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特開2023-4410液処理装置用基板保持プレート及び液処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004410
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】液処理装置用基板保持プレート及び液処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230110BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20230110BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230110BHJP
   G03F 7/30 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H01L21/304 646
H01L21/304 643A
H01L21/304 648A
H01L21/304 651B
H01L21/304 651M
H01L21/306 R
H01L21/30 569C
H01L21/30 564C
G03F7/30 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106048
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬嶋 一隆
【テーマコード(参考)】
2H196
5F043
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196GA29
5F043AA32
5F043AA33
5F043BB22
5F043DD07
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE35
5F146JA10
5F146JA24
5F146LA05
5F146LA13
5F157AA91
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157BB23
5F157BH13
5F157BH14
5F157BH18
5F157CF34
5F157CF62
5F157CF92
5F157DA21
5F157DB45
5F157DB51
(57)【要約】
【課題】耐熱性及び耐薬品性に優れており、基板を高速回転させた場合であっても基板と処理液との間に静電気が発生しにくく、処理液中の不溶解物が基板に付着することを防止することができるとともに、処理液を短時間で容易に除去することができる液処理装置用基板保持プレート及び液処理装置を提供する。
【解決手段】基板の表面に処理液を供給し、前記基板を回転させて前記処理液を除去する液処理装置に用いられ、前記基板を載置して保持するための液処理装置用基板保持プレート1であって、等方性黒鉛からなる基材2と、前記基材2における少なくとも前記基板が載置される面2Aに形成された導電性セラミックコート層3と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に処理液を供給する工程と、前記基板を回転させて前記処理液を除去する工程と、を有する液処理工程において用いられ、前記基板が載置される液処理装置用基板保持プレートであって、
等方性黒鉛からなる基材と、
前記基材における少なくとも前記基板が載置される面に形成された導電性セラミックコート層と、
を有する液処理装置用基板保持プレート。
【請求項2】
前記導電性セラミックコート層は、熱分解炭素又はSiCからなる、請求項1に記載の液処理装置用基板保持プレート。
【請求項3】
前記基材は、前記液処理装置用基板保持プレートの回転軸線に沿った第1の方向における熱膨張係数(αz)が、前記第1の方向に対しそれぞれ垂直な第2の方向及び第3の方向における熱膨張係数(αx、αy)よりも大きい、請求項1又は2に記載の液処理装置用基板保持プレート。
【請求項4】
前記基材の熱膨張係数(αx、αy、αz)は、下記式(1)及び式(2)の関係を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の液処理装置用基板保持プレート。
1.05≦αz/αx≦1.3・・・(1)
1.05≦αz/αy≦1.3・・・(2)
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の液処理装置用基板保持プレートと、前記液処理装置用基板保持プレートを回転させる回転機構と、前記基板の表面に前記処理液を供給する液供給機構と、前記液処理装置用基板保持プレート及び前記基板を加熱する加熱機構と、
