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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044053
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ゴム補強用繊維コード
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/395 20060101AFI20230323BHJP
   D06M 13/192 20060101ALI20230323BHJP
   D06M 15/41 20060101ALI20230323BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20230323BHJP
   D06M 13/11 20060101ALI20230323BHJP
   F16G 1/08 20060101ALI20230323BHJP
   F16G 1/28 20060101ALI20230323BHJP
   F16G 5/06 20060101ALI20230323BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
D06M13/395
D06M13/192 ZAB
D06M15/41
D06M15/693
D06M13/11
F16G1/08 A
F16G1/28 E
F16G5/06 A
D06M101:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151887
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】米田 航
(72)【発明者】
【氏名】宮田 秀一朗
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB03
4L033AC11
4L033BA08
4L033BA18
4L033BA69
4L033CA34
4L033CA68
4L033DA00
(57)【要約】
【課題】有機溶剤系接着剤を使用することなく、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)への接着性が良好であり、かつ耐ほつれ性を兼ね備えたゴム補強用繊維コードを提供する。
【解決手段】繊維、該繊維の表面に直接付着した第一接着剤の層、および該第一接着剤の層の表面に直接付着した第二接着剤の層からなるゴム補強用繊維コードであって、第一接着剤は、接着剤成分Aおよび接着剤成分Bを含み、接着剤成分Aは、分子量1000未満の芳香族化合物および/またはα―ジカルボン酸であり、接着剤成分Bは、脂肪族化合物および/または脂環式化合物であり、第二接着剤は、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂であり、該レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂のラテックス樹脂はクロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックスを含むことを特徴とする、ゴム補強用繊維コード。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維、該繊維の表面に直接付着した第一接着剤の層、および該第一接着剤の層の表面に直接付着した第二接着剤の層からなるゴム補強用繊維コードであって、第一接着剤は、接着剤成分Aおよび接着剤成分Bを含み、接着剤成分Aは、分子量1000未満の芳香族化合物および/またはα―ジカルボン酸であり、接着剤成分Bは、脂肪族化合物および/または脂環式化合物であり、第二接着剤は、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂であり、該レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂のラテックス樹脂はクロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックスを含むことを特徴とする、ゴム補強用繊維コード。
【請求項2】
ゴム補強用繊維コードにおける第二接着剤の重量が第一接着剤の重量に対して40~120重量%である、請求項1記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項3】
第一接着剤および第二接着剤の重量が、繊維の重量に対していずれも1~6重量%である、請求項1または2記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項4】
第二接着剤の層がさらにカーボンブラックを含む、請求項1~3のいずれかに記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項5】
ゴム補強用繊維コードの硬さが0.005~0.011gf/texである、請求項1~4のいずれかに記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項6】
第二接着剤の層におけるカーボンブラックの固形分重量がレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂の固形分重量に対して2.5~10.0重量%である請求項4に記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項7】
繊維がポリエステル繊維である、請求項1~6のいずれかに記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項8】
