(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044018
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】同期信号変換装置
(51)【国際特許分類】
H04W 56/00 20090101AFI20230323BHJP
【FI】
H04W56/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151832
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(71)【出願人】
【識別番号】508059616
【氏名又は名称】UQコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】笹浪 斉康
(72)【発明者】
【氏名】島田 実
(72)【発明者】
【氏名】高島 光博
(72)【発明者】
【氏名】大友 佑三
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067BB21
5K067DD25
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】 LTE信号から取得したシステム同期信号のタイミングを送信元の基地局に応じて補正して、精度の高い疑似GPS受信信号を生成し、受信側装置のスループット低下を防ぐことができる同期信号変換装置を提供する。
【解決手段】 同期信号取得部11が、LTE信号から、システム同期信号と、送信元基地局を識別する基地局特定情報を抽出し、オフセット制御部30が、予め記憶された基地局オフセット情報テーブル301を参照して、当該基地局特定情報に対応する基地局オフセット値を読み出して出力し、時刻情報同期部13が、当該基地局オフセット値に基づいてシステム同期信号のタイミングを補正して、放送波から取得した時刻情報を補正されたタイミングで出力することで、GPSの基準時刻に同期した同期時刻情報を生成し、GPS時刻情報変換部14が、当該同期時刻情報が算出される疑似GPS受信信号を生成する同期信号変換装置としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、
前記無線通信システムの信号を受信して、GPS基準時刻に同期したシステム同期信号と、前記信号の送信元である送信元基地局を特定する基地局特定情報を取得する同期信号取得部と、
放送波を受信して、前記放送波から時刻情報を取得する時刻情報取得部と、
前記送信元基地局で生成される前記システム同期信号とGPS基準信号とのずれを基地局オフセット情報とし、前記基地局オフセット情報を基地局特定情報に対応付けた組を複数記憶しており、前記受信した無線通信システムの信号から取得された基地局特定情報に対応する基地局オフセット情報を出力するオフセット制御部と、
前記出力された基地局オフセット情報を用いて、前記システム同期信号のタイミングを補正し、当該タイミングに前記時刻情報を出力することにより、GPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成する時刻情報同期部と、
前記同期時刻情報に基づいて、前記同期時刻情報に一致した時刻を前記基地局で算出可能とするため、複数の衛星の軌道情報及び前記各衛星からの送信時刻に相当する時刻情報を含む疑似GPS受信信号を生成するGPS時刻情報変換部と、
前記疑似GPS受信信号を前記基地局に出力する疑似GPS受信信号送出部と、を備えたことを特徴とする同期信号変換装置。
【請求項2】
オフセット制御部は、無線通信システムの信号から取得した基地局特定情報と、それに対応する基地局オフセット情報とを送信元基地局情報として設定しておき、
新たに受信した無線通信システムの情報から取得した基地局特定情報及びそれに対応する基地局オフセット情報が、前記送信元基地局情報と異なる場合には、前記新たに取得した基地局特定情報及びそれに対応する基地局オフセット情報で、前記送信元基地局情報を更新して設定することを特徴とする請求項1記載の同期信号変換装置。
【請求項3】
オフセット制御部は、無線通信システムの信号から取得した基地局特定情報に対応する基地局オフセット情報を記憶していない場合は、接続する上位装置に前記基地局特定情報に対応する基地局オフセット情報を問い合わせ、前記上位装置から得られた基地局オフセット情報を時刻情報同期部に出力することを特徴とする請求項1又は2記載の同期信号変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムの基地局に取り付けられる同期信号変換装置に係り、特に、GPS信号を受信できない環境であってもGPSに同期したシステムを構築でき、基地局毎に異なるオフセット値を反映させてGPS受信信号に精度よく同期した疑似GPS受信信号を提供し、基地局における処理能力の低下を防ぐことができる同期信号変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、TDD(Time Division Duplex)方式の無線システム(既存の無線通信システム)では、端末と基地局の通信のタイミングをシステム全体で一致させる必要がある。そのため、基地局がGPS(Global Positioning System)の基準時刻に同期した同期信号を生成して、上り/下りの通信のタイミングを制御し、GPSの基準時刻に同期したシステムを実現している。
