(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044087
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】コンテンツ提供システム、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06F 13/00 20060101AFI20230323BHJP
H04N 21/438 20110101ALI20230323BHJP
H04N 21/45 20110101ALI20230323BHJP
【FI】
G06F13/00 540B
H04N21/438
H04N21/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151931
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】521366377
【氏名又は名称】ロケットスタッフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】高 榮郁
【テーマコード(参考)】
5B084
5C164
【Fターム(参考)】
5B084AA02
5B084AA12
5B084AB06
5B084AB07
5B084AB13
5B084AB18
5B084BB12
5B084DB02
5B084DB09
5B084DC02
5B084DC13
5C164UA04S
5C164UB10S
5C164UB21P
5C164UB38S
5C164UC41P
(57)【要約】
【課題】マルチメディアカットを含む電子書籍データをユーザ端末でスムーズに表示する。
【解決手段】本発明のコンテンツ提供システムは、電子書籍が、複数の静止画カットと少なくとも1つ以上のマルチメディアカットとを含むとともに、所定の静止画カットにマルチメディアカットで再生されるメディアファイルの事前読込情報が設定されている。ビューアは、静止画カットの読込処理において事前読込情報の有無を判定し、事前読込情報が有ると判定された場合にメディアファイルの配信要求を送信し、マルチメディアカットが表示領域に表示される前のタイミングでメディアファイルの読込処理を実行し、マルチメディアカットの表示処理において予め読み込んだメディアファイルの再生処理を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子書籍をストリーミング配信するコンテンツ配信装置と、前記電子書籍を閲覧するためのビューアが設けられたユーザ端末とを含むコンテンツ提供システムであって、
前記電子書籍は、複数の静止画カットと少なくとも1つ以上のマルチメディアカットとを含むとともに、所定の前記静止画カットに前記マルチメディアカットで再生されるメディアファイルの事前読込情報が設定されており、
前記ビューアは、ストリーミング配信される前記電子書籍を読み込んで所定の表示領域内に表示するとともに、前記静止画カットの読込処理において前記事前読込情報の有無を判定し、前記事前読込情報が有ると判定された場合に、前記コンテンツ配信装置に前記メディアファイルの配信要求を送信し、
前記コンテンツ提供装置は、前記メディアファイルの配信要求を受け付けて該当の前記メディアファイルをユーザ端末に送信し、
前記ビューアは、前記マルチメディアカットが前記表示領域に表示される前のタイミングで、前記メディアファイルの読込処理を実行し、前記マルチメディアカットの表示処理において、予め読み込んだ前記メディアファイルの再生処理を行うことを特徴とするコンテンツ提供システム。
【請求項2】
前記マルチメディアカットで再生される前記メディアファイルは、音楽ファイル、音声ファイル、BGMファイル、アニメーションGIF、アニメーションPNG(APNG)のいずれか、またはこれらを2つ以上含むことを特徴とする請求項1に記載のコンテンツ提供システム。
【請求項3】
前記電子書籍は、前記ビューアに対するスクロールに対応して前記静止画カット及び前記マルチメディアカットが読み進める方向に順に並んでいるコンテンツであり、
前記事前読込情報は、読み進める方向において前記マルチメディアカットよりも所定数前の前記静止画カットに設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツ提供システム。
【請求項4】