ローエッジベルト心線として使用される、請求項1~7のいずれかに記載のゴム補強用繊維コード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム補強用繊維コードに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム補強用繊維コードは、繊維に撚りを施し、接着剤を付与して熱処理を施すことによって製造する。これをゴム内に埋設した状態でゴムを加硫処理することによって複合させ、ゴム製品として実用に供される。
【0003】
ゴム製品の使用に際してゴムとゴム補強用繊維コードとの間に剥離が生じると、ゴム製品の品質を著しく低下させることから、ゴムとゴム補強用繊維コードとの間に強固な接着力が求められる。また、一部のゴム製品、すなわちタイミングベルトやローエッジVベルトでは、特殊ゴムへの接着が求められる。
【0004】
このため、接着性能を向上させるために、ゴム糊などをトルエン等の非水溶剤に溶解させた有機溶剤系接着剤を用いることが従来より行われている。しかし、この方法では、環境負荷が大きく、設備上の制約も大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-25188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機溶剤系接着剤を使用することなく、従来の技術では達成できなかったエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)への接着性が良好であり、かつ耐ほつれ性を兼ね備えたゴム補強用繊維コードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、繊維、該繊維の表面に直接付着した第一接着剤の層、および該第一接着剤の層の表面に直接付着した第二接着剤の層からなるゴム補強用繊維コードであって、第一接着剤は、接着剤成分Aおよび接着剤成分Bを含み、接着剤成分Aは、分子量1000未満の芳香族化合物および/またはα―ジカルボン酸であり、接着剤成分Bは、脂肪族化合物および/または脂環式化合物であり、第二接着剤は、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂であり、該レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂のラテックス樹脂はクロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックスを含むことを特徴とする、ゴム補強用繊維コードである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機溶剤系接着剤を使用することなく、従来の技術では達成できなかったエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)への接着性が良好であり、かつ耐ほつれ性を兼ね備えたゴム補強用繊維コードを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
〔繊維〕
本発明のゴム補強用繊維コードを構成する繊維として合成繊維を用い、好ましくは合成繊維のうちの有機繊維を用いる。この合成繊維として、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、脂肪族ポリアミド繊維、ビニロン繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリパラベンゾビスオキサゾール繊維、炭素繊維を例示することができ、好ましくは、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維を用いる。ポリエステル繊維として、好ましくはポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン-2,6-ナフタレート繊維を用いる。
【0011】
〔繊維コード〕
上述の繊維は、1本または複数本の繊維糸条の集合体である繊維コードとして、本発明のゴム補強用繊維コードに用いられる。繊維糸条は、好ましくは複数本の繊維フィラメントの集合体である。この集合体は、例えば束状の集合体である。
【0012】
繊維フィラメントの繊度は、好ましくは500~4,000dtex、さらに好ましくは1,000~3,000dtexである。この範囲の繊度であると特に撚糸、接着処理や成型工程での取り扱い性の観点から好ましい。そして、繊維コードの総繊度は、好ましくは500~70,000dtexである。
【0013】
繊維フィラメントのフィラメント数、断面形状、繊維物性、微細構造、ポリマー性状(分子量、末端官能基濃度など)やポリマー中の添加剤は任意に設定することができる。
繊維フィラメントには、あらかじめ製糸工程や製糸後工程にて、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などを表面に付着させる前処理が施されていることが好ましい。
【0014】
繊維が、複数本の繊維糸条の集合体である場合、その集合体には撚りを施されていることが好ましい。繊維コードは、繊維糸条を1本または複数本を引き揃えて撚り(下撚)を施し、次いでこれを複数本引き揃えて撚り(上撚)を施した繊維コードであることが好ましい。この態様であることによって、特に撚りが施されることによって耐屈曲疲労等が向上する。
【0015】
本発明において、繊維は、2本または3本の繊維フィラメントを、撚数110~220回/mで下撚りして下撚りコードとし、次いでこの下撚りコードを、撚数60~120回/mで上撚りして上撚りコードとしたうえで用いることが好ましい。
繊維フィラメントには、あらかじめ製糸工程や製糸後工程にて、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などを表面に付着させる前処理が施されていることが好ましい。
