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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044186
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】雰囲気制御装置及び雰囲気制御方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 9/12 20060101AFI20230323BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20230323BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B05C9/12
C08F2/46
C08F20/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152082
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】奥平 匠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 志野
(72)【発明者】
【氏名】福島 利雄
【テーマコード(参考)】
4F042
4J011
【Fターム(参考)】
4F042AA02
4F042AA17
4F042AA20
4F042AB00
4F042BA13
4F042BA16
4F042BA19
4F042DA03
4F042DA05
4F042DB41
4F042DB51
4F042DB52
4F042DC01
4F042DF05
4F042DH09
4J011AA05
4J011AC04
4J011QA03
4J011QA12
4J011QA13
4J011QA22
4J011QA23
4J011QA24
4J011SA01
4J011SA21
4J011SA31
4J011SA41
4J011SA51
4J011SA84
4J011TA06
4J011TA07
4J011UA01
4J011WA02
(57)【要約】
【課題】活性エネルギー線硬化時の酸素濃度を正確に測定し、樹脂硬化物の所望の特性や美観を更に向上することができる雰囲気制御装置を提供する。
【解決手段】雰囲気制御装置1Aは、活性エネルギー線硬化性組成物Sからなる処理対象物を収容するパージボックス11と、パージボックス11の不活性ガス導入部12に接続され、パージボックス11内に不活性ガスG1’を供給する不活性ガス供給部13と、パージボックス11内のガスGを外部に排出するガス排出部14と、不活性ガス導入部12に設けられた第1遮断弁15と、ガス排出部14に設けられた第2遮断弁16と、パージボックス11内の不活性ガスG1を循環する循環路17と、循環路17に設けられ、循環路17内を流れる不活性ガスG1を圧送するポンプ18と、循環路17に設けられ、循環路17内を流れる不活性ガスG1に含まれる酸素濃度を測定する酸素濃度測定部19とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性組成物からなる処理対象物を収容するパージボックスと、
前記パージボックスの不活性ガス導入部に接続され、前記パージボックス内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、
前記パージボックス内のガスを外部に排出するガス排出部とを備える、活性エネルギー線硬化性組成物用雰囲気制御装置であって、
前記不活性ガス導入部に設けられた第1遮断弁と、
前記ガス排出部に設けられた第2遮断弁と、
前記パージボックス内の不活性ガスを循環する循環路と、
前記循環路に設けられ、前記循環路内を流れる不活性ガスを送圧するポンプと、
前記循環路に設けられ、前記循環路内を流れる不活性ガスに含まれる酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、
を備える、雰囲気制御装置。
【請求項2】
前記パージボックスの酸素ガス導入部に接続され、前記パージボックス内に酸素ガスを供給する酸素ガス供給部を更に備える、請求項1に記載の雰囲気制御装置。
【請求項3】
活性エネルギー線硬化性組成物からなる処理対象物を収容するパージボックスと、前記パージボックスの不活性ガス導入部に接続され、前記パージボックス内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、前記パージボックス内のガスを外部に排出するガス排出部とを備える活性エネルギー線硬化性組成物用雰囲気制御装置に適用される雰囲気ガス制御方法であって、
前記パージボックス内を不活性ガスでパージするパージ工程と、
前記不活性ガス導入部及び前記ガス排出部を遮断して閉鎖系を形成する第1遮断工程と、
前記パージボックス内の不活性ガスを循環路を介して循環させる循環工程と、
