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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044157
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】全閉型回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
H02K9/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152039
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 驍
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏之
(72)【発明者】
【氏名】大崎 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 周一
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB01
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP07
5H609QQ02
5H609QQ12
5H609RR03
5H609RR16
5H609RR22
5H609RR37
5H609RR38
(57)【要約】
【課題】より不都合が少なくなるよう改善された新規な構成の全閉型回転電機を得る。
【解決手段】実施形態の全閉型回転電機は、ケースと、ステータと、ロータ鉄心と、スパイダーと、ロータシャフトと、仕切り円盤と、ファンと、を備える。仕切り円盤は、ロータ鉄心から第二端壁に向けて延びケース内をステータが収容される密閉空間と密閉空間よりも径方向内方でロータ鉄心の第一空気通路およびスパイダーの第二空気通路から第二端壁の径方向内方の端部に設けられた第一吸気口へと至る上流側空気通路とに仕切る。ファンは、ロータ鉄心から第一端壁に向けて延びケース内を密閉空間と密閉空間よりも径方向内方で第一空気通路および第二空気通路から第一端壁側に向かう下流側空気通路とに仕切り、かつロータシャフトと一体に回転することによって上流側空気通路から第一空気通路および第二空気通路を経由して下流側空気通路側に向かう空気流を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフレームと、前記フレームの軸方向の一端部を覆った第一端壁と、前記フレームの軸方向の他端部を覆った第二端壁と、を有したケースと、
前記フレームの内周面に固定されたステータと、
前記ステータの内周面と対向して配置され、前記軸方向に貫通した第一空気通路が設けられたロータ鉄心と、
前記ロータ鉄心の内周面に固定され、前記軸方向に貫通した第二空気通路が設けられ、かつ前記ロータ鉄心よりも前記軸方向に延びたスパイダーと、
前記スパイダーの内周部に固定され、前記軸方向の両端部に設けられた一対の軸受を介して前記第一端壁および前記第二端壁に回転可能に支持されたロータシャフトと、
前記ロータシャフトの外周面に固定され、前記ロータ鉄心から前記第二端壁に向けて延び前記ケース内を前記ステータが収容される密閉空間と当該密閉空間よりも前記ステータの径方向内方で前記第一空気通路および前記第二空気通路から前記第二端壁の前記径方向内方の端部に設けられた第一吸気口へと至る上流側空気通路とに仕切る仕切り円盤と、
前記ロータシャフトの外周面に固定され、前記ロータ鉄心から前記第一端壁に向けて延び前記ケース内を前記密閉空間と当該密閉空間よりも前記径方向内方で前記第一空気通路および前記第二空気通路から前記第一端壁側に向かう下流側空気通路とに仕切り、かつ前記ロータシャフトと一体に回転することによって前記上流側空気通路から前記第一空気通路および前記第二空気通路を経由して前記下流側空気通路側に向かう空気流を生成するファンと、
を備えた、全閉型回転電機。
【請求項2】
