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特開2023-4406作業機械を制御するためのシステムおよび方法
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  • 特開-作業機械を制御するためのシステムおよび方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004406
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】作業機械を制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
E02F9/20 C
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106041
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中野 圭
(72)【発明者】
【氏名】津村 総一
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AB06
2D003BA04
2D003DA04
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】遠隔操作によって始動される作業機械を、作業機械の状況に応じて適切なタイミングで始動させる。
【解決手段】システムは、車載コントローラと、遠隔操作装置と、通信機とを備える。車載コントローラは、作業機械に搭載され、作業機械を制御する。遠隔操作装置は、車載コントローラと通信する。遠隔操作装置は、作業機械を始動するための始動指令信号を作業機械に送信する。通信機は、遠隔操作装置と別体に設けられる。通信機は、車載コントローラと通信する。通信機は、作業機械を始動禁止状態から始動許可状態に切り換えるために操作可能である。車載コントローラは、通信機の操作に応じて、作業機械を始動禁止状態から始動許可状態に切り換える。車載コントローラは、作業機械が始動禁止状態では、遠隔操作装置から始動指令信号を受信しても、作業機械の始動を禁止する。車載コントローラは、作業機械が始動許可状態で、遠隔操作装置から始動指令信号を受信した場合には、作業機械を始動させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械を制御するためのシステムであって、
前記作業機械に搭載され、前記作業機械を制御する車載コントローラと、
前記車載コントローラと通信し、前記作業機械を始動するための始動指令信号を前記作業機械に送信する遠隔操作装置と、
前記遠隔操作装置と別体に設けられ、前記車載コントローラと通信し、前記作業機械を始動禁止状態から始動許可状態に切り換えるために操作可能な通信機と、
を備え、
前記車載コントローラは、
前記通信機の操作に応じて、前記作業機械を前記始動禁止状態から前記始動許可状態に切り換え、
前記作業機械が前記始動禁止状態では、前記遠隔操作装置から前記始動指令信号を受信しても、前記作業機械の始動を禁止し、
前記作業機械が前記始動許可状態で、前記遠隔操作装置から前記始動指令信号を受信した場合には、前記作業機械を始動させる、
システム。
【請求項2】
前記作業機械に搭載され、前記作業機械の遠隔操作モードを選択するために操作可能なモード選択部材を含み、
前記車載コントローラは、前記モード選択部材によって前記遠隔操作モードが選択されており、且つ、前記作業機械が前記始動許可状態で、前記遠隔操作装置から前記始動指令信号を受信した場合には、前記作業機械を始動させる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記車載コントローラは、前記モード選択部材によって前記遠隔操作モードが選択されていても、前記作業機械が前記始動禁止状態では、前記作業機械の始動を禁止する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記通信機は、前記作業機械を前記始動禁止状態から前記始動許可状態に切り換えるための始動許可信号を前記車載コントローラに送信し、
前記車載コントローラは、前記始動許可信号を受信した場合に、前記作業機械を前記始動禁止状態から前記始動許可状態に切り換える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記通信機は、前記作業機械を前記始動禁止状態に維持するための始動不許可信号を前記車載コントローラに送信し
前記通信機は、オペレータによる操作に応じて、前記始動不許可信号の送信を停止し、
前記車載コントローラは、前記始動不許可信号の送信が停止された場合に、前記作業機械を前記始動禁止状態から前記始動許可状態に切り換える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
作業機械を制御するための方法であって、
通信機と通信することと、
前記通信機の操作に応じて、前記作業機械を始動禁止状態から始動許可状態に切り換えることと、
遠隔操作装置と通信することと、
前記遠隔操作装置から、前記作業機械の始動指令信号を受信したかを判定することと、