を有する液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液処理装置用基板保持プレート及び液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体デバイスの製造時においては、フォトリソグラフィ工程として、半導体ウエハの表面にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、形成されたレジスト膜を選択的に露光して、パターンを現像する現像工程とが実施される。
【0003】
現像工程において使用される現像処理装置は、半導体ウエハを支持するスピンチャック(液処理装置用基板保持プレート)と、スピンチャックに保持された半導体ウエハに現像液を供給する現像液供給ノズルと、現像後の半導体ウエハを洗浄するリンス液を吐出するリンス液吐出ノズルとを有する。
【0004】
このような現像処理装置を用いて現像する際には、まず、スピンチャックにより支持された半導体ウエハを適切な回転数で回転させつつ、この半導体ウエハ上に、現像液供給ノズルから現像液を供給する。このとき、現像液の表面張力によって、半導体ウエハ上に現像液が溜まった状態となる。このような状態の現像液を「現像液パドル(Puddle)」という。
現像液パドルが形成された状態で、所定の時間静止して保持した後に、半導体ウエハを回転させて、現像液を除去しつつ、リンス液吐出ノズルから半導体ウエハ上にリンス液(洗浄液)を吐出させ、現像液を洗い流す。
【0005】
ところで、上記のような現像処理装置においては、半導体ウエハを支持するスピンチャックは、処理条件によっては高温に晒されることがあり、また、半導体ウエハの表面に現像液が供給される際に、スピンチャックも現像液に晒される。
そこで、例えば、耐熱性及び耐薬品性を有する材料として、フッ化樹脂等がスピンチャックの材料として使用されている。
【0006】
また、上記現像方法において、現像液を除去する工程では、半導体ウエハに現像液が残存しないように、半導体ウエハの回転数を高く設定する必要がある。これは、半導体ウエハ上に現像液が長く残存すると、現像処理が進みすぎるからである。
しかし、半導体ウエハの回転数を高く設定すると、特に、スピンチャックが樹脂等で形成されている場合には、リンス液と半導体ウエハとの間の摩擦により静電気が発生しやすくなる。そして、この静電気により、現像液中に浮遊しているごみが粒子(パーティクル)となって、半導体ウエハ上に多量に付着することがあり、その結果、半導体装置の品質が低下してしまう。
【0007】
そこで、特許文献1には、基板上の処理液(現像液)を除去する場合に、基板に別の処理液を供給しつつ、基板を低速回転させて所定時間保持する第1工程と、第1工程よりも高速な回転数として基板を所定時間保持する第2工程と、を有する液処理方法が提案されている。
上記特許文献1によると、第1工程において、基板を低速回転させているため、静電気の発生を抑制し、現像液に含まれる不溶解物が基板に付着することを抑制することができる。また、第2工程において、基板を高速回転させているため、基板における現像液の残渣量を低減し、ウエハの品質を高く保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-319870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の液処理方法によると、第1工程で基板を低速回転させているため、処理液の除去が遅くなってしまう。特に、現像処理工程を高温で実施した場合には、処理液の反応速度が速くなるため、過剰な反応が生じて、品質の低下をもたらす原因となる。
また、低速回転する第1工程と、高速回転する第2工程とを実施する必要があるため、
現像工程が煩雑になるとともに、所要時間が長くなり、半導体デバイスの製造コストが上昇するという問題も発生する。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、耐熱性及び耐薬品性に優れており、基板を高速回転させた場合であっても基板と処理液との間に静電気が発生しにくく、処理液中の不溶解物が基板に付着することを防止することができるとともに、処理液を短時間で容易に除去することができる液処理装置用基板保持プレート及び液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明の液処理装置用基板保持プレートは、下記[1]のように構成される。
【0012】
[1] 基板の表面に処理液を供給する工程と、前記基板を回転させて前記処理液を除去する工程と、を有する液処理工程において用いられ、前記基板が載置される液処理装置用基板保持プレートであって、