前記第一端壁の前記径方向内方の端部には、第二吸気口が設けられ、
前記下流側空気通路は、前記密閉空間よりも前記軸方向の一端部側で前記径方向外方に延びており、
前記フレームには、前記下流側空気通路を介して前記第二吸気口および前記第一吸気口と連通する第一排気口が設けられた、請求項1に記載の全閉型回転電機。
【請求項3】
前記第一端壁の前記径方向外方の端部には、第二排気口が設けられ、
前記ファンは、前記第一吸気口から吸気され前記第一排気口から排気される第一空気流を生成する第一羽根と、前記第二吸気口から吸気され前記第二排気口から排気される第二空気流を生成する第二羽根と、前記第一空気流と前記第二空気流とを仕切る仕切板と、を有した、請求項2に記載の全閉型回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、全閉型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータと、ステータの内周面と対向して配置され軸方向に貫通した空気通路が設けられたロータ鉄心と、ロータ鉄心の内周部に取り付けられケースに一対の軸受を介して回転可能に支持されたロータシャフトと、ロータ鉄心の軸方向の一端部に固定されたファンと、ロータ鉄心の軸方向の他端部に固定された仕切り円盤と、を備えた全閉型回転電機が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-098791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の全閉型回転電機では、より不都合が少なくなるよう改善された新規な構成が得られれば、有益である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の全閉型回転電機は、ケースと、ステータと、ロータ鉄心と、スパイダーと、ロータシャフトと、仕切り円盤と、ファンと、を備える。ケースは、筒状のフレームと、フレームの軸方向の一端部を覆った第一端壁と、フレームの軸方向の他端部を覆った第二端壁と、を有する。ステータは、フレームの内周面に固定される。ロータ鉄心は、ステータの内周面と対向して配置され、軸方向に貫通した第一空気通路が設けられる。スパイダーは、ロータ鉄心の内周面に固定され、軸方向に貫通した第二空気通路が設けられ、かつロータ鉄心よりも軸方向に延びる。ロータシャフトは、スパイダーの内周部に固定され、軸方向の両端部に設けられた一対の軸受を介して第一端壁および第二端壁に回転可能に支持される。仕切り円盤は、ロータシャフトの外周面に固定され、ロータ鉄心から第二端壁に向けて延びケース内をステータが収容される密閉空間と当該密閉空間よりもステータの径方向内方で第一空気通路および第二空気通路から第二端壁の径方向内方の端部に設けられた第一吸気口へと至る上流側空気通路とに仕切る。ファンは、ロータシャフトの外周面に固定され、ロータ鉄心から第一端壁に向けて延びケース内を密閉空間と当該密閉空間よりも径方向内方で第一空気通路および第二空気通路から第一端壁側に向かう下流側空気通路とに仕切り、かつロータシャフトと一体に回転することによって上流側空気通路から第一空気通路および第二空気通路を経由して下流側空気通路側に向かう空気流を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態の全閉型回転電機の例示的な断面図である。
図2図2は、第1変形例の全閉型回転電機の例示的な断面図である。
図3図3は、第2変形例の全閉型回転電機の例示的な断面図である。
図4図4は、第3変形例の全閉型回転電機の例示的な断面図である。
図5図5は、第4変形例の全閉型回転電機の例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0008】
また、以下に開示される実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0009】
[実施形態]