前記ビューアは、前記事前読込情報が設定された前記静止画カットが前記表示領域において所定の割合以上表示されたタイミング、又は前記事前読込情報が設定された前記静止画カットが前記表示領域内において所定の表示位置までスクロールされたタイミングで、前記メディアファイルの配信要求を前記コンテンツ提供装置に送信することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のコンテンツ提供システム。
【請求項5】
前記電子書籍は、前記ビューアに対する縦スクロールに対応して前記静止画カット及び前記マルチメディアカットが読み進める方向に順に並んでいる縦長のコンテンツであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のコンテンツ提供システム。
【請求項6】
前記コンテンツ提供装置は、前記電子書籍に前記事前読込情報を設定する処理を遂行するコンテンツ登録部をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のコンテンツ提供システム。
【請求項7】
コンテンツ配信装置からストリーミング配信される電子書籍を閲覧するためにユーザ端末で実行されるプログラムであって、前記ユーザ端末に、
前記電子書籍は、複数の静止画カットと少なくとも1つ以上のマルチメディアカットとを含むとともに、所定の前記静止画カットに前記マルチメディアカットで再生されるメディアファイルの事前読込情報が設定されており、
ストリーミング配信される前記電子書籍を読み込んで所定の表示領域内に表示する第1機能と、
前記表示領域に表示される前記静止画カットの読込処理において前記事前読込情報の有無を判定し、前記事前読込情報が有ると判定された場合に、前記コンテンツ配信装置に前記メディアファイルの配信要求を送信する第2機能と、
前記コンテンツ提供装置から配信される、前記配信要求に基づく前記メディファイルを受信し、前記マルチメディアカットが前記表示領域に表示される前のタイミングで、前記メディアファイルの読込処理を行う第3機能と、
前記マルチメディアカットの表示処理において、予め読み込んだ前記メディアファイルの再生処理を行う第4機能と、
を実現させるプログラム。
【請求項8】
コンテンツ配信装置からストリーミング配信される電子書籍をユーザ端末で閲覧する方法であって、
前記コンテンツ配信装置が、複数の静止画カットと少なくとも1つ以上のマルチメディアカットとを含むとともに、所定の前記静止画カットに前記マルチメディアカットで再生されるメディアファイルの事前読込情報が設定された電子書籍を保持するステップと、
前記ユーザ端末が、ストリーミング配信される前記電子書籍を読み込んで所定の表示領域内に表示するステップと、
前記ユーザ端末が、前記表示領域に表示される前記静止画カットの読込処理において前記事前読込情報の有無を判定し、前記事前読込情報が有ると判定された場合に、前記コンテンツ配信装置に前記メディアファイルの配信要求を送信するステップと、
前記コンテンツ配信装置が、前記メディアファイルの配信要求を受け付けて該当する前記メディファイルを前記ユーザ端末に配信するステップと、
前記ユーザ端末が、前記マルチメディアカットが前記表示領域に表示される前のタイミングで、前記メディアファイルの読込処理を行うステップと、
前記ユーザ端末が、前記マルチメディアカットの表示処理において、予め読み込んだ前記メディアファイルの再生処理を行うステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリーミング配信される電子書籍データをスマートフォン等のユーザ端末で表示するコンテンツ閲覧技術に関する。
【背景技術】
【0002】
単行本や漫画、文庫本などを電子データ化した電子書籍は、スマートフォンやタブレット端末などの汎用機器や専用の電子書籍リーダで閲覧することができる。電子書籍は、事前にプリセットされたビューア(viewer)で、又はビューアをダウンロード/インストールして、閲覧することができる。
【0003】
電子書籍の配信形式は、大きく分けて、ダウンロード型とストリーミング型がある。双方の配信形式それぞれにメリット・デメリットがあるが、スマートフォン(多機能携帯電話)やタブレット端末などのモバイル機器の通信機能(通信環境)が日々向上しており、また、端末側に電子書籍データが残らず著作権管理が容易であるため、電子書籍をストリーミング配信で提供する態様が一般化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子書籍の作品、すなわち、コンテンツが多様化しており、例えば、縦スクロールで読み進めるWebtoonがある。Webtoonは、スマートフォンやタブレット端末で閲覧することを前提とした作品が多く、漫画作品だと基本的にカラーページであったり、音楽やアニメーションが挿入されたりする作品もある。