【0003】
基地局間同期には、GPSを始めとするGNSS(Global Navigation Satellite System)が一般的に用いられる。GNSSは、衛星測位システムの総称であり、UTC(Coordinated Universal Time;協定世界時)に同期し、ネットワークの整合性を容易に確立することができる。
【0004】
[GPS受信機を備えた基地局装置:
図6]
ここで、GPS受信機を備えた基地局装置について
図6を用いて説明する。
図6は、GPS受信機を備えた基地局装置の概略構成を示す説明図である。
図6に示すように、基地局装置20は、GPSアンテナ22と、GPS受信機21とを備えている。
GPSアンテナ22は、GPS衛星からのGPS信号を受信して、GPS受信信号を出力する。
GPS受信機21は、GPSアンテナ21からのGPS受信信号から、UTCで表された基準時刻を抽出し、当該基準時刻に同期(時刻同期)する同期信号を生成する。
そして、従来の基地局装置20は、当該同期信号に従って動作を行うことにより、GPSの基準時刻に同期した通信を行う。
【0005】
ここで、本明細書においては、各GPS衛星(衛星)から送信される信号を「GPS信号」と称し、GPSアンテナで受信した複数の衛星からのGPS信号が重畳された状態の信号を「GPS受信信号」と称するものとする。
つまり、GPS受信信号は、GPS受信機21に入力される信号であり、GPS受信機21では、入力されたGPS受信信号に基づいて、UTCに同期した時刻情報と現在の位置情報とを取得(算出)するようになっている。
【0006】
しかし、GNSSには他の無線信号との干渉問題のほか、屋内、地下、ビル谷間等の不感地帯が存在し、ケーブル配線も大きな弊害となっている。
近年、屋内基地局も数多く設置されてきているが、同期のためにGPSアンテナを屋外に設置しなければならず、そのコストが負担となっている。
また、IoT(Internet on Things)の利用拡大に伴い、GNSSに頼らない基地局間同期手法の需要が高まっている。
【0007】
[無線通信システムのシステム同期信号]
そこで、従来、放送波の時刻情報と、GPSの基準時刻に同期した無線通信システムのシステム同期信号に基づいて、GPSの基準時刻に同期した同期時刻情報を生成して、当該時刻が算出されるような疑似GPS受信信号を生成して基地局装置に出力する同期信号変換装置があった(特許文献1)。
システム同期信号は、例えば、基地局から出力されるLTE信号から取得されるフレーム番号等がある。
【0008】
[基地局のフレームオフセット値]
基地局が出力するLTE信号に含まれるシステム同期信号は、GPS受信信号から抽出される1PPS信号とは一定のずれを持っている場合がある。
これをフレームタイムオフセット値(基地局信号オフセット情報、基地局オフセット値)と称する。
そして、フレームタイムオフセット値は、基地局の種類によって異なる場合がある。
しかし、従来の同期信号変換装置では、システム同期信号のオフセットを固定値として扱って補正していた。
【0009】
[関連技術]
尚、同期信号変換装置の従来技術としては、特開2019-204999号公報「無線選択呼出受信機」(特許文献1)がある。
特許文献1には、上述した同期信号変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の同期信号変換装置では、LTE信号の送信元となる基地局毎に異なる基地局オフセットによって、疑似GPS受信信号の精度が低下して、疑似GPS受信信号の出力先である基地局においてスループットが低下することがあるという問題点があった。
【0012】
尚、特許文献1には、受信したLTE信号から基地局を特定する基地局特定情報を抽出し、当該基地局特定情報に対応して予め記憶された基地局オフセット値を用いてタイミング補正を行って、放送波の時刻情報を当該補正されたタイミングで出力して、疑似GPS受信信号を生成することは記載されていない。