図1は、実施形態の全閉型回転電機1の断面図である。図1に示される全閉型回転電機1は、鉄道車両に搭載されるモータとして構成されており、ステータ2や、ロータシャフト3、ロータ鉄心4、スパイダー5、ファン7、仕切り円盤8、ケース10等を備えている。全閉型回転電機1は、不図示のカップリングやギアボックス等を介して回転力(トルク)を鉄道車両の車輪に伝達できるように接続されている。
【0010】
なお、以下の説明では、便宜上、全閉型回転電機1の回転中心Axの軸方向を、単に軸方向と称し、回転中心Axの径方向を、単に径方向と称し、回転中心Axの周方向を、単に周方向と称する。また、図中、軸方向の一端部側(駆動側、カップリング側)を矢印Xで示し、径方向の外方を矢印Rで示す。
【0011】
ケース10は、フレーム11と、複数のブラケット6,13,14と、を有している。フレーム11は、回転中心Axを中心とした二重の円筒状に構成されている。すなわち、フレーム11は、外筒部11aと、内筒部11bと、を有している。外筒部11aと内筒部11bとの間には、後述するファン7の回転によって生成される空気流Wが流れる下流側空気通路10cが設けられている。
【0012】
外筒部11aの軸方向の他端部には、排気口10dが設けられている。排気口10dは、下流側空気通路10cの開放端を構成している。下流側空気通路10cは、外筒部11aや、内筒部11b、ブラケット6,13、ファン7等によって囲まれており、ロータ鉄心4の軸方向の一端部からステータ2の回りを囲むように軸方向および径方向に延びている。排気口10dは、この下流側空気通路10cを介して後述するロータ鉄心4の空気通路4aおよびスパイダー5の空気通路5aと連通している。排気口10dは、第一排気口の一例である。
【0013】
また、内筒部11bの内周面11dには、凹部11cが設けられている。凹部11cは、内周面11dから径方向の外方に凹み、径方向の内方に向けて開放されている。凹部11cには、ステータ2のステータ鉄心2aが軸方向に挟まれた状態で固定される。凹部11cの側面は、鉄心押さえとして機能している。
【0014】
ブラケット6は、外筒部11aの軸方向の一端部に取り付けられている。ブラケット6は、径方向および周方向に沿って広がった円盤状に構成され、下流側空気通路10cを軸方向の一端部側から覆っている。ブラケット6は、外筒部11aの一端部から径方向内方に延びた端壁11e1と軸方向に重ねられ、ネジやボルト等の結合具によって締結(一体化)される。
【0015】
ブラケット13は、ブラケット6の内周部に取り付けられている。ブラケット13は、ネジやボルト等の結合具を介してブラケット6と締結(一体化)される。また、ブラケット13の内周面には、軸受16aが取り付けられている。軸受16aは、コロ軸受等によって構成されている。軸受16aは、第一軸受の一例であり、ブラケット6,13および端壁11e1は、フレーム11の軸方向の一端部を覆った第一端壁の一例である。
【0016】
ブラケット14は、内筒部11bの軸方向の他端部から径方向内方に延びた端壁11e2の内周部に取り付けられている。ブラケット14は、ネジやボルト等の結合具を介して端壁11e2と締結(一体化)される。また、ブラケット14の内周面には、軸受16bが取り付けられている。軸受16bは、玉軸受等によって構成されている。軸受16bは、第二軸受の一例であり、ブラケット14および端壁11e2は、フレーム11の軸方向の他端部を覆った第二端壁の一例である。
【0017】
また、端壁11e2における軸受16bの近傍には、吸気口10aが設けられている。吸気口10aは、ケース10内においてロータ鉄心4よりも軸方向の他端部側に位置された上流側空気通路10bと連通している。上流側空気通路10bは、端壁11e2や、ブラケット14、仕切り円盤8等によって囲まれている。吸気口10aは、この上流側空気通路10bを介してスパイダー5の空気通路5aおよびロータ鉄心4の空気通路4aと連通している。吸気口10aは、第一吸気口の一例である。
【0018】