等方性黒鉛からなる基材と、
前記基材における少なくとも前記基板が載置される面に形成された導電性セラミックコート層と、
を有する液処理装置用基板保持プレート。
【0013】
上記液処理装置用基板保持プレートは、等方性黒鉛からなる基材における少なくとも基板が載置される面に導電性セラミックコート層が形成されたものであるため、耐熱性及び耐薬品性に優れており、繰り返し薬液に晒されても劣化することなく、安定して利用することができる。
また、等方性黒鉛からなる基材及び導電性セラミックコート層は、いずれも導電性材料であるため、基板を高速で回転させ、基板と空気又は薬液との間で摩擦が発生した場合であっても帯電しにくく、静電気の発生を抑制することができ、更に、薬液を短時間で容易に除去することができるとともに、高い信頼性を得ることができる。
さらに、上記液処理装置用基板保持プレートは、基材が緻密で均質な等方性黒鉛からなるので、回転の中心軸と重心とのずれがほとんどなく、高速回転しても振動、共振が発生せず安定して液処理を行うことができる。
また、基材表面が導電性のセラミックコート層からなるので、パーティクルが発生しにくい上に、静電気が発生しにくい。
【0014】
また、本発明の液処理装置用基板保持プレートは、以下[2]~[4]のいずれかの態様であることが好ましい。
【0015】
[2] 前記導電性セラミックコート層は、熱分解炭素又はSiCからなる、[1]に記載の液処理装置用基板保持プレート。
熱分解炭素やSiCは、耐薬品性及び耐熱性に優れている。また、これらのセラミックコート層は気相成長法で形成されているので緻密で不浸透性であり、液処理装置用基板保持プレート内部への処理液の浸透を防止することができる。
【0016】
[3] 前記基材は、前記液処理装置用基板保持プレートの回転軸線に沿った第1の方向における熱膨張係数(αz)が、前記第1の方向に対しそれぞれ垂直な第2の方向及び第3の方向における熱膨張係数(αx、αy)よりも大きい、[1]又は[2]に記載の液処理装置用基板保持プレート。
基材として使用する等方性黒鉛は、製造段階における重力による一軸加圧効果によってわずかに方向性を有している。原材料を充填した際に水平方向に扁平粒子が並びやすくなり、上下方向に熱膨張係数及び固有抵抗が高くなり、水平方向に熱伝導率が高くなる。
このため、製造段階において、熱膨張係数の高くなる方向に液処理装置用基板保持プレートの回転軸を合わせて材料取りすることにより、昇温後の熱膨張差による不均一なプレートの変形や不均一なプレートの温度分布を防止することができる。
【0017】
[4] 前記基材の熱膨張係数(αx、αy、αz)は、下記式(1)及び式(2)の関係を満たす、[1]~[3]のいずれか1つに記載の液処理装置用基板保持プレート。
1.05≦αz/αx≦1.3・・・(1)
1.05≦αz/αy≦1.3・・・(2)
式(1)及び(2)において異方比(αz/αx又はαz/αy)が1.05以上であると、測定器の誤差よりも充分に大きく、異方比の高い方向が容易に検出でき、材料の切り出し方向を正しく選定できる。
一方、式(1)及び(2)において上記異方比が1.3以下であると、液処理装置用基板保持プレートの回転軸に垂直な面において、変形や温度ムラを起こりにくくすることができ、液処理装置用基板保持プレートとして好適に利用できる。
【0018】
また、前記課題を解決するための本発明の液処理装置は、下記[5]のように構成される。
【0019】
[5] [1]~[4]のいずれか1つに記載の液処理装置用基板保持プレートと、前記液処理装置用基板保持プレートを回転させる回転機構と、前記基板の表面に前記処理液を供給する液供給機構と、前記液処理装置用基板保持プレート及び前記基板を加熱する加熱機構と、を有する液処理装置。
上記液処理装置は、耐熱性及び耐薬品性に優れており、繰り返し薬液に晒されても劣化することがない上記液処理装置用基板保持プレートを有するため、安定して利用することができる。
また、上記液処理装置は、基板と空気又は薬液との間で摩擦が発生した場合であっても帯電しにくく、静電気の発生を抑制することができるため、薬液を短時間で容易に除去することができ、高い信頼性を得ることができる。
さらに、液処理装置用基板保持プレートが高い温度で使用できるとともに、高速で回転させても静電気の発生が少ないので処理液を短時間で容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る液処理装置用基板保持プレートは、耐熱性及び耐薬品性に優れており、基板を高速回転させた場合であっても、基板と処理液との間に静電気が発生しにくく、処理液中の不溶解物が基板に付着することを防止することができるとともに、処理液を短時間で容易に除去することができる。