【0013】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、LTE信号から取得したシステム同期信号のタイミングを送信元の基地局に応じて補正して、精度の高い疑似GPS受信信号を生成し、疑似GPS受信信号の受信側装置(例えば基地局装置)のスループット低下を防ぐことができる同期信号変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、無線通信システムの信号を受信して、GPS基準時刻に同期したシステム同期信号と、信号の送信元である送信元基地局を特定する基地局特定情報を取得する同期信号取得部と、放送波を受信して、放送波から時刻情報を取得する時刻情報取得部と、送信元基地局で生成されるシステム同期信号とGPS基準信号とのずれを基地局オフセット情報とし、基地局オフセット情報を基地局特定情報に対応付けた組を複数記憶しており、受信した無線通信システムの信号から取得された基地局特定情報に対応する基地局オフセット情報を出力するオフセット制御部と、出力された基地局オフセット情報を用いて、システム同期信号のタイミングを補正し、当該タイミングに時刻情報を出力することにより、GPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成する時刻情報同期部と、同期時刻情報に基づいて、同期時刻情報に一致した時刻を基地局で算出可能とするため、複数の衛星の軌道情報及び各衛星からの送信時刻に相当する時刻情報を含む疑似GPS受信信号を生成するGPS時刻情報変換部と、疑似GPS受信信号を基地局に出力する疑似GPS受信信号送出部と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、上記同期信号変換装置において、オフセット制御部は、無線通信システムの信号から取得した基地局特定情報と、それに対応する基地局オフセット情報とを送信元基地局情報として設定しておき、新たに受信した無線通信システムの情報から取得した基地局特定情報及びそれに対応する基地局オフセット情報が、送信元基地局情報と異なる場合には、新たに取得した基地局特定情報及びそれに対応する基地局オフセット情報で、送信元基地局情報を更新して設定することを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記同期信号変換装置において、オフセット制御部は、無線通信システムの信号から取得した基地局特定情報に対応する基地局オフセット情報を記憶していない場合は、接続する上位装置に基地局特定情報に対応する基地局オフセット情報を問い合わせ、上位装置から得られた基地局オフセット情報を時刻情報同期部に出力することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、無線通信システムの信号を受信して、GPS基準時刻に同期したシステム同期信号と、信号の送信元である送信元基地局を特定する基地局特定情報を取得する同期信号取得部と、放送波を受信して、放送波から時刻情報を取得する時刻情報取得部と、送信元基地局で生成されるシステム同期信号とGPS基準信号とのずれを基地局オフセット情報とし、基地局オフセット情報を基地局特定情報に対応付けた組を複数記憶しており、受信した無線通信システムの信号から取得された基地局特定情報に対応する基地局オフセット情報を出力するオフセット制御部と、出力された基地局オフセット情報を用いて、システム同期信号のタイミングを補正し、当該タイミングに時刻情報を出力することにより、GPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成する時刻情報同期部と、同期時刻情報に基づいて、同期時刻情報に一致した時刻を基地局で算出可能とするため、複数の衛星の軌道情報及び各衛星からの送信時刻に相当する時刻情報を含む疑似GPS受信信号を生成するGPS時刻情報変換部と、疑似GPS受信信号を基地局に出力する疑似GPS受信信号送出部と、を備えた同期信号変換装置としているので、実際に受信した無線通信システムの信号の送信元基地局に応じてオフセットを補正して、GPSの基準時刻に精度よく同期した疑似GPS受信信号を生成して出力でき、出力先の基地局のスループット低下を防ぐことができる効果がある。
【0018】
また、本発明によれば、上記同期信号変換装置において、オフセット制御部は、無線通信システムの信号から取得した基地局特定情報に対応する基地局オフセット情報を記憶していない場合は、接続する上位装置に基地局特定情報に対応する基地局オフセット情報を問い合わせ、上位装置から得られた基地局オフセット情報を時刻情報同期部に出力する同期信号変換装置としているので、これまでに受信したことのない送信元基地局から無線通信システムの信号を受信した場合でも、上位装置から対応するオフセット情報を取得して、タイミングの補正を行うことができ、様々な基地局に適用して高精度の疑似GPS受信信号を生成できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本同期信号変換装置の構成を示す説明図である。
【
図4】基地局オフセット情報テーブルの模式説明図である。
【
図5】オフセット制御部30の処理を示すフローチャートである。
【