前記作業機械が前記始動許可状態で、前記遠隔操作装置から前記始動指令信号を受信した場合に、前記作業機械を始動させることと、
前記作業機械が前記始動禁止状態では、前記遠隔操作装置から前記始動指令信号を受信しても、前記作業機械の始動を禁止すること、
を備える方法。
【請求項7】
前記作業機械に搭載されたモード選択部材によって、前記作業機械の遠隔操作モードが選択されているかを判定することと、
前記モード選択部材によって前記遠隔操作モードが選択されており、且つ、前記作業機械が前記始動許可状態で、前記遠隔操作装置から前記始動指令信号を受信した場合には、前記作業機械を始動させること、
をさらに備える、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記モード選択部材によって前記遠隔操作モードが選択されていても、前記作業機械が前記始動禁止状態である場合には、前記作業機械の始動を禁止する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記通信機は、オペレータによる操作に応じて、前記作業機械を前記始動禁止状態から前記始動許可状態に切り換えるための始動許可信号を送信し、
前記始動許可信号を前記通信機から受信したかを判定することと、
前記始動許可信号を受信した場合に、前記作業機械を前記始動禁止状態から前記始動許可状態に切り換えること、
をさらに備える、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記通信機は、前記作業機械を前記始動禁止状態に維持するための始動不許可信号を前記車載コントローラに送信し
前記通信機は、オペレータによる操作に応じて、前記始動不許可信号を停止し、
前記始動不許可信号が停止されたかを判定することと、
前記始動不許可信号が停止された場合に、前記作業機械を前記始動禁止状態から前記始動許可状態に切り換えること、
をさらに備える請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械を制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、作業機械の始動を遠隔から操作可能なものがある。例えば、特許文献1の建設機械車両は、送信機から指令信号を受信すると、所定条件が満たされているか否かをチェックし、所定条件が満たされている場合にエンジンを始動する。所定条件は、例えば、エンジンが停止していること、シフトレバーがニュートラル位置にあること、パーキングブレーキが動作位置にあること、運転席用ドアが閉鎖されていることなどの条件を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-156715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械が始動される際の状況は、様々であり、常に同じというわけではない。例えば、作業現場で通常の作業を開始するために作業機械が始動される場合もあれば、作業機械に対して保守作業、或いはトラブル対処などが行われる場合もある。しかし、作業機械が始動される際の状況を遠隔から正確に把握することは容易ではない。
【0005】
例えば、作業機械から遠く離れた管理センターにおいて、作業機械を遠隔から制御する場合、作業機械及びその周囲を目視できないため、作業機械の状況を正確に把握することは困難である。また、上述したように、予め定められた所定条件のみでエンジンの始動を判断することは、作業機械の状況に適しているとは限らない。本開示の目的は、遠隔操作によって始動される作業機械を、作業機械の状況に応じて適切なタイミングで始動させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るシステムは、作業機械を制御するためのシステムである。当該システムは、車載コントローラと、遠隔操作装置と、通信機とを備える。車載コントローラは、作業機械に搭載され、作業機械を制御する。遠隔操作装置は、車載コントローラと通信する。遠隔操作装置は、作業機械を始動するための始動指令信号を作業機械に送信する。通信機は、遠隔操作装置と別体に設けられる。通信機は、車載コントローラと通信する。通信機は、作業機械を始動禁止状態から始動許可状態に切り換えるために操作可能である。
【0007】
車載コントローラは、通信機の操作に応じて、作業機械を始動禁止状態から始動許可状態に切り換える。車載コントローラは、作業機械が始動禁止状態では、遠隔操作装置から始動指令信号を受信しても、作業機械の始動を禁止する。車載コントローラは、作業機械が始動許可状態で、遠隔操作装置から始動指令信号を受信した場合には、作業機械を始動させる。
【0008】
本開示の他の態様に係る方法は、作業機械を制御するための方法である。当該方法は、通信機と通信することと、通信機の操作に応じて、作業機械を始動禁止状態から始動許可状態に切り換えることと、遠隔操作装置と通信することと、遠隔操作装置から、作業機械の始動指令信号を受信したかを判定することと、作業機械が始動許可状態で、遠隔操作装置から始動指令信号を受信した場合に、作業機械を始動させることと、作業機械が始動禁止状態では、遠隔操作装置から始動指令信号を受信しても、作業機械の始動を禁止すること、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るシステム及び方法では、作業現場のオペレータが作業機械に対して作業を行っているときには、作業現場のオペレータが、通信機を操作して作業機械を始動禁止状態から始動許可状態に切り換えるまで、作業機械の始動が禁止される。従って、遠隔のオペレータが遠隔操作装置を操作して始動指令信号を作業機械に送信しても、作業機械は始動しない。
