(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044185
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】タンクローリ
(51)【国際特許分類】
B60P 3/22 20060101AFI20230323BHJP
F17C 7/04 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B60P3/22 Z
F17C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152081
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】笠 直亮
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172BA04
3E172BB03
3E172BD04
3E172GA14
3E172HA04
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】タンク内の液化ガスを効率良く払い出すことができるタンクローリを提供すること。
【解決手段】送出管6の第2配管62のうち、左右方向に延びる第1傾斜部62a及び第3傾斜部62cが上流側から下流側にかけて下降傾斜する勾配を有しているので、水平方向に対して車体が左右方向で傾き、一方の加圧蒸発器7a,7bが持ち上がった傾斜状態においても、一対の加圧蒸発器7a,7bの各々に液化ガスが送出され易くなる。よって、一対の加圧蒸発器7a,7bの各々から十分な量の気化したガスをタンク5内に返送できるので、タンク5内の液化ガスを効率良く払い出すことができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクと、そのタンクを支持するシャシフレームと、そのシャシフレームの車幅方向における両側部に配置され、前記タンク内の液化ガスを気化させて前記タンク内に返送し、前記タンク内を加圧する一対の加圧蒸発器と、それら一対の加圧蒸発器の入口と前記タンクとを接続し、前記タンク内の液化ガスを一対の前記加圧蒸発器の各々に送出する送出管と、を備えるタンクローリにおいて、
前記送出管のうち、車幅方向に延びる部位が上流側から下流側にかけて下降傾斜する勾配を有していることを特徴とするタンクローリ。
【請求項2】
前記送出管の下降傾斜の勾配が一定であることを特徴とする請求項1記載のタンクローリ。
【請求項3】
前記送出管は、前記タンクの後部から下方に延びる第1配管と、その第1配管の下端から車幅方向に分岐して一対の前記加圧蒸発器の入口に接続される第2配管と、を備え、
前記第1配管および第2配管の接続位置と、前記第2配管および前記加圧蒸発器の入口の接続位置とが前後方向で離れた位置に設定され、
前記第2配管が上流側から下流側にかけて下降傾斜する勾配を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のタンクローリ。
【請求項4】
前記加圧蒸発器の入口は、車幅中心側を向くように設けられ、
前記第2配管は、前記第1配管の下端から車幅方向に延びる第1傾斜部と、その第1傾斜部の車幅方向端部から前後方向に延びる第2傾斜部と、その第2傾斜部の前後方向端部から車幅方向に延びて前記加圧蒸発器の入口に接続される第3傾斜部と、から構成され、
前記第1傾斜部、前記第2傾斜部、及び前記第3傾斜部の接続部分が湾曲して形成されることを特徴とする請求項3記載のタンクローリ。
【請求項5】
前記タンクに固定され、車幅方向で所定間隔を隔てて一対に設けられるサブフレームと、それら一対のサブフレームを支持する一対の前記シャシフレームと、一対の前記加圧蒸発器の出口と前記タンクとを接続し、前記加圧蒸発器で気化したガスを前記タンク内に返送する返送管と、を備え、
前記タンク、前記送出管、前記加圧蒸発器、及び前記返送管が一体となったタンクユニットに前記サブフレームが固定され、そのサブフレームを介して前記タンクユニットが前記シャシフレームに架装され、
前記第1配管は、前記タンクの後部から一対の前記シャシフレームの間を通して下方に延び、
前記第1配管と第2配管との接続位置は、前記シャシフレームよりも下方側に位置することを特徴とする請求項3又は4に記載のタンクローリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクローリに関し、特に、タンク内の液化ガスを効率良く払い出すことができるタンクローリに関する。
