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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044122
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】熱成形用樹脂積層シート及び成形品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20230323BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230323BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230323BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/20 Z
B32B27/00 H
B65D1/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151991
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】396000422
【氏名又は名称】リスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 涼人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隼斗
【テーマコード(参考)】
3E033
4F100
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033AA10
3E033BA14
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA22
3E033BB08
3E033FA01
3E033FA04
4F100AA01A
4F100AA08A
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK05A
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10C
4F100EH202
4F100GB15
4F100GB16
4F100GB23
4F100JB16A
4F100JJ03
4F100JL01
(57)【要約】
【課題】無機物の含有量が多く、成形性に優れると共に、加熱時に臭気の発生が少ない熱成形用樹脂積層シート及び該シートを成形して得られる成形品を提供する。
【解決手段】本発明の熱成形用樹脂積層シートは、無機物及び熱可塑性樹脂を含む内層と、該内層の一方の表面に設けられた第1ポリオレフィン系樹脂層と、該内層の他方の表面に設けられた第2ポリオレフィン系樹脂層を有する樹脂積層シートであって、前記第1ポリオレフィン系樹脂層及び第2ポリオレフィン系樹脂層は、帯電防止剤を含有せず、前記無機物と前記熱可塑性樹脂との質量比が80:20~50:50であり、前記第1ポリオレフィン系樹脂層及び前記第2ポリオレフィン系樹脂層の厚みの合計が、前記樹脂積層シート全体の厚みの10~30%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物及び熱可塑性樹脂を含む内層と、該内層の一方の表面に設けられた第1ポリオレフィン系樹脂層と、該内層の他方の表面に設けられた第2ポリオレフィン系樹脂層と、を有する樹脂積層シートであって、
前記第1ポリオレフィン系樹脂層及び第2ポリオレフィン系樹脂層は、帯電防止剤を含有せず、
前記無機物と前記熱可塑性樹脂との質量比が80:20~50:50であり、
前記第1ポリオレフィン系樹脂層及び前記第2ポリオレフィン系樹脂層の厚みの合計が、前記樹脂積層シート全体の厚みの10~30%であることを特徴とする、熱成形用樹脂積層シート。
【請求項2】
前記無機物が炭酸カルシウムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱成形用樹脂積層シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱成形用樹脂積層シートを熱成形して得られることを特徴とする、成形品。
【請求項4】
前記成形品が電子レンジ対応の飲食品用容器であることを特徴とする、請求項3に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機物の含有量が多く、成形性に優れると共に、加熱時に臭気の発生が少ない熱成形用樹脂積層シート及び該シートを成形して得られる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン系重合体と無機充填材からなる合成樹脂シートは、剛性、耐熱性、耐油性等に優れることが知られている。シート状の合成樹脂シートは、真空、圧空成形等の方法で二次加工され、カップ、トレー等の熱成形品に使用されている。
【0003】