ステータ2は、ステータ鉄心2aと、コイル2bと、を有している。ステータ鉄心2aは、回転中心Axを中心とした円環状に構成され、フレーム11の内周面11dに固定されている。ステータ鉄心2aは、磁性材によって作られた複数の鋼板2cを軸方向に積層することによって構成された所謂積層コアである。コイル2bは、ステータ鉄心2aの内周部に設けられたスロットに埋め込まれている。コイル2bのコイルエンドは、ステータ鉄心2aの軸方向の両端面から張り出している。
【0019】
ここで、本実施形態では、ステータ2は、フレーム11の内筒部11b、ロータ鉄心4、ファン7、および仕切り円盤8によって囲まれた密閉空間9に収容されている。ステータ2は、コイル2bへの通電によってケース10の内部に磁界を発生させ、当該磁界との相互作用によってステータ2の径方向内方に位置されたロータ鉄心4ひいてはロータシャフト3を回転中心Ax回りの周方向に回転させる。
【0020】
ロータ鉄心4は、円環状に構成されている。ロータ鉄心4の外周面は、僅かな径方向の隙間を介してステータ鉄心2aの内周面2dと対向している。また、ロータ鉄心4の内周部にはロータシャフト3が取り付けられ、ケース10内を軸方向に沿って延びている。ロータシャフト3は、軸方向の両端部に設けられた一対の軸受16a,16bを介して端壁11e1,11e2に回転可能に支持されている。ロータシャフト3の軸方向の一端部3aは、ケース10の外側に突出しており、この突出部分に駆動歯車装置を接続するための継手が取り付けられる。
【0021】
ロータ鉄心4の内周面4dは、スパイダー5の円筒部5bに固定されている。ロータ鉄心4は、磁性材によって作られた複数の鋼板4bを軸方向に積層することによって構成されている。また、ロータ鉄心4は、スパイダー5のフランジ5cおよび鉄心押さえ15によって軸方向両側から挟まれた状態で固定されている。鉄心押さえ15は、円環状に構成され、ロータ鉄心4の軸方向の一端面を支持している。
【0022】
また、ロータ鉄心4には、複数の鋼板4bを軸方向に貫通した空気通路4aが設けられている。空気通路4aの軸方向の一端部は、鉄心押さえ15の貫通孔15aやファン7の貫通孔7bを介して下流側空気通路10cと連通し、空気通路4aの軸方向の他端部は、スパイダー5の貫通孔5dや仕切り円盤8の貫通孔8bを介して上流側空気通路10bと連通している。本実施形態では、ロータ鉄心4には、周方向に互いに間隔をあけて複数の空気通路4aが設けられている。空気通路4aは、第一空気通路の一例である。
【0023】
スパイダー5は、円筒部5bと、フランジ5cと、を有している。円筒部5bは、回転中心Axを中心とした円筒状に構成されている。円筒部5bは、ロータシャフト3とロータ鉄心4との間に介在し、ロータシャフト3の外周面に圧入やキー嵌合等によって固定されている。また、円筒部5bは、ロータ鉄心4よりも軸方向に延びており、ファン7と仕切り円盤8との間に亘っている。円筒部5bの外周面には、ロータ鉄心4の内周面4dが圧入やキー嵌合等によって固定されている。
【0024】
ここで、本実施形態では、円筒部5bには、当該円筒部5bを軸方向に貫通した空気通路5aが設けられている。空気通路5aは、空気通路4aよりも径方向の幅が狭いスリット状に構成されている。空気通路5aの軸方向の一端部は、ファン7の貫通孔7cを介して下流側空気通路10cと連通し、空気通路5aの軸方向の他端部は、仕切り円盤8の貫通孔8cを介して上流側空気通路10bと連通している。本実施形態では、円筒部5bには、周方向に互いに間隔をあけて複数の空気通路5aが設けられている。空気通路5aは、第二空気通路の一例である。
【0025】
フランジ5cは、円筒部5bの軸方向の他端部から径方向外方に突出している。フランジ5cは、回転中心Axを中心とした円環状の板状に構成され、ロータ鉄心4の軸方向の他端面を支持している。また、フランジ5cには、軸方向に貫通した貫通孔5dが設けられ、上述したロータ鉄心4の空気通路4aと軸方向に連通している。
【0026】
仕切り円盤8は、フランジ5cの軸方向の他端部側に隣接して設けられている。仕切り円盤8は、漏斗形状(ラッパ形状)に構成されている。具体的には、仕切り円盤8は、図1の断面視では、フランジ5c側から端壁11e2に向けて軸方向の他端部側ほど径方向外方に向かうように傾斜して延びている。仕切り円盤8は、ロータシャフト3の外周面に圧入やキー嵌合等によって固定されている。