【背景技術】
【0002】
タンク内の液化ガスを加圧蒸発器に送出し、その液化ガスを蒸発気化させたガスの圧力を利用してタンク内の液化ガスを外部に払い出す技術が知られている。例えば、特許文献1には、車幅方向の両側部に加圧蒸発器を設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-193690号公報(例えば段落0028、
図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術のように、車幅方向の両側部に加圧蒸発器を設ける場合、水平方向に対して車体が車幅方向に傾くと、一方の加圧蒸発器が持ち上がった状態となる。その状態でタンク内の液化ガスを加圧蒸発器に送出すると、他方の加圧蒸発器には液化ガスが送出され易くなるものの、持ち上がった状態の加圧蒸発器には十分な液化ガスを送出することができない。よって、加圧蒸発器からタンク内に返送される気化したガスの量が不十分になり、タンク内の液化ガスを効率良く払い出すことができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、タンク内の液化ガスを効率良く払い出すことができるタンクローリを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のタンクローリは、タンクと、そのタンクを支持するシャシフレームと、そのシャシフレームの車幅方向における両側部に配置され、前記タンク内の液化ガスを気化させて前記タンク内に返送し、前記タンク内を加圧する一対の加圧蒸発器と、それら一対の加圧蒸発器の入口と前記タンクとを接続し、前記タンク内の液化ガスを一対の前記加圧蒸発器の各々に送出する送出管と、を備えるものであり、前記送出管のうち、車幅方向に延びる部位が上流側から下流側にかけて下降傾斜する勾配を有している。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のタンクローリによれば、送出管のうち、車幅方向に延びる部位が上流側から下流側にかけて下降傾斜する勾配を有しているので、水平方向に対して車体が車幅方向で傾き、一方の加圧蒸発器が持ち上がった傾斜状態においても、その持ち上がった状態の加圧蒸発器に液化ガスが送出され易くなる。よって、一対の加圧蒸発器の各々から十分な量の気化したガスをタンク内に返送できるので、タンク内の液化ガスを効率良く払い出すことができるという効果がある。
【0008】
請求項2記載のタンクローリによれば、請求項1記載のタンクローリの奏する効果に加え、送出管の下降傾斜の勾配が一定であるので、液化ガスの流れ易さを、送出管の傾斜部分の全長にわたって均一にできる。これにより、一対の加圧蒸発器の各々に液化ガスがより送出され易くなるので、タンク内の液化ガスをより効率良く払い出すことができるという効果がある。
【0009】
請求項3記載のタンクローリによれば、請求項1又は2に記載のタンクローリの奏する効果に加え、送出管は、タンクの後部から下方に延びる第1配管と、その第1配管の下端から車幅方向に分岐して一対の加圧蒸発器の各々に接続される第2配管と、を備えるので、1つの第1配管を通して一対の加圧蒸発器の各々に液化ガスを送出できる。
【0010】
第1配管および第2配管の接続位置と、第2配管および加圧蒸発器の入口の接続位置とが前後方向で離れた位置に設定されるため、第2配管の一部は前後方向に延びるように形成される。これに対して請求項3では、第2配管が上流側から下流側にかけて下降傾斜する勾配を有しているので、車体が車幅方向および前後方向のいずれの方向に傾斜した状態であっても、一対の加圧蒸発器の各々に液化ガスが送出され易くなる。よって、タンク内の液化ガスをより効率良く払い出すことができるという効果がある。
【0011】
請求項4記載のタンクローリによれば、請求項3記載のタンクローリの奏する効果に加え、第2配管は、第1傾斜部、第2傾斜部、及び第3傾斜部によって構成され、それら各傾斜部の接続部分が湾曲形状であるので、第2配管が前後方向に伸縮するような荷重が作用した場合に、その荷重を吸収するようにして第2配管を変形させることができる。よって、第2配管の破損を抑制できるという効果がある。
【0012】
請求項5記載のタンクローリによれば、請求項3又は4に記載のタンクローリの奏する効果に加え、次の効果を奏する。タンク内の液化ガスを加圧蒸発器に送出する送出管や、その加圧蒸発器で気化されたガスをタンク内に返送する返送管は、タンク及び加圧蒸発器を接続するものである。よって、例えば、加圧蒸発器をシャシフレームに固定する構成であると、シャシフレームの形状等に合わせて送出管や返送管の経路を設定する必要がある。