【0006】
そして、今後、音楽ファイル、音声ファイル、BGMファイル、動画ファイル、アニメーションGIF、アニメーションPNG(APNG)ファイルなどのメディアファイルで構成されるマルチメディアカットを含む電子書籍の提供が多くなると考えられる。これは、マルチメディアカットによって様々なコンテンツの演出方法を生み出すことができるからである。
【0007】
しかしながら、マルチメディアカットの多様化は、メディアファイルの増大(データ容量の増大)を招くことが予想され、データ容量の増大に伴うサービス品質の低下が懸念される。
【0008】
具体的には、ビューアの動作として、ストリーミング配信で送られてきたメディアファイルを順次リアルタイム再生するが、データ容量の多さから読込に時間がかかり、メディアファイルの再生が追い付かず、マルチメディアカットの再生(表示)処理が遅延したり、適切なタイミングで表示されず途中でかたまったりしてしまうなどの課題がある。
【0009】
特に、マルチメディアカットの前のコンテンツカットがデータ容量の小さい静止画カットである場合、マルチメディアカットが表示されるまでは画面スクロールに対してスムーズな表示処理が行われていたのに、マルチメディアカットに差し掛かるとそのデータ容量の多さから急に表示動作が遅くなってしまう。このため、ユーザにとって動作遅延を強く感じてしまい、ユーザ満足度が低下してしまう課題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、ストリーミング配信で電子書籍データを提供するコンテンツ提供サービスにおいて、マルチメディアカットを含む電子書籍データをユーザ端末でスムーズに表示することができるコンテンツ提供システム、プログラム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明のコンテンツ提供システムは、電子書籍をストリーミング配信するコンテンツ配信装置と、電子書籍を閲覧するためのビューアが設けられたユーザ端末とを含む。ここで、上記電子書籍は、複数の静止画カットと少なくとも1つ以上のマルチメディアカットとを含むとともに、所定の静止画カットにマルチメディアカットで再生されるメディアファイルの事前読込情報が設定されている。
【0012】
ビューアは、ストリーミング配信される電子書籍を読み込んで所定の表示領域内に表示するとともに、静止画カットの読込処理において事前読込情報の有無を判定し、事前読込情報が有ると判定された場合に、コンテンツ配信装置にメディアファイルの配信要求を送信し、コンテンツ提供装置は、メディアファイルの配信要求を受け付けて該当のメディアファイルをユーザ端末に送信する。そして、ビューアは、マルチメディアカットが表示領域に表示される前のタイミングで、メディアファイルの読込処理を実行し、マルチメディアカットの表示処理において予め読み込んだメディアファイルの再生処理を行うことができる。
【0013】
(2)上記(1)において、上記マルチメディアカットで再生されるメディアファイルは、音楽ファイル、音声ファイル、BGMファイル、アニメーションGIF、アニメーションPNG(APNG)のいずれか、またはこれらを2つ以上含むように構成することができる。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)において、上記電子書籍は、ビューアに対するスクロールに対応して静止画カット及びマルチメディアカットが読み進める方向に順に並んでいるコンテンツであり、上記事前読込情報が、読み進める方向においてマルチメディアカットよりも所定数前の静止画カットに設定されるように構成することができる。
【0015】
(4)上記(1)から(3)において、上記ビューアは、事前読込情報が設定された静止画カットが表示領域において所定の割合以上表示されたタイミング、又は事前読込情報が設定された静止画カットが表示領域内において所定の表示位置までスクロールされたタイミングで、メディアファイルの配信要求をコンテンツ提供装置に送信するように構成することができる。
【0016】
(5)上記(1)から(4)において、上記電子書籍は、ビューアに対する縦スクロールに対応して静止画カット及びマルチメディアカットが読み進める方向に順に並んでいる縦長のコンテンツとすることができる。
【0017】