【0027】
また、仕切り円盤8の外周縁部8eには、軸方向の他端部側に突出する爪部8dが形成されている。一方、端壁11e2の二股状に分岐された内側の内周縁部11iには、軸方向の一端部側に突出する爪部11hが形成されている。爪部8dと爪部11hとは、円環状の微小隙間を介して互いに係合している。本実施形態では、爪部8dと爪部11hとの間には、円環状の微小隙間が図1の断面視で凹凸状に形成され、これによりラビリンス構造が形成されている。
【0028】
仕切り円盤8は、上述した構成によってステータ2が収容される略密閉された密閉空間9と当該密閉空間9よりも径方向内方で空気通路4a,5aから吸気口10aへと至る上流側空気通路10bとを仕切っている。なお、仕切り円盤8の外周縁部8eとは反対側、すなわち軸方向の一端部側の底部8aには、軸方向に貫通し空気通路4a,5aの一部を構成する複数の貫通孔8b,8cが設けられている。
【0029】
ファン7は、鉄心押さえ15および円筒部5bの軸方向の一端部側に隣接して設けられている。ファン7は、複数の羽根7aと、主板7fと、を有している。主板7fは、漏斗形状(ラッパ形状)に構成されている。具体的には、主板7fは、図1の断面視では、鉄心押さえ15側から端壁11e1に向けて軸方向の一端部側ほど径方向外方に向かうように傾斜して延びている。主板7fは、ロータシャフト3の外周面に圧入やキー嵌合等によって固定されている。
【0030】
また、主板7fの外周縁部7eには、軸方向の他端部側に突出する爪部7dが形成されている。一方、内筒部11bの軸方向の一端部から径方向内方に延びた部分の内周縁部11gには、軸方向の一端部側に突出する爪部11fが形成されている。爪部7dと爪部11fとは、円環状の微小隙間を介して互いに係合している。本実施形態では、爪部7dと爪部11fとの間には、円環状の微小隙間が図1の断面視で凹凸状に形成され、これによりラビリンス構造が形成されている。
【0031】
ファン7は、上述した構成によってステータ2が収容される密閉空間9と当該密閉空間9よりも径方向内方で空気通路4a,5aから端壁11e1側へと向かう下流側空気通路10cとを仕切っている。下流側空気通路10cは、密閉空間9よりも軸方向の一端部側で径方向外方に延びかつ密閉空間9よりも径方向外方で軸方向の他端部側に向けて延びて排気口10dへと至る。なお、主板7fの外周縁部7eとは反対側、すなわち軸方向の他端部側の底部には、軸方向に貫通し空気通路4a,5aの一部を構成する複数の貫通孔7b,7cが設けられている。
【0032】
羽根7aは、主板7fの傾斜部分における密閉空間9とは反対側、すなわち下流側空気通路10c側の面に設けられている。複数の羽根7aは、回転中心Axを中心として放射状に延びている。複数の羽根7aは、主板7fの周方向に等間隔または不等間隔で配置されうる。
【0033】
ファン7の羽根7aは、回転中心Ax回りの回転によって吸気口10aから上流側空気通路10bに導入され、複数の空気通路4a,5aを経由して下流側空気通路10c側に向かう空気流Wを生成可能である。下流側空気通路10cに導入された空気流Wは、下流側空気通路10cのうちファン7とブラケット6とによって囲まれた径方向外方に延びた部分と外筒部11aと内筒部11bとによって囲まれた軸方向に延びた部分とを流れて内筒部11b(ステータ2)と熱交換を行い、フレーム11の排気口10dから外部に排出される。
【0034】