図6】GPS受信機を備えた基地局装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る同期信号変換装置(本同期信号変換装置)は、放送波からの時刻情報と無線通信システムのLTE信号に含まれるシステム同期信号とを用いて、GPSに同期した時刻情報が算出される疑似GPS受信信号を生成して出力するものであり、LTE信号の送信元となる基地局(送信元基地局)を識別する基地局特定情報と、GPS信号のタイミングとのずれを示す基地局オフセット値とを対応付けた組を複数記憶しておき、受信したLTE信号から基地局特定情報を抽出し、当該基地局特定情報に対応して記憶された基地局オフセット値を用いてシステム同期信号のタイミングを補正し、補正されたタイミングで放送波からの時刻情報を出力し、当該時刻情報が算出されるよう疑似GPS受信信号を生成して出力するものであり、LTE信号の送信元となる基地局が変わっても、新たな送信元基地局の基地局オフセット値でタイミングを補正することができ、常に精度良くGPSの基準時刻に同期した疑似GPS受信信号を生成して、受信側装置でのスループット低下を防ぐことができるものである。
【0021】
また、本同期信号変換装置は、受信したLTE信号から抽出した基地局特定情報が、内部に記憶されていない場合、上位装置に問い合わせを行って、当該基地局特定情報に対応する基地局オフセット値を取得し、当該基地局オフセット値を記憶すると共に、当該基地局オフセット値を用いてタイミングを補正するものであり、種々の送信元基地局に対応して高精度のGPS受信信号を生成することができるものである。
【0022】
[本同期信号変換装置の構成:
図1]
本同期信号変換装置の構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本同期信号変換装置の構成を示す説明図である。
本同期信号変換装置の具体的な構成を説明する前に、概要を説明する。
本同期信号変換装置1は、
図1に示すように、LTE局3からのLTE信号と、放送中継局4からの放送波とに基づいて、GPSの基準時刻に同期した時刻情報を生成し、更に受信側の装置(ここでは基地局2)に当該GPSの基準時刻に同期した時刻情報を取得させるための情報を含む疑似GPS受信信号を生成して、基地局装置2に出力するものである。
【0023】
尚、LTE局3からのLTE信号は、任意の基地局から送信されたものであり、通常、受信レベルが最大のLTE信号を利用するため、LTE信号の送信元は、疑似GPS受信信号の出力先の基地局2である。
但し、送信元基地局が出力先の基地局2とは異なる別の装置(本同期信号変換装置に接続されていない基地局)であっても構わないため、ここでは本同期信号変換装置1が受信するLTE信号を送信する装置を「送信元基地局」と称するものとする。
【0024】
基地局2は、GPS受信機21を備えているが、GPSアンテナは設けられていない。そして、GPS受信機21が、GPS受信信号の代わりに本同期信号変換装置1からの疑似GPS受信信号を入力して、GPSの基準時刻に同期した時刻情報を取得し、それに基づいて同期信号を生成する。
【0025】
ここで、本同期信号変換装置で生成される疑似GPS受信信号は、接続された基地局2のGPS受信機21が、UTCに同期した正確な時刻情報と正しい位置情報とを取得できるように生成された信号であり、複数の衛星からのGPS信号を受信した場合と同様に、複数の衛星に対応する軌道情報や各衛星の送信時刻に相当する時刻情報を含む信号である。
つまり、基地局2のGPS受信機21は、疑似GPS受信信号が入力されると、複数の衛星からのGPS信号が重畳されて入力されたものとして認識し、本来のGPS受信信号を入力した場合と同じ動作を行うものである。
尚、ここでは「GPSの基準時刻に同期した時刻情報」は「UTCに同期した時刻情報」と同義として用いる。
【0026】
図1に示すように、本同期信号変換装置1は、LTE信号受信アンテナ16aと、放送波受信アンテナ16bと、同期信号取得部11と、時刻情報取得部12と、時刻情報同期部13と、GPS時刻情報変換部14と、疑似GPS受信信号送出部15と、本同期信号変換装置の特徴部分であるオフセット制御部30とを備えている。
【0027】
本同期信号変換装置1の各部について説明する。
LTE信号受信アンテナ16aは、LTEの無線通信システム(移動体通信システム)の基地局(送信元基地局)から送信され、LTE局3によって中継されたLTE信号を受信する。
尚、ここではLTEを例として説明するが、LTEに限らず、LTE-Advanced又は5G(第5世代通信方式)のように、システム同期信号に時刻情報を含まないシステムに適用可能である。
放送波受信アンテナ16bは、放送中継局4からの放送波を受信するアンテナである。
【0028】
また、ここでは、無線通信システム用のアンテナと放送波用のアンテナとを独立して設けているが、共用として、1つの受信アンテナでLTE信号と放送波の両方を受信するようにして、同期信号取得部11、時刻情報取得部12に接続するよう構成してもよい。
【0029】