【0013】
これに対して請求項5では、タンク、送出管、加圧蒸発器、及び返送管が一体となったタンクユニットにサブフレームが固定され、そのサブフレームを介してタンクユニットがシャシフレームに架装されるため、シャシフレームの形状等に依存することなく、送出管や返送管の経路を設定できる。更に、一対のシャシフレームの間を通る第1配管と第2配管との接続位置をシャシフレームよりも下方側に位置させることにより、シャシフレームの形状に依存することなく、第2配管の経路を設定できる。よって、上記のタンクユニットを様々な形状のシャシフレームに架装できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態におけるタンクローリの側面図である。
【
図3】
図2のIII-III線におけるタンクローリの部分拡大断面図である。
【
図4】
図3のIV部分を拡大したタンクローリの部分拡大断面図である。
【
図5】
図3のV-V線におけるタンクローリの部分拡大断面図である。
【
図6】
図5のVI-VI線におけるタンクローリの部分拡大断面図である。
【
図7】
図6の矢印VII方向視におけるタンクローリの部分拡大下面図である。
【
図8】変形例におけるタンクローリの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、タンクローリ1の全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるタンクローリ1の側面図である。
【0016】
図1に示すように、タンクローリ1は、複数の車輪2を備え、液化ガス(例えば、LNG)を運搬する車両として構成される。複数の車輪2により、車体の骨格を形成するシャシフレーム3が支持される。
【0017】
シャシフレーム3は、車体の前後方向(
図1の左右方向)に延びるフレームであり、シャシフレーム3の前端部分には運転席として構成されるキャブ30が配置される。キャブ30の後方側に位置するシャシフレーム3には、サブフレーム4を介してタンク5が支持(架装)される。タンク5がシャシフレーム3に支持される前(架装前)の状態においては、タンク5にサブフレーム4が溶接等により固定されており、図示しない固定具または溶接によってサブフレーム4をシャシフレーム3に固定することにより、シャシフレーム3にタンク5が架装される。
【0018】
タンク5は、液化ガスを積載するための円筒状のタンクである。タンク5の後面には送出管6が接続されており、この送出管6を介してタンク5に加圧蒸発器7が接続される。加圧蒸発器7は、送出管6を通してタンク5から送出される液化ガスを蒸発気化させてガスとし、そのガスをタンク5に返送するための装置である。なお、送出管6の詳細構成については後述する。
【0019】
次いで、
図2から
図4を参照して、加圧蒸発器7の取付け構造について説明する。
図2は、タンクローリ1の部分拡大斜視図であり、
図3は、
図2のIII-III線におけるタンクローリ1の部分拡大断面図であり、
図4は、
図3のIV部分を拡大したタンクローリ1の部分拡大断面図である。
【0020】
図2及び
図3に示すように、サブフレーム4の側面には側部フレーム40が連結される。なお、サブフレーム4は、タンク5よりも後方側に延長されており、以下の説明においては、サブフレーム4のうち、タンク5に連結される部位を連結部4aとし、その連結部4aからタンク5よりも後方側に突出する部位を突出部4b(
図3参照)と記載して説明する。また、複数の側部フレーム40のうち、連結部4aに連結されるものを側部フレーム40a、突出部4bに連結されるものを側部フレーム40bと符号を付して説明する。
【0021】
側部フレーム40a,40bは、タンク5よりも左右方向(車幅方向)外側に突出する断面C字状(本実施形態では、溝形鋼状)のフレームである。この側部フレーム40a,40bを介してサブフレーム4に加圧蒸発器7が固定されている。即ち、加圧蒸発器7は、側部フレーム40a,40bとサブフレーム4とを介してシャシフレーム3に連結されており、シャシフレーム3に直接は連結されない構造である。これにより、タンクローリ1の走行時の振動等によってシャシフレーム3にねじれ等の変形が生じても、その変形による荷重がシャシフレーム3から加圧蒸発器7に直接作用することを抑制できる。また、サブフレーム4は、円筒状のタンク5に固定されることで比較的剛性が高く、変形し難い部材であるので、シャシフレーム3の変形時の荷重がサブフレーム4を介して加圧蒸発器7に作用することを抑制できる。