前記循環路内を流れる不活性ガスに含まれる酸素濃度を測定する測定工程と、
を有する、雰囲気制御方法。
【請求項4】
前記測定工程で測定された酸素濃度が所定範囲よりも低い場合、前記パージボックス内に酸素ガスを供給し、前記酸素濃度が所定範囲よりも高い場合、前記パージボックス内への不活性ガスの供給量を増大させる酸素濃度調整工程を更に有する、請求項3に記載の雰囲気制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気制御装置及び雰囲気制御方法に関し、特に活性エネルギー線硬化性組成物用の雰囲気制御装置及びその雰囲気制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、艶消し(低光沢化とも称されることがある)等の美観を付与することを目的に、基材上に、電子線硬化型(EB硬化型と称されることもある)や紫外線硬化型(UV硬化型と称されることもある)の艶消し剤を添加したコーティング剤を塗工することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、艶消し剤を添加したコーティング剤を硬化させる際に、酸素含有不活性ガス雰囲気下において含有酸素濃度を多段階に変化させて電子線を照射し、電子線硬化型クリヤーを硬化させることで、十分な艶消し効果が得られ、かつ、耐候性の格段に優れた高耐候性艶消し化粧板を得る方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、上記のような方法を用いても、UV硬化型等の樹脂組成物の硬化時に大気中の酸素によってラジカルが捕獲(クエンチ)され、重合反応が十分進まず、特に表層の硬化が不十分となることがある。これを解決するために、UV硬化を窒素雰囲気下で行うことが提案されている。窒素雰囲気を形成する装置としては、パージボックスが挙げられる(例えば、特許文献3~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-69332号公報
【特許文献2】特開2001-87703号公報
【特許文献3】特開平7-89578号公報
【特許文献4】特開2003-245515号公報
【特許文献5】特開2007-144301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなパージボックスを用いる場合、通常、該パージボックスに設けられた気体排出口で酸素濃度を測定しているため、該パージボックスの気体排出口での酸素濃度と、パージボックス内のUV硬化時の酸素濃度とにずれが生じ、パージボックス内部の酸素濃度を正確に測定、把握することが困難である。このため、樹脂組成物の硬化が不十分となる場合が生じることから、樹脂硬化物の所望の特性や美観を向上させるには限界がある。
【0006】
本発明は、活性エネルギー線硬化時の酸素濃度を正確に測定し、樹脂硬化物の所望の特性や美観を更に向上することができる雰囲気制御装置及び雰囲気制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、第1の態様に係る雰囲気制御装置は、活性エネルギー線硬化性組成物からなる処理対象物を収容するパージボックスと、前記パージボックスの不活性ガス導入部に接続され、前記パージボックス内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、前記パージボックス内のガスを外部に排出するガス排出部とを備える、活性エネルギー線硬化性組成物用雰囲気制御装置であって、
前記不活性ガス導入部に設けられた第1遮断弁と、
前記ガス排出部に設けられた第2遮断弁と、
前記パージボックス内の不活性ガスを循環する循環路と、
前記循環路に設けられ、前記循環路内を流れる不活性ガスを送圧するポンプと、
前記循環路に設けられ、前記循環路内を流れる不活性ガスに含まれる酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、
を備える。
【0008】
上記第1の態様に係る雰囲気制御装置は、前記パージボックスの酸素ガス導入部に接続され、前記パージボックス内に酸素ガスを供給する酸素ガス供給部を更に備えてもよい。
【0009】
第2の態様に係る雰囲気制御方法は、活性エネルギー線硬化性組成物からなる処理対象物を収容するパージボックスと、前記パージボックスの不活性ガス導入部に接続され、前記パージボックス内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、前記パージボックス内のガスを外部に排出するガス排出部とを備える活性エネルギー線硬化性組成物用雰囲気制御装置に適用される雰囲気ガス制御方法であって、
前記パージボックス内を不活性ガスでパージするパージ工程と、
前記不活性ガス導入部及び前記ガス排出部を遮断して閉鎖系を形成する第1遮断工程と、