【0010】
作業現場のオペレータは、作業機械に対する作業の完了後に、通信機を操作して作業機械を始動禁止状態から始動許可状態に切り換える。それにより、遠隔のオペレータが遠隔操作装置を操作して始動指令信号を作業機械に送信することで、作業機械が始動する。そのため、本開示に係るシステム及び方法では、遠隔操作によって始動される作業機械を、作業機械の状況に応じて適切なタイミングで始動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る作業機械を制御するためのシステムの構成を示すブロック図である。
図2】作業機械を示す斜視図である。
図3】車載コントローラによって実行される作業機械を始動するための処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る作業機械を制御するためのシステムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係るシステム1の構成を示すブロック図である。本実施形態に係るシステム1は、作業機械2と、遠隔操作装置3と、移動通信機4とを備えている。作業機械2は、鉱山などの作業現場に配置される。作業機械2は、例えばブルドーザである。
【0013】
図2は、作業機械2を示す斜視図である。図2に示すように、作業機械2は、本体10と作業機13とを備えている。本体10は、車体11と走行装置12とを含む。車体11は、運転室14と動力室15とを含む。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。動力室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業機械2が走行する。
【0014】
作業機13は、本体10に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19とを含む。リフトフレーム17は、上下に動作可能に走行装置12に取付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。ブレード18は、車体11の前方に配置されている。リフトシリンダ19は、車体11に連結されている。リフトシリンダ19の前端は、ブレード18の背面に回転可能に取り付けられている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、ブレード18は、上下に動作する。
【0015】
図1に示すように、作業機械2は、動力源21と、油圧ポンプ22と、動力伝達装置23とを備えている。本実施形態において、動力源21は、内燃機関である。動力源21には、スタータモータ24が接続されている。スタータモータ24は、動力源21を始動する。油圧ポンプ22は、動力源21によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ22から吐出された作動油は、リフトシリンダ19に供給される。なお、図2では、1つの油圧ポンプが図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0016】
動力伝達装置23は、動力源21の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置23は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置23は、例えば、トルクコンバータ、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0017】
作業機械2は、車載コントローラ25と制御弁26とを備える。車載コントローラ25は、作業機械2に搭載されている。車載コントローラ25は、プロセッサとメモリとを含むコンピュータによって実現される。車載コントローラ25は、互いに別体の複数のコントローラによって構成されてもよい。車載コントローラ25は、取得したデータに基づいて作業機械2を制御するようにプログラムされている。
【0018】
制御弁26は、比例制御弁であり、車載コントローラ25からの指令信号によって制御される。制御弁26は、リフトシリンダ19などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ22との間に配置される。制御弁26は、油圧ポンプ22からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。車載コントローラ25は、作業機13が上昇、或いは下降するように、制御弁26を制御する。なお、制御弁26は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁26は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0019】