以上のように、本実施形態では、全閉型回転電機1は、筒状のフレーム11と、フレーム11のX方向(軸方向)の一端部を覆った端壁11e1(第一端壁)と、フレーム11の軸方向の他端部を覆った端壁11e2(第二端壁)と、を有したケース10と、フレーム11の内周面11dに固定されたステータ2と、ステータ2の内周面2dと対向して配置され、X方向に貫通した空気通路4a(第一空気通路)が設けられたロータ鉄心4と、ロータ鉄心4の内周部に取り付けられ、ケース10内をX方向に延び、端壁11e1および端壁11e2に一対の軸受16a,16bを介して回転可能に支持されたロータシャフト3と、ロータシャフト3の外周面とロータ鉄心4の内周面4dとの間に固定され、ロータシャフト3およびロータ鉄心4と一体に回転可能であり、かつX方向に貫通した空気通路5a(第二空気通路)が設けられたスパイダー5と、ロータ鉄心4のX方向の他端部に固定され、ロータ鉄心4から端壁11e2に向けて延びケース10内をステータ2が収容される密閉空間9と当該密閉空間9よりも径方向内方で空気通路4a,5aから端壁11e2の径方向内方の端部に設けられた吸気口10a(第一吸気口)へと至る上流側空気通路10bとに仕切る仕切り円盤8と、ロータ鉄心4のX方向の一端部に固定され、ロータ鉄心4から端壁11e1に向けて延びケース10内を密閉空間9と当該密閉空間9よりも径方向内方で空気通路4a,5aから端壁11e1側に向かう下流側空気通路10cとに仕切り、かつロータ鉄心4と一体に回転することによって上流側空気通路10bから空気通路4a,5aを経由して下流側空気通路10c側に向かう空気流Wを生成するファン7と、を備える。
【0035】
このような構成によれば、ロータ鉄心4およびスパイダー5によって、全閉型回転電機1の回転子部分に径方向に互いに間隔をあけて複数の空気通路4a,5aを構成することができる。これにより、ロータ鉄心4のみに径方向に互いに間隔をあけて複数の空気通路が設けられた場合と比べて、ロータ鉄心4の剛性や強度の低下を抑制しつつ、空気流Wによって一対の軸受16a,16bや、ロータ鉄心4、ロータシャフト3等の温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0036】
また、ロータシャフト3とロータ鉄心4との間に介在するスパイダー5によって、ロータシャフト3をロータ鉄心4に対してより容易に、あるいはより円滑に取り付けたり取り外したりでき、ひいてはロータシャフト3のメンテナンスやリペア等の作業性を高めることができる。また、ケース10内の上流側空気通路10bと下流側空気通路10cとにそれぞれ独立してファン7や、吸気口10a、排気口10d等の冷却構造が設けられた場合と比べて、全閉型回転電機1がより簡素に構成されやすく、ひいては全閉型回転電機1の製造に要する手間や費用を低減することができたり、全閉型回転電機1をより小型に構成することができたりする。
【0037】
[第1変形例]
図2は、第1変形例の全閉型回転電機1Aの断面図である。全閉型回転電機1Aは、上記実施形態の全閉型回転電機1と同様の構成を備えている。よって、全閉型回転電機1Aは、当該同様の構成に基づく上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0038】
ただし、本変形例では、図2に示されるように、端壁11e1の径方向内方の端部に吸気口12aが設けられている点が、上記実施形態と相違している。吸気口12aは、下流側空気通路10cと連通し、当該下流側空気通路10cにおける軸受16aの近傍に外気を導入可能である。吸気口12aは、第二吸気口の一例である。
【0039】
本変形例では、ファン7は、回転中心Ax回りの回転によって二つの吸気口10a,12aから吸気され一つの排気口10dから排気される空気流Wを生成する。空気流Wは、吸気口10aから上流側空気通路10bに導入され、ロータ鉄心4の空気通路4aまたはスパイダー5の空気通路5a、下流側空気通路10cの順に経由して排気口10dから排出される空気流Wと、吸気口12aから下流側空気通路10cに導入され、当該下流側空気通路10cのみを経由して排気口10dから排出される空気流Wと、を含む。
【0040】
このように、本変形例によれば、吸気口12aによって、軸受16aは、軸受16bやロータ鉄心4等のその他の発熱部と熱交換を行う前のより冷たい空気流Wと熱交換を行うことができる。これにより、軸受16aの温度上昇をより効果的に抑制することができ、ひいては空気流Wによる軸受16aの冷却性が軸受16bの冷却性と比べて低下するのを抑制することができる。
【0041】
[第2変形例]