同期信号取得部11は、受信したLTE信号を復調し、報知情報から、システム同期信号を抽出して、時刻情報同期部13に出力する。システム同期信号としては、例えば特定のフレーム番号を示す信号等がある。システム同期信号は、GPSの基準時刻のタイミングと同期している。
LTE信号受信アンテナ16aでは、複数の送信元基地局からのLTE信号を受信することもあるが、同期信号取得部11は、その中で、受信レベルが最大のLTE信号を復調する。
【0030】
また、本同期信号変換装置1の同期信号取得部11は、復調した情報から、LTE信号の送信元基地局を識別する基地局特定情報を取得して、オフセット制御部30に出力する。
上述したように、送信元基地局からのシステム同期信号には、送信元基地局の種類毎に、GPS信号に含まれる1PPS信号とのずれがあり、当該ずれを示すフレームタイムオフセット値(基地局オフセット値)は基地局毎に異なっている。
【0031】
本同期信号変換装置1では、基地局オフセットを送信元基地局に応じて補正することにより、GPS信号に同期した精度の高い疑似GPS受信信号を生成するものである。
基地局特定情報を用いた動作については後述する。
【0032】
時刻情報取得部12は、受信した放送波(地上デジタル放送波)に含まれる時刻情報を抽出する。放送波に含まれる時刻情報は、クロック精度の違いや電波伝搬による受信タイミングのゆらぎによる誤差を含んでおり、GPSの基準時刻とは同期していない。
【0033】
オフセット制御部30は、本同期信号変換装置1の特徴部部分であり、同期信号取得部11からの基地局特定情報に基づいて、LTE信号の送信元基地局に応じた基地局オフセット値を時刻情報同期部13に出力する。
具体的には、オフセット制御部30は、種々の送信元基地局の基地局特定情報と基地局オフセット値を対応付けて記憶しており、入力されたLTE信号から抽出した基地局特定情報に対応する基地局オフセット値を出力する。
尚、請求項に記載した基地局オフセット情報は、基地局オフセット値に相当している。
【0034】
更にまた、オフセット制御部30は、受信したLTE信号から取得した基地局特定情報が内部に記憶されていない場合には、上位装置5に当該基地局特定情報に対応する基地局オフセット値の問い合わせを行う。
オフセット制御部30の構成及び動作については後述する。
【0035】
時刻情報同期部13は、同期信号取得部11からのシステム同期情報と、時刻情報取得部12からの時刻情報とに基づいて時刻情報を補正して、GPSの基準時刻に同期した時刻情報(同期時刻情報)を生成する。
その際に、時刻情報同期部13は、オフセット制御部30から入力された基地局オフセット値を用いてシステム同期情報のタイミングを補正する。
時刻情報同期部13の構成及び動作については後述する。
【0036】
GPS時刻情報変換部14は、時刻情報同期部13から入力された同期時刻情報に基づいて、疑似GPS受信信号を生成する。
具体的には、GPS時刻情報変換部14では、同期時刻情報に対応するよう、複数の衛星からのGPS信号を疑似的に算出し、あたかも複数のGPS信号が重なったようなGPS受信信号(疑似GPS受信信号)を生成する。
【0037】
上述したように、疑似GPS受信信号には、受信側装置(ここでは基地局2)で当該同期時刻情報が算出されるように生成された、複数の衛星の軌道情報及び各衛星からの送信時刻に相当する時刻情報が含まれており、基地局2のGPS受信機21は、受信した疑似GPS受信信号に基づいて同期時刻情報と同一の時刻情報を算出して同期信号を生成すると共に、位置を算出することが可能となる。
【0038】
尚、疑似GPS受信信号は、GPS受信機のテストに用いられるGPSシミュレータにおいて生成される信号と同様であり、例えば、キーサイトテクノロジー合同会社,2015年1月6日発行,「Keysight Technologies GPSレシーバ・テスト」に記載されている。
【0039】
疑似GPS受信信号送出部15は、GPS時刻情報変換部14から出力された疑似GPS受信信号を、接続する基地局2に出力する。
【0040】
[オフセット制御部30の構成:
図2]
次に、本同期信号変換装置の特徴部分であるオフセット制御部30の構成について
図2を用いて説明する。
図2は、オフセット制御部30の概略構成図である。
オフセット制御部30は、本同期信号変換装置の特徴部分であり、LTE信号の送信元である送信元基地局の種類毎に異なる基地局オフセットを補正するため、基地局オフセット値を時刻情報同期部13の同期補正部31(後述する)に出力するものである。
【0041】
図2に示すように、オフセット制御部30は、送信元基地局毎に異なるフレームタイムオフセット値(基地局オフセット値)を、送信元基地局を特定する基地局特定情報に対応付けて複数記憶した基地局オフセット情報テーブル301を備えている。
【0042】
基地局オフセット情報テーブル301には、予め当該無線通信システムに適用されることが予想される(送信元基地局となることが予想される)複数種類の基地局について、基地局の種類を識別するための基地局特定情報と、基地局オフセット値とが対応付けられて記憶されている。