【0016】
〔第一接着剤の層〕
第一接着剤の層は第一接着剤からなり、この第一接着剤は、以下に説明する接着剤成分Aおよび接着剤成分Bを含む。
第一接着剤の重量は、繊維の重量に対して好ましくは1~6重量%である、1重量%未満であると得られるゴム補強用繊維コードが収束しにくくなり、耐ほつれ性が低下する傾向にあり好ましくない。他方、6重量%を超えると得られるゴム補強用繊維をゴムの補強に用いるときに、ゴムとの接着性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0017】
〔接着剤成分A〕
接着剤成分Aは、分子量1000以下の芳香族化合物および/またはα―ジカルボン酸である。芳香族化合物の分子量が1000を超えると繊維内部へ接着剤成分が含侵しにくくなりほつれ性が改善しにくくなる。
芳香族化合物として、フェノール、芳香族第二級アミンを例示することができる。α-ジカルボン酸として、ジメチルマロン酸を例示することができる。
【0018】
〔接着剤成分B〕
接着剤成分Bは、脂肪族化合物および/または脂環式化合物である。脂肪族化合物として、ラクタムを例示することができる。脂環式化合物として、オキシム、酸性亜硫酸ソーダを例示することができる。
【0019】
〔第二接着剤の層〕
第二接着剤の層を構成する第二接着剤は、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂であり、該ラテックス樹脂はクロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックスを含む。
本発明のゴム補強用繊維コードにおける第二接着剤の重量は、繊維の重量に対して好ましくは1~6重量%である。1重量%未満であると接着成分が足りず接着力が劣り好ましくなく、6重量%を超えると接着層強度が低下し接着力が劣り好ましくない。
【0020】
本発明のゴム補強用繊維コードにおける第二接着剤の重量は、第一接着剤の重量に対して好ましくは40~120重量%である。40重量%未満であると接着成分が足らず、接着力が劣り好ましくなく、120重量%を超えると接着層強度が低下し、接着力が劣り好ましくない。
【0021】
〔レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂〕
レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂における、レゾルシンとホルムアルデヒドとのモル比は、好ましくは1:0.6~1:8、さらに好ましくは1:0.8~1:6である。ホルムアルデヒドがこれより少ないと、レゾルシン・ホルマリンの縮合物の架橋密度が低下すると共に分子量の低下を招くため、接着剤層凝集力が低下することにより接着性が低下し、さらに屈曲疲労性が低下する恐れがあり好ましくない。他方、ホルムアルデヒドがこれより多いと架橋密度上昇によりレゾルシン・ホルマリン縮合物が硬くなり、補強されるゴムとの共加硫時に、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂とゴムとの相溶化が阻害され、接着性が低下する傾向があり好ましくない。
【0022】
レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂におけるレゾルシン・ホルマリン(RF)とラテックス(L)との配合比率は、固形分量比でRF/Lが、好ましくは1/3~1/16、さらに好ましくは1/4~1/10である。ラテックスの比率がこれより少ないとゴムとの共加硫成分が少ないため接着力が低下しやすく好ましくない。他方、ラテックスの比率がこれより多いと接着剤被膜として充分な強度を得ることができないため、接着力や耐久性が低下する傾向があるとともに、接着処理した繊維コードの粘着性が著しく高くなり、接着処理工程や成型工程でカムアップや取り扱い性などの工程通過性が低下する恐れがあり好ましくない。
【0023】
〔レゾルシン化合物〕
レゾルシン化合物として、あらかじめオリゴマー化したレゾルシン-ホルマリン初期縮合物やクロロフェノールとレゾルシンをホルマリンとオリゴマー化した多核クロロフェノール系レゾルシン-ホルマリン初期縮合物を用いることができる。それらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
〔クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス〕
クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックスは、クロロスルホン化ポリエチレンゴムを原料とするゴムラテックスである。この クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックスは、その粘度が、ディップ時の付着量の観点から好ましくは20~100mPa・sである。20mPa・s未満であるとディップ時の付着量が不安定になり好ましくなく、他方100mPa・sを超えるとまた、ディップ時の付着量が不安定になり好ましくない。
【0025】
クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックスは、粒子の形態をとる。この粒子の中位粒子径は、RF内への分散の観点から、好ましくは1.50μm以下、さらに好ましくは0.5~1.0μmである。
レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂のラテックス樹脂におけるクロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックスの量は、接着性の観点から好ましくは75~90重量%である。
【0026】
〔カーボンブラック〕