無機充てん材を含む樹脂シートでは、加熱により臭気が発生することがある。かかる臭気の発生は様々な問題を引き起こす。例えば、二次加工時において、樹脂シートの加熱により臭気が発生すると、作業環境が悪化する。また、食品容器では、電子レンジ加熱時に臭気が発生し、食品に臭気が移行するおそれがある。これにより、無機充填材からなる合成樹脂シートを食品容器に使用することが困難になる。
【0004】
無機充てん材を含む樹脂シートにおいて、加熱時の臭気を低減させる方法として、シート中の成分を改良する方法と、層構造を改良する方法が知られている。前者として、特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂と充填剤からなる樹脂組成物に、亜リン酸エステル類と脂肪酸アマイド類を添加することにより、臭気の発生を防止することが開示されている。特許文献2には、メタロセン触媒を使用して、低分子量側の分子量分布を比較的狭くしたポリプロピレンを使用することにより、臭いの主因となる結晶性低分子量PPを低減することが開示されている。後者として、特許文献3には、無機充填材を含有する合成樹脂層を、特定の帯電防止剤を含有する表面層で被覆することにより、臭気を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4495386号公報
【特許文献2】特許第4847667号公報
【特許文献3】特許第3081342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無機充てん材を含む合成樹脂シートでは、樹脂中の無機充てん材の量が多くなるにつれ、シート及び成形品の表面状態が悪化し、成形性が低下する恐れがある。そのため、外層を形成させ、あるいは、フィルムを積層して被覆する方法がとられることがある。また、無機充填材の量が多くなれば、シート二次加工時又は食品容器の電子レンジ加熱等の加熱時における臭気の発生抑制に対して、更なる改良が必要となる。
【0007】
本発明は、無機物の含有量が多く、成形性に優れると共に、加熱時に臭気の発生が少ない熱成形用樹脂積層シート及び該シートを成形して得られる成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱成形用樹脂積層シートは、無機物及び熱可塑性樹脂を含む内層と、該内層の一方の表面に設けられた第1ポリオレフィン系樹脂層(以下、「第1PO層」という。)と、該内層の他方の表面に設けられた第2ポリオレフィン系樹脂層(以下、「第2PO層」という。)を有し、前記第1ポリオレフィン系樹脂層及び第2ポリオレフィン系樹脂層は、帯電防止剤を含有せず、前記無機物と前記熱可塑性樹脂との質量比が80:20~50:50であり、前記第1ポリオレフィン系樹脂層及び前記第2ポリオレフィン系樹脂層の厚みの合計が、前記樹脂積層シート全体の厚みの10~30%であることを特徴とする。
【0009】
本発明の成形品は、本発明の熱成形用樹脂積層シートを熱成形して得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱成形用樹脂積層シート及び成形品は、無機物の含有量が多いにもかかわらず、成形性に優れると共に、加熱時に臭気の発生を抑制することができる。そのため、二次加工時の作業環境の悪化を抑制でき、また、食品用途へ好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0012】
(1)熱成形用樹脂積層シート
本実施形態に係る熱成形用樹脂積層シート(以下、「本シート」という。)は、無機物及び熱可塑性樹脂を含む内層と、該内層の一方の表面側に設けられた第1PO層と、該内層の他方の表面側に設けられた第2PO層を有する。前記第1及び第2PO層は、前記内層の表面に直接積層されていてもよく、後述のように、接着層等の他の層を介して前記内層の表面側に積層されていてもよい。
【0013】
前記内層に含まれる前記無機物の種類、成分、及び形状には特に限定はない。前記無機物として具体的には、例えば、積層樹脂シートの物性(例えば、耐衝撃強度又は耐熱性)の改善を目的とする無機充填材が挙げられる。前記無機物は、1種単独でもよく、2種以上を含んでいてもよい。前記無機充填材として具体的には、例えば、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、ガラスビーズ、ベントナイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、カーボンファイバー、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、ハイドロタルサイト、炭素繊維、軽石粉、雲母、リン酸カルシウム、及びリン酸アルミニウムが挙げられる。前記無機物として炭酸カルシウムは、原料の石灰石が豊富に存在するため、安価で容易に入手でき、特に表面未処理の炭酸カルシウムは、表面処理したタルクと臭いの強さが変わらないことが知られ、表面処理加工を施さなくてもよい点から好ましい。また、炭酸カルシウムに表面処理を施した場合、表面処理剤が熱可塑性樹脂と溶融されるときに臭気を発生することが考えられる。