【0043】
そして、オフセット制御部30は、同期信号取得部11で取得された基地局特定情報が入力されると、基地局オフセット情報テーブル301を参照して、対応する基地局オフセット値を読み出して、同期補正部31に出力する。
時刻情報同期部13への基地局オフセット値の出力は、基地局特定情報が入力される度に行ってもよいし、基地局オフセット値が更新された場合に行ってもよい。
【0044】
また、オフセット制御部30は、現在受信しているLTE信号の送信元基地局について、基地局特定情報と基地局オフセット値とを送信元基地局情報302として記憶している。
そして、オフセット制御部30は、受信LTE信号から取得された基地局特定情報を、保持している送信元基地局情報302と比較して、送信元基地局に変化がないかどうか、基地局特定情報を監視する。
これにより、送信元基地局が変わった場合に、直ちに適切な基地局オフセット値を同期補正部31に出力できるものである。
【0045】
更に、オフセット制御部30は、入力された基地局特定情報が、基地局オフセット情報テーブル301に記憶されていない場合には、上位装置5に、当該基地局特定情報を付して、基地局オフセット値の問い合わせを行う。
【0046】
上位装置5から問い合わせに対して基地局オフセット値の応答があると、オフセット制御部30は、当該基地局オフセット値を同期補正部31に出力すると共に、当該基地局特定情報と基地局オフセット値を、新たに基地局オフセット情報テーブル301に追加する。
これにより、事前に記憶していない基地局が送信元基地局となった場合でも、上位装置5から適正な基地局オフセット値を取得して、タイミング補正を行うことができるものである。
尚、オフセット制御部30は、時刻情報同期部13の一部として、一体に構成してもよい。
【0047】
[時刻情報同期部13の構成:
図3]
次に、本同期信号変換装置の時刻情報同期部13の構成について
図3を用いて説明する。
図3は、時刻情報同期部の構成ブロック図である。
図3に示すように、本同期信号変換装置の時刻情報同期部13は、同期補正部31と、時刻情報補正部32と、同期時刻生成部33とを備えている。
時刻情報同期部13は、基本的には内部クロックに基づいて自走動作を行うものであり、同期時刻生成部33が、時刻情報補正部32からの時刻情報を、同期補正部31からのタイミングに従って出力することで、GPS基準時刻に同期した時刻情報(同期時刻情報)を生成するようになっている。
【0048】
そして、時刻情報同期部13では、同期信号取得部11からシステム同期信号が入力された場合に、同期タイミング補正部311でタイミングの補正を行い、また、時刻情報取得部12から放送波の時刻情報が入力された場合には、時刻補正部321で内部の時刻情報を補正する。
同期タイミング補正部311では、オフセット制御部30からの指示に従って、送信元基地局に応じた基地局オフセットの補正を行う。
【0049】
時刻情報同期部13が自走動作を行うことにより、送信元基地局からの電波や、放送中継局からの放送波が十分届かない場合や、メンテナンス等で電波の送出を休止する場合でも、時刻情報同期部13からは途切れることなく同期時刻情報を出力できるようにしている。
【0050】
時刻情報同期部13の各部について具体的に説明する。
同期補正部31は、同期タイミング補正部311と、同期カウンタ312とを備えている。
同期タイミング補正部311は、同期信号取得部11から入力される1PPS(Pulse Per Second)のシステム同期信号に基づいて、同期カウンタ312に対してタイミング補正を行うものであり、システム同期信号が入力された場合に同期カウンタ312にタイミングを指示する。
【0051】
具体的には、同期タイミング補正部311は、システム同期信号が正常に受信できているかどうかを判断し、正常に受信できている場合に同期カウンタ312のタイミングをシステム同期信号に合わせて更新する。
その際、同期タイミング補正部311は、オフセット制御部30から入力される基地局オフセット値に基づいて、オフセットを補正したタイミング指示を行う。これにより、従来のように固定値でオフセット補正を行うのに比べて、送信元基地局に応じたオフセット値で正確に補正を行うことができ、精度の高い疑似GPS受信信号の生成を可能とするものである。
【0052】
同期カウンタ312は、VCXO(Voltage Controlled Crystal Oscillator;電圧制御水晶発振器)やTCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator;温度補償水晶発振器)等を備えた周波数生成回路であり、タイミングをカウントする自走信号(自走クロック)を生成する。
ここでは、同期カウンタ312は、自走クロックに基づいて、1秒毎に同期タイミング(タイミング信号)を出力する。また、同期カウンタ312は、タイミング補正部311からのタイミング指示が入力されると、当該タイミングを起点として1秒毎の同期タイミングを生成する。