前記パージボックス内の不活性ガスを循環路を介して循環させる循環工程と、
前記循環路内を流れる不活性ガスに含まれる酸素濃度を測定する測定工程と、
を有する。
【0010】
第2の態様に係る雰囲気制御方法においては、前記測定工程で測定された酸素濃度が所定範囲よりも低い場合、前記パージボックス内に酸素ガスを供給し、前記酸素濃度が所定範囲よりも高い場合、前記パージボックス内への不活性ガスの供給量を増大させる酸素濃度調整工程を更に有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、活性エネルギー線硬化時の酸素濃度を正確に測定し、樹脂硬化物の所望の特性や美観を更に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る雰囲気制御装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る雰囲気制御方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3(a)及び図3(b)は、図2の雰囲気制御方法の工程を説明するための概略図である。
図4図4は、図1の雰囲気制御装置の変形例を示す概略図である。
図5図5は、図2の雰囲気制御方法の変形例を示すフローチャートである。
図6図6(a)~図6(c)は、図5の雰囲気制御方法の工程を説明するための概略図である。
図7図7は、図1の雰囲気制御装置の他の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らないものとする。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
[雰囲気制御装置の構成]
図1に示すように、雰囲気制御装置1Aは、活性エネルギー線硬化性組成物Sからなる処理対象物を収容するパージボックス11と、パージボックス11の不活性ガス導入部12に接続され、パージボックス11内に不活性ガスG1’を供給する不活性ガス供給部13と、パージボックス11内のガスGを外部に排出するガス排出部14とを備える。この雰囲気制御装置1Aは、処理対象物を活性エネルギー線硬化性組成物Sとし、活性エネルギー線を照射する際の雰囲気を制御するものである。
【0015】
パージボックス11は、活性エネルギー線硬化性組成物Sを収容する内部空間Kを有する箱状体であり、内部空間Kを密閉或いは密封可能に構成されている。また、パージボックス11は、活性エネルギー線硬化性組成物Sを出し入れ可能に構成されている。パージボックス11の材質は、特に制限されず、金属、ガラス、樹脂、或いはこれらの複合材料などの各種材料を用いることができるが、耐久性等の観点からは、ステンレス、石英ガラス、或いはこれらの複合材料を用いることが好ましい。
【0016】
不活性ガス導入部12は、本実施形態ではパージボックス11の側壁上部に設けられており、パージボックス11と不活性ガス供給部13とを接続している。不活性ガス導入部12は、上部側壁に限らず、パージボックス11の上壁などの他の位置に設けられてもよい。
【0017】
不活性ガス供給部13は、典型的には不活性ガスG1’が充填されたガスボンベであるが、これに限らず、不活性ガス発生装置などであってもよい。ガスボンベの代わりに不活性ガス発生装置が設けられる場合、不活性ガスG1’をパージボックス11内に圧送するポンプが併設されてもよい。
【0018】
不活性ガスG1’は、希ガスや窒素など、反応性の低いガスであれば特に制限されないが、安価に入手し得る観点からは窒素(N)が好ましい。窒素ガスの純度は、高い方が好ましく、例えば99.9%以上とすることができ、好ましくは99.999~99.99999%とすることができる。
【0019】
ガス排出部14は、本実施形態ではパージボックス11の側壁下部に設けられており、パージボックス11と外部とを連通可能に設けられている。ガス排出部14は、側壁下部に限らず、パージボックス11の底壁などの他の位置に設けられてもよい。不活性ガスG1によるパージにより、パージボックス11内の空気や不活性ガスを含むガスGが、ガス排出部14から外部に排出される。
【0020】
本実施形態の雰囲気制御装置1Aは、不活性ガス導入部12に設けられた第1遮断弁15と、ガス排出部14に設けられた第2遮断弁16と、パージボックス11内の不活性ガスG1を循環する循環路17と、循環路17に設けられ、循環路17内を流れる不活性ガスG1を圧送するポンプ18と、循環路17に設けられ、循環路17内を流れる不活性ガスG1に含まれる酸素濃度を測定する酸素濃度測定部19とを備えている。
【0021】
第1遮断弁15は、例えば2方コックであり、開閉動作によって不活性ガス供給部13からパージボックス11へのガスの導入又は停止を行う。第1遮断弁15はユーザによる手動でもよいし、外部からの電気信号等に基づいて電気的に動作してもよい。
【0022】
