IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マックの特許一覧

<>
  • 特開-エアロゾル中の微粒子の除去方法 図1
  • 特開-エアロゾル中の微粒子の除去方法 図2
  • 特開-エアロゾル中の微粒子の除去方法 図3
  • 特開-エアロゾル中の微粒子の除去方法 図4
  • 特開-エアロゾル中の微粒子の除去方法 図5
  • 特開-エアロゾル中の微粒子の除去方法 図6
  • 特開-エアロゾル中の微粒子の除去方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044045
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】エアロゾル中の微粒子の除去方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 51/00 20060101AFI20230323BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230323BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B01D51/00 B
F25B1/00 331E
F25B1/00 101Z
A61L9/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151874
(22)【出願日】2021-09-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】501188720
【氏名又は名称】株式会社マック
(74)【代理人】
【識別番号】100081570
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰芳
(72)【発明者】
【氏名】松下 紘晃
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180AA17
4C180BB05
4C180BB06
4C180BB11
4C180DD20
4C180EA52X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大気を連続相とするエアロゾル中に分散相として存在しているたばこの煙や臭い分子をはじめ、極めて微細なサイズの微粒子や微生物の除去方法を提供する。
【解決手段】大気を連続相とするエアロゾル中に分散相として浮遊している微粒子を前記大気中に共存している水蒸気(水分分子)とともに前記微粒子の凍結温度よりも高温(擬低温)でコールドパネルの表面に凍結捕集して、前記微粒子を分子式H2Oで表される構造の水分のフレームワークに抱き込んだハイドレートを形成させ、そのハイドレートを前記コールドパネルの+60℃~80℃の加熱によって、水分のフレームワークに抱き込んだ微粒子の分子を分離させ、水分分子は空気中に蒸発放出させ、残りはコールドパネルに付着残存させることとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気を連続相とするエアロゾル中に分散相として浮遊している微粒子を前記大気中に共存している水蒸気(水分分子)とともに前記微粒子の凍結温度よりも高温(擬低温)でコールドパネルの表面に凍結捕集して、前記微粒子を分子式H2Oで表される構造の水分のフレームワークに抱き込んだハイドレートを形成させ、そのハイドレートを前記コールドパネルの+60℃~80℃の加熱によって、水分のフレームワークに抱き込んだ微粒子の分子を分離させ、水分分子は空気中に蒸発放出させ、残りはコールドパネルに付着残存させることを特徴とするエアロゾル中の微粒子の除去方向。
【請求項2】
前記したコールドパネルは冷凍サイクルにおける蒸発器に相当された配備としていることを特徴とする請求項1に記載のエアロゾル中の微粒子の除去方法。
【請求項3】
前記した冷凍サイクルには、内部が中間プレートで仕切られ、一次側と、その一次側を通過した冷媒が流入される二次側とで構成された熱交換器を組み込み、高温の冷媒を一次側に通過させて、この一次側を通過する時に二次側での蒸発潜熱となり、二次側蒸発潜熱は一次側冷媒の冷却凝縮熱源とすることを特徴とする請求項2に記載のエアロゾル中の微粒子の除去方法。
【請求項4】