また本発明に係る液処理装置は、耐熱性及び耐薬品性に優れ、薬液を短時間で容易に除去することができ、高い信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置を示す模式図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置における液処理装置用基板保持プレートを拡大して示す断面図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートを示す図であり、図2におけるA部を拡大して示す模式的断面図である。
図4図4は、フォトリソグラフィ工程において実施される液処理工程の例を示す工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者は、静電気の発生を抑制することができるとともに、耐熱性及び耐薬品性に優れた液処理装置用基板保持プレートを得るため、鋭意検討を行った。その結果、液処理装置用基板保持プレートの材料として、等方性黒鉛からなる基材と導電性セラミックコート層とを用いることが効果的であることを見出した。
本発明はこのような知見に基づくものであり、以下において、本発明の実施形態に係る液処理装置用基板保持プレート、並びに液処理装置について詳細に説明する。以下、液処理装置用基板保持プレートを、単に「基板保持プレート」ということがある。
【0023】
以下、本実施形態に係る液処理装置及び液処理装置用基板保持プレートについて、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下に示す実施形態は、液処理装置の一例として、半導体ウエハの表面に所定のパターンを形成するためのフォトリソグラフィ工程において使用される現像処理装置を示したものである。本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
【0024】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態(導電性セラミックコート層が熱分解炭素からなる場合)について説明する。
【0025】
[1.液処理装置]
図1は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置を示す模式図である。また、図2は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置における基板保持プレートを拡大して示す断面図である。
図1に示すように、液処理装置10を構成する筐体11の内部に、半導体ウエハ(基板)20が載置される(液処理装置用)基板保持プレート1が配置されている。基板保持プレート1は、回転軸12を介して筐体11の外部に配置されたモータ(回転機構)13により、図2に矢印で示すように、回転軸12の回転軸線Cを中心にして回転可能に取り付けられている。また、基板保持プレート1の上面には、吸着等の(不図示の)固定機能により、半導体ウエハ20を保持できる構成になっている。
【0026】
固定機能として吸着を用いる場合には、基板保持プレート1は平坦な表面を有することが好ましいが、半導体ウエハ20を機械的に保持するために、基板保持プレート1の表面にピン、溝等の加工が施されていてもよい。
【0027】
筐体11の内部には、基板保持プレート1に対して所定の間隔で下方に離隔した位置に、半導体ウエハ20を加熱する加熱プレート(加熱機構)14が配置されている。さらに、基板保持プレート1に対して所定の間隔で上方に離隔した位置に、液供給ノズル(液供給機構)15が配置されている。液供給ノズル15は、供給管15aを介して筐体11の外部に配置された不図示のタンクに接続されており、半導体ウエハ20の表面に、タンク内に充填された現像液、洗浄液などの処理液を供給することができる。
【0028】
筐体11の外部には、ウエハ搬送アーム16が配置されており、筐体11における開閉可能な搬入口11aを介して、半導体ウエハ20を筐体11の外部から内部に搬入したり、内部から外部に搬出したりすることができるように構成されている。なお、ウエハ搬送アーム16は、半導体ウエハ20のみを搬送するように構成されていてもよいし、半導体ウエハ20と基板保持プレート1とを一緒に搬送するように構成されていてもよい。
【0029】
[2.液処理装置用基板保持プレート]
図3は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートを示す図であり、図2におけるA部を拡大して示す模式的断面図である。