【0014】
前記内層に含まれる前記熱可塑性樹脂の構造及び性質には特に限定はない。前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂の使用が好ましい。前記ポリプロピレン系樹脂及び前記ポリエチレン系樹脂の構造及び性質には特に限定はない。前記ポリプロピレン系樹脂及び前記ポリエチレン系樹脂は単独重合体でもよく、他の単量体との共重合体でもよい。また、前記ポリプロピレン系樹脂は1種単独でもよく、2種以上を用いてもよい。前記ポリエチレン系樹脂もまた、1種単独でもよく、2種以上を用いてもよい。更に、前記ポリプロピレン系樹脂及び前記ポリエチレン系樹脂として、例えば、MFR値が0.2~2.0g/10分、あるいは0.3~1.0g/10分であるポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を用いることができる。尚、本書面において、MFR値は、JIS K7210の方法に基づいて、ポリプロピレン系樹脂は、測定温度230℃、荷重2.16kg、ポリエチレン系樹脂は、測定温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定された値である。
【0015】
前記ポリプロピレン系樹脂として具体的には、 例えば、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、又はプロピレンとα-オレフィン(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン若しくは1-デセン)との共重合体が挙げられる。前記ポリエチレン系樹脂として具体的には、例えば、ホモポリエチレン(エチレン単独重合体;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等)、又はエチレンとα-オレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネンもしくは1-デセン)との共重合体が挙げられる(但し、前記ポリプロピレン系樹脂と前記ポリエチレン系樹脂とは異なる樹脂である。)。
【0016】
前記熱可塑性樹脂中の前記ポリプロピレン系樹脂及び前記ポリエチレン系樹脂の配合割合には特に限定はない。前記熱可塑性樹脂100質量%中、前記ポリプロピレン系樹脂及び前記ポリエチレン系樹脂はそれぞれ、5~40質量%、好ましくは10~30質量%とすることができる。また、前記ポリプロピレン系樹脂及び前記ポリエチレン系樹脂を含む場合、前記熱可塑性樹脂100質量%中、前記ポリプロピレン系樹脂及び前記ポリエチレン系樹脂の割合の合計は、通常50~100質量%である。前記割合の下限値は55、60、65、又は70質量%とすることができる。また、前記割合の上限値は95、90、85、又は80質量%とすることができる。更に、前記ポリプロピレン系樹脂及び前記ポリエチレン系樹脂の質量比も特に限定はない。前記質量比は通常(0.5~3):1、好ましくは(0.5~2):1とすることができる。
【0017】
前記熱可塑性樹脂は、前記ポリプロピレン系樹脂及び/又は前記ポリエチレン系樹脂のみでもよく、あるいは、他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0018】
前記内層の前記無機物と前記熱可塑性樹脂との質量比は80:20~50:50である。前記質量比が前記範囲内であると、樹脂量を低減でき、その結果、燃焼時の発熱量を抑制して環境負荷を低減することができるので好ましい。
【0019】
前記第1及び第2PO層を構成するポリオレフィン系樹脂の種類及び構造には特に限定はない。前記ポリオレフィン系樹脂は単独重合体でもよく、2種以上のオレフィンの共重合体又はオレフィンと他の単量体との共重合体でもよい。また、前記ポリオレフィン系樹脂として、例えば、MFR値が1.0~3.0g/10分、あるいは1.5~3.0g/10分であるポリオレフィン系樹脂、特にはMFR値が上記範囲内であるホモPP樹脂を用いることができる。
【0020】
前記第1及び第2PO層を構成するポリオレフィン系樹脂は、同じポリオレフィン系樹脂でもよく、構造又は性質が異なるポリオレフィン系樹脂でもよい。通常は同じポリオレフィン系樹脂が用いられる。
【0021】
前記ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂を用いる場合、前記内層に含まれる前記ポリプロピレン系樹脂又は前記ポリエチレン系樹脂と同じ樹脂でもよく、異なる性質の樹脂、例えば異なるMFRの樹脂でもよい。例えば、前記ポリオレフィン系樹脂として、前記内層に含まれる前記ポリプロピレン系樹脂又は前記ポリエチレン系樹脂よりもMFRが大きいポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂を用いることができる。より具体的には、例えば、前記ポリオレフィン系樹脂として、MFRが2.0以上のポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂を用い、前記内層に含まれるポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂として、MFRが1.0以下のポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂を用いることができる。