前記したコールドパネルの加熱は、冷凍サイクルの圧縮機からのホットガスを、切り替え弁によって、直接的にコールドパネルへ送ることによって得られることを特徴とする請求項1から3のうち1項に記載のエアロゾル中の微粒子の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアロゾル中の微粒子、それも主としてたばこの煙や臭いを除去する方法に関し、それも低コストで、省エネルギーで実行することのできるエアロゾル中の微粒子の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中には、その大気を連続相として、種々の粒子が分散相として存在し、水分として水蒸気も共存している。
【0003】
前記分散相のうちのたばこの煙には、たばこを吸う人が直接吸い込む主流煙と、点火部から立ち上る副流煙があり、有害成分は不完全燃焼時により多く発生するので、副流煙は主流煙よりも一酸化炭素(CO)が4.7倍、ピリジンアルカロイドの1つであるニコチン(C10142)は2.8倍、そしてアンモニア(NH3)は46倍にも達する。
【0004】
また、たばこには独特の臭いがあり、このたばこの臭いの主な原因物質は3-エテニルピリジン(C77N)であり、この3-エテニルピリジンが埃等の小さな粒子に付着して鼻孔に入ることでたばこ臭として感じられる。
【0005】
従来、このたばこの煙やたばこ臭を除去するための主流はフィルターの使用で、このフィルターは多くの場合、微細なエアの通行孔が形成され、通行孔による濾過作用がなされている。
【0006】
しかしながら、たばこの煙や臭い分子は、人の毛髪の直径が約70μmであることと比較しても極めて微細な約0.001~0.01μmであり、通常のフィルターでは濾過できず、空気清浄機等の使用ではとても目的を達成することはできない。
【0007】
加えて、エアロゾル中の分子は約1700Km/hの速度で挙動しており、特にブラウン運動も作用して、予測のつかない移動、飛散を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3710093号公報
【特許文献2】特許第4108656号公報
【特許文献3】特許第6666700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、従来、大気を連続相とするエアロゾル中に分散相として存在しているたばこの煙や臭い分子をはじめ、極めて微細なサイズの微粒子や微生物を除去するについて、細孔性材料によるフィルターの使用のほかはコストパフォーマンスが良好なものは知られておらず、また、フィルターの使用も極微細な粒子は細孔を通過してしまい、目的を達成することができなかったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した問題点を解決するために、本発明に係るエアロゾル中の微粒子の除去方法は、大気を連続相とするエアロゾル中に分散相として浮遊している微粒子を前記大気中に共存している水蒸気(水分分子)とともに前記微粒子の凍結温度よりも高温(擬低温)でコールドパネルの表面に凍結捕集して、前記微粒子を分子式H2Oで表される構造の水分のフレームワークに抱き込んだハイドレートを形成させ、そのハイドレートを前記コールドパネルの+60℃~80℃の加熱によって、水分のフレームワークに抱き込んだ微粒子の分子を分離させ、水分分子は空気中に蒸発放出させ、残りはコールドパネルに付着残存させることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係るエアロゾル中の微粒子の除去方法は、前記したコールドパネルは冷凍サイクルにおける蒸発器に相当された配備としていることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明に係るエアロゾル中の微粒子の除去方法は、前記した冷凍サイクルには、内部が中間プレートで仕切られ、一次側と、その一次側を通過した冷媒が流入される二次側とで構成された熱交換器を組み込み、高温の冷媒を一次側に通過させて、この一次側を通過する時に二次側での蒸発潜熱となり、二次側蒸発潜熱は一次側冷媒の冷却凝縮熱源とすることを特徴としている。
【0013】
そして、本発明に係るエアロゾル中の微粒子の除去方法は、前記したコールドパネルの加熱は、冷凍サイクルの圧縮機からのホットガスを、切り替え弁によって、直接的にコールドパネルへ送ることによって得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るエアロゾル中の微粒子の除去方法は、上記のように構成されている。そのため、冷凍サイクルを利用して、蒸発器に相応するコールドパネルの表面で、大気を連続相として存在する分散相としてのたばこの煙や臭い分子等の微粒子を水蒸気とともに霜として凍結捕集し、それにホットガスによる高温加熱で微粒子の分子を分離させ、水分は大気中に蒸発放出し、残り成分をコールドパネルの表面に付着捕集することができ、非常に低廉で、かつ、省エネルギーで済むものとなっている。格別に沸点の相違を考慮したり、付着のための細孔性材料を用意する必要性もなくなる。