図3に示すように、基板保持プレート1は、等方性黒鉛からなる基材2と、基材2の表面に形成された導電性セラミックコート層3とを有する。なお、図3においては、基材2の表面(上面)2Aの全体に導電性セラミックコート層3が形成されているが、本実施形態に係る基板保持プレート1の目的を達成するためには、基材2における少なくとも半導体ウエハ20が載置される面に導電性セラミックコート層3が形成されていればよい。また、導電性セラミックコート層3が基材2の全面に形成されていてもよく、全面に形成されていることにより、基材2の粉落ちや、欠け(パーティクル)の発生を確実に防止することができる。
【0030】
導電性セラミックコート層3は、導電性を有するセラミック材料からなり、導電性の他に、耐熱性及び耐薬品性を有する。導電性を有するために、基板保持プレート1が高速回転しても処理液との間に静電気が発生しにくくなる。耐熱性及び耐薬品性を有するために、加熱による劣化や変形等を抑えるとともに、処理液による浸食等を抑えることができ、耐久性に優れるようになる。導電性を有するセラミック材料としては、熱分解炭素が好ましい。熱分解炭素は、特に耐薬品性や耐熱性に優れている。また、導電性セラミックコート層3の熱分解炭素は気相成長法で形成されるので緻密で不浸透性であり、基板保持プレート1の内部への処理液の浸透を防止することができる。このような効果を確実に得るためには、導電性セラミックコート層3の厚さは5~100μmとし、好ましくは10~60μmとする。
また、導電性セラミックコート層3の上面3Aに、半導体ウエハ20が載置される。
【0031】
基材2となる等方性黒鉛は、原料を細かく粉砕したのち、冷間静水圧成型(CIP)法等のプレス成形、焼成、黒鉛化を経て得られる。黒鉛は、六方晶系に属するため、特性に異方性があるが、等方性黒鉛は、各結晶粒の結晶方位が無配向であるため、切り出し方向の違いによる特性差が無いという特徴がある。しかし、プレス成形に際して、原材料を充填した際に水平方向に扁平粒子が並びやすくなり、上下方向に熱膨張係数や固有抵抗が高くなり、水平方向に熱伝導率が高くなる。このような黒鉛材を用いて加熱して使用すると、材料の切り出し方向によっては、熱膨張差によって変形を生じ、高速で回転した時には、芯ブレが生じたり、熱伝導差によって方向によって温度ムラが生じやすくなる、
【0032】
そこで、製造段階において、熱膨張係数の高くなる方向に基板保持プレート1の回転軸12を合わせて材料取りすることにより、昇温後の熱膨張差による不均一なプレートの変形、不均一なプレートの温度分布を防止することができる。
【0033】
すなわち、基板保持プレート1の回転軸線Cに沿った第1の方向(Z方向、すなわち図2の上下方向)における熱膨張係数(αz)が、第1の方向に対し垂直な第2の方向(X方向、すなわち図2の左右方向)における熱膨張係数(αx)よりも大きく、かつ、第1の方向に対し、第2の方向とは異なる方向として垂直な第3の方向(Y方向、すなわち図2の表裏方向)における熱膨張係数(αy)よりも大きくなるように、基材2の材料取りを行う。
なお、本発明において熱膨張係数は、50~400℃の間の1℃当たりの伸び率である。
【0034】
上記の熱膨張係数差は、下記の式(1)及び式(2)の関係を満たすことが好ましい。
1.05≦αz/αx≦1.3・・・(1)
1.05≦αz/αy≦1.3・・・(2)
式(1)及び(2)において異方比(αz/αx又はαz/αy)が1.05以上であると、測定器の誤差よりも充分に大きく、異方比の高い方向が容易に検出でき、材料の切り出し方向を正しく選定できる。一方、式(1)及び(2)において異方比が1.3以下であると、基板保持プレート1の半導体ウエハ20の載置面(図3中の符号3A)において、変形や、温度ムラを起こりにくくすることができ、基板保持プレート1として好適に利用できる。
なお、式(1)及び(2)は下記の関係を満足することがより好ましい。
1.1≦αz/αx≦1.2・・・(1)′
1.1≦αz/αy≦1.2・・・(2)′
【0035】
次に、上記のように構成された液処理装置10を使用したフォトリソグラフィ工程について、詳細に説明する。なお、以下に説明するフォトリソグラフィ工程において、上記液処理装置10は、例えば、ウエハ準備工程、脱水ベーク工程、コート工程、現像工程、現像後洗浄工程、ウエットエッチング工程、エッチング後洗浄工程など処理液を取り扱うプロセスにおいて使用することができる。
【0036】
[3.フォトリソグラフィ工程]
<3-1.ウエハ準備工程>
処理前の新しい半導体ウエハ、又は酸化処理、CVD処理等を施した半導体ウエハを洗浄液により洗浄し、表面の汚れを除去する。洗浄液としては、洗浄の対象である汚れに応じて、種々の洗浄液が選択される。
【0037】
<3-2.脱水ベーク工程>
次に、ウエハ準備工程において半導体ウエハを洗浄することにより付着又は吸着した洗浄液を除去する。このとき、必要に応じて疎水化処理が行われることがある。