図3は、第2変形例の全閉型回転電機1Bの断面図である。全閉型回転電機1Bは、上記実施形態の全閉型回転電機1と同様の構成を備えている。よって、全閉型回転電機1Bは、当該同様の構成に基づく上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0042】
ただし、本変形例では、図3に示されるように、端壁11e1の径方向外方の端部に排気口12bが設けられ、かつファン7が軸方向に並んだ送風用の第一羽根7a1および第二羽根7a2を有した二層構造の冷却ファンによって構成されている点が、上記実施形態と相違している。排気口12bは、第二排気口の一例である。
【0043】
本変形例では、ファン7の主板7fは、第一部分7f1と、第二部分7f2と、を有している。第一部分7f1および第二部分7f2は、軸方向に互いに間隔をあけて並び、それぞれ図3の断面視で、鉄心押さえ15側から端壁11e1に向けて軸方向の一端部側ほど径方向外方に向かうように傾斜して互いに平行に延びている。第一部分7f1の外周縁部7eは、上述した内筒部11bの内周縁部11gと爪部7d,11fを介して互いに係合している。第一部分11f1は、下流側空気通路10cと上述したステータ2が収容される密閉空間9とを仕切っている。
【0044】
また、第二部分7f2の外周縁部7eについても、軸方向の他端部側に突出する爪部7dが形成される一方で、外筒部11aにおける端壁11e1の内周縁部には、軸方向の一端部側に突出する爪部11fが形成されている。爪部7dと爪部11fとは、円環状の微小隙間を介して互いに係合している。本変形例では、爪部7dと爪部11fとの間には、円環状の微小隙間が図3の断面視で凹凸状に形成され、これによりラビリンス構造が形成されている。
【0045】
第二部分7f2は、上述した構成によって下流側空気通路10cを排気口10d用の第一排出通路10c1と、排気口12b用の第二排出通路10c2と、の二つの空間に仕切っている。第一排出通路10c1および第二排出通路10c2は、互いに軸方向または径方向に並んでいる。なお、本変形例では、第二排出通路10c2は、主板7fの底部に設けられた貫通孔7cを介してスパイダー5の空気通路5aと連通し、第一排出通路10c1は、鉄心押さえ15の貫通孔15aを介してロータ鉄心4の空気通路4aと連通している。
【0046】
第一羽根7a1は、第一部分7f1の傾斜部分における密閉空間9とは反対側、すなわち第一排出通路10c1側の面に固定されている。第一部分7f1には、複数の第一羽根7a1が回転中心Axを中心として放射状に延びた状態に設けられている。第一羽根7a1は、回転中心Ax回りの回転によって吸気口10aから上流側空気通路10bに導入され、ロータ鉄心4の空気通路4a、第一排出通路10c1の順に経由して排気口10dから排出される空気流W1を生成可能である。
【0047】
第二羽根7a2は、第二部分7f2の傾斜部分における第一排出通路10c1とは反対側、すなわち第二排出通路10c2側の面に固定されている。第二部分7f2には、複数の第二羽根7a2が回転中心Axを中心として放射状に延びた状態に設けられている。第二羽根7a2は、回転中心Ax回りの回転によって吸気口10aから上流側空気通路10bに導入され、スパイダー5の空気通路5a、第二排出通路10c2の順に経由して排気口12bから排出される空気流W2を生成可能である。
【0048】
このように、本変形例によれば、二層構造のファン7によって空気流Wを複数の空気流W1,W2に分流することができるため、ケース10内の各発熱部に対する流路構成の自由度が高まりやすく、ひいては一対の軸受16a,16bや、ステータ2等の温度上昇をより効果的に抑制することができる場合がある。
【0049】
[第3変形例]
図4は、第3変形例の全閉型回転電機1Cの断面図である。全閉型回転電機1Cは、上記第2変形例の全閉型回転電機1Bと同様の構成を備えている。よって、全閉型回転電機1Cは、当該同様の構成に基づく上記第2変形例と同様の作用および効果を得ることができる。
【0050】