【0015】
上記した方法の実現は、出願人が特許第3710093号として権利を有する「ホットガスデフロスト方式」を用いて冷凍されるコールドパネルに、圧縮機からの吐出高温ガスを導入して安定した高温(+60℃~80℃)に加熱することができ、この加熱によってナノ界面上で水のフレームワーク内に閉じ込めた微粒子を擬高圧にすることが可能である。
【0016】
ここで、低沸点冷媒を混合させた非共沸冷媒を使用する際は、冷媒擬圧縮圧力が高圧となって安定運転に支障をきたすことがあるが、対策としては、出願人が特許第4108656号として権利を有する「非共沸冷媒による冷凍方法」のシステムを応用して高温冷媒ガスを安定供給させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を実施するための冷媒の回路図である。
図2】エアロゾル中の微粒子を、一酸化炭素を例として、コールドパネルへの付着、分離、捕集のプロセスを示す図である。
図3】水分分子への微粒子の付着状態を示す図である。
図4】水のフレームワークに抱え込まれる微粒子の付着状態を、一酸化炭素を例として示す図である。
図5】微粒子を、炭素分子を例として示す残存状態を示す図である。
図6】一般的なヒートポンプ冷暖房機の冷房状態を示す図である。
図7】同じく暖房状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面として示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。
【実施例0019】
次に、本発明の好ましい実施の一例を図面を参照して説明する。先立って、一般的なヒートポンプ冷暖房機の冷媒回路の概略を図6図7によって説明する。この一般的な冷凍回路は圧縮冷凍機1からの吐出冷媒を四方切替え弁2によって冷房用と暖房用に切り替える。図6図7にあって矢印は冷媒の流れを示している。冷房の場合、冷媒は屋外の凝縮器3を通過し、外気中に温風を出し、この冷媒は室内側の膨張弁4を通って蒸発器5から冷風を室内に出し、圧縮冷媒機1へ戻る循環回路となる。
【0020】
暖房の場合は逆に、冷媒は、まず室内の蒸発器5を凝縮器5として作用させて温風を出し、室内側の膨張弁4は通過させずに、屋外側の膨張弁4aを通過させて屋外の凝縮器3を蒸発器3として作用させ冷風を外気中に出し、圧縮冷凍機1へ戻る。
【0021】
米国ガルフ&ウェスタン・インダストリーズ社特許取得済(特許期限切れによる失効)の「自動冷凍カスケード方式」の蒸気圧縮式冷凍機により極低温の現出を行う。該技術は日本国内でも数社が製品化し上梓されている。パネルの加熱は極低温のコールドパネルに直接冷凍機吐出冷媒を導入させパネルを加熱しパネルに凍結した霜を融解除去するホットガスデフロスト方式で行うがこれも既存技術である。該回路に弊社特許取得済の特許第3710093「ホットガスデフロスト」システムを組み込み、冷凍サイクル必須の圧縮・凝縮・膨張・蒸発機能を備えたシステムとなり、安定したサイクルシステムとなる。前記した「自動冷凍カスケード方式」は低沸点高圧の混合冷媒を使用するため冷媒凝縮圧力が高圧になり安定運転に支障をきたすことがあるが、対策として弊社特許取得済の「非共沸冷媒による冷凍方法」第4108656のシステムにて高圧冷媒ガスが安全循環して安定した冷凍サイクルが行なえる。
【0022】
本発明に係る一酸化炭素の除去方法を実施する冷媒の回路は図1として示しており、圧縮冷凍機10から吐出された冷媒は、まず、凝縮器11に導入される。この際に、凝縮器11は回路外の冷却水で冷却されることが望ましい。
【0023】
凝縮器11を通過した冷媒は、一次カスケードコンデンサ12へ導入され、その一次カスケードコンデンサ12を通過した冷媒は一次気液分離器13へ導入され、大概的に、気体と液体とに分離される。ここで、一次カスケードコンデンサ12は、後述する二次、三次、四次のカスケードコンデンサと同様に、中央に中間プレートを備えて、同一容量の一次側と二次側を形成している。後述するように、二次側にはコールドパネルを冷却した後の低温冷媒が復路として通過し、コールドパネルへ向かう冷媒を冷却し、戻る二次側の冷媒は徐々に加温されていく。
【0024】
一次気液分離器13で大概的に分離された気体は膨張弁15を通過して減圧されて後述する冷媒の戻り回路へ導入され、液体はそのまま二次カスケードコンデンサ14へ導入され、再び前記した一次カスケードコンデンサ12における同様の作用を行ない、順次、段階的に冷媒温度を低下させていく。