【0053】
これにより、システム同期信号がGPSの基準時刻に対して送信元基地局に由来するオフセットを持っていても、タイミングを補正でき、また、自走状態が長引いて同期カウンタ312で生成する同期タイミングがずれた場合にも、その補正を行うことができるものである。
つまり、システム同期信号が正常に入力されている場合には、同期カウンタ312からはGPSの基準時刻に同期した1PPSのタイミング信号が出力される。
【0054】
時刻情報補正部32は、時刻補正部321と、時刻カウンタ322とを備えている。
時刻補正部321は、時刻情報取得部12より、放送波から抽出した事項情報が正常に受信できているかどうかを判断し、正常に受信できている場合には、時刻カウンタ322のカウンタ値(内部時刻情報)を取得した時刻情報に更新する。
【0055】
時刻カウンタ322は、VCXOやTCXOを備えた周波数生成回路であり、自走クロックを生成して、自立した時刻情報(内部時刻情報)を生成し、内部時刻情報に特定時間を加算した補正時刻情報を出力する。特定時間については後述する。
【0056】
また、時刻カウンタ322は、時刻補正部321から時刻情報更新の指示が入力されると、内部時刻情報を入力された時刻情報(放送波から取得した時刻情報)で更新する。
これにより、放送波から取得した時刻情報が正常に入力されている場合には、時刻カウンタ322からは、放送波の時刻情報に特定時間が加算された補正時刻情報が出力される。
【0057】
ここで、時刻カウンタ322で加算する特定時間について説明する。
特定時間は、内部時刻情報からGPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成する処理を行うために加算する時間である。
具体的には、特定時間は、放送波から抽出した時刻情報とGPSの基準時刻とのずれとして想定される最大の時間より大きい時間としており、ここでは、0.5秒としている。
尚、自走時には内部時刻情報が放送波の時刻情報より若干遅れたり早まったりすることはあるものの、放送波の時刻情報を正常に受信すれば、放送波の時刻情報に合わせて内部時刻情報が更新されるため、自走によるずれを考慮する必要はない。
【0058】
同期時刻生成部33は、時刻情報補正部32から入力される補正時刻情報を保持すると共に、同期補正部31からGPS基準時刻に同期した1PPSのタイミング信号が入力されると、保持している補正時刻情報を当該タイミングに従って出力する。
【0059】
つまり、同期時刻生成部33は、特定時間を加算して実際のGPS基準時刻よりも進んだ時刻とした補正時刻情報を、同期タイミング補正部311で補正されたタイミングに従って出力する。
これにより、同期時刻生成部33からはGPS基準時刻に同期した時刻情報(同期時刻情報)が1秒毎に出力されるものである。
同期時刻情報の生成方法は、特許文献1に記載された方法と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0060】
[基地局オフセット情報テーブル:
図4]
オフセット制御部30における基地局オフセット情報テーブル301について
図4を用いて説明する。
図4は、基地局オフセット情報テーブルの模式説明図である。
図4に示すように、基地局オフセット情報テーブル301は、複数種類の基地局(送信元基地局)について、予め基地局特定情報と、当該基地局に固有の基地局オフセット値とを対応付けて記憶している。基地局特定情報は、例えば、基地局装置の機種番号等である。
【0061】
通常は、送信元基地局と疑似GPS受信信号の出力先の基地局2とは同一の装置であるため、基地局オフセット情報テーブル301には、当該同期信号変換装置1に接続されることが予想される基地局2の情報を複数記憶(登録)しておく。
【0062】
また、オフセット制御部30は、基地局オフセット情報テーブル301に記憶されていない基地局特定情報を受信した場合には、上位装置5に問い合わせを行い、得られた基地局オフセット値と共に基地局オフセット情報テーブル301に追加登録する。
これにより、未登録の基地局からLTE信号を受信した場合でも、1回問い合わせを行えば、基地局オフセット情報テーブル301に登録されるため、以降の問い合わせは不要となるものである。
【0063】
[オフセット制御部30の処理:
図5]
次に、オフセット制御部30における基地局オフセット値の制御について
図5を用いて説明する。
図5は、オフセット制御部30の処理を示すフローチャートである。
本同期信号変換装置1では、LTE信号受信アンテナ16aでLTE信号を受信すると、同期信号取得部11が復調を行って、システム同期信号を時刻情報同期部13の同期タイミング補正部311に出力すると共に、基地局特定情報をオフセット制御部30に出力する。
【0064】