第2遮断弁16は、第1遮断弁15と同様、例えば2方コックであり、開閉動作によってパージボックス11から外部へのガスGの排出又は停止を行う。第2遮断弁16はユーザによる手動でもよいし、外部からの電気信号等に基づいて電気的に動作してもよい。
【0023】
循環路17は、一端及び多端がパージボックス11に接続された略U字形のラインであり、内部の密閉空間にて不活性ガスG1が一方向に送出されるように構成されている。循環路17の一端側から入った不活性ガスG1が当該循環路17を通って多端側から出て、これが繰り返されてパージボックス11内の不活性ガスG1が循環する。循環路17の形状は、特に制限されず、不活性ガスG1が循環可能であれば、他の形状を有していてもよい。循環路17は、パージボックス11と同様、循環路17内を密閉或いは密封可能に構成されている。
【0024】
ポンプ18は、例えばダイアフラムポンプであり、循環路17を流れる不活性ガスG1を間欠的に圧送する。ポンプ18は、ダイアフラムポンプに限らず、不活性ガスG1を連続的に圧送するピストンポンプ、ロータリーポンプなどであってもよい。
ポンプ18は、酸素濃度測定部19と第4遮断弁21との間に配置されているが、これに限らず、循環路17内の不活性ガスG1を循環させることができれば、循環路17の他の位置に設置されてもよい。
【0025】
酸素濃度測定部19は、循環路内の不活性ガスG1中の酸素(O)を測定可能であれば特に制限されず、ジルコニア式、磁気式、レーザ分光式、電極式などの各種測定方式の酸素濃度計を用いることができる。
酸素濃度測定部19は、後述吸する第3遮断弁20とポンプ18との間に配置されているが、これに限らず、循環路17内の不活性ガスG1を循環させることができれば、循環路17の他の位置に設置されてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、雰囲気制御装置1Aは、循環路17のガス流入側に設けられた第3遮断弁20と、循環路17のガス流出側に設けられた第4遮断弁21とを更に備えている。
【0027】
第3遮断弁20は、例えばボール弁であり、開閉動作によってパージボックス11から循環路17への不活性ガスG1の導入又は停止を行う。第3遮断弁20はユーザの手動で動作してもよいし、外部からの電気信号等に基づいて電気的に動作してもよい。
【0028】
第4遮断弁21は、第3遮断弁20と同様、例えばボール弁であり、開閉動作によって循環路17からパージボックス11への不活性ガスG1の排出或いは停止を行う。第4遮断弁21はユーザによる手動でもよいし、外部からの電気信号等に基づいて電気的に動作してもよい。
【0029】
雰囲気制御装置1Aは、パージボックス11内の温度を調整する不図示の温度調節部を備えていてもよい。これにより、活性エネルギー線硬化性組成物Sに活性エネルギー線を照射する際の内部空間Kの温度を調節することができる。
【0030】
[活性エネルギー線硬化性組成物の構成]
処理対象物である活性エネルギー線硬化性組成物Sは、例えば基材上に設けられたコーティング膜である。活性エネルギー線硬化性組成物Sの組成及び形態は、活性エネルギー線の照射によって硬化可能であれば、特に制限されない。
【0031】
(基材)
本発明で使用する基材は、艶消し意匠を所望される基材であれば、特に限定なく使用できるし、反対に高光沢が所望される場合はそれに応じた基材も使用する事ができる。例えば建材用の化粧シートであれば、化粧シートに使用する汎用の基材シートを基材として使用することができる。
基材シートとしては、特に限定はなく、一般的な化粧シートに汎用の熱可塑性樹脂により形成されたシート(フィルム)や紙を使用する。
熱可塑性樹脂により形成されたシート(フィルム)としては、例えば、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、アイオノマー、アクリル酸エステル系重合体、メタアクリル酸エステル系重合体等が挙げられる。前記基材シートは、これら樹脂を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることにより形成されていてもよい。
【0032】
前記基材シートは着色されていてもよく、また必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。また基材シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には20~300μmが好ましい。
【0033】
基材シートの片面又は両面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。例えば、コロナ放電処理を行う場合には、基材シート表面の表面張力が30dyne以上、好ましくは40dyne以上となるようにすればよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
【0034】