【0038】
<3-3.コート工程>
その後、半導体ウエハの表面に、スピンコータなどの方法によってレジスト液を薄く塗布する。レジスト液は、後のエッチング工程において、エッチング液から半導体ウエハを保護する役割を有している。
【0039】
<3-4.プリベーク工程>
その後、塗布されたレジスト膜を加熱することにより、レジスト液中の溶媒を除去するとともに、レジスト液を固化させてレジスト膜を形成する。プリベーク工程における加熱温度は、レジスト液中の感光性材料が硬化しない温度が選択される。
【0040】
<3-5.露光工程>
プリベーク工程により得られたレジスト膜に、光を選択的に照射(露光)して、感光性材料を反応させる。光を選択的に照射する方法としては、回路図の形状を描いたマスクを使用する方法、所定の回路図のパターンに従って短波長の光を走査させる方法等を用いることができる。なお、ポジ型のレジスト液を使用した場合には、レジスト膜における不要な領域を露光し、ネガ型のレジスト液を使用した場合には、レジスト膜における必要な領域を露光して硬化させることにより、後述する現像工程で不要な領域を除去することができる。以下、ポジ型のレジスト膜を使用した場合について説明する。
【0041】
<3-6.現像工程>
本実施形態においては、上記液処理装置10を用いて現像処理を実施する。
現像工程においては、露光工程後の半導体ウエハ20を、ウエハ搬送アーム16で保持し、筐体11の内部に搬送するとともに、基板保持プレート1の上に載置する。このとき、半導体ウエハ20は、不図示の固定機能により基板保持プレート1に固定され、保持される。
そして、選択的に露光された半導体ウエハ20の表面に、液供給ノズル15から現像液を供給し、現像液パドルが形成された状態で、所定の時間静止して保持した後に、モータ13により半導体ウエハ20を回転させて、遠心力で現像液を除去する。
これにより、レジスト膜における露光された領域は現像液に溶解し、現像液とともにレジスト膜の不要部分が除去され、回路図の形状を有するレジストマスクが半導体ウエハ20の表面に残存する。
なお、現像液としては、有機溶剤又は有機若しくは無機のアルカリ溶剤が使用される。
【0042】
<3-7.現像後洗浄工程>
その後、レジストマスクが形成された半導体ウエハ20の表面に、液供給ノズルからリンス液を供給し、現像液を洗浄する。リンス液としては、例えば超純水等が使用される。これにより、レジスト膜における露光された領域は完全に除去される。
【0043】
<3-8.ポストベーク工程>
現像後洗浄工程後に半導体ウエハ20を加熱することにより、半導体ウエハ20の表面に残存したリンス液を乾燥させて、完全に除去する。
【0044】
<3-9.ウエットエッチング工程>
レジストマスクを利用して、半導体ウエハの表面にエッチング液を供給し、エッチングを行う。このとき、レジストマスクが形成されていない領域においては、エッチングが進行する。一方、レジストマスクが残存している領域においては、エッチングが進行せず、表面の状態が維持される。
【0045】
<3-10.エッチング後洗浄工程>
半導体ウエハ20の表面のレジストマスクを、溶剤等により除去する。このようにして、回路が形成される。
以上、上記液処理装置10を使用したフォトリソグラフィ工程における各工程について説明した。
【0046】
本実施形態においては、現像工程で液処理装置10を使用している。また、上述のとおり、半導体ウエハ20が載置される基板保持プレート1は、等方性黒鉛からなる基材2の表面に、熱分解炭素からなる導電性セラミックコート層3が形成されたものである。
このように構成された基板保持プレート1は、等方性黒鉛からなる基材2が導電性セラミックコート層3により保護されたものであるため、粉落ち、形状崩れ等が発生せず、現像工程における不純物混入を防止することができる。また、基材2の等方性黒鉛及び導電性セラミックコート層3は、いずれも耐熱性及び耐薬品性に優れており、繰り返し処理液に晒されても劣化することなく、安定して使用することができる。
【0047】
さらに、基材2の等方性黒鉛及び導電性セラミックコート層3は、いずれも導電性材料であるため、現像工程において現像液を除去するために半導体ウエハ20を高速で回転させ、半導体ウエハ20と空気又は現像液との間で摩擦が発生した場合であっても、発生する静電気を逃し、帯電を抑制することができる。