(6)上記(1)から(5)において、上記コンテンツ提供装置は、電子書籍に事前読込情報を設定する処理を遂行するコンテンツ登録部をさらに備えるように構成することができる。
【0018】
(7)本発明のプログラムは、コンテンツ配信装置からストリーミング配信される電子書籍を閲覧するためにユーザ端末で実行され、当該ユーザ端末に以下の機能を実現させる。このとき、電子書籍は、複数の静止画カットと少なくとも1つ以上のマルチメディアカットとを含むとともに、所定の前記静止画カットにマルチメディアカットで再生されるメディアファイルの事前読込情報が設定されている。上記プログラムは、ストリーミング配信される電子書籍を読み込んで所定の表示領域内に表示する第1機能、表示領域に表示される静止画カットの読込処理において事前読込情報の有無を判定し、事前読込情報が有ると判定された場合に、コンテンツ配信装置にメディアファイルの配信要求を送信する第2機能、コンテンツ提供装置から配信される、上記配信要求に基づくメディファイルを受信し、マルチメディアカットが表示領域に表示される前のタイミングで、メディアファイルの読込処理を行う第3機能、及びマルチメディアカットの表示処理において予め読み込んだメディアファイルの再生処理を行う第4機能を含む。
【0019】
(8)本発明は、コンテンツ配信装置からストリーミング配信される電子書籍をユーザ端末で閲覧する方法であり、以下のステップを含む。
コンテンツ配信装置が、複数の静止画カットと少なくとも1つ以上のマルチメディアカットとを含むとともに、所定の前記静止画カットにマルチメディアカットで再生されるメディアファイルの事前読込情報が設定された電子書籍を保持するステップ、
ユーザ端末が、ストリーミング配信される電子書籍を読み込んで所定の表示領域内に表示するステップ、
ユーザ端末が、表示領域に表示される静止画カットの読込処理において事前読込情報の有無を判定し、事前読込情報が有ると判定された場合に、コンテンツ配信装置にメディアファイルの配信要求を送信するステップ、
コンテンツ配信装置が、メディアファイルの配信要求を受け付けて該当するメディファイルをユーザ端末に配信するステップ、
ユーザ端末が、マルチメディアカットが表示領域に表示される前のタイミングで、メディアファイルの読込処理を行うステップ、及び、
ユーザ端末が、マルチメディアカットの表示処理において予め読み込んだメディアファイルの再生処理を行うステップ。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、マルチメディアカットがビューアの表示領域に表示される前のタイミングでメディアファイルの読込処理を実行し、その後のマルチメディアカットの表示処理において、予め読み込んだメディアファイルの再生処理を行うことができる。
【0021】
このため、マルチメディアカットを含む電子書籍データをユーザ端末でスムーズに表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態のコンテンツ提供システムのネットワーク構成及び機能ブロックを示す図である。
【
図2】第1実施形態の電子書籍データの一例を示す図である。
【
図3】第1実施形態のマルチメディアカットを含む電子書籍データのストリーミング配信制御及びユーザ端末での表示制御を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態のコンテンツ提供方法の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1実施形態)
図1から
図4は、第1実施形態のコンテンツ提供システムを説明するための図であり、
図1は、ネットワーク構成及び機能ブロックの説明図である。
【0024】
本実施形態のコンテンツ提供システムは、ユーザ端末100で電子書籍を閲覧する電子書籍サービスを提供する。電子書籍とは、上述のように、単行本や漫画、文庫本などを電子データ化したものであり、ページ単位、カット単位で読み進めていくコンテンツである。
【0025】
以下の説明では、電子書籍としてWebtoonの作品を一例に説明しているが、Webtoonに限らず、電子書籍として提供されている様々なコンテンツ閲覧に適用することができる。また、漫画以外にも例えば、小説の挿絵やタイトル、作品のあらすじ説明などにマルチメディアカットを適用した電子書籍も含むことができ、ストリーミング配信でマルチメディアカットを含む電子書籍全般に適用することができる。
【0026】