【0022】
側部フレーム40a,40bは、前後方向で所定間隔を隔てて複数(本実施形態では、3本)設けられており、それら複数の側部フレーム40a,40bの下面に加圧蒸発器7が支持(固定)される。これにより、仮に、上述したシャシフレーム3の変形によってサブフレーム4に変形が生じても、その変形による荷重が側部フレーム40a,40bを介して加圧蒸発器7に作用することを抑制できる。即ち、サブフレーム4に加圧蒸発器7を直接固定する場合に比べ、シャシフレーム3の変形時に加圧蒸発器7に作用する荷重を低減できる。
【0023】
ここで、サブフレーム4のうち、タンク5に連結される連結部4aは、タンク5よりも後方に突出する突出部4bに比べて比較的剛性が高く構成される。剛性が高い連結部4aに側部フレーム40aが連結されるので、サブフレーム4のうち、比較的変形が生じ難い連結部4aを利用して加圧蒸発器7を固定できる。よって、シャシフレーム3の変形時の荷重がサブフレーム4及び側部フレーム40aを介して加圧蒸発器7に作用することを抑制できる。このように、シャシフレーム3の変形時に加圧蒸発器7に作用する荷重を低減させることにより、加圧蒸発器7の破損を抑制できる。
【0024】
側部フレーム40a,40bの下面には、加圧蒸発器7を固定するための連結フレーム41が連結される。連結フレーム41は、左右方向に延びる断面C字状(本実施形態では、溝形鋼状)のフレームであり、連結フレーム41の下面に加圧蒸発器7の枠体70が固定される。枠体70は、加圧蒸発器7の外郭を構成する直方体状の枠であり、枠体70の内部には、以下に説明する入口ヘッダ71、蛇行管72、及び出口ヘッダ73の各配管が収納される。
【0025】
入口ヘッダ71は、枠体70の前端部分において左右方向に延びる配管であり、入口ヘッダ71の左右方向内側(車幅中心側)の端部には、上述した送出管6が接続される。よって、タンク5内の液化ガスは、この入口ヘッダ71を介して加圧蒸発器7に導入される。なお、入口ヘッダ71の左右方向内側の端部であって、送出管6が接続される接続口が加圧蒸発器7の「入口」である。
【0026】
入口ヘッダ71には、左右に並ぶ複数の蛇行管72の一端が接続される。蛇行管72は、液化ガスを蒸発気化させるための配管であり、前後方向に延びる直管72aと、その直管72aの端部同士を接続するU字管72b(
図3参照)とから構成される。
【0027】
上下に並ぶ複数の直管72aの前端同士および後端同士がU字管71bで接続されることにより、1本の蛇行管72が構成される。即ち、蛇行管72は、加圧蒸発器7の下端側(一端側)から上端側(他端側)にかけて複数回蛇行を繰り返すようにして設けられる。
【0028】
複数の蛇行管72の各々の他端は、出口ヘッダ73に接続される。出口ヘッダ73は、左右方向に延びる配管であり、出口ヘッダ73の上面の左右方向中央には返送管8の一端が接続される。図示は省略するが、返送管8の他端は、後述する機器室9を通してタンク5に接続されている。
【0029】
このように構成された加圧蒸発器7においては、入口ヘッダ71から導入された液化ガスが蛇行管72を流れる際に外気との熱交換によって気化され、その気化したガスが出口ヘッダ73及び返送管8を介してタンク5に返送される。この液化ガスの蛇行管72への流入、及びその流入の停止に伴い、蛇行管72には前後方向に伸縮が生じることがあるため、その伸縮を許容するために蛇行管72の直管72aは支持部材74に摺動可能な状態で支持されている。この支持構造について、以下に説明する。
【0030】
支持部材74は、左右方向に延びる板状体であり、支持部材74の左右の両端は枠体70に固定されている。支持部材74には、貫通孔(図示せず)が左右方向に複数並べて形成されており、それら複数の貫通孔の各々に蛇行管72の直管72aが摺動可能に挿入される。これにより、蛇行管72(直管72a)の伸縮が許容された状態で支持部材74に蛇行管72が支持される。支持部材74は、上下方向に複数(本実施形態では、6枚)並べて設けられ、それら複数の支持部材74は、連結棒75(
図4参照)によって互いに連結される。
【0031】
図4に示すように、連結棒75の上端部分は、連結フレーム41の貫通孔41aに挿入された状態で連結フレーム41に固定されており、支持部材74は、連結棒75と連結フレーム41とを介して側部フレーム40a,40bの下面に固定される。これにより、支持部材74の左右の両端を支持する枠体70に加え、側部フレーム40a,40bによっても支持部材74を支持できるので、加圧蒸発器7の破損を抑制できる。
【0032】