したがって、静電気の発生を抑制するために、半導体ウエハ20の回転速度を低速にする必要がなく、現像液を短時間で容易に除去することができるとともに、過剰な反応を防止でき、所望の形状のパターンを精度よく形成することができる。また、現像液中に浮遊している不純物粒子が、静電気の影響で半導体ウエハ20の表面に付着することを抑制することができ、高い信頼性を有する半導体デバイスを得ることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る基板保持プレート1において、平坦に研削加工された基材2の表面を導電性セラミックコート層3で覆われる構造となっている。したがって、導電性セラミックコート層3の表面についても平坦なものとなり、形状精度の高い液処理装置用基板保持プレートを提供することができる。
【0049】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態(導電性セラミックコート層がSiCからなる場合)について説明する。
【0050】
本実施形態では、基板保持プレート1は、等方性黒鉛からなる基材2が、導電性セラミックコート層3としてSiCにより被覆されている(図3参照)。SiCは、上記の第1実施形態で示した熱分解炭素と同様に、導電性、耐熱性及び耐薬品性を有する。そのため、静電気の発生、加熱による劣化や変形、処理液による浸食を抑えることができる。また、SiCは気相成長法で得られたCVD-SiCであることが好ましい。気相成長法で得られるCVD-SiCは緻密で不浸透性であり、基板保持プレート1の内部への処理液の浸透を防止することができる。
【0051】
また、基材2などの他部材は、第1実施形態と同等であるため説明を省略する。
【0052】
なお、上記フォトリソグラフィ工程においては、それぞれ専用の装置内で各処理工程を実施することができるが、1つの装置内で複数の工程を連続して実施することもできる。また、複数の工程を同時に実行することもできる。
【0053】
フォトリソグラフィ工程は、目的とする集積回路、原材料、補助材料、装置等の組み合わせに応じて、条件、プロセス等の多種多様な組合せが製品ごとに決定される。製品が複雑になるにつれて工程数も増え、1枚のウエハに対して洗浄、乾燥の回数や、使用する洗浄液、現像液等の処理液についても、様々の条件が適用される。
【0054】
したがって、フォトリソグラフィ工程において、本実施形態に係る液処理装置用基板保持プレート及び液処理装置を好適に使用することができる種々の液処理工程を、以下で一般化して説明する。
図4は、フォトリソグラフィ工程において実施される液処理工程の例を示す工程フロー図である。以下、一般的な薬液処理工程から乾燥工程までを図1図3に示す第1実施形態に係る液処理装置を参照して説明する。
【0055】
<STEP1:薬液処理工程>
薬液処理工程とは、半導体ウエハ20、レジスト膜等に対して、液供給ノズル15から薬液を供給し、薬液処理をする工程である。薬液処理工程で使用される薬液は、後の工程で完全に除去することが必要とされる。
薬液処理工程としては、例えば、上記<3-1.ウエハ準備工程>における種々の洗浄液によるウエハの洗浄、上記<3-3.コート工程>におけるスピンコートによる半導体ウエハ上へのレジスト膜の塗布、上記<3-6.現像工程>における現像液によるレジスト膜の不要部分の除去、<3-9.ウエットエッチング工程>におけるエッチング液によるエッチング等が挙げられる。
【0056】
ウエハ準備工程において使用される洗浄液としては、金属、有機物、油脂、自然酸化膜等の様々の汚れを取り除くため、汚れに応じた塩酸、硫酸等の様々の洗浄液を使用することができる。
【0057】
現像工程では、ポジ型のレジスト膜を使用した場合は、露光した領域が現像液によって除去され、ネガ型のレジスト膜、例えば光硬化性樹脂を使用した場合は、露光されていない領域(未硬化領域)が現像液によって除去される。現像液としては、特に限定されないが、例えば、ポジ型のレジスト膜を使用した場合には、塩基水溶液、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム又はコリン等の、金属イオンを含まない水性塩基等が用いられる。また、ネガ型のレジスト膜を使用した場合には、キシレン、アセテート等の有機溶媒、及びこれらの混合液が用いられる。
【0058】
ウエットエッチング工程において使用されるエッチング液としては、フッ硝酸と酢酸との混合液、エチレンジアミンとピロカテコールとの水溶液(EDP:Ethylene diamine+Pyrocatechol+Water)、水酸化カリウム(KOH)とイソプロピルアルコールとの混合液、ヒドラジンとイソプロピルアルコールとの混合液等が挙げられる。
【0059】
なお、薬液処理工程は、必要に応じて加熱プレート14により半導体ウエハ20を加熱しながら実施されることがある。また、薬液処理工程は、十分な洗浄効果を得ることを目的として、また、必要に応じて均等な薬液の厚さを確保することを目的として、液処理装置用基板保持プレート1をモータ13により回転させながら実施されることが好ましい。
【0060】