ユーザ端末100は、例えば、スマートフォンなどの多機能携帯電話機やタブレット端末などの持ち運び可能な携帯端末(モバイル端末)であり、無線通信機能を備えている。通信部110は、IP網や4G/5G/LTE回線(携帯電話回線を介したモバイルデータ通信)などの移動通信網での通信制御制御を行う。例えば、Wi-Fi(無線LAN)機能やSIMカードを利用したモバイルデータ通信機能を備えている。なお、通話機能は、備えていてもいなくてもよい。その他に、ユーザ端末100は、音声出力装置としてスピーカー130、タッチパネル方式の表示入力部140、記憶部150を備えている。
【0027】
そして、ユーザ端末100の制御部120は、表示制御部121を備えている。この表示制御部121は、電子書籍を閲覧するビューア121aを含む電子書籍閲覧アプリケーションである。ビューア121aは、コンテンツ配信装置300からストリーミング配信される電子書籍データを読み込み、表示・再生処理を行う。ビューア121aの表示・再生制御の詳細については後述する。
【0028】
なお、ビューア121aは、ビューア121aを含む電子書籍閲覧アプリケーションして提供される態様の他に、例えば、ブラウザの機能拡張のプラグインアプリケーションとして提供することもできる。この場合、ブラウザが表示制御部121であり、ブラウザの表示制御において、電子書籍を閲覧する操作が行われたとき、プラグインアプリケーションのビューア121aが実行され、電子書籍の表示・再生処理が行われる。
【0029】
ビューア121aを含む表示制御部121は、ユーザ端末100に事前にインストールされていてもよく、又はユーザが電子書籍を閲覧する際に任意のタイミングで所定のアプリケーション配信サーバからダウンロードし、インストールすることができる。また、プラグインで動作する場合、ブラウザの表示制御のタイミングでビューア121aがダウンロードされたりインストールされたりしてもよい。
【0030】
コンテンツ配信装置300は、ユーザ端末100からの配信要求に対し、該当の電子書籍データをストリーミング配信する。通信装置310は、IP網や移動通信網を通じたストリーミング配信の通信制御を行う。制御装置320は、コンテンツ登録部321とコンテンツ配信部322とを備える。記憶装置330は、電子書籍データを含む各種情報を格納する。
【0031】
コンテンツ登録部321は、配信される電子書籍データの登録を受け付け、記憶装置330に記憶する。また、コンテンツ登録部321は、ユーザ端末100で登録された各電子書籍を閲覧可能(選択可能)な画面を生成し提供する。つまり、登録された電子書籍をユーザに選択可能にし、ストリーミング配信できる状態にする。
【0032】
また、コンテンツ登録部321は、後述するマルチメディアカットの事前読込情報を電子書籍データに設定する機能を提供することができる。
【0033】
コンテンツ配信部322は、電子書籍データをストリーミング配信する。ストリーミング配信とは、電子書籍データを所定のパケット単位に分割して配信し、ユーザ端末100のビューア121aが、パケット単位で読み込みを行って表示・再生を行う。ビューア121aは、表示・再生が終わるごとにパケット(データ)を破棄し、ユーザ端末100側の記憶領域に残さないように制御する。
【0034】
パケット単位の例としては、例えば、電子書籍データを構成する複数のカット単位がある。コンテンツ配信部322は、電子書籍データを構成する複数のカット別に順次データ送信を行うことができる。なお、パケット単位は、任意に設定することができる。例えば、漫画や小説のページ単位でパケット分割することもできる。
【0035】
また、本実施形態では、電子書籍データが、複数のカットで構成された態様を一例に説明するが、カットの大きさは、任意である。例えば、ユーザ端末100のビューア121aは、所定の表示領域(表示範囲)を備えており、その表示領域の大きさとほぼ同じ大きさを1カットとしたり、表示領域内に複数のカットが表示可能な任意の大きさを1カットとしたり、表示領域よりも大きいカットを1カットとしてもよい。また、漫画などでは、カットに対応する言葉として「コマ」という言葉が使用されることもある。この場合、1カットが1コマで構成されていたり、1カットが複数コマで構成されていたりする態様も含むことができる。
【0036】
また、ストリーミング配信では、1カットが1パケットである場合以外にも、1カットが複数パケットに分割された配信されたり、1パケットに複数のカットが含まれて配信されたりするように構成でき、1カットを1パケットとする態様に限る必要はない。
【0037】
図2は、本実施形態の電子書籍データの一例を示す図である。