即ち、上述したような蛇行管72による荷重は、走行時の振動等によって支持部材74を経由して支持部材74と枠体70との連結部分に作用する。よって、例えば、加圧蒸発器7の枠体70の上面のみを側部フレーム40a,40b(連結フレーム41)に固定する構成の場合、上記のような荷重が枠体70の一部に集中し易くなるため、加圧蒸発器7(枠体70)が破損し易くなる。
【0033】
これに対して本実施形態では、上下に並ぶ複数の支持部材74を連結棒75によって一体化し、その一体化した支持部材74の上端部(連結棒75)を、連結フレーム41を介して側部フレーム40a,40bに支持させる構成である。よって、枠体70の上面のみを側部フレーム40a,40b(連結フレーム41)に固定する場合に比べ、枠体70に作用する荷重を低減できる。更に、複数の支持部材74を連結する連結棒75が連結フレーム41を介して側部フレーム40a,40bに固定されるため、連結棒75(支持部材74の上端部)の固定部分を側部フレーム40a,40b及び連結フレーム41によって補強できる。よって、加圧蒸発器7(枠体70)の破損を抑制できる。
【0034】
このように、支持部材74は、側部フレーム40a,40bに吊り下げられるようにして支持されているが、
図3に示すように、前後に並ぶ複数の支持部材74のうち、側部フレーム40aに吊り下げられた支持部材74に蛇行管72の両端部分(即ち、入口ヘッダ71及び出口ヘッダ73との接続部分)が支持される。側部フレーム40aは、サブフレーム4の中でも比較的剛性が高い連結部4aに連結されるため、この側部フレーム40aの近傍で蛇行管72と入口ヘッダ71及び出口ヘッダ73とを接続することにより、かかる接続部分(液漏れの懸念がある部位)にシャシフレーム3の変形による荷重が作用することを抑制できる。これにより、蛇行管72と入口ヘッダ71及び出口ヘッダ73との接続部分で液漏れが生じることを抑制できる。
【0035】
一方、側部フレーム40bは、連結部4aに比べて剛性が低い(タンク5に連結されていない)突出部4bに連結されているため、この側部フレーム40bに支持される支持部材74(蛇行管72)には、シャシフレーム3のねじれ等の変形による荷重が作用する可能性がある。これに対して本実施形態では、上述した通り、蛇行管72(直管72a)は、支持部材74に摺動可能な状態で支持されているため、仮に、シャシフレームの変形による荷重が側部フレーム40bを介して支持部材74(蛇行管72)に作用しても、その荷重による加圧蒸発器7の損傷を抑制できる。
【0036】
また、本実施形態では、シャシフレーム3の変形による影響を低減させるために、突出部4bを補強フレーム42(
図5参照)等によって補強している。この構成について、
図5及び
図6を参照して説明する。
【0037】
図5は、
図3のV-V線におけるタンクローリ1の部分拡大断面図であり、
図6は、
図5のVI-VI線におけるタンクローリ1の部分拡大断面図である。なお、
図5,6では、タンクローリ1の要部のみを図示し、一部の構成(例えば、加圧蒸発器7の構造)の図示を省略している。
【0038】
図5及び
図6に示すように、サブフレーム4は、左右方向で所定間隔を隔てて一対に設けられており、それら一対のサブフレーム4の各々に加圧蒸発器7が固定される。以下の説明においては、一対の加圧蒸発器7のうち、左側のサブフレーム4に固定されるものを加圧蒸発器7a、右側のサブフレーム4に固定されるものを加圧蒸発器7bと符号を付して説明する。
【0039】
なお、一対の加圧蒸発器7a,7bは、左右対称の構成となっている。よって、例えば、上述した加圧蒸発器7に接続される各構成(例えば、側部フレーム40a,40bや返送菅8など)は、一対の加圧蒸発器7a,7bの各々に設けられている。
【0040】
一対のサブフレーム4の突出部4b同士は、補強フレーム42によって連結される。補強フレーム42は、左右に延びる断面C字状(本実施形態では、溝形鋼状)のフレームであり、補強フレーム42は、左右方向視において(
図5の左右方向で視た場合に)、左右一対の側部フレーム40bの各々と重なる位置に配置される。
【0041】
即ち、補強フレーム42は、左側の加圧蒸発器7aが固定される側部フレーム40bと、右側の加圧蒸発器7bが固定される側部フレーム40bとの間に配置されるので、比較的剛性の低い突出部4bと側部フレーム40bとの連結部分を補強できる。これにより、かかる連結部分においてサブフレーム4(突出部4b)にねじれ等の変形が生じることを抑制できるので、シャシフレーム3の変形時の荷重がサブフレーム4及び側部フレーム40bを介して加圧蒸発器7に作用することを抑制できる。