第二接着剤の層は、接着力向上の観点から、好ましくはさらにカーボンブラックを含む。この場合、第二接着剤の層におけるカーボンブラックの含有量は、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックスの重量に対して、好ましくは1~15重量%である。
【0027】
第二接着剤の層におけるカーボンブラックの固形分重量は、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂の固形分重量に対して、好ましくは2.5~10重量%である。カーボンブラックが2.5重量%未満であるとカーボンブラックの効果が得られず、10重量%を超えると接着剤の凝集力が高くなり、接着力が低下する。
【0028】
〔他の成分〕
第二接着剤の層は、架橋剤を含んでもよい。架橋剤として、アミン、エチレン尿素、ブロックポリイソシアネート化合物を例示することができる。
【0029】
〔用途〕
本発明によれば、硬さが0.005~0.011gf/texであるゴム補強用繊維コードを得ることができる。この硬さを備えることで、耐ほつれ性を得ることができる。
本発明のゴム補強用繊維コードは、ゴム繊維複合体の補強に用いることができ、特にゴムベルトの心線として好ましく用いることができる。ベルト心線として用いることにより、抗張力性能、寸法安定性、耐久性や汎用性に優れたベルトを得ることができる。
【0030】
なお、本発明のゴム補強用繊維コードは、有機溶剤を含有しないことが好ましい。含有しないことにより、環境に悪影響を及ぼさないことに加えて、経時的な性能の劣化も防止することができる。このゴム補強用繊維コードは、有機溶剤系の処理液を用いず、水系の処理液を用いることにより、得ることができる。
【0031】
〔製造方法〕
本発明のゴム補強用繊維コードは、繊維または繊維コード(ここでは、まとめて「繊維コード」という)に、まず第一接着剤を付与し、その後、第二接着剤を付与することで製造することができる。
【0032】
第一接着剤の付与は、第一接着剤を含有する処理液を繊維コードに付着させ、これを熱処理することで行うことができる。第二接着剤の付与は、第二接着剤を含有する処理液を、前記熱処理後の繊維コードに付着させ、これを熱処理することで行うことができる。熱処理の前に、乾燥処理を行ってもよい。
【0033】
第一接着剤および第二接着剤のいずれについても、接着剤を含有する処理液は、接着剤の水分散体である。処理液を繊維コードに付着させるために、例えばローラーとの接触、ノズルからの噴霧による塗布、処理液への浸漬といった手段をとることができる。
【0034】
接着剤を含有する処理液の水分散体の総固形分濃度は、好ましくは5~30重量%である。総固形分濃度が5重量%未満であると、処理液の表面張力が増加し、繊維表面に対する均一付着性が低下すると共に、固形分付着量が低下するため接着性が低下する傾向にあり好ましくない。他方、総固形分濃度が30重量%を超えると、処理液の粘度が高くなるため、固形分付着量が多くなりすぎ、接着処理工程や成型工程におけるガムアップなど工程通過性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0035】
繊維または繊維コードに対する固形分付着量は、繊維重量または繊維コード重量を基準として、第一接着剤および第二接着剤のいずれについても、好ましくは1~6重量%、さらに好ましくは1~5重量%、さらに好ましくは1~3重量%である。固形分付着量が1重量%未満であると、繊維コードを構成する各フィラメントを充分に集束できずにほつれ性が低下し好ましくない。特に本発明の補強用繊維コードをベルト心材に用いる場合、ベルト成型時のゴムの加硫あるいはベルト使用時のアミノリシスから繊維界面を保護すべき充分かつ均一な処理液の皮膜が得られにくい傾向にあり好ましくない。他方、固形分付着量が6重量%を超えると、後の接着処理工程および成型工程にてガムアップなどが発生し、工程通過性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0036】
固形分付着量を制御するためには、例えば圧接ローラーによる絞り、スクレバーによるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターといった手段をとることができる。付着量を多くするためには、複数回付着させればよい。
【0037】
第二接着剤の熱処理の温度は、好ましくは100~240℃、さらに好ましくは100~150℃である。100℃未満であるとゴムとの接着が不十分となる傾向にあり好ましくなく、他方、240℃を超えるとクロロスルホニル基が脱離するため好ましくない。
【実施例0038】
以下、実施例をあげて本発明を説明する。なお、本発明の実施例における評価は下記の測定法で行った。
【0039】
(1)ゴム補強用繊維コードの剥離接着力
硫黄系EPDMゴムの未加硫シート表層に7本のゴム補強用繊維コードを埋め、温度150℃で30分間、22kgf/cmのプレス圧をかけて加硫した。次いで、両端から1本おきに計4本のゴム補強用繊維コードを取り除き、残り3本のゴム補強用繊維コードを同時にゴムシートから200mm/分の速度で剥離し、この剥離に要した力の平均(N/3本)を求め、剥離接着力とした。
【0040】
(2)硬さ
ゴム補強用繊維コードを長さ6cmに切り出して試験片とし、日本電産シンポ株式会社製の「高機能ハンドヘルド型デジタルテンションメータ(出力付)DTMX(B)-0.2C~2C」で硬さを測定した。
【0041】
(3)耐ほつれ性
以下の基準で目視で評価した。
○:繊維コードのフィラメントが集束しており外観上の異常は全く認められず良好。
△:繊維コードの一部のフィラメントに若干の集束不良箇所が見受けられるが良好。
×:繊維コードのフィラメントに集束不良が発生しており、集束していない。
【0042】
〔実施例1〕
(第一接着処理剤の調製)