図2に示すように、電子書籍データは、複数のカットC1~Cnで構成され、カットC1~Cnは、作品として読み進める方向に並んでいる。つまり、カットC1が先頭であり、作品の流れに準じて各カットが順に並ぶイメージである。ユーザは、ビューア121aの表示領域に対するスクロール操作を行い、読み進める方向に並ぶカットを順次閲覧することができる。
【0038】
電子書籍データは、静止画カットとマルチメディアカットとを含んで構成されている。静止画カットは、画像データである。マルチメディアカットは、音楽ファイル、音声ファイル、BGMファイル、アニメーションGIF、アニメーションPNG(APNG)などのメディアデータが再生されるカットである。なお、音楽ファイル等を再生する静止画カットは、マルチメディアカットにカテゴライズすることができる。また、マルチメディアカットは、少なくとも1つ以上のメディアデータを含むカットであり、例えば、アニメーションGIFと音楽ファイル等を組み合わせた複数のメディアファイルで構成された態様を含むことができる。マルチメディアカット(メディアファイル)は、JPEGやPNGなどの画像形式ファイルの静止画カットよりも、データ容量が大きいデータファイルである。
【0039】
そして、本実施形態のコンテンツ提供システムは、電子書籍データにマルチメディアカットが含まれる場合、マルチメディアカットを構成するメディアデータの配信タイミングを当該マルチメディアカットがビューア121aに表示される前に行う仕組みを導入している。
図2の例では、カットC9がマルチメディアカットであり、縦スクロール方向に準じたカット順で、カットC9よりも前の静止画カットC3に「事前読込情報」を設定している。
【0040】
電子書籍データへの「事前読込情報」の設定機能は、コンテンツ登録部321が提供することができる。例えば、コンテンツ登録部321は、所定の画面を介して、登録された電子書籍データの任意のカットを選択可能に制御し、事前読込情報を設定するように構成することができる。このとき、事前読込情報の設定と共に、当該事前読込情報と配信するメディアデータとの紐付け(関連付け)を行うように構成することができる。
【0041】
事前読込情報は、ビューア121aがマルチメディアカットのメディアデータの配信要求をコンテンツ配信装置300に行うための情報であり、ビューア121aが表示・再生処理を行う際の読込処理で読み取られる。事前読込情報は、配信要求を行うトリガーであり、電子書籍データに1つだけマルチメディアカットが含まれている場合は、単なるトリガーでよいが、1つの電子書籍に複数のマルチメディアカットが含まれる場合は、どのマルチメディアカットのメディアデータの配信要求を行うか、言い換えれば、コンテンツ配信装置300がどのマルチメディアカットのメディアデータを配信すればよいかを識別できるように構成する。例えば、事前読込情報に、配信要求対象のマルチメディアカットのカット識別情報が含まれるように構成し、コンテンツ提供装置300に送信する配信要求にカット識別情報を含ませることができる。また、他の手法では、コンテンツ提供装置300側で事前読込情報が設定されたカットの識別情報を保持しておき、ビューア121aが配信要求を送信する際に読みこんだカットの識別情報を含むようにすることができる。
【0042】
図3は、マルチメディアカットを含む電子書籍データのストリーミング配信制御及びユーザ端末100での表示制御(ビューア121aの動作)を説明するための図である。
【0043】
ビューア121aは、ストリーミング配信される電子書籍データの各パケットを読み込み、読み込みが完了した順に表示領域への表示・再生処理を行う。
図3の例では、表示領域に複数のカットC1,C2,C3と、カットC4の一部が表示されている。ユーザは、縦スクロールしながら各カットを読むことができる。Webtoonの場合、縦スクロールに対応した電子書籍データが作成されており、読み進む縦方向にカットが並んでいる。
【0044】
ビューア121aは、タッチパネル方式の表示・入力部140による表示領域に対するスクロール制御と連動し、検知された上方向又は下方向へのスクロール量に応じてコンテンツ配信装置300に、現在の表示領域に表示されているカットに応じた次のカット(配信を受けていないカット)の配信を要求する。ストリーミング配信制御は、例えば、表示領域に表示されているカットから数カット分先まで先行して配信したりすることができる。
【0045】