また化粧シート向け紙基材の種類としては、例えば、薄葉紙、普通紙、強化紙、樹脂含浸紙等の紙質シート、チタン紙、等が挙げられる。
【0035】
また化粧板に汎用される木質化粧板等を基材としてもよい。木質化粧板の木質基材としては、従来から化粧板や家具、建築部材等の木質基材として使用されている合板、パーティクルボード、ハードボード、MDF等の公知のものが挙げられる。またこれらの公知基材はどのような製法で得られたものであるかは問わない。
更に、基材として使用できる不燃材としては、石膏ボード、石膏板、珪酸カルシウム板等を素材とした開孔ボード建材等、陶器、磁器、せっ器、土器、硝子、琺瑯などのセラミックス板、鉄板、亜鉛メッキ鋼板、ポリ塩化ビニルゾル塗布鋼板、アルミニウム板、銅板などの金属板を挙げることができる。
【0036】
(活性エネルギー線硬化性組成物からなるコーティング膜)
活性エネルギー線硬化性組成物からなるコーティング膜は、活性エネルギー線硬化性組成物からなるコーティング剤のコーティング膜である。
以下、本実施形態で使用される活性エネルギー線硬化性組成物からなるコーティング剤を、「活性エネルギー線硬化性コーティング剤」と称する。
【0037】
本発明で使用する活性エネルギー線硬化性コーティング剤は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び必要に応じて光重合開始剤を含有する。
なお本発明において「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基の一方または両方を指す。また「(メタ)アクリロイル基を有する化合物」を(メタ)アクリレートを称する場合もある。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方または両方をいう。
【0038】
((メタ)アクリロイル基を有する化合物)
本実施形態で使用される(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、特に限定はなく、公知の活性エネルギー線で硬化しうる(以後単に「活性エネルギー線硬化性」と称する場合がある)(メタ)アクリロイル基を有する化合物を使用することができる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエタノールアクリル酸多量体エステル等が挙げられる。
【0039】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
また更に、2官能以上の(メタ)アクリレートにあたるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物 (DPHAと略する場合がある)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTAと略する場合がある)、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレートであるトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート等を使用してもよい。前記トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレートとしては、代表的なものとしてトリメチロールプロパンエチレンオキサイド(以後エチレンオキサイドを「EO」と称する場合がある)変性(n≒3)トリアクリレートが挙げられる。
【0042】
更に必要に応じて重合性オリゴマーを使用してもよい。重合性オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、アミン変性ポリエーテルアクリレート、アミン変性エポキシアクリレート、アミン変性脂肪族アクリレート、アミン変性ポリエステルアクリレート、アミノ(メタ)アクリレートなどのアミン変性アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリスチレン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
また、本発明で使用する(メタ)アクリロイル基を有する化合物として(メタ)アクリロイル基を有する樹脂を用いてもよい。特に好ましくは(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂である。(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂は、特に限定はなく公知の方法で得たアクリル系樹脂を使用することができる。
【0044】
(光重合開始剤)
本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング剤は、紫外線等で硬化させる場合、必要に応じて光重合開始剤を使用する。この際に使用する光重合開始剤としては、公知のものを使用すればよい。