作業機械2は、カメラ27と、車載操作部材28と、第1モード選択部材29と、第2モード選択部材30とを備えている。カメラ27は、例えば、車体11に取り付けられている。カメラ27は、作業機械2の周囲の画像を取得する。カメラ27は、作業機械2の周囲の画像を示す画像信号を車載コントローラ25に送信する。
【0020】
車載操作部材28は、運転室14内に配置されている。車載操作部材28は、作業機械2を走行させるためにオペレータによって操作可能である。また、車載操作部材28は、作業機13を動作させるためにオペレータによって操作可能である。車載操作部材28は、例えば操作レバーを含む。車載操作部材28は、ペダル、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の操作部材を含んでもよい。
【0021】
車載操作部材28は、オペレータによる操作を示す操作信号を、車載コントローラ25へ送信する。車載コントローラ25は、操作信号に応じて、動力源21と動力伝達装置23と制御することで、作業機械2を走行させる。車載コントローラ25は、操作信号に応じて、油圧ポンプ22と制御弁26とを制御することで、作業機13を動作させる。
【0022】
第1モード選択部材29は、運転室14内に配置されている。第1モード選択部材29は、作業機械2の制御モードを設定するためにオペレータによって操作可能である。第1モード選択部材29は、例えばタッチパネル式の入力装置である。ただし、第1モード選択部材29は、スイッチ等の他の入力装置であってもよい。第1モード選択部材29は、オペレータによる操作を示す入力信号を車載コントローラ25に送信する。
【0023】
制御モードは、直接操作モードと、遠隔操作モードとを含む。直接操作モードでは、車載コントローラ25は、車載操作部材28からの操作信号に応じて、作業機械2を制御する。従って、直接操作モードでは、オペレータは、車載操作部材28を操作することで、作業機械2を動作させる。遠隔操作モードでは、遠隔操作装置3からの遠隔制御信号に応じて、作業機械2を制御する。従って、遠隔操作モードでは、オペレータは、遠隔操作装置3を操作することで、作業機械2を動作させる。
【0024】
第2モード選択部材30は、作業機械2に取り付けられている。第2モード選択部材30は、作業機械2の制御モードとして、遠隔操作モードを選択するためにオペレータによって操作可能である。第2モード選択部材30は、例えばスイッチである。或いは、第2モード選択部材30は、レバー、或いはタッチパネルなどの他の部材であってもよい。第2モード選択部材30は、作業機械2の外面に配置される。例えば、第2モード選択部材30は、作業機械2において、地上のオペレータによって操作可能な位置に配置される。例えば、第2モード選択部材30は、車体11の後部の下方において、高さ2000mm以下の位置に配置されてもよい。第2モード選択部材30は、オペレータによる操作を示す選択信号を車載コントローラ25に送信する。
【0025】
作業機械2は、第1通信装置31と第2通信装置32とを備えている。第1通信装置31と第2通信装置32とは、作業機械2に搭載されている。第1通信装置31は、遠隔操作装置3と無線により通信を行う。第2通信装置32は、移動通信機4と無線により通信を行う。第1通信装置31と第2通信装置32との通信方式は、異なっていてもよく、或いは同じであってもよい。作業機械2と遠隔操作装置3とは、直接的に通信してもよく、或いは、管制システムなどを介して互いに通信してもよい。
【0026】
遠隔操作装置3は、作業現場から離れた管理センターに配置される。管理センター内のオペレータは、遠隔操作装置3を操作することで、遠隔から作業機械2を操作可能である。遠隔操作装置3は、通信装置33と、遠隔操作部材34と、遠隔入力装置35と、ディスプレイ36と、遠隔コントローラ37とを含む。通信装置33は、作業機械2の第1通信装置31と無線により通信を行う。
【0027】
遠隔操作部材34は、車載操作部材28と同様に、作業機械2を走行させるためにオペレータによって操作可能である。また、遠隔操作部材34は、車載操作部材28と同様に、作業機13を動作させるためにオペレータによって操作可能である。遠隔操作部材34は、例えば操作レバーを含む。遠隔操作部材34は、ペダル、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の操作部材を含んでもよい。遠隔操作部材34は、オペレータによる操作を示す操作信号を、遠隔コントローラ37へ送信する。
【0028】
遠隔入力装置35は、作業機械2の設定を入力するためにオペレータによって操作可能である。遠隔入力装置35は、例えばタッチパネル式の入力装置である。ただし、遠隔入力装置35は、スイッチ等の他の入力装置であってもよい。遠隔入力装置35は、オペレータによる操作を示す入力信号を、遠隔コントローラ37に送信する。
【0029】
遠隔コントローラ37は、プロセッサとメモリとを含むコンピュータによって実現される。遠隔コントローラ37は、互いに別体の複数のコントローラによって構成されてもよい。遠隔コントローラ37は、通信装置33を介して、遠隔制御信号を車載コントローラ25に送信する。遠隔コントローラ37は、遠隔操作部材34からの操作信号、或いは、遠隔入力装置35からの入力信号に基づいて、遠隔制御信号を生成する。