ビューア121aは、各カットを読み込んで表示するが、このとき、読み込んだ各カットに、事前読込情報の有無をチェックする。ビューア121aは、事前読込情報が有ると判定された場合、後続のマルチメディアカットC9のメディアファイルの配信要求を、コンテンツ提供装置300に送信する。つまり、ビューア121aは、カットが複数並ぶ作品において、現在表示されているカットに対し、ストリーミング配信を受けていない後続のマルチメディアカットのメディアファイルを先行受信できるように制御し、マルチメディアカットの表示・再生処理が行われる際には、ビューア121aでの読み込み処理が完了している状態にする。
【0046】
このようにビューア121aに対するスクロールに対応して静止画カット及びマルチメディアカットが読み進める方向に順に並んでいる電子書籍において、事前読込情報を、読み進める方向においてマルチメディアカットよりも所定数前の静止画カットに設定し、事前読込情報に基づいて、先行配信リクエスト及び事前読込処理を、マルチメディアカットに対して行う。
【0047】
なお、マルチメディアカットよりもいくつ前の静止画カットに事前読込情報を設定するかは任意であるが、少なくとも事前読込情報が設定された静止画カットが表示領域に表示されている状態で(事前読込情報が有るか否かを判定するときに)、コンテンツ提供装置300から当該マルチメディアカットのメディアファイルが自動的にストリーミング配信されていない状態となるカット分、間隔を空けて設定することができる。ストリーミング配信は、受信したパケットから順に表示・再生処理をするので、コンテンツ提供装置300は、現在表示領域に表示されているカットに対し、数カット先の各パケットを先行して配信することができる。これにより読み進める方向に対してスムーズな表示・再生処理を行うことができる。
【0048】
一方で、事前読込情報が設定された静止画カットが読み込まれて表示されたときに、既にマルチメディアカットのメディアファイルがコンテンツ配信装置300から自動的に配信される間隔で当該マルチメディアカットが位置している場合、ビューア121aの事前読込情報に基づく配信要求及びコンテンツ提供装置300の事前読込情報に基づく配信を行わないように制御することができる。言い換えれば、事前読込情報が設定された静止画カットが読み込まれて表示されたときに、マルチメディアカットのメディアファイルがコンテンツ配信装置300から自動的に配信されない間隔で離間する静止画カットに、事前読込情報を設定するように構成することができる。
【0049】
また、ビューア121aが、事前読込情報に基づく配信要求を行うタイミングは、事前読込情報が設定された静止画カットがビューア121aの表示領域において所定の割合以上表示されたタイミングで行うことができる。例えば、表示領域にカットの1/3以上表示されたり、1/2以上表示されたりしたタイミングとすることができる。また、他のタイミングとしては、事前読込情報が設定された静止画カットが表示領域内において所定の表示位置までスクロールされたタイミングで、メディアファイルの配信要求をコンテンツ提供装置300に送信することもできる。この場合、例えば、事前読込情報が設定されたカットC3の上端がスクロールによって表示領域の上端に移動したタイミングであったり、表示領域の中央領域にカットC3が表示されたタイミングであったりすることができる。
【0050】
また、上述のようにビューア121aは、表示・再生が終わるごとにパケット(データ)を破棄し、ユーザ端末100側の記憶領域に残さないように制御するが、マルチメディアカットのメディアファイルについては、表示・再生後直ぐに破棄せず、一時的に保持するように制御することができる。例えば、一度でもマルチメディアカットが再生された場合(又はメディアファイルの事前読込が完了している場合)、ユーザ端末100内でキャッシュとしてマルチメディアカットを構成するメディアファイルを保存し、一定時間(例えば、マルチメディアカットC9が再生されてから、又は事前読込されてから数十分、数時間前後)までは破棄しないように制御する。このように構成することで、マルチメディアカットC9が再生された後であれば、任意の静止画カットを閲覧してからもう一度マルチメディアカットC9が再生される閲覧操作が行われても、メディアファイルのスムーズな表示・再生を実現することができる。
【0051】
図4は、本実施形態のコンテンツ提供システムの処理フローを示す図である。
【0052】
コンテンツ配信装置300は、ストリーミング配信用の電子書籍データの登録処理及び、マルチメディアカットが含まれる電子書籍データを対象に、事前読込情報の設定処理を行う(S301,S302)。