【0045】
中でもラジカル重合タイプの光重合開始剤が好ましく、活性エネルギー線硬化性化合物溶解時に溶解液の着色が無く、経時による黄変の少ないα-ヒドロキシアルキルケトン系光重合開始剤が挙げられる。α-ヒドロキシアルキルケトン系光重合開始剤としては例えば、1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。更にフェニルグリオキソレート系光重合開始剤も好ましい。フェニルグリオキソレート系光重合開始剤としては例えばメチルベンゾイルフォルマート等を挙げることができる。中でも、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
【0046】
また、その他のラジカル重合タイプの光重合開始剤としては紫外線の中でも長波長領域に吸収波長を有するモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を適宜、組合わせて使用してもよい。モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては活性エネルギー線硬化性化合物への溶解時に着色するビスアシルフォスフィンオキサイド類は除き、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等のモノアシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられ、特に、これらの中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイドは、385nmや395nmに発光波長を有するUV-LEDの発光波長領域に合致するUV吸収波長を有することで、好適な硬化性が得られ、且つ、硬化皮膜の黄変が少ない点でより好ましい。
【0047】
前記した光重合開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記光重合開始剤の総計の添加量は、コーティング剤全量に対し0.5質量%~30質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくはコーティング剤全量に対し1質量%~25質量%の範囲である。
【0048】
(有機溶剤)
また、本実施形態で使用される活性エネルギー線硬化性コーティング剤は、希釈剤として有機溶剤を添加することもできる。
有機溶剤としては、使用する(メタ)アクリロイル基を有する化合物を溶解する溶剤であればいずれも使用できる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類等が挙げられる。
但し、環境対応を目的として、大気中への有機溶剤の蒸散量の徹底的な低減、即ち揮発性有機化合物(VOC)の削減をする場合は、上記の有機溶剤を含まない方がより好ましい。
【0049】
(微粒子)
本発明で使用する微粒子は、公知の有機系粒子や無機系粒子を単独で使用するか、もしくはこれらを併用することができる。具体的には、例えばシリカ、酸化チタン、アルミナ粒子(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウムや硫酸バリウム、ガラスなどの無機粒子、あるいはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂などの有機粒子、シリコーンビーズ等を使用することができる。高い艶消し効果を期待できるものとして、無機微粒子としてシリカやアルミノケイ酸塩ビーズ等、有機微粒子としてアクリル樹脂ビーズやウレタン樹脂ビーズ等の他、シリコーンビーズ等が好ましい。前記艶消し剤としてのシリカに、更にビーズを添加することで、適度な低艶・触感等の意匠性に加えて塗工表面の耐傷性を向上させることが出来る利点もある。
【0050】
(添加剤)
本実施形態の活性エネルギー線硬化性コーティング剤は、重合禁止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、ワックス、乾燥剤、増粘剤、垂れ止め剤、可塑剤、分散剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を含有してもよい。
【0051】
[雰囲気制御方法]
図2は、本実施形態に係る雰囲気制御方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態の雰囲気制御方法は、パージ工程、第1遮断工程、循環工程及び測定工程を有する。図2に示す方法に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、パージ工程の前、各工程間、或いは測定工程の後に他の工程を有してもよい。
【0052】
図2に示すように、本実施形態の雰囲気制御方法では、パージボックス11内を不活性ガスG1’でパージする(パージ工程、ステップS11)。