【0042】
また、左右一対の側部フレーム40bを一組とすると、前後に並ぶ複数組(本実施形態では、2組)の側部フレーム40b同士の間のそれぞれに補強フレーム42が配置される(
図7参照)。即ち、補強フレーム42は、前後方向に複数(本実施形態では、2本)並べて設けられるため、一対の突出部4bを効果的に補強できる。なお、サブフレーム4の連結部4aは比較的剛性が高いため、連結部4a同士の間(一対の側部フレーム40a同士の間)には、補強フレーム42は設けられていない(
図7参照)。
【0043】
タンク5の後方側には、タンク5の後端部を覆う機器室9が設けられており、この機器室9によってもサブフレーム4の突出部4bが補強される。具体的には、機器室9は、後方側に開口部90(
図5参照)を有する箱状に形成され、機器室9の内部には、液化ガスの荷役作業時に操作される操作装置や計器類(いずれも図示せず)が設けられる。機器室9の床板91の左右方向寸法は、一対のサブフレーム4同士の対向間隔よりも大きく設定され、床板91の左右の端部は一対のサブフレーム4よりも側方側に突出している。
【0044】
機器室9の床板91は、タンク5の後面から後方に延びており(
図6参照)、床板91の後端部分は、複数の側部フレーム40bのうち、最も後方側に位置する側部フレーム40bまで延設される。
【0045】
機器室9の床板91は、サブフレーム4の突出部4bの上面に溶接などによって固定されているため、比較的剛性が低い突出部4bを機器室9の床板91によって補強できる。これにより、突出部4bと側部フレーム40bとの連結部分においてサブフレーム4(突出部4b)にねじれ等の変形が生じることを抑制できるので、シャシフレーム3の変形時の荷重がサブフレーム4及び側部フレーム40bを介して加圧蒸発器7に作用することを抑制できる。更に、機器を収納するための機能に加え、突出部4bを補強する機能を機器室9に持たせることができる。
【0046】
また、機器室9の床板91は、前後に並ぶ複数の補強フレーム42(
図6参照)に対しても溶接などによって固定されている。これによっても、比較的剛性が低い突出部4bをより効果的に補強できる。
【0047】
ここで、上述した通り、タンク5内の液化ガスを加圧蒸発器7に送出する送出管6や、その加圧蒸発器7で気化されたガスをタンク5内に返送する返送管8(
図3参照)は、タンク5と加圧蒸発器7とを接続している。よって、例えば、加圧蒸発器7をシャシフレーム3に固定する構成であると、シャシフレーム3の形状に合わせて送出管6や返送管8の経路を設定する必要がある。
【0048】
即ち、一対のシャシフレーム3の左右の対向間隔や、シャシフレーム3自体の左右方向における寸法(幅寸法)は、タンクローリ1のベースとなる車輌の車種によって異なることがある。よって、シャシフレーム3(車体側)に加圧蒸発器7を固定する構成の場合、タンク5と加圧蒸発器7との相対位置が車種(シャシフレーム3の形状)によって変わってしまうため、車種に応じて送出管6や返送管8の経路を変更する必要がある。また、加圧蒸発器7を固定するための加工をシャシフレーム3に施す必要が生じる。
【0049】
これに対して本実施形態では、サブフレーム4、タンク5、送出管6、加圧蒸発器7、及び返送管8が一体となったものをタンクユニットとし、そのタンクユニットのサブフレーム4をシャシフレーム3に固定することにより、かかるタンクユニットがシャシフレーム3に架装される。つまり、車体側ではなく、車体に架装されるタンクユニット側に加圧蒸発器7が固定されるため、タンク5と加圧蒸発器7とを接続する送出管6や返送管8の経路を、シャシフレーム3の形状等に依存することなく設定できる。更に、加圧蒸発器7を固定するための加工をシャシフレーム3に施す必要が無い。よって、かかるタンクユニットを様々な形状のシャシフレーム3(様々な車種)に架装できる。
【0050】
次いで、
図5から
図7を参照して、送出管6の詳細構成について説明する。
図7は、
図6の矢印VII方向視におけるタンクローリ1の部分拡大下面図である。
【0051】
図5及び
図6に示すように、送出管6は、タンク5の後面に接続される第1配管60を備える。なお、
図6では、タンク5と第1配管60との接続部分における継手に内部の図示を省略してハッチングを付している。
【0052】
第1配管60は、タンク5の後面から後方側に延びる水平部60aと、その水平部60aの後端から下方に垂下する垂下部60bと、から構成される。なお、水平部60aは、タンクローリ1が水平な路面で停止している停止状態(以下、「タンクローリ1の停止状態」と記載する)では水平方向に延びているが、水平部60aの後端側(下流側)ほど下降傾斜させる構成でも良い。