ソルビトールポリグリシジルエーテル構造を有するポリエポキシド化合物(「デナコールEX-614B」ナガセケムテックス社製、濃度100重量%)33.1gに、界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム塩水溶液(「ネオコールSW-C」第一工業製薬製、濃度70重量%)12.71gと2-プロパノール30.51gとを加えて攪拌した。
【0043】
これを、水系ブロックドイソシアネート分散剤(「Trixene Aqua BI201」、LANXESS、濃度40重量%)312.1gと水系ブロックドイソシアネート分散剤(「DM3031Conc」、明成化学、54重量%)24.46gと水587.12gとを攪拌したものに添加して、固形分濃度18重量%の接着処理剤を得た。この接着処理剤を水で希釈して固形分濃度4.5重量%の接着処理剤を得た。これを、第一処理浴用の第一接着処理剤とした。
【0044】
なお、水系ブロックドイソシアネート分散剤「Trixene Aqua BI201」は、接着剤成分Aに相当し、分子量786の芳香族化合物である。また、水系ブロックドイソシアネート分散剤「DM3031Conc」は接着剤成分Bに相当し、脂環式化合物である。
【0045】
(第二接着処理剤の調製)
水246gにレゾルシノール3.6gを加えたのち、10重量%苛性ソーダ水5gを加えたアルカリ水溶液を用意した。これにレゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6であるレゾルシン-ホルマリン初期縮合物(「スミカノール700S」住友化学製、濃度65重量%)13.2gを溶解した。これに、37重量%ホルマリン水溶液13gを添加して、20℃で2時間熟成した。これを、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス(「セポレックスCSM-N」住友精化、濃度40重量%)281.08gと水88gとを攪拌した液に添加した。
【0046】
上記で得た液に、カーボンブラック(「FUJI SP BLACK 203」、富士色素、23重量%水分散液)の28.22gを添加し、20℃で48時間熟成して、固形分濃度20.1重量%のRFL系接着処理液(第二処理浴用の第二接着処理剤)を調製した。
【0047】
(繊維コード)
1,220dtexのポリエステル前処理繊維(「S102a」teijin Polyester(Thailand)Limited製)を3本用いて、撚数145回/mのS方向の下撚を行い、次いでこの下撚コード5本を用いて撚数80回/mのZ方向の上撚を行い、ポリエステル繊維コードを得た。
【0048】
(接着処理剤の付与)
上記のポリエステル繊維コードを、18m/分の速度で給糸し、第一処理浴の第一接着処理剤に浸漬し、その後、定長で150℃、60秒間の乾燥を行い、次いで定長で235℃、60秒間の熱処理を行った。引き続き、第二処理浴の第二接着処理剤に浸漬し、その後、定長で150℃、240秒間の熱処理を行い、ゴム補強用繊維コードを得た。
【0049】
このゴム補強用繊維コードには、繊維コードの重量に対する固形分重量として、第一接着処理剤が1.9重量%、第二接着処理剤が1.5重量%付着していた。このゴム補強用繊維コードの硬さは0.007gf/tex、ゴム補強用繊維コードの剥離接着力は221N/3Cであった。耐ほつれ性の評価は「○」であった。
【0050】
〔実施例2〕
実施例1において、第二接着処理剤のカーボンブラック(「FUJI SP BLACK 203」、富士色素、23重量%水分散液)の添加量を56.44gに変更した他は請求項1と同様にして、ゴム補強用繊維コードを得た。このゴム補強用繊維コードの硬さは0.007gf/tex、ゴム補強用繊維コードの剥離接着力は212N/3Cであった。耐ほつれ性の評価は「○」であった。
【0051】
〔実施例3〕
実施例1において、第二接着処理剤のカーボンブラック(「FUJI SP BLACK 203」、富士色素、23重量%水分散液)の添加量を14.11gに変更した他は請求項1と同様にして、ゴム補強用繊維コードを得た。このゴム補強用繊維コードの硬さは0.006gf/tex、ゴム補強用繊維コードの剥離接着力は222N/3Cであった。耐ほつれ性の評価は「○」であった。
【0052】
〔実施例4〕
実施例1において、第二接着処理剤のカーボンブラック(「FUJI SP BLACK 203」、富士色素、23重量%水分散液)の添加量を112.88gに変更した他は請求項1と同様にして、ゴム補強用繊維コードを得た。このゴム補強用繊維コードの硬さは0.006gf/tex、ゴム補強用繊維コードの剥離接着力は136N/3Cであった。耐ほつれ性の評価は「○」であった。
【0053】
〔実施例5]
実施例1において、第二接着処理剤のカーボンブラックの添加をせず第二接着処理剤を調製した以外は実施例1と同様にして、ゴム補強用繊維コードを得た。このゴム補強用繊維コードの硬さは0.007gf/tex、ゴム補強用繊維コードの剥離接着力156N/3Cであった。耐ほつれ性の評価は「○」であった。
【0054】
〔比較例1〕
実施例1において、第一接着処理剤を水系ブロックドイソシアネート分散剤(「Trixene Aqua BI201」、LANXESS、濃度40重量%)を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、ゴム補強用繊維コードを得た。このゴム補強用繊維コードの硬さは0.004gf/tex、ゴム補強用繊維コードの剥離接着力は179N/3Cであった。耐ほつれ性の評価は「×」であった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のゴム補補強用繊維コードは、タイヤやベルト、ホースの補強に用いることができる。特に、ベルトの補強の用途のうちローエッジベルト芯線として好適に用いることができる。