パージ工程を行うにあたって、先ず、活性エネルギー線硬化性組成物Sをパージボックス11内に収容し、内部空間Kを密閉する。活性エネルギー線硬化性組成物Sとしての活性エネルギー線硬化性コーティング剤は、公知の塗布・印刷方式でコーティング膜を形成することができる。具体的な例としては、コーティング方法としては、たとえばロールコーター、グラビアコーター、グラビアオフセットコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を適宜採用することができる。上記形成方法で形成したコーティング膜は、使用するコーティング剤が有機溶剤を含有する場合には、溶剤を乾燥炉等で乾燥させてもよい。
【0053】
そして、本パージ工程において、不活性ガス導入部12の第1遮断弁15及びガス排出部14の第2遮断弁16を共に開いて、当該内部空間Kを不活性ガスG1でパージする(図3(a))。不活性ガスG1のパージ時間は、パージボックス11の容積や不活性ガス供給部13からの不活性ガスG1’の流量等に応じて、適宜選択することができる。これにより、パージボックス11の内部空間Kに不活性ガスG1が充填される。このとき、本実施形態では循環路17のガス流入部に設けられた第3遮断弁20及び循環路17のガス流出部に設けられた第4遮断弁21を共に開いておく。これにより、循環路17内にも不活性ガスG1が充填される。尚、不活性ガス充てん時にポンプ18を稼働する事でさらに短時間で効率よく充填する事ができる。
【0054】
次に、不活性ガス導入部12及びガス排出部14を遮断して閉鎖系を形成する(第1遮断工程、ステップS12)。例えば、不活性ガス導入部12の第1遮断弁15及びガス排出部14の第2遮断弁16を共に閉じて、不活性ガス導入部12及びガス排出部14を外部と遮断する。
【0055】
次いで、パージボックス11内の不活性ガスG1を循環路17を介して循環させる(循環工程、ステップS13)。本実施形態では循環路17に設置されたポンプ18を動作させて、循環路17で不活性ガスG1を送出する。これにより不活性ガスG1が循環路17内及びパージボックス11内を通って循環する(図3(b))。
【0056】
そして、循環路17内を流れる不活性ガスG1に含まれる酸素濃度を測定する(測定工程、ステップS14)。本実施形態では循環路17に設置された酸素濃度測定部19により、不活性ガスG1中の酸素濃度を測定する。不活性ガスG1が循環路17内及びパージボックス11内を通って循環することによって閉鎖系内の不活性ガスG1が均一化され、循環路17内の不活性ガスG1中の酸素濃度が、パージボックス11内の不活性ガスG1中の酸素濃度とほぼ等しくなる。このため、酸素濃度測定部19によって循環路17内の不活性ガスG1の酸素濃度を測定すれば、パージボックス11の内部空間Kにおける不活性ガスG1の酸素濃度を測定することができ、その結果活性エネルギー線硬化性組成物Sに活性エネルギー線を照射する際の酸素濃度を正確に把握することができる。
【0057】
上記測定工程の後、所望とする酸素濃度を確定した後に、必要に応じて、ポンプ18を停止し、第3遮断弁20及び第4遮断弁21を閉じ循環路17内を切り離した後に、活性エネルギー線硬化性組成物Sに活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線は、特に制限されず、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等の種々のエネルギー線を用いることができる。これにより、所望の酸素濃度にて活性エネルギー線硬化性組成物Sを硬化させることができる。
【0058】
上述したように、本実施形態によれば、パージボックス11に循環路17を設け、循環路17に設けられたポンプ18によってパージボックス11内の不活性ガスG1を循環し、循環路17内を流れる不活性ガスG1に含まれる酸素濃度を酸素濃度測定部19で測定するので、パージボックス11内及び循環路17内の酸素濃度が均一化され、パージボックス11内の酸素濃度を正確に測定することができる。したがって、その後に所定の酸素濃度である不活性ガス雰囲気下において活性エネルギー線硬化性組成物Sに活性エネルギー線を照射することで、樹脂硬化物の所望の特性や美観を更に向上することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、パージボックス11内を不活性ガスG1でパージし(ステップS11)、不活性ガス導入部12及びガス排出部14を遮断して閉鎖系を形成し(ステップS12)、パージボックス11内の不活性ガスG1を循環路17を介して循環させ(ステップS13)、循環路17内を流れる不活性ガスG1に含まれる酸素濃度を測定するので(ステップS14)、上記と同様、パージボックス11内及び循環路17内の酸素濃度、すなわち閉鎖系の酸素濃度が均一化され、パージボックス11内の酸素濃度を正確に測定することができる。よって、活性エネルギー線硬化時の酸素濃度を正確に測定して、樹脂硬化物の所望の特性や美観を更に向上することができる。