【0053】
ユーザ端末100は、電子書籍を閲覧するためのビューア121aがインストールされていない場合は、ビューア121aを含む電子書籍閲覧アプリケーションをダウンロードしてインストールする(S101)。電子書籍閲覧アプリケーションは、所定のアプリケーションダウンロードサイトからダウンロードしたりすることができる。
【0054】
ユーザ端末100は、ユーザ操作によって電子書籍閲覧アプリケーションが選択されると、コンテンツ配信装置300に接続する。コンテンツ配信装置300は、登録された電子書籍の選択画面、つまり、閲覧可能な電子書籍の選択画面をユーザ端末100に提供する(S303)。ユーザは、コンテンツ配信装置300から提供された選択画面において閲覧したい電子書籍を選択する(S102)。ユーザ端末100の表示制御部120(電子書籍閲覧アプリケーション)は、選択された電子書籍のストリーミング配信要求を送信すると共に、電子書籍が選択されたことをトリガーに、ビューア121aを起動する(S103)。
【0055】
コンテンツ提供装置300(コンテンツ配信部322)は、選択された電子書籍のストリーミング配信を開始する(S304)。ユーザ端末100のビューア121aは、受信した順に各パケットを読み込み、ビューア121aの表示領域内に読み込みが完了したカットの表示・再生処理を行う(S104)。このとき、マルチメディアカットが含まれている場合、メディアファイルの再生処理も行う。
【0056】
ビューア121aは、表示領域内に表示するカットの読込処理において、事前読込情報が設定されているか否かを判定する(S105)。設定されていないと判別された場合は、スクロール動作に応じた表示領域内のカットの移動に伴って、次に読み込むべきカットのストリーミング配信要求を送信し(S108)、コンテンツ提供装置300は、スクロール動作に応じた配信要求に基づくストリーミング配信を行う(S306)。ユーザ端末100は、閲覧が終了するまで(S109のNO)、ステップS104に戻って順次受信するパケットを読み込んで、表示・再生処理を行う。閲覧を終了した場合(ビューア121aを閉じる操作を行った場合)は(S109のYES)、ビューア121aを終了する(S110)
【0057】
一方、ステップS105において、事前読込情報が設定されていると判定された場合(S105のYES)、事前読込情報で設定されたマルチメディアカットのメディアファイルの配信要求を送信する(S106)。コンテンツ提供装置300は、事前読込情報に基づく配信要求を受信すると、該当のメディアファイルを事前配信する(S305)。ユーザ端末100は、受信したメディアファイルの事前読込処理を行う(S107)。
【0058】
本実施形態のコンテンツ提供システムは、ストリーミング配信される電子書籍データをスマートフォン等のユーザ端末で閲覧する際に、マルチメディアカットを含む場合に事前読込情報をセットし、マルチメディアカットをスムーズに表示・再生することができる。これにより、マルチメディアカットの表示・再生処理を演出の目的に合わせて最適化したタイミングで行うことができる。
【0059】
以上、本実施形態について説明したが、ビューア121aの表示領域に対するスクロールは、ユーザによる操作以外にもビューア121aが備える自動スクロール機能によるスクロールであってもよい。
【0060】
また、ユーザ端末100及びコンテンツ配信装置の各機能は、プログラムによって実現可能であり、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムが補助記憶装置に格納され、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出された該当プログラムを制御部が実行することで、各部の機能を動作させることができる。
【0061】
また、上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された状態で、コンピュータに提供することも可能である。コンピュータ読取可能な記録媒体としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【符号の説明】
【0062】
100 ユーザ端末
110 通信部
120 制御部
121 表示制御部
121a ビューア
130 スピーカー
140 タッチパネル方式表示・入力部
150 記憶部
300 コンテンツ配信装置
310 通信装置
320 制御装置
321 コンテンツ登録部
322 コンテンツ配信部
330 記憶装置