上記第1及び第2実施形態では、基板保持プレート1が、等方性黒鉛からなる基材2の表面にセラミックコート層3が形成されたものであり、いずれも耐熱性及び耐薬品性に優れた材料であるため、液処理装置用基板保持プレート1が、加熱された場合や繰り返し薬液に晒された場合であっても、劣化することなく安定して使用することができる。
【0061】
さらに、基材2の等方性黒鉛及びセラミックコート層3は、いずれも導電性材料であるため、基板保持プレート1により半導体ウエハ20を高速回転させることにより、半導体ウエハ20と空気、又は半導体ウエハ20と薬液等との間で摩擦が発生した場合であっても帯電しにくく、静電気の発生を抑制することができる。したがって、静電気の発生を抑制するために、半導体ウエハ20の回転速度を低速にする必要がなく、薬液処理工程を短時間で効率よく実施することができるとともに、薬液中の不純物粒子が半導体ウエハ20の表面に付着することを抑制することができる。
【0062】
<STEP2:洗浄工程>
洗浄工程とは、半導体ウエハ20の表面に対して、液供給ノズル15から溶質を含まないリンス液を供給することにより、上記STEP1において使用した薬液を除去する工程である。
洗浄工程としては、例えば、上記<3-7.現像後洗浄工程>における現像液の洗浄、上記<3-10.エッチング後洗浄工程>におけるレジストマスクの除去等が挙げられる。
洗浄工程において使用されるリンス液としては、例えば有機溶媒や超純水を使用することができる。
【0063】
なお、洗浄工程は、リンス液の除去を促進することを目的として、液処理装置用基板保持プレート1を回転させながら実施されることが好ましい。
本発明の第1及び第2実施形態では、基板保持プレート1が、等方性黒鉛からなる基材2の表面に導電性セラミックコート層3が形成されたものであり、いずれも耐熱性及び耐薬品性に優れた材料であるため、液処理装置用基板保持プレート1が、繰り返しリンス液に晒された場合であっても、劣化することなく安定して使用することができる。
【0064】
さらに、基材2の等方性黒鉛及び導電性セラミックコート層3は、いずれも導電性材料であるため、半導体ウエハ20を高速回転させることにより、半導体ウエハ20と空気、又は半導体ウエハ20とリンス液等との間で摩擦が発生した場合であっても帯電しにくく、静電気の発生を抑制することができる。したがって、静電気の発生を抑制するために、半導体ウエハ20の回転速度を低速にする必要がなく、洗浄工程を短時間で効率よく実施することができる。
【0065】
<STEP3:乾燥工程>
乾燥工程とは、リンス液を完全に除去するため、又は薬液中の溶媒を蒸発させて、薬液中の成分を硬化させるために、半導体ウエハ20を加熱プレート14により加熱して、リンス液又は溶媒の蒸発を促進させる工程である。
乾燥工程としては、例えば、上記<3-4.プリベーク工程>におけるレジスト液中の溶媒の除去及びレジスト液の固化、上記<3-8.ポストベーク工程>におけるリンス液の除去、上記<3-7.現像後洗浄工程>及び<3-10.エッチング後洗浄工程>において使用されたリンス液の除去等が挙げられる。
【0066】
上記乾燥工程においては、半導体ウエハ20を保持する基板保持プレート1に対しても同様に加熱される。本発明の第1及び第2実施形態では、基板保持プレート1が、等方性黒鉛からなる基材2の表面に導電性セラミックコート層3が形成されたものであり、いずれも耐熱性及び耐薬品性に優れた材料であるため、基板保持プレート1が、繰り返し加熱された場合であっても、劣化することなく安定して使用することができる。
【0067】
なお、STEP2の洗浄工程と、STEP3の乾燥工程が連続した工程である場合は、両工程を同時に行うことができる。例えば、最初に液供給ノズル15から半導体ウエハ20の表面にリンス液を散布し、大部分の薬液を除去したのち、加熱プレート14により半導体ウエハ20の温度を上げて、リンス液を供給しながら乾燥を同時に行ってもよい。
【0068】
以上、具体的に詳述したように、上記第1及び第2実施形態に係る液処理装置用基板保持プレート及び液処理装置は、フォトリソグラフィ工程における上記STEP1の薬液処理工程、STEP2の洗浄工程及びSTEP3の乾燥工程における種々の工程に適用することができる。
また、本実施形態は、フォトリソグラフィ工程に限定されず、液処理装置用基板保持プレートを用いる種々の液処理に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 液処理装置用基板保持プレート
2 基材
3 導電性セラミックコート層
10 液処理装置
12 回転軸
13 モータ(回転機構)
14 加熱プレート(加熱機構)
15 液供給ノズル(液供給機構)
16 ウエハ搬送アーム
20 半導体ウエハ(基板)
図1
図2
図3
図4