【0030】
車載コントローラ25は、遠隔コントローラ37からの遠隔制御信号に応じて、動力源21と動力伝達装置23と制御することで、作業機械2を走行させる。車載コントローラ25は、遠隔コントローラ37からの遠隔制御信号に応じて、油圧ポンプ22と制御弁26とを制御することで、作業機13を動作させる。
【0031】
また、車載コントローラ25は、カメラ27からの画像信号を遠隔コントローラ37に送信する。遠隔コントローラ37は、画像信号に基づいて、作業機械2の周囲を示す画像をディスプレイ36に表示する。オペレータは、作業機械2の周囲を示す画像をディスプレイ36上で見ながら遠隔操作部材34を操作することで、作業機械2を操縦することができる。
【0032】
移動通信機4は、遠隔操作装置3と別体に設けられる。移動通信機4は、オペレータによって操作可能である。移動通信機4は、遠隔操作装置3と同様に、通信機能を有している。移動通信機4は、車載コントローラ25と無線により通信する。詳細には、移動通信機4は、作業機械2の第2通信装置32と無線により通信する。或いは、移動通信機4は、作業機械2の第1通信装置31と無線により通信してもよい。
【0033】
移動通信機4は、持ち運び可能である。移動通信機4は、作業機械2が配置されている作業現場に、運び込まれる。移動通信機4は、作業現場のオペレータによって操作される。移動通信機4は、遠隔操作装置3よりも近距離での無線通信を車載コントローラ25と行う。オペレータは、作業機械2を目視可能な範囲内で、移動通信機4を操作する。
【0034】
移動通信機4は、ノートパソコン、タブレット、或いはスマートフォンなどの汎用のモバイル通信端末であってもよい。或いは、移動通信機4は、作業機械2を制御するためのシステム1の専用端末であってもよい。移動通信機4は、例えば、スイッチ、レバー、或いはタッチパネルなどの操作部材を含む。
【0035】
移動通信機4は、作業機械2を始動禁止状態から始動許可状態に切り換えるために操作可能である。移動通信機4は、オペレータによる操作に応じて、始動許可信号を車載コントローラ25に送信する。始動許可信号は、作業機械2を始動禁止状態から始動許可状態に切り換えるための信号である。以下、作業機械2を始動するための処理について説明する。
【0036】
図3は、作業機械2を始動するために車載コントローラ25によって実行される処理を示すフローチャートである。なお、作業機械2の始動にあたり、車載コントローラ25には、作業機械1に搭載されたバッテリーから電力が供給されることで、車載コントローラ25は、起動されている。図3に示すように、ステップS101では、車載コントローラ25は、作業機械2を始動禁止状態に設定する。車載コントローラ25は、動力源21が停止しており、移動通信機4から始動許可信号を受信していないときには、作業機械2を始動禁止状態に設定する。作業機械2が始動禁止状態であるときには、動力源21の始動が禁止される。
【0037】
ステップS102では、車載コントローラ25は、作業機械2の制御モードが遠隔操作モードであるかを判定する。車載コントローラ25は、第1モード選択部材29によって遠隔操作モードが設定されており、且つ、第2モード選択部材30によって遠隔操作モードが選択されているときに、作業機械2の制御モードが、遠隔操作モードであると判定する。車載コントローラ25が、作業機械2の制御モードが遠隔操作モードであると判定したときには、処理はステップS103に進む。
【0038】
ステップS103では、車載コントローラ25は、移動通信機4から始動許可信号を受信したかを判定する。移動通信機4は、作業現場のオペレータによる操作に応じて、始動許可信号を車載コントローラ25に送信する。車載コントローラ25が、移動通信機4から始動許可信号を受信したと判定したときには、処理は、ステップS104に進む。
【0039】
ステップS104では、車載コントローラ25は、作業機械2の始動禁止状態を解除するなお、車載コントローラ25は、ステップ103において、移動通信機4から始動許可信号を受信していない場合には、作業機械2を始動禁止状態に維持する。
【0040】
ステップS105では、車載コントローラ25は、作業機械2を始動するための始動指令信号を受信したかを判定する。始動指令信号は、遠隔操作装置3から送信される。遠隔操作装置3は、管理センター内のオペレータ(以下、「遠隔のオペレータ」と呼ぶ。)による遠隔入力装置35の操作に応じて、始動指令信号を車載コントローラ25に送信する。車載コントローラ25が始動指令信号を受信したときには、処理はステップS106に進む。
【0041】
ステップS106では、車載コントローラ25は、作業機械2が始動許可状態であるかを判定する。車載コントローラ25は、ステップS104において作業機械2の始動禁止状態が解除されているときに、作業機械2が始動許可状態であると判定する。或いは、車載コントローラ25は、作業機械2の始動禁止状態が解除されていることに加えて、他の始動許可条件が満たされているときに、作業機械2が始動許可状態であると判定してもよい。作業機械2が始動許可状態であると車載コントローラ25が判定したときには、処理は、ステップS107に進む。ステップS107では、車載コントローラ25は、作業機械2を始動する。すなわち、車載コントローラ25は、スタータモータ24を駆動することで、動力源21を始動する。