【0022】
前記ポリオレフィン系樹脂として具体的には、例えば、ポリエチレン樹脂(例えば、高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレン);ポリプロピレン樹脂;ポリスチレン樹脂;エチレン又はプロピレンと他の単量体との共重合体(例えば、プロピレン-エチレン共重合体樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂)が挙げられる。前記ポリオレフィン系樹脂は1種単独でもよく、2種以上を用いてもよい。
【0023】
前記前記第1及び第2PO層は、前記ポリオレフィン系樹脂のみでもよく、あるいは、他の樹脂を含んでいてもよい。
【0024】
前記第1及び第2PO層の厚みの合計は、本シート全体の厚みの10~30%、好ましくは10~25%である。前記第1及び第2PO層の厚みの合計が前記範囲内であると、加熱時の臭気を低減することができるので好ましい。前記第1及び第2PO層の厚みの合計が上記範囲である限り、前記第1及び第2PO層の厚みは適宜設定することができる。前記第1及び第2PO層の厚みの合計として具体的には、例えば、0.04~0.12mm、好ましくは0.04~0.1mmとすることができる。尚、前記第1PO層及び第2PO層の厚みはそれぞれ同じでもよく、異なってもよい。
【0025】
本シートでは、前記第1及び第2PO層は、帯電防止剤を含有しない。本シートでは、前記第1及び第2PO層において帯電防止剤を含有しなくても、加熱時の臭気の発生を抑制することができるので好ましい。前記帯電防止剤は、樹脂の導電性を高める性質を持つ成分である限り、その種類に限定はない。前記帯電防止剤として具体的には、例えば、イオン性化合物、特には金属塩及び有機塩の少なくとも一方からなるイオン性化合物が挙げられる。尚、前記帯電防止剤を「含まない」には、全く帯電防止剤を含まない場合だけでなく、帯電防止効果を奏し得ない程度の極微量の帯電防止剤を含む場合(例えば、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01質量部以下、あるいは0.005質量部以下、あるいは0.001質量部以下含む態様)も含まれる。
【0026】
本シートの層構造は、前記内層、第1PO層、及び第2PO層を含む限り特に限定はない。本シートは、前記内層、第1PO層、及び第2PO層のみで構成されていてもよく、必要に応じて更に他の層を有していてもよい。また、前記他の層は1層単独でもよく、組成又は物性が同一の又は異なる2層以上でもよい。
【0027】
前記他の層の種類には特に限定はない。前記他の層として具体的には、例えば、表層に加飾印刷されたラミネートフィルム層、ガスバリア層、層間を接着する接着層が挙げられる。また、前記他の層の積層位置についても特に限定はない。前記他の層は、前記内層及び第1PO層の間、前記内層及び第2PO層の間に設けられていてもよく、あるいは、前記第1又は第2PO層の外側表面(前記内層に積層されている表面と反対側の表面)に設けられていてもよい。
【0028】
本シートの具体的形状には特に限定はなく、必要に応じて適宜決定することができる。よって、前記「シート」の用語には、フィルム状も含まれる。本シートの厚みは、例えば、0.1~3mm、あるいは0.3~2mmとすることができる。
【0029】
本シートは、成形性を著しく損なわない範囲で、シート又は成形品を得る際に発生する耳ロス、スケルトンなどの製造工程内ロスや、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。前記他の成分として具体的には、例えば、公知の樹脂シートに用いられている添加剤、例えば、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤(但し、前記第1PO層及び第2PO層は除く。)、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、及び抗菌剤が挙げられる。前記他の成分は、前記内層、第1PO層、及び第2PO層のいずれかに含んでいてもよく、全てに含んでいてもよい。
【0030】
(2)成形品
本成形品は、本シートを熱成形することにより得ることができる。該成形としては通常、熱成形が挙げられる。該熱成形の具体的方法には特に限定はなく、公知の熱成形方法、例えば、熱盤成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、プラグ成形、又はプレス成形を用いることができる。また、熱成形の条件も特に限定はない。成形条件は必要に応じて適宜決定することができる。
