫通孔137が形成された傾斜部135を有しており、貫通孔137の上側開口138の上端縁138Tと、貫通孔137の上側開口138の上端縁138Tから鉢部130の最も近い外周縁Pとを通る仮想鉛直面によって切断された断面形状において、貫通孔137の下側開口139の上端縁139Tから後側の外周壁部154の内面の上端Cまでの第1長さS1が、後側の外周壁部154の内面の上端Cから鉢部130の後側の外周縁131Bの上端までの上下方向の第2長さS2よりも大きい。このトイレ用手洗鉢110は、第1長さS1をひび割れの発生率が低い長さにして、ひび割れの発生を防止している。
【0041】
このトイレ用手洗鉢110において、外周壁部150は、外面側に形成された釉薬層を有しており、屈曲面154Cよりも上側に塗布された釉薬と、屈曲面154Cよりも下側に塗布された釉薬とが異なる。このトイレ用手洗鉢110は、高い意匠性を維持しつつ、製造効率をよくし、製造コストの低減を図ることができる。
【0042】
このトイレ用手洗鉢110は、鉢部130の後側の外周縁131Bの最上端と、鉢部130に形成された排水口134の中心とを通る仮想鉛直面によって切断された断面形状において、排水口134の上側開口134Uから鉢部130の前側の外周縁131Fの上端までの高低差を第1高低差H1、排水口134の上側開口134Uから鉢部130の後側の外周縁131Bの上端までの高低差を第2高低差H2とすると、H2>2.2×H1の関係を満たす。このトイレ用手洗鉢110は、手洗水が鉢部130よりも後方に飛散することをより防ぐことができる。
【0043】
実施形態1の便器1は、トイレ用手洗鉢110と、トイレ用手洗鉢110に取り付けられ、鉢部130の後側の外周縁131Bの上端よりも上方に延びており、鉢部130に向けて手洗水を吐水する吐水部材190と、便蓋33と、を備えている。この便器1は、起立状態における便蓋33の上端33Tは、吐水部材190の上端よりも低く、鉢部130の後側の外周縁131Bの上端よりも高い。この便器1は、便蓋33が起立状態であっても、便器1の使用者が吐水部材190から吐水される手洗水によって手を洗うことができる。
【0044】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)後側の外周壁部以外の外周壁部の外面に第1面、第2面、及び屈曲面を有していてもよい。
(2)外周壁部の第1面及び第2面は上下方向に湾曲していてもよい。この場合、第1面及び第2面は、屈曲面よりも上下方向の曲率半径が大きい。
(3)第1面の上下方向の長さは、外周壁部の上下方向の長さの1/3以下であればよい。
(4)貫通孔は吐水部材を差し込む以外に利用してもよい。
(5)外周壁部の外面に塗布する釉薬は、上部と下部とで異ならせなくてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…便器、33…便蓋、110…トイレ用手洗鉢、130…鉢部、134…排水口、134U…(排水口の)上側開口、135…傾斜部、137…貫通孔、138…(貫通孔の)上側開口、139…(貫通孔の)下側開口、150…外周壁部、151A,152A,153A,154A,154B,154C…(外周壁部150の)外面、154A…第1面、154B…第2面、154C…屈曲面、S1…第1長さ、S2…第2長さ、190…吐水部材、H1…第1高低差、H2…第2高低差
図1
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図9