【0042】
ステップS106において、作業機械2が始動許可状態ではないと車載コントローラ25が判定した時には、車載コントローラ25は、遠隔操作装置3から始動指令信号を受信しても、作業機械2を始動しない。すなわち、車載コントローラ25は、作業機械2が始動禁止状態では、遠隔操作装置3から始動指令信号を受信しても、作業機械2の始動を禁止する。
【0043】
以上説明した本実施形態に係るシステム1では、車載コントローラ25は、移動通信機4からの始動許可信号を受信した時に、作業機械2の始動禁止状態を解除する。そして、車載コントローラ25は、作業機械2が始動許可状態で、遠隔操作装置3から始動指令信号を受信した場合には、作業機械2を始動させる。しかし、車載コントローラ25は、作業機械2が始動禁止状態では、遠隔操作装置3から始動指令信号を受信しても、作業機械2の始動を禁止する。
【0044】
従って、作業現場のオペレータが作業機械2に対して、保守作業、トラブル対応、作業機械2の周辺で安全の適否判断、或いは安全確保の準備などの作業を行っているときには、作業現場のオペレータが、移動通信機4を操作して作業機械2の始動禁止状態を解除するまで、作業機械2の始動が禁止される。そのため、遠隔のオペレータが遠隔操作装置3を操作して始動指令信号を作業機械2に送信しても、作業機械2は始動しない。それにより、作業現場のオペレータは、作業機械2に対して作業を円滑に行うことができる。
【0045】
作業現場のオペレータは、作業機械2に対する上記作業の完了後、運転室14内で第1モード選択部材29を操作して、作業機械2の制御モードを遠隔操作モードに設定する。作業現場のオペレータは、作業機械2から降り、第2モード選択部材30を操作して、遠隔操作モードを選択する。そして、作業現場のオペレータは、作業機械2から離れた後、移動通信機4を操作して作業機械2の始動禁止状態を解除する。
【0046】
それにより、遠隔のオペレータが遠隔操作装置3を操作して始動指令信号を作業機械2に送信することで、作業機械2が始動する。その後、遠隔のオペレータは、遠隔操作部材34を操作することで、作業機械2による作業現場での作業を行う。以上のように、本実施形態に係るシステム1では、遠隔操作によって始動される作業機械2を、作業機械2の状況に応じて適切なタイミングで始動させることができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
作業機械2は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ、或いはダンプトラック等の他の車両であってもよい。システム1によって制御される作業機械の数は1台に限らず、2台以上であってもよい。動力源21は、電動モータであってもよい。その場合、作業機械2を始動することは、作業機械2の走行、或いは作業機13の動作などを開始させることであってもよい。或いは、動力源21は、内燃機関と電動モータとのハイブリッドであってもよい。
【0049】
第1モード選択部材29による遠隔操作モードの設定は、省略されてもよい。第2モード選択部材30による遠隔操作モードの選択は、省略されてもよい。第1モード選択部材29と第2モード選択部材30とが、作業機械2の外面に配置されてもよい。或いは、第1モード選択部材29と第2モード選択部材30とが、運転室14内に配置されてもよい。
【0050】
上記の実施形態では、車載コントローラ25は、移動通信機4から始動許可信号を受信したときに、作業機械2の始動禁止状態を解除する。しかし、移動通信機4は、始動不許可信号を車載コントローラ25に送信してもよい。車載コントローラ25は、移動通信機4から始動不許可信号を受信している間は、作業機械2を始動禁止状態に維持してもよい。移動通信機4は、オペレータによる操作に応じて、始動不許可信号を停止してもよい。車載コントローラ25は、始動不許可信号の送信が停止された場合に、作業機械2の始動禁止状態を解除してもよい。
【0051】
本発明に係る通信機は、上述した移動通信機4に限らず、変更されてもよい。例えば、移動通信機4に代えて、現場の基地に備え付けられた通信機により、始動許可信号が車載コントローラ25に送信されてもよい。その場合、作業現場のオペレータは、現場の基地に戻ってから、通信機を操作して作業機械2の始動禁止状態を解除してもよい。或いは、作業現場のオペレータが、現場の基地に連絡することで、現場の基地のオペレータが、通信機を操作して作業機械2の始動禁止状態を解除してもよい。
【0052】
始動禁止状態、或いは始動禁止状態が解除されていることを示すランプなどの報知手段が、作業機械1の運転室14内、作業機械1の外面、或いは遠隔操作装置3などに設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示に係るシステム及び方法では、遠隔操作によって始動される作業機械を、作業機械の状況に応じて適切なタイミングで始動させることができる。
【符号の説明】
【0054】
2 作業機械
3 遠隔操作装置
4 移動通信機
25 車載コントローラ
30 モード選択部材
図1
図2
図3