【0031】
本成形品の具体的用途には特に限定はない。該用途としては、包装用容器等の容器、例えば、飲食品用容器が挙げられる。前記飲食品用容器として特に、容器ごと加熱調理される飲食品用容器、例えば電子レンジ加熱用の食品用容器が好ましい。本成形品を飲食品用容器、特に容器ごと加熱調理される飲食品用容器として用いると、加熱時の臭気の発生を低減することにより、飲食品への臭気の移行を抑制することができるので好ましい。
【0032】
本成形品の形状及び寸法には特に限定はなく、適宜設定することができる。本成形品が容器である場合、前記容器の形状として具体的には、胴部及び該胴部の一端側に形成された底部を有し、前記胴部の他端側には開口部を有する容器が挙げられる。前記開口部は更にフランジ部を有していてもよい。尚、前記「容器」は、容器全体だけでなく、容器の一部も含む。例えば、前記「容器」には、容器の本体のみならず、容器の蓋体も含まれる。よって、前記「容器」は容器本体のみでもよく、容器の蓋体のみでもよい。
【実施例0033】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、実施例に示す形態に限定されない。本発明の実施形態は、目的及び用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更することができる
【0034】
(1)樹脂シートの製造
原料として、以下の各成分を用いた。
(A)炭酸カルシウム;重質炭酸カルシウム(平均粒子径1.5μm)
(B)ポリプロピレン樹脂
<第1及び第2PO層用>
(B-1)ホモポリプロピレン:日本ポリプロ社製,グレード名「FY6C」(MFR 2.4g/10分)
<内層用>
(B-2)ホモポリプロピレン:日本ポリプロ社製,グレード名「EA9」(MFR 0.5g/10分)
(C)ポリエチレン樹脂
高密度ポリエチレン:京葉ポリエチレン社製 グレード名「B5803」(MFR:0.3g/10分)
【0035】
<実施例1及び2>
(A)炭酸カルシウム、(B-2)ホモポリプロピレン、及び(C)高密度ポリエチレンを60:20:20の割合で配合し、内層用組成物を調製した。第1及び第2PO層に使用する(B-1)ホモポリプロピレンと、前記内層用組成物とを、それぞれの押出機でドライブレンドした後、ホッパーに供給し、溶融混合した樹脂を共押出することにより、実施例1及び2の樹脂シートを得た(厚み:0.40mm、層構成;第1PO層/内層/第2PO層)。具体的には、内層には二軸押出機、第1及び第2PO層には単軸押出機を使用し、フィードブロックで合流後、Tダイスから放流し冷却ロールで冷却することにより、内層並びに第1及び第2PO層を形成及び積層した。実施例1及び2の樹脂シートにおける各層の層比(第1PO層/内層/第2PO層)を表1に示す。
【0036】
<比較例1>
内層並びに第1及び第2PO層の層比を、2/96/2に変更した以外は、実施例と同じ方法により、比較例1の樹脂シートを製造した。
【0037】
<比較例2>
実施例の内層用組成物のみを用いる以外は、実施例と同じ方法により、比較例2の樹脂シートを製造した(層比:0/100/0)
【0038】
(2)容器の製造方法
真空圧空成形装置(浅野研究所製)を使用し、実施例及び比較例の樹脂シートを真空圧空成形法により熱成形して、該胴部の一端側に底部が形成され、他端側に開口部を有する容器を製造した(長側232mm×短側195mm×深さ34mm)。
【0039】
(3)性能評価
以下の方法により、実施例及び比較例の樹脂シートの容器成形性及びシートの臭気を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0040】
(I)容器成形性
熱成形後の容器を目視で観察することにより、積層樹脂シートの容器成形性の良否を評価した。表1中、「○」は良好(成形品にしわが入っていない)であり、「×」は不良(成形品にしわが入る)であることを示す。
【0041】
(II)臭気官能検査
積層樹脂シートを約10mm角に刻んだサンプル(35±1g)を、三角フラスコに入れて栓をし、固定クリップで三角フラスコと栓を固定した。その後、エスペック社の「ギアオーブンGPH-100」を用いて、80℃で2時間加熱し、三角フラスコを取り出し、直ちに、人による官能検査を実施した。加熱時に発生したチョークに似た臭いの官能評価レベルを以下の5段階で評価をし、1、2を合格範囲とした。
1:僅かに感じられる
2:感じられる
3:少し強く感じられる
4:臭う
5:強く臭う
【0042】
【表1】
【0043】
実施例の樹脂シートは、内層に多量の無機物を含むにもかかわらず、成形品にしわが入っておらず、容器成形性に優れていた。また、第1及び第2PO層の厚さの合計が本願発明の範囲内である実施例1及び2は、いずれも加熱時の臭気の発生が実用上問題ない程度に低減されていた。一方、第1及び第2PO層を有しない比較例2、並びに第1及び第2PO層の厚さの合計が本願発明の範囲外である比較例1はいずれも、実施例よりも臭気が発生していた。