【0053】
垂下部60bの下端には、T字状の継手61を介して左右に分岐する一対の第2配管62が接続される。なお、左右一対の第2配管62は、それぞれ左右対称の構成である。
【0054】
第2配管62は、継手61(上流側)から加圧蒸発器7a,7bの入口ヘッダ71(下流側)にかけて下降傾斜して形成される。より具体的には、第2配管62は、前後方向視において、継手61から左右方向外側に延びる第1傾斜部62aと、その第1傾斜部62aの左右方向外側の端部から前方側に延びる第2傾斜部62bと、その第2傾斜部62bの前端から左右方向外側に延びる第3傾斜部62cと、から構成される。なお、以下の説明においては、第1~3傾斜部62a~62cをまとめて記載する場合には、「各傾斜部」と省略して記載する。
【0055】
各傾斜部は、タンクローリ1の停止状態において、上流側から下流側にかけて水平方向に対して下降傾斜する勾配(本実施形態では、9°の勾配)を有している。即ち、左右方向に延びる第1傾斜部62a及び第3傾斜部62cがそれぞれ下降傾斜しているため、例えば、水平方向に対して車体が左右方向で傾いた状態であっても、第1傾斜部62a及び第3傾斜部62cが水平方向に対して下降傾斜した状態を維持できる。よって、水平方向に対してタンクローリ1が傾き、一対の加圧蒸発器7a,7bのうちの一方が持ち上がった傾斜状態においても、その持ち上がった加圧蒸発器7a,7bに対しても液化ガスが送出され易くなる。よって、一対の加圧蒸発器7a,7bの各々から十分な量の気化したガスをタンク5内に返送できるので、タンク5内の液化ガスを効率良く払い出すことができる。
【0056】
また、第1傾斜部62a及び第3傾斜部62cに加え、前後方向に延びる第2傾斜部62bも下降傾斜する構成、即ち、第2配管62の全体が下降傾斜する構成であるため、車体が左右方向および前後方向のいずれの方向に傾斜した状態であっても、一対の加圧蒸発器7a,7bの各々に液化ガスが送出され易くなる。よって、タンク5内の液化ガスをより効率良く払い出すことができる。
【0057】
また、上述した通り、シャシフレーム3の形状は車種によって異なる場合があるが、第1配管60の垂下部60bと第2配管62の第1傾斜部62aとの接続位置がシャシフレーム3よりも下方側に位置しているため、シャシフレーム3の形状に依存することなく、第2配管62の経路を設定できる。よって、サブフレーム4、タンク5、送出管6、加圧蒸発器7、及び返送管8が一体となったタンクユニットを様々な形状のシャシフレーム3(様々な車種)に架装できる。
【0058】
ここで、タンクローリ1の荷役作業が行われる路面の勾配は、一般的に1~2°の勾配である。よって、各傾斜部の勾配は、3°以上に設定することが好ましく、本実施形態では9°に設定される。これにより、一般的な路面でのタンクローリ1の停止状態において、各傾斜部が水平方向に対して下降傾斜した状態を維持できるので、一対の加圧蒸発器7a,7bの各々に液化ガスを確実に送出できる。
【0059】
また、第2配管62の下降傾斜の勾配は、第2配管62の全体(各傾斜部)にわたって一定の角度に設定されるため、液化ガスの流れ易さを第2配管62の全長にわたって均一にできる。これにより、一対の加圧蒸発器7a,7bの各々に液化ガスがより送出され易くなる。なお、第2配管62の第3傾斜部62cの左右方向外側の端部は継手63を介して入口ヘッダ71に接続されており、第2配管62の「全体」とは、継手61の開口の縁部から継手63の開口の縁部までの配管部分である。
【0060】
図7に示すように、第2配管62の第1傾斜部62a、第2傾斜部62b、及び第3傾斜部62cのそれぞれの接続部分は、緩やかに湾曲する形状となっている。即ち、第2配管62は、前後方向で離れた位置に配置される継手61,63同士を繋ぐ略S字状に形成される。
【0061】
これにより、第2配管62への液化ガスの流入、及びその流入の停止に伴い、第2配管62に伸縮が生じても、その伸縮に追従させるようにして第2配管62の湾曲部分を変形させることができる。また、走行時の振動等によって上記と同様の伸縮を生じさせる荷重が第2配管62に作用しても、その荷重を吸収するようにして第2配管62を変形させることができる。よって、第2配管62の破損を抑制できる。
【0062】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0063】