ただし、本変形例では、図4に示されるように、端壁11e1の径方向内方の端部に吸気口12aが設けられている点が、上記第2変形例と相違している。吸気口12aは、下流側空気通路10cの第二排出通路10c2と連通し、当該第二排出通路10c2における軸受16aの近傍に外気を導入可能である。吸気口12aは、第二吸気口の一例である。
【0051】
本変形例では、ファン7は、回転中心Ax回りの回転によって二つの吸気口10a,12aから吸気され二つの排気口10d,12bから排気される空気流Wを生成する。空気流Wは、吸気口10aから上流側空気通路10bに導入され、ロータ鉄心4の空気通路4a、第一排出通路10c1の順に経由して排気口10dから排出される空気流W1と、吸気口10aから上流側空気通路10bに導入され、スパイダー5の空気通路5a、第二排出通路10c2の順に経由して排気口12bから排出される空気流W2と、吸気口12aから第二排出通路10c2に導入され、当該第二排出通路10c2のみを経由して排気口12bから排出される空気流W2と、を含む。
【0052】
このように、本変形例によれば、吸気口12aによって、軸受16aは、軸受16bやロータ鉄心4等のその他の発熱部と熱交換を行う前のより冷たい空気流W2と熱交換を行うことができる。これにより、軸受16aの温度上昇をより効果的に抑制することができ、ひいては空気流W2による軸受16aの冷却性が空気流W1による軸受16bの冷却性と比べて低下するのを抑制することができる。
【0053】
[第4変形例]
図5は、第4変形例の全閉型回転電機1Dの断面図である。全閉型回転電機1Dは、上記第3変形例の全閉型回転電機1Cと同様の構成を備えている。よって、全閉型回転電機1Dは、当該同様の構成に基づく上記第3変形例と同様の作用および効果を得ることができる。
【0054】
ただし、本変形例では、図5に示されるように、第一排出通路10c1が主板7fの底部に設けられた貫通孔7cを介してロータ鉄心4の空気通路4aおよびスパイダー5の空気通路5aと連通している点が、上記第3変形例と相違している。すなわち、本変形例では、第二排出通路10c2は、軸受16b側の上流側空気通路10bとは連通しないように構成されている。
【0055】
本変形例では、ファン7は、回転中心Ax回りの回転によって二つの吸気口10a,12aから吸気され二つの排気口10d,12bから排出される空気流Wを生成する。空気流Wは、吸気口10aから上流側空気通路10bに導入され、ロータ鉄心4の空気通路4aおよびスパイダー5の空気通路5a、第一排出通路10c1の順に経由して排気口10dから排出される空気流W1と、吸気口12aから第二排出通路10c2に導入され、当該第二排出通路10c2のみを経由して排気口12bから排出される空気流W2と、を含む。空気流W1は、第一空気流の一例であり、空気流W2は、第二空気流の一例である。
【0056】
このように、本変形例によれば、ファン7によって軸受16b用の空気流W1と軸受16a用の空気流W2とに分流することができるため、二つの空気流W1,W2によって一対の軸受16a,16bの冷却性をより高めることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A~1D…全閉型回転電機、2…ステータ、2d…内周面、3…ロータシャフト、4…ロータ鉄心、4a…空気通路(第一空気通路)、4d…内周面、5…スパイダー、5a…空気通路(第二空気通路)、5b…円筒部、5c…フランジ、5d…貫通孔、7…ファン、7a1…第一羽根、7a2…第二羽根、7f2…第二部分(仕切壁)、8…仕切り円盤、9…密閉空間、10…ケース、10a…吸気口(第一吸気口)、10b…上流側空気通路、10c…下流側空気通路、10c1…第一排出通路、10c2…第二排出通路、10d…排気口(第一排気口)、11…フレーム、11e1…端壁(第一端壁)、11e2…端壁(第二端壁)、12a…吸気口(第二吸気口)、12b…排気口(第二排気口)、16a,16b…軸受、Ax…回転中心、R…径方向、W…空気流、W1…第一空気流、W2…第二空気流、X…軸方向。
図1
図2
図3
図4
図5