図5に示すように、オフセット制御部30は、同期信号取得部11から基地局特定情報が入力されると(104)、それまでLTE信号を受信していた送信元基地局の情報である送信元基地局情報の基地局特定情報と、入力された基地局特定情報とが一致するかどうかを判断する(106)。
【0065】
一致する場合には(Yesの場合)、オフセット制御部30は、現在設定されている送信元基地局に変化がないとして、処理130に移行して、送信元基地局情報302に設定されている基地局オフセット値を出力する(130)。
【0066】
また、処理106において、送信元基地局情報と一致しなかった場合には(Noの場合)、オフセット制御部30は、入力された基地局特定情報が、基地局オフセット情報テーブルに登録されているかどうかを判断する(108)。
【0067】
処理106で、入力された基地局特定情報が基地局オフセット情報テーブル301に登録されている場合(Yesの場合)、オフセット制御部30は、入力された基地局特定情報を上位装置5に通知して、LTE信号の送信元基地局が変わったことを報告する(110)。
そして、オフセット制御部30は、送信元基地局情報302を、今回受信した基地局特定情報及び対応する基地局オフセット値で更新し(112)、処理130に移行して基地局オフセット値を出力する。
【0068】
つまり、オフセット制御部30は、送信元基地局に変化があった場合には、内部の送信元基地局情報302を更新するだけでなく、上位装置5にも通知することで、システム全体の管理に利用可能としている。
【0069】
また、処理108において、入力された基地局特定情報が基地局オフセット情報テーブルに登録されていなかった場合(Noの場合)、オフセット制御部30は、当該基地局特定情報を付して、上位装置5に基地局オフセット値を問い合わせる(120)。
【0070】
そして、上位装置5から基地局オフセット値を受信すると、オフセット制御部30は、基地局特定情報と基地局オフセット値とを対応付けて、基地局オフセット情報テーブル301に追加し(122)、処理112に移行し、送信元基地局情報302の更新、及び基地局オフセット値の出力を行う。
このようにして、オフセット制御部30における処理が行われる。
【0071】
[実施の形態の効果]
本同期信号変換装置によれば、放送波からの時刻情報と無線通信システムのLTE信号に含まれるシステム同期信号とに基づいて、GPSに同期した時刻情報が算出される疑似GPS受信信号を生成して出力するものであり、同期信号取得部11が、LTE信号から、システム同期信号と、送信元基地局を識別する基地局特定情報を抽出し、オフセット制御部30が、予め記憶された基地局オフセット情報テーブル301を参照して、当該基地局特定情報に対応する基地局オフセット値を読み出して出力し、時刻情報同期部13が、当該基地局オフセット値に基づいてシステム同期信号のタイミングを補正して、補正されたタイミングで放送波時刻情報を出力することで、GPSの基準時刻に同期した同期時刻情報を生成し、GPS時刻情報変換部14が、当該同期時刻情報が算出される疑似GPS受信信号を生成するようにしているので、送信元基地局によって異なるフレームタイムオフセットを、実際のLTE信号の送信元基地局に応じて補正して、精度良くGPS基準時刻に同期した疑似GPS受信信号を生成して、受信側装置で正確な同期信号を生成可能とし、スループット低下を防ぐことができる効果がある。
【0072】
また、本同期信号変換装置によれば、LTE信号から取得した基地局特定情報が、基地局オフセット情報テーブル301に登録されていない場合には、オフセット制御部30は、上位装置5に問い合わせを行い、基地局オフセット値を受信すると、当該基地局特定情報に対応付けて基地局オフセット情報テーブル301に記憶し、時刻情報同期部13に基地局オフセット値を出力するようにしているので、未登録の基地局からのLTE信号を受信してシステム同期信号を利用した場合でも、当該送信元基地局に応じてオフセットを補正することができ、常に精度良くGPS基準時刻に同期した疑似GPS受信信号を生成することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、LTE信号から取得したシステム同期信号のタイミングを送信元の基地局に応じて補正して、精度の高い疑似GPS受信信号を生成し、疑似GPS受信信号の受信側装置(例えば基地局装置)のスループット低下を防ぐことができる同期信号変換装置に適している。
【符号の説明】
【0074】
1…同期信号変換装置、 2,20…基地局、 3…LTE局、 4…放送中継局、 5…上位装置、 11…同期信号取得部、 12…時刻情報取得部、 13…時刻情報同期部、 14…GPS時刻情報変換部、 15…疑似GPS受信信号送出部、 16…受信アンテナ、 21…GPS受信機、 22…GPS受信アンテナ、 30…オフセット制御部、 31…同期補正部、 32…時刻情報補正部、 33…同期時刻生成部、 301…基地局オフセット情報テーブル、 302…送信元基地局情報、 311…タイミング補正部、 312…同期カウンタ、 321…時刻補正部、 322…時刻カウンタ