【0060】
図4は、図1の雰囲気制御装置の変形例を示す概略図である。図4の雰囲気制御装置1Bは、図1の雰囲気制御装置1Aと基本的に同じであり、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、以下に異なる部分を説明する。
【0061】
図4に示すように、雰囲気制御装置1Bは、パージボックス11の酸素ガス導入部22に接続され、パージボックス11内に酸素ガスG2を供給する酸素ガス供給部23を更に備えていいる。
【0062】
酸素ガス導入部22は、本実施形態ではパージボックス11の側壁上部に設けられており、パージボックス11と酸素ガス供給部23とを接続している。酸素ガス導入部22は、上部側壁に限らず、パージボックス11の上壁などの他の位置に設けられてもよい。酸素ガス導入部22には第5遮断弁24が設けられている。
【0063】
酸素ガス供給部23は、典型的には酸素ガスG2が充填されたガスボンベであるが、これに限らず、酸素ガス発生装置などであってもよい。ガスボンベの代わりに酸素ガス発生装置が設けられる場合、酸素ガスG2をパージボックス11内に圧送する不図示のポンプが併設されてもよい。
【0064】
図5は、図2の雰囲気制御方法の変形例を示すフローチャートであり、図6(a)~図6(c)は、図5の雰囲気制御方法の工程を説明するための概略図である。図5の雰囲気制御方法は、図2の雰囲気制御方法と基本的に同じであり、重複する工程についてはその説明を省略し、以下に異なる部分を説明する。
【0065】
図5の雰囲気制御方法では、循環路17内を流れる不活性ガスG1に含まれる酸素濃度を測定し(測定工程、ステップS14)(図6(a))、測定された酸素濃度が所定範囲よりも低い場合には、パージボックス11内に酸素ガスG2を供給する(ステップS15)(図6(b))。活性エネルギー線硬化性組成物Sに活性エネルギー線を照射する際の酸素濃度は、基本的にできる限り低い方が望ましいが、活性エネルギー線硬化性組成物Sの種類や樹脂硬化物の仕様等によっては、所定範囲の酸素濃度で活性エネルギー線を照射したい場合がある。よって本工程により、不活性ガスG1の酸素濃度を高くすることができる。
【0066】
また、測定された酸素濃度が所定範囲よりも高い場合には、パージボックス11内への不活性ガスG1’の供給量を増大させる(ステップS16)(図6(c))。本工程により、不活性ガスG1の窒素濃度を増大させて、不活性ガスG1の酸素濃度を低くすることができる。
【0067】
本変形例によれば、測定工程で測定された酸素濃度が所定範囲よりも低い場合、パージボックス11内に酸素ガスG2を供給し、上記酸素濃度が所定範囲よりも高い場合、パージボックス11内への不活性ガスG1’の供給量を増大させる酸素濃度調整工程を更に有するので、不活性ガスG1の酸素濃度を所定範囲の値に制御することができる。
【0068】
本変形例では、ステップS14の工程の後にステップS16の工程を行うが、これに限らず、ステップS15の工程の後にステップS16の工程を行ってもよい。また、ステップS15の工程及びステップS16の工程を繰り返して行ってもよい。これにより不活性ガスG1の酸素濃度を精度良く確実に調整することができる。
【0069】
図7は、図1の雰囲気制御装置1Aの他の変形例を示す概略図である。
図7に示すように、雰囲気制御装置1Cは、パージボックス11内の不活性ガスG1を循環する循環路25を備えている。この雰囲気制御装置1Cでは、循環路25の一端側が、パージボックス11を構成する対向配置された2つの側壁の一方に接続され、循環路25の多端側が、上記2つの側壁の他方に接続されている。また、循環路25の一端側(ガス流入側)及び多端側(ガス流出側)は、直線上に並んで配置されるのが好ましく、また、当該直線上或いはその近傍に活性エネルギー線硬化性組成物Sが載置されるのが好ましい。
【0070】
本変形例によれば、不活性ガスG1’の供給量を抑制しつつ、活性エネルギー線硬化性組成物Sの近傍を十分に不活性ガス雰囲気にすることができる。また、循環路25内における不活性ガスG1の酸素濃度と、パージボックス11の内部空間Kにおける不活性ガスG1の酸素濃度との差を更に小さくすることができ、その結果活性エネルギー線硬化性組成物Sに活性エネルギー線を照射する際の酸素濃度をより正確に把握することができる。
【符号の説明】
【0071】
1A 雰囲気制御装置
1B 雰囲気制御装置
1C 雰囲気制御装置
11 パージボックス
12 不活性ガス導入部
13 不活性ガス供給部
14 ガス排出部
15 第1遮断弁
16 第2遮断弁
17 循環路
18 ポンプ
19 酸素濃度測定部
20 第3遮断弁
21 第4遮断弁
22 酸素ガス導入部
23 酸素ガス供給部
24 第5遮断弁
25 循環路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7