【0025】
この冷媒を順次段階的に冷却させていく工程は、この後、二次気液分離器16、膨張弁18、そして三次カスケードコンデンサ17にても行われ、次いで、三次気液分離器19、膨張弁20を介し、四次カスケードコンデンサ21を通り、最終的な膨張弁22で減圧されコールドパネル23へ供給される。尚、本実施例ではカスケードコンデンサを四つ使用することとしているが、この数に限定されるものではない。
【0026】
コールドパネル23は金属製の外表面を有しているもので、複数枚が適宜間隔を隔てて平行状態で設置され、冷媒配管は分岐されて、各コールドパネル23に冷却された冷媒を供給する構成となっており、-110℃~-140℃の低温に表面が冷却される。そして、このコールドパネル23、23‥の外表面に、一酸化炭素をはじめ、たばこの煙分子、たばこ臭の分子を共存した水蒸気とともに凍結捕集(霜)される。この動作は分子の大気中のスピードによるもので吸引等の機械的システムは不要となる。
【0027】
大気エアロゾル中に浮遊している分子はその分子同士がぶつかり合って、熱エネルギーの大きい分子に運動エネルギーを吸収され、小さい分子は大きい分子(水分分子)に付着状態となる。分子の動くスピードは前述したとおりで飛散しており、コールドパネル23と当接した際に、分子の有する運動エネルギーがコールドパネル23によって冷却消耗され、各分子は飛散することなく、コールドパネル表面に固着される。この固着の状態は水のフレームワーク(H2O)に各分子が閉じ込まれた(抱え込まれた)状態(ハイドレード)となる。
【0028】
このコールドパネル23、23‥を冷却している冷媒は導入の際と逆方向に、四次カスケードコンデンサ21から順に一次カスケードコンデンサへ戻り、最終的に圧縮冷凍機10へ流入する。この戻りの際に、各カスケードコンデンサでは、圧縮冷凍機10から吐出され、コールドパネル23、23‥へ向かう冷媒の冷却を行なうこととなる。
【0029】
このコールドパネル23、23‥の表面に霜として水のフレームワークを凍結凝固させて吸着させた後は、切り替え弁を作用させて、圧縮冷凍機10から吐出され、凝縮器11を通過したホットガスを、前記した最終的な膨張弁22の二次側へ流し、+60℃~80℃の高温のホットガスをコールドパネル23、23‥へと導入させる。
【0030】
この高温の付与によって、水分は蒸発して大気中に放出される。一酸化炭素やたばこの煙分子、たばこ臭分子は水のフレームワークに密閉されることで、多少の圧力が加えられており、そこに、この加熱によって僅かに圧力が上昇して、分子は分解(分離)され、ここで酸素は大気中に放出されるが、他の分子はコールドパネル23、23‥の表面のナノ界面に付着状態で残存している。この現象は繰り返しての実験によって確認されている。
【0031】
コールドパネル23、23‥を加熱したホットガスは、圧縮冷凍機10へ戻されるが、その圧縮冷凍機10へ戻る直前では熱交換器25を通過させる。この熱交換器25は内部に中間プレートを設け、同一容量の一次側と二次側が形成されており、一次側を通過したガスは膨張弁26を通って減圧され、二次側へ導入される。中間プレートを介して一次側と二次側とで逐次熱交換がなされ、一次側の高圧ガスが二次側での蒸発潜熱とし、二次側の蒸発潜熱は一次側の凝縮潜熱となり、圧縮冷凍機10の安全性を保持した冷媒状態にする。
【0032】
本発明に係る一酸化炭素の除去方法は上記のように実施される。そのため、沸点の相違や格別な吸着用の細孔材を必要とすることもなく、極めて低廉な作業となり、必要とするエネルギーも小さなもので済む。また、既存の冷凍サイクルを使用することも可能で特別に多大な設備投資を必要とするものでもない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本実施例は上記のように構成されている。ここで、コールドパネル23の形状は平板矩形状のものに限らず、柱状、筒状とすることもでき、また、表面形態も平面に限らず、凸面や凹面とすることも可能である。
【0034】
本発明は微粒子の除去に関するものであるが、係る微粒子に限らず、水のフレームワークに抱き込まれる花粉、微生物、細菌等の除去にも応用実施することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 圧縮冷凍機
11 凝縮器
12,14,17,21 カスケードコンデンサ
13,16,19 気液分離器
15,18,20,22,26 膨張弁
23 コールドパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7