上記実施形態では、一対の加圧蒸発器7a,7bが側部フレーム40a,40bを介してサブフレーム4に固定される場合を説明したが、例えば、加圧蒸発器7をサブフレーム4に直接固定する構成でも良い。また、サブフレーム4の連結部4a又は突出部4bのいずれか一方のみに対し、側部フレーム40a,40bを介して加圧蒸発器7を固定する構成でも良い。また、1又は3以上の加圧蒸発器7をサブフレーム4に固定する構成でも良い。
【0064】
ここで、1つの加圧蒸発器7をサブフレーム4に固定する変形例について、
図8を参照して説明するが、上記実施形態と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図8は、変形例におけるタンクローリ1の部分拡大断面図である。なお、
図8は、
図3のV-V線に対応する位置で切断した断面図である。また、
図8では、図面を簡素化するために、入口ヘッダ71と出口ヘッダ73とを接続する蛇行菅72(
図2又は
図3参照)の図示を省略している。
【0065】
図8に示すように、変形例におけるタンクローリ1では、左右一対の側部フレーム40a,40b(側部フレーム40aについては、
図2又は
図3参照)と、補強フレーム42とに1つの加圧蒸発器7が吊り下げられるようにして固定される。入口ヘッダ71は、上記実施形態と同様、第2配管62の第3傾斜部62cの下流側の端部から(継手63を介して)左右両側に延びている。入口ヘッダ71には、図示しない蛇行菅72(
図2又は
図3参照)を介して出口ヘッダ73が接続される。
【0066】
出口ヘッダ73は、入口ヘッダ71よりも上方側で左右に延びる配管である。出口ヘッダ73は、第1配管60の垂下部60bを挟んで左右一対に設けられており、それら一対の出口ヘッダ73が返送管8を介してタンク5に接続される。
【0067】
この変形例のタンクローリ1においても、側部フレーム40a,40b及び補強フレーム42を介してサブフレーム4に加圧蒸発器7が固定されている。即ち、加圧蒸発器7は、側部フレーム40a,40b及び補強フレーム42と、サブフレーム4とを介してシャシフレーム3に連結されており、シャシフレーム3に直接は連結されない構造である。これにより、タンクローリ1の走行時の振動等によってシャシフレーム3にねじれ等の変形が生じても、その変形による荷重がシャシフレーム3から加圧蒸発器7に直接作用することを抑制できる。
【0068】
上記実施形態では、サブフレーム4の突出部4bを補強フレーム42や機器室9によって補強する構成を説明したが、補強フレーム42や機器室9は省略しても良い。
【0069】
上記実施形態では、支持部材74の上端部が連結棒75及び連結フレーム41を介して側部フレーム40a,40bに固定される場合を説明したが、支持部材74の上端部を直接(又は連結棒75を介して)側部フレーム40a,40bに固定する構成でも良い。また、支持部材74の左右の両端部のみを枠体70に固定する構成でも良い。
【0070】
上記実施形態では、勾配が一定の傾斜部を送出管6の第2配管62に設ける場合を説明したが、タンクローリ1の停止状態において、送出管6の全体が下降傾斜する構成や、第2配管62の一部(例えば、第2傾斜部62b)または全体が水平方向に延びる構成でも良い。また、送出管6(第2配管62)の一部の領域で下降傾斜の勾配を変化させる構成でも良い。
【0071】
上記実施形態では、送出管6の第1配管60から第2配管62が左右に分岐して一対の加圧蒸発器7a,7bに接続される場合、即ち、液化ガスが共通の送出管6を通して一対の加圧蒸発器7a,7bに送出される場合を説明したが、液化ガスを送出するための送出管を加圧蒸発器7a,7b毎に別個に設ける構成でも良い。
【0072】
上記実施形態では、第1配管60と第2配管62との接続位置と、第2配管62と加圧蒸発器7の入口ヘッダ71との接続位置とが前後で離れた位置に設定される場合を説明したが、かかる接続位置が前後で離れていない構成でも良く、この構成の場合には、上述した第1傾斜部62aに相当する傾斜部のみで第2配管62を構成すれば良い。
【0073】
上記実施形態では、第1配管60と第2配管62との接続位置がシャシフレーム3よりも下方側に位置する場合を説明したが、かかる接続位置がシャシフレーム3と同じ高さである構成や、シャシフレーム3よりも上方に位置する構成でも良い。
【符号の説明】
【0074】
1 タンクローリ
3 シャシフレーム
4 サブフレーム
5 タンク
6 送出管
60 第1配管
62 第2配管
62a 第1傾斜部
62b 第2傾斜部
62c 第3傾斜部
7a 加圧蒸発器(第1加圧蒸発器)
7b 加圧蒸発器(第2加圧蒸発器)
71 入口ヘッダ(加圧蒸発器の入口)
8 返送管